2016年7月3日日曜日

英EU離脱、金融パニックでも安倍叩き!「アベノセイダーズ」の正体 田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)―【私の論評】左右双方に存在する正統保守主義を理解できない愚か者どもの戯言(゚д゚)!

英EU離脱、金融パニックでも安倍叩き!「アベノセイダーズ」の正体 田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

5月5日、ロンドンで英国のキャメロン首相(左)と会談した安倍晋三首相

EU離脱か否かを問う国民投票がイギリスで行われ、賛成派がわずかに上回ったことで、同国のEUからの離脱が決定的になった。これから数年かけてイギリスはEUから離脱する手続きを進めていくことになるだろう。英紙『エコノミスト』を中心にして、様々な経済研究機関はイギリスのEU離脱は同国の経済成長率を押し下げ、しかもそれが長期間に及ぶと予測している。(総合オピニオンサイト iRONNA

筆者が見たところでも、2016年の直近で公表された経済成長予測ではマイナス成長は当たり前で、深刻なケースではマイナス5%以上にもなるとの試算がある。この数字はリーマンショック時をはるかに上回る。また出ていくイギリスだけではなく、EUにとっても経済的衝撃は深刻だろう。エコノミストの安達誠司氏は、むしろイギリスよりもEU側の損失の方が大きいだろうと指摘している(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48985)。

あるイギリスのジャーナリストは、「もう連合王国とはいえない」とTwitterに書いていた。これはイギリスでの投票結果をみると、EU残留はスコットランド、北アイルランドが圧倒的で、またEU離脱はイングランド、ウェールズに圧倒的(ただしロンドン市のシティなどは抜かす)であることを示唆している。実際にスコットランド、北アイルランドともに連合王国からの離脱が、今後加速化していくことは避けられない情勢だろう。

この「イギリスの終焉のはじまり」とでもいうべき状況は、つい先日までのEU残留の可能性の高まりをうけて、株価が上昇傾向にあった各国市場を直撃した。もっとも深刻だったのが、開票の時間帯にオープンしていた東京株式市場であり、日経平均株価は1286円33銭安の1万4952円2銭に下落した。下落幅、下落率ともに史上最大級に属するものだった。また為替レートの変動幅は7円以上をしめし、その乱高下幅はかってない大きいものであった。一時は1ドル99円台をつける円高になったが、現在でも円高域の中で不安定な動きを続けている。今後、米国やヨーロッパ市場にも同様の経済不安定化の波が押し寄せていくだろう。

EU離脱が経済に深刻なリスクをもたらす可能性を、安倍首相は伊勢志摩サミット前のイギリス訪問時に、キャメロン首相にその旨を伝えていた。また同様のEU離脱による深刻な経済リスクを(おそらく安倍首相の要求で)サミットの各国首脳宣言に明記することにもなった。だが、アベノミクスに批判的なマスコミや政党はこれを冷笑とともに受け取ったのは記憶に新しい。筆者はそのような「サミットやアベノミクスの失敗」を事実とは違う形で扇動する人たちを、本連載でも厳しく批判した。そのような政治的なスタンスに過度に立脚した扇動は、単純な事実や明瞭な論理を不透明にしてしまい、我々の経済や社会問題に対する判断を曇らせてしまうからだ。

例えば、なにか経済的問題や社会問題が発生すると、安倍首相の責任にする珍妙な現象を目にすることがある。通常は単なるネットでの奇怪な現象にしかすぎない。冗談もふくめて、そういうなんでもかんでも安倍政権のせいにする人たちのことを「アベノセイダーズ」と呼ぶ風潮もある。

写真・挿絵はブログ管理人が挿入 以下同じ
アベノセイダーズだけではなく、EU離脱問題を契機にしたアベノミクス批判は盛んである。安倍首相がイギリス訪問時に「キャメロン首相にEU残留を熱心に説いたのがイギリス国民の気質に逆らって、むしろEU離脱を促すことにもなりかねない」仮説を説いた著名経済学者もいた。安倍首相もイギリス世論を動かすほどの存在だとは驚きである。

また今回の株価の下落と円高によって、「アベノミクスの“化けの皮”がはがれた」などと非科学的な発言をいう人たちも多い。問題はイギリスのEU離脱という海外発の衝撃であり、アベノミクスがどうこうという問題ではないだろう。仮にアベノミクス以外の政策スタンスをとっていても今回の出来事は、株価下落や急激な円高をもたらしただろう。仮に安倍政権発足前の株価水準と為替レートの水準だったとしたら、日経平均は1万円台、ドル円は85円。株価は9千円台を割りかねず、また為替レートは1ドル70円台にまでになるだろう。「化けの皮」がはがれるどころか、日本経済の危機的状況はさらに深まったに違いない。


さて、不毛な議論に付き合うのはこれぐらいにして、今後の対策はどうすべきだろうか? まず日本だけに限って言えば、株価も為替レートもともに落ち着きを多少とも取り戻すと考えるのが無難だろう。もちろん今後、イギリスの経済情勢は不安定化し、また連合王国の分断が進んだり、他のEU諸国にも追随する動きがでればさらに世界経済の不安定化は増していく。そうなってくると今回のイギリスのEU離脱は、長期的な世界経済の押し下げ要因になっていくだろう。また中国、ロシアなどの新興国経済の低迷、米国経済の性急な利上げショックなど、世界経済の不確実性が急速に高まってしまう。

率直にいえば、日本は消費増税などにかかずらっている場合ではないのだ。政策的にできるベストの選択を行い、海外の経済リスクに備えるべきだ。例えば、消費増税は二年半の先送りではなく、事実上の「凍結」を目指すべきだ。またベストは5%への消費税減税である。

これに加えて、日本銀行は追加緩和を行うべきである。マイナス金利はマネーの量的な拡大とともになら明瞭な政策効果を発揮するだろう(マイナス金利だけの効果は限定的)。また最低賃金の引き上げを継続していき、労使ともにベアの引き上げを行うように政府も率先して調整することも必要だろう。もてる政策資源をフルに活用すべきだ。

もしアベノミクス以前(あるいは以下)の政策に戻ることを国民や政治家たちが選ぶとしたら、それは日本社会を分断していく深刻なショックをもたらすだろう。イギリスの問題は、日本の将来の問題にもなりかねない。

田中秀臣

【私の論評】"アベノセイダーズ"は正統保守主義を理解できない愚か者の所業(゚д゚)!

"アベノセイダーズ"とは、分野を問わずあらゆる出来事の責任を安倍晋三首相に求め「安倍のせいだ!」と叫ぶリベラル派等を揶揄する、ネットスラングです。

パリで同時多発テロが発生すると、「安倍のせいで次は日本がテロの標的になる」。北朝鮮が核実験を強行すると、「これは危機を煽って憲法改正を推し進めるための、安倍政権の陰謀だ!」と何でも安倍首相のせいになってしまいます。

2016年2月3日、元野球選手の清原和博容疑者が覚醒剤取締法違反容疑で逮捕されたのは、皆さんの記憶にも新しいと思います。このときは、同時期に持ち上がった甘利明経済再生相の辞任騒動と結び付けて「清原逮捕は、甘利辞任という政治的失点を覆い隠すための、安倍政権の陰謀だ!」との声がリベラル派から上がりました。もちろん、これがなんら根拠のない陰謀論にすぎないことはいうまでもありません。このように芸能ネタまで、安倍首相のせいになってしまいます。

