2020年9月5日土曜日

【日本の解き方】「アベノミクス」いまだ理解せず、的外れな批判をするマスコミ 雇用やコロナ予算に威力発揮―【私の論評】菅政権が緊縮財政の転換の実現に成功すれば、安倍政権に次ぐ長期政権になり得る(゚д゚)!

 【日本の解き方】「アベノミクス」いまだ理解せず、的外れな批判をするマスコミ 雇用やコロナ予算に威力発揮

安倍首相

 安倍晋三政権で日銀のインフレ目標と金融緩和が実施されて7年以上が経過したが、「2%目標」の意味やその効果について、いまだに多くのメディアが正しく評価できない状況だ。

 日本のメディアは、アベノミクスのインフレ目標2%について、「実際に達成していないからダメだ」と論評する。しかし、これはインフレ目標の意味をキチンと理解していない薄っぺらなものだ。

 インフレ目標は、雇用(失業率)とインフレ(率)の関係を分かっていないと正しく理解できない。短期的にインフレ率が高い状況では失業率が低下し、逆に失業率が高いときはインフレ率が低下するというトレードオフ関係がある。これは、マクロ経済学の基本中の基本だ。

 いずれにしても物価と雇用は裏腹なのだが、失業率はゼロにはならず、一定以下には下がらない。一方、インフレ率はいくらでも上がる。

 こうした状況において、最低の失業率を目指すときに、金融緩和しすぎてインフレ率が高くならないように、ギリギリ許容できる水準としてインフレ目標があるのだ。

 要するに、完全雇用が達成できていれば、インフレ率が2%に達していなくても問題ではなく、それはむしろ喜ばしいことだ。政権ができるマクロ経済対策は、極論を言えば雇用の確保しかない。それができれば及第点だ。

 安倍首相は雇用政策としての金融政策を完全に理解した日本で初めての首相だ。その結果、安倍政権は失業率を引き下げ、就業者数を増やした。失業率統計は1953年から始まったが、それ以降の29の政権のうち、在任期間中に失業率を下げ、かつ就業者数を増やしたのは10政権しかない。

 その中で安倍首相は失業率を1番下げて、就業者数は佐藤栄作政権に次いで2番目に増やした。これは他の誰も実現できなかった断トツの実績だ。しかも、失業率2%前半という「完全雇用」の状態も達成できた。

 インフレ目標の導入は安倍首相の功績だが、その効果として雇用を作るとともに、財政政策と金融政策の一体化を進めることができるようになった。この点でも、安倍首相はこれを理解した初めての首相だった。

 インフレ目標の達成まで日銀で紙幣を刷って財源を作っても全く問題ないことを安倍首相は理解していたのだ。

 しかし、日本のマスコミは、「現下のコロナ対策により、借金が増え、将来世代にツケが回るのでアベノミクスの負の遺産になっている」という間違った解説をしている。インフレ目標2%に達しないからこそ、将来世代に負担をかけずに、日銀がカネを刷って、コロナ対策が可能になっているのだ。

 アベノミクス、とりわけインフレ目標の意味について、完全雇用達成を目指しつつも金融政策をふかしすぎないための歯止めであること、そしてその範囲内なら財政再建を意識する必要はないことを、いまだに日本のマスメディアが理解していない。このため、きちんとアベノミクスを評価できていないのは情けない。(元内閣参事官・嘉悦大教授)

【私の論評】菅政権が緊縮財政の転換の実現に成功すれば、安倍政権に次ぐ長期政権になり得る(゚д゚)!

第2次安倍政権は、約8年の憲政史上最長の政権となりましたが、6回の国政選挙において安倍首相率いる連立与党は国民の信任を得ることに成功しました。特に平成以降の日本の首相の在任期間が短かったことを踏まえると、日本の選挙制度では長期にわたり政権を保つことは、かなり困難と言えにもかかわらず、この偉業を達成したのです。

安倍政権に対する評価は様々でしょうが、批判はするのですが健全な政策論争を行わないように見える野党に対する国民の信頼が高まらない一方で、安倍政権が相応の実績を残して国民の期待に一定程度応え続けました。だからこそ、史上最長の政権となり得たのです。

外交面では、米国を中心とした民主主義体制の親密国との関係強化、TPP協定を実現して自由貿易推進の旗振り役になったこと等が主な成果です。それ以上に国民の支持を高めたのは、発動した経済政策によって2013年から経済状況が大きく改善したことです。

2000年代半ばの小泉政権は平成以降では数少ない長期政権でしたが、この時期も総じて経済状況改善が続きました。公務員などを除く多くの国民が市場経済のルールに直面している日本では、頻繁に選挙民によるチェックが行われるので、その政治基盤は経済政策の出来と経済状況が大きく左右しています。

第一次小泉内閣


2013年以降の経済正常化を端的に示すのは、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、労働市場の環境改善です。コロナ禍前の2019年12月には失業率は2.2%まで低下しました。これは、1992年以来約30年ぶりの水準です。

1992年当時は、1980年代後半のバブルが崩壊してから2年が経過して経済悪化が始まっていたのですが、それでも労働市場の需給バランスがなんとか保たれ、ほぼ正常と呼べる経済状況でした。

安倍政権が始まってほどなく2014年頃から、メディアでは「人手不足」の問題が報じられていました。ただし、一部の企業が人手不足に直面している段階では、経済全体や労働市場の需要と供給のバランスが正常化しつつあるだけに過ぎません。

そして、2014年以降も失業率の低下という正常化が続き、上の高橋洋一氏の記事もあるように、2.2%と1992年以来の水準まで労働市場は改善しまはた。特に就職活動に直面する若年世代の就業環境を大きく変えまはた。

約10年前まで世間を賑わせていたブラック企業の悪評が少なくなり、転職機会が多い若年世代労働者の生活はかなり改善したことでしょう。

さらに、安倍政権になってから、自殺者数が大きく減ったことにも、労働市場の改善が大きく貢献しました。これは、このブログにも何度か掲載してきました。

安倍政権に対しては将来があまり見込めない中高年世代からの厳しい声が一定程度存在しています。ところがその一方で、将来がある若者世代の安倍政権への支持率が総じて高いのは、ある意味当然のことです。

経済環境を正常な状況に戻して国民の生活向上を実現するのが、1990年代後半からの日本の政治基盤を盤石にする最重要課題だったはずです。安倍政権において、長年実現しなかった失業率の大幅な改善がなぜ実現したのでしょうか。

経済再生の方針が掲げられても、従前の多くの政権において、政策手段の実行については経済官僚などにほとんど依存していたのが実情だったとみられます。

具体的に、基本的な経済理論が教える通り、失業率問題を改善するための手段は、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、金融財政政策(マクロ安定化政策)をセオリー通りに実行することですが、それが不十分だったのです。この問題の本質を、安倍首相らは深く理解していたのです。

例えば、安倍政権以前の日本の金融政策は、日本銀行の内輪の理論によって、経済官僚が事実上決めていたとしか考えられません。ただ、第1次安倍政権下の2007年に行われた日本銀行による2回目の利上げに対して、安倍氏は強い疑念を抱いたとされています。

そうして、安倍氏は、デフレと経済の長期停滞が様々な経済問題をもたらし、そしてその根本原因は金融財政政策が不十分であると認識しのです。これが、いわゆるアベノミクスが大きな成果を挙げた経緯です。

安倍政権が始まって早々、それまで日本銀行が採用しなかった2%インフレを「共同目標」としてコミットさせ、その上で、日本銀行の執行部(総裁、副総裁)の人事には、従前の慣行にとらわれず、それまで日本銀行の金融政策を批判してきた人物を採用しました。

この日本銀行の政策転換は、米FRB(連邦準備理事会)をはじめとした各国の中央銀行と同様に、目標と責任を明確にするというだけのことです。

それでもこの政策転換の経済的な効果は大きいものでした。その後、2012年までの行き過ぎた円高が大きく修正され、停滞していた株式市場が上昇しました。そうして、金融緩和の効果が実態経済に浸透してデフレが和らぎました。

金融政策が一貫して緩和方向に作用して労働市場の需給バランス改善(正常化)が続き、雇用機会が増えて、多くの人の生活苦を緩和したのです。

安倍政権の最大の功績は、安倍総理が責任回避を優先し、自らの無誤謬を主張しつつ内輪の理屈で行動する官僚組織の弊害を見抜き、それを正して国民生活を改善させる責務を果たしことです。

今後、菅政権誕生となれば、安倍政権の経済政策を継承するでしょうが、妥当な政策対応が何であるのかを、安倍政権を支えてきた菅氏は深く理解しているでしょう。

これまで2%インフレ目標は実現しておらず道半ばですが、このことは、コロナ禍前においても、日本の労働市場には一段の改善余地が依然あったことを意味します。

2020年のコロナ対応のために金融財政政策の役割が一段と高まっていますが、これを徹底的に使えば、安倍政権同様に次期政権が国民の支持を得る可能性は格段に高まるでしょう。そして、安倍政権が実行しなかった緊縮財政政策の転換という、有用な政策手段が次期政権に残っていることは明白です。

菅官房長官(左)とポンペオ国務長官


安倍氏が、金融政策をセオリー通りに実行できるようにし、菅氏が次の段階で、財政政策をセオリー通りにできるようにすれば、日本は安泰です。日本経済は最近安定傾向ですが、それにしても未だに韓国よりも経済成長率が低いとか、一人あたりのGDPが韓国並というような、ありえない状況(2019年、韓国は2%成長、日本は1%以下になる見込み)を改善できると思います。

この緊縮財政の転換を実現すれば、菅政権は長期政権になるでしょう。ただし、菅氏の年齢は71歳であり、安倍総理の年齢は65歳ということもあり、安倍政権のような長期政権にはならないでしょうが、それにしても一期で終わりということではなく、それ以上の長期になる可能性が大です。

もし、菅政権が緊縮財政の転換に失敗し、さらに増税するなどのことをしてしまえば、短期の繋政権になる可能性が大きくなり、その後も緊縮財政の転換がなされなければ、自民党政権であろうと、他の政権であろと、短期政権になるのは確実です。

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2020年9月4日金曜日

米中の経済分離・政治対立は未だ序章か―【私の論評】米中はいずれ途絶する!現在米国がそれをしないのは現状では、米国側にも被害が及ぶからに過ぎない(゚д゚)!

