日本の原発の配置図(東日本だけで、14機ある) |
東京電力は、計画停電(輪番停電)を今夏だけでなく、今冬も続けなければならない、との見通しを明らかにした。東日本大震災の津波で、福島県と茨城県の大規模火力発電所が、現時点で復旧の見通しが立たないほど壊れていることが分かったためだ。
東電幹部が朝日新聞の取材に明らかにした。夏冬の計画停電で家庭や職場の冷暖房の使用が厳しく制限されるのは必至だ。夏の計画停電は、気温が高い午後2~3時を中心に実施される見通し。停電規模は、気温の上がり方次第で大きくなる可能性がある。首都圏への電力供給が長期間制限されることで産業界も大打撃を受けそうだ。
大きな被害がわかった火力発電所は、広野火力発電所(福島県広野町)と、常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)。発電所の設備や、石油や石炭など燃料の貯蔵施設が津波で壊れた。両発電所の合計出力は480万キロワットで、同じく津波で損壊した福島第一原子力発電所(福島県大熊町・双葉町、469.6万キロワット)に匹敵する。
2800万世帯に電力を送る東電管内のピーク需要は、冷房が必要となる夏場が6000万キロワット前後、暖房需要が高まる冬場が5000万キロワット前後。これに対し東電の現在の供給力は3500万キロワット前後にとどまる。
東電は、休止している小規模火力発電所を立ち上げるなどして、4月中に4000万キロワット程度まで引き上げる計画だ。さらに、ガス会社などの電力卸供給事業者(IPP)からの電力買い取りなどを進め、夏までに4700万キロワット程度に増やす予定。しかし、それでも夏時点で1000万キロワット(333万世帯分)、冬も数百万キロワット足りなくなる計算だ。
電力は、水やガスのようにタンクに大規模にためられない。そのため、需要分だけ供給力を用意する必要がある。電力会社は自社の発電所で必要な電力を賄えない場合、ほかの電力会社から電力を融通してもらうが、周波数の違いから、西日本の電力会社から受けられるのは100万キロワットまで。東北電力は周波数が同じだが、被災で電力が不足しており、融通は期待できない。北海道電力からも送電技術の限界から60万キロワットしか受けられない。
東電幹部は「再稼働した火力も、いずれ定期検査に入るのでずっと発電できない。今夏、今冬だけでなく来夏も綱渡りが続きそう」と話している。
【私の論評】この新聞記事は、昨日のアエラに続く、大煽り記事の可能性がある?!
この記事、本日のasahi.comiに5時40分に掲載されていた記事です。朝日新聞といえば、昨日も、朝日新聞系列の雑誌アエラの煽り表紙と、煽り内容の内容を記載しました。アエラはかなり糾弾されています。しかし、本日のこの記事もかなり、煽り記事の線が強いと思います。
その根拠として、まず第一にこの記事に東電側の幹部の名前が記載されていないということがあります。これが、東電側の正式な見解であるとすれば、当然幹部が氏名を明らかにして、この記者に情報提供をするはずだと思います。
第二に、この記事は朝の5時台に、サイトに掲載されています。私は、朝日新聞は購読していないのでわかりませんが、サイトに掲載されたものですから、当然本日の朝日新聞の朝刊に掲載されたものと思います。これは、内容からいって、大スクープです。事実であれば、朝日新聞の見事な大すっぱ抜き記事のはずです。ただし、事実であれば・・・・・・。しかし、本日はもう20時を過ぎています。にもかかわらず、他紙ではこのニュースが一切報道されません。
これほどの大ニュースなら、他社も報道するはずです。それに、政府も発表するはずです。もし、朝日新聞が報道しているにもかかわらず、これが真実であり、政府が発表しないということになれば、政府が大きな非難を浴びることは火を見るよりも明らかなことです。なのに、今にいたるまで、政府から発表がないというのはどうしたことでしょうか?
