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2017年9月2日土曜日

【日本の解き方】鳥貴族の値上げやイオン値下げ、個別物価と混同される一般物価 中期的な物価目標と関連は薄い―【私の論評】物価は需給関係だけではなく、日銀の金融政策で決まる(゚д゚)!

【日本の解き方】鳥貴族の値上げやイオン値下げ、個別物価と混同される一般物価 中期的な物価目標と関連は薄い

鳥貴族の看板
全品280円均一の焼き鳥チェーン、鳥貴族が10月から298円に値上げすると発表した。人手不足による人件費増や、材料費などのコスト増が要因とのことだ。こうした動きがある一方で、小売り大手のイオンや西友、家具販売のイケアが値下げを打ち出し、2%の物価目標達成は困難だとの論評もある。

 こうした報道では、「個別価格」と全体の「一般物価」がしばしば混同されている。つまり、雇用改善などを受けた値上げや消費の伸び悩みを受けた戦略としての値下げなど個別企業の動きと、マクロ経済を反映した物価全体の動きについて、区別されていないのである。

<イオンの8月25日からの値下げ商品の一例 >

 個別価格は、それぞれの商品に付けられている価格であり、誰でもイメージできるだろう。

 一般物価については、例えば消費者物価指数が典型例であるが、イメージが難しい。それぞれの個別物価を指数化して、各商品の加重平均ウエートで平均を取るという作り方だ。

 この手法だけを見れば、各商品の積み上げによって一般物価が算出されるので、ある商品の個別価格の上昇がそのまま一般物価に反映されると思ってしまう。しかし、そうならないところが、マクロ経済学のポイントである。

 これは、ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン氏が指摘した「スイッチ効果」と呼ばれる。ある財の個別価格が上昇すると他の財を節約し、その消費が減少することでその財の個別価格が低下するので、結果として一般物価には変化がないというものだ。

 もっとも、現実にはある個別価格の変化がただちに他の個別価格の変化をもたらすような価格伸縮性があるわけでない。このため、短期的には大きな個別価格の変化があった場合、それは一般物価の変化にも影響するが、数年単位でみれば、価格は伸縮的になるので、スイッチ効果が認められる。

 いずれにしても、こうした事情を踏まえると、長期的な視点を含む政策論で考えるときには、個別価格と一般物価は区別したほうがいい。

 個別価格は各財の競争状態で決まる。つまり、ニーズが高かったり、供給が少ないと個別価格は上昇する。

 一般物価はどうかといえば、スイッチ効果で説明したように、所得が一定であれば、高いものを買うときは他のものを控えるが、所得が大きくなれば、他の財の節約は必要なくなる。ということは、所得に応じて一般物価が決まってくるわけだ。

 これをマクロ経済の言葉で言えば、有効需要によって基本的には一般物価が決まる。このため、本コラムで紹介したように、GDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPの差)によって、インフレ率(一般物価の変化率)が決まるのだ。

 その際、以前のコラムで説明したように、インフレ率のみならず失業率も決まる。ここがマクロ経済学のキモである。有効需要をコントロールするために、金融政策と財政政策があるので、それらの即効性や遅効性を考慮しながら、マクロ経済管理をするわけだ。

 こうしてみても、個別物価の動きと中期的なインフレ目標の関連は薄い。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】物価は需給関係だけではなく、日銀の金融政策で決まる(゚д゚)!

個別物価と一般物価のこの違いの理解は非常に重要です。巷では、デフレとかインフレ等と言われていますが、これは何をもって判断すべきかといえば、一般物価によって判断すべきです。個別物価では全く判断できません。

ざっくりわかりやすく言うと、世の中にある様々な財やサービスをバスケットの中に入れてぐちゃぐちゃにして、加重平均したものが一般物価であり。この代表的な指数がブログ冒頭の記事で高橋洋一氏も指摘する消費者物価指数などです。

