とりあえず払ってて損はない!~『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?』(この書籍を読んだ方、あるいは内容をすでにご存知の方は、この項はよみとばしてください)
細野 真宏著(評者:麻野 一哉)【お奨めです】
このブログでは、書評などほとんど掲載しないのですが、この書籍のテーマはかなり多くの人は関心を持っているでしょうし。以前このブログでも掲載したように、マスコミのおばかさ加減をあばく意味合いで、そのエッセンスを掲載します。
未納者は国民全体の5%にすぎない
まずは、年金制度は「国民年金+厚生年金+共済年金」で成り立っています。
自営業 | 国民年金 |
サラリーマン | 国民年金+厚生年金 |
公務員 | 国民年金+共済年 |
サラリーマンや公務員は厚生年金や共済年金とセットで給料から天引きでされています。国民年金を自分で払っているのは自営業の人と、企業組織に なっている比較的大きな企業の取締役の人たちだけです。さらに、いわゆる自由業の人もいますが、実数は微々たるものです。それから、たとえば、吉本興業な どのような法人組織などに属していない、芸人や、芸能人などがいます。この人たちだけが「未納が可能」ということになります。一方、年金を支えてる大多数 のいわゆる会社員や公務員などは「勤め人」に未納者はほとんどいません。だから、支払われるべき4割の国民年金が未納といっても実態は5%ほどです。だか ら、マスコミなどで大げさに報道されているようにこれらの人々の年金不払いはさほど影響はありません。
また、そもそも未納者の増大は、将来に影を落としません。実際には、「国民年金」については、2009年度から若者の負担を減らすため、高齢者に 支払われる年金の半分は「税金」から支払うようになることが決まっています。つまり、「国民年金」の個人の保険料の負担は半分で済んでしまうようになりま す。
ところが、今未納でいる人は、将来年金がもらうことができないにもかかわらず、年金の半分の額は税金という形で支払っていることになります。これ は、未納者からすると明らかに「払い損」です。この制度は、年金破綻の原因ではなく、、むしろ年金制度を維持する形になっています。
さらに、「年金を納めても、合計額より少ない金額しかもらえないのでは?」という懸念がある。これについても著者はこう断言しています。
〈例えば現在20歳になる人でも、今年生まれた赤ちゃんの場合でも、実際に国に払う「保険料」よりも、平均的に将来もらえる「年金」が1.7倍に増える計算になっています!〉
もちろん早死にすれば、話は別です。しかし、平均的な寿命であれば、こう計算になります。しかも、これはインフレ対策も十分できているということ になります。民間の年金保険だと、そうはいきません。いくらインフレになっても、初めに提示された額だけになります。そもそも、1.7倍というハイリター ンはありえないです。民間の学資保険など、子供が小さな頃にはじめて、いざ大学にはいるときには、インフレで、何にもならなかったという話をきいたことが ありますが、年金に関しては、そんなことは当てはまらないということです。
年金には、まだメリットがあります。民間の保険だと払ってもらえるのも一定の年齢までですが、国の制度だと受給者が生きている限 り無期限です。死ぬまで支給があるということです。それに老後の保証だけなく、障害保険や遺族者保険の役目もになっています、今、払えないし、払えない理 由がはっきりしていれば支払い免除も可能です。
確かに世代間格差もあります。昔の人は多くもらえて、今の人は少ないなどの問題もあります。しかし、これも、長生きさえすれば、どの世代においても85歳の時点で年金の給付水準に実質的に差が出なくなるように調整されるのです!
では、年金は今のままで、まったく問題ないのかというと、そうではないと本書ではしています。やはり少子高齢化問題は大きいようです。ただし、あまり知られてはいませんが、実は制度的に危険なのは、年金より医療や介護の方だそうです。こちらの給付金額の伸びがかなり大 きく、財政的に問題があるそうです。そのため、この伸びに対処するため、消費税の増税は不可避で、年金を支えるために1%、医療と介護のために3~4%だそうです。
また、納付率低下のニュースとほぼ同時に、2031年に厚生年金の積立金が枯渇するとの試算も出されています。こんな風に、日本経済自体が崩れていくと、年金も同様に崩壊してしまいます。これに関しては、どうしようもありません。本書はあくまでも、「未納が年金制度崩壊の理由にはならない」というのが、主張のメインであるという限界はあります。
ところが、これを突破する方法がいくつもあります、そのうちアメリカで随分前から実現されているものがありますが、ここでは、書籍の要約という趣旨から外れますので、後で掲載します。
年金「制度」は安泰、でも年金「生活」は?
