さて、一昨日は「1ドル70円台の日本経済:三橋貴明(作家)」を掲載させていただきました。この内容、私がかねてからこのブログで主張してきたことを、包括的にしかも判りやすく掲載しているため、全文を掲載させていただきました。
しかし、この原文、物語形式なので、読んでいて面白いのですが、引用したりとか、全体を短時間で把握するには、向いていないと思います。そこで、私は、あの内容をレポート形式としてまとめなおしてみました。無論、私がかねてから主張してきたこともつけくわえてありますが、あくまで、この文章の主張などを変えない範囲で付け加えたりしています。是非、ご参考になさってください。なお、引用などした場合には、ソースは「1ドル70円台の日本経済:三橋貴明 参照 一部付加・改変」ぐらいにしておいてください。
超円高で経済破綻はしない
歴史上、通貨高で経済破綻した国は、1つもない。その逆、つまり通貨暴落で経済破綻した国は山ほどある。さらに、過去の歴史からいうと、日本では急激な円高にあった後は、必ず内需主導型の好景気になっている。
日本は外需依存国ではない。日本のGDPに占める輸出の割合(輸出対GDP比率)は、16%程度である。しかし、他の国と比較すると、アメリカに次いで低い。ドイツや、中国、それに韓国の場合は40%を超える。これらの国は超外需依存国と言ってよいだろうが、日本に関しては、あてはまらない。それに、10年前までは、日本の輸出対GDP比率は8%以下だった。こうしたことからしても、日本は過去も現在も内需大国だったということができる。
特にこの10年間は、この比率が伸びたことをマスコミは過大評価して、日本は「輸出大国である」という間違った観念を植えつけてきただけである。そうして、特に近年、トヨタや、ソニーなどの名だたる輸出花形産業が、個人消費者による多額の借金で形成されたバーチャル市場とも呼べる幻の市場に対して、輸出を伸ばしたため、今回の金融危機の直撃をくらったのである。従来のように、国内市場重視の体制を崩さなければ、現在のようなことにはならなかっただろう。
さらに、実質実効為替レートをみると、また違った見方ができる。実質実効為替ルートとは、アメリカドルだけではなく、日本と関係がある国や地域の為替レートを貿易量で加重平均して算出した為替レートのことである。
名目実効為替レートは、関係国の物価水準の変動を加 味していないから、輸出の厳し さを正しく測れない。どれだけ名目実効為替レートが高くなっても、相手国の物価がそれ以上に高騰すれば、輸出はかえってしやすくなる。
日 本の輸出企業が本当に厳しくなるのは、物価変動を加味した実質実効為替レートが上昇したときである。もちろんいまは名目値の円レートが高くなっているので、実質実 効為替レートも上昇している。しかし、いまだに130ポイントにも届いていないため、せいぜい2001年レベルでしかない。1995年に 1ドル80円を切ったときは、実質実効為替レートが160ポイントを超えたから、あのときに比べれば、いまはまだ円安基調である。それで本当に輸出産業が全滅などということはあり得ない。
内需拡大は絶望的というのは大嘘
マスコミなどが流布する内需は絶望的などという話は、因果関係が全く逆転している。大方のマスコミの論調は、日本では、内需の拡大が困難だから、輸出で成長していくしかない、だから、円安のほうが望ましいとしている。
しかし、マスコミのこうした論調は、論理が逆転している。内需の成長が抑え込まれているのは、そもそも円安だったからである。これは、円が安くなっているときは、日本人の購買力がどんどん削られていっていることを意味する。輸入価格が上昇するから、日本人の購買力が小さくなれば、国内を主な市場としている中小企業は、経営的に厳しくなる。外国への輸出で稼いでいる大企業はともかく、円安になれば中小企業の収益力が落ちて、内需の成長率が低下する。
内需を成長させたいなら、円高にすれば良いということになる。マスコミの論調は、日本の個人消費は規模が大きくないから、円高で個人の購買力を強くなってもその影響力は小さいというものである。
しかし、日本の個人消費の規模が小さいということはない。現実に日本の個人消費はGDPの56%を占めている。実に日本のGDPは、半分以上が個人消費である。これは、個人消費が7割近いアメリカよりは、低いが、個人消費がGDPの3割程度しかない中国等とは、比較にならないほど大きい。
