2023年11月10日金曜日

年内衆院解散見送りへ 支持率低迷、岸田首相「経済専心」―【私の論評】岸田首相、権力基盤維持のため従来の慣習破りを続けられるか(゚д゚)!

年内衆院解散見送りへ 支持率低迷、岸田首相「経済専心」

まとめ
  • 岸田首相は、年内の衆院解散・総選挙を見送る意向を固めた。
  • 内閣支持率の低迷を踏まえ、衆院選を戦う環境は整っていないと判断した。
  • 当面は信頼回復に向けて物価高対策などに全力を挙げ、年明け以降、解散のタイミングを改めて探る。
  • 首相は、9月に内閣改造・党役員人事を行い、10月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求し、所得税などの減税も打ち出したが、政権浮揚にはつながらず、10月の衆参2補欠選挙は1勝1敗に終わった。
  • 与党内では、次の解散のタイミングは24年度予算案成立後の来年4~6月との見方が出ている。
岸田首相


 岸田文雄首相は、年内の衆院解散・総選挙を見送る意向を固めた。

 内閣支持率の低迷を踏まえ、衆院選を戦う環境は整っていないと判断した。当面は信頼回復に向けて物価高対策などに全力を挙げ、年明け以降、解散のタイミングを改めて探る。

 首相は、年内の衆院解散の可能性を問われ、「まずは経済対策、先送りできない課題に一つ一つ、一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と表明した。

 首相は、9月に内閣改造・党役員人事を行い、10月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求し、所得税などの減税も打ち出した。

 しかし、政権浮揚にはつながらず、10月の衆参2補欠選挙は1勝1敗に終わった。内閣支持率が危険水域とされる2割台に落ち込む世論調査も相次いでいる。不祥事に伴う法務副大臣など政務三役の辞任が続き、与党内では早期解散は困難との見方が広がっていた。

 2023年度補正予算案の国会審議は11月末ごろまでかかる見込みで、その後は24年度予算案の編成作業が本格化する。首相は11月末からアラブ首長国連邦(UAE)で開かれる国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)への出席を検討。12月16~18日には東京で東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議を予定しており、政治日程の窮屈さも考慮したとみられる。

 与党内では、次の解散のタイミングは24年度予算案成立後の来年4~6月との見方が出ている。首相は来秋の党総裁選前に衆院選で勝利し、総裁選を無風で乗り切る戦略を含め、解散の機会を慎重に探る考えだ。

【私の論評】岸田首相、権力基盤維持のため従来の慣習破りを続けられるか(゚д゚)!

まとめ
  • 岸田首相は、自らの権力基盤を維持するために、従来の慣習をしばしば破っている。
  • その一例として、2022年8月に、幹事長を務めていた二階俊博氏を解任したことが挙げられる。
  • また、同月の閣僚人事では、非自民党議員を閣僚に任命するなど、異例の人事を行い、党内から反発を招いた。
  • さらに、自民党の過半数議席を背景に、野党の意見を無視して法案を成立させるなど、民主主義の根幹を揺るがすような行動も見られる。LGBT法案成立の過程では通常の自民党内での手続きを破った。
  • 岸田氏のこうした強権的な姿勢は、今後良い方向に出る可能性は現時点では否定しきれない。

日本政府には、為替特会など財源になるうる財源が豊富存在しています。特会などに積立などを活用すれば、50兆円くらいの財源を確保できます。様々な財源を有効活用するようにすれば、財源に煩わされることなく、所得税の減税や最終消費者への給付金など、景気刺激策を実施することができます。

日本政府の豊富な財源

減税と補助金の経済効果は実はマクロ的にみれば、ほとんど同じです。減税は可処分所得を増加させ、消費を促進します。補助金は企業の設備投資や雇用を促進します。どちらも景気刺激策としては有効です。

ただ、補助金の執行率が悪いです。なぜなら補助金は、事業者や団体に交付されることが多いからです。しかし、事業者や団体は、補助金を使って必ずしも新たな投資や雇用を増やすとは限らないです。また、補助金は、予算の一部が執行されないまま積み残されることもありがちです。

一方、減税は、可処分所得を直接増加させるため、執行率は100%になります。また、減税は、国民の消費意欲を高めるため、景気刺激策として効果的です。

それと、賃金に関して政労使会議で議論されていますが、この会議は、政府、労働組合、経営者団体の代表者が集まり、賃上げや雇用対策などを話し合うものです。しかし、これは政労使会議はセレモニーにすぎないです。実効性のある経済対策などはできません。

そんなことよりも、需給ギャップが埋まれば、企業は賃上げを自発的に行うというか、行わざるを得ない状況になります。需給ギャップ(15兆円から20兆円)を埋めるための景気刺激策が実施されれば、賃上げは自然に推進されることになります。

政労使会議で賃金は決められるものではありません。これは、厚生労働省が雇用の主務官庁でないことと同じようなものです。厚生労働省は失業率などの統計をまとめる官庁であって、日銀こそが雇用の主務官庁です。日銀が物価を数%あげる政策をすれば、日本では数百万人の雇用が発生します。ただ、労働投⼊ギャップを埋めるのは、厚生労働省が主務官庁といえるでしょう。

労働投⼊量の潜在労働投⼊量から の乖離で定義され、①就業率ギャップ、②労働⼒率ギャッ プ(労働⼒率のトレンドからの乖離)、③労働時間ギャッ プ(労働時間のトレンドからの乖離)を合計することによ って算出します。しかし、このギャップを埋めるのは雇用が存在しているから埋められるのであって、雇用そのものは中央銀行の金融政策によるものです。そうして、失業率が下がれば人手不足となり、賃金もそれにつれてあがるのです。

欧米では常識なのですが、このあたりが、日本ではなぜか認知されていません。だからこそ、政労使会議という実効性のないセレモニー的な会議が行われるのでしょう。

以上のように、日本政府は50兆円の財源を活用して、減税または最終消費者への給付金を実施すべきであり、これにより、可処分所得を増加させ、需給ギャップを埋め、賃上げを促進することができます。

何が言いたかったかといえば、岸田首相は本気で経済対策に専念しようすれば、間違いなく経済を良くできる状況にあるということです。ただ、それには、財務省の抵抗に抗う必要があります。

安倍元首相は、回顧録で、財務省について「国が滅びても、財政規律が保たれてさえいれば、満足なんです」「省益のためなら政権を倒すことも辞さない」などと批判していました。実際、財務省の抵抗は凄まじいものであり、歴代の総理大臣はこれに抗えなかったようです。

安倍総理が、消費税増税を二度延期したときには、一部のマスコミは「財務省の意向に逆らった初の首相」と報道したくらいです。

以上のような状況から岸田おろしが始まったという見解もあります。ただ、私自身は現状では安易岸田おろしはすべきではないと思います。なぜなら、自民党内で次の総理になりえる人物がおらず、今後、首相が変わるたびに、ますます自民党はリベラル色を強めていくことが予感されるからです。

たとえば、次の総裁として有望といわれる河野太郎氏関して、「河野太郎が総理大臣になると日本終了」という人たちもいます。彼らは、主に以下のような理由でそう考えていると考えられます。

・エネルギー政策
河野氏は脱原発派として知られており、原発ゼロを実現するためには、再生可能エネルギーの導入を急速に進める必要があると主張しています。しかし、再生可能エネルギーの導入にはコストや技術的な課題があり、また、安定した電力供給を維持するためには原発の役割も不可欠であるという意見もあります。そのため、河野氏が総理大臣になった場合、電力不足や電気料金の高騰などの問題が発生し、日本経済や国民生活に大きな影響を与えると懸念されています。

 ・外交政策

河野氏は外交においては、米国との同盟関係を重視し、中国の台頭に対抗する姿勢を強めるとしながら、中国との経済交流を重視する姿勢を繰り返し示してきました。2022年7月には、中国の習近平国家主席と会談し、経済協力や人文交流の拡大について話し合いました。また、2023年3月には、中国の王毅外相と会談し、日中関係の改善に向けた議論を行いました。

また、河野氏日中友好議員連盟に所属しています。日中友好議員連盟は、日中関係の友好と発展を目的とした議員連盟であり、親中的な議員が多く所属しています。また、河野家は中国でのファミリービジネスを問題視するむきもあります。現在、河野氏の母親である河野洋子氏が社長を務めています。河野洋子氏は、河野氏の政治活動を支えるとともに、中国での事業を継続的に拡大させています。
・政治姿勢
河野氏は政治家として、強烈な個性と発言で知られています。そのため、河野氏が総理大臣になった場合、国民の意見を十分に反映しない独善的な政治を進め、社会の分断をさらに深めるのではないかという懸念もあります。
もちろん、これらの懸念はあくまでも可能性であり、河野氏が総理大臣になったとしても、必ずしも日本が終了するわけではありません。しかし、河野氏の政治姿勢や政策に対する国民の理解や支持が得られなければ、日本が大きな混乱に陥る可能性は否定できません。

河野太郎氏

私は、今後日本の総理大臣が変わるたびに、自民党がさらにリベラル的な方向に流れていくのではないかと懸念しています。菅政権は、安倍政権を継承しましたが、それは安倍元総理が存命しており、菅氏は自分の持ち味を出すではなく継承することに重点を置いたからだと思います。それに文字通りの短期政権だったので、安倍路線を変えようもなかったからであると考えられます。

岸田政権も当初は、安倍路線を引き継ぐようにもみえましたが、二年目にして、随分とリベラル寄りになり、あろうことか、LGBT理解増進法を通常の自民党内の手続きを省き拙速に成立させてしまいました。そうして、財務省の意向を強く反映するようになりました。

