2016年9月12日月曜日

「二重国籍問題」蓮舫氏が最も恐れているシナリオはこれ!―【私の論評】二重国籍はこんなに危険!この問題を軽々に扱うべきではない(゚д゚)!

「二重国籍問題」蓮舫氏が最も恐れているシナリオはこれ!

蓮舫氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 誰が勝ったところで、経済政策は…

民進党代表選(15日投開票)が後半戦に突入した。蓮舫氏、前原誠司氏と玉木雄一郎氏のうち、蓮舫氏が優勢とされている。

ただ、経済政策の観点からみると、候補者3人のうち誰が勝っても期待はできないことを最初に指摘しておきたい。

3人の過去の言動からみると、いずれも安倍政権と比べて「緊縮財政」と「金融引き締め」路線だといえる。3人とも10%への消費増税に賛成であり、同時に安倍政権の金融緩和についても批判的で、金融引き締め指向だ

この3人ともに、旧民主党時代のマクロ経済政策とほぼ同じであり、どうして安倍政権に負けて政権交代になったのか、まったく勉強していないと言わざるをえない。

すべての政治家がひとつだけ覚えておくべきことは、デフレ脱却をするまで緊縮財政と金融引き締めはやってはいけない、ということだ。

デフレから脱却しないと、雇用の確保も財政再建もおぼつかない。3人の意見を聞いていると、雇用の確保を無視し、財政再建を追い求めているが、肝心のデフレ脱却ができないので、雇用の確保も財政再建もできない、という未来しか見えてこない。

安倍政権がまともなのは、金融緩和を継続している点だ。積極財政は2014年4月からの消費増税で一時失敗したが、その後の再増税局面では過ちを繰り返さなかった。

それらの結果、国内総生産(GDP)成長率はいま一歩であるが、失業率や倒産は史上最低水準となっている。GDPと雇用が最重要な課題であるので、この点からいえば、満点ではないが安倍政権はまずまずである。

それを超えるものが、民進党代表候補の3人から出てこないのは残念である。

新たな民進党代表が決まれば、一定のご祝儀で政党支持率は少し上がるだろうが、経済政策で安倍政権に勝ることは考えられないので、脅威にはならない。デフレ脱却を掲げ、金融緩和強化、消費増税凍結でより強力な積極財政を主張するチャンスなのに、みすみすこれを逃すのは野党第一党なのに情けない。

 「二重国籍」そもそも何が問題か


それに追い打ちをかけるかのような話も出ている。蓮舫氏の「二重国籍問題」だ。

蓮舫氏が民進党代表になる可能性は高いが、二重国政問題を国会で追及する動きもある。蓮舫氏は1985年に日本国籍を取得しているが、台湾籍が放棄されたがどうかが問題とされているわけだ。



日本維新の会の馬場伸幸幹事長は8日、国会議員や国家公務員らが日本以外の国籍を持つ「二重国籍」を禁じる法案を国会に提出する考えを示した。早ければ今月末に召集される臨時国会での提出を検討している。

蓮舫氏の言い分は、「国籍放棄問題の渦中にある蓮舫氏、単独インタビュー」(http://news.yahoo.co.jp/feature/349)が詳しい。それによれば、

「蓮舫氏の説明が本当ならば、1985年に日本国籍を取得して以降、台湾の国籍放棄については、本人は台湾政府に確認していないし、確認が必要だという認識もなく、その点について家族からも説明はなかったので、一切の放棄のための行動を取ってこなかったということだ。

一方で、蓮舫氏が台湾籍であることを自覚し、パスポートを取得して台湾に入国したり、投票や納税などの権利・義務を行使したりしたことはなく、台湾の国籍者としての具体的な振る舞いはなかったということになる。

そうなると、残された問題は台湾籍が形式上残っているかどうかである。日本の国籍法上、二重国籍者は認められていないが、外国籍の離脱は努力義務にとどまり、離脱していなくても罰則はなく、厳格な運用は行われていない。もし台湾籍が残っていた場合、蓮舫氏はどう対応するのだろうか」

とのことだ。蓮舫氏は、念のために、台湾籍の離脱証明を取り寄せているようだ。

もともと、蓮舫氏の二重国籍問題は、元経産官僚の八幡和郎氏がネット上で問題提起したことにはじまる。

おそらく、蓮舫氏が国会議員でない一般人であれば、それほど問題にならなかっただろう。実際、これまで厳格な法運用がなかったために、二重国籍者は数万人程度はいると思われる(実際の国会答弁では「平成14年には約3万3千人を超えている」とされた)。

 国家公務員なら知っていること

ただし、外務公務員法第7条で「国籍を有しない者又は外国の国籍を有する者は、外務公務員となることができない」と規定されている。

筆者のように官僚出身であると、この話は知っているはずだ。特に、キャリア官僚であれば、海外勤務も多く、外務省に出向することがしばしばだからだ。

筆者の経験からいうと、財務キャリアであれば、ほぼ全員が海外勤務を経験する。そのやり方は、外務省に出向する、国際機関に派遣される、海外の大学などに長期出張で派遣されるという3種類がある。どれになるかは、確率3分の1程度なので、二重国籍かどうかは、当然チェックされる。

かつて外務公務員については、配偶者が日本国籍を有さない場合、または外国の国籍を有する場合についても外務公務員の欠格事由となっていたので、外国人配偶者の場合、外務省には出向しないといわれていたこともある。

もっとも、国家公務員では、人事院規則8118第9条では「日本の国籍を有しない者」は採用試験を受けることができないとされているが、二重国籍者を排除していない。

一方、地方公務員では、人事委員会規則で、基本的に「外国籍の職員については、公権力の行使に当たる業務又は公の意思形成に参画する職に就くことができない」と規定されており、二重国籍者は制限を受けることがはっきりしている。

これらの職以外にも、国籍条項が規定されているものは多いが、日本国民を要件とするものが多く、二重国籍者の扱いはあまり明確ではない。

例えば、国会議員などの公職政治家では、被選挙権者の規定である公職選挙法第10条により「日本国民」であることを要件とし、また地方自治体の公職政治家は地方自治法第19条により「日本国民」であることを要件としているだけだ。

日本維新の会の法案提出は、これらの二重国籍のグレーゾーンをすっきりさせるものである。国家公務員については、二重国籍不可は常識なので、外務公務員法のほうに、「国籍を有しない者又は外国の国籍を有する者は、国家公務員となることができない」とされても、支障がないだろう。

そもそも、国籍条項を規定されている職種では、国益と外国籍との利益相反を防止するために国籍条項があるわけで、本来であれば、国籍条項は直ちに二重国籍を不可とするもののはずである。この意味で、日本維新の会の法案は、これまでの法律の不備を埋めるものともいえる。

2007年の参院選で、元ペルー大統領のフジモリ氏が国民新党から立候補したが、フジモリ氏はペルーと日本の二重国籍であった。重大な問題だが、あまり議論はされなかった。日本維新の会の法案が成立すれば、そうした問題は回避されることになる。

筆者としては、国籍条項を必要とする職は必ずある、と考える。そのような職では二重国籍は否定すべきである。これは、一般の二重国籍問題とは区別して考える必要がある。

一般の二重国籍問題では、国際法で「人は必ず唯一の国籍を持つべき」とする国籍単一の原則があるのは知っているが、実際には二重国籍を認めている国は少なくない。この意味では、現在のところ二重国籍者に過度な規制を強いる必要もないと思っている。

ただし、二重国籍を認めている国であっても、国家の権力を行使する職では二重国籍が禁止されているのが普通であるので、その常識を日本でも適用したらいい。

 蓮舫氏が最も恐れていること

以上が政策論であるが、政治論から見ても日本維新の会の法案提出は大きな意味がある。

というのは、この法案が通れば、蓮舫氏の政治的な行動がかなり制約される可能性があるからだ。少し説明しよう。

民進党代表になるということは、政権交代すれば首相になるべき人である。現在、蓮舫氏は参議院議員だ。別に参議院議員は首相になれないという決まりはないが、首相の伝家の宝刀である衆院解散権を行使しにくくなる、というデメリットがある。