何でも安倍首相のせいにしてしまうのは、簡単なことです。普段頭を使わない人が、何でも陰謀論や、安倍首相のせいにしてしまい、自分の頭で納得できないことを無理やり納得して、それですませるというのはありがちなことだと思います。アベノセイダーズもその類なのだと思います。

しかし、こうも頻繁にしかも何もかも「安倍のせい」とするリベラル派が多いのは、何か背景があるのだと思います。
その背景としては、安倍首相は現状の日本のいわゆる、リベラルや保守からみれば、保守なのかリベラルだかわかららず、ヌエ的のようにみえてしまうということではないかと思います。ただし、いわゆる保守層は"アベノセイダーズ"的な発言をあまりしないので、リベラルの"アベノセイダーズ的"な発言が著しく目立つようになっているのだと思います。

ちなみに、ここで私が使っているリベラルとか、保守という言葉は、言葉も本来の意味での「リベラル」や「保守」ではありません。現在の日本でいわれている「リベラル」や「保守」のことです。実はこの事自体が、「アベノセイダーズ」現象の背景にあるのではないかと思います。しかし、それは後で述べることにします。

「京都 鵺 大尾」(「木曽街道六十九次」の
内、歌川国芳画、嘉永5年(1852年)10月)
安倍政権の最大の特徴として、大胆な金融緩和を伴った「アベノミクス」が挙げられます。しかし、雇用が悪化したときに、大胆な金融政策をすべしと主張するのは西欧ではリベラルや左派です。

これは、このブログにも以前掲載したのですが、左派の経済学者の松尾匡さんは、「左派の立場こそ本来、金融緩和を重視するべき」と主張しています。松尾さんは朝日新聞のインタビュー記事において、以下のように述べていました。
欧米では左派は金融緩和に賛成という色分けが普通だ。金融緩和は雇用を拡大させる効果があり、それは左派が重視するものだからだ。一方、物価が上がってインフレになれば資産が目減りするから、お金持ちの階級が金融緩和に反対する。こういった人々の支援を受けた右派の政治家は普通、金融緩和については否定的だ。
朝日新聞デジタル 2015年2月16日
西欧の認識からすれば、安倍政権はなんと(欧米基準での)左派ということになってしまいます。そうして、安倍政権は、自らの支持層である保守派から反発を受けても、それに抗って政策を推し進めるという傾向があります。この傾向は、金融政策だけではありません。

2015年10月、日米をはじめとするアジア・太平洋地域の12ヶ国は、環太平洋経済連携協定(TPP)締結交渉で大筋合意に達しました。TPPに関しては、自民党の支持基盤のひとつである農業団体が「日本の農業が破壊される」として、これに反対してきました。安倍政権は、支持基盤からのそうした反対の声を押し切って、TPP批准にむけて進んでいます。

日韓関係においても同様のことが言えます。2015年12月、日本と韓国は「最終的かつ不可逆的に」慰安婦問題を解決することで合意しました。この合意に対し、日本の保守派からは「日本の名誉が傷ついた」として強い反発の声が上がっていました。

安倍首相の国家観にも注目する必要がありそうです。2015年に安保法制が成立した際、これに反対するリベラル派の間では、安倍首相をヒトラーになぞらえる言説が多く見られました。


しかし、評論家の古谷経衡さんは、安倍首相が意外にも多民族・多人種社会を肯定していることを指摘しています(『愛国ってなんだ 民族・郷土・戦争』 PHP新書)。安倍首相が著書『美しい国へ』のなかで、1998年サッカーW杯においてアルジェリア系のジダン選手はじめ移民の選手たちが活躍してフランスを優勝へと導き、フランス国家の英雄となったことを称賛しているからです。

安倍政権を積極的に支持している保守派も、こうした国家観を必ずしも肯定はしないでしょう。

このように、現状の日本のいわゆるリベラルや保守からすれば、安倍首相は憲法改正を推進する保守のようでありながら、リベラルでもありどっちつかずに見えるに違いありません。彼らからみれば、理解できない、きわめてヌエのような存在に見えるに違いありません。
安倍首相を既存の「保守」のカテゴリーに括ることができないからこそ、リベラル派や一部保守はこの得体のしれない安倍首相に、ほとんど生理的と言っていいほどの強い嫌悪と恐怖を抱いてしまうのではないでしょうか。ただし、保守層はアベノセイダーズ的な振る舞いはしないので、リベラル派の「アベノセイダーズ」がかなり目立ってしまうことになっているのだと思います。

宮崎哲弥氏は日本のリベラルを徹底的に批判している
おそらく現代日本において「リベラル派」とされてる人たちのことは本当は「新左翼」「ニューレフト」と呼ぶべきでしょう。従来の意味での新左翼は学生運動や成田闘争といったものに代表されるように、暴力的革命運動をする人々でした。ここに「言葉の暴力」という概念を持ち込むと、現代日本において「リベラル派」と呼ばれる人たちを新左翼と呼ぶのに値することに気づきます

彼らのネットの活動を見ていると「安倍のせい」どころか、「あべしね」というワードがちらほら出てきます。今の総理大臣安倍晋三氏に対して「死ね」という言葉を投げつけているわけです。暴言以外のなにものでもないでしょう。

「日本のリベラル」を「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」と定義付けてしまえば、彼らはもはやリベラルではなくなります。スタンダードな意味での自由主義、中道左派を真のリベラルと呼ぶことができるでしょう。

いわゆる「アベノセイダーズ」は、「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」もしくはそれに近いシンパであることが理解できます。

さて、私自身は安倍首相は保守的であると思います。それは、良くいわれる◯◯と、☓☓に賛成して、△△と□□に反対だから保守というような浅薄な見方による保守ということではありません。

言葉の本来の意味での保守ということです。それは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。


金慶珠(キム・キョンジュ)東海大学教授
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から真の保守について引用します。
保守派というと、自民党が保守で野党は革新などという人もいますが、ご存知のように、このような分類は今や無意味になりました。さらに、人によっては、このような主張をする人が保守で、あのような主張をする人が革新やリベラルなどという人もいます。 
しかし、このような考えは根本的に間違いだと思います。主義主張そのものは、保守であるかないかを明確に区分するものではありません。 
それよりも、世の中の仕組みをどうするかというときに、「ステップを踏むなんてもどかしい」と「ウルトラCに賭ける」のが急進派、革命派であり、「ウルトラCなんかない」から「ステップを踏んでいくしかない」と考えるのが(反動ではない正しい意味での)保守派であり、中庸派であるということです。
コマネチ、オリンピックで10点満点。機械のように、
正確に技をこなすところはある意味怖いくらいだった。
そうして、民主主義の根本理念はケント・ギルバート氏が語るように「是々非々」であることを忘れるべきではないのです。世の中の仕組みを変えるときに、極端に走らず「是々非々」の民主主義というステップを踏む中庸主義が、保守主義と言えるでしょう。 
そういうステップを踏まずに、「誰の主張か」で物事を判断して、事を進めようとする人はそもそも保守ではないのです。 
それは、結局のところ真の保守ではないのです。世の中には、本当は保守はではないにもかかわらず、あたかも保守であるように振る舞う偽装保守などといわれる人々もいますし、そうではないまでも、主義主張がいわゆる保守派といわれる人々に似ているので、自分を保守とする自称保守という人もいます。 
偽装保守、自称保守の見分け方は簡単です。一見保守のように振る舞いながらも、「誰の主張か」にもとづき物事を考え、変化や進歩に対応するのに、ステップを踏まずに一挙に「変革」を求めるようなことをする人です。特に、この変革に際しては、社会や現実をよく確かめもせずに「制度設計」等で性急に対応しようとします。 
私たちは、このようなことにならないように、頭を使うべきです。そうでないと、「安倍死ね」と語る人々と大差がなくなってしまいます。
いずれにしても、"アベノセイダーズ"的発言は、真のリベラルや真の保守からは起こらないのであり、これらを発言する人たちは、 「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」と一部の「偽装保守」及びそれらのシンパということになると思います。