リベラル派に傾いたことにより、自民党の保守岩盤支持層が離れていき、財務省の意向を反映するようになったことで、他の支持層も離れたのでしよう。このようなことが岸田政権の支持率が下がっていることの原因であると思われます。

これを巻き返すには、岸田首相はリベラル派から保守派への回帰を実現し、財務省の意向をはねのけ、まともな経済対策をすべきなのです。

これは、望み薄と見るむきもありますが、全くチャンスがないということはないと思います。

岸田首相は、自らの権力基盤を揺るがすものには、常識を破るような行動にでてきた過去があります。

たとえば、二階俊博氏を幹事長から追い出しました。岸田首相は、二階氏が党内の権力基盤を握っていることを懸念し、首相就任直後に幹事長を退任させることで、政権運営の主導権を握りました。これは、岸田首相が、自らの政治生命をかけて二階氏の退任を実現させたものです。これは、自民党内の権力闘争において、首相が自らの意志を貫くという、従来の常識を覆すものでした。

二階氏


岸田首相は、就任直後から、中国の海洋進出や人権問題に強く懸念を示してきました。また、中国への対抗を重視する米国との関係を強化し、日米同盟を強化する姿勢を打ち出しています。これは、従来の日本外交の常識である「中国との友好」を重視する出身派閥の宏池会等の姿勢から大きく転換したものです。特に、これに関してはほとんど評価されませんが、それは自民党内では特異といえる安倍元首相を比較の対象にしているのだと思います。自民党の大勢は、「中国との友好」を重視しています。

 岸田首相は、野党の合意を求めることなく法案を可決するために、国会での党の超大勢を何度も利用してきました。それどころかLGBT理解増進法案成立過程においては、自民党内の通常の手続きを省いてまで成立させました。これは、日本の民主主義を弱体化させているとの非難を浴びています。

岸田外相は、2027年までに日本の防衛予算をGDPの2%に引き上げると公約しました。これは、戦後日本の平和主義政策からの大きな転換となります。

これらは、岸田外相が自らの権力基盤を維持するために、良い悪いの価値判断は別にして、これまで考えられなかった規範を破ったほんの一例に過ぎないです。岸田首相が長期的にこのアプローチを維持できるかどうかはまだわからないです。

従来の常識を翻す人々 AI生成画像


一部のアナリストは、これらは、岸田外相が伝統を破ろうとするのは強さの表れであり、日本が直面する課題に対処するために必要なことだと考えているようです。また、岸田氏の行動が日本の民主主義や制度を弱体化させていると懸念する向きもあります。岸田首相のアプローチが長期的にどのような意味を持つのか、それを語るのは時期尚早かもしれません。

そうして、もうひとつ忘れてならないのが、来年の米大統領選挙です。現状ではトランプ氏が優勢です。選挙は水もので、どうなるかはわかりませんが、共和党が優勢であるのは間違いなく、トランプ氏もしくは他の共和党の候補が大統領になるのは確実だとみられます。そうなると、岸田政権は政策を転換せざるを得なくなります。そうなると、自民が保守派への揺り戻しされる可能性は高まると思います。

無論、総裁選は米大統領選の前に行われますが、その影響は選挙戦前から現れ始めるでしょうし、次期総裁が誰になろうとも、リベラル派に傾き続けるようなことはできないでしょう。

岸田首相は、自らの権力基盤を維持強化するために、リベラルに傾いた政権を保守派寄りに立て直したり、財務省に逆らってまともな経済対策を実行させる可能性は、いまのところはまだ完全に捨て去ることができない状況にあると思います。

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2023年11月9日木曜日

中国覇権が進む中、南太平洋へ重い腰を上げた米国―【私の論評】経済減速でリスクテイクを強める習近平、南太平洋への軍事進出の可能性(゚д゚)!

中国覇権が進む中、南太平洋へ重い腰を上げた米国

岡崎研究所

まとめ
  • 米政権は長らく南太平洋諸島国に無関心だったが、中国の南太平洋での活動が増加し、米国はこ最近の地域への関与を強化している。
  • 中国の南太平洋への経済投資や支援が増加しており、南太平洋諸国は中国との地域安全保障協定には消極的で、米国の関与を望んでいる。
  • 南太平洋諸国の主要な関心事は地球規模の気候変動への対処であり、米国の気候変動対策の支援が重要視されている。
  • 中国の海洋進出に対抗するため、日本は南太平洋への関与をさらに強化する必要がある。


 この記事は、中国との競争において、どの国や地域も無視できないとし、南太平洋諸国へのアメリカの関与が地域全体の安定にとって不可欠であることを強調しています。

 2023年10月17日のワシントン・ポストの社説によれば、米政権は長らく南太平洋諸島国に対して無関心だったが、中国の南太平洋での活動が増加し、その地域への米国の関与が強化されていると指摘している。米国は中国との競争において南太平洋諸国を無視すべきでない。

 米国はマーシャル諸島と軍事協定を締結し、クック諸島とニウエとの外交関係を確立した。また、ソロモン諸島とトンガに大使館を開設する計画も進行中だ。

 南太平洋諸島国への米国の関与が急増している背後には、中国の存在がある。中国はこの地域への経済投資を増加させ、新型コロナパンデミックの際にはワクチンや医療支援を提供した。ただし、南太平洋諸国は中国との地域安全保障協定には消極的で、米国の関与を望んでいるとされている。

 この地域の主要な関心事は、地球規模の気候変動への対処であり、海面上昇などの影響が既に現れている。米国のインフラ構築と気候変動対策の支援が評価されている。

 最終的に、この記事は、中国との競争において、米国や南米を含むどの国や地域も無視できないことを強調し、南太平洋諸国への米国の関与の重要性を強調している。

 南太平洋は、日本にとって重要な地域である。中国が影響力を拡大しようとしているため、日本は島国への関与を強化していく必要がある。

 日本統治時代の歴史的つながりは、島国と日本の信頼関係の基礎となっている。日本は、ODAや人的交流を通じて、島国との協力を継続していく必要がある。

 日本は、島国にODAを拡大し、気候変動対策やインフラ整備を支援している。また、島国との間で、議員派遣や青年交流などの人的交流を活発化させている。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】経済減速でリスクテイクを強める習近平、南太平洋への軍事進出の可能性(゚д゚)!

まとめ
  • 中国の南太平洋への経済的投資は、近年伸びたものの、最近は減少している。
  • 習近平は、権力を維持するためには不安定な状況を意図的に作り出す人物であり、通常の民主国家の指導者像があてはまる人物ではない。
  • 習近平は、権力基盤を強化するため、軍や外交などの重要なポストを自分の側近で固めようとしている。
  • 中国経済の減速は、習近平のリスクテイクを抑制するのではなく促す可能性がある。
  • 習近平は、経済の低下を補う軍事力行使も辞さない可能性がある。

上の記事には、間違いとはっきりとはいえないものの、最近の状況を反映していない部分もあります。それは、「中国はこの地域への経済投資を増加させ」という部分です。

中国のこの地域の経済的投資に関して、以前このブログで以下のような内容を掲載したことがあります。
  • 中国の太平洋への援助は2008年から提供され、16年にピークに達したが、その後減少し、現在では地域全体の援助総額の9%に過ぎず、オーストラリアやアジア開発銀行に次ぐ第3位となっている。この減少の背後には、太平洋諸国が中国への負債を抱え、中国資金への関心を失ったことが影響しており、米国もこの問題を懸念している。
  • さらに、中国の海外援助の減少は太平洋地域に限らず、特に新型コロナ流行後には大規模なインフラ整備や融資計画が放棄されている。中国は「一帯一路」イニシアティブを推進したが、近年の太平洋への援助は大幅に減少しており、融資支出も減少している。
ただ、中国が南太平洋の国々に関与し始めたのは、1990年代後半からと言われています。それ以前は皆無に近かったことを考えると、現在でも比較的高いといえるかもしれませんが、直近では激減しています。

これは、最近の中国の経済の低迷も反映しているものと考えられます。現在の中国の経済状況を考えると、中国は他国に関与するのではなく、まずは自国内の問題を解決することに専念するべきであり、対外関係は支障が出ない程度の留めるべきです。そうして、多くの人が、中国もきっとそうするだろうと考えるでしょう。

無論、中国以外の国の指導者ならばそうするでしょう。しかし、中国は違うようです。たとえば、米国は、2001年に中国がWTOに加盟したことで、中国の経済が成長し、国民の生活水準が向上すると考えていました。そして、中国が豊かになれば、民主主義や人権などの価値観を共有する国に変わると信じていました。

しかし、中国はWTOに加盟して以降、経済成長を遂げましたが、政治体制や社会制度は大きく変わることはありませんでした。中国共産党は、依然として一党独裁体制を維持し、市場も開放しておらず、人権侵害や労働者の権利侵害などの問題が続いています。

そうして、習近平はこのような傾向をさらに助長し、以下のような失敗しています。

・経済政策の失敗

習近平は、中国の経済成長を加速させるために、一帯一路構想やAIなどの新興技術への投資を積極的に進めてきました。しかし、これらの政策は、多くの場合、効果が上がらず、むしろ経済的な混乱や社会問題を引き起こす結果となっています。

例えば、一帯一路構想は、中国の企業が海外のインフラ整備事業に参入することによって、中国の経済的影響力を拡大することを目的とした政策です。しかし、実際には、多くのプロジェクトが赤字に陥り、中国の経済を圧迫する結果となっています。