参議院議員は衆院を解散しても議席を奪われないので、解散して衆院議員のクビを切りながら、自分は安泰、という批判を受けるからだ。

そうした事情もあるので、蓮舫氏はいずれ衆院に鞍替えしたいはずだ。実は、小池都知事誕生とともに、東京10区(豊島区、練馬区の一部)で10月23日に補欠選挙が予定されている。蓮舫氏にとって、自身がその補欠選挙に出るのは、民進党を浮上させる好手のはずだった。

東京10区は、2005年の郵政選挙で小池氏が刺客として出馬して以来、民主党(民進党)女性候補と戦うという面白い選挙区だった。そこで、蓮舫氏が「私も崖から飛び降りる」と言って今回の補欠選挙に出馬すれば、かなり盛り上がっただろう。

ところが、日本維新の会の法案提出が、それにブレーキをかけるのだ。今度の臨時国会は今月26日に招集されるが、日本維新の会の法案は自民党にとっても関心事であるし、そもそも現在の法の不備を埋めるものなので、成立する可能性は高いだろう。となると、「二重国籍者」であった場合、蓮舫氏の鞍替えでの東京10区出馬は微妙になる。

ネットの威力は侮れない。台湾籍の離脱は日本でいうところの官報に掲載されているが、それを調べる限り、蓮舫氏の台湾籍離脱はないという指摘がネット上にはある(http://www.honmotakeshi.com/archives/49510141.html)。

蓮舫氏は台湾籍の離脱証明を取り寄せているようだが、実際に証明書が入手できるかどうか、その日付などで様々な議論が起こるはずだ。そうなると、蓮舫氏の東京10区出馬の可能性はかなり少なくなるだろう。

実際にどうなるかは予断できないものの、日本維新の会の法案が国会で審議されれば、民進党や蓮舫氏にとってはかなり痛い話になろう。

【私の論評】二重国籍はこんなに危険!この問題を軽々に扱うべきではない(゚д゚)!

民進党代表候補3人の経済政策がとんでもないものであることは、このブログでも以前掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
民進代表選候補者3人 野党連携は理念や政策の一致前提に―【私の論評】財務省の使い捨て政党民進党とその代表に明日はない(゚д゚)!
民進党代表選候補者三人 左より玉木氏、前原氏、蓮舫氏
詳細は、この記事をご覧にいただくものとして、玉木氏は元財務官僚ですから、理解できるところがあるのですが、他の二人まで、こと経済政策になると、まるでテープレコーダーのすり減ったテープのように、財務省のパンフレット以下の内容を語り続けるだけです。

本当にこんなことでは、政権交代でも起きて、今回の代表選で選ばれた代表が日本の総理大臣でもなって、その経済対策を実行したら、日本は再びデフレに突入して、日本の全国民がまた塗炭の苦しみに追いやられることになります。

代表選の候補者がこの有様です。過去の民主党政権のときの反省がまるでありません。これは、自民党でも似たり寄ったのところがあるのですが、それにしても安倍総理は、過去の自民党のときのデフレ・円高政策を反省して、一度は14年度4月からの増税を決断して、財務省の口車に乗りかけたのですが、その後は一環して、増税見送りの立場を貫いています。

さらに、金融政策でも緩和策をとるように日銀を説得し、最近ではなかなか日銀が追加金融緩和に踏み切らないものの、少なくとも緊縮に戻ることもなく、雇用関係の統計値はかつてなかった程に改善しています。

しかし、民進党の代表候補者は、なぜか全員、増税すべきとか、金融緩和策に懐疑的です。なぜこのようになってしまうかについては、この記事では掲載しませんでしたが、私自身は民進党、その中でも幹部は、財務省の走狗に成り果てているのではないかと睨んでいます。

財務省としては、経済対策に関して、財務省のパンフレットの内容のようなことしか、話せない代表が存在する民進党が与党になれば、自分たちのやりたいことが、国民などにはおかまいなしに、存分にできます。民進党が与党になれば、財務省は我が世の春を謳歌できます。

しかし、民進党の支持率は下がるばかりで、とても再度政権交代をする可能性はありそうにはありません。しかし、財務省はもしかするとという淡い期待は捨てきれないでいるのでしょう。

だから、民進党幹部と財務官僚の間には、財務省が民進党を応援することと引き換えに、民進党が財務省にとって良い経済対策を流布するということで、何らかの形で合意ができているのではないでしょうか。そうでないと、先ほども述べたように、代表候補者の3人ともが財務省のパンフレットの内容以下のことくらいしか、経済政策に関して語らないなどということはあり得ないと思います。


このことだけでさえ、大問題であるにもかかわらず、最近ではにわかに蓮舫氏の二重国籍問題がクローズアップされるようになりました。

この問題に関しては、なぜかテレビなどのメディアはほんど報道しません。不思議といえば、不思議です。著名人の中には、これを大した問題でないかのように発言する人もいます。さらには、どうでも良いことのように発言する人もいます。

しかし、ブログ冒頭の記事で高橋が指摘しているように、"国家公務員では、人事院規則てで「日本の国籍を有しない者」は採用試験を受けることができないとされているが、二重国籍者を排除していない"とあります。

「一方、地方公務員では、人事委員会規則で、基本的に「外国籍の職員については、公権力の行使に当たる業務又は公の意思形成に参画する職に就くことができない」と規定されており、二重国籍者は制限を受けることがはっきりしている"と指摘しています。

とはいいながら、二重国籍に関しては曖昧であることも指摘しています。とはいいながら「国籍条項を必要とする職は必ずある、と考える。そのような職では二重国籍は否定すべきである。これは、一般の二重国籍問題とは区別して考える必要がある」とも言及しています。

ネットをみると少なからずの人が、蓮舫氏の「二重国籍問題」を一般人の「二重国籍問題」として同列に考えてしまい、蓮舫氏に同情的な意見に傾きやすいようです。しかし、上の高橋洋一氏の論説は利益相反の可能性のある領域(国会議員、国家公務員)での二重国籍問題を論じています。

私自身は、やはり高橋氏の指摘が正しい思います。一般人は別にして、国会議員や国家公務員は、このような観点から、私自身はやはり、蓮舫氏個人がどうのこうのというより、そもそも二重国籍であってはならないと思います。ましてや、野党第一党の代表が二重国籍者あるべきではないと思います。そうして、この前提は当然のことと思います。

そうして、私自身は、いわゆるエリートと呼ばれる人たちは、当然のことながら、二重国籍であってはならないと思います。

こう述べると、エリートの定義が日本ではあまりに曖昧なので、以下にエリートについて述べておきます。

エリートというと、倉山満氏が以前「エリートの定義」をツイートしていたのを思い出します。

そのツイートを以下に掲載します。

エリートの定義がおかしいと思ってて日本でしか通用しない定義があって、偏差値が高い人がエリートっていうのがあるじゃないですか。東大出身の人がいたら絶対聞いて欲しいんですが万国共通のエリートの定義は「そいつの命よりも責任が重い」って事ですよ。だから武士は毎日切腹の訓練をしてたんです
確かに、国会議員は東大を出ていないとなれないとか、偏差値の高い大学に入っていないとなれないなどということはありません。企業の役員だってそうです。一部上場の大企業であれば、東大卒などはいて捨てるほどいる中から選定されます。そんな中では、東大出身とか、偏差値が高かったなどということは何の意味も持ちません。

切腹の作法
あくまで、もっとも注目されるのは、責任の重大さに耐えられるかどうかの観点になると思います。ただし、国会議員の選挙や、企業の役員の選定にあたって、実際にこれが重視されているかは別問題です。最近の議員をみていたり、東芝の旧社長らなどをみていると、そうとは限らないことが良く理解できます。

