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2018年11月30日金曜日

日印関係が実現させる「自由で開かれた」インド太平洋―【私の論評】共産主義の文明実験を終わらせ、「自由・民主・信仰」をもとにした新しい繁栄の時代を開け(゚д゚)!

日印関係が実現させる「自由で開かれた」インド太平洋

岡崎研究所

11月12日付のProject Syndicateのサイトに、ニュー・デリーの政策研究センターで戦略研究の教授を務めるブラーマ・チェラニー氏が「インド太平洋民主主義諸国の協和」と題する記事を寄稿している。その要旨を紹介する。

ブラーマ・チェラニー氏

・米国のペンス副大統領のアジア歴訪が始まった。彼は、「自由で開かれた」インド太平洋地域を提唱する。では、自由で開かれたインド太平洋は実現可能なのだろうか。それを実現しようとしているのが、日本である。「自由で開かれたインド太平洋」は、トランプ政権の戦略となったが、もともとは安倍総理に起源がある。

・日本は、中国の力の台頭に対して、地域での存在感を高めて応じている。日本は世界第3の経済大国であり、先端技術を有し、軍事的制限も緩和し、地政学的影響力を強化している。

・海上自衛隊は、領海を超え地域で活動している。例えば、今年9月には、中国が領有権を主張している南シナ海で、日本の潜水艦1隻と駆逐艦3隻が訓練をした。「アジアの安全保障への日本の参加は、域内で益々重要になっている。」とアシュトン・カーター元米国国防長官は述べた。

・しかし、自由で開かれたインド太平洋の実現は、一国でなせるものではない。地域の主要な民主主義国、日本、インド、インドネシア及び豪州の協力が必要である。

・良いことに、安倍総理は、アジアの民主主義諸国が協力する重要性を認識している。例えば、域内の最も豊かな民主主義国と最大の民主主義国との自然な同盟に触れ、「強いインドは日本に利益をもたらし、強い日本はインドに利益をもたらす。」と述べた。最近の日印首脳会談では、物品役務提供協定への道が開かれ、「2+2」の設定や海洋安全保障協力で合意がなされた。また、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカを含む第三国でも日印両国が連携することになった。

・日印首脳会談では、「共有された安全保障、共有された繁栄、共有された運命」との新たなモット―が掲げられた。富士山近辺の安倍総理の別荘で歓迎されたモディ首相、その温かな友情の関係は、その2日前に行われた習近平との日中首脳会談とは対照的だった。

・日印関係は、日米印三国の「マラバール」海軍演習でも築かれている。マラバールは、インド太平洋地域の自由航行を守るのに重要なものとなっている。

・幸いに、インド太平洋の主要な海洋民主主義国家、豪州、インド、日本及び米国の関係は、かつてないほど強固である。域内での協力拡大を図るために、「4か国」の構想は、制度化すべきだろう。

・域内の協力に関して、障害もある。1つは、米国の同盟国でもある韓国と日本との歴史問題である。「慰安婦」問題では、2015年の日韓の「不可逆的」合意を現在の文大統領が拒否した。「徴用工」問題でも、1965年の「完全かつ最終的」合意があるにかかわらず、最近、最高裁が日本の企業へ支払いを命じる判決をした。韓国は、歴史を軽視するのではなく、インド、台湾、フィリピンやインドネシアがかつての宗主国とそうしたように、日本と相互利益となる新たな関係を築くべきである。

・インド太平洋地域の民主主義諸国の協和においてもう1つの潜在的障害は、鍵となる諸国の内政の不安定化である。例えば、戦略的な位置にあるスリランカでは、大統領が憲法にない権限を行使して、首相を解任した。

・いずれにしても、日印関係の緊密化は、中国中心のアジアの出現を制止するのに役立つだろう。日本とインドの関係が、域内の民主主義諸国の連携を強化する方向に働けば、自由で開かれたインド太平洋の実現も不可能ではない。

出典:Brahma Chellaney ‘A Concert of Indo-Pacific Democracies’ Project Syndicate, November 12, 2018

 チェラニー氏は、2009年からProject Syndicateに寄稿している。概して、親日的、民主的な論調で、今回の記事は、東京から寄稿している。

 戦略研究家としてのチェラニー氏は、上記記事の中で、幾つか重要なことを指摘している。1つ目は、安倍総理のイニシアティヴである。安倍政権は、上記の日印関係以外にも、日米、日米豪、日米英仏、日英、日仏等とも積極的に共同軍事演習、軍事訓練を行っている。また、今回APEC首脳会談が開催されたパプア・ニューギニアを含むインド太平洋諸国に、能力構築支援を行っている。

 2つ目は、主要な海洋国家、日米印豪の連携を提唱している点である。これは、かつて安倍総理が「ダイヤモンド構想」として、これら4か国の連携を挙げたのと一致する。インド太平洋地域の主要な拠点で、これらの海洋国家が協力できれば、自由で開かれた地域の実現に向けて大きな力になるだろう。

 3つ目は、域内の主要な民主主義国として、日印豪の他、インドネシアを挙げていたことである。インドネシアは、ASEAN諸国の中でも最大の人口を有し、面積も、シンガポールから豪州までにわたる諸島を領土とする。世界最大のイスラム教国家でもあり、共に行動できれば、地域の安定に資するだろう。

 4つ目は、問題点として韓国とスリランカを挙げたことである。現政権ないし大統領が中国寄りなのを懸念しているのが分かる。

 チェラニー氏が特に指摘はしなかったが、地域で重要なのがASEAN諸国である。シンガポール、フィリピン、タイ、ベトナムしかりである。このことは、安倍総理も、モディ首相も、トランプ大統領等も理解している。

【私の論評】共産主義の文明実験を終わらせ、「自由・民主・信仰」をもとにした新しい繁栄の時代を開け(゚д゚)!