イデオロギーに固まった、これらの人たちから見れば、確かに安倍総理はヌエのような存在にしか見えないでしょう。しかし、安倍総理はマネジメントの大家ドラッカー氏のいうところの「改革の原理としての保守主義」を実践しているのだと思います。


これについて、ドラッカー氏は以下のように語っています。
保守主義とは、明日のために、すでに存在するものを基盤とし、すでに知られている方法を使い、自由で機能する社会をもつための必要条件に反しないかたちで具体的な問題を解決していくという原理である。これ以外の原理では、すべて目を覆う結果をもたらすこと必定である。 
ドラッカー名著集(10)『産業人の未来』
改革のためのドラッカーの方法論は、“保守主義”です。しかし、昔がよいとして昔を懐かしみ、昔に戻せという思想ではありません。

英語では、保守主義は、コンサーバティズムです。しかし、この英語にも、昔に戻せ、という保守反動的なニュアンスがあります。そこで、“活力ある保守主義”という言い方がされたりします。ドラッカーも、これには困り、あるときは“正統保守主義”と言い、あるときは米国と英国の“伝統としての保守主義”という言い方をします。

本当の意味での保守主義は、第1に、過去のためのものではありません。正統保守主義とは、「明日のため」のものです。あくまでも未来志向のものです。

正統保守主義とは、第2に、なんらかの青写真に沿って社会を形成しようとするものではありません。なんらかの万能薬を服さしめようとするものでもありません。

それは、ケース・バイ・ケースで問題を解いていこうとするものです。医学にしても、万能薬を求めているあいだは進歩しませんでした。風邪には風邪、腹痛には腹痛の治療を求めてから急速な進歩が見られくました。したがって、それは、「具体的な問題を解決していくものです」。

正統保守主義とは、第3に、手持ちの道具、役に立つことが実証ずみの道具を使って問題を解こうとするものです。理想的な道具を新たに発明しようとしても無理です。「それは、既に存在するものを基盤とし、既に知られているものを使うものです」。

かくしてドラッカーは、改革のための原理は、保守主義たるべしととし以下のように語っています。
第一に、過去は復活しえないことを認識することが必要である。第二に、青写真と万能薬をあきらめ、目前の問題に対する有効な解決策をみつけるという、控え目で地味な仕事に満足することを知ることが必要である。第三に、使えるものは既に手にしているものだけであることを知ることが必要である。 
『産業人の未来』
安倍総理はまさにドラッカーのいうところの、「改革の原理としての保守主義」を実践しているのです。たとえば、金融緩和策です。これは、ドラッカーのいうところの「既に手にしているもの」です。金融緩和策は新しいもてのではなく、昔からマクロ経済学でも教えられているように既に実証された使えるものです。

何のことはない、リベラルな正統保守主義者も成り立つということです。正統保守主義者によるリベラルな発言や行動も成り立つのです。そもそも、社会を本当に変革するのは、すでに手にしているものによってだけです。これは、イノベーションも同じです。唯一の例外は、まだ手にしていない技術などを開発しつつ進めた巨大ブロジェクトであるアポロ計画だけです。

このような正統保守主義を理解できない人たちが、"アベノセイダーズ"に堕落しているというのが真相なのです。

結局彼らは、過去のニューレフトと同じく、破壊することはできても、創造することはできないのです。


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2016年7月2日土曜日

不穏な中国軍 参院選投票日狙い尖閣上陸の可能性 ネットに訓練写真を掲載―【私の論評】「マラバール」と「米上院議員尖閣上空飛行」で中国大パニック(゚д゚)!


中国軍の上陸訓練を伝える中国中央テレビの
映像。沖縄県・尖閣諸島を狙っているのか
東シナ海をめぐり、看過できない動きが明らかになった。中国軍による戦闘機や艦船による挑発的行動が続くなか、中国のインターネットメディアに6月末、大型揚陸艦による「上陸作戦」の訓練写真が多数掲載されたのだ。日本が参院選(7月10日投開票)で忙殺されるなか、中国軍は沖縄県・尖閣諸島などへの上陸を狙っているのか。日本は「領土を守る」という覚悟を示し、厳重に警戒する必要がありそうだ。

 中国に関するニュースを報じるインターネットサイト「世界論壇網」(=原表記は簡体)に、中国人民解放軍海軍の071型揚陸艦「長白山」をはじめとする15枚の写真が掲載されたのは6月27日のこと。うち9枚には国営メディアのクレジットが入り、複数の水陸両用車などが陸(島?)に向かう様子が映し出されていた。

 071型揚陸艦は、基準排水量が約1万2300トンとされ、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」(同排水量約1万3950トン)に匹敵する。輸送ヘリコプター2機や、艦尾ドックから発進するエアクッション型揚陸艇4隻などを収容。兵員も500~800人程度は輸送可能とみられる。

071型揚陸艦「長白山」
中国問題に詳しい元警視庁通訳捜査官で作家の坂東忠信氏は「写真はタイとの合同演習時の際に撮影されたもので、今年5月21日、国営メディアで公開された。尖閣諸島と直接関係するわけではないが、人民解放軍が上陸作戦訓練を行っていることを中国政府が認めたことになる」と語る。

 気になるのは、すでに国営メディアで報じられた上陸作戦の写真が、なぜ、6月27日に「世界論壇網」に再掲載されたかだ。この時期、中国軍は東シナ海での行動をエスカレートさせていた。

 中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦が6月9日、尖閣周辺の接続水域に侵入した。中国の軍艦として初めてだった。さらに、中国海軍のドンディアオ級情報収集艦が同月15日、鹿児島県・口永良部島(くちのえらぶじま)の西方海域の日本領海を侵犯した。

 海だけではない。

 自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長は同月30日の記者会見で、今年4~6月に日本領空に接近した中国軍機に対する航空自衛隊戦闘機の緊急発進(スクランブル)の回数が、昨年の同時期に比べて80回以上増え、過去最多の約200回となったことを明らかにした。

 河野氏は「海上においても空においても中国軍の活動範囲が拡大し、活発化している。エスカレーションの傾向にある」と強い危機感を示した。

 一方、元空自航空支援集団司令官の織田(おりた)邦男元空将が同月28日、「東シナ海上空で、中国機が空自機に対して攻撃動作を仕掛け、空自機が離脱した」とする記事をインターネット上で発表したことについて、河野氏は「(中国機が)攻撃動作をとった事実はない」と否定した。

赤外線誘導ミサイルから回避するためのフレアの発射訓練をする自衛隊戦闘機
ただ、空自機が離脱する際に「自己防御装置を使用した」と織田氏が指摘した点については、「使ったか使っていないかは言及しない」と明言を避けた。

 織田氏の指摘が事実なら、中国機の行為は軍事衝突に発展しかねない危険極まる行為といえる。

 日本が現在、参院選のまっただ中というタイミングも気になる。

 前出の坂東氏は「これまでは、日本の選挙期間中に軍事行動を活発化させれば、保守政党が支持を伸ばし、親中派のリベラル政党のマイナスになるため、中国軍は目立った行動はしなかった。今回は違う。軍事行動のレベルを上げ、メディアでもアピールしている。『いまなら東シナ海の覇権を握れる』と踏んで行動しているのではないか」と分析し、続けた。

