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2018年8月6日月曜日

【瀕死の習中国】中国国有企業の「負債はケタ違い」 衝撃の欧米リポート―【私の論評】米中貿易戦争にほとんど悪影響を受けない現在の日本の構造上の強み(゚д゚)!

【瀕死の習中国】中国国有企業の「負債はケタ違い」 衝撃の欧米リポート

習近平とトランプ

 米中貿易戦争の勃発を奇貨として、国有企業の整理を断行するタイミングを得たと判断した中国共産党は、お荷物だったゾンビ企業をバッサバッサと切り捨てる政策に切り替えた。

 香港を拠点にするアジアタイムズによると、国有企業の負債総額はGDP(国内総生産)の159%に達した(2017年末速報)。すでに約2100社の倒産が伝えられた。

 ゾンビ企業の名前の通り、生き残りは難しいが死んでもお化けとなる。OECD(経済協力開発機構)報告に従うと、中国における国有企業は約5万1000社、29兆2000億ドル(約3263兆1000億円)の売り上げを誇り、従業員は2000万人以上と見積もられている。

 マッキンゼー報告はもっと衝撃的だった。

 2007年から14年までの間に、中国の国有企業の負債は3・4兆ドル(約379兆9500億円)から、12兆5000億ドル(約1396兆8750億円)に急膨張していた。

 「中国の負債総額のうちの60%が国有企業のものである」(ディニー・マクマホン著『中国負債の万里の長城』、本邦未訳、ヒュートン・ミフィリン社、ロンドン)。

 中国当局がいま打ち出している対策と手口は債務を株式化し、貸借対照表の帳面上を粉飾することだ。負債を資産に移し替えると帳面上、負債が資産になるという手品の一種だ。ただし、中央銀行は「この手口をゾンビ企業には適用しない」としている。

 すでに石炭と鉄鋼産業において大量のレイオフが実施されているが、19年度までに、あと600万人の国有企業従業員を解雇し、そのための失業手当を230億ドル(約2兆5730億円)と見積もっている。しかし、中国がもっとも懸念するのは社会的擾乱の発生である。

 「一帯一路」(シルクロード経済ベルト=BRI)構想は、まさにこのような過剰在庫と失業を処理するために、外国へプロジェクトを無理矢理に運び、在庫処分と失業者の輸出を断行することである。

 筆者が数年前から指摘してきたことだが、最近、米国シンクタンク「ブルッキングス研究所」も同様な分析をするようになった。

 現に、中国の甘言に乗って、BRIプロジェクトを推進している国々のうちで、89%が融資をしている中国企業の受注であり、7・6%が当該国の企業、3・4%が外国企業受注でしかない。

 「旧東欧諸国でも、この中国の借金の罠に落ちようとしている国々が目立つ」と、中独蜜月時代を終えたドイツの「メルカトル中国問題研究所」の報告も発表している。

 中国は最大最悪の経済危機に直面したのである。 =おわり

 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『アメリカの「反中」は本気だ!』(ビジネス社)、『習近平の死角』(扶桑社)など多数。

【私の論評】米中貿易戦争にほとんど悪影響を受けない現在の日本の構造上の強み(゚д゚)!

中国当局が打出した、企業の巨大債務への対策である、債務を株式化も実はあまりうまくはいっていないようです。

中国政府は2016年10月、世界最大級に膨らんだ中国企業の債務削減の一環としてデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)プログラムの指針を公表しました。当初の狙いは健全な企業が有利子負債を減らすために同プログラムを利用し、肥大化した企業は排除するというものでした。

ナティクシスによれば、昨年4-6月(第2四半期)に株式に転換された債務はこれまでで最大で、プログラム開始後の累計は7760億元(約12兆7200億円)規模に達していました。


ところが、同プログラムは常に当初の狙い通りに実施されてきたわけではありません。中国国務院は昨年10月、赤字続きながら存続している「ゾンビ企業」はこの制度に参加しないとの見通しを示していましたが、ナティクシスの推計では昨年4-6月期のスワップの55%は過剰生産に悩まされている石炭・鉄鋼業界で行われました。