米中の経済分離・政治対立は未だ序章か

岡崎研究所

 8月17日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙の外交問題主任コメンテーター、ギデオン・ラックマンが、米中の分離(デカップリング)は始まったばかりであり、貿易から技術、金融分野に分離が進む中、大企業は米中の冷戦でも中立を保ちたいと思っているだろうが、それはおそらく不可能であろうとの論説を書いている。


 これまで米国は中国による米国の技術窃取などを非難してきたが、ここにきてイデオロギー面での非難を強めている。米上院は、7月21日、中国についての報告書を公表し、中国は「デジタル独裁主義」で民主主義的な価値観の弱体化を狙っていると非難した。ポンぺオ国務長官は、7月23日の演説で、習近平は破綻した全体主義のイデオロギーの真の信奉者だ、中国の共産主義による世界覇権への長年の野望を特徴づけているのは、このイデオロギーだ、と中国の共産主義自体を非難した。

 米国の対中制裁手段として、金融制裁がクローズアップされてきている。金融制裁は世界経済で中心的な役割を果たしているドルへのアクセスを封じようとするもので、すでに北朝鮮、イラン、ベネズエラなどに適用されており、特にイラン経済の締め上げに極めて有効と見られている。

 中国に対しては、当面香港と新疆の政府関係者が金融制裁の対象とされているにとどまっているが、もし中国の主要企業に課せられることになれば、その影響は計り知れない。

 過去40年間、米中の経済関係は急速に発展し、2019年には米中貿易は総額5,410億ドルに達した。何千という米国企業が中国に進出し、中国の対米投資も2016年に450億ドルに達した。これは中国が鄧小平の「改革開放」戦略に従って中国の経済発展を最優先させてきたためである。

 その間、米国をはじめとする西側諸国は、中国が経済発展をすれば市場経済化が進み、民主化すると期待した。中国が世界経済の責任ある当事者(a responsible stakeholder)になるとの期待も表明された。しかし、経済発展を遂げた中国は、習近平体制の下、共産党の指導を強化し、国内では人権と言論の弾圧、海外では南シナ海や東シナ海で見られるような一方的行動、覇権をめぐっては米国に挑戦するようになった。

 ただ、米中の経済関係は分離(デカップリング)一色ではない。米国の電気自動車メーカーのテスラが上海に工場を建設して中国に進出し、GMも合弁の拡大を図っている。4月に行われた在中米国商工会議所の調査では、在中国の米国企業の多くが中国での生産とサプライチェーンの維持を続ける意向であるとのことである。

 しかし、全体としてみれば、米中が過去40年間の和解の状態から急速に分離の方向に進んでいることは間違いない。ラックマンの論説は、グローバル化と米中の和解の上に築かれてきた過去40年の世界が急速に消えつつあると言っているが、過剰な表現とは思えない。

【私の論評】米中はいずれ途絶する!現在米国がそれをしないのは現状では、米国側にも被害が及ぶからに過ぎない(゚д゚)!

2020年9月2日、米華字メディア・多維新聞は、米中関係の悪化で中国企業3つのことを最も恐れているとする記事を掲載しました。

米華字メディア・多維新聞のサイト


記事は、11月3日に行われる米国の大統領選で、トランプ氏とバイデン氏のどちらが勝ったとしても米中関係に大きな変化はないと分析。英BBCの報道を引用して「中国の企業家たちはバイデン氏の方が良いと考えているが、いずれにしても米国の対中強硬姿勢が変わることを期待してはおらず、3つの心配事がある」としました。

その一つは、「米中デカップリング」。「トランプ大統領は『中国とビジネスをしなくてもよい、米中貿易協定に意味はない』と何度も述べている。実際、トランプ大統領がTikTokを米国企業へ売却するよう求めていることは、その一例だ。サプライチェーンから中国企業を外す試みから米国の中国企業を上場廃止させることまで、さまざまな方法で中国を攻撃している」と指摘した。

二つ目は、「米国市場からの撤退」。記事は「トランプ米政権は米中金融戦を始めており、米国で上場する中国企業の監査基準を厳格化し、2022年1月までに基準を満たせなければ上場廃止とする方針を示した」と説明した上で、「この影響はすでに米国で上場を予定していた中国企業に出ており、アリババ傘下の金融会社アントが、米国ではなく香港と上海で上場したのはその一例。他の中国企業もこの流れに続く可能性がある」と予想した。

三つ目は、「脱グローバル化」。記事は「グローバル化の最大の受益者は中国だった。しかし、トランプ大統領はグローバル化で中国に食いぶちを奪われたと非難している。トランプ政権の誕生以降、脱グローバル化がトレンドとなっているようで、これは大統領選終了後も続くだろう」とした。

記事は「グローバル化によって世界は安全になった。ビジネスをするにあたり、相手とけんかをしたいとは思わず、少なくとも公には衝突しないからだ」とする一方、「脱グローバル化の流れにより、特にアジア企業の多くが米中の軍事衝突を懸念している。米中両国の関係リセットは、米中関係にとっても他の人々にとっても危険なことだ」と論じた。

米中経済のデカップリングというと、多くの人は上の3つのうち、最初のものだけを思い浮かべがちですが、米中デカップリグとは、この3つと、それ以上を含むと認識すべきでしょう。

最終的には科学技術の交流も、文化交流も、人の行き来も、情報の交換もほとんどなくなるでしょう。

米国は1979年の中国との国交樹立以来、懸命に経済協力を行い、民主化を促してきましたが、そうした対中関与政策は中国自身によって否定されました。

特に2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟した際、加盟国は、中国が経済改革の道を歩み、市場志向の経済・貿易体制へと変貌していくことを期待していたのですが、こうした期待は実現されませんでした。

現在、中国はWTOに加盟して自由貿易の恩恵を最大限に受けているのにもかかわらず、国営企業を優遇し、海外のSNSをシャットダウンして国内の言論だけではなく、社会活動や経済活動にも多大な制限を加えています。

また、知財を盗むコピペ経済でもあります。さらには、中国大陸に進出する外資系企業に、厳しい規制を加えるだけではなく、その優越的地位を乱用して「最先端技術を渡せ」などという無理難題を吹っ掛けています。

たまりかねた米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できないです。

それでも彼らが儲かっているうちはまだいいですが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になります。

そもそも、中国のWTO加盟交渉は、極めて特殊でした。


実は、第2次世界大戦の戦勝国である民主主義中国(中華民国、台湾)が、WTOの前身であった関税貿易一般協定(GATT)の原締約国でした。しかし、1949年の共産主義中国の建国とともに中華民国が中国大陸から追放され台湾に移ったことから、1950年にGATTからの脱退を通告しています。

共産主義中国は、「台湾の1950年の脱退は無効である」との立場をとり続けていましたが、1986年、「GATT締約国としての地位の回復」を申請しました。

その後、1989年の天安門事件の影響などにより、加盟交渉は難航し、結局GATTには参加できませんでした。

やっと、2001年に、中東・カタールのドーハで開かれたWTO(GATTの流れを継承)第4回閣僚会議において中国の加盟が認められることになったのですから、15年間も交渉したことになります。

この交渉では、「いつかは共産主義中国も民主主義国家になる」という甘い期待を持っていた米国の後押しも受けました。

ところが、その後の中国共産党の後押しを受けた国営企業などによる不公正貿易の拡大や、知財だけでなく大量の軍事機密を盗み取る行為に米国民の堪忍袋の尾が切れたことを敏感に察知して、誕生したのがトランプ政権です。

米国の識者たちの多くは、共産主義中国に対して「恩をあだで返された」と感じています。

したがって、貿易戦争・第2次冷戦など「共産主義中国にやさしくない」政策は、トランプ氏の政治信条というよりも「米国の民意」であり、トランプ氏は民意を先読みし、素早くかつ大胆に行動しているだけに過ぎないのです。したがって、ビジネスマンのトランプ大統領は、利害関係さえ一致すれば、共産主義中国とも「ディ―ル」を行うことができます。

ところが、現状の米国議会は上下院とも超党派で「反中国」が政治信条という次元にまで高まりました。したがって、米国はトランプの意思とは関係なく、中国が全面降伏するまで徹底的に戦うことになるでしょう。

さらに、2013年、「資本主義は必ず滅び、社会主義は必ず勝利する」と述べた習近平総書記(国家主席)のもと中国は「一帯一路」を掲げてアジア太平洋諸国を影響下に置こうとする一方で、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海、南シナ海、台湾海峡、中印国境地域で挑発的で強圧的な軍事・準軍事活動を繰り広げています。

習近平

よって「過去20年間の米国による対中関与政策は『誤り(false)』」だったと、トランプ政権は総括しています。

その歴史的な総括を踏まえて、トランプ政権は、米国を含む自由主義陣営の体制を強化し、同盟国を中国から守るため、今後、「米国は、自由で開かれたルールに基づく国際秩序を弱める北京の行動には応じないし、応じるつもりもない」と明言しています。

この米中のデカップリングですが、悪いほうに考える人も多いのですが、良いこともあります。いや、世界経済にとって良いことになる可能性のほうが高いです。

FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提「世界的貯蓄過剰2.0」を提起した。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘しました。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのだというのです。 

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのです。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しません。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

ベン・バーナンキ


中国が国際市場から消えるか、あるいはWTOの規則を遵守するようになれば、世界はデフレ傾向から脱却できます。

中国においては、国営企業の多くはゾンビ企業といわれています。そのほとんどが、国営木木用であるがゆえに、国際市場経済の中で本来はとうに倒産しているはずが、政府の補助金などによってゾンビとして生きながらえ、過剰生産を繰り返しています。中国政府は、これを温存し続け、世界にデフレを撒き散らしているのです。

これが、なくなれば、世界経済はまた力強く、發展することになります。米中のデカップリングはこれを促すことになります。

デカップリングでも、中国の人口は14億人いますから、内需を拡大すれば、ある程度はやっていけます。というより、もともと内需拡大政策をとっていればよかったのです。しかし、そのためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現する必要があります。

これを実行すれば、多数の中間層が出来上がり、この中間層が自由に社会・経済活動を行い、国が栄えることになります。

しかし、中国はこれをせずに、個人あたりのGDPは低い状態のまま、共産党幹部とそれに連なる富裕層だけを豊かにする道を選びました。というより、多数の中間層ができあがることになれば、中国共産党は統治の正当性を失い、新たな体制にせざるを得なくなります。

それが怖くて、中国共産党は中国をまともな体制にしてこなかったのです。しかし、それは中国共産党の自分たちの都合です。世界中の国々は、中国の都合にあわせる必要はありません。

米国はこうした見方を変えないでしょうし、中国共産党も自分たちが滅びる道を選んでまで、中国の体制を変えることしません。そうなると、米中のデカップリングがあらゆる方面で進むことになります。

米国は、中国に対する金融制裁を強めつつありますが、未だ本格的なものにはなっていません。それは、なぜかといえば、現在の段階では米中のむすびつきが強くて、本格的な制裁をすれば、米国も損害を被るからです。

しかし、デカップリングがある程度進み、米中関係が希薄になれば、制裁を強くしても、中国に害が及んでも、米国には関係なくなります。

米国は、その時期をみはからって、本格的な金融制裁に踏み切ります。その他の制裁も同じです。米国に対する損害が少なくなった頃を見計らい、実行するでしょう。そうして、米中のデカップリングはすすみ、最終段階では、人的交流、文化的交流もなくなります。要するに、米国から完全に無視されることになります。

そうして、いずれ中共は、弱体化していき、国内で統治の正当性を失い、この世から消えることになります。そこまで、米国は制裁を継続するでしょう。

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2020年9月3日木曜日

タイが潜水艦購入延期、コロナで崩れた中国の目論見―【私の論評】タイは日本から潜水艦を手にいれれば、圧倒的に有利になる(゚д゚)!