 「参院選の最中に、尖閣諸島の魚釣島や、周囲の岩礁に上陸する可能性もあるのではないか。やるとすれば、日本政府が対応を取るのが難しい投開票当日が危ない。上陸後は危険を避けるため、すぐに立ち去るだろうが、石碑などを残していき『自分たちの主権がこの島まで及んだ』と国際的にアピールするかもしれない。中国は、韓国が不法占拠している島根県・竹島を念頭に置いているようだ」

 中国軍の尖閣上陸は、軍事的に可能なのか。

 軍事ジャーナリストの竹内修氏は「上陸自体は、物理的には十分可能だ。まずは小型艇で特殊部隊を送り込むことが考えられる。もし、この部隊と自衛隊が交戦状態になったなら、中国は『わが国の領土、軍隊を攻撃した』と主張し、揚陸艇など大規模な部隊を送り込み実効支配に移る。中国が考えるのはこうしたシナリオだろう」と指摘する。

 自衛隊は現在でも、24時間、365日、日本の領土・領海・領空を守り、国民の生命と財産を守っている。常識が通用しない中国軍をこれ以上増長させないためにも、さらなる警戒が必要だ。

【私の論評】「マラバール」と「米上院議員尖閣上空飛行」で中国大パニック(゚д゚)!

上の記事でも指摘しているように、先月になってから、東シナ海での中国軍の活動が活発になっています。

これについては、以前このブログに述べたように、日本の南西諸島で日米印の共同訓練「マラバール」が実施されたことへの中国側の牽制であることは、このブログにも掲載しました。

しかし、これだけだと、上記のような中国の先月からの異常な戦闘機や艦船による示威行動は説明がつかないかもしれません。

やはり、中国側にとっては、アメリカのマケイン上院議員の尖閣上空の飛行はかなりの脅威なのだと考えられます。

「マラバール」プラス「米常喜院議員尖閣上空飛行」が中国をパニックに陥れているのだと思います。

マケイン上院議員による、尖閣上空の飛行については、ツイッターでは掲載したことがありますが、ブログには掲載したことがなかったので、以下にその内容を掲載します。
米大物議員が尖閣諸島上空を飛行、中国は領空侵犯と抗議―米紙 
尖閣上空を飛行したとされるジョン・マケイン議員
2016年6月25日、環球網は記事「米議員、チャーター機で尖閣諸島上空を飛行、中国側は強く抗議」を掲載した。  
24日付の米紙ワシントン・ポストによると、米国のジョン・マケイン議員は6月初頭に台湾を訪問し、その後、チャーター機で東京へ向かう途中、尖閣諸島上空を飛行したという。同紙によると、駐米中国大使館は領空侵犯だとして米上院に抗議の書簡を送ったという。  
マケイン議員は23日に声明を発表し、中国公船の尖閣近海への侵入は東シナ海情勢を緊迫化させていると主張。また尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲だと米国政府の立場を強調した。
 この内容は、日本ではほとんど報道されませんでした。わざわざ、上院議員の搭乗したチャーター機が、尖閣上空を飛行したわけですから、これは当然のことながら「政治的メッセージ」含んでいます。無論、中国側は、日米ともに「日中には領土問題は存在しない。尖閣は日本固有の領土である」という政治メッセージであると受け取ったことでしょう。

最近では、米国は「マラバール」を日本の南西諸島で実施したり、上院議員が尖閣上空を飛行してみたりで、日本の尖閣問題にも積極的に関与するようになりました。これに対して中国はかなり神経を尖らせるどころかパニックに陥っているようです。

だからこそ、ブログ冒頭の記事のように、東シナ海でも航空機や艦船の動きを活発化させ、さらにインターネットサイト「世界論壇網」中国人民解放軍海軍の071型揚陸艦「長白山」をはじめとする15枚の写真が掲載され、尖閣奪取を匂わせるような報道をしたのだと考えられます。

オバマ大統領は2014年4月23日に国賓として来日するのを前に、21日夕方(米国東部時間)に読売新聞の書面インタビューに以下のように回答しています。

米国のオバマ大統領は書面インタビューで、沖縄県の尖閣諸島について「日本の施政下にあり、それゆえに日米安全保障条約第5条の適用範囲内にある」(are administered by Japan and therefore fall within the scope of Article 5 of the U.S.-Japan Treaty of Mutual Cooperation and Security)と述べました。第5条は米国の対日防衛義務を定めており、歴代の米大統領が尖閣に対して安保条約の適用を明言したのは初めてでした。

2014年日本を国賓として訪問したオバマ大統領は安倍総理と寿司屋で酒をくみかわした
ただし、日米安保の5条は、アメリカ議会が武力使用を了承すれば武力で守るというものです。従来は、アメリカ議会が了承するかどうかは何ともいえないところがありましたが、マケイン上院議員の尖閣諸島上空の飛行は、その後アメリカ議会でも何ら問題になった様子もないことから、アメリカ議会の意思を表明したものといえます。

米国議会はシリア、ウクライナの轍を踏むことはないという強烈な意思表示であると考えられます。確かに、日本が中国の傘下に入ってしまうようなことがあれば、米国にとっては一つも良いことはありません。日中合同の軍事力や、経済力は米国にとってかなりの脅威になるはです。

米国議会では、2014年あたりから、対中国強硬論が日増しに強くなっていました。これについては、このブロクでも取り上げたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米国議会で日増しに強くなる対中強硬論―【私の論評】世界は複雑だ!米中一体化、G2など中国の妄想にすぎない!しかし、日本にとってはこの妄想につけこむ絶好のタイミングかもしれない(゚д゚)!
米国国会議事堂
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、当時米国では対中関係は以下のように総括されていました。
 「中国に対して、米側には伝統的に『敵扱いすれば、本当に敵になってしまう』として踏みとどまる姿勢が強く、中国を『友好国』『戦略的パートナー』『責任ある利害保有者』『拡散防止の協力国』などと扱ってきました。だが、そうして40年も宥和を目指してきたのにもかかわらず、中国はやはり敵になってしまったのです」(元国防総省中国担当、ジョー・ボスコ氏)
これは、明らかに外交は全く不得手な及び腰のオバマ大統領に対する批判です。安倍総理は、アメリカ議会などに先駆けて、対中国強硬論を提唱していましたが、これにアメリカも対強硬論を唱えはじめたのです。

そうして、その流れで、先月の「米国上院議員の尖閣上空の飛行」+「マラバール」という状況になったわけです。

以上のように中国の立場にたってみれば、なぜ東シナ海でブログ冒頭の記事のように、挑発を頻発させるようになったのか理解できます。

しかし、日米をこのようにさせたのは、元々中国が南シナ海や、東シナ海で傍若無人な態度を撮り続けたからです。

私自身は、 「世界論壇網」への上陸作戦の写真の掲載も、中国による日米同盟への牽制であり、すぐにも尖閣諸島への上陸奪取ということはないとは思っています。

しかし、このブログにたびたび示しているように、中国は現在権力闘争の真っ最中にあります。その典型的なもののリンクを以下に掲載します。
【石平のChina Watch】習主席、頓挫した「独裁者」への道 衆人環視の中で目撃された異様な光景 ―【私の論評】刎頚の友で、独裁者になりそこねた習!だが、中共の本質は変わらない(゚д゚)!
習近平国家主席を後ろから手をかけて呼び止め、話しかけた王岐山氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一時は反腐敗運動で勝利を収めつつあるようにもみえた習近平の権力闘争ですが、そうではなかったことがこの記事をご覧いただければ、おわかりになると思います。