日本では、一般に以下の3つの指標をもとに景気を判断しています。
  • CPI(Consumer Price Index:消費者物価指数):製品やサービスなど、家計支出割合の大きいものを600品目ほど選び、それぞれの価格をそれぞれの支出割合に掛けて足したもの。価格は毎月の小売物価統計をもとにした平均価格で、支出割合は基準年(5年ごとに改定)のものを使う。総務省が毎月作成・発表している
  • ユニット・レイバー・コスト(単位労働コスト):いわゆる賃金
  • GDPデフレーター:名目GDPを実質GDPで割ることで求める物価指数
特にCPIは重要です。CPIにはコアCPIとコアコアCPIがある。コアCPIは、CPIから生鮮食品を除いたもので、コアコアCPIは、CPIから食品(酒類を除く)とエネルギー価格を除いたものです。これらの指標の意義は、天候に左右されやすい生鮮食品や原油価格の影響を受けるガソリンなどの影響などを取り除き、核となる物価を把握しやすくするためです。

つまり、CPIではなく、コアコアを見ないと物価の状況はよくわからないのです。コアコアCPIは毎月公表され、GDPデフレーターと似た動きをするため、非常に役立つ指標です。ちなみに、海外のコアCPIは日本のコアコアCPIと同じです。

総務省が発表している消費者物価指数
一方、個別価格は読んで字のごとく、車とか住宅とかエネルギーなどの個別の価格のことです。これは、当たり前といえば当たり前なのですが、勘違いする人も多いです。

では、一般物価は何によって決まるかといえば、金融政策によって決まります。つまり、世の中に出回っている全体のおカネの量が一般物価を決めます。

一般物価は人口も個別の需要や供給も、何にも関係ありません。日本国の発行するお金が全てが入る財布があるとします。

この大き財布に入っているおカネの量が一般物価を決めるのです。それとは対照的に、個別価格は、個別の需要と供給で決まるのです。

言い換えると、一般物価は金融政策による全体のおカネの量で決まり、個別価格は需給で決まるのです。

次はすごく大事な論点です。今、ある財の供給が過多になり、個別価格が下がったとします。例えば、自動車の価格やコンビニやスーパーの弁当の価格が需要減で下がりました。

そうなると、マスコミではデフレが深刻化する大変だーと、騒ぐかもしれません。

しかし、待って下さい。一般物価は何で決まるのでしょうか。そうです、金融政策です。金融政策が一定なら一般物価は変わらないはずです。そうです、実際変わらないのです。

ということは、パソコンや自動車以外の価格が上がっているということです。この議論の間違いが非常に多いです。個別価格の低下は、デフレを招く原因になると騒ぎたてる人が多いです。それも識者の中にもそういう人がいるので驚いてしまうことが、しばしばありました。

これは明らかな間違いです。金融政策が一定で消費性向が変化していなければ、ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏が、「スイッチ効果」と指摘しているように、ある個別価格の低下は他の製品の需要を押し上げるはずなのです。

例えば給与が30万円で貯蓄が10万円なら消費に回せるおカネは20万円です。金融政策が同じなら、個別の価格が下がろうが上がろうが、使うお金は20万円であり大きく変わることはないと考えるのです。

これは現実世界でもよく当てはまります。一時良く言われたのが「中国から安い製品が流入するから」という中国デフレ論がありました。これに対する反論は、アメリカをはじめとする先進国なや北朝鮮やミャンマーなどの発展途上国も、も同じように中国製品が流入していますが、全くデフレにはなっていません。

その他、中国だけではなく、他の発展途上国や新興国などから低価格の物品が入ってくることをもって、グローバル化デフレ原因説などもいわれていたことがありましたが、これもあてはまらないのははっきりしています。

確かに、個別物価は安くなっているかもしれないですが、一般物価には関係ありません。一般物価はあくまで、世の中に出回っている全体のおカネの量できまるものです。

これは、消費者は安い商品が海外から入ったにしても、所得が一定であれば、他の財の購入を控えなくなるということです。所得に応じて一般物価が決まってくるということです。

経済のグローバル化がデフレの原因ではない
デフレは個別価格の低下によって引き起こされるものではなく、あくまで金融政策によって決定される消費に回せるおカネの量で決まるのです。そこが非常に大事な論点です。

イオンのように商品の価格を下げたとしても、それ自体が即デフレにつながるというものではありません。あくまでも、デフレは日銀の通貨供給量によってきまるものであり、通貨供給量が低くて、所得が下がれば一般価格も下がるということです。

個別物価の動きと中期的なインフレ目標の関連は薄いのです。イオンが商品価格を下げたことにより、インフレ目標を達成しにくくなるとか、鳥貴族が商品価格を上げたから、インフレ目標を達成しやすくなるというものではないのです。