しかし、本当のエリートの定義は「当人の命よりも責任が重い人」ということです。

責任のない人は、自分の命が大事なのだと思います。自分の命を太く未来につなげていくことが一大事なのだと思います。

そもそも、本来エリートは命がけでなるものなのです。偏差値の高い大学に自分の子どもを入れようとしている親の大部分は、そんなことは考えてはいないでしょう。

一昔前ならば、武士の家に生まれれば、自分がどう考えようとも、そういうエリートになるものとして育てられたわけです。いざというときに、自分の命よりも重い責任を取るために、切腹の作法も学ばせたのです。

そうして、国会議員は、当人たちがどう思っているか否かは別にして、「当人の命よりその責任が重い」人です。野党第一党の代表ともなれせば、さらに責任が重いです。国家公務員も、全員ではありませんが、そのくらい責任の重い人は存在すはずです。

こういう意味での、エリートは当然のことながら、二重国籍であってはならないはずです。

そうして、蓮舫氏の「二重国籍問題」に関しては、これを当然のこととして、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
40、50万人との推定もある二重国籍の実態 「偽装日本人」に深刻リスク―【私の論評】蓮舫の二重国籍問題を契機に、これを放置するのはやめるべき(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を以下に掲載します。
世界的には二重国籍を容認する潮流であるともいわれます。国籍の異なる両親から生まれた子が2つの国籍を持つことは、2つの言語、歴史、文化、生活習慣の中で成長する彼らにとって当然の帰結なのだから、二重国籍を容認すべきという意見は根強いです。 
しかし、だからといって我が国の根幹法規というべき国籍法が形骸化し、偽装日本人による日本パスポートの不正取得、不法入国、不正投票などが蔓延している状況や、今回の蓮舫氏の二重国籍疑惑を放置して良いわけがありません。 
国籍のあり方についての国民的議論、そしてそれを踏まえた国会での検討が早急にすべきです。蓮舫氏以外の議員にもこの問題がないかどうか至急調査すべきですし、問題のある議員が出てきた場合、そうして蓮舫議員にも問題があればこれも含めて厳正な措置をとるべきです。 
特定秘密保護法で公務員の身辺調査をするのですから、政治家の身辺調査も当然のことながら実施すべきです。配偶者、親族に外国人がいる、いないの調査を実施すべきです。政治家本人の帰化の有無。政治家の親族に外国人、または帰化者がいないかの公表もすべきです。政治家等の帰化基準が反日勢力に甘すぎるから、蓮舫氏の二重国籍問題が起こるのです。
この結論に書いたように、私自身は、政治家、国家公務員などのエリートはもとより、一般の人の二重国籍もやはり、日本の国籍法にのっとり厳格にある程度以上の年齢になれば、日本国籍を選ぶか外国籍を選ぶかはっきりさせるべきと思います。二重国籍を認めるというのなら、その要件もはっきりさせるべきです。

なぜなら、この二重国籍にはかなりの潜在的な危機が予め予見されるからです。たとえば、中国など日本に多数の中国人民を入国させ、それらをことごとく二重国籍にさせます。そうなると、ある一定数の中国人が二重国籍になったとする、その二重国籍の中国人に対して、中国政府は国防総動員法を発令することができます。

国防総動員法とは、(2010年7月)に中国共産党政府が成立させ、施行したものです。同国の国防に関わる有事にいたった場合に、国内外の支那(China)国籍者の財産の接収(没収)、同国籍者の徴兵(国内・在外を問わない同国籍者の徴兵(兵員化)と、および、同国内での外国資本の没収まで含まれているのです。


長野五輪の聖火リレーの沿道で暴れる動員された中国留学生 1998年
何故、このような法律を性急なまでに施行したのでしょうか。その目的は、中国共産党政府がごく近い将来に有事(および戦争)の発生を想定してのことで、たとえば、対日政策の上では、侵攻による沖縄県尖閣諸島、さらには沖縄本島の収奪・領土化とそのための有事を視野に入れてのことであろうことは邪推の余地も有りません。

もとより、沖縄の領土化は日本本土を次の視野に入れてのことで、日本の属国化、ひいては「日本自治区化」を置いているであろうことは推察に難くありません。 

そうして、在日中国国籍者もこの法律の動員対象となっていることです。在日中国人は65万6403人も居て他の在日外国人と比べて圧倒的に多いです。留学や技能研修など日本に学びに来ている人が多いが、働いている人も多いです。

職種は技術・人文知識・国際業務や調理師から社長や大学教授まで幅広く、数も圧倒的です。男性中心の他の在日外国人と比べて20代・30代の女性が多く、若くて元気です。在日中国人は戦前から居て横浜中華街などを形成しましたが、1990年代から倍増し2000年代前半に激増しました。

最初は集団密航で入国した人も居たが、そのうち留学などを通じて増えて行き企業に新卒採用されたり、犯罪に手を染めたりしました。他、“観光”などで一時的に渡航して来ている者や15万人を超えたとされる同国の留学生も、「有事」発生時点での動員対象になります。
北海道喜茂別町にある中国語で書かれた中国人専用ゴルフ場の看板
さらに、後者の一時的渡航者、留学生の中から絶えない「法律上は日本に存在していない」はずの不法残留(オーバーステイ)者や、さらには、数値ではその掌握が測りかねる不法滞在者(密航者)もその例外ではないのです。

さて、これらの在留華人の多くが、二重国籍者になったらどういうことになるでしょうか。小さな地方自治体などであれば、中国が国防総動員法をこれらの二重国籍者に発動したらどいうことになるでしょうか。

中国と日本との二重国籍者であれば、日本人としての権利・義務を有しながら、中国の国防動員法にも従わなければならないです。

二重国籍者であるということから、日本人でありながら、中国人でもある多くの人間が、どこか地方の町や村に多く集結すれば、実質上その町や村を乗っ取ることだって可能ではありませんか。もし中国が意図的に、数百万もの中国人を日本に送り込み、中国国籍を持ったまま日本の国籍を取得させたらどうなりますか。

こんなことを考えると、一般人の二重国籍者についても、何らかの措置が必要になるのは当然のことです。

二重国籍問題は、軽々に考えるべきではありません。二重国籍問題というと、蓮舫氏個人のことばかりが、問題にされますが、この問題はその低次元の問題ではありません。場合によっては、日本の存亡の危機につながりかねない重大な問題です。

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2016年9月11日日曜日

中国共産党が天津市トップを調査 重大な規律違反で 「習主席の腹心」と香港メディア【私の論評】期せずして中国共産党に引導を渡す習近平(゚д゚)!

中国共産党が天津市トップを調査 重大な規律違反で 「習主席の腹心」と香港メディア

6月28日、2016年夏季ダボスフォーラム(夏季ダボス会議)の閉会式で挨拶する天津市の黄興国市長
中国共産党中央規律検査委員会は10日、重大な規律違反があったとして、天津市トップの黄興国党委員会書記代理(市長兼務)(61)が調査を受けていると発表した。調査の詳細は不明。香港メディアによると、黄氏は習近平国家主席の腹心。

黄氏は、故黄菊元副首相の親戚で、習氏が2002年に浙江省トップの党委書記に就任した際、省幹部の党委常務委員として1年間支えた。胡錦濤前国家主席の元側近で汚職などの罪で無期懲役判決を受けた令計画・人民政治協商会議(政協)元副主席の党ポスト解任に伴って、党内調整で現職に就いていた。

香港メディアは、黄興国氏について、汚職の疑いが指摘されているほか、天津市で173人の犠牲者が出た昨年8月の大規模爆発事故に絡んで調査されている可能性があるとしている。

今年8月以降、天津市では尹海林副市長も規律検査委の調査を受けるなど、多数の幹部が対象となっている。黄氏は調査発表前日の9日まで公務を続け、動向が地元紙で報じられていた。

【私の論評】期せずして中国共産党に引導を渡す習近平(゚д゚)!