トランプ政権主導の下、「自由で開かれたインド太平洋戦略」が着々と進みつつあります。

 「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは、太平洋に位置する民主主義国家の連携を強めるという外交戦略で、米国が日本や印度、豪州と協力して推進しています。2016年に安倍晋三首相が提唱した構想を、翌年に発足したトランプ政権が「中国封じ込め」の意図を明確にして大々的に打ち出しました。安倍首相の16日〜17日の豪州訪問も、この一端に位置付けられます。

こうした外交戦略を背景に、米国が本格的に印度を戦略的パートナーに位置づけようとしています。9月初旬には、マティス米国防長官とポンペオ米国務長官がインドを訪れ会談を行いました。

「印度太平洋軍」と名称を変更した「太平洋軍」

これに先立ち5月、米国は、太平洋から東アジア、東南アジア、オセアニア、南アジア、インド洋までを担当するアメリカの「太平洋軍」を「インド太平洋軍」に改称しました。

さらに7月には、インド太平洋地域のインフラ整備などを支援するファンドを設立すると表明しました。1億1300万ドルを拠出し、順次増額する方針を示しています。莫大な投資によって発展途上国への経済的・政治的影響を強める中国に対抗するためのものだと言えます。

こうした流れの中、ブッシュ政権で二期にわたって国務次官を務め、民主・共和両党で政策立案に携わったポーラ・ジョン・ドブリアンスキー氏の寄稿が、8月21日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載さました。

ポーラ・ジョン・ドブリアンスキー氏

同氏は、中国を封じ込めるには米印関係のさらなる強化が急務だとし、印度を次のように評価しました。

「世界で最も人口が多い民主主義国は、中国の覇権主義をとどめる力となり得る」

「真の戦略的パートナーシップは、米国と印度の両国に、とてつもなく大きな利益をもたらす。印度は真に国際社会におけるパワーになる機会を手に入れる。米国は、世界の安全保障の問題に対して一層の協力関係を築き得るような、地域における巨大な同盟国、そして中国への対抗勢力を手にすることができる。永続的な米印のパートナーシップを確立することは、トランプ政権と米国の大きな戦略にとって、形勢を一変するような成功になり得る」

ただ、ドブリアンスキー氏も寄稿で指摘したように、米印関係強化や米印同盟の締結にはいくつかの課題があります。

その中でも特に大きいのが中東諸国との関係です。例えば、イランとの関係が挙げられます。トランプ政権はイランに強硬姿勢を示していますが、インドにとってイランは石油の供給源。米国と手を結ぶことによるイランとの関係悪化は避けたいところです。米印同盟の締結には、"地ならし"が必要となります。

一方、日本は敵対国が少ないため、インドとの関係強化を妨げる障害がほとんどありません。米印の関係強化に時間がかかるのであれば、先に日本と印度で同盟を結び、日本を介して日米印3国の連結を強めるということも視野に入れるべきです。

対中国ネットワークの確立において、日本が果たせる役割は大きいです。トランプ政権と足並みをそろえながら、印度やマレーシア、台湾などアジアの民主主義国家と積極的に関係を強めることが求められます。安倍総理は、実際にそれを目指して、その方向で全方位外交を実践しています。日本では、それをマスコミが報道しないので、多くの人々に知られていないだけです。

そうして、これが成就すれば、中国、特に中国共産党の崩壊は意外とはやいかもしれません。

現在は習近平氏の「終身独裁」体制が中国国内の言論の自由を抑圧している状態ですが、それがどこまで続くかは分からないです。

ソ連のゴルバチョフは85年、3人の党書記長の死を受けて彗星のように登場しました。その後のソ連崩壊までわずか6年。紀元前3世紀の秦の始皇帝の独裁体制がわずか10年余りで打倒されたようなことは十分起こり得ることです。

ミハイル・ゴルバチョフ氏

今は鳴りを潜めている改革者が中国内から出て来て、香港の民主派やチベット、ウイグル、内モンゴルの独立派が呼応し、「一党独裁の放棄」へと動く時機がくることになるでしょう。かつて辛亥革命(1911年)の指導者・孫文を助けたように、日本が次の中国の国家モデルを提案しつつ、支援する準備が今から必要です。

ソ連と同様、「富の力」と「神と自由を求める人々の心」が中国の共産党体制を葬り去るでしょう。トランプ大統領の外交・安全保障政策は「自国ファースト」と見えながらも、全体をつなぎ合わせて見ると、世界新秩序づくりへと向かっています。170年におよぶ共産主義の文明実験を終わらせ、これから数百年の「自由・民主・信仰」をもとにした新しい繁栄の時代を開くビジョンを固めるべきです。

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