これを理解すれば、スーパーや、コンビニなどで、お弁当の価格などが急激に下がったとして、それがデフレの原因になるわけでなく、デフレ(日銀の通貨の供給量が本来の市場に見合った量より少ない)が、お弁当などの個別価格の低下をもたす場合もある(いつもそうであるとは限らない)ということが理解できるはずです。

物価の根底には、需給関係だけではなく、日銀の金融政策による通貨供給量があるということです。

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2013年5月2日木曜日

最新「展望レポート」を読む 日銀は本当に変わったか? - 高橋洋一の俗論を撃つ!―【私の論評】守旧派はチェンジしろ!!自ら変わるか、消え去るのみ!!

最新「展望レポート」を読む日銀は本当に変わったか? - 高橋洋一の俗論を撃つ!:

高橋洋一氏

 4月26日に「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)が公表された。昨年10月の同レポートと読み比べると、日銀がどう変わったが見えてくる。

 まず、分量が少なくなった。旧体制の2012年10月のものと比べると、基本的見解で19ページから8ページ、背景説明を含む全文で126ページ から77ページになっている。といっても、内容が薄くなったわけではない。どちらかといえば、旧体制ではどうでもいい資料が多くあったモノを省いて、重要 なモノを加えている。

 例えば、海外のマネタリーベース対GDP比が、白川日銀では掲載されていたが、これは省かれている。この数字は、 GDP比の水準で見れば日本が高いというので、日本が金融緩和している証左と日銀関係者が主張してきたものだが、水準の高低は現金社会かどうかを意味する だけで、その変化を見なければいけない。その意味で展望レポートの資料は、ミスリーディングであった。

 【基本的見解】という文章でも、 新体制と旧体制では変化がある。旧体制では、「国際金融資本市場と海外経済の動向」、「わが国の金融環境」との項目で、ダラダラと現状の記述が続いていた が、新体制ではばっさりと削っている。そして、「わが国の経済・物価の中心的な見通し」と核心部分からスタートしている。このため、前置きなしで日銀の意 図がはっきり表れている。

  インフレ予想を見るときに、①マーケット情報から計測するアプローチ、②家計や企業などに対してサーベイを実施するアプローチの2種類あるが、白川日銀は①は使わずに、②を使ってきた。

  ①は、物価連動国債を使ったBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率、市場が推測する予想インフレ率を表す)だが、それはあらゆる裁定機会を活用して収益 をあげようとする、多様な市場参加者の見方を集約した指標である。いわば身銭を切った取引の結果だ。一方、②は単なる意見であるので、日銀の意向を見越し て答える傾向もある。どちらがより信頼に足り得るか明らかであろうが、白川日銀が使ったのは②だった。これは他国の中央銀行との大きな違いだ。

   黒田日銀が予想に働きかける政策転換をしたので、「経済や物価の見通し」がまったく違う。2014年度について政策委員の見通しの対前年度伸び率の中央 値で見ると、白川日銀では実質GDP0.6%、消費者物価指数(除く消費税増税の影響)0.8%であったのに対して、黒田日銀ではそれぞれ1.4%、 1.4%と上方に改定している。

 こうした数字を見ると、白川日銀は何もやらないことをモットーとしていたと言わざるを得ない。黒田日銀は、普通のことをやるだけなのに、これだけ違っているのだ。

この記事の詳細はこちらから!!
 
展望レポートの表紙


この展望レポートは、下のURLからダウンロードできます。

 http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304b.pdf

【私の論評】守旧派はチェンジしろ!!自ら変わるか、消え去るのみ!!
高橋氏は日銀総裁の交代劇を「白から黒へのオセロゲーム」と形容している
詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、高橋氏は、日銀総裁の交代劇を「白から黒へのオセロゲーム」と形容しています。これは、無論白川氏から、黒田氏への交代ということで、オセロゲームの黒白にかけて言っているものです。そうして、この交代により、日銀理論がすっかり変わってしまったこともかけています。

従来の日銀理論とはどうのようなものだったかを過去を振り返りながら以下に掲載します。この当時は、今と状況が逆で、インフレを終息させることが大きな課題となっていた時代です。