格付け会社フィッチ・レーティングスは、「ゾンビ」の明確な定義がないことが一つの問題だと指摘。BNPパリバ・アセット・マネジメントの大中華圏担当シニアエコノミストの羅念慈氏は、経営状態の悪い企業が債務の株式化を救済を受ける手段と見なしているため同プログラムに引き付けられていると述べました。

スワップの増加はリスクが個人投資家に移りつつあるとの懸念も引き起こしています。ファンドがそうした株式を高利回りの資産運用商品である理財商品に組み入れているためです。ナティクシスのチーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏(香港在勤)は「家計が打撃を受けつつある」と指摘しました。

このようなことを実施しても、結局家計につけがまわってくるということです。これでは、何の解決にもなりません。

以上が昨年の状況です。昨年は米国から貿易戦争を挑まれていまれていない中でこの状況ですから、貿易戦争が始まってからはさらにとんでもない状況にあることは間違いないでしょう。

さらに、このブログにも掲載してきたように一帯一路も、失敗です。この状況の打開は、習近平はおろか、中国共産党の幹部の誰一人不可能でしょう。

さて、このような状況の中日本はどうなるかといえば、悪いことばかりではありません。まずは3日のブルームバーグ・ニュースの報道によれば、
2日連続の下落により中国の株式時価総額は6兆900億ドル(約676兆円)となりましたが、日本は6兆1700億ドル(約685兆円)となりました。
日本の株式時価総額は中国を越え、世界第二の株式市場となり、米国の31兆ドル(約3441兆円)に次ぐ規模となりました。中国の株式時価総額は、2014年に日本を超え、2015年6月には10兆ドル(約1100兆円)の過去最高を記録していた。
と伝えました。 これからも、この傾向は続くことでしょう。

さて、株価だけに限らず、米中による制裁・報復の間隙を縫って日本が「漁夫の利」を得るという見方もあります。

第一は、日本の自動車と自動車部品めぐる漁夫の利です。中国は対米貿易摩擦への対応策として7月1日から25%だった自動車関税を15%へ、8%~25%だった自動車部品の関税を一律6%へ引き下げまし。この中国の輸入関税引き下げで日本車は競争優位にある自動車部品を含め最も恩恵を受けることになります。

第二は、中国の対米輸出品に対する日本からの代替輸出の増加です。制裁対象の自動車、機械・機械部品、半導体・電気機械、医療機器などの中には米国が輸入先を中国から日本へ切り替える製品・部品が出てくる可能性があります。中国進出企業が自社製品を日本や韓国など関税率の低い第3国を経由して迂回輸出する場合もあり得ます。

第三は、中国による知的財産侵害は米国企業だけではなく日本企業にも及んでいます。中国が米国の制裁に屈し、外資企業の知的財産保護や現地進出企業に対する出資比率の上限緩和・撤廃に踏み切れば、そのメリットは日本企業にも及ぶことになります。

こうした日本企業の漁夫の利を評価してか、日経平均株価は米国の対中制裁発動の後、回復に転じています。鉄鋼・アルミの制裁、最終500億ドルの対中制裁の日本経済への影響は軽微だとする判断も背後にあるのでしょう。何しろ、日本の鉄鋼・アルミ製品は高品質なので、たとえ関税をかけられたにしても、米国は輸入をやめるわけにはいかず、損をするのは米国企業や国民だからです。

しかし、こうした漁夫の利はわずかなものであり、米中貿易戦争が激しさを増す中で、日本の優位性、摩擦・為替抵抗力の強まりを示す数々の証拠が浮上しています。また日本の国際分業上の優位性が際立ってきています。

まずは、トランプ政権による鉄アルミ関税免除に日本が排除されましたが、その影響は小さなものです。先にも述べたように、日本の供給する高級鋼材は他では代替が効かないからです。

次に中国による対日急接近が目立ってきています。8年ぶりの日中経済対話再開の理由は日本の技術が必須だからです。中国産業の急速なハイテクシフトにより中・韓,中・台は完全に競合し、中国とドイツも競合色を強めているなかで日本は競合の少ないハイテク分野に特化しており、日中は基本的に補完関係にあります。


また、国際分業においてハイテクニッチの高技術分野は日本企業の独占度が高いです。故に円高抵抗力も強まり、企業の高収益が続いています。

さらに、日米は米国にとっても理想的相互補完分業関係にあるといえます。日本は経済の基幹部分を大きく米国に開放、依存しています。インターネット、スマホ、航空機、先端軍事品、MPUなど半導体、金融などは日本市場において米国企業が圧倒的プレゼンスを持っています。