このニュース、どの角度から検討してみても、習近平が中国国内で未だ権力掌握できず、中国では激越な権力闘争が続いてはいるものの、習近平の旗色はかなり悪いことを象徴するものです。

まず、この黄興国氏が、表裏がなく習近平の腹心だったし、今でもそうであると仮定の上で上の出来事を分析してみると、習近平が完璧に権力を掌握していれば、腹心の黄氏が、調査を受けるなどという事態にはならなかったはずです。この仮定においては、習近平は未だ権力を掌握していないことがわかります。

次に、黄氏が習近平の腹心でありながらも、反習近平氏側についていて、それが発覚して、今回のような事態に至ったとしても、腹心と言われる者が、裏切っていたということで、これまた習近平氏の権力基盤は脆弱であることが伺えます。

いずれにせよ、習近平氏は形の上では、中国の最高権力者である、国家主席でありながら、未だ権力を掌握していないということです。

このような兆候はすでに前からありました。それに関する記事をこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【石平のChina Watch】習主席、頓挫した「独裁者」への道 衆人環視の中で目撃された異様な光景 ―【私の論評】刎頚の友で、独裁者になりそこねた習!だが、中共の本質は変わらない(゚д゚)!
2016年3月28日月曜日

習近平国家主席を後ろから手をかけて呼び止め、話しかけた王岐山氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、石平氏の元記事の要約を以下に引用します。
今月4日に開かれた全国政治協商会議(全国政協)の開幕式で、委員たちは異様ともいうべき光景を目撃した。式典が終わって、最高指導部のメンバーたちが順次、ひな壇から退場するとき、党の規律検査委員会の王岐山主任が前を歩く習近平国家主席を後ろから手をかけて呼び止め、話しかけたのである。 
衆人環視の中で、習主席の部下であるはずの王氏が取ったこの「なれなれしい」行動は、主席の権威をないがしろにする「軽薄なる行為」とも映った。その背景には一体何があったのか。 
その2週間ほど前の2月19日、習主席は中央テレビ局など3大メディアを視察し、メディアが党への忠誠に徹すべきだとの訓示を行った。それに応じて、3大メディアは一斉に、「メディアは共産党のものだ、党に絶対の忠誠を誓いたい」と宣した。 
しかし民間からは早速反発の声が上がってきた。習主席の訓示と3大メディアの姿勢に対し、真っ正面から痛烈な批判を浴びせたのは、中国の不動産王で、政治批判の鋭さで「任大砲」の異名をもつ任志強氏である。
「任大砲」の異名をもつ任志強氏 
任氏の微博のアカウントは直ちに閉鎖され、官製メディアによる「任志強批判キャンペーン」が一斉に始まった。
こうした中で、今月1日、中国共産党規律検査委員会の公式サイトに注目の論評が掲載された。 
論評は、「千人の唯々諾々より、一人の志士の直言の方がよい」という昔の言葉を引用して、指導者が「直言」に耳を傾けるべきだと諭した。 
タイミングからすれば、この論評が諭そうとしている相手は、他ならぬ習主席その人であろう。さらに興味深いことに、論評を掲載した公式サイトの持ち主は党の規律委員会であり、そのトップを務めるのは、習主席唯一の盟友とされる王岐山氏である。 
要するに、王岐山氏が習主席を諭したことになるのだ。その2日後、全国政協の壇上で、王氏がおうような態度で習主席を呼び止めた場面を目にして、多くの人々はうなずくことができた。 
習主席の就任から3年、その最大の「政治実績」となったのは腐敗摘発であるが、考えてみればそれは全部、規律検査委員会トップの王氏の手柄であった。そして、摘発権という絶大の武器を手にして党内で権勢を振るった結果、いつの間にか、王氏は習主席をしのぐほどの陰の実力者にのし上がったのである。 
実は上述の規律検査委員会サイトの論評掲載を境目に、任志強氏に対する批判キャンペーンがピッタリと止まった。どうやら本当の実力者が浮上してきた中で、「独裁者」への習主席の道が閉ざされたようだ。
この件といい、ブログ冒頭記事の天津市トップの黄興国党委員会書記代理(市長兼務)が調査を受けているという報道といい、これはどう考えても、習近平は権力を掌握できていないどころか、すでに半習近平派に権力を掌握されかかっているということを示すものです。

習近平は国外では、南シナ海や東シナ海をめぐって、日米その他周辺諸国との対立が先鋭化しました。さらに、経済は低迷、AIIBの大失敗などによって、金融支配にも大失敗しました。どれ一つとっても、習近平は成功したものがありません。習近平が主席になってから、中国の力は衰えるばかりです。

これに対して、反習近平派は一致協力して、習近平排除に動き出したのでしょう。しかし、習近平が失脚したにしても、それで何かが変わるでしょうか。経済の悪化は止めようがないです。キャピタル・フライトも止まらないでしょう。できることといえば、南シナ海や東シナ海での中国の傍若無人な態度を改め、国際社会から孤立しないことくらいかもしれません。

しかし、仮にこれが成功したとしても、現在の中国共産党中央政府の体制が改まり、民社か、経済と政治の分離、法治国家かがある程度推進されないかぎり、何も変わりません。

中国人民の憤怒のマグマは貯まる一方で、いつどこで強烈に爆発してもおかしくない状況にあり、それは現体制が維持される限り、何も変わりありません。

借りに、反習近平派が習近平を失脚させたにしても、今度は反習近平で固まっていた派内で分裂が起こり、さらに習近平派の残党も加わって一層激烈な権力闘争が始まるだけです。

日本のような先進国と異なり、中国には選挙がありませんから、統治の正当性を増すために、各派閥がしのぎを削って大権力闘争を展開することになります。

そうして、この大権力闘争は、人民などそっちのけで、激烈に展開されることになります。そうして、さらに国民の憤怒のマグマは貯まり、いずれ収拾のつかない状況になることでしょう、行き着く先は中国共産党一党独裁による現在の体制の崩壊です。

なお、この件に関しては、『習近平が中国共産党を殺すとき』という書籍に、石平氏と陳破空氏の対談が掲載されています。


この対談中国の新唐人テレビに動画が掲載されています。そのリンク先を以下に掲載します。
『習近平が中国共産党を殺すとき』スペシャル動画配信

新唐人テレビ(しんとうじんテレビ,英語: New Tang Dynasty Television)は、アメリカ合衆国ニューヨークに本部を置く中国語専門のテレビ局です。

2002年、北米の華人向けに放送開始。翌2003年には衛星放送(BS)での放送が開始され、現在は世界各国で視聴できるほか、日本でもインターネットで日本語に翻訳された報道の視聴が可能です。ニュース以外にも、各地の伝統文化や漢方医学など、多岐にわたる分野を専門としています。


中国の情報は、中国のメディアではなかなか本当のところは、わかりません。新唐人テレビなどの情報のほうが中国国内のメディアよりは、信憑性があります。私も、中国についての情報源の一つにしています。

さて、この著書で特に両著者が注目しているのが、国内外で多くの火種を抱えた結果、実は習近平政権は相当弱体化していることです。そのため、次の指導部が決まる2017年秋の中国共産党全国大会までにクーデターが発生し、一党独裁体制に大変革が起こるであろうことを独自に入手した情報を駆使し、緻密に読み解いていきます。

そうした最新の中国分析とともに、両著者の人生を変えた天安門事件について、初めて総括しているところも読みどころの一つです。個人史と中国現代史がクロスする、単なる“反中”を超えた祖国への苦悩と希望が明かされます。

また本対談は全編、中国語で行われました。そのため予定調和の対談とは全く違い、時にケンカかと思えるほどヒートアップ。しかも両者の出身地の四川方言でまくしたてるため、編集協力の中国人スタッフもタジタジになったそうです。

一体誰が何のため政治、経済、軍事を操っているのか、日本人が知っておくべき隣国中国の今と未来の本質を抉(えぐ)りだす、両著者の鋭利な分析をぜひご味読ください。

今年で32回目を迎えた教師節(教師の日)、9日午前、習近平が北京市八一学校(母校)を訪問
いずれにせよ、習近平にはもう先がないのははっきりしています。いずれ近い内に、失脚することでしょう。しかし、習近平が失脚しても、中国共産党の統治システムは同じままでは結局多数の人民にとっては何も変わりありません。

中国共産党の一党独裁体制も、ポスト習近平後しばらくして崩壊するとみなすのが妥当でしょう。期せずして、習近平は、中国共産党の一党独裁を終わらせる役割を果たしているのです。

習近平は中国共産党に引導を渡す役割を担っているということです。

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【関連図書】

習近平が中国共産党を殺す時 日本と米国から見えた「2017年のクーデター」
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2016年9月10日土曜日

米がICBM試射、北朝鮮への警告メッセージ―【私の論評】核の暴走をやめない金正恩を米国が斬首するかもしれないこれだけの理由(゚д゚)!