しかも、ご存知のように、アメリカの場合は特にここ10年間は住宅、車などの個人消費を煽るにいいだけ煽っての7割である。ちなみに、アメリカの個人が抱えた借金は2007年度で1000兆円に達している。日本の場合は、380兆円と個人の借金もアメリカから比較すると相当低いにもかかわらず、5割である。また、中国の個人消費はGDPに占める割合が年々減りつづけているが、日本のほうは逆に増えている。昨年にしても、あれだけ不景気だ、不況だってマスコミが悲観論をばらまいたのに、日本の個人消費はそれなりに成長していた。ただし、これは、円が高くなり日本人の購買力が高まったのが原因だと考えられる。
ちなみに、超外需依存国である中国の純輸出(輸出-輸入)、すなわち、外需がGDPに占める割合は10%近い。純輸出がGDPの1割近く、ここまで外需に頼りきっている国は他には見られない。逆に日本の外需、つまり純輸出がGDPに占める割合は、2%未満である。つまり日本のGDPは、実は98%以上が内需である。
ところが、マスコミなどは、「日本は少子化で人口が減少しているので、内需がこれから伸びる余地はない」という論調である。しかし、人口減があったにしても、それは現状では微々たるものである。たとえば、昨年は日本の人口が約5万人ぐらい減少したが、これは日本の人口の0.04%にも満たない人数である。これは、誤差レベルにも満たない。この程度の人口減少が内需に大きな影響を及ぼすことなどあり得ない。
日本のGDPの半分以上が個人消費であることから、日本に住む人が1年間に2%だけ消費を増やせば、それだけでGDPが1%増える。この事実からも人口よりも個人の消費の影響のほうがはるかに大きいことが理解できる。
政府の「債務」は民間の「債権」
政府は現在参院で議決がストップしている補正予算(2月24日現在)まで含めると総額75兆円に及ぶ内需拡大に的を絞った景気対策を打つ。
しかし、マスコミは、財政破綻寸前の日本が、75兆円もの景気対策を打てば、瞬く間に財政が崩壊するなどとしている。しかし、ここまでくると、マスコミのいうことも噴飯ものであり、こんな滅茶苦茶なことはあり得ない。
日本政府の債務は確かに一見巨額だが、95%以上が国内向けの国債、分かりやすくいうと日本国内の民間からの借り入れである。つまり円建ての債務ということになる。ちなみに、アメリカの場合は、ほとんどが海外からである。最近中国のアメリカ国際の保有高が、日本を超えたことは記憶新しい。日本円という通貨を発行できる政府が、円建て債務のせいですぐに財政破綻することはあり得ない。
マスコミの中には、夕張は、財政破綻したし、現在はそのような自治体は星の数ほどある。これは、政府でも同じことだろうと、無茶苦茶な論理を前提に語る輩も多い。しかし、夕張市には紙幣発行権はない。夕張市が日本円を刷ったら、それは犯罪である。夕張市のような地方自治体と日本政府を一緒にすること自体に無理がある。
さらに、財務省が掲載している日本政府のバランスシートを見るすぐに分かることだが、日本政府の債務、つまり負債は840兆円もある。しかし、同時に資産もかなり大きい。なにしろ政府の金融資産だけで550兆円近くもある。これだけ巨額の資産をもっている政府は、世界中で日本だけである。債務額から金融資産を 差し引いた純債務額で見れば、日本の政府の債務はGDPよりも少なくなり、普通の先進国並みである。
さらに、日本政府がどうしてここまで債務を膨らませることができるかといえば、貸してくれる人がいるからである。当たり前のことだが、貸し手がいなければ借り手は借りることができない。日本政府の債務のほとんどは、さっき掲載とおり日本の民間から借り入れである。ということは、政府の債務はそのまま日本の民間の『債権』ということになる。
マスコミは『国民1人当たりの借金』といって危機感を煽っているが、これもひどいミスリード、というかインチキ・レトリックである。正しい言い方に改めるならば、『国民1人当たりの政府に対する債権』になる。借りているのは政府であって、国民ではない。国民は貸しているほうである。
国債を買っている人たちは、資産運用として国債を保有しているわけであるが、償還するといわれても逆に困るのではなかろうか。国債が償還されても、みんな 結局また国債を買う羽目になる。なぜなら、日本国債以上の安全資産は、この世に存在しないからである。特に、金融危機後はそうである。だから、日本政府は国債の償還期日が来たら、同額の国債 を発行して半永久的にロールオーバー(借り換え)していけばいいだけである。日本国内に国債の買い手がいるかぎり、日本政府の債務規模は問題になるわけがない。しかも日本の家計の金融資産が1400兆円を超えている状況だから、日本政府が国債の買い手に困ることはない。しかし、これが外国の場合だとそうはいかない。こんなに金がぎっしり詰まっていて、それで外国からモノを買える国は他にない。