また米国国債を1兆ドル以上購入し,米国への資本供給に協力しています。1990年当時の日米摩擦勃発時とは全く異なる状況です。米国が求めるFTA見直しで韓国は全面屈服しましたが、日本は米に追随する必要はありません。

米国が日本に対して開放を求める牛肉、自動車における市場において、日本には非がないからです。牛肉はTPP離脱により米国が自らの競争力を低くしてしまいました。自動車は日本関税ゼロ、米国2.5%(小型トラックは25%)と日本の方が低く、問題は日本における米国車のブランド力劣化にあります。

確かに日本の対米貿易黒字は689億ドルと大きいですが対中国赤字の5分の1に過ぎません。

最後に、日本以外の経常黒字国は大幅な貿易黒字が原因ですが、日本だけは経常黒字の大半は所得収支の黒字であり、貿易黒字はごく小さいです。所得収支黒字は現地で雇用を生むので歓迎されるはずで、貿易黒字は現地で雇用を奪うので非難されることになります。

円高下で実現した日本のグローバル・サプライチェーンにより、日本は海外で著しく雇用を生む国になっており、それが所得収支の大幅黒字に現れています。故に日本はもはや貿易摩擦の対象にはなりえない国といえます。日本が貿易摩擦フリー化、為替変動フリー化していることがうかがえます。

上記の事柄は、日本の国際分業上の特質を如実に示しています。日本は競合のないニッチ高技術高品質分野に特化していて、さらにグローバル・サプライチェーンを確立させ海外雇用に大きく寄与しているのです。

トヨタの米国ケンタッキー工場

この国際分業上の特質は日本企業のビジネスモデルの大転換によって支えられています。かつての日本企業のビジネスモデルは,ナンバーワン志向でした。1980年代までの日本は導入技術と価格競争力により、世界の製造業主要分野においてナンバーワンの地位を獲得しました。

“Japan as number one”の時代です。しかしこのモデルは米国による日本叩き、超円高、韓国などアジア諸国企業の模倣と追撃により、完全に崩れました。かつて日本が支配した液晶、パソコン、携帯電話、半導体、テレビというデジタルの中枢分野では、日本企業のプレゼンスは、今は皆無です。

では日本の企業は一体どこで生き延び収益を上げているのかといえば、それはハイテク分野の周辺と基盤の分野です。

デジタルが機能するには半導体など中枢分野だけでなく、半導体が処理する情報の入力部分のセンサーそこで下された結論をアクションに繋げる部分のアクチュエーター(モーター)などのインターフェースが必要になります。

また中枢分野の製造工程を支えるには、素材、部品、装置などの基盤が必要不可欠です。日本は一番市場が大きいエレクトロニクス本体、中枢では負けたものの、周辺と基盤で見事に生きのびています。また円高に対応しグローバル・サプライチェーンを充実させ、輸出から現地生産へと転換させてきました。

世界的なIoT(モノのインターネット)関連投資、つまりあらゆるものがネットにつながる時代に向けたインフラストラクチャー構築がいよいよ本格化しています。加えて中国がハイテク爆投資に邁進しているのですが、ハイテクブームにおいて日本は極めて有利なポジションに立っています。

新たなイノベーションに必要な周辺技術、基盤技術のほぼ全てを兼ね備えている産業構造を持つ国は日本だけです。中国、韓国、台湾、ドイツはハイテクそのものには投資していながら、その周辺や基盤技術の多くを日本に依存しています。

日本のエレクトロニクス企業群は、このイノベーションブームの到来に際して、最も適切なソリューションを世界の顧客に提案・提供できるという唯一無二の強みを持っているのです。

こうしたことから日本企業の収益力は飛躍的に高まっています。直近の企業収益は、営業利益対GDP比12.2%で過去最高となっています。また日銀短観による製造業大企業の経常利益率は、2018年度は8.52%と予想され、それはバブル景気のピーク1989年度(5.75%)、リーマンショック直前のピーク2006年度(6.76%)を大きく上回るものです。