米がICBM試射、北朝鮮への警告メッセージ

東亜日報

ミサイルサイロの中のミニットマンⅢ
写真、動画はブログ管理人挿入。以下同じ。
朴槿恵(パク・クンへ)大統領と米国のオバマ大統領が、ラオスで韓米首脳会談を行った6日(韓国時間)、米国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)「ミニットマンⅢ」発射訓練を実施したことが確認された。北朝鮮の挑発にあらゆる手段で強硬に対応することを明らかにした韓米首脳の発表を裏付けると共に北朝鮮の核とミサイル脅威に対する警告メッセージとみられる。

7日、米空軍によると、6日夕方、カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地からミニットマンⅢ1発が発射された。ミニットマンⅢは音速の20倍以上の速度で飛翔し、約6700キロ離れた太平洋のマーシャル諸島近海に落下した。ミニットマンⅢには模擬弾頭が搭載されたと、米空軍は伝えた。米空軍関係者は「ミニットマンⅢの正確度と作戦能力を点検し、有事の際、本土と同盟国に対する『核抑止力(nuclear deterrent)』の効用性を確認した」と明らかにした。

米国は今年2月、韓国軍関係者をヴァンデンバーグ空軍基地に招待し、ミニットマンⅢの試験発射の過程を初めて参観させた。その後、ミニットマンⅢを含めあらゆる手段で韓国を防衛すると明らかにした。ミニットマンⅢは、B52戦略爆撃機、戦略原子力潜水艦と共に米国の「3大核の傘」に含まれる。最大3個の核弾頭を1万3000キロ離れた所まで飛ばすことができる、ヴァンデンバーグ空軍基地から平壌(ピョンヤン)(約9360キロ)をはじめ北朝鮮全域に対する戦略的攻撃が可能だ。

韓米首脳会談で高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備を初めて言及したオバマ大統領は、戦争勃発時に米国が先に核兵器を使用しない「先制不使用(No first use)」構想を撤回するという。

米紙ニューヨーク・タイムズは、複数の米政府関係者の話を引用して、「オバマ大統領が『核のない世界』アジェンダを具体化するために任期内に先制不使用を宣言することを検討したが、政府内の反対を受け入れて断念する方向でまとまった」と報じた。核先制不使用は、敵が核兵器を使わないなら、先に核を使わないという約束だ。中国は1964年、インドは2003年に「核の先制不使用」を宣言した。

【私の論評】核の暴走をやめない金正恩を米国が斬首するかもしれないこれだけの理由(゚д゚)!

このニュース日本では、全く報道されていません。北朝鮮の日本海へのミサイル発射の3時間後、米空軍が太平洋にこの発射テストをしました。これは、北朝鮮が日本EEZ内の日本海にミサイル3発を発射した事への警告です。オバマ米大統領は発射直後に「挑発は一層の圧力とより深い孤立を招くと北朝鮮は知るべきだ」と語ったそうです。

これは、極めて重要な意味がある事はこの内容を知れば誰にも理解できると思います。日本のメディアは報道しない自由を選択したようです。なぜ隠すのか理解に苦しみます。

LGM-30 ミニットマン
LGM-30 ミニットマン (Minuteman) はアメリカ空軍の大陸間弾道ミサイル(ICBM)であり、核弾頭を搭載した戦略兵器です。名称はアメリカ独立戦争における民兵に由来します。

アメリカ空軍における最初の本格的な固体燃料ロケットエンジンを搭載した量産型ICBMで、3段式ロケットによって最大速度24,000 km/hを誇ります。一時は爆撃機系統の記号としてB-80が付けられていました。

アメリカ空軍で運用されている大陸間弾道ミサイルであり、戦略爆撃機およびアメリカ海軍の潜水艦発射弾道ミサイルと並び、戦略核攻撃能力を担っています。

冷戦の終結・核軍縮などにより、後継となるはずであったピースキーパーが2005年に退役しました。そのため、1950年代に開発が開始された古いミサイルですが、2009年時点でも配備・運用が続けられ、少なくとも2020年頃までは運用される計画です。

搭載核弾頭については更新・改良が続けられ、長期配備に際しての安全性が考慮されています。

さて、上の記事にもある通り、米国は今年の2月にもミニットマンⅢを発射しています。そのニュースを以下に掲載します。
米国 空軍、大陸間弾道ミサイルを試験発射
2016年2月27日 毎日新聞

 米空軍は米太平洋時間25日午後11時(日本時間26日午後4時)過ぎ、西部カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から大陸間弾道ミサイル(ICBM)ミニットマン3の発射試験を行った。核兵器でなく試験機器を搭載して約30分で約6500キロを飛行し南太平洋のクエゼリン環礁付近に着弾した。

米軍のICBM発射実験は5日間で2回目。ロシアや中国など対立する核保有国をけん制する意図がある。ワーク国防副長官はAP通信などに「核兵器を持つ国全てに、我々も国を守る必要があれば核兵器を使用する準備がある、とのシグナルだ」と述べた。米政府高官が核兵器使用の可能性に直接的に言及するのは極めて異例だ。 
 ロシアはプーチン大統領が昨年、ウクライナ情勢やテロ対策に関連して核兵器使用の可能性に触れている。こうしたプーチン氏の強気の発言に、今回ワーク氏が対抗した形だ。 
 国防総省によると、ワーク氏は核抑止力について「大国間の戦略的安定の基礎だ」と前向きに評価。「核兵器なき世界」を目指すのがオバマ政権の立場だが、その実現までは「(核)抑止力が安全で信頼でき効果的であるよう努め、競争相手の大国との戦略的安定を維持する」と述べた。 
 オバマ政権は防衛戦略の中で核兵器の数や役割を削減する方針を打ち出しているが、核弾頭やその運搬手段であるICBM、戦略原潜、爆撃機の3本柱は更新・近代化する計画だ。ミニットマン3は1970年代の配備で設備の老朽化が進んでいるとして、米軍幹部らは更新を求めていた。 
 オバマ政権は2017会計年度に核兵器関連で190億ドル(約2兆1660億円)を要求している。カーター米国防長官は25日の議会証言で、核武装近代化の総費用を3500億〜4500億ドル(約40兆〜51兆円)と見積もっている。 
 しかし軍備管理専門家からは「高価過ぎて賄えない」としてICBMや戦略原潜の数を削減すべきだといった批判が出ている。
北朝鮮の核弾道ミサイルムスダンは、日本の防衛省によると推定射程が2500~4000キロ(ロイター)。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)や聯合ニュースは3000~4000キロと伝えています。これは、日本全域をカバーするばかりか、米軍基地のあるグアムまでを射程範囲内とします。

