2012年1月31日火曜日

ドコモ、宅配野菜のらでぃっしゅぼーやを買収へ−【私の論評】ドコモが狙うのは何か?

 ドコモ、宅配野菜のらでぃっしゅぼーやを買収へ



NTTドコモが宅配野菜でおなじみ「らでぃっしゅぼーや株式会社」の株式公開買い付けを行います。3月12日まで株式の買い付けを行い、発行株の51%以上を取得することで子会社化を目指す方針。すでにらでぃっしゅぼーや自身や、大株主のジャフコ(系の投資事業有限責任組合)らとの合意を済ませており、近いうちに国内最大の通信キャリアと、国内最大手の宅配野菜サービスによるコラボレーションが実現する見通しです。日経によれば、全株式を取得した場合の買収額は69億円。

また、らでぃっしゅぼーやの子会社化が完了したあと、ドコモは一部株式をローソンへ譲渡する予定。通信キャリア、コンビニ、宅配ビジネスと、面白そうな三角形の業務提携が描かれることになります。産地直送系からネットスーパーまで、宅配サービスが注目を集める今日このごろ。スマートフォンからの野菜注文や、野菜のコンビニ受け取り & 決済はもちろん、農園ゲームでほっこりしながらリアル野菜ゲット、あるいは有機野菜定額プラン、野菜2.0による反撃を楽しみにしたいものです。

【私の論評】ドコモが狙うのは何か?

一連の通信障害を謝罪するドコモ

最近ドコモといえば、例の通信障害が大きな話題となっていましたが、こんなこともやっていたのですね。無論株式の公開買い付けによる、買収ですから、直接ドコモが「らでぃしゅぼーや」を運営するわけではないのでしょうが、それにしても気になる動きです。さらに、一部株式をローソンンに譲渡というのも気になる話です。(下は、ドコモのスマートフォン)
ドコモのスマートフォン

将来的には、これらが共同して、野菜を宅配するのは、もとよりコンビニでも販売するということでしょうか? 「らでぃっしゅぼーや」自体は、宅配ですから、営業店舗そのものは、持っていませんが、全国各地の野菜農家と提携すると共に、全国各地に配送センターを自前でもっています。これを、ドコモは、どうしようというのでしょうか?

ドコモといえば、携帯電話、最近では、スマートフォンの会社です。これからは、ほとんどがスマートフォンになることでしょうが、こうした会社がなぜ、このようなことをするのか探ってみます。




気になったので、調べてみたところ、すでにローソンでは、 "Radish Lawson  SUPERMARKET"(らでぃっしゅ ローソン)という名称で、サイト(写真上)で野菜などの販売をしていました。

ドコモは従来は携帯電話のキャリヤーであるとともに、ガラケーを販売していましたが、現在スマートフォンを販売しています。しかし、これだけでは、立ち行かなくなるという危機感を抱いているのだと思います。何しろ、ドコモの販売しているスマートフォンは、Androidであり、これは、Googleが規格を定めているものであり、この規格で販売している限り、いくらスマートフォンが売れたにしても、それだけでは、利益幅の少ない素材型産業のようになってしまうことは火を見るより明らかです。キャリアーとしての事業も従来のように旨みはなくなってきました。



これに対して、Googleは、自らもスマートフォンを開発していますが、それも、自ら作成しているわけではありません。他社にアウトソーシングしています。いずれにせよ、Googleにとっては、自社開発の電話や、他社が開発するスマートフォンが売れれば、それをユーザーが使用し、Googleの検索エンジンなどのサービスを利用してGoogle関連のサイトのトラフィックが増すことになり、そこに広告を掲載しておけば、それが、収益になるわけです。トラフイックが増えれば、増えるほど、収益は増えます。Googleは、いろいろなことを手がけていますが、いまだに収益の9割以上は広告収入によるものです。

アッブルも単に、iPhoneを販売しているだけではなく、それを窓口として、iTunesにより、電子書籍、アプリ、音楽など配信していて、それが利益うみだすわけです。

しかし、ドコモが電話を販売してキャリアとして事業をしていても、いまのところアップルや、Googleのようなビジネスモデルはないため、スマートフォンを販売するだけでは、非常に利益率の低い事業になってしまうわけです。だから、今回このようなことを手がけ、他のビジネスモデルを模索しているのだと思います。