企業のビジネスモデルの大転換→国際分業上の優位性獲得→企業収益向上、という一連のプロセスは、日本の大復活を予想させるものです。

こうした構造上の強みがあれば、米中貿易戦争などが過激になったにしても、日本はほとんど影響を受けないでしょう。

今後、貿易戦争で中国はかなり弱体化し、日本は強化され、株価だけではなく、様々な点で逆転現象が続くことになります。

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2012年5月18日金曜日

【お金は知っている】“国の借金”とは財務官僚の詐欺論法!―【私の論評】全くこの通り、まさに我が意を得たりという心地がする!!ただし、もっとわかりやすくすれば、結局こういうことだ!!

【お金は知っている】“国の借金”とは財務官僚の詐欺論法!:




最近でも、財務省による「1000兆円借金」論が以下のように報じられる。

--財務省は10日、国債など「国の借金」が平成23年度末時点で過去最大の959兆9503億円になったと発表した。24年度末時点の借金は1085兆5072億円と1000兆円を突破する--

「国の借金」とは財務官僚の詐欺論法である。

官僚は「政府」とは「国」のことだと勝手に解釈し、御用メディアを通じて「政府=国=国民」だと読者の頭に刷り込んでしまう。ところが、英語では国と国民はいずれもnationなのだが、政府はgovernmentであり、はっきりと国と政府を区別している。政府の借金とは政府の借金以外、何でもない。米国で「国民の借金」だと政府が公言すれば、「何を言っているか、責任を有権者に押し付けるつもりか」とたちまち世論の袋だたきにあうだろう。

ともあれ、日本の財務官僚はこの錯覚を利用して、そのホームページなどで、「国の借金」を家計や国民一人当たりの借金に置き換えて、記者に劣らず経済音痴の官邸の主や議員を増税また増税に駆り立てる。

財務官僚やメディアの言う「国の借金」とは、「政府の国民からの借金」であり、国民にとってみれば資産である。国民は政府にきちんと元利返済させる権利を持つ。ところが、国民に増税を認めよ、そしたら返すというのが財務官僚と野田政権のロジックである。とんでもない、ならず者の論理ではないか(詳しくは拙近著「財務省『オオカミ少年』論」参照)。

そもそも、お金ですべてが動く近現代社会では、借金があってこそ世が栄える。従って、政府も民間も借金すること自体は「よいこと」なのである。

グラフは米国の政府と民間の借金合計額の国内総生産(GDP)比とインフレ率の推移を追っている。借金超大国でもある米国は借金すればするほど、物価が安定し、経済成長してきた。借金が膨張したからといって、悪性インフレになるどころではない。逆である。物価は安定度を高めていることが読みとれる。

政府の義務は国民から借金し、その資金で国民に安全と雇用機会や所得増をもたらす政策の実行で成果を挙げることだ。

日本の場合、政府が政策で大失敗し、デフレ不況と失業、窮乏化、大災害に無防備、という最悪の結果を招いている。この責任を政府や官僚がとるどころではない。だれも知らぬふり、揚げ句の果てに、政府はこの借金は国すなわち国民の借金だから、さっさと増税を受け入れろ、と迫る。

野党の自公両党も政権時代に大失敗を重ねてきたのに頬被りし、増税で帳尻合わせしようとした。その点、民主党と大差ない。政局の表舞台では小競り合いの演技、裏舞台では消費増税で事実上の大談合、大連立だ。

誤った国の定義をただすのが民主主義国家の野党の役割だというのに情けない。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】全くこの通り、まさに我が意を得たりという心地がする!!ただし、もっとわかりやすくすれば、結局こういうことだ!!