タイが潜水艦購入延期、コロナで崩れた中国の目論見

日本にチャンス到来、安倍首相の置き土産を無駄にしてはならない

(北村 淳:軍事社会学者)


S-26T潜水艦の原型となる中国海軍の元型潜水艦
S-26T潜水艦の原型となる中国海軍の元型潜水艦

 タイ政府は中国からの潜水艦輸入調達を、少なくとも1年間は棚上げにする決定を下した模様である。安倍首相が門戸を開いた「日本から国際社会に向けての戦略的兵器輸出」にとって、好機到来である。国際社会への戦略的兵器輸出によって、裾野の広い防衛関連産業が活性化し、ひいては日本経済再生の原動力の一つとなることが期待される。

兵器輸出の素人に立ちはだかった厚い壁

 かつて安倍首相はオーストラリアのアボット首相との信頼関係に基づいて、次世代潜水艦選定作業に取りかかっていたオーストラリア海軍に、「そうりゅう」型をベースとする潜水艦の売り込みを図ろうとした。

 しかし、すでに日本が参加する数年前から売り込み活動を開始していたフランスとドイツの壁は厚い上、本格的兵器輸出の経験とノウハウを全く持たない防衛省をはじめとする日本政府や日本防衛産業界は、潜水艦輸出という超大型取引の土俵に上がることすらできなかったというのが実情であった(参照:本コラム2016年4月14日「決定間近、オーストラリアは日本の潜水艦を選ぶのか」、2016年5月5日「素人には歯が立たなかった国際武器取引マーケット」)。

 今回のタイ海軍調達計画の一時的頓挫は、日本にとって潜水艦輸出再挑戦の機会となり得る事件と言えるかもしれない。

噴出した追加調達反対の声

 2017年にタイ政府は中国からの3隻の潜水艦調達を決定した。1隻目の元型S-26T潜水艦は現在中国で建造が進められ、2024年中にはタイ海軍に引き渡される予定となっている。

 2隻目、そして3隻目のS-26T潜水艦調達価格は約760億円(8月31日のドル円レート換算で)で、7年間にわたって支払われる予定となっていた。だがタイ国会の予算調査小委員会では、与党(プアタイ党)議員にも反対の立場を取る議員が存在したため、8月25日の潜水艦追加調達費決定会合において2隻目、3隻目の購入予算は僅差で可決された。すると、野党(民主党)はじめ多数の市民から潜水艦追加購入に反対する声が上がり、SNSなどを通して抗議活動は極めて強いものとなった。

 追加購入に反対したプアタイ党議員は「現時点で潜水艦追加購入を棚上げにしてもタイと中国関係に悪影響を及ぼすことはない。新型コロナウイルス対策、そして経済再生政策のほうが潜水艦調達よりもタイ国民にとって重要であることを、中国政府に納得させることができる」と述べている。

 同時に、中国からの潜水艦購入は国家間の公式契約ではなく、タイ海軍代表者と中国企業代表者が取り交わした契約であり、現在1隻の潜水艦を建造しているとはいえ、契約には引き続いて2隻目そしてそれ以上を購入しなければならないという取り決めはなされていない、とも指摘した。

場合によっては一時中断ではなく中止

 タイ海軍首脳は、このような指摘に対して、事実を歪曲していると反論した。そして、是が非でも少なくとも3隻の近代的潜水艦を手にしたいタイ海軍側は「タイ国防のために強力な潜水艦戦力は必要不可欠である」と、プラユット政権や与野党、そして多くの国民に対して、潜水艦購入調達の重要性を強調している。また「潜水艦調達は海軍戦略上の要請であり、政争の具にすべきではない」とも力説している。

 タイ政府当局も、潜水艦建造契約は政府間の契約であるとの立場を確認したものの、「新型コロナウイルス感染拡大によってタイ史上最悪と言われるほどの大打撃を受けているタイ経済の再建と、新型コロナ対策を優先的に推し進めよ」との世論や野党、そして一部与党の声に耳を貸さないわけにはいかなくなり、この時期における潜水艦の追加調達費計上に躊躇する姿勢が見え始めた。

 結局、プラユット・チェンオチャ首相(兼国防相、退役陸軍大将)が自らタイ海軍に対して、現時点での潜水艦追加調達要求を取り下げるよう説得し、タイ海軍としても2021年度予算における潜水艦追加調達費要求額をゼロとしたという。

 これによって、少なくとも1年間はタイ海軍による2隻目、3隻目の中国製S-26T潜水艦の調達計画は中断することとなった。そして、潜水艦追加調達予定額とほぼ同額が新型コロナウイルス感染に伴う経済再建策に対する予算として確保されたとのことである。

 7年間分割の潜水艦追加調達費とほぼ同額が緊急経済再建策に投入されるとなると、場合によってはS-26Tの追加調達は1年間の中断ではなく中止に追い込まれる可能性もあると考えられる。

安倍首相の置き土産を無駄にするな

 米国のオバマ政権は、タイで軍人政権が発足したことに反発して、それまで密接であった米軍とタイ軍の関係を弱体化させる政策を打ち出した。その状況を好機と捉えた中国政府は、タイとの軍事的関係を構築するため、タイ軍当局に対して戦闘車両の売り込みや潜水艦を含む軍艦の売り込みなどを強烈に推し進めた。その結果、タイ軍・政府当局は中国からの潜水艦や戦車の調達に踏み切ったという経緯がある(本コラム2015年7月2日「米国に衝撃、タイが中国から潜水艦を購入へ」、2016年7月14日「潜水艦3隻購入で中国に取り込まれるタイ海軍」)。

 それに対して、タイ軍との良好な関係を維持することの戦略的重要性を熟知していた米軍関係者たちは、オバマ政権がタイ軍事政権を冷たくあしらう姿勢を強く批判していた。現在、オバマ政権と違ってトランプ政権は、経済的のみならず軍事的にも対中国包囲網を構築しようとしている。したがって、アメリカとしては中国に取り込まれつつあるタイ軍を自らの陣営に引き戻す必要がある。

 そのための一手が、中国製潜水艦調達計画を頓挫させて、元型S-26T潜水艦2隻に取って代わる潜水艦をタイ海軍に供給することである。

 しかしながら、アメリカは原子力潜水艦しか建造することができず、タイ海軍に供給する潜水艦を建造することはできない。

 そこで出番となるのが、世界的にも高水準の潜水艦建造企業を2社も擁する日本である。

 日本メーカーの潜水艦は、S-26Tより高性能で世界中の海軍関係者から高い評価を受けている。タイ海軍が是が非でも欲しい高性能潜水艦を、日本政府が中国よりも好条件を提示して、2隻といわず4隻、そして6隻を供与するとの交渉を開始すれば、1隻のS-26Tという高い月謝を払ってしまったタイ海軍、そしてタイ政府が日本から調達する方針に転換する可能性がないわけではない。

 もちろん、中国側がそう簡単にタイ海軍への追加輸出を諦めることなどあり得ない。そして、タイでの好機に乗じて、韓国、フランス、ドイツ、スウェーデン、そしてロシアなども、すでに売り込み工作を開始しているかもしれない。

 日本政府はその競争に打ち勝つ覚悟を決め、安倍首相による置き土産ともなる「潜水艦の輸出」という防衛装備移転三原則の具体的推進を今度こそ成功させなければならない。

【私の論評】タイは日本から潜水艦を手にいれれば、圧倒的に有利になる(゚д゚)!

タイ王国海軍の空母チャクリ・ナルエベト


タイが中国から購入す予定の潜水艦は、原潜ではなく、非大気依存推進(AIP)機関を用いたものです。

原潜と通常型の潜水艦を比較すると、原潜は燃料として原子力を用いますので、一度潜水艦に原子炉を搭載すると、潜水艦の寿命が来るまで燃料を補給する必要はありません。

ただし、原潜といえでも、現状では乗員がいなければ、航行できないので、燃料補給は必要はないものの、水や食糧の補給と、交代要員を乗せるために、いずれかの港に定期的に入港しなけれぱなりません。ただし、燃料の補給は必要がないので、港に入港する頻度は原潜のほうが低いです。

さらに、通常動力潜水艦は、原子力潜水艦のように艦内で酸素を発生させることができません。また、真水の使用にも制限があるといいます。原子炉を持たないため、使ったバッテリーの充電や換気などをする目的で、定期的に海面に浮上する必要もあります。

このように、一見すると原子力潜水艦に劣るように思えるかもしれない通常動力潜水艦ですが、実は原子力潜水艦に勝る長所があります。1隻あたりの調達価格や放射性廃棄物の処理問題などもありますが、なによりもその「静粛性」です。

原子力潜水艦は、長期間に渡って潜航し続けることができますが、難点があります。それは「うるさい」ということです。原子炉で発生させた蒸気を使ってタービンを回し、その力でプロペラ軸を回しますが、この時に使う減速歯車が騒音の原因といわれています。タービン自体は高速で回転させるほうが効率も良いのですが、そのまま海中でプロペラを回転させるとさらなる騒音を発生させるために、減速歯車を使ってプロペラ軸に伝わる回転数を落とす必要があります。

ほかにも、炉心冷却材を循環させるためのポンプも大きな騒音を発生さるといいます。このポンプは静かな物を採用することによって、かつてに比べ騒音レベルは下がってきているといいますが、頻繁に原子炉の停止・再稼動をさせることが難しい原子力潜水艦においては、基本的にこのポンプの動きを止めることはできません。

093B 核潜水艦(SSN)

対する通常動力潜水艦は、原子力潜水艦が不得意とする静粛性に優れています。なぜならば、ディーゼル機関等を止めてバッテリー駆動に切り替えることによって、艦内で発生させる音をほぼ皆無にすることができるからです。この場合、唯一の音の発生源は乗員の発する音なので、例えば海上自衛隊の潜水艦の艦内には多くの場所に絨毯が敷かれ、艦内を歩く隊員の足音すら発生させないような工夫が施されています。

海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦には、従来タイが中国から購入することを予定した「AIP(非大気依存推進)機関」が搭載されていました。これは簡単にいうと、ヘリウムガスを加熱、冷却して得られる体積の変化を利用し動力を得るという装置です。これにより、従来のバッテリー駆動と比べて潜航時間が延びたといいます。

ただし、このAIP機関はあくまでもディーゼル機関の補助装置なので、AIP機関をメインにずっと行動し続けることはありません。ではどのような時に使うのでしょうか。それは、海底深くに身を潜めている時です。

海上自衛隊は、敵潜水艦の行動を探知するべく、日本の近海に潜んでいます。もし、敵潜水艦が近づいてきた場合、ディーゼル機関を停止させて、補助動力装置に切り替えます。ここで海上自衛隊の潜水艦は、ほぼ無音状態になります。視界も電波もさえぎられる水中、敵は音を探知しながら進んできますが、音を発しないこちらの姿を探知することは、ほとんどできないと言います。まるで、ニンジャの様にその姿を隠すことができるのが、通常動力潜水艦艦の強みです。