世界経済への義務を果たそう
日本政府は通貨発行権をもっている。いざとなれば、日本政府は日銀に日本円を発行させて、国債を買い取らせることも可能である。日本政府が財政破綻など、現実にはありえないことである。現にアメリカが現在、FRBにドルを増刷させて米国債を買い取らせている。いよいよになれば、日本もこれと同じことを実行すれば良いだけである。しかし、日本は、そのような危機的な状況からほど遠い。
現状では、政府の債務が800兆円を超えていようが、75兆円の景気対策を打とうが、大した問題ではない。景気対策が順調に行なわれて、名目成長率が上がれば、政府債務のGDP比はそれに対応して小さくなっていく。それよりも、特に財政危機でも何でもないのに、景気対策を打たずに内需拡大の機会を逃すほうが余程危険である。短期的であり、さらには、数も少ないが、円高で輸出企業、特に中小企業が厳しくなっているのは、紛れもない事実である。これらを長期間放置しておくことは、できないだろう。ちなみに、75兆円のうち、33兆円は中小企業対策である。
ただし、輸出企業が厳しいのは、マスコミが主張しているように、円高よりも世界的な需要の縮小のほうが原因としては大きい。だからこそ、世界中の政府が財政支出をして景気を下 支えしようとしている。そんなときに、日本だけが何もしないわけにはいかない。現在、円高という日本の内需に対する絶好の追い風が吹いている。
サブプライム危機やリーマン・ショックで、主だった国は皆借金頼みの不動産バブルや株式バブルが崩壊して、内需がかつてなかったほどに低迷している。実体経済そのものが弱体化しているのである。そんななかで、幸運なことに日本の内需はほとんど痛めつけられていないうえ、もともと規模が世界で2番目に大きい。内需を拡大させて、輸出よりもむしろ輸入を拡大して、世界経済復活のために貢献しなくてはならない。これこそが世界経済に対する日本の義務であり、いま、日本がやるべきことである。また、そうしなければ、できる能力があるのに実行しないということでアメリカなどから外圧がかかってくることも十分考えられる。そうして、麻生政権は内需拡大を実行しようとしている。
こうした現状を考えると、本年5月頃には、景気回復の予兆が見え始め、9月あたりからは、回復することになる。年度末には、内需主導型の景気拡大は確かなものとなる。3ヶ月~半年のズレはあるかもしれないが、概ねこうしたスケジュールで景気回復が進むと考えられる。先進国では、日本が最も早く進むと考えられる。ちなみに、5月からトヨタは増産体制に入る。
景気回復の兆しが確かになった頃には、ニュースステーションで、古舘キャスターはまるで苦行僧のように顔を歪め、悔しそうな口ぶりでニュースを読み上げることになる。以前のヒステリックに日本の経済危機を煽るような態度とは、うって変わって。「繰り返します。内閣府が本日発表した前四半期における日本のGDP、国内総生産は、輸出の大幅な落ち込みを個人消費の増加がカバーし、若干のプラス成長に終わりました。全般的に輸入価格が下落したことや、ガソリンが1リットル100円を切ったことなどが、消費を下支えした模様です……」
マスコミのおばかな論調を叩き潰そう!!
さて、上記の文章のもととなった文章の内容、素晴らしいと思います。この文章に関して、書かれてあるブログをいくつか見ましたが、概ね好感を持って迎えられています。さらに、批判的なものもありましたが、それについては、まずは真偽を自分で確かめないで、「マスコミに限らず、サイトの情報も疑おう」というものや、掲載された数値についての判断に関して重箱の隅をつつくようなものでした。
私自身は、この文章を読む前から、この文章の裏取りはすでに終了していたので、ほとんど違和感は感じませんでした。確かに、細かなところをいうと、多少数字がずれていたり、作者は経済学者ではないので、本当に細かなところまで整合性がとれているとは言いがたいと思います。
しかし、この作者が意図するところに関しては、いささかも矛盾するところはないと思います。
さて、こうした情報を持った私たち、やるべきことは、「マスコミのお馬鹿な論調を叩き潰す」ことだと思います。上記の私のまとめの文章、(ただし、ソースは、「1ドル70円台の日本経済:三橋貴明 参照 一部付加 改変」)ということで、存分にお使いください!!
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