昨年の外食業界の大きな特徴は、「デフレの勝ち組」といわれた牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングス(HD)、日本マクドナルドHD、居酒屋チェーン「和民」などを展開するワタミが「負け組」に転落したことだ。3社はデフレの時代に低価格を武器に他社を圧倒した。
「デフレ御三家」は揃って赤字経営に陥った。ゼンショーHDは2015年3月期の連結業績予想を大幅に下方修正した。売上高は157億円減の5092億円、営業損益は98億円減の17億円の赤字に転落。13億円の赤字と見込んでいた最終赤字は6倍近い75億円の赤字に拡大する。すき家は10月からワンオペと呼ばれる深夜の1人勤務をやめ、対応できない店は深夜営業を休止した。一連の対応で売り上げ減と費用増のダブルパンチに見舞われ、赤字に陥った。
日本マクドナルドHDの14年12月期連結決算予想は、売上高が2210億円で前期比15%減。営業損益は94億円の赤字、最終損益は170億円の赤字に転落する見込みだ。14年7月に発生した食材仕入れ先である中国食品会社の賞味期限切れ鶏肉使用問題でイメージが悪化し、売り上げ金額にして200億円から250億円の影響が出た。
ワタミの15年3月期連結決算予想は、売上高が前期比5%減の1540億円、営業利益は55%減の13億円と減収減益。最終損益は30億円の赤字に転落する見通しだ。国内店舗の9割を占める居酒屋「和民」「わたみん家」の実質的な単価引き上げが客離れを招いた。
●すき家の既存店売り上げは前年同月比増「デフレ御三家」の失速は一様ではない。消費者の反応は既存店売り上げに映し出されるが、昨年4月の消費増税後の既存店売り上げは、すき家とマクドナルド、和民で明暗を分けた。マクドナルドは前述の期限切れ鶏肉問題によるイメージダウンが大きく、既存店売り上げは7月が17.4%減、8月は25.1%減と急激な落ち込みを記録。その後も2ケタの減少に歯止めがかからない。
ワタミの外食部門の既存店売り上げは6月と7月は2ケタの落ち込みとなったが、4月以降マイナス成長が続く。
一方、すき家の既存店売り上げは消費増税直後の4月こそマイナスだったが、その後は前年同月を上回っており、深刻な客離れは起きていないもよう。問題なのはアルバイト店員の店舗離れのほうだ。深夜のワンオペが嫌われてアルバイトを採用できず、閉鎖に追い込まれる店舗が続出した。その結果、全店売り上げはマイナスになった。
【既存店売上高の前年同月比】(単位%、▲はマイナス)
※以下、店名:2014年4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月
すき家:▲1.4、8.1、4.3、7.0、5.8、6.6、3.3、1.4
マクドナルド:▲3.4、▲2.4、▲8.0、▲17.4、▲25.1、▲16.6、▲17.3、▲12.3
和民:▲3.6、▲4.1、▲12.8、▲10.1、▲7.3、▲6.3、▲3.2、▲5.3
●日本マクドナルドHDの株価は堅調
では、投資家の評価はどうか。過去10年間の株価の高値と14年の安値を比較して下落率を算出してみると、下落率が最も大きかったのはワタミ。高値2575円(08年12月8日)から安値1140円(14年12月9日)へ、下落率は55.7%と半値以下になった。
ゼンショーHDは高値2005円(05年12月29日) から安値906円(14年8月7日)へ、下落率は54.8%。既存店売り上げは前年を上回っているにもかかわらず、株価は上がらない。創業者の小川賢太郎会長兼社長が究極の効率経営として編み出したワンオペを柱に据えたビジネスモデルが、壁にぶち当たったと判断されたことも要因のひとつである。
一方、日本マクドナルドHDは高値2965円(14年6月10日)から安値2501円(14年2月6日)へと、下落率は15.6%にとどまった。既存店売り上げの記録的な落ち込みが、株価にはそれほど影響を与えていない。むしろ、原田泳幸会長兼社長時代より株価は上がっている。原田氏が通信教育のベネッセコーポーレーション社長に転身してから、株価は10年来の高値を更新した。
ゼンショーHDは高値2005円(05年12月29日) から安値906円(14年8月7日)へ、下落率は54.8%。既存店売り上げは前年を上回っているにもかかわらず、株価は上がらない。創業者の小川賢太郎会長兼社長が究極の効率経営として編み出したワンオペを柱に据えたビジネスモデルが、壁にぶち当たったと判断されたことも要因のひとつである。
一方、日本マクドナルドHDは高値2965円(14年6月10日)から安値2501円(14年2月6日)へと、下落率は15.6%にとどまった。既存店売り上げの記録的な落ち込みが、株価にはそれほど影響を与えていない。むしろ、原田泳幸会長兼社長時代より株価は上がっている。原田氏が通信教育のベネッセコーポーレーション社長に転身してから、株価は10年来の高値を更新した。
●牛丼の低価格戦争終焉
デフレの象徴といわれた牛丼業界の低価格競争は、急激な円安で材料費が高騰したことと人件費のアップで終焉を迎えた。
デフレの象徴といわれた牛丼業界の低価格競争は、急激な円安で材料費が高騰したことと人件費のアップで終焉を迎えた。
牛丼業界は、つい最近まで200円台の低価格競争を繰り広げてきたが、急激な円安による食材価格の高騰と人手不足による人件費の上昇で、戦略転換を迫られた。牛丼は低価格の看板を下ろした。そして牛丼のみならず、200円台で食べられる外食メニューはことごとく姿を消すことになる。
この記事は、要約です。詳細はこちらから(゚д゚)!