また、AIなどの新興技術への投資も、中国の経済成長に貢献するどころか、むしろ新たな格差や失業問題を引き起こす結果となっています。
中国のAI  AI生成画像
・外交政策の失敗
習近平は、中国の国際的地位を向上させるために、積極的な外交政策を展開してきました。しかし、これらの政策は、多くの場合、中国の孤立を招く結果となっています。

例えば、習近平は、香港や新疆ウイグル自治区などの人権問題に対する国際的な批判を無視し、強硬な姿勢を貫いています。また、台湾海峡問題や南シナ海問題などの領土問題をめぐって、周辺諸国と対立を深めています。
・内政政策の失敗
習近平は、中国の政治的安定を維持するために、強権的な政治体制を強化してきました。しかし、これらの政策は、中国の民主化の遅れや、人権の抑圧を招く結果となっています。

例えば、習近平は、共産党の権威を強化するために、政治的な反対派を弾圧しています。また、言論や表現の自由を制限し、国民の監視を強化しています。
これらの事柄を踏まえると、習近平が必ずしも優れた政治家ではない可能性は十分に考えられます。したがって先進国にみられる普通の政治家なら、絶対しないようなことを習近平ならするということは十分に考えられれます。

経済的にかなり苦しくなれば、先進国に見られる普通の政治家なら、南太平洋の島嶼国に対する関与をやめるか、低減するかして、経済を立て直し、その後にまた南太平洋への強化を開始するというように、その時々で優先順位をつけて行動すると思います。

しかし、中国の指導者、その中でも特に習近平は、そうは考えないかもしれません。経済的に苦しくなっても、南太平洋への関与は継続したい、しかし経済力をフルには使えない、であれば、軍事力を使えば良いと単純に考えるかもしれません。

もちろん軍事力といっても、最初から軍事力を行使するという意味ではありません。あくまで段階があります。すぐに、軍事力を行使ということはないでしょう。最初は、艦艇等を派遣したり、近辺で軍事演習をしたり、島嶼国に軍事基地を設置するなどのことから始めるでしょう。

普通のまともな政治家なら軍事力を使うことは、富をすぐに生み出す事はありえず、経済をさらに苦しくするだけであることを認識し、やはり国内経済の立て直しを優先するでしょう。

しかし、そもそも習近平はこのような範疇に収まるような人物ではありません。

習近平

習近平は、権力を握ってから11年間で、政治局員6人、中央委員会委員35人、将軍60人、試算によれば党員約350万人を追放しました。この反腐敗キャンペーンは、習近平の権力基盤を強化し、中国共産党の統制を強める目的で行われてきました。

元米国国家安全保障副顧問で、中国の専門家であり、対中国強硬政策の主要提唱者として知られている、ポッティンジャー氏は、この反腐敗キャンペーンについて、「激動は習近平施政の特徴で不具合ではない」と述べています。これは、習近平は、権力を維持するためには、不安定な状況を恐れないということを示しています。

また、ポッティンジャー氏は、最新の国防部長や外交部長、ロケット軍司令官などの異動について、「党を不安定な状況に置き、自分の優越性を高めようとする積極的仕掛けの一環ではないか」と主張しています。この異動は、習近平が権力基盤をさらに強化するために、軍や外交などの重要なポストを自分の側近で固めようとしていることを示しています。

さらに、ボッティンジャー氏は、「中国経済が減速していることで、習近平は、逆にリスクを冒しても、中国の国際的な地位を高めようとするかもしれない。中国は、現在米国を弱いと見ており、台湾に軍事的圧力を強めることで、米国を牽制しようとしている」との主旨のことを述べています。

そうして、このことは台湾だけではなく、南太平洋のような世界中の軍事・政治的に重要な拠点で起こりえる可能性があります。

南太平洋に進出した中国 AI生成画像

習近平はかつてないほど権力を強化し、目標達成のためには武力行使も辞さない可能性もあります。中国経済は減速しており、習近平は国民の目をそらし、権力の掌握を維持するためにリスクを冒す可能性が高まっています。

中国の外交政策はますます自己主張を強めており、南太平洋をはじめとする軍事的・政治的に重要な地域で目標を達成するために軍事力を行使する可能性もあります。 習近平と中国の行動を注意深く監視することが重要です。もし中国が攻撃的な行動に出た場合、国際社会は対応する準備を整えておかなければならないです。

習近平は期せずして、自らの権力基盤をさらに強化するためだけに「最後の一撃」を企図するかもしれません。しかし、それが実行されてしまえば、現中国の体制は崩れるかもしれませんが、最後の一撃を食らった地域は、とんでもないことになるわけで、ウクライナ、ガザだけでも昏迷を極めているのに、さらに世界は新たな懸念を抱えてしまうことになります。

米議会下院で中国特別委員会委員長のギャラガー氏は、米中の戦略的競争において長期的には米国が有利だが、10年の短期では危険な状態にあると述べています。今後10年後からは、米国が圧倒的に有利なるのは目に見えていますが、ここ10年以内は非常に危険だというのです。

この危機を回避するため日米と同盟国は、さらに結束を深め、外交・軍事的な努力を継続し、発展させるべきです。

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2023年11月8日水曜日

イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング―【私の論評】イスラエルの軍事行動、日本の平和主義に何を問う(゚д゚)!

イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング

ポール・ロジャーズ(英ブラッドフォード大学教授〔平和学〕)
  • イスラエルは過去40年にわたり、武装組織との戦闘で挫折を繰り返してきた。
  • レバノン侵攻に始まり、ヒズボラなどのイスラム過激派組織の活動が台頭した経緯がある。
  • ガザ地区ではハマスとの対立が続き、イスラエルは2008年から2021年にかけて4回にわたる攻撃を行ったが、民間人の犠牲が増加し、国際的な非難を浴びた。
  • ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味を理解できず、支持が薄れており、ハマスに拘束された人々の家族は人質救出を優先する声が高まっている。
  • 国際社会でも懸念が高まり、国際的な支持が減少している。
イスラエル軍

過去40年間、イスラエルは武装組織との戦闘において多くの挫折を経験してきた。この苦い歴史は、1982年のレバノン侵攻に端を発し、イスラム過激派組織ヒズボラの台頭につながった。その後、イスラエル軍は何度も敗北を経験し、2000年にはレバノンから完全に撤退した。

2006年にヒズボラのロケット攻撃に対抗するため再びレバノンに進攻したが、結局は撤退し、空爆によりレバノンのインフラに大きな被害をもたらした。2007年からはパレスチナ自治区ガザを支配するイスラム過激派組織ハマスがイスラエルの主要な対象となり、2008年から2021年にかけてガザへの4度の攻撃を行った。

2014年の「境界防衛作戦」では、地上侵攻で苦戦し、多くの犠牲者が出た。このときもイスラエルは空爆を行い、犠牲者の中で最も多かったのは民間人だった。4回の戦闘でイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた。

現在、イスラエルとハマスの緊張が高まっており、国際社会の中で懸念の声が上がっている。イスラエルでは、軍部や政府内で今後の動向についての意見が分かれており、地上戦の拡大に対する懸念も表明されている。ガザのトンネル網は広大であり、ハマスは数カ月の戦闘に備えているとされてい。

イスラエルには10月7日のハマスの奇襲に対する支持が寄せられたが、その支持は既に減退しており、国際世論も厳しい非難を浴びている。ネタニヤフ政権は支持を受けているものの、戦闘よりも人質救出を優先すべきだとの声が高まり、国際社会でも懸念されている。国際的な支持も失われつつあり、ネタニヤフ政権は今後の課題に直面している。

過去のイスラエルによる軍事行動は、国際的な支持を失うと同時に終結を迎えた。奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。

だがそうはならず、今後そうなる見込みもない。それは起こっていないし、これからも起こらないだろう。それどころか、さらに何千人ものパレスチナ人が殺され、何万人もの若いパレスチナ人が将来戦う準備を整え、イスラエルとパレスチナの紛争の平和的解決は、少なくとももう一世代遅れることになる。

この記事は、元記事(日本語版)の要約です。詳細は、元記事(英語版)をご覧になってください。

【私の論評】イスラエルの軍事行動、日本の平和主義に何を問う(゚д゚)!

まとめ
  • イスラエルの行動に関して、米国のメディアの内容が日本語に翻訳される場合、重要な部分が欠落している場合があり、これは情報操作の一種ではないかと疑われる。
  • 英国の平和学者と、日本の平和主義者の視点は異なり、平和学者の視点は現実的であり、平和主義者のそれは理想主義的である。
  • 日本の平和主義者はあまりに、非現実的で、民主主義国家が直面する脅威から切り離されているように見えることさえある。
  • これらの、差異を認識するだけでも、日本で真剣に平和を考える上では、非常に参考になる。
上の記事は、日本語版の要約ですが、一番最後の段落は、英語版のものの最終結論をそのまま掲載したものです。この最後の部分は重要です。ニューズウィークなどの、日本語版なるものは、翻訳者の恣意により、重要な部分を翻訳の過程で省くこともあることを端的に示しています。

日本語版の記事では割愛される部分こそ、重要な場合もあります。皆さんも、日本語版で興味が引かれるような記事を見つけた場合、念のため、英語版をご覧になることをおすすめします。現在では、Google翻訳やDeeple等の優れた翻訳サイトがあります、英語が苦手な方も読めます。

上の記事で、英文の結論部分を掲載されず、「過去のイスラエルによる軍事行動は、国際的な支持を失うと同時に終結を迎えた。奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう」で終わらせてしまえば、説得力がなくなり、ただの好戦論者の戯言のようになってしまいます。これは、情報操作の一種に見えます。