専守防衛を掲げる日本の場合、原子力潜水艦よりも通常動力潜水艦の方が圧倒的に有利に戦うことができるのです。タイ海軍でも、通常型潜水艦の方が圧倒的に有利なので、通常型潜水艦の購入を目指したのでしょう。

呉の潜水艦基地に向かう日本のそうりゅう型潜水艦

兵庫県神戸市の三菱重工業神戸工場で今年の3月5日、海上自衛隊の新潜水艦「おうりゅう」の引き渡し式が開かれました。海自の主力潜水艦「そうりゅう型」の11番艦で、潜水艦の推進力としてリチウムイオン蓄電池搭載の通常動力型潜水艦としては世界初めてとなります。

そうりゅう型11番艦のおうりゅうからは、前述のスターリングエンジンを廃止した。鉛電池に替えて、GSユアサが開発したリチウムイオン蓄電池を搭載する。

リチウムイオン電池技術を採用し、ディーゼルエンジンを使う通常動力型潜水艦は、実は日本が世界で初めてだ。この点で、おうりゅうは日本の最新技術の結晶と言える。リチウムイオン電池の蓄電量は鉛酸電池の2倍以上といわれ、水中航行能力が高くなり、潜航時間も大幅に延ばすことができる。さらに忘れてならないのは、静寂性も増すということです。

この静寂性は世界でも群を抜いているというか、おそらく世界一です。ただし、潜水艦に関しては、世界各国が詳しいことは秘密にしているため公式の資料からは伺い知ることはできませんが、日本の工作技術が世界一ということや、リチュウムイオン電池で推進することから、ほとんど無音であり、おそらく世界で最も静寂性に優れていると言って良いでしょう。

さらに、中国の対潜哨戒能力が低いこともあいまって、日本の潜水艦を中国側は探知することができません。これは、何を意味するかといえば、日本の潜水艦は中国に探知されることなく、あらゆる海域を航行でき、いつでも中国の艦艇を撃沈できるということです。

実際、日米の潜水艦は、模擬訓練で何度も中国の空母「遼寧」をはじめあらゆる艦艇を模擬攻撃して、撃沈に成功しているといわれています。

一方中国の通常潜水艦は、日本の通常潜水艦と比較すると、はるかに静寂性で劣っているため日本側にすぐに探知されてしまいます。

たとえば、今年6月、奄美大島周辺の接続水域を中国の潜水艦が航行という出来事がありましたが、これは日本側が探知できたからこそ、このような発表をしたということです。

私ははおらくこの時の中国の潜水艦は、中国では静寂性にすくれた最新の通常型だったのだと思います。中国側としては、意図的に日本の接続海域を航行させて、日本側が探知できるのか、探知できるとしてどのタイミングで探知できるのかなど、いろいろ試したのでしょう。

その結果、すぐに発見されてしまったということです。しかし、発見できるということは、日本側が優位にたっているということです。発見できなければ、大変なことです。潜水艦を探知した情報に関しては、探知能力にもかかわることなので、通常は発表しないことが多いのですが、探知能力に自信のある日本側はあえて発表したのでしょう。

日本の潜水艦は、中国に探知されないことから、南シナ海や東シナ海の海域を自由に航行していることでしよう。もしかすると台湾海峡や黄海も航行してるかもしれません。ただし、これは軍事機密なので、たとえそうであったにしても公表はされません。しかし、中国側がこれを発見した場合は、少なくとも人民日報などでは報道されるはずですが、未だにそのような発表はありません。

やはり、中国の対潜哨戒能力は未だに劣っているということだと思います。尖閣付近で中国艦艇が傍若無人な真似を繰り返していますが、未だに尖閣を奪取できないでいるのは、このような事情があるからと思います。中国が尖閣を奪取しようとすると、東シナ海に潜んでいる日本の潜水艦から攻撃を受ける可能性がありますし、中国にはそれを排除する術はないからです。

このようなことを考えると、やはりタイは日本から潜水艦を購入すべきでしょう。もしそうなれば、タイは中国側から補足されない潜水艦を手にいれることになり、軍事バランスが崩れ
タイにとってかなり有利になります。中国だけでなく、周辺諸国ににらみを利かすことができます。

タイが中国の潜水艦を購入した場合は、中国の潜水艦に装備されている電子機器には、バックドアが隠されていて、様々な情報を中国側に伝えるだけではなく、タイが中国に敵対する行動をとった場合には、電子機器を無効にされたり、潜水艦自体に何らかの損傷を与え、航行できなくなるすることさえ、想定されます。

さらには、現在は米中冷戦の真っ只中です。そのような最中には、中国に利するような行動をとれば、米国に制裁されかねません。そのようなことは、タイも避けたいでしょう。

おうりゅうに続く、そうりゅう型の最終艦の12番艦となるのが「とうりゅう」です。2019年11月6日にその命名・進水式が川崎重工業神戸造船所で行われました。

海上自衛隊は、そうりゅう型の後継艦として、今後は新型のソナーシステムを装備して探知能力などが向上した新型潜水艦(3000トン型)を配備します。海上幕僚監部広報室によると、三菱重工業神戸造船所でその1番艦、川崎重工業神戸造船所でその2番艦がそれぞれすでに建造中です。2019年度予算ではその3番艦建造費として698億円、2020年度予算ではその4番艦建造費として702億円がそれぞれ計上されています。

日本の潜水艦は三菱重工業神戸造船所と川崎重工業神戸造船所が隔年で交互に建造しています。

海自は、おうりゅうの就役で護衛艦48隻、潜水艦20隻の体制を整えたことになります。そうして、2018年12月に閣議決定された新たな防衛大綱に基づき、これを護衛艦54隻、潜水艦22隻に増勢することにしています。海自7隻目のイージス艦となる護衛艦「まや」は今年3月19日に中に就役しました。

米国が通常型潜水艦を作らなくなってから、日本の通常型潜水艦は、世界一の水準になったといえるでしょう。ただし、この潜水艦は日本の生命線でもあります。中国が未だ尖閣を奪取できないことや、未だ第二・第三列島線はおろか、第一列島線すら確保できないのは、日本の潜水艦の優位性ならびに日本の哨戒能力の優位性が保たれているからです。この優位性はこれからも、死守すべきです。

タイが要望すれば、日本は日本の安全保障のためにも、タイに潜水艦を売るべきとは思いますが、航行方法や他の操艦方法は、教えるにしても、潜水艦の根幹部部はブラックボックスにしておき、航行に関わるような重要な部分の修理は日本側が行うようにすべきです。その条件のもとで、タイに販売すべものと思います。

なお、日本が潜水艦をタイに販売できれば、財政が潤うなどと考える人もいるかもしれませんが、コロナ禍で経済が停滞している現在、日本がまともな減税など、まともな財政政策や、制限なしの金融緩和策等の経済政策をとれば、タイに潜水艦を数隻売るよりも、はるかに経済が潤います。

潜水艦を数席売ったくらいでは、日本の経済の規模からいえば、焼け石に水にすぎません。やはり、潜水艦を売る売らないは、日本の安全保障を第一に考えるべきです。タイに日本の潜水艦が配備されれば、タイだけではなく日本にとっても安全保障上好ましいというなら、販売すべきです。

コロナ以前に、アウトバウンド消費が脚光を浴びていましたが、それは全体からみれば、ほんのわずかのものでした。わずかのアウトバウンドをあてにして、中国などに媚びを売るようなまねはすべきではありません。潜水艦のタイへの販売も同じことです。

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2020年9月2日水曜日

台湾接近の米国がサラミ戦術で打砕く「一つの中国」―【私の論評】米国のサラミ戦術のサラミは、中華サラミよりもぶ厚い(゚д゚)!

台湾接近の米国がサラミ戦術で打砕く「一つの中国」

じわじわと台湾支援を増強するトランプ政権

台湾を訪問し中華民国総統府でスピーチする米国の
                                       アレックス・アザー厚生長官(2020年8月10日)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 米国政府の台湾への接近が顕著となってきた。台湾への武器売却、米国政府閣僚の訪問、米台自由貿易構想の前進など、トランプ政権や議会の最近の措置はいずれも中国政府の激しい反発を招いている。

 米国の一連のこうした動きは、米中関係の基本を長年、規制してきた「一つの中国」の原則を放棄する展望さえもにじませる。米国はついに「一つの中国」原則を切り捨てるのだろうか。

「一つの中国」原則に縛られないトランプ政権

 米中両国は1979年の国交回復以来、米国は中国側の「一つの中国」原則を支持する立場をとってきた。米国は中華人民共和国を「中国の唯一の合法政権とみなす」という趣旨である。「一つの中国」原則に厳密に従えば、台湾、つまり中華民国は中華人民共和国の一省に過ぎず、政府扱いはできないことになる。米国の歴代政権はこの原則をほぼ忠実に守ってきた。

 しかしトランプ大統領は、就任直前に台湾の蔡英文総統と直接会話した際、「中国が貿易面での合意を守らない以上、米国がなぜ『一つの中国』の原則に縛られねばならないのか」という疑問を呈した。また、それ以降の一連の公式声明でも、トランプ政権は「我々が解釈する『一つの中国』原則」という表現で、同原則に対する米側の解釈は中国側とは必ずしも同一ではないという点を明解にしてきた。

 実際にトランプ政権の最近の言動は、中国側の唱える「一つの中国」原則に明らかに違反しかねない点が多くなった。たとえば、最近米国は以下のような動きを見せている。いずれも中国政府が反対する動きである。

【米国の政府高官が台湾を訪問】米国政府のアレックス・アザー厚生長官は8月に台湾を訪問して蔡英文総統と会談した。この閣僚訪問は、トランプ大統領が議会の法案可決を受けて施行した「台湾旅行法」の結果でもあった。

【台湾に武器を売却】中国政府の全面的な反対を押し切り、トランプ政権は昨年(2019年)から今年にかけてF16戦闘機66機、エイブラムス型戦車108台を台湾に売却した。さらに高性能の魚雷1億8000万ドル相当の売却を決めている。

【台湾との自由貿易協定に前向きな姿勢】米台間の自由貿易協定は台湾側が年来、希望してきたが、米側の歴代政権は中国への懸念などから対応しなかった。この構想にトランプ政権は前向きな姿勢をみせるようになった。とくに現在の米国議会には協定を推進する声が強くなった。

【米軍が台湾支援へ】米国海軍の艦艇が台湾海峡を頻繁に航行することにより、中国軍への抑止の姿勢を明示するようになった。米空軍の戦闘機なども台湾領空周辺での飛行頻度を増して、中国空軍への牽制を示すようになった。

【米国政府高官が台湾支援を表明】トランプ政権のポンペオ国務長官やポッティンジャー大統領補佐官が台湾の民主主義を礼賛し、米台連帯を強調するようになった。すでに辞任したボルトン大統領補佐官は政権外で、台湾政府を外交承認することまで唱えている。

