2011年5月1日日曜日

<レコチャ広場>中国を避けている日本製造業の海外移転=中国政府は呼び込みに尽力せよ―中国―【私の論評】チャイナリスクを喧伝したのは中国自身ではなかったのか?

<レコチャ広場>中国を避けている日本製造業の海外移転=中国政府は呼び込みに尽力せよ―中国

29日、中国社会科学院日本研究所の馮昭奎研究員はブログで記事「日本の
生産移転、中国を回避させてはならない」を掲載した。写真は北京のデジカメ
ショップ。震災の影響で一部日本製カメラの品不足が起こり価格が急騰した。
2011年4月29日、中国社会科学院日本研究所の馮昭奎(フォン・ジャオクイ)研究員はブログで記事「日本の生産移転、中国を回避させてはならない」を掲載した。以下はその内容。

東日本大震災の影響を受け、日本製造業の海外移転の動きが鮮明化しつつある。報道によると、マレーシア、インドネシア、台湾など中国の周辺国が目的地になるという。日本製品にとって最大の海外市場である中国を回避する動きが広まっていることは注目に値する。

市場を考えれば、中国こそが生産移転の最有力候補となるはずだ。しかし、技術流出を恐れた日本企業は中国を避けた新たな産業構造を摸索している。中国市場を失うわけにはいかないため、中国周辺国がその対象となった。

日本の現代工業は世界に冠たるレベルにある。もしその産業を導入できれば、中国の産業構造転換を推進する有利な条件となるだろう。中国は苦境に立たされている日本企業に安全と生産環境を約束し、また中国市場の重要性を説くことで、中国への生産移転を推進させるべきだ。また日本への直接投資を増やし、日本の中小企業買収を加速させることも必要だ。(翻訳・編集/KT)【レコードチャイナ】

【私の論評】チャイナリスクを喧伝したのは中国自身ではなかったのか?
上の記事のように、日本の企業が中国を避けた新たな産業構造を摸索しているのは、仕方ないと思います。まずは、上のように、技術流失、それも、中国の一方的な傍若無人な技術流出があります。これに関して、鉄道技術に関して、以前のブログで掲載したことがありますが、それなど、一部で、一方的に中国が日本に対して何の見返りもなく、技術を盗むなど日常茶飯事です。しかし、この動きはそう単純ではありません。もっと他にも理由があります。

それにもう数年まえから、直接投資ではすでに数年前から、対インド投資のほうが、対中国投資を上回っています。実は、2009年8月にこのブログでは、対中国直接投資は、前年度35.7%と大幅減になったことを掲載しました。そのとき、うっかり書き忘れていたのですが、この時点というより、すでに2008年から対インドへの直接投資が中国のそれよりも上回るようになり、その状況が今日まで続いています。対直接投資とは、無論、株式投資のような間接的な形ではなく、対中国直接投資であれば、中国に工場などの設備を設置することを意味します。

これに関しては、もう当時から中国では投資が一巡して、魅力ある投資先がなくなっていたという背景があります。それに、インドのほうがはるかに成長性があるということも背景にあったと思います。
これに関しては、以前もこのブログに掲載しました。

それに、最近では、中国の不動産バブルが濃厚になってきました。もう完全にバブルです。これに関して、英紙フィナンシャル・タイムズが以下のような記事を掲載していましたが、これは、完璧に中国を他の普通の国と同列に考えており、中国の異質性を完全に無視しているといわざるをえません。