 現日銀副総裁である岩田氏は、1990年代はじめのバブル潰しのための三重野日銀の金融引き締め策、マネーストック(金融機関の預金残高総計)の急激な低下を問題視しました。それに対して、日銀は猛烈に反論し、日銀はマネーストックをコントロールできないと言い張りました。

結局、植田和男・東大教授が「短期的にはできないが、長期的にはできる」と裁定しました。なお、日銀は、従来「マネーサプライ」という用語を使っていましたが、「サプライ」できないということで「マネーストック」と名称変更しています。

1980年代後半当時は、大蔵省は、バブル対処のために証券会社規制と銀行の不動産融資規制を行なっていました。そうして、それらの行為・営業規制の結果、バブルは鎮火していました。当時その上さらに三重野日銀が金融引き締めを実施しようとしていました。

物価の安定は、経済が安定的かつ持続的成長を遂げていく上で不可欠な基盤であり、中央銀行はこれを通じて「国民経済の健全な発展」に資するという役割を担 います。日本銀行の金融政策の最も重要な目的は、「物価の安定」を図ることにあります。資産価格の金融政策運営上の位置付けを考えた場合、資産価格の安定 そのものは金融政策の最終目標とはなり得ないというのが、各国当局、学界のほぼ一致した見方です。金融政策の対象になる一般物価は資産価格を含まず、資産価格が上昇しても一般物価が落ち着いているときには、一般的に金融引き締めを行うべきではありませんでした。

日本の80年代後半のバブルはまさしくそういった状況だったので、三重野日銀の金融引き締めはやはり誤りだったということになります。もし、90年代初頭に、今のようなインフレ目標2%が導入されていたら、金融引き締めの誤りは明白になったと考えられます。

バブルに酔いしれた人々

当時の岩田氏の議論を受け入れなかった「日銀理論」とは「日銀はインフレを管理できない」というものです。物価の番人である日銀がインフレを管理できないというのも奇妙なことです。このほかに、「日銀のやったことは間違いない」という官僚の無謬性もありました。この両者が合体すると、高給を保証されながら、その責任は一切負わなくてよい、という、まことに日銀にとっては好都合ですが、日本経済にとっては不幸なものとなりました。

こうした従来の日銀理論と全く反対なのが、黒田総裁の理論です。日銀は、マネーサプライをコントロールできるというものです。要するに、日銀は、デフレ、インフレをコントロールできるというものです。

従来の日銀理論では、日銀は、デフレもインフレもコントロールできないということでした。しかし、インフレもデフレも純粋な貨幣現象です。なのに、中央銀行である日本銀行がこれを全くコントロールできないというのはもともとおかしな理論です。それは、その時々で、完璧にコントロールできないということもあるかもしれませんが、全くコントロールできないというのは、自ら仕事をしないと言っているに過ぎず、暴言以外の何ものでもありません。

オセロというと、あの霊能力者に洗脳されたともいわれている、オセロの中島知子さんを思い出してしまいます。以下に、洗脳される前と、された後の写真を掲載します。

洗脳されるずっと前の写真が下のものです。



 洗脳されていたころと思しき写真が以下のものです。


 この変貌ぶりは、無論時の流れもあるのでしょうが、私はそれだけではないと思います。本来のまともな状態と洗脳されている状態とでは当然差異がでてくると思います。本来の自分と、マインドコントロールされた、偽りの自分とでは、容貌にも差異がでてくると思います。

日銀も従来の日銀理論に浸っていたときは、中島知子さんが、マインドコントロールされていたときと似たような状況に会ったのではないかと思います。そういわれてみれば、あの白川元日銀総裁、容貌が貧相でした。貧乏神のような容貌でした。日銀が中央銀行の仕事である、貨幣のコントロールができないと思いこむといのは、勤め人が会社の仕事ができないと思い込むのと同じです。その結果日銀は、仕事をすべきときに仕事をせず、仕事をしなくて良いときに余計なことをするという異常な状態が続いてきました。しかし、これももう終焉しました。

現在の日銀の金融緩和は、世界的にいえば、全くまともで普通のことであり、これを異次元の金融緩和などという人は、いずれ淘汰されると、高橋氏は上の記事でも述べていますが、私も全くそうだと思います。旧日銀理論にこだわる守旧派は、自ら変わるか、消えていくしかいなと思います。みなさんは、どう思われますか?

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