【米国の「台湾防衛」明確化への動き】米国政府は「台湾関係法」により、防衛用の兵器を売却する形で台湾防衛を支援してきた。だが台湾が中国から武力攻撃を受けた際の対応は明確に定めていない。その曖昧な支援を「確実な台湾防衛支援」へ変えようという提案がトランプ政権内外で高まってきた。

 以上のような動きは、トランプ政権が議会の了解を得て長年の「一つの中国」原則を放棄する方向へと進む可能性を示しているともいえる。

 トランプ政権はまだその種の決定的な動きをとってはいない。しかし現在の米国では、とくに中国政府が香港に関する「一国二制度」の国際誓約を破ったことへの非難が高まっている。その動きがトランプ政権の台湾政策変更という可能性を生み出しつつあるというわけだ。

米国が実行している「サラミ戦術」

 トランプ政権の「一つの中国」原則への現在の態度について、中国の政治動向や米中関係の動きに詳しい「戦略予算評価センター(CSBA)」のトシ・ヨシハラ上級研究員は次のような分析を語っている。

 「現在、トランプ政権は台湾政策として『一つの中国』原則をサラミのように切り削いでいるといえる。その原則の実質を少しずつ切り落として、なくしていこうというわけだ。ただし一気に現行の政策を除去するわけではないので、中国は決定的な対抗措置をとることはできない。しかし米側の除去策は、少しずつにせよ中国側に不満やいらだちを生じさせるに足る動きだといえる。だからこのサラミ戦術はきわめて有効だろう」

 ヨシハラ氏の以上の見解は、控えめながら、トランプ政権がもはや従来の「一つの中国」政策は守らず、台湾への支援を着実に増していく流れを明示したといえる。米台関係、そして米中関係はそれぞれの根幹部分で決定的に変化していくことになりそうだ。

【私の論評】米国のサラミ戦術のサラミは、中華サラミよりもぶ厚い(゚д゚)!

中国の得意とするサラミ戦術とはどのようなものなのか、ここで振り返っておきます。これについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国、印北東州で道路建設 インド側反発「インフラ整備で領有権主張する常套手段」―【私の論評】中華サラミ戦術には逆サラミ戦術で対抗せよ(゚д゚)!

この記事よりサラミ戦術の事例を引用します。

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むかしむかし、小さな駄菓子屋を一人できりもりしているばあさんがいました。その駄菓子屋は広い道路に面していて近くに中学校もあったのですが、売り上げは思わしくなくばあさんは質素な暮らしを強いられていました。 
その中学校は田舎の中学校のため、バスで通学している学生も多かったのです。バス停はばあさんの店から十メートルほど離れたところにあり、登下校の時間になると学生たちで賑わっています。あの学生たちが店に来てくれれば……。そう考えたばあさんは一計を案じました。その日から、毎日夜になるとこっそりとバス停を店の方向に動かしたのです。バレないように、一日に五ミリずつ。 
そして数年後。バス停はばあさんの店の真ん前に移動し、店はバス待ちの学生たちで賑わうようになった、といいます。
この話は、本当なのかどうかはわかりませんが、何かを一気に動かすと多くの人々に気付かれるのですが毎日少しずつ動かしていると意外とバレないものなのです。カツラも同じです。ある日突然、急激に髪の毛が増えるとこれは絶対にカツラだとバレます。だから少しずつ植毛していき、不自然にならないように増やしていくのです。

それはともかく、この現象はやはり人間の認識能力の盲点を突いたものでしょう。大脳の空間識野は、特に急激な変化、すなわち微分情報を抽出するように働きます。それゆえ、微分量が少ない緩やかな変化は認識されにくくなっているのです。

なぜこのような働きをするようになったのかは、進化論で簡単に説明がつきます。ある動物の認識する外界は、動くものと動かないものに大別されます。動かないものというのは、大地・山・樹木などです。これらはその動物にとって、友好的ではないが敵対的でもありません。中立なのです。ゆえに、特殊な場合をのぞいてはこれらの動かないものに注意する必要はないです。

これに対して動くものは要注意です。動くものは、さらに三種類に分けられます。すなわち、敵・餌・同種の異性です。敵からは逃げねばならぬし、餌と同種の異性は追いかけねばならないです。これらを素早く発見することは、生きていくためには重要な能力です。したがって、動くもの、すなわち微分量が大きいものを認識する能力が進化の過程で身についたのでしょう。



これと、似たような話で、「サラミ戦術」というのがあります。サラミ戦術(サラミせんじゅつ、ハンガリー語: szalámitaktika [ˈsɒlɑ̈ːmitɒktikɒ] サラーミタクティカ)とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法です。 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれます。

"
中国のサラミ戦術というと、やはり南シナ海の中国による違法支配が筆頭にあげられるでしょう。中国は、1980年代から最初に南シナ海の領有権を主張し、その後に南シナ海の浅瀬に、ほんの数人しか住めないような掘っ立て小屋を建てました。そうして、その掘っ立て小屋に交代で、中国人を住まわせ、実行支配の準備にとりかかりました。

その頃の中国は、現在のように大規模な埋め立ての技術もありませんでした。だからできるのはそのくらいだったのです。それでも、中国は周辺諸国の様子を探りつつ、掘っ立て小屋の数を増やすとか、掘っ建て小屋の規模を大きくしていきました。

この間、無論フイリピンやベトナムなどの南シナ海の周辺国は、これに抗議をしたのですが、中国は艦艇を送り込むなどして南シナ海の掘っ立て小屋を守り抜きました。

南シナ海の中国構築物

そうして、このくらいの規模だと、米国をはじめとする先進国も、これに強く非難をしても、軍事的な手段を講じるということはしませんでした。先進国としては、中国が豊かになれば、自分たちと似た体制になり、もっとまともになるだろうと考えこれを放置しました。それに中国の大きな市場に目がくらみ、中国と大きなビジネスができることに期待し、南シナ海の中国の無法を放置しました。

その後も中国は南シナ海への進出を継続し、最初は掘っ立て小屋だった構築物がだんだんと手のこんだものになっていきました。

そうして、2015年5月21日、米CNNテレビは南シナ海上空を飛行する米海軍P8哨戒機に同乗取材して中国によるサンゴ礁(環礁)埋め立ての様子を放映し、全世界の注目を集めました。

これは9日後、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)における米国防長官による埋め立て即時中止要求と中国人民解放軍参謀副総長の強固な反論の応酬へと続き、米中関係緊張に発展しました。

また6月8日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)首脳宣言には「威嚇、強制又は武力の行使、大規模な埋立てを含む現状の変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対」という文言が盛り込まれ、本件に対する国際社会の厳しい反応を中国に突き付けました。

この頃になってはじめて、米国などの世界の国々が、中国の南シナ海の違法支配に関して、脅威を感じるようになりました。

2016年には、国際司法裁判所が中国の南シナ海支配には、何の根拠もないと裁定しました。しかし、その後も中国は、退く気配をみせず、埋めたてた緩衝を軍事基地にするなどことを強行しました。

さて、冒頭の記事では、米国がこのサラミ戦術を取り始めて、成功していることを指摘しています。そうして、これは有効だと思います。

先にあげたこのブログの記事でも、「逆サラミ戦術」を提唱しました。この記事より、「逆サラミ戦術」に相当する部分を以下に引用します。
私はサラミ戦略に対しては、「逆サラミ戦略」という戦略を採用すべきだと思います。 それは、さきほどのバス停を動かした婆さんのたとえでいえば、バス停が動いたと認識した段階で、それを元に戻すのです。元に戻すにしても、いきなり元の位置に戻すというのではなく、これも一度に5mm程度を戻すのです。 
これは、婆さんが毎日5mm動かしているとすると、ある時点で、婆さんが日々5mm移動しても、バス停は全く動かなくなることを意味します。そうすると婆さんは、動かしても無駄だと思うようになり、諦めてしまいます。 
諦めた後でも、毎日5mmずつ動かすのです。そうして、元の場所に戻ったら動かすのをやめるのです。このやり方を「逆サラミ戦略」とでも名付けたいと思います。
このように実行していけば、中国も米国が台湾を支援することに非難はするでしょうが、逆サラミ的にやられると、非難はしてもすぐに直接何らかの手段に打って出るということはできないでしょう。何か極端なことをすれば、世界中の国々が中国を避難し、米国は、さらに中国に対する制裁を強化することになるだけでしょう。

米国は、これからもサラミ戦術的に、台湾を支援したり、南シナ海の周辺国を支援していくことでしょう。

ただ、米国と中国のサラミ戦術には違いもあります。中国が南シナ海でサラミ戦術を始めたときには、軍事力や経済力や技術力でも、米国にはおよびもつきませんてじた。だから、雄大な戦略はあったにしても、戦術はサラミ戦術を実行するしかなかったのです。

そのサラミ戦術も、毎年ほんのわずかの、本当に薄い透けて裏がみえてしまうようなペラペラのサラミで実行するしかなかったのです。だかこそ、南シナ海を現在のレベルにもっていくのに何十年もかかったのです。

しかし、米国は違います。今でも米国は世界唯一の超大国であり、軍事力は中国などより群を抜いて世界一であり、金融支配力でも群を抜いて世界一であり、その他の技術等も世界一です。

だから、同じサラミ戦術をとるにしても、薄い透けて裏がみえてしまうようなペラペラのサラミで実行する必要はなく、かなり厚めのサラミスライスで実行することができます。

中国が南シナ海を今のレベルまで、違法支配するまでに必要とした年月は、数十年でしたが、米国がこれを無効化するには、数年から長くて10年で十分でしょう。

中国が南シナ海の違法支配を現在のレベルまでに持っていったサラミスライスは数も種類も限られたたので、数十年もかかったのですが、関税や、金融制裁、軍事力、様々な技術の遮断、その他、ありとあらゆる種類の分厚いサラミスライスを駆使できます。

特に軍事力では、日米に潜水艦はステルス性に優れ、中国側に発見されずに、南シナ海の海を自由に航行できますが、中国の潜水艦はステルス性でかなり劣るので、日米はこれを簡単に補足できます。米国などの潜水艦で、南シナ海の中国の緩衝埋立地を包囲してしまえば、中国は手も足も出ません。

南シナ海で、米国は中国に負けるなどと、あらゆる屁理屈をつけて述べている軍事評論家もいますが、そのような人に、「米国は南シナ海では潜水艦を運用しないのですか」と質問してみましたが、未だに返事がかえってきません。私は、米国は空母なみの破壊力のある潜水艦を米軍が使わないということは、ありえないと思います。

そもそも、米国の戦略化ルトワック氏は、中国の南シナ海の軍事基地は、象徴的なものに過ぎず、米国が本気になれば、5分で吹き飛ばせるさ指摘しています。

台湾も、南シナ海や、東シナ海でも、中国は米国の分厚いサラミ戦術で、いずれ八方塞がりになるでしょう。

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中国、弾道ミサイル4発発射で南シナ海が戦場に…米国に“先に手を出した”代償―【私の論評】中国には、かつての北朝鮮のように、ミサイルを発射しつつ米国の様子をうかがい、あわよくば取引をしようとする暇もない(゚д゚)!