加えて、年金に関しては別の注意すべき点もあります。制度はともかく、生活そのものはどうなのかという問題です。
やはり年金をあつかった『年金が危ない!』(マイコミ新書)は、「年金制度は破綻しないが、年金生活が破綻する」危険性を訴えています。
夫婦ともに「勤め人」だったらまだいいのだが、自営業の人間は受給できる年金が非常に少ないです。おそらく月に6万円程度で、夫婦合わせて12万 円程度です。それでも、ゼロよりはよほどいいし、リターンも大きいので、未納はしない方がいいことに変わりはありませんが、安心はできません。
ちなみに最近、年金を保険料方式ではなく、税方式にしたらどうかという案をよく目にする。こうすれば未納がなくなるし、スッキリするだろうという話だ。しかし、両著ともこの方式は評価していません。
これには、いくつか理由はありますが、もっとも大きいのは、会社負担分がなくなるという点です。今、保険料の半額を会社が負担していますが、税方式ではそれがなくなることになります。となると、結 局個人に負担が行くことになり、現実的ではありません。現在、経団連などが「税金方式」を強く支持しているのはこういう理由があるそうです。そうなれば、確かに企業の負担は大場に軽減されます。
マスコミ「年金バッシング」の功罪
未納者のうち、払いたくても払えない人もいると思います。本当は免除制度を利用すればいいのですが、その知識のない人も大勢います。しかし、意図 的な未納者も大勢います。そして、そういった未納者は、おそらく、この数年のマスコミの「年金バッシング」の影響を受けていると思われます。
そうだとすると、マスコミの罪はかなり重いと思う。確かに、年金にまつわる不祥事は山ほどあります。そのへんは、年金バッシングの最右翼である『年金大崩壊』という本に詳しいです。しかし、この著者の岩瀬達哉本人が、「年金は加入するほうが絶対いい」と「日本の人事部」というサイトのインタビューに答えています。
年金制度の闇をあばくのはいいのですが、やりすぎて、年金制度そのものに必要以上の不信感をもたせたのは、不適切だったと思います。というより、「4割も未納してるから崩壊寸前」というような煽りは、複雑な制度を逆手にとった虚偽の言説とさえいえます。
「勤め人」は、このようなことは、は自分にはあまり関係ない話だと思っているかもしれません。しかし、このままだと数十年後、年金をもらえない貧しい老人が出現しは じめます。それを何とかするには、生活保護しかありません。財源は税金です。つまり、年金を一銭も納めていない人間の老後に、「勤め人」が大多数をしめる国民の税金 が投入されることになります。これは、決して他人事ではない。
日本人は熱しやすく冷めやすい、といわれますが、その割には、年金の問題は長々と熱い糾弾が続いてきました。しかし、冷めてみて、理解が深まったのなら良いですが、単に誤解が残ったとか、誤解がますます深まったというのが実体だと思います。
マスコミのお馬鹿さ加減を暴く第2段!!
それにしても、この年金問題、特に年金破綻の問題は20年前くらいからいわれています。その発信源は、筑紫哲也などともいわれいますが、実は、これは政 府、当時の厚生省がいいだしたことです。というと驚かれるかもしませんが、実はそもそも、年金制度が始まった当初の創設から数十年後までの積算(この積 算、かなり杜撰だったようです)に誤りがあったことが明らかになり、いろいろ複雑ないきさつはあったのですが、それは一切省いて当時の厚生省が年金の破綻 の可能性について言い出したのが最初です。しかし、厚生省の意図は年金が破綻するということでなく、そういう可能性もなきにしもあらずということを国民に 知ってもらうことが狙いのようでした。
その後政府は代替案なども考えず、年金破綻論などぶち上げても、いたずらに国 民の不安を煽るだけだと考えたのだと思いますが、結局その後ほとんど言及しなくなりました。ところが、それに変ってマスコミが長い間にわたって、徹底的に 年金破綻問題をことある毎にぶち上げてきたというのが実体です。そのため、多くの人に「年金破綻」説が流布されたわけです。さらに、最近では、年金に関す る厚生労働省や、社会保険庁の事務処理の杜撰さが暴露されて追い討ちをかけています。
しかし、私自身は、年金問題に関して、この書籍を読むまでもなく、最近の事務処理杜撰さは別にして、年金システム自体が完全に破綻するということは、よほど何かがない限り考えにくいと思っていました。
こ れに関して、アメリカの事例と比較してみれば、良く判ります。まずは、アメリカでは年基金基金というNPOが年金システムを運用しています。このシステム も破綻するかもしれないといわれましたが、この危機はもう20年以上前に回避され現状では破綻するはずのものが、破綻せずに済んでいます。無論、これからはどうなるかは、わかりませんが・・・。それも、消費税の税率を上げるとか、何か他を財源にするなどは 行っていません。実は、10年以上も前に、アメリカでは、定年は70歳にまで延長されました。また、就職の際にも、年齢だけによって制限することは法律違 反となりました。