さて、田村氏、産経新聞のなかでも、ほとんど勉強もしない、理屈もわかっていない、新聞記者が、特にマクロ経済に関して、わけのわからない記事を掲載したりして、げんなりすることもあります。その中にあって、長年経済記者をやってきた田村氏は、きちんと、マクロ経済のことを理解して経済記事を書きます。安心して読むことができます。

産経新聞にも、勉強不足の記者がいますが、他の日経新聞を含む大手新聞などは、ここ10年くらい、特にマクロ経済に関する記事がかなり劣化しており、マクロ経済の専門家などにいわせると、その95%くらいが真偽のほどがはっきりしないものだといわれるほど、酷いことになっています。そんな、中で、田村氏の記事は、しっかりとしたマクロ経済の背景から語る記事であり、情報源として優れています。

田村秀男
上の田村秀男氏の文章なかなか、わかりやすく、ずばり政治家や官僚の無能を指摘しており、まさに、我が意を得たりという感じがして素晴らしいいと思うのですが、この方の話を多くの日本国民に理解していただくためには、上の文書や、資料ではものたりないと思いますので本日は、上記記事の補足をさせていただきます。

まずは、上の記事の以下の部分を実際にグラフでそれに相当する部分をみてみましょう。

まずは、"財務官僚やメディアの言う「国の借金」とは、「政府の国民からの借金」であり、国民にとってみれば資産である。国民は政府にきちんと元利返済させる権利を持つ。ところが、国民に増税を認めよ、そしたら返すというのが財務官僚と野田政権のロジックである。とんでもない、ならず者の論理ではないか(詳しくは拙近著「財務省『オオカミ少年』論」参照)。"の意味するところを紐解いていきましょう。

まずは、下のグラフ(日本国の金融資産をグラフ化したもの)をみれば、政府の借金は、確かに、1000兆円くらいありますが、同時に政府が500兆円近い資産を所有していることがわかります。政府や、官僚は、まずはこのことは絶対にいいません。政府の借金だけ語ります。これは、一般民間企業でいえば、自分の企業に関して、負債ばかり話して、資産について語らないと同じことです。そうして、この金融資産他国の政府の比較すると、トップレベルにあります。アメリカよりも多いです。そうして、この金融資産の多くは、特別会計に含まれているものなどです。


 それから、上のグラフで、合計がありますが、資産のほうが負債よりも大きいです。これは、何を意味するかといえば、日本国のすべての金融資産が日本国内だけにあれば、合計の資産と負債は同額になるはずです。実は、この差額、海外に貸し付けている金融資産です。これは、約260兆円あります。もし、政府がいうように、国単位で借金をしているというのなら、この合計で、では、負債のほうが資産よりも大きいはずです。

実際、アメリカは、ドル建てで、海外から借金をしています。アメリカの場合、この合計のグラフ、負債のほうが、資産よりも300兆円も多いということになります。そういうと、アメリカは借金まみれで、いつ破綻するかわからないのではないかと心配する人もいるかもしれませんが、アメリカの場合、すべて機軸通貨であるアメリカドル建てで借金をしているため、そのような心配はありません。

日本国は、借金どころか、海外に260兆円も貸し付けているということです。これが政府のように借金をしているというのなら、これは、負債のほうが多くなるはずです。日本国は、正真正銘借金などないのです。これが、ギリシャのような国の場合海外から借金をしており、これと同様なグラフを描けば、負債のほうが多くなっています。しかも、ギリシャのような本当に財政破綻しそうな国では、この借金アメリカと異なり、外貨によるものです。この場合を正真正銘の負債であり、国の借金といいます。

グラフでみると、家計という項目がありますが、これが、いわゆる国民の資産ということになります。資産が、1500兆円くらいあることがわかります。借金もありますが、それは、数百兆円に過ぎず、圧倒的に資産が多いことがわかります。これをみただけで、国民は借金をしていないということがよくわかります。ですから、政府や官僚がいう、国民の借金などという表現は、本当に頓珍漢といわざるをえません。政府や官僚の言うことは、無借金で生活している人に、「てめーら、オレからの借金を返しやがれ!!」といって、罵倒しているのと何らかわりありません。

それから、最近では、政府による借金のほとんどが、国債によるものですが、その国債の保有割合を示したのが、下の円グラブです。


右の保有割合の、上の郵貯~個人投資家にいたるまで、すべてが、日本国内ということです。海外投資家というところだけが、海外からの購入であり、その割合は、6.4%に過ぎません。それに、郵貯、カンポ、一般銀行、一般保険・年金、公的年金とは、結局国民の資産です。直接的に国債を購入している国民は、個人投資家という項目で、それは、5.3%に過ぎませんが。他のほとんどは、金融機関などが、国民から預かったお金で、国債を購入して運用しているということです。結局国民が、間接的に購入しているということです。これは、要するに国民が間接あるいは、直接政府に国債を通じて、お金を貸し付けているということです。