2020年9月1日火曜日

石破氏、自民党内でこれだけ嫌われるワケ 「後ろから鉄砲を撃つ」「裏切り者」「言行不一致」―【私の論評】石破氏だけは、絶対に日本の総理大臣にしてはいけないその理由(゚д゚)!


世論調査では人気が高い石破氏だが…

安倍晋三首相の後継を選ぶ自民党総裁選で、石破茂元幹事長(63、石破派19人)が劣勢に立たされている。報道各社の世論調査では、「ポスト安倍」に期待する人物としてトップに名前が挙がるが、党内の評判・評判は違うようだ。どうやら、「自民党離党の過去」「派閥結成の経緯」「後ろから鉄砲を撃つような言動」が影響しているようだ。

 石破氏は4度目の総裁選挑戦に並々ならぬ意欲を見せて、テレビやラジオに頻繁に登場している。だが、党内では孤立気味だ。なぜ、これほど嫌われているのか。

 まず、露骨に「倒閣」に動いた過去が大きい。

 石破氏は1993年、宮沢喜一内閣の不信任案に賛成して離党し、「政界の壊し屋」こと小沢一郎衆院議員と行動をともにした。このため、党内には、「党が苦しい時に出ていった裏切り者」との声が根強い。

 復党後の2009年には、麻生太郎内閣の農水相でありながら、与謝野馨元財務相と官邸に乗り込み、麻生氏に退陣を迫った。寝首をかきに来た石破氏に、麻生氏らはいまも不信感を募らせている。

 言行不一致も指摘される。

 安倍内閣の幹事長時代、「派閥政治を解消する」と言いながら、15年には自らの派閥を立ち上げて、党内であきれられた。

 発言・発信内容が、疑心暗鬼を生んでいる面もありそうだ。

 昨年8月23日付のブログでは、韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた背景について、「日本が敗戦後、戦争責任と正面から向き合ってこなかったことが問題の根底にある」と発信して話題となった。党内で疑問視されただけでなく、ネット上では「鳩山由紀夫元首相とソックリだ」などと批判された。

 今年7月2日の共同通信加盟社論説研究会での講演では、安倍政権の「米軍普天間飛行場の危険性除去には、名護市辺野古への移設が唯一の解決策」とする方針に、「これしかない、とにかく進めるということだけが解決策だとは思わない」と疑義を示した。

 左派野党やメディアと重なる発言内容が、沖縄や野党支持者の評価を得た可能性はある。

 ただ、中国の軍事的覇権拡大が強まるなか、日本の安全保障のためにも同盟国・米国との約束を重視する自民党主流派とは距離を広げたようだ。

【私の論評】石破氏だけは、絶対に日本の総理大臣にしてはいけないその理由(゚д゚)!

石破氏が、特に保守派議員に蛇蝎のごとく嫌われるにはわけがあります。このブログでは、2013年( 平成15年 自民党総裁選の時期)に、故渡部昇一先生が石破氏のことを指摘した内容を掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
石破氏、ポスト安倍狙う“秘策” 党総裁選改革案は「ゲルマンダー」―【私の論評】安部総裁の本来の勝負は平成15年の自民党総裁選!ここで石破総裁が誕生すれば「戦後体制からの脱却」は遠のき、失われた40年が始まる!(◎_◎;)

虎視眈々と自民党総裁の椅子をうかがう石破幹事長
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に少し長いですが、引用します。

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雑誌「2008年WILL6月号」で渡部昇一氏が石破大臣を国賊だと批判していました。

石破氏の中国の新聞に載せられたインタビュー記事は衝撃的であり、この件について当時政府が何も動かなかったことも驚愕です。中国の情報工作はますます進み、当時の石破大臣も篭絡されたのではないでしょうか?だとすれば、末恐ろしいことです。

以下にこの渡辺昇一氏の記事の一部を引用します。

故渡部昇一氏
石破大臣の国賊行為を叱る
渡部昇一
中国共産党の新聞「世界新聞報」(1/29)に駐日記者が石破茂防衛大臣の執務室でインタビューした記事を載せた。 
【石破防衛相の発言】 
●私は防衛庁長官時代にも靖国神社を参拝したことがない。第二次大戦の時に日本の戦争指導者たちは、何も知らない国民を戦線に駆り出し、間違った戦争をした。だから私は靖国神社に参拝しない、あの戦争は間違いだ、多くの国民は被害者だ。 
●日本には南京大虐殺を否定する人がいる。30万人も殺されていないから南京大虐殺そのものが存在しないという。何人が死んだかと大虐殺があったかは別問題だ 
●日本には慰安婦についていろいろな見解があるが、日本軍が関与していたことは間違いない。 
●日本人が大東亜共栄圏の建設を主張したことは、侵略戦争に対する一種の詭弁だ。 
●(中国は日本に対する脅威であるから対中防衛を強化せよという人たちは)何の分析もしないで、中国は日本に対する脅威だと騒いでいる。 
●日本は中国に謝罪するべきだ。
これではまるで稚拙なサヨク学生の言い草ではないか。ギルト・インフォメーションに基づく戦後自虐教育の落とし子そのものである。 
これが事実だとすれば石破茂防衛大臣に対する認識を改めねばならない。 
「WILL」編集部が石破茂防衛大臣に確認したところ、事務所から次の回答が来たという。
問 1月29日付け「世界新聞報」に石破防衛大臣の執務室での独占取材内容が掲載されているが、この取材は実際に受けたものか。 
答 実際に受けたものです。 
問 いつの時点で取材を受けたのか。 
答 平成19年11月21日(水)に取材受けいたしました。 
問 掲載された内容は、石破防衛大臣が話した事実に即しているのか。 
答 インタビューを先方が記事にまとめたものですので、事実に即していないと言うほどではありませんが、事実そのままでもありません。 
問 記事が事実に即していない場合、それに対してなんらかの対処をされたか。 
答 前の答えの通り、どのマスメディアでも発言を加工することはありますので、特別対処というほどのことはしておりません。 
いやはや、恬として恥じない石破氏はアッパレ! 
しかし、この大臣の下で働く自衛隊のみなさんの心情を考えると哀れである。 
その著書「国防」を当ブログでも紹介し、軍隊でないために行動基準がネガティブリストではないこと、軍法会議がないこと、NTP体制は「核のアパルトヘイト」だという発言を好意的に取り上げたが、所詮は単なる「軍事オタク」で国家観も歴史観も持ち合わせていないことが判明した。 
ブッシュ(父)大統領がハワイ在住の日系人の式典で「原爆投下を後悔していない
(I am not sorry)」と発言したことについて、渡部氏はいう。 
「他国に簡単に謝罪するような人間は、大統領はおろか、閣僚にも絶対になれません。それが諸外国では当たり前です」 
野党首相の村山富市は言うに及ばず、宮澤喜一、河野洋平、加藤紘一その他の謝罪外交を繰り返した政治家たちは「当たり前」ではないのである。 
石破茂防衛大臣もその一人として辞任を要求する。
"
これでは、保守派の議員から蛇蝎のごとく嫌われるのも納得がいきます。それに、この記事にも掲載しましたが、石破氏は典型的なマクロ経済音痴で、彼の経済政策は財務省のいいなりであり、もし彼が総理大臣になれば、消費税増税は当然のこと、コロナ復興税制を財務省とともに強力に推進することになるでしょう。そうすると、日本はまた超デフレ、超円高になるでしょう。

そうなると、日本の製造業は、かつてのように日本国内で製造するよりも、中国で製造して、それを日本国内に輸入したほうがコスト安ということで、日本の産業中国を助けるということになります。

金融政策にも無頓着ですから、石破氏のマクロ経済音痴に乗じて、日銀は金融引締に転じるかもしれません。そうなると、せっかくアベノミクスの金融緩和でかつてないほどに改善した雇用がまた悪化することになります。石破氏が総理大臣になれば、安倍内閣が成立してから、みられなくなった、年末の派遣村が恒例になることでしょう。

安倍政権が登場するまで毎年恒例となっていた「年越し派遣村」

ただし、これについては、自民党内も財務省の洗脳にかかって、多くの議員が石破氏と同じような考えを持っています。そうでないのは、安倍総理、菅氏、そうして最近の麻生氏と安倍総理の取り巻き等のごく一部の人間です。それにしても、マクロ経済音痴の政治家はともかくとして、市場関係者は石破氏が総理大臣になれば、とんでもないことになると考えています。

さらに、石破氏は昨年12月26日、CS-TBS番組の収録で、皇位継承のあり方について「皇室が途絶えることは国の本質が変わることだ。女系だからダメだという議論には賛同していない」と述べ、「女系天皇」の容認を含めて議論すべきだとの考えを示しています。
石破氏は収録後、記者団に「男系、女系ということだけで(皇位継承を)決めることなのか。お生まれになったときから、天皇として国民統合としての務めを果たすため、常人の及ばざる努力をしてこられた方がふさわしい」とも語りました。
石破氏は平成29年1月、上皇さまの譲位をめぐる法整備に関し「男系男子による皇位継承を基本としつつ、女系天皇の可能性もあえて追求し、早急に解を求めるべきだ」とする書面を党本部に提出していました。
これも、自民党の内の保守派をイラつかせる原因にもなったと思います。石破氏は、このブログにも最近掲載した記事でも指摘したように、女性天皇と女系天皇の区別もついていないようです。

これでは、自民党のほとんどの議員が、石破氏が総理大臣になることを反対するのも無理もありません。マスコミは別として、市場関係者も石破総理大臣は願い下げです。石破氏は、立憲民主党にでも行って、代表を目指してはいかがでしょうか。

金利を上げると、景気が良くなるとか、デフレが脱却していないにもかかわらず、最低賃金をあげるべきと主張している枝野氏と意気投合できるかもしれません。ちなみに、金融緩和をせずに最低賃金だけをあげた韓国では、最初から予想されたように失業率がさらに上がり深刻な状態になっています。

枝野氏は、しばらくの間立憲民主党の代表を勤めるでしょうが、枝野氏とて、いずれ代表を辞するときがきます。そのときには、石破氏が代表になれるかもしれません。あっ!そのときには、立憲民主党自体がなくなっているかもしれません。

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2020年8月31日月曜日

「破綻国家」一歩手前のレバノンを蝕む政治的腐敗―【私の論評】まず覚醒しないあなたから、レバノンにどうぞ(゚д゚)!