イスラエル ネタ二アフ首相

結論部分をみると、この分析はルトワック氏の分析を彷彿とさせます。

確かに、10月7日の攻撃直後に迅速かつ決定的な地上侵攻を開始すれば、イスラエルは国際的な反発が高まる前にハマスに打撃を与えることができたかもしれないです。

卑劣な攻撃に対する衝撃と怒りを利用し、イスラエルの強硬な対応は正当化されていたでしょう。イスラエルが待てば待つほど、批判は高まり、支持は低下します。

地上でハマス過激派を素早く倒せば、彼らの力を著しく弱め、ロケット弾発射や暴力を続ける能力を制限することができたでしょう。そうなれば、ハマスは壊滅し、パレスチナ自治政府と早い時期に停戦が成立していたかもしれません。強さと決意を示すことで、パレスチナ・イスラム聖戦のような他のテロリスト集団がイスラエルを攻撃するのを抑止できたかもしれないです。ためらいや優柔不断さを見せれば、そのようなグループを増長させることになりかねないです。

テロ用のトンネルやインフラを迅速に破壊することで、ハマスの能力を何年も後退させることができたかもしれないです。長期的には脅威を減らすことができたかもしれないです。

しかし、考慮すべきリスクやマイナス面もあります。 ガザでの市街戦は、特に急ごしらえで行われた場合、双方の人命損失につながります。ガザでの市街戦は、特に急ごしらえで行われた場合、双方の命を奪うことになります。

ハ マスは民間人を人間の盾として利用し、防衛手段を準備してから、イスラエル攻撃を開始した可能性があります。そうだとすれば、イスラエル軍がハマスを早期に奇襲したとしても、戦闘は困難で長期化したかもしれないです。奇襲したとしても、イスラエルはガザで泥沼にはまる可能性もありました。

イスラエル国内の世論は二分されています。大規模な地上攻撃を支持する人ばかりではないし、その失敗や高コストが、ネタニヤフ首相を政治的に脅かす可能性もあります。

 それに、ハマスの壊滅は長期的な和平を保証するものではありません。他のグループが台頭する可能性もあるし、ハマスが時間をかけて再建される可能性もあります。政治的解決策はまだ必要だ。

10月7日のような攻撃直後に断固とした行動をとることには一定の利点がありますが、状況は依然として非常に複雑です。早期の地上侵攻によってイスラエルはハマスに大きな打撃を与えることができたかもしれないですが、リスクも伴い、それだけではより広範な紛争を解決することはできない可能性も高いです。

どちらの側にも理があり、結局のところ、この種の戦略的決断は、外部のオブザーバーが入手できない正確な状況や情報に大きく左右されます。ネタニヤフ首相の選択が正しかったか間違っていたかを、関連する詳細がすべて明らかにならない限り、断定的に言うことは難しいです。イスラエルが直面している課題には、単純な解決策も普遍的に合意された解決策もない。

ルトワック氏は、ハマスの攻撃を指弾し、はっきりと否定しています。しかし、その後の展開については、私の調べたところでは、今のところ特に発言はしていないようです。誰か、現時点での発言があったことを知っている人は、是非教えてください。

ルトワック氏

ただ、上の記事から私達が学べるのは、まずは、上で示したように、米国の発の情報であっても、上記で述べたように情報操作されている可能性があることです。そうして、これは情報発信元がどこであれ、様々な思惑から操作されている可能性は否定できません。

係争中は特にそうです。そのため、ネタニヤフの行動が正しかったかどうかの判断は、現在ではなく、紛争が終了して多くの情報が開示されたときに行うべきでしょう。ただ、ハマスの最初の蛮行はとうてい許されるものではありません。現在確実に言えるのはそれだけです。

それは、ウクライナ戦争も同じと思います。ロシアのウクライ侵攻はとうてい許されるべきものではありません。

ただ、平和学者のポール・ロジャーズの意見を無視しろと言っているわけでもありません。参考にする程度なら良いと思います。

平和学者 ボール・ロジャース

特にボール・ロジャース氏のような平和学者が考えていることは、日本の平和主義者の考えているようなこととは、異質であることが、上の記事からも理解できると思います。

ポール・ロジャースのような平和学者と日本平和主義者は、そもそ視点が異なっています。 ポール・ロジャーズ氏は、外交を提唱し、不均衡な武力行使に反対する一方で、イスラエルの自衛権を認めています。イスラエルの行動の一部を批判しつつも、イスラエルが直面している課題を認識しています。イスラエルの安全保障上の脅威を考慮した、現実的な視点す。

ポール・ロジャーズは、イスラエルの困難な立場を考慮し、双方の主張を比較検討し、自衛のための武力行使を容認するという、よりバランスの取れた見方をしています。平和と外交を提唱する一方で、イスラエルが軍事行動を必要とする理由を理解しています。一方、日本の平和主義者は、暴力に全面的に反対し、正当な安全保障上の懸念を認めることなくイスラエルを非難しているようです。

ロジャーズ氏は平和を追求する上での現実的な課題を認めています。ロジャース氏の平和とは、絶対主義的なものではなく、現実主義的なものです。ロジャース氏のような平和学者は、たとえ結論に同意できない部分があったとしても、よりバランスの取れた思慮深い分析や処方につなげることができるでしょう。

一方日本の平和主義者は非現実的で、民主主義国家が直面する脅威から切り離されているように見えることがあります。これらの、差異を認識するだけでも、日本で真剣に平和を考える上では、非常に参考になると思います。

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2023年11月7日火曜日

ひそかに「失業率」が上昇している…!「緩和継続」を否定する人がやっぱり見落とした!矛盾だらけの「引締め論」の「最悪の中身」―【私の論評】日本の多くの愚かなエコノミストは、円安是正などの金融緩和効果にはタイムラグがあることを知らないようだ(゚д゚)!

ひそかに「失業率」が上昇している…!「緩和継続」を否定する人がやっぱり見落とした!矛盾だらけの「引締め論」の「最悪の中身」

まとめ
  • エネルギー価格は、いずれは下落する。
  • 金融引き締めは、物価上昇率をさらに低下させる。
  • 失業率の上昇は、賃金上昇と物価上昇のモメンタムを崩す。
  • 円安は、輸出増加とインバウンド観光客の増加によっていずれは収まる。
  • 金融緩和は、経済成長と雇用拡大を促進する。

日銀植田総裁

エネルギー価格の上昇は、短期的には物価上昇につながる。しかし、高くなれば増産する国が現れ、長期的には、新たな油田が開発され、シェールオイルのような別の地質からの原油が発掘される。また、いずれは再生可能エネルギーのコストが低下していく。つまりエネルギー価格は、「供給」が増えれば下がるのである。

具体的には、以下のような例が挙げられる。
  • 2008年のサブプライムローン危機後の原油価格は、2008年7月の147ドルから、2009年3月の40ドルまで下落した。
  • 2014年のサウジアラビアによる原油価格の下落合意後の原油価格は、2014年6月の115ドルから、2015年2月の27ドルまで下落した。
  • 2020年の新型コロナウイルス感染症による原油価格の下落は、2020年4月の20ドルまで続いた。

日本の多くのエコノミストの物価予想は、金融引き締めを主張する政策提言と矛盾している。

2023年7-9月期の消費者物価上昇率は3.0%(実績)だが、日本のエコノミストの予測を平均したESPフォーキャスト調査によると、23年度平均では2.79%、24年度平均では1.93%に低下してしまう(ESPフォーキャスト調査、2023年10月11日)。

金融引き締めは、金融市場の混乱を引き起こし、企業の投資や雇用を抑制する可能性がある。その結果、物価上昇率がさらに低下する恐れがある。

失業率の上昇は、賃金上昇と物価上昇のモメンタム(勢い、はずみ)を崩す可能性がある。

2023年初から失業率が上昇している。これが一時的なものか、長期的なトレンドの変化を表すものか分からないが、この傾向が続けば、労働市場の逼迫に依る賃金上昇、物価上昇のモメンタムも崩れてしまうだろう。

具体的には、以下のような例が挙げられる。
  • 1990年代後半から2000年代前半の日本の失業率の上昇は、賃金の伸び悩みや物価上昇率の低下につながった。
  • 2008年のリーマンショック後の失業率の上昇は、賃金の下落や物価上昇率の低下につながった。
円安は、輸出増加とインバウンド観光客の増加によって、いずれは収まる。

円安は、物価上昇の一因であることは事実だが、だからと言って金融を引き締めて円高にすべきだろうか。2008年、リーマンショックの後に、日本だけ金融緩和をしなかったことによって1ドル79円という超円高になり、日本経済は大打撃を受けたことを思い出そう。

もちろん、過度な金融緩和が円安をもたらし、円安が止まらなくなると懸念する向きもある。しかし、心配するには及ばない。円が下落すれば、輸出が増加し、インバウンド観光客も増大する。

具体的には、以下のような例が挙げられる。
  • 2023年6月以降、円安による輸出増加やインバウンド観光客の増加によって、経常収支黒字は月2兆円のレベルに戻った。
以上のことから、現状の経済状況から、日本は金融緩和を継続すべきである。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】日本の多くの愚かなエコノミストは、円安是正などの金融緩和効果にはタイムラグがあることを知らないようだ(゚д゚)!