中国が未だ権力闘争のまっただ中ということであれば、中国という国は対外関係も自らの国内事情によって動く国ですから、中国軍による尖閣上陸も十分にありえます。

権力闘争のまっただ中ということは、習近平や半習近平派のいずれもが未だ中国内で十分に統治の正当性を獲得していないということです。

どちらかの派閥が統治の正当性を圧倒的に強めることができれば、権力闘争に勝つことができます。現在の中国では、経済的にも社会的にも統治の正当性を高められるような事案はほとんどありません。

そうすると、当然海外に目をつけることになります。尖閣など非常に良い材料です。尖閣に上陸して、実行支配することができれば、中国国内でも強力なデモンストレーションとなり、統治の正当性を高めることができます。

中国には互いに権力闘争を続けるいくつかの派閥があります。いずれかの派閥が、尖閣上陸実行支配という冒険に出ることは十分に考えられます。派閥配下の人民解放軍や、海上民兵やその他の組織もあります。

それらのうち、いずれかが冒険に出るというシナリオは、十分にあり得ます。

これに対処する方法もこのブログで以前掲載したことがあります。それを以下に再掲します。
これを防ぐための手段は、政府は、政治、外交、軍事を含む総合的で戦略的な対応を早急に取るべきであるとともに、実際に中国軍がどのような行動をとれば、日本が武力を用いて中国軍を排除するに至るかをはっきりさせ、それを中国および世界の各国に向かって予め周知しておき、中国軍がそのような動きを見せれば実行することです。 
さらに、これを実行に移すには、ルトワック氏の著書『中国4.0』にある提言が参考になると思います。 
どうなるか分からない不安定さを持つ中国に対応するために、無理に大局をみるより現実的な個々の事象に個々の組織が対応するべく準備せよというものです。 
日本側が、独自かつ迅速な対応を予め用意しおくように進言しています。しかも、各機関相互間の調整を重視するよりも、各機関が独自のマニュアル通りに自律的に行えるようにしておくべきとしています。 
たとえば、海上保安庁は即座に中国側の上陸者を退去させ警戒活動にあたり、外務省は諸外国に働き掛けて、中国の原油タンカーやコンテナ船などの税関手続きを遅らせるという具合です。とにかく、「対応の迅速さを優先させる」ことを強調しています。
陸海自衛隊による島嶼防衛訓練
各機関が、このようなマニュアルを用意しておき、即座に動くことが肝要であることをルトワックは主張しているのだと思います。各機関が綿密に共同して行動していては、迅速さに欠けて、あれよあれよという間に、南シナ海で中国が実施したように、いずれ軍事基地化され、既成事実をつくられてしまってからは、これを取り消すことは至難の業になるからでしょう。 
各機関が独自に動けば、初期の対応はかなり迅速にできるはずです。無論、海上自衛隊も、マニュアルに従い、独自に動き、尖閣有事の際には、別行動をしている海上保安庁の巡視船の行動を見守り、それではとても歯がたたないまでに、事態が悪化した場合、迅速対応するという形になるでしょう。 
そうして、中国側は、日本の迅速な対応に拒まれ、結局何もできないうちに、なし崩しになって終わってしまうということになると思います。 
こうした、迅速な初期対応が終わった後に、その後の対応に関して、各機関が綿密に共同して行動すれば、良いということです。とにかく迅速さが一番ということだと思います。多少拙速であったにしても、中国側に既成事実を作られるよりは、遥かに良いということです。
現在の中国は、激烈な権力闘争の最中にありながら、対外的にも南シナ海、東シナ海に手を出しているという、特異な状況にあります。国内で権力闘争を継続しながら、日米印、ASEAN諸国などと対峙し続けるという状況にあります。そうした中での「マラバール」+「米上院議員尖閣上空飛行」は、私達などが想定する以上に中国にとってかなりの脅威です。

権力闘争がなく、習近平なり他の誰であろうが、為政者が権力を完全に手中に収め、中国を完璧に統治していれば、中国は尖閣上陸奪取をすぐに実行するなどというような冒険はできなかったかもしれませんが、今はそのような状況ではなく、いつ上陸してもおかしくはないです。誰が、自分の属する派閥の統治の正当性を高めるため、尖閣上陸を企てるかわかったものではありません。

政府は、このようなことを予め想定して、それに対する備えを十分に備えていただきたいものです。私達国民としては、中国の尖閣奪取などのことは十分起こりえることであると、覚悟を決めておく必要があります。そうなってから考えるのではなく、今そこにある危機として、日本はどうするべきなのか、予め冷静に判断しておくべきです。

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2016年7月1日金曜日

【痛快!テキサス親父】グローバリズムは「エリート集団が富独占」の構図 英国民は「ノー」明確にした―【私の論評】国民国家を蔑ろにする国々の衰退が始まる!英国EU離脱はその序曲(゚д゚)!

【痛快!テキサス親父】グローバリズムは「エリート集団が富独占」の構図 英国民は「ノー」明確にした

写真・図表はブログ管理人掲載 以下同じ
ハ~イ! みなさん。

犬や猫がマーキングで自分の縄張りを主張することは、みなさんもよく知っていると思う。野生動物の群れに他の群れが近づくと、自分の群れを守るために命がけで排除しようとする。すべての生物にはテリトリーがあり、それを本能的に守ろうとするものだ。

英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票で、離脱派が勝利した。これは単に主権国家(=英国)が主権を侵害する連合体(=EU)から身を引くことではない。際限のないグローバリズムに対し、英国民が「ノー」を明確にしたのだ。簡単に言えば、国境を撤廃しようとしたのは間違いで、自分たちのテリトリーは自分たちで守るということだぜ。

グローバリズムの初期は、国家間の貿易障壁を取り除くものだった。それが、いつの間にか多くの国家を1つの政府でコントロールするようになった。ベルギーの首都ブリュッセルにある欧州委員会(=EUの行政執行機関、EUの政府)は、加盟国国民の細々な生活まで取り仕切り始めた。

加えて、EUは域内の人々の移動を緩和し、中東からの大量の難民を加盟国に引き取らせた。英国の国民は、移民や難民による急激な犯罪率の上昇や、彼らの社会保障に多額の税金が使われることを目の当たりにして、これらを止めようと決意したわけだ。

「反グローバリズム」の流れは、わが米国にもあるぜ。米大統領選で、共和党の候補者指名を確実にした不動産王のドナルド・トランプ氏は、グローバリズムについて以下のように語っている。


「われわれが、こうなってしまったのは、国民にとって何が最もいいのかを考えてきた米国精神から、グローバリズムに切り替えたからだ。いかに大企業が金銭的に潤うかに焦点を当て、富や仕事を外国に移し、すべての経済的損失を米国に押し付けたからだ。グローバリズムの波が、米国の中流階級を絶滅させる」

その通りだぜ。

グローバリズムは、真面目な人々が一生懸命に働いて得た富を、働く意欲のない「タカリ屋」たちに分け与えるようなものだ。「世界は1つの家族」なんて耳当たりのいい言葉でダマしているが、善良な人々から搾取して生活レベルを下げさせたうえで、世界を支配する一部のエリート集団だけが富を独占する構図といえる。

本来の意味でのグローバリズムが実現するのは、映画「インデペンデンス・デイ」のように、地球外生命体が侵略を仕掛けてきて、人類が一致団結して戦わざるを得なくなったときだけだぜ。まあ、そんなときも、地球外生命体側に寝返る、裏切り者の民族もいるだろう。日本のみなさんには、その民族は大体察しがつくだろうな。

親愛なるみなさんと、日本と米国に神のご加護がありますように。

では、また会おう!