ここでもし、海外投資家の項目がかなり、大きければ、それは、外国から国債を通じて、借金をしているということになりますが、この割合はかなり少ないです。要するに、外国からほとんど借金をしていないということです。これが、かなり、海外投資家の割合が多かったとすれば、海外からの借金が、かなりあるとを示しています。日本国は、これだけ、この割合が少ないため、海外に貸しつけている、金融資産が、海外から借りている資産をはるかに上回り、結果として、先ほども掲載したように、差し引き260兆円もの金融純資産を海外に持っているというか、貸し付けていることになります。

それから、上の記事で、"そもそも、お金ですべてが動く近現代社会では、借金があってこそ世が栄える。従って、政府も民間も借金すること自体は「よいこと」なのである。"とありますが、金融機関は、資産と負債がイーブンです。企業は、負債のほうが多いです。政府も負債のほうが多いです。

特に、企業が負債が多いということは、何を示しているかといえば、それは、お金を借りて、設備投資や、人材育成をしているということを示しており、これが、全く借りていなければ、それらに何もしていないということになります。だから、上の筆者は、「借金=悪」という考え方は間違いということをいいたいのです。

これは、リチャード・クー氏が、日本のバブルが崩壊して、しばらくしてからも、景気がなかなか浮揚しないという現実をみて、「バランス・シート」不況と語っていたことを考えてみればわかることです。

2005年当時、リチャード・クー氏がこのバランス・シート不況のことについて語っていたことがあります。それについて、詳細は、以下のURLをご覧いただくものとして、以下のその要約をコピペしておきます。



リチャード・クー氏
一国の経済というのは、家計が貯金して、それを企業が借りて使うということで円滑に回るわけです。その真ん中に証券会社とか銀行があって、仲介業務をするんですね。企業が一斉に借金返済にまわったら、家計の預・貯金はまったく使われない訳です。
そうすると企業の借金返済と家計の貯蓄を合わせた額が銀行に入ってきて、二度と出ていかないということになります。 
これがデフレギャップです。少なく見積もっても35兆円から40兆円あります(当時)>
ということは、誰かがこれを使わないと経済はどんどんシュリンクしちゃうわけで、それを私はバランスシート不況と呼んだわけです。 
今の日本企業は、すでに十数年間借金返済を続けて、かなり有利子負債残高が落ちています。 
ただ、資産価値の下落があまりにも大きかったので、もう少し借金返済をしないと安心できないというのが今の状況だと思います。 
ともかく「合成の誤謬」の中で、政府は民間に対して借金返済をやめろとは言えないわけです。 
でもほっておいたら、それこそ大恐慌になってしまう。 
こういう時には政府は民間と逆の行動をとらないといけないわけで、35兆円から40兆円(当時、現在なら100兆円くらいは必要です)を政府が借りて使う、そうすると全てが回るわけです。 
これを私はずっと言い続けてきた訳で、このバランスシート不況に限って、財政出動は不可欠であるというのがこの理論です。 
今後の景気見通しという点でいえば、まだ企業の借金返済はGDPの6%、30兆円規模で続いていますから、しばらくは財政支出を続けなくてはいけない。 
しかし、もう1~2年もすれば、多くの企業が借金返済を終えるでしょう。一部の企業では、もう去年の4月から終わっているんです。 
企業が再びお金を借りるようになれば、また金融政策が効き始めます。

要するに、多くの企業が、借金を返済することばかりに気を使い、新たにお金を借りることをしなければ、経済は不況に陥るということです。それは、そうですね。多くの企業は、何か新しいことをはじめるには、株式を新たに発行したり、金融機関からお金を借りてはじめるのがほとんどです。それが、借金を全くしないというのであれば、何もしないということです。何もしなければ、企業は業績を伸ばすことはできないということです。

それは、政府だって、同じことです。政府が借金がまるでなく、極端なことをいえば、資産のほうがはるかに多かった場合、この政府は、何も新しいことを実施しないということです。これが、良いことであるはずがありません。政府は、今のところ、借金のほうがはるかに多く、資産は少ないです。では、政府は、良い仕事をしているのでしょうか?そんなことはありません。