まとめ
  • 多くの日本のエコノミストは現在の円高に鑑み、金融引き締めを主張しているが、消費者物価上昇率の実績は3.0%であり、将来予測では低下する可能性がある。
  • 物価が下がった状態で金融引き締めが行われると、景気後退や失業率の上昇などのリスクが高まる。
  • 金融政策の効果は即効性がなく、数ヶ月から数年かかるため、現在の金融引き締めがすぐに円安につながるわけではない。
  • 物価が下がった状態で金融引き締めの効果が現れた場合、企業の倒産や失業率の上昇の可能性がある。
  • エコノミストが金融引き締めを主張する際に、物価の下落や失業率の上昇といったリスクを考慮していない可能性があり、これは誤ったアプローチである。
上の記事における原田氏の論点は以下に集約されると思います。
日本の多くのエコノミストは、現状の円高などに鑑み金融引き締めを主張しているが、 2023年7-9月期の消費者物価上昇率は3.0%(実績)だが、日本のエコノミストの予測を平均したESPフォーキャスト調査によると、23年度平均では2.79%、24年度平均では1.93%に低下してしまう(ESPフォーキャスト調査、2023年10月11日)としている。

にもかかわらず、金融引き締めを主張するのは、矛盾している。
このように、物価が下がりそうなときに金融引き締めをするとどうなるかといえば、以下のようなことが考えられます。
  • 景気後退のリスクが高まる
  • 失業率が上昇するリスクが高まる
それと、上の記事ではマクロ経済学上、あまりに常識的なため、説明されていませんが、一般的に、金融緩和によって円安や失業率の低下などの効果が出るまでには、数ヶ月から数年程度はかかります。タイムラグがあるのです。現在円高だからといって、金融引き締めをしたとして、すぐに円安になるわけではないのです。これが、多くの人にとって金融緩和を継続すべきという主張を分かりにくくしている可能性があると思います。

タイムラグ AI生成画像

数ヶ月から、数年という事を考えると、現在円高を是正するために金融引き締めをすると、その効果は早くても半年から遅ければ数年後出るということであり、上記で示したように、半年後には物価が1.93%になっていることが予想されるので、物価が下がった状態で、金融引き締めの効果が現れれば、ますます物価が下がるということになります。これは、デフレになることを意味します。最悪の結果を招くことになります。

たとえ、金融引き締めの効果が現れなかったにしても、物価が下がっていれば、わざわざ引き締める必要もないわけで、どちらにころんだとしても、現在金融引き締め策等する必要性などないのです。

だかこそ、「緩和継続」を否定する人が見落としている、矛盾だらけの「引締め論」の「最悪の中身」として原田氏は、批判しているのです。

テレビのスイッチを押せばすぐにテレビを見ることができます。しかし、金融政策は、政策を変えたからといって、すぐにその効果が現れるわけではないのです。もし、金融政策がテレビのようにすぐに効果が出るというのなら、多くのエコノミストが言うように、現在金融引き締めして、半年後には金融緩和に踏み切れば良いということになりますが、現実はそうではないのです。

デフレで苦しむ人々 AI生成画像

失業率に関しては、これも典型的な遅行指標であり、現在の失業率は半年前の政策を反映するものであるとされています。

半年後に物価が下がった状態で金融引き締めの効果が現れた場合、企業の倒産や失業率の上昇につながる可能性があります。

体的には、以下のシナリオが考えられます。

  • 金融引き締め効果によって、金利が上昇する。
  • 金利が上昇すると、企業の投資や消費が抑制され、経済成長が鈍化する。
  • 経済成長が鈍化すると、失業率が上昇する。
  • 金融引き締め効果によって、円高が進む。
  • 円高が進むと、輸出企業の収益が悪化し、倒産や失業率の上昇につながる。
また、物価が下がった状態では、企業はコスト削減を迫られます。そのため、人件費の削減を検討する企業も出てくる可能性があります。人件費の削減は、失業率の上昇につながる可能性があります。

なお、金融引き締めによって失業率が上昇するかどうかは、金融引き締めのスピードや、市場の反応によっても異なります。例えば、金融引き締めが急激に進めば、失業率の上昇は大きくなる可能性があります。一方、金融引き締めが緩やかに進めば、失業率の上昇は比較的抑えられる可能性があります。

失業で苦しむ人々 AI生成画像

また、金融引き締めによって失業率が上昇するかどうかは、経済の構造によっても異なります。例えば、労働市場の流動性が低い場合は、失業率が上昇する可能性が高くなります。現状の日本では、労働市場の流動化はすすんでいません。

以上のことから、物価が下がった状態で金融引き締めの効果が現れた場合、失業率が上昇する可能性が高くなります。

日本の多くのエコノミストは、金融緩和の効果は、早くて半年後、失業率は半年前の政策の結果であるということを忘れているようです。全く愚かしことです。

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2023年11月6日月曜日

トランプ氏独走の共和党指名争い、ヘイリー氏が「強い女性像」で2位へ勢い―【私の論評】トランプ大統領の再選と岸田首相の新たな戦略:日米保守派の連携が注目される2024年(゚д゚)!

トランプ氏独走の共和党指名争い、ヘイリー氏が「強い女性像」で2位へ勢い

 共和党は2024年の大統領選に向けた指名争いの真っ最中だ。現在、トランプ前大統領が首位に立ち、ニッキー・ヘイリー前国連大使とロン・デサンティスフロリダ州知事が2位を争っている。

 ヘイリー氏の勢いは本物で、今や彼女は指名候補の本命と見られている。彼女の強い女性イメージと外交政策の専門知識は資産とみなされており、ニューハンプシャーやアイオワといった序盤の州では好成績を収めている。

候補者支持率 (RCP)
ドナルド・トランプ59.30%
ニッキー・ヘイリー8.30%
ロン・デサンティス13.40%
マイク・ペンス3.50%
ヴィヴェク・ラムスワミー2.00%

 かつてトランプの強力なライバルと目されていたデサンティスは、ここ数ヶ月失速している。トランプ支持層を打ち破れず、ヘイリーらから批判を浴びている。

 マイク・ペンス前副大統領が選挙戦からの離脱を表明したことで、「トランプ一強」の構図がますます顕著になっている。共和党内の穏健派からは、指名争いの現状に危機感を募らせる声もあり、まだ出馬表明していない有力候補への待望論も出ている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】トランプ大統領の再選と岸田首相の新たな戦略:日米保守派の連携が注目される2024年(゚д゚)!

まとめ

  • トランプ氏は2024年の共和党指名候補として圧倒的な支持を受けており、彼の支持率は90%以上であり、彼の選挙戦は資金調達と知名度で優位に立つ見込みだ。
  • トランプの争点は共和党支持層に近く、恩赦に反対し、国境警備を支持し、中国に対して厳格な姿勢をとり、減税と規制緩和を推進している。一方、ヘイリーはこれらの面で保守派から見て弱腰とされている。
  • ヘイリーの大統領としての可能性は低く、トランプの支持は依然として強固であるため、彼女が大統領になる可能性は限りなく低い。
  • トランプは国益を最優先にし、同盟国と協力しながら外交政策を進めており、孤立主義ではない。
  • 岸田首相はLGBT法案を可決したことが誤りであり、トランプ大統領との連携を強化し、国境の規制や文化的価値の保護などを推進すべきである。

さて、この読売新聞の報道は、興味深い報道ですが、その正確性には疑問があります。主流メディアは常にトランプ大統領を貶め、ニッキー・ヘイリーのようなリベラル派を喧伝しているようです。

ニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)は、アメリカ合衆国の政治家です。1972年1月20日生まれ、51歳です。サウスカロライナ州バンバーグ出身で、クレムゾン大学を卒業しています。共和党に所属しています。

インド系米国人で、2011年から2017年まで同州知事を務めました。インド系女性として初めて同州知事となりました。知事2期目の途中で、当時のトランプ大統領から国連大使に指名され、2017年から2018年まで同職を務めました。内政と外交の両方に通じていることが1つの強みとされています。

ニッキー・ヘイリー氏

しかし、トランプ大統領は共和党の有権者から絶大な支持を得ており、2024年の指名候補として圧倒的なリードを保っています。共和党有権者のトランプ支持率はほとんどの調査で90%を超えています。トランプ大統領は、ヘイリー氏のようなライバルに比べ、資金調達と知名度において圧倒的な優位に立って2024年の選挙戦をスタートさせるでしょう。

大統領の争点に関して、トランプはヘイリーよりも共和党支持層に近いです。彼は恩赦に反対し、はるかに強力な国境警備を支持しています。中国に対してはより厳しく、関税を支持しています。トランプは歴史的な減税と規制緩和を推進しました。ヘーリーはこれらすべての面で弱腰か反対しています。ヘイリーはリベラルなエリートたちに寄り添おうと懸命ですが、真の保守派は彼女が本当の意味での保守派の候補とは認めていないようです。

ヘイリーが大統領になる可能性については、全くないか、限りなく近いかかというところでしょう。共和党の支持層は、トランプ大統領の米国第一主義を支持しています。そうして、多くのメディアは、これを米国の孤立主義のように喧伝しますが、それは違います。

孤立ではなく、同盟国協調しながらも、米国の国益を第一にするという意味であり、それはトランプが大統領だったときの外交がまさにそのようであったことを考えれば理解できます。実際トランプは日本の安倍首相の提唱した「インド太平洋戦略」を受け入れつつ、これを発展させ、バイデン政権もこれを引き継いでいます。

インド太平洋戦略を推進した安倍氏とトランプ氏

それに、ヘイリー氏は、移民や貿易といった問題では、ほとんどの共和党有権者にとって甘すぎます。ヘイリーには国連大使以上の経験はほとんどありません。サウスカロライナ州知事を6年間務めただけです。大統領には、世界という舞台で駆け引きをできるだけの、はるかに多くの経験が必要です。彼女の外交経験は誇張されすぎています。

彼女がプーチンや金正恩のような外国の指導者と直接対決する姿を想像できるでしょうか。無論これは、彼女が女性だからと言う意味ではなく、彼女のバックグラウンドが国連大使だからということです。国連大使としての、外交と政権や大統領の外交は異なります。国連大使が現実の外交をできるかという問いに、多くの保守派派は疑念を抱くでしょう。