これだけでも、随分違います。体が健康でさえあれば、 70歳まで、何とか雇用が保たれる可能性があるということです。そうして、長年こうしたことを続けたきたので、企業側もかなり対応ができていて、これらの 人々が働きやすいようにかなり整備が進んでいます。若いころなら、フルタイムを望む人が多いでしょうが、高齢者のニーズはそれとは、異なるので、ある程度 高齢の場合は、請負や、コンサルタントなどとして働くとか、それこそ、派遣で働くなどという道もあり、比較的労働時間を短くしたり、休みを多くとれるよう にしてあります。
それから、最近アメリカでは2037年に年金が破綻するという発表が行われていますが、なぜこの時期に発表するのか考えるに、やはり、年金システムに限らずいろいろな金融システムなどを大胆に変更するための下準備だと思います。いまのままだと、年金システムは崩壊するということであり、それに対して何か手を打たなければならないことをアピールしているのだと受けとるべきだと思います。ある、意味では日本の20年前の厚生省による年金破綻の発表と同じことだと思います。
それから、私自身は、これからいろいろなイノベーションで、労働生産性が飛躍的に高まっていくこと が予想されます。実際今年の英エコノミスト誌の調査によれば、日本のイノベーション力は世界一だそうです。たとえば、農業や、製造業などの生産性は、終戦直後と比較すると、数十倍生産性が高まっています。昔のすう十分の1の労働力で作物や、工 業製品がつくることができるということです。おそらく、年金制度が設置されたときも、後に厚生が設立の当時の積算が誤っていることに気づいて年金破綻を言 い出したときも、この生産性の向上という項目は、積算に取り入れらていません。それに、少子高齢化に関しても落ち着いて考えれば、労働生産性の高まりを考 慮に入れて、積算をしなおせば、逆に年金を支給する人がすくなくなっていくということですから、逆に年金制度が安定する方向に動く可能性が高いと思いま す。
いずれにせよ、年金などのシステムを考える場合は、長期的な視野にたって、考えなければ、誤る可能性が大きいと 思います。短期的な視点しか持たないマスコミなどの報道は全くあてにならないと思います。それに、年金未払い者の方には、いいたいです。まずは、払えなく て払わないというのなら、すぐに役所に行って支払い免除の手続きをとるべぎです。それから、払えるのに意図的支払わない人に対しては、まず将来的にたと え、年金制度が破綻したとても、年金支払いや不払いなどの記録は、残ります。国の福祉施策の中で、年金未払い者と、年金支払い者との間で全く差別をつけな いということはありえないと思います。
それに、今現在ですら、差はあります。年金を支払っていなければ、本来受給できる障害年金 や、遺族年金などの受給資格はなくなります。最近では、多少例外もあるようですが、年金を払っていない期間に、障害者となったり遺族になったとしたら、た とえ、後から年金を払ったとても、受給資格はありません。さらに、先に述べたように、高齢者に支払われる年金の半分は「税金」から支払うようになることが 決まっていて「国民年金」の個人の保険料の負担は半分で済んでしまうようになります。となれは、年金を支払わないというこは、税金を余分にはらってにもか かわらず、年金受給資格はないということになります。これは、明らかな損失だと思います。
それから、社会保険庁などの事務処理ミスに関しても、マスコミはゆがんだ報道をしています。アメリカの年金基金の事務処理間違い、過去の統計では、年間で3万件あるのが普通だそうです。そんなことは、常識で考えてみれば、わかることだと思います。人間のやることだし、戦争や、災害もあるでしょうし、受給が記憶喪失になる場合もあるでしょうし、犯罪やその他に巻き込まれて行方不明になることもあるでしょう。間違いがあってはならないという考え方はそもそも、胡散臭いです。それよりも、間違いが起こることをある程度前提として、間違いがはっきりしたときにどうするのかを定める、あるいはどうしても特定できない場合は、経理で実施する勘定科目である「損失勘定」など予めさだめておけば、本質的に何の問題もないことだと思います。叩くなら、厚生省や、社会保険庁が間違わないことを前提として年金システムを構築していることであるべきです。
それよりも、マスコミのいい加減な報道に、自分の人生を賭けることの、危険を承知してもらいたいです。たとえ、年金が破綻しなくても、マスコミはあなたのために何もしてくれないでしょう。
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