中国に不動産バブルは訪れるのか?
2011年4月29日、英紙フィナンシャル・タイムズの中国語サイトは、中国の不動産市場がバブル状態であるという諸説に対するドイツ・コメルツ銀行のアシュレイ・デイビス氏の否定説を掲載した。以下はその内容。 
諸説その1―膨大な空室数の存在
否定説:各種統計には差があるが、一般に中国には6400万戸の空室が存在すると言われている。しかし、人口100人当たりに換算すると空室は4.8戸に過ぎず、米国の同5.9戸を下回っている。 
諸説その2―高過ぎる不動産
否定説:一部の都市では確かに高いが、常軌を逸するレベルではない。平均年収に対する不動産価格を見ると、北京では38倍となっており、かなり高い。しかし、その他の都市、例えば遼寧省の省都・瀋陽市では10倍前後で、フランクフルト(5倍)とニューヨーク(12倍)の間に位置し、台北(20倍)やシンガポール(18倍)よりも低い。今後、所得水準の上昇が続けば、この割合はさらに低くなる。 
諸説その3―住宅建設への過剰投資
否定説:不動産投資のGDPに占める割合は8%に達しているが、かつての日本の最高値を超えるレベルではない。また、どれだけの割合が過剰投資に該当するか、歴史上の根拠も存在しない。中国の総人口に占める都市人口の比率は2000年の36%から2010年には約50%へと急増しているだけでなく、低品質が原因の建て替え需要も多いため、高いレベルでの住宅投資が長期に継続することは可能である。 
以上の理由から、中国の不動産市場には行き過ぎている面も確か 
ただし、地方政府が財政収入を土地使用権の売買に頼りすぎていることには懸念を示さざるを得ない。地方政府の不動産市場への依存は深刻であり、市場が悪化した場合にはその支出能力に大きな障害をもたらす。中国経済の成長が緩やかになった時に、不動産バブルの問題、ひいてはそれが銀行システムに及ぼす問題が注目されるだろう。
不動産に関して、アメリカと中国を比較していますが、もともと、中国とアメリカとでは、事情が全く異なります。少し前まで、中国では、年収200万円の人が、1億のマンションを購入するということは、当たり前のことでした。しかし、こんなことは、アメリカではありえません。無論、日本だってそうです。年収200万でも、マンションを転売すれば、大金が転がり込むので、問題はなかったのですが、でももうこんなことは続くはずがないでしょう。たとえ、物価などを考慮しても、これは異常事態であり、バブルといわずして何と形容すれば良いのでしょうか。

それに、この話もっと先があります。中国は、日本のGDPを超えたといいますが、それすら怪しいことはこのブログでも過去に掲載したことがあります。それを認めたとしても、公表されている数字によれば、中国の一人当たりのGDPは、今でも日本の1/10以下です。これは、無論アメリカと比較すれば、一人当たりではさらに低いです。2008年の資生堂の調査では、その当時で、年収100万円を超えた人の数が、1,000万人を超えたとのことです。そんなに昔の調査ではないので、今でもこれは、大同小異だと思います。これは、皆さん驚きでしょう。

実は、バブルとはいっても、日本でも、アメリカでもそうですが、それと全く関係のない貧困層がいます。バブルはこれらの人たちとは全く関係なく、ある程度経済水準以上の人々に関係するものです。とすれば、中国には、たしかにかなり人口が多く、13億もいますが、バブルに関係するのは、おそらく、1000万人は超えず、数百万人ということになります。上の英紙フアイナンシャル・タイムズは、このことを完全に無視しています。

中国ではバブルに関係するほどの経済力のある人々は、ほんの一握りしかおらず、これは、アメリカはいうにおよばず、日本よりも少ないと推測できます。これらのことを考慮すれば、中国は完全に不動産バブル状況にあるといえると思います。実際、中国などでは、ほとんどの人民は、貧しい生活をおくっており、富裕層などのほんの一握りすぎません。もともと、日本やアメリカなどと比較して、ほんの一握りの少ない人達の間でのバブルです。過去において、日本では、バブル時にそれに関与できた人々は少なくとも数千万人はいたことでしょう。

アメリカであれば、少なくとも1億人を超える人々が関係していたことでしょう。これに対して、中国は確かに国全体の人口は多いですが、その中でバブルに関与できるほどの経済水準にある人々は数百万単位であると考えられます。その他、大勢は、日本やアメリカでいえば貧困層で、バブルが起ころうが、景気が良くなろうがもともと、さほど関係がないということです。まあ、多少は賃金が上昇したりで、購買力が増えるでしょうが、さりとて、バブル景気に便乗することなどからは、ほど遠いということです。多くの中国人民にとって、日本でもテレビで報道されるような、高層マンションなど、最初から縁もゆかりもないということです。

こんなことは、冷静になって考えてみれば、中学生でもわかる理屈であり、もうわかっており、賢い日本の企業など、当然知り抜いており、だから、中国への直接投資など控えているのです。

それに、さらに、昨年の尖閣問題と、その後のレアメタルなどの実質的な禁輸など、中国の異質性は企業経営者はもとより、日本全国の国民が知るところとなりました。そうです、上記を含めて、中国はみずから、チャイナリスクを喧伝しているのです。

日本製造業の海外移転が、中国を避けて行うのは、当然の帰結であるといえます。こんな背景も認識できずに、上のような記事を平気で書ける、馮昭奎(フォン・ジャオクイ)なる人物は、よほどの国際情勢音痴だと思います。そうして、これは、中国人の一般的な感覚なのだと思います。

しかし、日本もそんなことは言ってはおられないと思います。なにしろ、今でも、民主党政権は、中国におもねっているばかりですし、マスコミは最初から問題外として、企業経営者の中にも、未だに中国幻想に踊っている愚かな人々もいることですから・・・・・・・・。

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