文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授
今週、政府が2015年10月に予定していた8%から10%への消費再増税を延期する方向で最終調整に入っており、安倍晋三首相は再増税延期の是非を国民に問うために衆議院を解散する意向だと一斉に報じられた。ただし、現在首相は外遊中で帰国は17日であり、首相の公式発言からはこうした話は一切聞こえてこず、憶測だけが一人歩きしている状態だ。だが、衆院議員の中にはすでに選挙事務所などを確保している人も多く、もはや解散は止められない様相を呈している。
こうした中で、これまで再増税一辺倒であった民主党も一転して延期容認に傾いているという報道も出てきており、野党も急な選挙で混乱状態に陥っている。何しろ民主党は先の総選挙から2年も経過するにもかかわらず、全選挙区の半分にも候補者を立てられておらず準備不足だ。日本維新の会との連携も不調であり、頼みの野党間での選挙協力も期待できず、あたふたと方針を変更している。日本経済にとっては、民主党を方針転換させただけでも政府の消費再増税延期は評価できる。自民党内の増税派も姿勢を変えるだろう。
そもそも、経済悪化の下での増税はセオリーでない。経済が悪い時には減税、良い時には増税が常識だ。何しろ4月の5%から8%(注:元記事は、11月16日の朝現在では、3%から5%となっていたが、管理人訂正)への消費増税は、従来の消費増税と異なり、他の減税なしでの増税だった。引き上げ幅も3%と諸外国に比べて大きかったので、筆者の予想通り景気は悪化した。安倍首相は経済を重視しているので当然の判断ができるわけだが、再増税をしたい財務省に媚びて誤った内容を伝えるエコノミストやマスコミが多すぎる。そういった人たちの邪推を打ち砕く意味でも延期の意義は大きい。
消費再増税延期、衆議院解散・総選挙の可能性について報じる新聞各紙 |
今週、政府が2015年10月に予定していた8%から10%への消費再増税を延期する方向で最終調整に入っており、安倍晋三首相は再増税延期の是非を国民に問うために衆議院を解散する意向だと一斉に報じられた。ただし、現在首相は外遊中で帰国は17日であり、首相の公式発言からはこうした話は一切聞こえてこず、憶測だけが一人歩きしている状態だ。だが、衆院議員の中にはすでに選挙事務所などを確保している人も多く、もはや解散は止められない様相を呈している。
こうした中で、これまで再増税一辺倒であった民主党も一転して延期容認に傾いているという報道も出てきており、野党も急な選挙で混乱状態に陥っている。何しろ民主党は先の総選挙から2年も経過するにもかかわらず、全選挙区の半分にも候補者を立てられておらず準備不足だ。日本維新の会との連携も不調であり、頼みの野党間での選挙協力も期待できず、あたふたと方針を変更している。日本経済にとっては、民主党を方針転換させただけでも政府の消費再増税延期は評価できる。自民党内の増税派も姿勢を変えるだろう。
そもそも、経済悪化の下での増税はセオリーでない。経済が悪い時には減税、良い時には増税が常識だ。何しろ4月の5%から8%(注:元記事は、11月16日の朝現在では、3%から5%となっていたが、管理人訂正)への消費増税は、従来の消費増税と異なり、他の減税なしでの増税だった。引き上げ幅も3%と諸外国に比べて大きかったので、筆者の予想通り景気は悪化した。安倍首相は経済を重視しているので当然の判断ができるわけだが、再増税をしたい財務省に媚びて誤った内容を伝えるエコノミストやマスコミが多すぎる。そういった人たちの邪推を打ち砕く意味でも延期の意義は大きい。
●財務省が狙う景気条項削除
今、財務省と首相官邸との間では激しいやりとりが行われている。財務省は、1年半の再延長を認める代わりに消費増税法に含まれる景気条項を削除せよと要求しているのだ。景気条項とは、再増税の条件として判断時の景気を見極めることを明記するものだが、これを削除するということは1年半後がいかなる経済状況でも自動的に再増税される時限爆弾といえる。経済政策としては信じ難い内容だが、経済が生き物だということを肝に銘じながら、弾力的な対応ができるよう法整備をしておく必要があることはいうまでもない。
前述の通り、今回の消費再増税延期は日本経済にとっては朗報である。ここ数日間株式市場が上昇トレンドをみせているのは、4月の消費増税で景気が低迷していた分を取り戻しているためであろう。消費再増税を延期すると日本売りが進むという専門家の見方は早くも外れた。延期で当面経済が良くなるわけで、政府はその間に本格的な経済成長策を仕組める。さらに世界経済への貢献という点でも、日本経済が好調なほうがいい。
ちなみに、「海外は消費再増税を国際公約とみなしているので再増税を実行すべき」という意見もあったが、米国財務長官など海外からは「見送るべき」という声も寄せられており、国際公約ではないことが明らかとなった。このように出鱈目な意見が露呈するという意味でも、再増税の見送りは評価されるべきだといえよう。
今、財務省と首相官邸との間では激しいやりとりが行われている。財務省は、1年半の再延長を認める代わりに消費増税法に含まれる景気条項を削除せよと要求しているのだ。景気条項とは、再増税の条件として判断時の景気を見極めることを明記するものだが、これを削除するということは1年半後がいかなる経済状況でも自動的に再増税される時限爆弾といえる。経済政策としては信じ難い内容だが、経済が生き物だということを肝に銘じながら、弾力的な対応ができるよう法整備をしておく必要があることはいうまでもない。
ちなみに、「海外は消費再増税を国際公約とみなしているので再増税を実行すべき」という意見もあったが、米国財務長官など海外からは「見送るべき」という声も寄せられており、国際公約ではないことが明らかとなった。このように出鱈目な意見が露呈するという意味でも、再増税の見送りは評価されるべきだといえよう。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)
【私の論評】狂気の沙汰としか言いようがない10%増税が見送られるのは当然!追加金融緩和だけでは8%増税による悪影響への対策は不十分!なのに組織的認知症を患った財務省は一体何をしている(゚д゚)!