リベラルメディアには、トランプ大統領と共和党の終焉を誤って予測してきた長い歴史があります。ヘイリーの勢いについての彼らの結論は、非常に懐疑的に見るべきです。

デサンティス知事のように、かつてトランプ大統領のライバルとして注目された知事たちは、トランプ大統領の支持層を取り込もうとしてことごとくつまずきました。トランプの支持は依然として強固です。

ヘイリーが出馬しても同じことが起こるでしょう。ニッキー・ヘイリーが2024年の指名候補としてトランプ大統領を破ったり、大統領になったりする可能性はほとんどありません。彼女をめぐるメディアの誇大宣伝は、当初からトランプ大統領の報道を悩ませてきた希望的観測と欠陥のある予測の最新の事例に過ぎません。現場の事実は、まったく異なることを物語っています。

読売新聞をはじめとするリベラル派は、ありもしないドラマを煽ろうとしているだけではないでしょうか。トランプ大統領は2024年に再選を果たし、民主党がどんな残念な候補者を擁立しようとも、短期間で優位を確立するでしょう。

岸田首相と自民党は、バイデン政権からの圧力でLGBT法案を可決したのは重大な誤りでした。米国のリベラル派の要求に屈することなく、米国保守派の声に耳を傾けるべきでした。2024年にトランプ大統領がホワイトハウスを奪還すれば、日本や世界中の保守派にとって大きな安心材料となるでしょう。

岸田首相はもはや、米民主党を喜ばせるために左翼的な社会政策を推し進めなければならないと感じることはないでしょう。その代わり、トランプ大統領と緊密に協力し、移民の規制、貿易の均衡化、中国への対抗など、ナショナリストが共有する優先課題を推進することになるでしょう。

トランプは、伝統的価値観と国民的アイデンティティが重要であることを理解しています。トランプは、国民の意思に反して外国の文化に急進的な社会変革を受け入れさせようとはしないでしょう。日本の保守派は、彼が政権に復帰し、米国の進歩主義者による内政干渉がなくなることを歓迎すべきです。

岸田首相

岸田首相には、誤ったLGBT法を縮小もしくは廃止することで、名誉挽回のチャンスが残されています。保守派の支持を取り戻したいのであれば、それは素晴らしい第一歩となるでしょう。

しかし、本当に重要なのは、日本の指導者がトランプ大統領が具現化した保守的な国民主義と大衆運動とを連携することです。共に主権を推進し、国境を確保し、時代を超えた文化的価値を守ることで、大きな成果を上げることができます。

自民党の本質はリベラルだという人もいますが、自民党の中にも保守派は存在しますし、米国の民主党の中にも、保守的な考え方の人もいます。当面、日本は岸田政権によって統治されるのは間違いないですし、仮に岸田政権が崩壊下にしても、その後の総理大臣もリベラル的な人がなる可能性が高いわけで、誰が総理大臣になったとしても、進歩主義者の力を弱め、伝統的価値観を守るため日米保守の連携はますます重要になります。

自民党以外保守派、たとえば日本保守党と米保守派との交流や連携もますます重要になってきました。これらの勢力も、トランプ政権誕生によって、次の機会を狙える可能性も高まるでしょう。

トランプ大統領と岸田首相の強力なパートナーシップは、日本、米国、そしてリベラルの行き過ぎを懸念するすべての人々にとって世界的に大きな利益をもたらすでしょう。

そうなれば、日米メディアは、再びトランプを徹底的に批判し、岸田政権を擁護するかもしれません。しかし岸田首相は、進歩的な要求に屈するのではなく、国家の真の利益のために立ち上がらなければならないです。それができないというのなら、最低限でも、日本を現在以上に毀損(きそん)するべきではありません。

岸田首相は来年以降に備えて、そろそろ米民主党からは距離を置き始めるべきでしょう。

そうして、岸田首相は奮起して、米民主党や国内官僚や財界人等のためではなく、国民のために国益を最優先する首相へと変貌を遂げて頂きたいものです。

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2023年11月5日日曜日

日銀政策変更の「一人芝居」決定会合の内容、事前にメディアリークの疑い 物価上昇沈静化、長期金利さらなる弾力化も―【私の論評】高橋洋一氏がイールドカーブのゆがみ解消に異論(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

まとめ
  • 日銀は長期金利の上限を柔軟化し、1%をめどとした。
  • 事前にメディアにリークされた疑いがあり、日銀は議案を提示すべきでなかった。
  • 今後は、長期金利の上昇を一定程度容認することになる。
  • 短期金利はゼロ金利政策でピン留めされているので、イールドカーブがゆがむ可能性がある。
  • 日銀は短期金利のピン留めを見直したいが、慎重にならざるを得ない。
  • 次の手は、さらなる長期金利の弾力化かもしれない。
  • 物価上昇率は今後、沈静化する方向で、金融政策変更の理由は乏しい。

日銀植田総裁

 日銀は10月30日、31日の金融政策決定会合で、長期金利の上限を「1%をめど」に柔軟化することを決めた。これは、7月に1%に厳格に抑えていた運用を変更したもので、長期金利の上昇を一定程度容認することになった。

 今回の決定は、事前にメディアにリークされていた疑いがある。事前リークが疑われる場合、日銀は議案を提示すべきでなかったが、予定通りに行われた。

 今後のスケジュールは、年内は12月、来年は1月となっており、日銀は年内にもう1回の金融政策決定会合を開くことになる。

 今回の決定により、長期金利は上昇するだろう。しかし、短期金利はゼロ金利政策でピン留めされているので上がらない。

 日銀としては短期のゼロ金利を見直したいが、変動住宅ローン金利に直接関係するので慎重にならざるを得ない。

 短期金利がそのままだと、イールドカーブがゆがむ。そうしたゆがみ是正という名目で、短期金利のピン留めであるゼロ金利を見直すというのが自然だろう。

 しかし、長短金利差が1%程度しかない中ではイールドカーブのゆがみは大したことがないので、次の手はさらなる長期金利の弾力化かもしれない。

 となると、今の政策である「10年物国債金利がゼロ%程度」が有名無実化するのではないか。となると「10年物国債金利が1%程度」など長期金利での政策変更はありえる。

 いずれにしても、物価上昇率は今後、沈静化する方向で、金融政策変更の理由は乏しい。にもかかわらず、日銀は一人芝居をしているようだ。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】高橋洋一氏がイールドカーブのゆがみ解消に異論(゚д゚)!

まとめ
  • イールドカーブとは、国債の利回りを償還までの期間で表したグラフ。
  • イールドカーブがゆがむとは、短期債の利回りよりも長期債の利回りが低くなることを意味する。
  • イールドカーブのゆがみは、景気後退の懸念、金融緩和、インフレ率の予想などの要因で生じる。
  • 日銀は、10年物国債の利回りをゼロ%程度に抑える金融緩和政策を実施してきた。今回1%前後まで許容するとした。これを金融緩和をやめることを模索しているとも受け取れる。
  • 現状では、日銀は金融緩和政策を継続すべき。
イールドカーブとは、国債の利回りを償還までの期間で表したグラフです。通常、イールドカーブは右肩上がりの曲線を描き、短期債の利回りよりも長期債の利回りの方が高くなります。これは、長期債は短期債よりも元本が返ってくるまでの期間が長いため、投資家はより高い利回りを求めるからです。

investing.comより

イールドカーブがゆがむとは、短期債の利回りよりも長期債の利回りが低くなることを意味します。イールドカーブがゆがむ原因はいくつかありますが、主なものは以下のとおりです。
  • 景気後退の懸念:景気後退が予想されると、投資家はリスクを回避するために短期債に資金を移すため、短期債の利回りが上昇し、長期債の利回りが下がります。
  • 金融緩和:中央銀行が金融緩和を行うと、短期金利が低下します。これにより、イールドカーブが右肩下がりになり、ゆがみが生じます。
  • インフレ率の予想:インフレ率が上昇すると、投資家はインフレリスクをヘッジするために長期債に資金を移すため、長期債の利回りが上昇します。これにより、イールドカーブが右肩上がりになり、ゆがみが解消されます。
イールドカーブのゆがみは、経済や金融市場に様々な影響を及ぼします。例えば、イールドカーブがゆがむと、企業の資金調達コストが短期債と長期債で異なるため、企業の投資や雇用に影響を与える可能性があります。また、イールドカーブのゆがみは、金融市場の不安定化を招く可能性もあります。

日銀は、10年物国債の利回りをゼロ%程度に抑える金融緩和政策を実施してきました。しかし、2023年10月の金融政策決定会合で、長期金利の上限を「1%をめど」に柔軟化することを決定しました。

この決定に対して、高橋洋一氏は、以下のように主張しています。
  • イールドカーブのゆがみを解消するには、1%程度では不十分で、さらなる長期金利の弾力化が必要
  • 現在の政策である「10年物国債金利がゼロ%程度」は、イールドカーブのゆがみを解消するためには不十分で、有名無実化される可能性がある

高橋洋一氏は、物価上昇率が今後、沈静化する方向にあるため、日銀が金融緩和政策を変更する必要は乏しいと指摘しています。

金融緩和政策は、物価上昇を促進する政策です。そのため、物価上昇率が沈静化すれば、金融緩和政策を変更する必要は乏しいです。そもそも、未だ需給ギャップが埋まっていない現在、金融緩和は継続すべきなのです。