トニー・マラーノ 

【私の論評】国民国家を蔑ろにする国々の衰退が始まる!英国EU離脱はその序曲(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、トニー・マラーノ氏はグローバリズムとはエリート集団が富を独占するシステムであるとしています。

英国のEU離脱を、英国民の多くが国境を撤廃しようとしたのは間違いであると悟り自分たちのテリトリーは自分たちで守るために、EUから離脱したとしています。

私自身は、この動きはいずれくるものと思っていましたが、英国EU離脱ということで、やはり来るべきものが来たかという思いがしました。

なぜ私がそう思ったかについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「英国に続け」と気勢=各地で反EU投票の動き―【私の論評】英国のEU離脱は、EU崩壊の序曲(゚д゚)!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、EUがうまくいかなくなる理由として、まずはEUの個々の国々の経済・文化・言語などがあまりにも異なることをあげました。これは、いつでもEU崩壊の圧力となり続けることでしょう。

さらに、ヨーロッパには、古代にはローマ帝国が存在しており、このローマ帝国にヨーロッパの人々は強い憧れをもっており、ローマ帝国のように昔から一つにまとまって強くなろうと試みられてきたのですが、それらはどれも長続きせず、破綻しているということもあげました。

実際、古くは神聖ローマ帝国から、ナポレオンによる統一、ヒトラーの野望などがありましたが、いずれもことごとく水泡に帰しています。EUだけが例外であるとは思えません。

以下に過去のこれらの国々の版図を示す地図を掲載します。

神聖ローマ帝国の版図
フランス第一帝政時代の最大版図 濃い青:領土、薄い青:衛星国
薄い緑:同盟国(プロイセン、オーストリア)

ヒトラーのナチスドイツの最大版図

これらを見ると、EUもいずれ似たような運命をたどるか、比較的緩い共同体組織になるとしか思えません。歴史は、繰り返すのです。

この記事では、EUがドイツをはじめとして、地球温暖化への対処の先進地区となっていることも理由にあげましたが、これは意見の別れるところでしょう。これについては、詳細はこの記事をご覧になって下さい。

この記事では、さらに国民国家に関するドラッカーの言葉もあげました。以下にそれも引用します。
産業革命の初期以来、経済的相互依存は政治的情熱を凌駕するだろうと主張され続けてきた。これを最初に語ったのはがカントだった。南北戦争の直前、1860年の穏健派も、サムター砦で最初に銃声が轟くまでそう考えていた。オーストラリア=ハンガリー帝国の自由主義者たちも、最後の瞬間まで、分裂するには経済的な結びつきが強すぎると考えていた。明らかに、ミハイル・ゴルバチョフも同じように考えていた。 
しかし、この200年を見る限り、政治的な情熱と国民国家が、経済的な合理性と衝突したときには政治的な情熱と国民国家のほうが勝利してきている。
1997年、フォーリン・アフェアーズ」 

ドラッカーは、過去の歴史や、この言葉を寄稿する前の、ソ連の崩壊やユーゴスラビアの崩壊などが頭にあったのだと思います。世界は、これらの直前まで、グローバリズムが時代の流れであり、いずれ国民国家は消滅するだろうと考えていました。

しかし、ドラッカーはそうした見方に、警鐘を鳴らしました。この言葉は正しいです。これから未来永劫にわたって、グローバル化が進行して、国民国家は消え去ることはないとは言い切れないとは思いますが、当面の間は国民国家はなくならないどころか、それを求める情熱は高まるばかりです。

そうして、EUも今回のイギリスの離脱では、それ例外ではなくなったようです。

イギリス国民はEU離脱を選んだ
さて、グローバル化は他の面でも、あまりうまくはいかないようです。それは、韓国や中国の例をみればわかります。

現代の「グローバリズム」の柱の1つは、中国経済が永続的に成長するという幻想です。これが、単なる幻想に過ぎなかったという事実が誰の目にも明らかになったのが、昨年でした。当然ながら、資源国を中心に、経済を対中輸出に依存している国が、そろって不況に陥ってしまいました。

さらに、資源国ではないにも関わらず、対中依存度を極端に高めてしまった韓国もまた、経済が失速しています。対中ビジネスが高かった大手輸出企業は、軒並みリストラクチャリングを余儀なくされています。

韓国経済が現在の苦境に陥ってしまったのは、対中のみならず、全体での輸出依存度が4割強(14年)と、極端にグローバル市場に依存する構造になってしまったためです。現在、世界は貿易の成長率が経済成長率を下回る、スロートレードという問題を抱えてしまっています。

さらに悪いことに、韓国の個人消費がGDPに占める割合は、50%にすぎません。日本を含むまともな先進国では60%台が普通です。米国は70%です。中国は何と、35%に過ぎません。やはり、グローバル化を極端に推し進めて、国民国家の基本である内需を疎かにした国は、結局のところいずれまともに、経済成長できなくなるのです。

このままだと、中国も韓国もいわゆる中所得国の罠(中進国の罠)にどっぷりとはまり、先進国の仲間入りする前に、経済が伸びなくなってしまうことでしょう。

IMF(国際通貨基金)のデータによると、1990年代は世界の実質GDP(国内総生産)成長率が平均3・1%だったのに対し、貿易量は6・6%も拡大しました。貿易の成長率が、実質GDPの2倍以上に達していたのです。

それが、2000年から11年までは、GDP4%成長に対し、貿易量が5・8%成長と、倍率が下がってしまいました。ところが、直近のデータでは、世界のGDP成長率2・2%に対し、貿易成長率は2%に過ぎなくなっています。

もう、グローバルに輸出を増やすことで国民経済を成長させるという手法は、維持困難になりつつあるのです。それにも関わらず、韓国はスロートレードに突入する以前に、あまりにも輸出依存度を高めてしまったのです。しかも、今回のスロートレード化の発端となった対中依存をかなり深めてしまったのです。 下図の通り、韓国の対中依存度は、日本はもちろんのこと、タイやベトナムなど東南アジア諸国と比べてすら大きいです。


今年の韓国経済は、中国経済の停滞に引きずられる形で失速し、「グローバリズムに過度に依存した国」の末路をわたしたちに示すことになることでしょう。

以上のことから推察するに、今年は「グローバリズム」の終焉の序曲となる年なのかもしれません。国民国家を蔑ろにする国々の衰退が始まる元年なのかもしれません。英国のEU離脱はその象徴的出来事であるといえるのかもしれません。

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2016年6月30日木曜日

英EU離脱は自民に追い風 共産「暴言」は野党に逆風 浅川博忠氏参院選分析―【私の論評】なぜ民進は経済・安保で滅びの道を選ぶのか(゚д゚)!