第三に、東北電力から全く電気の供給が受けられないようなことを掲載してますが、そのようなことはないと思います。19日にこのブロクでは、エコノミストの鈴木淑夫のインタビューの内容を掲載しました。
そのなかで、鈴木氏は、東日本の原発の状況について以下のように語っていました。
西日本には、供給余力がある。だから、日本全体が供給面が今回の震災によって大打撃を受け、回復するのに時間がかかるということはない。
ただし、電力だけは、西と東ではサイクルが違うので、関西電力の電気をすぐに東日本に供給するということかできない。そのため、震災直後のダメージが大きくなっている。このように、原発トラブルは、経済に対する甚大な影響を及ぼしている。しかし、冷静にみれば、東日本には、実は原発が全部で14機ある。そのうち、3機は、定期修理で止まっていたので、無傷である。さらに、11機動いていたもののうち、6基は、今回の震災にあっても、無事に自動停止している。こ6機には何の問題もない状態にある。
日本の原発は大きな地震があると、自動停止することになっている。そのため、今回の11機はすべて地震とともに自動停止した。ただし、自動停止してそのままにしておくと、核燃料の温度が上がるので、冷却をする必要がある。ところが、冷却するための水を送るポンプが津波によって破損してしまい冷却できない状況になったのが、現在の福島原発の1~4号機である。
先の何の問題もない6機と、定期修理の3機とをあわせると東日本の原発合計9機は短期間で起動可能である。よって、短期間で電力需要もまかなえるようになり、供給面でも支障が出なくなるだろう。したがって、日本全体では、供給面ではかなり短期(1~2ヶ月)で回復することが想定できる。
上記の記事で、鈴木氏が供給といっているのは、日本経済全体の需要と供給のうちの供給をいっているのであって、電力供給のことではありません。経済の供給が2ヶ月で回復するというのなら、電力はその前に回復するはずてす。それに、鈴木氏の言っている東日本とは、おそらく、福島を含む、東北6県、ならびに北海道のことです。9機の原子力発電所がフル稼働すれば、かなりの電力をまかなえるはずです。
それに、北海道・東北という全域でみれば、何も福島県だけではなく、点検中で稼働していなかった他の火力発電所もあるかもしれません。さらには、水力発電もあるでしょう。こんなことを考えると、どうも、冬までどころか来夏まで計画停電というのは大げさなような気がします。
東京電力の幹部は、あくまで東京電力の社員か役員であって、きっと他の電力会社の内容に関しては、詳しくないのかもしれません。そんな、幹部の狭い範囲の情報から出た悲観的な意見ということだと思います。
それをそのまま、報道したとすれば、この記事は単なる煽り記事であるどころか、人々を不安に陥れる本当に悪い記事ということになります。もしそうであれば、朝日新聞社は、アエラに続いてこんな酷い記事を掲載したということになります。そうして、その原因は、アエラのことについて記載したブログの中に書いたことと同じ理由だと思います。
これに関しては、いずれ何日かすれば、明らかになると思います。私は、上記の観点から、ほとんどガセネタだと思います。それにしても、なぜ、これを記事にしてしまったのか?それは、私の推測では、原発反対キャンペーンの下地作りということだと思います。
そうだとすれば、本当に悪質だと思います。原発反対をする人たちの考えはよくわかります。しかし、だからといって、このような内容を良く確かめもせずに、掲載し、しかも、それがガセネタであったとしたら、かなり悪質です。
原発に反対である人の立場に立ったとして、これから火力発電などにシフトするにしても、建設には何年かはかかります。私の大学の先輩で、原町火力の建設にかかわった人がいます。当時私は、仙台に住んでいましたが、このかた、仙台支店の方でしたが、たしか何年かは、原町市に足しげくかよっていました。だから、すぐに原発の大部分を停止させれば、しばらくの間電力供給が落ち込み大変なことになります。企業活動も制限を受け、さらに、多くの人も不便を余儀なくされます。命の危険がある人もいるかもしれません。であれば、原発を停止するなどにしても、やり方というものがあると思います。そうした人々のコンセンサスをとりつつ、ソフトランディングをしていく必要があります。そんなことを無視して、先の記事を掲載したというのなら、本当に悪質であるといわざるをえません。
いずれ、ガセネタということがはっきりしたら、徹底的に糾弾してやろうと思います。
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