北朝鮮は常々、事と次第によってはアメリカを核攻撃すると挑発を繰り返してきました。もしも仮に、ミサイル搭載可能な核弾頭を開発済みだという北朝鮮の最近の主張が事実であれば、ムスダンは搭載機としてまさにうってつけです。韓国国防省によれば、ムスダンには約650キロの弾頭を搭載できるといいます(朝日新聞)。

「ムスダン」中距離弾道ミサイル「ムスダン」。基地ではなく専用の
車両から発射するので、衛星などで発射の兆候を検知するのは困難だ。
これだと、アメリカ本土にはまだ到達しないわけです。また北朝鮮のSLBM(潜水艦発射型)も、あまり距離は飛びません。これも数千キロといわれています。しかし、北朝鮮の潜水艦の技術はかなり遅れているので、あまり長時間潜水できません。浮上すればすぐに発見されます。

さらに、補足も簡単で、すぐに撃沈されてしまいます。そう考えると、北朝鮮の近海で発射するしかないです。そうなると、これもアメリカ本土は狙えません。

日本や韓国にとっては脅威ですが、アメリカにとっては本土が脅かされることはまだないわけです。しかし、そのアメリカがICBMの発射実験をして北朝鮮に警告を出しているわけです。

北朝鮮は9日、5回目の核実験を行いました。金正恩党委員長は今年3月、「核弾頭爆発」の実験を早期に行えとの指示を下し、その事実を世界に公開しました。彼らとしては、既定路線だったわけです。

北朝鮮は今後も、核戦力整備のために必要なだけの核実験とミサイル発射を繰り返すだろう。しかしこれは、一体何のためなのでしょうか。

少し前まで、北朝鮮の核・ミサイル開発の目的については、米国を振り向かせ、関係改善の対話を行うための「ラブコール」であると見る向きが多くありました。おそらく、かつては米国政府もこうした見方に立っていたはずです。

2009年7月、オバマ政権のクリントン国務長官(当時)は北朝鮮を「関心を集めようとする子どものよう」だと例えながらも、「完全かつ後戻りできない非核化に同意すれば、米国と関係国は北朝鮮に対してインセンティブ・パッケージを与えるつもりだ。これには(米朝)国交正常化が含まれるだろう」と述べていました。

インセンティブ・パッケージとは、米国が国交正常化、体制保障、経済・エネルギー支援などを、北朝鮮は核開発プログラム、核関連施設はもちろん、ミサイルなどすべての交渉材料をテーブルに載せ、大規模な合意を目指すことを念頭に置いていたとみられています。

「核の暴走」が米国への単なるラブコールだったのなら、北朝鮮はこの提案に喜んで応じたはずです。しかし、そうはなりませんでした。なぜでしょうか。

当時は注目されませんでしたが、人権問題が最大の理由ではなかったかと思います。米国にはブッシュ政権時代に出来た、北朝鮮人権法という法律があります。日本人拉致問題も含め、北朝鮮の人権状況が改善されない限り、米国から北朝鮮への人道支援以外の援助を禁止すると定めたものです。

恐怖政治で国民を支配する北朝鮮の体制にとって、人権問題は体制の根幹に触れるものであり、交渉のテーブルに乗せることなどできるはずもありません。

ネット上で拡散している北朝鮮玄永哲氏のものとされた処刑動画。男性は
高射砲で上半身を吹き飛ばれた。ただし、これは本当はISの処刑でらしい。
では、米国が人権問題を引っ込めて、北朝鮮との関係改善に向かう可能性はあるのでしょうか。

それもまた、あり得ないでしょう。現に、米国は人権問題で金正恩氏を制裁指定するなど、攻めの姿勢を強めています。そうである以上、北朝鮮の暴走もまた止まらないでしょう。
2012年の太陽節(金日成氏の生誕記念日)を前にして公開された写真
金正恩氏が目指しているのは恐らく、どの国も北朝鮮の人権問題などまったく顧みられなくなるほどに、自国を取り巻く政治環境を変えることです。そのための手段が「核の恐怖」なのです。日米韓がどのような迎撃システムを築こうとも、「北朝鮮からの核攻撃を100パーセント防ぐのはムリだ」と世の中が認めるほど、質量ともに十分な核戦力を持とうとしているのですす。

まだ32歳の彼が、一部にある体調不安説を克服し、今後も健康を維持して生き続けるとしたら、50歳になるまでにどれほどの核兵器を手にすることになるのでしょうか。考えるだけで恐ろしいことではありませんか。

朝鮮戦争史跡地を現地指導する金正恩氏/2015年6月9日付労働新聞より
こうした、正恩氏の暴走を止めるための手段として、米国によるミニットマンⅢの発射は企図され実行されたのです。そうして、これからも金正恩が核の暴走をやめないかぎり、米国もこの方針を改めることなく、継続することでしょう。

この傾向は、米側ももはや変わらず、金正恩が死ぬか、北朝鮮の体制が変わらない限り続くものと踏んでいるものと思われます。

だからこそ、米軍は韓国に金正恩斬首部隊を常駐させているのです。私は、条件が揃えば、米軍は本当に金正恩を斬首するつもりだと思っています。

そんな馬鹿なと考える人は、一つ忘れていることがあります。それは、アメリカはあのオサマ・ビンラディンを殺害しているという事実です。あれは、あくまで殺害であって、暗殺ではありません。事実米国は、殺害を公にしています。

しかも、核保有国であるもあるパキスタンの領内でこれをやってのけています。オサマ・ビンラディン暗殺には、最初のとりかかりから含めるとアメリカは7年以上の年月をかけて実行しています。私は、すでに米国は金正恩斬首に向けて動いていると思います。そのことは、金正恩氏も知っていると思います。だからこそ、なおさら「核の暴走」をやめることができないのです。

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2016年9月9日金曜日

醜悪さ満載の杭州G20宣言 中国の問題を「世界的な課題」とはよく言うよ―【私の論評】世間知らずの馬鹿が馬鹿話をして、世界の笑いものに(゚д゚)!


G20首脳会合の閉幕後、記者の前で演説する習主席=5日、中国・杭州
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
中国・杭州で20カ国・地域(G20)サミット(首脳会議)が開かれた。通常、サミット宣言というものは議長国(今回は中国)の官僚が中心になった作文の合作で、退屈きわまりない。杭州G20もそうだろうと思ったが違っていた。裏読みすれば、表現とはおよそかけ離れた醜悪な中身満載だ。

 サミットの出だしもそうだった。地元の中国共産党青年団が特別に作成したというソングで「(杭州の)最も魅力的な景色でさえ、あなたと出会う気持ちにはかなわない」と熱烈歓迎しながら、オバマ米大統領には出迎え用のタラップも用意しないなど前代未聞の非礼、という落差ぶりだ。

出迎用の赤絨毯のタラップが用意されていなかったため、専用機のタラップで降りるオバマ大統領
 くだんの宣言はどうか。

 まずは為替問題。「為替レートの過度の変動や無秩序な動き」を問題にしつつ「競争力のために為替レートを目標とはしない」とうたった。北京当局は人民元市場に介入しては、元売りを小刻みに低め誘導してきた。明らかに輸出てこ入れのためだが、頬かむりする。昨年8月に基準レートを大幅に切り下げた途端に巨額の資本逃避が起きた。北京は「無秩序な動き」を阻止するためには市場介入が必要だ、今のやり方が正しい、と言い張るのだろう。


 「IMF(国際通貨基金)の決定に従い“我々は”10月1日の人民元の特別引き出し権(SDR)構成通貨入りを歓迎する」とはよくぞ言った。人民元のSDR入りは、金融市場の自由化を条件にしているのだが、習近平政権のやることは逆だ。IMF加盟国から文句が出ないのは、欲に目のくらんだ西側金融資本を一本釣りして人民元決済や株式取引の権益を部分供与しているからだ。人民元が国際通貨になれば、戦略物資も軍事技術も北京が刷るカネで確保できる。南シナ海、尖閣諸島周辺など、武力を使って海洋進出を図る習主席はほくそ笑んでいるだろう。