「破綻国家」一歩手前のレバノンを蝕む政治的腐敗

岡崎研究所

 レバノンでは、8月4日に発生したベイルートでの硝酸アンモニウムの大規模爆発を受けてディアブ首相が内閣総辞職に追い込まれるなど、混迷を深めている。レバノンの統治不全は極めて根が深い。8月12日付のフィナンシャル・タイムズ紙社説‘Lebanon needs a credible government of reform’は、レバノンの支配層が彼ら自身の将来が危機に瀕していることを自覚しない限り、レバノンは破綻国家に近づくだろうと述べているが、決して誇張とは言えない。


 レバノンの現状は悲惨である。現地通貨のレバノン・ポンドは2019年秋以降80%減価し、最新で約90%のハイパーインフレとなっている。2020年3月にはディアブ首相が外貨建て国債12億ドルをはじめとする同国の債務の支払い停止、すなわち債務不履行を宣言した。ベイルート首都圏で91万人が食料や生活必需品を十分入手できない状態で、その半数以上を占める子供たちが年内に餓死する可能性があるとのことである。

 このような状況の下、昨年10月政府が増税案を示したことに対し大規模なデモが発生し、その後ベイルートのみならずレバノン中で国民の抗議デモが頻発したが、8月4日ベイルートで起きた硝酸アンモニウムの大爆発で163人が死亡、6000人が負傷する事態を受け、8月8日には数千人規模のデモが起こり、ディアブ首相が内閣総辞職に追い込まれた。

 レバノンの危機の原因は政治の腐敗である。レバノンには18の宗派が存在し、大統領はマロン派、首相はスンニ派、国会議長はシーア派というように各宗派に政治権力が配分され、バランスの確保に意が用いられているが、各勢力が自身の地位に胡坐をかき、利権をむさぼり、腐敗が蔓延したと見られている。このような腐敗した制度が未曽有の経済危機に対処できないでおり、国民の怒りが反政府デモで爆発しているのが現状のようである。

 レバノンの経済危機に対処するためには外からの支援が必要であり、IMFや旧宗主国フランスと協議を行っているが、支援の条件として当然のことながら抜本的な経済改革が要請されており、レバノン政府は要請に応えられていない。レバノンが破綻国家にならないためには、危機の原因である腐敗した制度の改革に取り組まなければならないが、この制度はレバノン特有の事情に根差したものであるだけに、現状の変更はかなり難しい。

 しかし、レバノンを破綻国家から救う道は現状の変更しかない。上記のフィナンシャル・タイムズ社説は、「今回の内閣総辞職は最後のチャンスで、アウン大統領と議会が独立志向の首相の率いる新内閣の成立を急ぐべきである」と述べている。現状を変更するためには支配層が彼ら自身の将来が危機に瀕していることを自覚する必要があるが、果たして支配層がそのような危機感を持つことができるのか定かでない。もし持てなければレバノンが破綻国家となることは現実味を帯びてくる。

【私の論評】まず覚醒しないあなたから、レバノンにどうぞ(゚д゚)!

レバノンというと、あのカルロス・ゴーン被告のことを思い出してしまいます。ゴーンはいまどのような状況なのでしょうか。

カルロス・ゴーン被告

8月4日のレバノン・ベイルート港の化学物質の大爆発で、日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告(66)の妻キャロル容疑者(偽証容疑で逮捕状)がブラジル紙に自宅が損害を受けたと翌日語ったが、6日、フランスの各紙は、自宅が完全に破壊されたと報じました。

レバノンの情報筋によれば、ゴーン被告は首都ベイルートから避難し、郊外に身を寄せているといいます。逃亡後、豪邸で優雅に暮らしていたゴーン被告は、いわばホームレス状態に陥ってしまったのです。 

大爆発は、通貨危機や新型コロナウイルスによって混迷を深めてきたレバノン社会をさらに混乱させるでしょう。今回の爆発事故はレバノン政府の化学物質の管理の怠慢で起きたため、腐敗や無能で反発されてきた政府に対する信頼がいっそう低下したことは否めないです。

レバノン社会が混沌とする中で、高級住宅での生活という特権を失ったゴーン被告は心許ない生活を余儀なくされることでしょう。

あるフランス紙は、ゴーン被告は今回の事故で家を失った30万人のホームレスの1人と形容しています。爆発事故で政府が運営する小麦の倉庫も大損害を受け、レバノンの食料を輸入する能力も著しく低下しました。

ゴーン被告の食卓も寂しいものになっている可能性が高いです。レバノンでは、150万人のシリア難民と27万人のパレスチナ難民も居住しますが、難民の存在もレバノンの食料事情を逼迫させていくでしょう。新型コロナウイルスで手一杯の医療現場は、事故の負傷者たちでさらに膨らむことになり、ゴーン被告は十分な医療サービスも受けられない環境にいます。

レバノンでは対外債務が膨らんだために、現地通貨は昨年10月以来、その価値を80%下げました。レバノン経済は食料を含めて輸入に頼り、債務によって輸入経済を支えてきました。輸入経済に依存することは、レバノンの資本が海外に流れ、現地通貨が価値を下げることになる。 

海外在住のレバノン人企業家たちは、レバノンの銀行にドルで預金し、また湾岸のアラブ諸国も財政支援を行ってレバノン経済を支えてきました。しかし、腐敗など政府の失政や、政府の経済改革への取り組みが消極的なこともあって、海外在住の企業家たちがレバノンの銀行へのドル預金に熱心でなくなり、また欧米諸国の支援も滞っていきました。

こうしてレバノンでは外貨準備が不足し、対外債務が世界最悪とも言える状態になりました。銀行は預金者がドルで引き出せる額を制限したために、現地通貨で暮らす人々の生活をいっそう圧迫し、インフレはうなぎ上りとなりましたが、さらに政府は歳入不足を補うために、タバコやガソリン、さらにはワッツアップのようなSNS通話にも課税しようとしたことが昨年の10月以来連日繰り広げられるデモにつながりました。 

レバノンは18の宗派によって構成される宗派のモザイク社会ですが、1975年から90年まで続いた内戦を終らせるために、各宗派の代表的なファミリーに権力や利権が分配され、それが政治腐敗の要因となりました。イランやサウジアラビアなど外部からの支援もこうした特権層を潤わせ、それも貧しい階層の怒りや反発の背景となっています。 

爆発事故によって、政府への幻滅はいっそう深まり、政府を見捨てて海外在住のレバノン人を頼るなどの手段で大規模な国外移住が予想されるようになりました。海外在住の離散(ディアスポラ)レバノン人は本国の人口(約684万人:2018年)のおよそ3倍いると見積られていますが、国際指名手配を受けているゴーン被告は逮捕の恐れがあるために、この選択肢はありません。

 レバノンが無秩序や、さらに紛争状態になった場合、ゴーン被告のとりあえずの逃亡先は陸続きのトルコ、シリア、イスラエルの3国ぐらいしか考えられません。しかし、イスラエルとレバノンは戦争状態にあり、シリアは戦乱の渦中にあり、またISやアルカイダのような暴力的集団がどのようにゴーン被告を迎えるか定かではありません。

ゴーン被告はクリスチャンで、イスラムに訴える過激な集団から見れば異教徒で、日本で不正を働いたゴーン被告は腐敗のシンボルとも言え、彼らが最も嫌い、否定すべき対象です。さらにトルコはゴーン被告の逃亡を幇助したとして7人を逮捕した国で、ゴーン被告をかくまうことはありえないです。

 レバノンに残れば、混迷が続く政治社会の中で快適な生活は送れそうにもありません。今年終わりまでに1日4ドル以下で暮らす貧困層が50%に膨らむと予想されていますが、ゴーン被告のような不正を働いた特権階層は、彼らにとって憎悪の対象となり、危害が加えられることも否定できません。日本の司法制度から逃亡したゴーン被告は、レバノンで行き詰まり、八方塞がりになっています。

カルロス・ゴーンは今頃、治安が良く経済的にも恵まれた日本のことを思い出しているかもしれません。多くの日本人は、ゴーンのことを愚か者というかもしれません。

しかし、日本人の中には、ゴーンを馬鹿にできない人たちもいると思います。共同通信が同29、30日に行った世論調査 安倍内閣の支持率は55%で、7月の前回調査から12ポイント上がりました。歴代内閣の末期は支持率が低い場合がほとんどですが、安倍内閣は異例の高い支持率で終幕を迎えます。

退陣を決めたリーダーが翌日に20ポイントも支持率が上がるようなことは、日本では無論のこと、世界でも例がない、珍現象です。多分これは「安倍さんごめんね」という意思表示ではないかと思います。


どのような意思表示かといえば、以下のようなものです。

新型コロナウイルス対策では、死者が少なく、対策がうまくいっていると言ってもいいような気もするのだが、テレビのワイドショーなどて多くの人が「安倍さんはだめだ』と言い続けていたので、ついつい自分も「安倍が悪い」と思うようなった。それ以前の「もりかけ桜」でも同じように「安倍さんはだめだ」と思うようになってしまった。

しかし、考えてみれば、未だにテレビのワイドショーなどのコメンテーターは「疑惑」「忖度」など言いつつも結局のところ、ワイドショーのコメンテーターは、未だに決定的な証拠「物証」を挙げられないでいる、

安倍内閣は戦後の最小の長期政権になったのですが、最近では支持率が下がっていって安倍さんは苦しんで病気が再発してしまったと考えたのではないでしょうか。しかし、結果的に安倍さん辞任を表明しました。本当に申し訳なかったと反省し、その意思表示として、支持率上がっていると推察できます。

私自身は、安倍政権に関しては、このブログで以前から言っているように、過去20年では、経済でも安保でも、外交でも、最もパフォーマンスの良い政権だと思います。これは、野党が何を言おうが、ワイドショーのコメンテーターが何を言おうが、事実です。まともに、経済指標を見たり、様々な事実に当たれば、誰もが容易に理解できると思います。

安倍総理辞任表明という大きなショックが、このような人たちを覚醒させたのだと思います。カルロス・ゴーンもレバノンで大爆発事件がおこり、それどころか、食糧不足という大ショックに見舞われ、いくら金を持っていても、現状のレバンでは、それは全く無意味であることにいまさらながら気づき、覚醒したかもしれません。

ごうつくばりで、とにかく金を得るために、不正なことにまで手をつけてしまった自分を呪っていることでしょう。合法的なことで儲けた金で、日本など、多くの人々から尊敬され満ちたりた幸せな生活を送れたかもしれないと、今頃臍を噛んでいるに違いありません。

人間というものは、本当に幸せなときは、自分が幸せの絶頂にいることを意外と認識できなかったりするものです。日本のような国で、まともな政治が行われていると国民はそれが当たり前になってしまうのでしょう。レバノンのようになってしまってから初めてまともな政治の必要性を痛感するようになるのかもしれません。

これは、あくまで、私の推測であり、カルロス・ゴーン本人に聴いていなければ真実はわかりません。しかし、そのように考えるのが普通だと思います。もしそうでなければ、ゴーンはただの頭の悪い大馬鹿者です。

大ショックを受けないと、事実がみえない人たちは、ゴーンに限らず、日本でも大勢いるようです。日本では、ショックを受けて覚醒する人もいる一方、未だワイドショーなどのコメンテータの発言などを真に受けて、未だ覚醒しない人も大勢います。

無責任なワイドショーのコメンテーター
そういう人たちには、是非ともレバノンにいって、そこで1年でも生活していただきたいものです。そうすれば、本当の政治の腐敗とはどのようなものか、日本がいかに素晴らしい国であり、これを守りさらに良くしていくことが、価値あることと理解できるかもしれません。そこまでしても、覚醒しない人もいるかもしれませんが、確実に日本に逃げ帰るでしょう。

私はこのブログでも何度か述べたように、安倍総理の政策を是々非々でみており、そうしたことから、評価できる点は評価し、批判すべき点は批判してきました。そうした過程から、結論できるのは、安倍総理は現時点においては、日本を守りさらに良くしていることの価値を、最も理解する政治家だといえます。そうして、総理を辞した後でも、その道を歩んでいかれる方と確信しています。

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2020年8月30日日曜日

チェコ上院議長が台湾到着 90人の代表団、中国の反発必至―【私の論評】チェコは国をあげて「全体主義の防波堤」を目指すべき(゚д゚)!