最近はeコマースを他のものと差別化することは困難になっています。eコマースは、通常ユーザーが自宅のパソコンから、他社製のブラウザを用いて実施するものです。だらか、ユーザーにとっては、eコマースは、自宅のパソコンから垣間見るいくつもあるサービスのうちの一つという位置づけになります。最初は、eコマースそのものが、物珍しかったのですが、今は当たり前になり、他社との差別化は困難を極めています。だからこそ、Appleや、Amazonは、独自のタブレット端末を導入して、他社との差別化をはかったのです。

最近では、特にスマートフォンを活用したO2O(オンライン・ツー・オフライン)というビジネスが注目されています。このO2Oに関しては、以前にもこのブログに掲載したので、詳細はそちらをご覧いただくものとして、私は、将来、物理的な店舗を多数持つチェーンが、eコマースを行い、さらに、O2Oも実施し、しかも、これらをバラバラに運用するのではなく、統合して運用するようになれば、既存の eコマースにとって、かなりの脅威となることを述べました。そうして、そのようなところで、統合をうまくしたところが、頭角をあらわしていくことになることも掲載しました。


私は、ドコモはスマートフォンを活用したO2Oを模索して、新たなeコマースを開発し、それ自体をビジネス・ソリューションとして製品化するとするとともに、自らもeコマース自体にも進出しようとして模索しているのだと思います。さて、今後この三者の提携どのように発展していくのか、何か新しい動きがあれば、また、掲載させていただきます。


【関連記事】

iPadを低価格にしてもAmazonのKindle Fireが有利な理由−【私の論評】日本のメーカーはiPadとKindle Fireの本質を理解せよ!!

IKEAにお泊りしたい! を叶えた「ファン限定」お泊りパーティー―【私の論評】チェーン店の逆襲が始まる!!

『ローソン』というキーワードを含むこのブログの過去の記事はこちらから!!

2 件のコメント:

大谷弘仁 さんのコメント...

そうですか、ドコモがビジネスモデルの乏しさに危機感を抱いているのですね。

広告収入、広告という言葉に最近、違和感をおぼえます。

とくにステルス・マーケティングと呼ばれる手法にです。

わたしは、思考する市民が適正な情報で判断できる社会モデルを望みます。

大企業は、パブロフの犬のように考えずに反応する人々を求めているようですね。

山田 豊 さんのコメント...

大谷様 コメント有難うございます。このブログ記事には書きませんでしたが、今世紀に入ってからわたしたちの社会は、「すでに変わった社会」とも呼ぶべきでああり20世紀までの既存社会とは、異なったものになっています。
にもかかわらず、日本国は19世紀型の西欧諸国の社会システムを維持したままの状態であり、だか麻痺しています。
だから、現在は、社会的問題や課題が山積しています。逆の立場からみれば、様々なチャンスがたくさんあるということです。
私たちが、当たり前に思っているスーパーだって、創設されたのは、金融恐慌のまっただなかの、ニューヨークであり、当時の都市生活者の社会問題を解消すめでした。
当時の都市生活者にとっては、ひび生活していく上で、農村のように顔の見える身近な人たちから、ものを買うことができず、価格的にも、品質的にも、納得する商品を購入することは至難の業でした。こうした、都市生活者の問題・課題を解決したのが、まさにスーパーマーケットなのです。
多くの企業がこのような過去の事例に学び、新たなシステムを構築するという視点で、新規事業を模索すべきであり、こういう姿勢で取り組む企業のみが成功すると思います。これは、ドコモも例外ではないと思います。

本日はどうも有難うございます。これからも、お気軽にコメントを入れていただければ幸いです。よろしくお願いします!!

【中国の南シナ海軍事要塞の価値は500億ドル超】ハワイの米軍施設を超えるか、米シンクタンクが試算―【私の論評】米国の南シナ海戦略:ルトワック氏の爆弾発言と軍事的優位性の維持の意思

  【中国の南シナ海軍事要塞の価値は500億ドル超】ハワイの米軍施設を超えるか、米シンクタンクが試算 岡崎研究所 まとめ 中国の軍事施設の価値増加 : 海南島や南シナ海の軍事インフラの価値は20年以上で3倍以上に増加し、2022年には500億ドルを超える。 楡林海軍基地の重要性 ...