 とりわけこっけいなのは、「不正な資金の流れの我々の経済への重大な悪影響を認識」「腐敗や不正な資金フローが経済成長などに及ぼす有害な影響を認識」「腐敗関係の捜査対象者及び財産回復に係る国際協力のための研究センターの中国における設立」。


 かのパナマ文書が暴露したように、習主席の親族を含め、中国の党幹部や企業こそ、タックスヘイブン(租税回避地)利用の大半を占める。習政権は汚職高官のリストを持って米国に逃亡した元党幹部の引き渡しをワシントンに求めているのだが、杭州合意を手にしてさらにワシントンに詰め寄るのだろう。ならば、せめて赤じゅうたんでオバマ大統領を歓迎すべきだった。研究センターをつくるなら、自身や周辺の党幹部一族の蓄財を調べて公開すればよい。

 「鉄鋼及びその他の産業における過剰生産能力が、共同の対応を必要とする世界的な課題であると認識」とは、よく言うよ。課題は世界ではなく中国にある。習政権は自身で解決できないなら、国際監視団の外圧のもとに5割を超える鉄鋼などの過剰設備を廃棄したらどうか。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】世間知らずの馬鹿が馬鹿話をして、世界の笑いものに(゚д゚)!

中国をめぐる環境では本当に何も良いことはありません。それは、上の記事でも明らかですが、以下に若干これ以外に関して補足しておきます。

まずは、現在の世界経済をみると、一国の経済を伸ばすために、輸出を増やすことはもう有効ではなくなりました。

ちなみに、このあたりの数値を以下に掲載しておきます。これは2014年のものです。
●輸出依存度(GDP比)
韓国  :43.4%
ドイツ :33.6%
メキシコ:26.2%
中国  :24.5%
ロシア :24.4%

日本  :11.4%
アメリカ: 7.5%

●輸入依存度(GDP比)
韓国  :38.8%
ドイツ :28.0%
カナダ :24.6%

アメリカ:11.4%
日本  :10.8%

そうして、日本の対中依存度は下記の通り
対中輸出依存度(GDP比):2.79%
対中輸入依存度(GDP比):2.44%
中国の輸出依存度は、韓国程ではないですが、日本や米国と比較するとかなり高いほうです。そうして、これは経済を伸ばすとか、立て直すといった場合には障害になります。


なぜなら世界貿易総額は最近では伸びが少なく、2015年にはかなりのマイナスとなり、これからは急激に伸びることは考えられないからです。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が先月9日発表した2016年版の世界貿易投資報告によると、2015年の世界貿易額(輸出ベース)は推計で前年比12・7%減の十六兆四千四百六十七億ドル(約千六百八十兆円)となり、6年ぶりに縮小に転じました。中国経済の不振が影響したほか、各国企業の現地生産進展も貿易が伸びにくくなったという背景があります。。

世界では、2015年以降に日本とオーストラリア、中国と韓国など十四件の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)が発効したのですが、環太平洋連携協定(TPP)など大型のFTA発効が遅れていることも貿易停滞の一因となったようです。

国別では、中国は景気減速に加え、工業製品の内製化が進み輸入が18.4%減となりました。ジェトロの石毛博行理事長は「中国の供給力が上がっている」と指摘し、対中輸出が伸びない理由として中国の生産力増強を挙げました。

また日本の輸入は20・7%減、輸出は10・0%減でした。日米欧などの企業は需要がある海外現地での生産体制を既に築き上げており、自国からの輸出が増えにくい構図になっています。

分野別では、価格が下落した原油が45.5%減と大きく落ち込みました。ジェトロの担当者は「中国で製造業向けの生産用機械や部品の輸入が減っていることが大きい」と分析しました。

世界経済の約67%を占める主要22カ国・地域の16年一~3月期の輸出額は前年同期比8.4%減となり、低迷が続いています。

そうして、中国のような輸出の多い国は、輸出を大幅に伸ばすことはもう不可能なので、内需を拡大するのが経済政策の順当な手段であると考えられます。

さて、日本をはじめとする先進国の個人消費がGDPに占める割合は60%台です。アメリカは、この比率が他国と比較すると高くて、70%台です。これに比較すると、中国はなんと35%に過ぎません。韓国も低いですが、それでも50%台です。

ここに本来は中国の活路があるはずです。個人消費を50%台にでも高めれば、かなりの成長が期待できます。しかし、なぜか中国はこれに本気で取り組む姿勢にありません。

結局、個人消費を増すためには、個人にある程度収入や、資産がなければ不可能です。家局中国では、富裕層や高級官僚が金を握って離さないような仕組みになっているので、不可能なのです。

個人消費を増すためには、ある程度民主化、政治と経済の分離、法治国家化が必要不可欠なのですが、共産党一党独裁国家である中国においては、これが非常に困難なのです。

この体制が構築されないかぎり、中国においては日本をはじめとする、先進国に普通にみられる、中間層が活発な社会経済活動を行うこともできず、深みにはまるだけです。これに関しては、このブログでも何度か掲載してきたことですが、もう一つ中国の根本的な弱点があります。

アメリカの一番の強みは軍事力ではない
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。

資源を買うことができなければ、軍艦を出動させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が融和しない場合、アメリカは金融制裁をさらに強めることになるだけです。

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られきましたが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなることでしょう。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

アメリカの一番の強みは金融支配力
そうした構造をよくわかっているので、中国はアメリカのドル支配から抜け出そうとしてきたわけです。そうしてアジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)の創設を主導し、さまざまな二国間投資を推進することによって、アメリカに頼らない体制をつくりたがっています。

その動きを必死に否定しているのが日本やアメリカであり、同時にASEAN(東南アジア諸国連合)の各国も日米に連動するかたちで自国の権益を守ろうとしています。そうして、中国のこの動きは完璧に封鎖されたといっても良い状態にあります。日米が参加しなかったため、AIIBは頓挫状況です。

このようなことから、米中が軍事衝突したり中国がそれ以外でもとんでもない行動をしそれが米国が到底許容できないものであった場合には、米国はすぐさま金融制裁に打って出ることでょう。そうなれば、中国に軍配が上がる可能性は全くありません。米国にとっては中国のこうした動きなど、赤子の手をひねるように簡単に封殺できます。

軍事的には無論のこと、米国の金融制裁には中国は手も足も出ず、中国の現体制は崩壊することになります。

以上のようなことを知った上で、ブログ冒頭の記事を読み返すと、今回の中国杭G20サミットの共同宣言の中身は、 世間知らずの馬鹿が馬鹿話をして、世界の笑いものになったという代物であり、本当に醜悪な中身としか言いようがありません。どんなときでも、どんな内容でも、中国国内を優先するという態度は永遠に改まりそうにもありません。

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2016年9月8日木曜日

北方領土問題がプーチン来日で動く可能性は十分にある―【私の論評】ロシア経済の脆弱性は変わらず!今こそ交渉の進め時だ(゚д゚)!