    台湾北部の桃園国際空港に到着したチェコのビストルチル上院議長(中央)と
    出迎えた呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(右)=30日
東欧チェコのビストルチル上院議長を団長とし、地方首長や企業家、メディア関係者ら約90人で構成される訪問団が30日、政府専用機で台湾に到着した。台湾と外交関係を持たないチェコが中国の反対を押し切り、準国家元首級の要人が率いる代表団を台湾に派遣したのは初めて。国際社会での存在感を高めたい台湾にとっては大きな外交上の勝利といえるが、中国が反発するのは必至だ。

 30日午前、北部の桃園国際空港に到着したマスク姿の議長一行は、出迎えた台湾の呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(外相に相当)らと握手でなく腕を合わせてあいさつを交わした。台湾メディアによれば、訪問団は9月4日まで滞在。ビストルチル氏は1日に立法院(国会)で講演し、3日に蔡英文総統と会談する。4日には米国の対台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)とのフォーラムにも出席する。

 チェコ上院議長の訪台をめぐっては、ビストルチル氏の前任のクベラ氏が昨年に訪台を約束したが、中国大使館から脅迫され1月に急死した。ビストルチル氏は上院議長就任後、何度も「クベラ氏の遺志を引き継ぐ」と表明していた。

【私の論評】チェコは国をあげて「全体主義の防波堤」を目指すべき(゚д゚)!

チェコの憲法で大統領に次ぐ地位とされる上院議長のビストルチル氏、このほか訪問団は首都プラハのズデニェク・フジブ市長や上院議員ら約90人からなり、民主化を実現させた1989年の「ビロード革命」(1989年11月17日にチェコスロバキア社会主義共和国で勃発した、当時の共産党支配を倒した民主化革命。スロバキアでは静かな革命と呼ぶ)以降、最高レベルの訪問団とされます。9月3日には蔡総統と総統府(台北市)で会談する予定。ビストルチル氏は出発前のあいさつで訪台の目的について、民主主義を守る台湾への支持を示すためと語りました。

チェコのビストルチル上院議長(左、本人のツイッターから)とプラハのフジブ市長

新型コロナ対策のため、訪問団の参加者には搭乗前3日以内の陰性証明の提出を求めたほか、9月1日にはさらに検査を実施。滞在中は専用車を使用するなどして市民との接触を避けます。一行は同5日に帰国の途につきます。

欧州との外交をめぐっては、中国の王毅外交部長が25日~9月1日の日程でフランスなど5カ国を歴訪中です。台湾が外交関係を結ぶ国はバチカンのみとなる一方、中国は近年、巨大経済圏構想「一帯一路」を足掛かりに欧州で影響力を増しています。台湾側は外交関係のないチェコ代表団の受け入れをきっかけに、欧州諸国との連携を強化したい考えです。

今回の訪台には、今年1月に急死したチェコのヤロスラフ・クベラ前上院議長の夫人も加わっています。

クベラ氏は、中国の反対を押し切って今年2月に訪台する予定でしたが、1月に急死しました。生前、台湾行きを強行するならチェコ企業に報復するなどと中国大使館から脅迫されていた事実が地元メディアによって暴露されました。

中国はチェコを中・東欧諸国の玄関口として重視しています。加えて、チェコは欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)双方に加盟しているため、中国としてはチェコを足掛かりに西欧諸国に対する影響力を高めたいとの狙いもあるようです。

チェコ大統領 ゼマン氏

一方、チェコ側も2013年に親露的でもある、ゼマン氏が大統領に就任して以後、対中関係の強化を図ってきました。ゼマン氏は訪中を繰り返し、2015年に中国が戦争勝利70周年記念の軍事パレードを実施した際も、欧米諸国のほとんどが国家元首出席を見送る中、北京に赴いて、中国との親密ぶりをアピールしました。

翌年3月に中国の習近平国家主席がチェコを訪問した際には、首都プラハでデモ隊の動きを封じ込めて迎え入れるなど、最大限の配慮を見せました。

また、中国政府が「中国からの独立を狙う分裂主義者」と敵視するチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が同年10月にチェコを訪れ、副首相らと面会した際、ゼマン氏は直ちに、当時のソボトカ首相とともに「一つの中国」原則を支持する声明を出すほど神経を使っていました。

ゼマン政権による中国接近に警戒を強めたのがプラハのフジプ市長です。

プラハと北京は2016年に姉妹都市協定が締結されていました。フジプ氏が2018年11月に市長に就任すると、協定の中に「一つの中国」原則の順守を記す条項が含まれていたことに違和感を抱き、北京側にこの条項のみを削除するよう求めたのですが、北京側が受け入れなかったため、昨年10月、協定解消に踏み切りました。

一方、フジプ氏は昨年3月に訪台し、蔡英文総統らと会談するなど台湾に接近、今年1月13日には、今度はプラハ―台北間で姉妹都市協定を結びました。AFPによると、フジプ氏はその直後に、中国を「信頼できないパートナー」と非難したといいます。

フジプ氏は自身の信念として「市長として『民主主義と人権を尊重する道に戻る』という公約を果たすために取り組んでいます。それらはビロード革命(チェコスロバキアだった1989年12月に共産党体制崩壊をもたらした民主化革命)の価値観であり、現在、チェコ政府が無視しているものだ」と語っています。

加えてチェコでは今年1月、人気政治家だったクベラ氏が急死し、その妻が「夫の死は中国政府からの度重なる嫌がらせの結果だ」と主張した一件もありました。

チェコ企業団が19年10月、台湾を20年2月に訪問すると発表し、その団長を当時上院議長だったクベラ氏が務めることになりました。この訪台は結局コロナ禍により中止になりましたが、中国側は「一つの中国」原則に反するとして不快感を示し、再三にわたってチェコ側に取り消しを迫っていました。

現地報道によると、中国の張建敏・駐チェコ大使がゼマン大統領の秘書官に「訪台を阻止しなければ両国のビジネスに影響が出る」と圧力をかけたとされています。

夫人のヴェラ氏によると、クベラ氏が亡くなる3日前に中国大使から大晦日の夕食会に招待され、「非常に不快な非公開の会談」に参加しました。途中で、クベラ氏は別室に連れていかれ、戻ってきたときには夫人に中国大使館が用意した食事は絶対食べないように言ったといいます。

夫人は遺品整理の際に、チェコ大統領府と中国大使館が送りつけた2通の「脅迫状」を発見しました。内容は、台湾訪問をやめなければ、家族を危険に晒すというものでした。ヴェラ夫人は、娘と二人で恐怖に怯えたと述べ、これらの手紙がクベラ氏を死に至らせたと考えていると述べました。クベラ氏は亡くなる前の7日間、一言も発さず落ち込んでいたといいます。

ヴェラ夫人はまた、クベラ氏が台湾を訪問することに強いこだわりを持っていたと強調し、家族には「共産党の独裁時代にも、誰もクベラを止めることができなかった!今やチェコは民主主義国家だ。このような圧力に屈するものか!」と言っていたと明かしました。

ビストルチル現上院議議長氏は、「2通の脅迫状」という重大スキャンダルを受けて、ゼマン大統領に説明を求める書簡を3通送ったのですが、ゼマン大統領は議会からの質問と調査の要求を拒否していると述べました。


台湾メディアによると、ヴェラ氏は地元テレビに出演した際、「夫は中国政府に脅迫され、そのストレスが急死の引き金になった」との見方を示し、後任の上院議長となったビストシル氏やバビシュ首相は相次いで、張大使更迭を求める考えを示しました。

そのビストシル上院議長が6月9日、クベラ氏の計画を引き継いで今年8月30日~9月5日に企業団とともに訪台すると発表しました。ビストシル氏は右派野党・市民民主党所属で、「政府の外交方針が人権と自由を支持しないのなら、それを強調するのは議会の役目だ」と話しています。

中国は反中感情を和らげるため、新型コロナウイルスの感染防止を目指す「マスク外交」によって挽回を図っています。

チェコでは医療従事者のためのマスクや手袋などの個人用防護具が不足し、政権批判が高まっていたため、ゼマン政権は諸手を挙げて中国からの支援を歓迎しました。

中国から医療用品を運んできた航空機が今年3月、プラハの空港に到着すると、チェコの閣僚らが滑走路に並んだといいます。その後も中国からの物資が届けられ、ゼマン氏は「我々を助けてくれるのは中国だけだ」とリップサービスし、遠回しにEUを批判してみせたとされています。

クベラ氏の生前の願いをかなえるためとして夫人に同行を打診したのは団長のビストルチル氏。台湾訪問が民主主義、自由を守る決意の表れとして、チェコ上院で強く支持されている背景があったといいます。

メンバーは政治家や、学者、文化団体などで、40人余りの企業家も含まれます。いずれも民主主義の信奉者で、中国から言論の自由を制限されるなど、不条理な圧力をかけられた経験を持つ人もいるといいます。今回の交流を通じ、台湾の民主主義コミュニティーとの間に制度的な協力ネットワークが構築されることが期待されます。

訪台に当たっては、新型コロナウイルス対策として、往復ともチャーター便を利用し、ウイルス検査を出発前と台湾到着後の計2回受けることなどが求められました。これらの条件は、今月9日に訪台したアザー米厚生長官や、同日李登輝元総統の弔問のために台湾を日帰り訪問した日本の森喜朗元首相らと同じだといいます。

チェコ政府は、親中的ですが、チェコの憲法で大統領に次ぐ地位とされる上院議長のビストルチル氏をはじめ中国に対峙しようとする勢力が拡大しつつあるようです。

台湾は国をあげて中共の「全体主義の防波堤」になっていることは明らかです。米国は今後「全体主義への砦」としての台湾の存在の重要性を認識して軍事・経済的支援を強力に推進することになるでしょう。その幕開けが、先日のアザール長官の台湾訪問なのです。

チェコは地政学的にいって、東欧に属していおり、東欧は欧州では中国に最も近い位置に属しています。ロシアにも近いです。このチェコが「全体主義の防波堤」になれば、東西に全体主義に反対する勢力の橋頭堡が築けることになります。

今回のチェコの訪問団の訪台が、将来これに結びつく可能性は大きいと思います。

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