英EU離脱は自民に追い風 共産「暴言」は野党に逆風 浅川博忠氏参院選分析

英国のEU離脱は参院選では与党に有利に・・・・
与野党激突の参院選(7月10日投開票)が過熱するなか、英国の欧州連合(EU)離脱という衝撃的ニュースが飛び込んできた。日本経済へのダメージが懸念されているが、選挙戦にはどんな影響を与えるのか。政治評論家の浅川博忠氏が政党別の獲得議席を分析・予測したところ、野党によるアベノミクス批判は不発ぎみで、逆に有権者は安定した安倍晋三政権の継続を望み、自民党がさらに議席を伸ばすという結果が出た。共産党幹部の「暴言」も与党優位に拍車をかけているという。

英国のEU離脱問題が、与党の優位を決定付けそうだ。浅川氏が最新のデータをもとに分析したところ、自民党に追い風が吹いており、改選議席(121)の過半数を確保することが明らかになった。

注目の獲得議席予測は別表の通りだ。浅川氏は昨年12月、今年2月、5月、公示日の6月22日にも予測を行っている。

 自民党は、浅川氏が22日に予測した60議席から2議席増やし、62議席に達した。一方、民進党が27議席、共産党が11議席となり、それぞれ公示時点よりも1議席ずつ減らした。

なぜ、こういう結果になるのか。

浅川氏は「英国のEU離脱を受けて、野党はここぞとばかりに、『為替や株価に依存した経済(政策)ではダメだ』(民進党の枝野幸男幹事長)、『アベノミクスは破綻した』(共産党の小池晃書記局長)などと批判しているが、有権者には、ほとんど響いていない。それは、野党にアベノミクスに代わる経済政策がないことを知っているからだ。むしろ、こういう不安定な国際情勢だからこそ、安定した政権与党の継続を望んでいる。野党の政権批判は空回り気味で、与党が不利になっているという状況ではない」と指摘した。

選挙中とはいえ、安倍政権の反応の早さも功を奏したようだ。

24日昼ごろ、英国のEU離脱が明らかになり、株価は大きく下落した。政府は同日午後、関係閣僚会議を開き、「必要なのは国際協調だ」(安倍首相)との姿勢を示した。自民党も同日夜、稲田朋美政調会長を本部長として緊急特別本部を設置した。緊急時の初動対応としては“基本動作”といえそうだ。

経済対策にも気を配っている。

安倍首相は前出の関係閣僚会議で、「世界経済の成長と金融市場の安定に万全を期す」といい、大型の2016年度第2次補正予算案を成立させる方針を示した。さらに、首相に近い下村博文総裁特別補佐が27日夜のテレビ番組で、注目の規模について「10兆円超」と語ったのだ。

円高の加速で日本の製造業が2兆円の減益に陥るとの予想が流れるなか、不安を最小限に抑えようと努力していることが伝わってくる。

野党の「敵失・自爆」も大きい。

共産党の藤野保史政策委員長が26日のNHK番組で、「防衛費=人を殺すための予算」と発言したことも、与党の追い風となっている。藤野氏は28日夜、発言の誤りを認めて引責辞任した。



浅川氏は「東日本大震災以降、国民の自衛隊への信頼は確実に高まっている。熊本地震で、救命・救出活動に当たった記憶も新しい。こうしたなかで、藤野氏の発言は決定的だ。あの一言で『とてもじゃないが、共産党を勝たせるわけにいかない』という空気が広がった。共産党と連携している民進党にも大ダメージだろう」と分析した。

藤野発言で、共産党が綱領に「日米安保の廃棄」「自衛隊の解消」を堂々と掲げていることも、改めて注目された。

民進、共産両党の低迷は、複数区の情勢に現れ始めている。一部の選挙区で、自民党が2議席を確保し、民進党と共産党が共倒れになる可能性が出てきたのだ。

「自民党は複数区での2人擁立を積極的に進めてきたが、党内には当初、共倒れを懸念する声も多かった。だが、情勢は完全に変わった。一部の選挙区を除けば、複数区での2議席確保が見えつつある」(浅川氏)

民進党の岡田克也代表の発言も、野党の勢いにブレーキをかけたという。岡田氏は26日、地元・三重県で記者団に「三重で(民進党候補を)落とすようでは代表の資格はない。次の代表選に出ない」と発言したのだ。結果が出る前に「敗北」に言及したことになる。



浅川氏は「本人は陣営引き締めのために言ったのかもしれないが、選挙戦の最中に、敗北を前提とした自身の進退に触れるとは、政治センスが疑われる。加えて、党内では『地元さえ勝てばいいのか』『地元で勝てば次の代表選に出るのか』と受け止められた向きがある」と指摘した。

投開票まで2週間を切ったが、有権者はどう最終判断するのか。

【私の論評】なぜ民進は経済・安保で滅びの道を選ぶのか(゚д゚)!

終焉の画家「ズジスワフ・ベクシンスキー」による絵画

民進党の支持が高まらない大きな要因のひとつは、経済政策が定まらない事です。

民主党(現民進党)は、一昨年の総選挙以来、安倍晋三内閣が推進する「アベノミクス」を真正面から批判するスタンスを取り続けていますが、馬鹿の一つ覚えのように、もっぱらアベノミクスの成果を否定するばかりで、自ら建設的な対案を出すことができていません。そんな「経済無策」に国民の多くがそっぽを向いているのです。

各種の世論調査を見るまでもなく、国民の関心事は「経済」です。日々の暮らしやビジネスに直結する足下の景気への対策から、将来の生活を左右する年金・医療・介護などの社会保障政策まで、政治への期待は大きいです。

昨年安全保障関連法を成立させた安倍首相が、間髪いれずに「経済最優先」を繰り返し、軸足を経済に再び戻す姿勢を見せたのが、それを端的に表しています。経済こそが国民の最大の関心事であることを安倍首相は理解しています。

ところが、民主党はアベノミクスをただただ批判する姿勢を変えていません。

民進党(当時民主党)は昨年安倍首相が、「就任以来、雇用を100万人増やした」と言えば、「増えたのは非正規雇用ばかりで格差は広がっている」といった具合に、相手の足を引っ張ることに専念しています。この専念ぶりは、今年も変わらず、批判のための批判を繰り返しています。そうして、格差拡大を強調し、再分配を強化すべきだという社会主義型の経済政策に大きく傾斜しています。

こうした民進党の唱える分配中心の経済政策は、もともと社民党や共産党の主張と重なります。アベノミクスを当初から徹底的に批判してきたのも両党です。法人減税で経済活動を活発化させることで、経済を成長させ、国民の所得を増やし、最終的には税収も増やそうというアベノミクス的発想には、共産党などは強く反対してきました。

内部留保を溜め込む大企業にもっと課税をして、それを原資に弱者に再配分すべきだ、というのが左派政党の典型的な主張です。

ところが、一昨年末の総選挙以降、民進党(当時民主党)は明らかにそうした分配型の政策志向を強めていました。そうなると、経済政策で見る限り、民進党と共産党に「違い」が見えなくなってしまいます。

もともと民主党議員の中には、自民党以上に経済改革志向の強い金子洋一参議院議員のような人たちがいます。たとえば、言うならば、アベノミクスよりもさらに先を行く議員です。しかし、民進党の幹部はこの人たちの主張に耳を傾けることはありません。

金子洋一参議院議員
民主党が政権を奪取できたのは、自民党の既得権を温存する政策を打ち壊し、改革を進めることを標榜したからだったはずです。政権獲得前の民主党政調では、公共事業の削減や公務員制度改革、郵政民営化の促進といった自民党ではできないと思われていた政策を掲げました。

こうした改革的な政策が国民の民主党への支持を呼び起こし、政権奪取へとつながったのです。

しかしながら、結局経済対策が全くうまくいかず、自民党政権の頃と大差がないどころか、金融政策や財政政策をおろそかにしたため、さらに悪化していきました。特に、財政政策においては菅政権のときに、自民党と結託して、増税を自民・公明・民主の三党合意で増税することを決めてしまいました。

元々民主党は、政権交代する前には、民主党が政権にあるうちは、増税はしないことを公約としていました。

ところが政権を取ると、掲げた改革は大きく後退し、増税を決めたり、自民党政権に引き続き、金融政策は疎かにしたため、経済はデフレスパイラのどん底に落ち込みとんでもないことになりました。