直近の需給ギャップは、2023年4~6月期で内閣府が推計した+0.4%、日銀が推計したマイナス0.07%です。内閣府の推計では、2019年7~9月期以来、15四半期(3年9か月)ぶりにプラスに転じました。日銀の推計では、13四半期連続のマイナスとなりましたが、マイナス幅は1~3月期(マイナス0.41%)から縮小しているとされています。

需給ギャップとは、潜在GDPと実際のGDPの差を言います。高橋洋一氏は、内閣府の潜在GDP計算には、問題があり常時2%ぐらい低く見積もっているとしています。そのため、時折需給ギャップがプラス2%ぐらいまでの時があります。さらに今年(2023年)の最初にGDP改定があり、需要の方の計算を少し変えて1%くらい高い状況であり、現状ではGDPギャップの計算において3%ほどプラスになっているとしています。

結論をいうと、需給ギャップは回復せず、まだ3%くらいの水準にあるとしています。

「3%」と言うとあまり多くないようにも思えますが、GDP全体だと550兆円ぐらいです。 そのため、未だに15兆円~16兆円レベルのギャップ存在します。これを埋めないと失業率が下がらない。そうすると、賃金は持続的にずっと上がらないという状況になります。

需給ギャップの推移

経済対策を実施すれば、実際に一時的にある四半期がプラスに転じる局面もでてくるでしょう。しかし、これをもって金融緩和をやめてしまうというのは乱暴な論議です。失業率の変化などをみながら、緩和を続けても失業率が低下がみられないということがはっきりしてからでも遅くはありません。それ以前に緩和をやめると、需給ギャップは是正されないままになってしまいます。そうなると賃金も上がりません。

海外由来のエネルギー・資源価格が高止まりだった時には、金融緩和は継続しながら、政府は物価高対策を行うというのがまともな経済対策のあり方です。しかし、物価が沈静化すれば、金融政策を変える必要は全くないわけです。


それに、日銀が金融緩和政策を変更すると、家計や企業にマイナスの影響を与える可能性があります。例えば、日銀が長期金利をさらに引き上げた場合、変動金利型の住宅ローンなどの金利が上昇し、家計の負担が増加する可能性があります。また、企業の資金調達コストも上昇し、投資や雇用に悪影響を与える可能性があります。

物価が落ち着いてくことを考えれば、日銀は金融緩和策を継続すべきですし、今回のように日銀は長期金利の上限を柔軟化する必要もないわけです。

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2023年11月4日土曜日

外資の中国投資、初のマイナス 企業が撤退、事業縮小―【私の論評】日本で親・媚中派が絶えない理由:日本政府の矛盾した対中政策の悪影響(゚д゚)!

外資の中国投資、初のマイナス 企業が撤退、事業縮小

まとめ
  • 中国の国際収支で、外資企業の直接投資が初の118億ドルのマイナスとなった。
  • 米国の半導体規制や中国の反スパイ法が外資企業の投資減退の原因。
  • 新型コロナの影響で中国への直接投資が減少。
  • 中国日本商会のアンケートによれば、日系企業の47%が投資意欲低下。
  • 不確実性が外資企業の投資に影響を与えている。


 中国国家外貨管理局が発表した国際収支のデータによれば、7~9月期において外資企業の直接投資が約118億ドル(約1兆7600億円)の赤字となり、新規投資よりも事業の撤退や縮小が主要な要因となった。

 これは1998年以降の統計データで初めてのマイナスを示している。この現象は、米国の半導体輸出制限や中国の改正反スパイ法の施行などが外資企業の投資意欲を減退させた結果とされている。

 同局のデータによれば、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う上海市での都市封鎖があった2022年4~6月期以降、中国への直接投資が前年同期比で急激に減少しており、中国に進出している日系企業も投資意欲の低下を示すアンケート結果が示されている。

【私の論評】日本で親・媚中派が絶えない理由:日本政府の矛盾した対中政策の悪影響(゚д゚)!

まとめ
  • 日本企業の中国への直接投資が減少傾向にあり、2021年には19.4%減の148億ドル、2022年には更に20%減の118億ドルに低下した。
  • 減少の主な要因には、米中貿易戦争、COVID-19によるサプライチェーンの混乱、中国政府によるテクノロジー分野の規制、中国での事業コスト上昇が含まれる。
  • 米国政府は中国への投資を抑制し、外国企業に対する制裁を課す一方、日本政府は支援プログラムを提供しつつ、撤退を支援するという矛盾した政策を実施している。
  • 中国に投資を続ける企業も存在し、テスラ、アマゾン、フォルクスワーゲン、サムスンなどが中国に多額の投資を行っている。
  • 日本政府の矛盾したアプローチは問題であり、日本を含めた外国企業はリスクと利益を検討する必要がある。政策や規制の変化に注意が必要。
直接投資の残高変化、中国には海外からの直接投資は もはや見られない

日本企業の対中直接投資も近年減少傾向にあります。2021年、日本の対中直接投資は19.4%減の148億ドルとなり、2017年以来の低水準となりました。この傾向は2022年も続き、日本の対中直接投資はさらに20%減の118億ドルとなりました。日本の対中直接投資の減少には、以下のような要因があります。
  • 米中貿易戦争が続いており、日本企業が中国でビジネスを行うことがより困難かつ高価になっている。
  • COVID-19の大流行によりサプライチェーンが寸断され、日本企業の中国での事業展開がより困難になった。
  • 中国政府によるテクノロジー分野の取り締まりは、この分野で事業を展開する日本企業に特に大きな打撃を与えた。
  • 人件費や環境規制などの要因による、中国での事業コストの上昇。
また、サプライチェーンを多様化し、中国への依存度を下げようとする日本企業もあります。その背景には、中国での事業展開に伴う政治的・経済的リスクに対する懸念や、他市場の顧客により近い場所にいたいという願望があるようです。

全体として、中国における対外直接投資の減少傾向は近い将来も続く可能性が高いことが示唆されています。海外直接投資は中国経済にとって資本と投資の主要な供給源であるため、これは中国政府にとって重大な懸念材料です。

この結論を裏付ける具体的な証拠をいくつか紹介します。
  • 在中国日本商工会議所の調査によると、今後1年間に中国への投資を増やす予定の日本企業の割合は、2021年の50%から2023年には32%に減少している。
  • 在中国欧州商工会議所の最近の報告書によると、在中国欧州企業の23%が今後3年以内に中国からの撤退を検討している。
  • 在中国米国商工会議所も、在中国米国企業の信頼感の低下を報告している。
これらの調査は、外国人投資家が中国への投資リスクへの懸念を強めていることを示唆しています。このことは、今後数カ月、数年間、対中直接投資の継続的な減少につながる可能性が高いです。
  • 一方、中国への直接投資を増やしたり、維持している企業もあります。以下に例をあげます。
  • テスラは上海に新しいギガファクトリーを建設中で、これは世界最大の電気自動車工場になる見込み
  • アマゾンは中国でのクラウド・コンピューティング事業を拡大し、物流や電子商取引にも投資
  • フォルクスワーゲンは中国での電気自動車事業に数十億ユーロの投資を計画
  • サムスンは中国での新しい半導体製造施設に投資
これらの企業が中国に多額の投資を行っているのは、中国を自社の製品やサービスにとって重要な市場と見なしているからです。また、中国への投資に伴うリスクを管理できると確信しているのでしょう。

日本企業でも、同様の企業があります。
  • パナソニックは、中国の大連にある新しいバッテリー工場に40億ドルを投資する。この工場は2024年に生産を開始する予定で、電気自動車用バッテリーなどを生産する。
  • ソニーは中国・上海の新半導体工場に20億ドルを投資する。この工場は2025年に生産を開始する予定で、スマートフォン、カメラ、その他の電子機器用のチップを生産する。
  • トヨタは中国・天津の電気自動車工場に14億ドルを投資する。この工場は2024年に生産を開始する予定で、トヨタとレクサスのブランドで電気自動車を生産する。
  • 三菱電機 三菱電機は中国・無錫の新工場に10億ドルを投資する。この工場ではエアコン、エレベーター、その他の工業製品を生産する。
  • NECは中国上海の新しい研究開発センターに5億ドルを投資する。このセンターは、人工知能、ロボット工学、その他の分野の新技術開発に重点を置く。
これらの企業が中国に多額の投資を行っているのは、中国を自社の製品やサービスにとって重要な市場と見なしているからのようです。また、中国への投資に伴うリスクを管理できると確信しているからのようです。

日米ともに中国に直接投資を増やしたり、継続したりする企業は現在でも存在します。ただ、政府の対応は日米ではかなり異なります。

日本政府は日本企業の対中投資を支援していますが、中国から撤退する日本企業も支援しています。

以下は、日本企業の対中投資を支援する日本政府のプログラムの例です。
  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)は、中国への投資や事業拡大を検討している日本企業に対し、様々なサービスを提供している。これらのサービスには、市場調査、ビジネス・マッチング、コンサルティング・サービスなどが含まれる。
  • 国際協力銀行(JBIC)は、中国に投資する日本企業に融資を行っている。JBICはまた、融資保証やその他のリスク軽減サービスも提供している。
  • 日本貿易保険(NEXI)は、政治的リスクや商業的リスクなど、対中投資のリスクに対する保険を日本企業に提供している。
以下は、中国から撤退する日本企業を支援する日本政府のプログラムの例です。
  • 中国撤退補助金制度は、中国から撤退し、日本または他の国に事業を移転する日本企業に補助金を提供する。
  • 中小企業総合事業団(JSMECO)は、中国から撤退する日本の中小企業に支援を提供している。この支援には、ビジネス・カウンセリング、金融支援、新しいサプライヤーや市場を見つけるための支援などが含まれる。
中国への投資を奨励する一方で、出口プログラムを提供するのはいささか矛盾しています。実際、米国政府は中国への投資を奨励するプログラムを持っていません。実際、米国政府は中国企業や個人に制裁を課すなど、中国への投資を抑制するための措置を数多く講じています。米国政府は、強制的な技術移転のリスクや、先端技術開発に携わる中国企業を支援するリスクなど、対中投資のリスクを懸念しています。