日本政府や官僚は、仕事をしない飲んだくれ父さんのようなもの
上の記事にもあるように、「政府の義務は国民から借金し、その資金で国民に安全と雇用機会や所得増をもたらす政策の実行で成果を挙げることだ。」ということなのですが、結局政府は、これをないがしろにしてきました。なんだかんだといって、歴代の政府は、緊縮財政ばかりやってきました。

国民は、政府や役人の無能にも気づかず、大人しく働くラブラドールのよう
「日本の場合、政府が政策で大失敗し、デフレ不況と失業、窮乏化、大災害に無防備、という最悪の結果を招いている。この責任を政府や官僚がとるどころではない。だれも知らぬふり、揚げ句の果てに、政府はこの借金は国すなわち国民の借金だから、さっさと増税を受け入れろ、と迫る。」という具合です。この20年というもの、政府は、本来リチャード・クー氏も言っているように積極財政をすべきだったのですが、結局緊縮財政ばかりして、さらには、増税でその緊縮を加速してきたというのが真相です。そうして、日銀は、金融引き締めを行い続け政府の緊縮を後押ししてきました。

その結果が、現在の経済の癌ともいえるデフレです。デフレは、異常な状況です。デフレ下で増税して、税収が増えたなどということは、日本でも他国でもありません。逆です。減ります。

結局、政府の借金が増えてはいますが、その借金が有効なことにつかわれおらず、先の展望も見えないということです、それを、国民のせいにして、今のデフレの時期に増税するというような馬鹿なをことを言っても、マスコミも、多くの国民も、その不当な要求を退けるどころか、迎合しつつあるというのが、今の状況です。だから、上の記事の筆者は、それに警鐘を鳴らすために、上のような記事を書いたということです。そうして、政府がさらなる借金をして、まともに仕事をするようにしたとすると、ハイパーインフレになるなどという輩がいるので、借金をしても物価が安定するというアメリカの例をグラブで示したということです。

さて、今の段階で政府がさらに借金をして、経済対策を行うとなると、それを国債で賄うということになれば、国債の金利が上昇し、誰も買わなくなるなどとする輩もいます。しかし、現実には、国債の長期金利は低いままで推移しています。さらに、最近では以下のような事態も生じています。
日本銀行が16日に行った資産買い入れ基金を通じた長期国債の買い入れオペで、応札額が取得予定額に届かない札割れとなった。
 金融緩和のため2010年10月に導入した基金での国債の札割れは初めて。
 満期までの期間が「1年以上2年以下」の国債で、6000億円の取得予定額に対し、応札額が4805億円にとどまった。新発2年物国債の流通利回りが一時、オペ対象の利回りの下限である0・1%を割り込むなど、ギリシャの政局不安を背景に投資家の国債への需要が高まったためとみられる。「日銀の相次ぐ金融緩和による国債購入で、市場に出回る2年以下の国債が少なくなっていた」(SMBC日興証券の野地慎氏)との指摘もある。
要するに、日銀が金融緩和措置の一環で、民間銀行から長期国債を買い入れようとしたら、予定額より下回ってしまったということです。それだけ、日本の国債は、現状では、人気があるということです。信用もあるということです。であれば、国債で借金をして、実施すべき震災復興や、それ以外のやるべき公共工事など実施して、 デフレ不況と失業対策、窮乏化対策、大災害に無防備状況の解消を行い、 景気を上向かせ、国民の所得水準向上させ、増収をはかるというのが、政府のやるべきことです。日銀は、本格的に金融緩和をして、政府を下支えすべきです。そうして、景気が過熱してインフレになれば、増税すれば良いということです。

企業や、一般家庭では、一端お金を支出すれば、それは消えてしまうと考えます。しかし、国の場合違います。一端政府が借金をして、支出したとします。それは、国から消えてなくなるわけではありません。それは、何らかの形で、企業や、家計に移転することになります。そうして、企業や個々人が稼いで、収入が増え、景気も上向き、そうなれば、税収も増えるということになります。

ご理解いただけたでしょうか?本来自分たちの無能を国民に押し付けようとする政府や官僚は、袋叩きにされるべき筋のものです。この論考について、反論のある方は、あるいは、賛成の方、是非コメントを残していっていただければ、幸いです。


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