そうして自民党に「バラマキ」と批判されることになった再配分強化の政策ばかりが目立つようになりました。労働組合を有力な支持母体に持つという党組織の限界とも言えましたが、結局急速に国民の支持を失うことになりました。

民主党の金子洋一参院議員は昨年の4月にツイッターで、「日経平均、続伸し15年ぶり2万円乗せ。わが国経済のためにまずは喜ばしいこと。やはり債券を主に買い入れ、株式を含む実物資産に民間資金をシフトさせる日銀による金融緩和の力は大きかった。われわれが提言したとおり、民主党政権でこれをやっていれば、経済の回復はより早かった。残念だ」とつぶやいた。これには、私も全く同感です。

そもそも、デフレなどの不況のときには、大規模な金融緩和をするという政策は、EUなどでは労働組合などの左派が、労働者の雇用を改善する手段として、推進することを望む政策です。実際、金融政策と雇用は、フィリップス曲線として強い相関関係にあることが経験則として知られています。

以下に有効求人倍率の推移のグラフを掲載します。


このグラフをみれば、有効求人倍率が1以上の都道府県の数が過去最高になっていることがわかります。これは、アベノミクスの金融緩和によるもの以外にはその原因を見出すことはできません。

さらに、日本でも当然のことながら、短期的フィリップス曲線は、理論的にも実証的にも成立しています。それは、以下のグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。


本来ならば、このような政策野党の民進党などが推進すべき政策です。しかし、今の民進党は、アベノミクス批判ということで、結局金融緩和政策まで否定しています。本来は、金融緩和政策を強力に推進するように主張すべきです。つい先日、日銀が追加金融緩和を見送った際には、猛烈に批判すべきでした。

さらに、増税に関しては当然のことながら反対すべきですが、民主党が政権交代をする前の公約を前面に打ち出し、もともとの党の精神に戻ることを宣言して、8%増税を撤回することを主張すべきでした。そうして、減税して消費税を5%にすることを主張すべきでした。

これは、元維新の党の共同代表であった、江田憲司氏もその著書『財務省のマインドコントロール』で増税する必要性がないことを主張していたので、民進党になってからも、これを主張し、減税論を主張すべきでした。

8%増税など、安倍政権の完璧な大失敗であり、本来ならば、民進党にとって与党攻撃のための良い材料であるにもかかわらず、岡田代表は奇妙なレトリックでこれを不意にしてしまいました。結局岡田代表は、消費税は10%に増税すべきであって、安倍総理は上げられる経済状況をつくることができなかったとして、批判しています。これでは、まるで敵に塩を送るようなものです。


経済政策については、民進党だけではなく、共産も社民党も似たようなものであり、結局頓珍漢で奇妙奇天烈であり、そもそもマクロ経済的には雇用が良ければ、他が駄目でも良しとするとか、他が良くても雇用が駄目であれば、良くないと判断するべきであるという基本的な観念がないのです。これでは英国EU離脱や、中国経済の低迷、新興資源国の低迷、アメリカの利下げなどの問題による経済の悪化などにとても対処できないと国民に判断されてしまいます。

終焉の画家「ズジスワフ・ベクシンスキー」による絵画

次に、日米同盟を強化する安保法制をめぐっては、予想通り極左集団が徴兵制だの戦争だの、法律が目指す方向とは真逆どころか、全く関連のない妄想をふりまいて国民を不安に陥れました。そうして、民主党まで徴兵制になるなどという奇妙な論理を主張していました。

民主党は、元々は社会党や共産党のような極左集団ではない、反自民の受け皿として期待されていたはずです。特に、共産主義イデオロギーとは無縁で、利権に囚われない都市のリベラルな有権者を支持層としていたはずでしたが、政権奪取後に極左勢力が支配的となり、国民の信頼を失なってしまいました。

それでも、民主党には共産党など極左集団とは違う現実主義的な面があると期待していた国民も多数いたと思います。しかし、昨年の安保法制審議の時には、民主党を含めた野党は、まるで明日にでも戦争が始まるかのような扇動を始め、現政権がすぐにでも自衛隊をどこかに送り込もうとしているかのような宣伝を繰り返していました。さらに、今回の参院選では民進党は野党共闘として、共産党と手をを結びました。

民進党は1人区で日本共産党などと野党統一候補を擁立した
安保法案反対派の主張は、包丁を購入した主婦を人殺し扱いするようなものであり、ジムで鍛える男性を強姦魔として邪推するようなものであり、消防車の放水訓練をデモ弾圧の準備と非難するようなものでした。地域の平和と安定のための日米関係の強化が、ある特定の人達には脅威と映ってしまうのでしょうが、真の目的には何も言及せず、ひたすらあり得ない事態の展開の妄想に浸った野党の主張と、マスメディアの報道によって、多くの国民が幻惑されました。

法案を政争の具に利用するのは良くあることですが、昨年の民主党の扇動はあまりに酷すぎでした。左翼的でありながら現実主義的であるというイメージもあった民主党が戦争だ戦争だと囃し立てたので、もともと反日指向のあるメディアとあわせ、国民が極左の妄想に毒される結果になってしまいまいました。

安保法制での自民党のつまづきは、予想されていたとは言え、あれほど酷いものとは思いませんでした。反対派の主張は「戦争法案」なる存在しない法案への妄想に基づく反対であり、少なくとも民主党くらいはある程度理性を働かせて行動するものと思っていましたのですが、そうではありませんでした。

あのすさまじい、騒ぎで昨年は幻惑されていた多くの国民も、あれからしばらくたって冷静さを取り戻したと思います。

そもそも、日本には、元々北朝鮮による拉致問題がまだ解決されていないとか、核開発や最近のミサイルの連発による脅威、尖閣諸島などに対する中国の脅威がありました。それに南シナ海の中国の脅威もあります。

護憲派は、憲法九条があったから、日本は平和を維持してこれたなどと言いますが、拉致問題を考えると日本が平和であったなどとはとても言えるものではありません。


昨年民主党などの野党は、「戦争法案」として安保法案が成立すれば、すぐにも日本が侵略戦争を開始するかのように煽りました。

しかし、現実には、日本が戦争をするなどということはあり得ず、戦争への脅威があるとすれば、中国や北朝鮮の危機です。

そうして、最近の中国軍の尖閣諸島への接続水域への艦艇の侵入や、つい先日もあった、東シナ海での自衛隊機に対する中国機の挑発などがあり、これは当然のことながら、参院選での重大争点となると思います。

そんなときに、民進党は未だに、「戦争法案」「憲法違反」を繰り返すばかりで、具体的な安全保障政策を打ち出そうとしません。そうして、日米安全保障条約の廃棄と自衛隊解消を唱える政党である共産党と野党共闘として1人区で日本共産党などと野党統一候補を擁立しました。

以上、経済と安全保障という2つの大きな政策に関して、何ら対案を出すことなく、ただただ安倍政権を批判するだけの民進党は、今回の参院選で大敗する以外道はありません。

私としては、本当は民進党は野党として十分働いてもらったほうが、自民党も驕り高ぶることなく、良い方向に動いていくと思います。

しかし、今のままの民進党ではとてもそうした役割を期待することはできません。いっそのこと、今回の参院選では上の記事で浅川氏が予想するよりも、酷い大惨敗を喫して、自分たちのやり方は何もかも間違いだったと納得して、新たな方向性を模索したほうが、結果として良いのではないかとさえ思っています。

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