また、米国政府は米国企業に対し、サプライチェーンを多様化し、中国への依存度を下げるよう促しています。これは米国政府が、重要な商品やサービスを中国に過度に依存することによる国家安全保障上のリスクを懸念しているためです。

対中投資に対する米国政府のアプローチは、日本政府のアプローチとは大きく異なる。米国政府は対中投資を積極的に抑制しているが、日本政府はより中立的なアプローチをとっている。

以下は、対中投資に対する日米政府のアプローチの主な違いをまとめた表です。
特徴米国日本
中国への投資の促進阻止中立
中国企業・個人への制裁あるなし
サプライチェーンの多様化の促進あるある
中国への投資に関する国家安全保障上の懸念高い中程度
米国政府は近年、中国に対して多くの制裁を課しており、その中には先端技術の開発に携わる中国企業に対する制裁も含まれています。

さらに米国政府は、制裁対象となった中国企業と取引を行う企業に対しても制裁を課している。つまり、中国に投資する企業が制裁対象の中国企業と取引を行えば、米国の制裁の対象となる可能性があります。

また、中国に投資する外国企業が、その先端技術を中国政府に引き渡さざるを得なくなるリスクもあります。中国政府には、外国企業に中国企業への技術移転を強要した歴史があります。これは強制的な技術移転として知られています。

もし日本を含む外国企業が中国政府に先端技術を譲渡せざるを得なくなれば、新技術の開発において中国が優位に立つ可能性があります。これはまた、日米とその同盟国に安全保障上のリスクをもたらす可能性もあります。それを避けるために、米国は外国企業に対して制裁を加える可能性もあります。

日本の対中国政策の矛盾

中国への投資を検討している日本を含む外国企業は、リスクと利益を慎重に比較検討する必要があります。米国の対中制裁や、強制的な技術移転のリスクを認識する必要があります。また、中国政府の政策や規制を明確に理解しておく必要もあります。

それにしても、一方では、中国への投資を奨励し、片方では、撤退を支援するようなことを日本政府は未だに行っているわけですから、親中派・媚中派議員や財界人が今でも跋扈するわけです。この矛盾はいずれ正していかなければならないでしょう。

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2023年11月3日金曜日

岸田政権は何をやりたいのか 憲法改正で問われる「本気度」 所得税減税のように「遅く、ショボい」ものに終わってしまうのか?―【私の論評】段取りの悪さを露呈した、岸田政権の経済対策(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

まとめ
  • 岸田文雄首相は憲法改正への意欲を示しており、保守層を掴みとどめる狙いがあるとされている。
  • しかし、首相の本気度について疑問が生じており、所得税減税の提案が遅く、規模が小さいと批判されている。
  • ライドシェアの導入など、人気取りの政策が疑念を引き起こしている。
  • 憲法改正に関しても、具体的な進行計画や期限設定がないため、首相の本気度が疑問視されている。
  • 政策の一貫性や矛盾が憲法改正の進捗に影響を与えている可能性がある。

岸田首相

 岸田文雄首相の憲法改正への本気度について疑問が生じている。首相は憲法改正を進め、岩盤保守層を掴みとどめるために憲法改正に取り組んでいると言われているが、その真意が不透明であるとの指摘がある。

 具体的には、所得税減税の話題が注目されている。岸田首相はかつて財務省の支持で増税政策を進めていたが、増税イメージを払拭するために所得税減税を打ち出した。しかし、その提案は遅く、規模も小さいと批判されており、真剣に所得税減税を実現するつもりがあるのか疑念が生じている。

 また、岸田首相は一般ドライバーによる「ライドシェア」の導入を所信表明に盛り込んだことも、人気取りのための政策と受け取られている

 憲法改正についても、岸田首相は言葉で取り組む姿勢を示しているが、具体的な本気度が不透明だ。改憲について直接の議論が行われる前に期限を設定しなければ、本気で進めるつもりがあるのか疑念が残るという声もある。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください

【私の論評】段取りの悪さを露呈した岸田政権の経済対策(゚д゚)!

まとめ
  • 岸田首相が「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を発表し、17兆円の対策を提案。
  • 実際の経済対策の真水額は約10兆円と見られる。
  • 経済対策には賃上げ促進、消費喚起、インフラ投資、デジタル化推進などが含まれているが、規模は需要不足に対して十分でないとの指摘がある。
  • 需給ギャップの推計について、内閣府の評価と高橋洋一氏の評価に差異がある。経済対策は、多少多めにすべきである。多めのほうが、少なめより修正しやすい。
  • 複雑な対策の決定プロセスについて、譲れないポイントをいくつか明確に定めて多くの人々の意見を聞くべきである。

昨日、岸田首相は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」をとりまとめました。賃金を上げ、購買力を上げ、「好循環」を加速させて、デフレ完全脱却を図る経済対策です。17兆円の対策とされています。

真水額は、約10兆円と見られます。

経済対策の総額は17兆円ですが、このうち約7兆円は、すでに本予算に計上されている予備費や、税収増の還元策である期限付き所得税減税や非課税世帯への給付金などです。これらの措置は、すでに財政支出として計上されているため、真水には含まれません。

10/31自民党政務調査会全体会で、新たな総合経済対策について議論されたが・・・

真水の経済対策は、国と地方の歳出の合計で約10兆円と見られます。このうち、国費は約7兆円、地方費は約3兆円です。

具体的には、以下のような措置が真水の経済対策に含まれます。
  • 賃上げ促進のための税制優遇措置
  • 消費喚起のためのポイント還元やクーポン発行
  • インフラ投資
  • デジタル化推進
規模としては、当初言われていたものよりは大きくなりそうですが、現状日本では15兆円の需給ギャップがあるので、やはり望ましい額よりは少ないです。しかも、実施は変わらず、最速で来年6月以降というのですから、やはり遅いです。

政府は、2022年7月から9月期の需給ギャップをマイナス2.7%と発表していました。これは、年換算で15兆円の需要不足を意味します。

しかし、内閣府は2023年9月19日に、2022年7月から9月期の需給ギャップをプラス0.1%と発表しました。これは、年換算で1兆円の需要超過を意味します。

高橋洋一氏は、内閣府の需給ギャップ推計は、潜在GDPを過小評価しているとして、需給ギャップはプラスではなく、マイナスであると指摘しています。

高橋氏は、内閣府が潜在GDPを推計する際に、労働参加率や生産性の伸び率を過小評価していると主張しています。また、内閣府が潜在GDPを推計する際に用いる統計データは、過去のデータを基にしており、現在の経済状況を反映していないとも指摘しています。

高橋洋一氏の指摘をもとにすれば、やはり経済対策の規模は小さいと言わざるを得ません。

高橋洋一氏

それに、一般的に、より少ない経済対策をとって後で修正するよりも、より多くの経済対策をとって後で修正する方が簡単です。

これにはいくつかの理由があります。第一に、経済対策の正確な影響を予測するのは難しいです。より多くの対策を講じることで、望ましい影響を確実に達成することができます。第二に、もし最初の措置が望ましい影響を与えなかったとしても、それほど大きな混乱を引き起こすことなく、後で修正することができます。 もちろん、もう少し経済対策を講じることにはリスクもあります。ひとつのリスクは、政府支出や債務の増加につながる可能性があることです。しかし、このブログでも指摘してきたように、そのような可能性は現在の日本にはありません。

もうひとつのリスクは、インフレにつながる可能性があることです。しかし、これらのリスクは、経済対策を慎重に設計し、その影響を監視することで軽減することができます。 総合的に見て、経済対策をもう少し強化することのメリットは、リスクをはるかに上回るでしょう。このことは、特に景気が低迷しているときに言えることで、景気を下支えするために断固とした行動を取ることが重要です。

にもかかわらず、岸田政権は、規模や時期を巡って、あまりにも紆余曲折がありすぎました。先日もこのブログで指摘したとおり、そのため対策が遅い、対策が小さい、対策が不十分等と、批判されるのです。

そうして、このような状況になってしまう要因として、対策の規模、時期、範囲などでこれは譲れないという点を決めた上で、多くの人の意見聞けば良いにもかかわらず、それ以前に多くの人の意見を聴いてから、対策を決めようとしているからだろうと指摘しました。

そうして、この状況は、要人のスケジューリングをする秘書の初歩的なミスに似ていることを指摘しました。

要人のスケジューリングをする秘書 AI生成画

スケジューリングにおいては、最初にここだけは譲れないというポイントを定めてから、他の多くの人の意見を聞けばよいものを、それ以前に多くの人の意見を聞くのでは、とうていスケジューリングなどできないし、できたとしても当の要人が満足できるようなスケジュールにはならないと指摘しました。このようなスケジューリンクしかできない秘書は「段取りが悪い」と指弾されるでしょう。そうして、無論、この要人とは経済対策においては、国民ということです。

経済対策では、まずは国民に目を向けなければならないのです、それなしに多くの人の意見を聴いても混乱するばかりです。

経済対策で、右往左往する岸田首相は、上の記事で高橋洋一氏が指摘するように、憲法改正でも、同じような間違いをおかしそうです。

岸田首相は、経済対策でも、憲法改正でも、政権としてはここだけは譲れないというポイントをいくつかをはっきり定めて、その上で多くの人々の参考意見を聞くべきです。

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