【私の論評】飲食業界の最近の変化からも理解できる! デフレ脳を捨ててインフレ脳に切り替えよ! できなければ負けるだけと心得よ(゚д゚)!
しかし、日本がデフレを脱した途端に、外食産業のデフレ御三家が揃って業績を落としました。上の記事は、経済政策の変更が人々の「気持ち=期待」に与える影響がいかに大きいかということを表す記事だと思います。
そうして、上の記事は、外食産業も過去の20年の延長線上では、これからは業績を落とすことに鳴るとの警鐘でもあると受け止めるべきです。
過去のデフレのときは、デフレ圧力によって、とにかく質を落とさないようにして、いかに価格を下げるかということが、知恵のつかいどころでした。だから、徹底した合理化などが行なわれましたが、それが原因となつて、画一的になったとか、食の本当の楽しみ、喜びはなおざりにされてきました。
しかし、これからは違います。食の本当の楽しみ、喜びを打ち出さなければなりません。無論、牛丼やハンバーガーなどのFFでは、これを強く打ち出すことはできませんが、それでも出来る範囲で少しでも打ち出さないとこれからは勝つことはできません。
現在日本は、すでにデフレ状況から脱却し、近いうちに緩やかなインフレになります。そうなると、今までのデフレ圧力とは異なる、インフレ圧力という経済的圧力がかかかることになります。
これは、飲食でも、毎年わずかでも価格をあげることを前提にものごとを考えていかなければならくなるということです。
飲食業でこういう女性がサービスするのも付加価値をつける一つの方法か |
ただし、今までと全く同じで価格だけあげるというのであれば、顧客はなかなか納得しないでしょう。それに、競争相手が、価格をあげるだけではなく、何らかの差別化をはかって、それが顧客に認められた場合、こちら側がただ価格を上げただけでは、競争相手に負けてしまいます。
こちらは、こちらで、なんとか別の付加価値をつけて、勝負しなければなりません。これからは、こういうことを実施しなければ、競争に負けてしまうということです。
これを実施するためには、いわゆる知識労働者の生産性を向上させなければなりません。これができなければ、インフレ圧力に負けてしまいます。このようなことでは、知識労働者の疎外という社会的な病を生み出すことになりす。
私達は今のところ、知識労働者の生産性や自己実現度など、正確に測定することはできません。しかし、どのようにすれば生産性を高め、自己実現させられるかを知り、それを実行できるようになっていなければなりません。そうでなけば、これからの競争に負けます。
外食といえば、最近私はあるトンカツチェーンに行きました。これは、特に行きたいから行ったのではなく、本当はある「ステーキ・ハンバーグ・チェーン」に行こうとしたのですが、オープンしたてで、あまりにも混んでいたので、そちらに行ったものです。
そこで、メニューをみると、「熟成肉」のトンカツがあったので、それを注文してみました。価格的にはあまり他の商品と変わりありませんでしたが、食べてみてもどこが熟成肉なのかさっぱりわかりませんでした。これなら、他のメニューでも食べたほうが、良かったという印象でした。
ところで、この「ステーキ・ハンバーグ・チェーン」と「トンカツ・チェーン」の価格帯は大体同じくらいでした。
一月ほどたって、「ステーキ・ハンバーグ・チェーン」も以前よりはあまり混まなくなりましたので、平日に二度ほど行ってみました。すると、ここでは、「熟成肉」とうたっているメニューはありませんでしたが、一回目は、サーロイン・ステーキ、ニ回目はハンバーグを注文しました。
これらのどれも、ものすごく美味しいとは思いませんでしたが、それでも不味くはなく、ある程度美味しいといった印象でした。
しかし、先のトンカツ・チェーンと比較すると、こちらの「ステーキ・ハンバーガー・チェーン」はまた利用してみたいという印象でした。「熟成肉」などとうたっていても、全く変わりがない商品を出すよりは、最初からある程度美味しいものを販売したほうが顧客にとっては良いのだと思います。
おそらく、ここにも外食のヒントがあると思います。「熟成肉」とうたうなら、多少価格を高めに設定しても、顧客に「熟成肉」の旨味がはっきとわかる商品を提供しなければ、かえって逆効果になるということです。
「熟成肉」を販売しなくても、ある程度美味しくすれば、顧客はそちらに惹かれるということです。
最近は、熟成肉ブームのようですが、熟成肉とうたうのであれば、顧客にはっきりとそれがわかる程度のものを提供するべきです。それを実行するために、コストがかかるといのなら、それは価格に転化すれば良いのです。一番悪いのは「熟成肉」といいながら、違いがわからないような商品を他の商品と同じ程度の価格で販売することです。
フーターズ渋谷店 ここの不付加価値はウェイートレス? |
これは、「熟成肉」の旨味という付加価値についてですが、これからは、インフレ圧力にさらされて、毎年か、数年ごとに必ず値上げしていかないと商売は、苦しくなります。そんなときに、「成熟肉」の付加価値を提供するというのも、一つのやりかたです。
いずれにせよ、飲食業もこれから、こうしたインフレ圧力に耐えていかなければ、うまくはいきません。これは、何も飲食業界に限ったことではありません。外食産業が一番先に影響を受け、顕著になったというだけです。
昨年末から、今年の念頭でも、このブログに掲載しましたが、結局これからは、デフレ脳では失敗し、インフレ脳でなけば、成功できないということです。環境変化があれば、それに対応しなけば、いけないということです。
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