上の記事、誤りを訂正した上で、全文掲載させていただきました。この誤りは、いずれ訂正されるかもしれませんが、明らかに間違いなのでここに訂正させていただきます。残念なミスです。
なお、これがミスであることの根拠は以下の記事をご覧いただければ明白です。
“ネット増税”で景気動向は悪化している―【私の論評】ネット増税ならびにデフレ下での増税は、我が国でも初めてのこと、これを考えれば、景気はかなり悪化することが予想されるが、なぜ今大騒ぎにならないのか(゚д゚)!
すき家HPにある雇用用のバナーの写真
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、上の記事の著者と同じ、この記事の元記事の高橋洋一氏の記事は、以下のように締めくくられています。
消費税増税の効果は、金融政策の緩和効果を相殺し、さらに悪影響を与えている。というのは、97年増税時には、先行減税があり、レベニュー中立(増税と減税が同じ)で行われた。89年消費税創設時には、物品税が廃止され、ネットで減税であった。しかし、今回の増税はネット増税である。これの悪影響がないはずない。89年の消費税創設のときは、消費税が3%に設定されましたが、物品税が廃止されたためネットでは減税でした。97年増税のときには消費税率が3%から5%に引きあげられましたが、これに先行して、先行減税していたので、現実には相殺されていたということです。しかし、今回の増税(5%から8%への増税)は、ネット増税(正味の増税)ということを、高橋洋一氏が書いています。
よって、ブログ冒頭の記事の文書は「5%から8%への消費増税」というのが正しくて「3%から5%への消費税増税」という表記は間違いです。
そうして、この記事で私は、さらに今回の8%増税に関しては、日本では初の、デフレの最中での増税であることを付け加えました。
89年の増税のときには、日本は緩やかなインフレでした。緩やかなインフレ下では、物価もあがりますが、賃金もあがるということで、この時には給料は緩やかでしたが上昇していました。
そうして、97年当時では、デフレ傾向ではありましたが、あくまでデフレ傾向ということであり、増税直前まではまだデフレではありませんでした。完璧にデフレになったのは、98年からです。だから、このときも、少なくともデフレの最中、すなわち、雇用状況が悪化し、給料が下がり続ける最中での増税ではありませんでした。
しかし、今年4月からの5%から8%への増税はデフレの最中での増税です。過去の増税と比較すると、破滅的な増税であったことが理解できます。
4月からの増税は実は破滅的なものだった |
そうして、増税直後から、増税推進派が軽微であると言い繕ってきましたが、明らかに悪い状況が続きました。そうして、これは、まだ序の口に過ぎません。
97年の増税を振り返ってみると、この頃に日銀は金融引締めに転じています。そうして、98年から日本経済は完璧なデフレ状況になり、その状況が今も続いています。
この頃と比較すると、日銀が金融緩和に転じているだけましかもしれません。しかし、そうはいっても、先ほど述べたように、デフレの最中の、ネットの増税です。この悪影響ははかりしれません。
このままでは、金融緩和の効果はかなり緩慢になることは、明らかです。このままの状況を続けていると、いつまでたってもデフレからの脱却ができず、金融緩和の効き目もなしと判断されて、十分効果が出ないうちに打ち切られことにもなりかねないことになります。
そんな状況なのに、さらに10%増税ともなれば、とんでもないことになります。日本では、増税派が多数ですが、まさに、狂気の沙汰と言わざるを得ません。
だから、10%増税を見送るのは、当然として、8%増税による経済への悪影響を避けるために、日銀の金融緩和の他に、政府による積極財政による、経済対策が絶対に必要です。
そうして、それは当面は、公共工事の供給制約がある現在、消費税減税もしくは所得税減税と、給付金政策を実行するべきです。特に、給付金政策に関しては、再配分的な政策を実施できれば、その効果は絶大です。
財務省は、諸費税10%増税を見送れば、社会保障予算を削ると政治家や官僚を恐喝しているが、 増税してしまえば、消費が低迷し税の源泉である国民所得が減り、税収が減りとんでもないことに |
このような状況にもかかわらず、財務省は政治家や官僚などに10%増税しないと、とんでもないことになると、恐喝していましたが、上の記事でも高橋氏が指摘しているように。財務省は、1年半の再延長を認める代わりに消費増税法に含まれる景気条項を削除せよと要求しています。
ここまでくると、狂気の沙汰どころか、認知症です。このような組織的認知症を患っている組織は、この世から消したほうが良いです。
しかし、ただ分割したとすれば、これは財務省の植民地を増やすだけの結果に終わります。財務省という組織を分割して、分割したいくつかの部分を他省庁の下に配置するという完全分割消滅をはかるべきでしょう。
このブログにも過去に掲載してきたように、多くの増税派政治家や財務省に蚊帳の外におかれ無視され続けてきた安倍総理の胸中には、当然のことながら、もし長期政権が実現できたら、当然財務省の完全分割消滅は視野に入っているものと思います。
これから、財務省と官邸との抗争はさらに苛烈になっていくものと思います。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
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第2章の最後の方で、相関関係に留まらず因果関係「失業が自殺を生みだした」の分析がなされています。
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