北方領土問題がプーチン来日で動く可能性は十分にある

高橋洋一 [嘉悦大学教授]

G20の前にウラジオストクで行った日ロ首脳会談で、今年12月のプーチン大統領の来日が決まった
 北方領土問題の解決に
    決意を見せる安倍首相


あまり報道されていないが、安倍首相が北方領土問題の解決に向けて並々ならぬ決意を見せている。

ここ1週間の外交ウィークで、G20の前に、日ロ首脳会談を2日にウラジオストクで行った。大きな成果として、今年12月のプーチン大統領の来日が決まった。それは安倍首相の地元山口で、である。これは、G20での日中首脳会談の前に対中国戦略としてかなり有効だった。

もともと、安倍首相の悲願は、憲法改正と北方領土返還だ。ともに、祖父である岸信介以来の悲願である。大きな目標であり、国のあり方の基本を問うという政治家らしいものだ。

憲法改正については、衆参ともに憲法改正勢力は一応3分の2以上になった。もっとも、憲法のどこを改正するかは今後の話であり、それが決まらない以上、国民投票もありえない。まだ道半ばであるが、少しずつ前に進んでいる。

憲法改正事項では、維新が提示した地方分権、教育無償化、憲法裁判所が面白い。民進党の代表戦が今行われているが、その3人の候補はそれらの項目に政策としては前向きだ。それが憲法改正項目に直結するかどうかはわからないが、項目として提示されたとき、憲法改正マターでないというのは言いにくい。

憲法は国の基本を定める。政権が変わっても行われるべき政策を定めるものであり、政府に義務を課すものだ。例えば、教育無償化を憲法で定めたならば、たとえ財政事情が苦しくとも教育無償化を無視することはできなくなる。要するに、教育無償化を最優先させるような制度的な裏付けが憲法なのだ。

 60年間ほとんど進展してない北方領土問題
    ロシアと続いていた「異常な状態」


一方、北方領土はここ60年間、ほとんど進展してない。北方領土は、戦後のどさくさから、ソ連に違法占拠されたままだ。今から60年前の1956年日ソ共同宣言で法的な戦争状態を一応終結したが、まだ平和条約は締結できていない。これは、誰が考えても「異常な状態」だ。

その異常な状態は、北方領土問題があるからだ。領土問題は、いつでも解決困難であり、極論すれば戦争でしか解決しないのが世界の常識だ。その意味で、沖縄返還は世界史から見ても画期的な話だった。そのほかの例としては、戦争以外というと、英国による99年間の香港租借後の中国への返還、アメリカによるロシアからのアラスカ購入が有名な例だ。

北方領土も平和的な解決は困難な問題であるが、それを避けようとしないのは安倍首相の政治家としての信念であろう。現時点で、安倍首相以外にこうしたスケールが大きくタイムスパンが長い政治課題を掲げる政治家はいない。この点、自民党総裁の任期延長問題が今議論されているが、長期的な日本の課題を扱う政治家が安倍首相以外に存在しないことは、安倍首相の任期延長に有利に働くだろう。

 日本側が示した8項目の「協力プラン」に
 対応したロシア


今回の日ロ首脳会談の成果をまとめておこう。外務省のホームページを見れば詳細が掲載されている。こうした情報は、新聞などの2次情報ではなく公式な1次情報を見るようにしたい。

簡単にいえば、ソチでの首脳会談において提示した8項目の「協力プラン」を具体的に日本から示したということだ。8項目とは、(1)健康寿命の伸長,(2)快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り,(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大,(4)エネルギー,(5)ロシアの産業多様化・生産性向上,(6)極東の産業振興・輸出基地化,(7)先端技術協力,(8)人的交流の抜本的拡大 である。

ロシア側としては、日本に投げたタマが返されたわけなので、話に乗っていかざるを得なくなったのだ。

この日本側の動きは、外務省ではなく、経産省主導になっている。過去、貿易摩擦が華やかだったころは、外交について、外務省と経産省で主導権争いをしていた。最近ではそうした動きはなくなり、第三者から見ると外務省主導で派手な立ち回りがなくつまらなかったが、国内で外務省と経産省が競うと、結果として国益にかなう結果が多くなるように感じる。筆者はいい意味で競争した方がいいと思っており、その観点から、今回の日ロ首脳会談は経産省が主導しているのは問題ない。

今回、「協力プラン」の責任者として、経産大臣でもある世耕氏が、ロシア経済分野協力担当大臣を兼任し、同大臣の下に全ての関係省庁を総理官邸が直轄する体制としたことも、経産主導を体制としてもはっきりさせている。

これに対してロシアがどう出てくるかは、今の段階では未知数である。外交交渉とはそういうものであるので、今後の交渉次第ともいえる。そこで、北方領土が返ってくるかといえば、60年間も進展のないものがそう簡単に動き出すはずはない。しかし、何とか一歩でも進めたいというのが安倍首相の信念である。

 ロシアの国内事情からいえば
    北方領土と経済協力はまったく別物

日本固有の領土である、国後、択捉、色丹、歯舞群島
図、写真はブログ管理人挿入、以下同じ。
 ロシアの国内事情からいえば、北方領土と経済協力はまったく別物だ。8項目の協力プランは、日本の優れた技術を各分野で提供しており中身はいいが、ロシアは北方領土と切り離して考えている。

あるロシア問題専門家によれば、ロシアにとって領土問題は解決済みであり、プーチン大統領は話し合う余地はあると匂わせているが、日本からの経済協力が欲しいので、日本を引っ張っているだけという。最終的には、北方領土を返さずに平和条約を締結して、経済協力だけを引き出すのがロシアの戦略という。なにしろ、ロシア国民の8割が北方領土返還に反対している。

領土問題は、過去の経緯が複雑でそれを丹念にたどると膨大な紙数を要する。それを省き、現状を簡単にいえば、以下の通りだ。

(1)日本は、4島一括返還が先で、その後平和条約を締結する。
(2)ロシアは、平和条約締結を先行させて、その後2島返還で決着させる。

ただし、日本側は1998年の橋本=エリツィンの川奈会談で、四島を日本領土と確定させれば、ロシアの施政権を認めるという譲歩もしている。

一方、ロシアは北方領土を実効支配し、現在1万8000人のロシア人が住んでいる。さらに、北方領土の軍事化も進めている。実効支配が長引けば長引くほど、領土返還は難しくなる。返還すれば、住民に対する莫大な補償問題にもなるという。つまり、年々、領土返還のハードルは高くなっているのだ。

 12月はアメリカ外交の空白時期
    北方領土問題が動く可能性は?


これらの状況から、北方領土返還は実際問題として難しいのは事実だが、プーチン大統領の訪日を12月に設定できたのは、今回の日ロ首脳会談の成果である。というのは、12月は次期アメリカ大統領の始動前で、アメリカ外交の空白時期でもあるのだ。このあたりはプーチン大統領も計算済みであり、あえて安倍首相の提案に乗ってきたわけだ。

この観点から、北方領土問題が今年12月に動く可能性は十分にある。ただし、ここで一気に解決というのではなく、日本は次の時代に向けた布石を打てるかどうかである。

領土問題は基本的には戦争でしか解決しない。ただし、各国とも政変の可能性は常にあり、そうした混乱時に戦争でなくても解決するかもしれない。

筆者は、かつてソ連崩壊時に北方領土解決のチャンスであると言ったことがある。そのとき、中国はロシアとの国境問題解決に動き出し、2004年に中露国境協定を結び領土問題を解決している。1998年の日本からの川奈提案もそうした動きに沿ったものだった。

12月のプーチン大統領の訪日で、解決(これは日本にとって完全解決ではなく一部解決)の可能性があるという根拠は、これまでプーチン大統領が中国、カザフスタン、アゼルバイジャンので領土問題を解決してきた実績があることだ。

ロシアは17ヵ国と国境を持っているので、領土問題の宝庫でもある。そのロシアのプーチン大統領の領土問題解決法は、「引き分け」である。プーチン大統領は柔道家でもあるので、「引き分け」と日本語でも言う。

 2島返還ならば可能性がある?
 プーチン大統領が狙う「引き分け」

確かに、プーチン大統領は、1956年日ソ共同宣言を踏襲するというので、2島返還に応じる可能性はある。

であれば、

(3)日ロ間で平和条約締結し2島返還+α(日ロ両国で満足するもの)

という「引き分け」はありえるところだ。

ただし、この「引き分け」はロシアの主張に近い。ロシアとしては、+αで経済協力があれば十分だろうが、日本としては+αで、ロシアからのエネルギー確保の他に、ロシアの体制や経済混乱などの場合に領土交渉できるような、将来への布石がないとまずいはずだ。

かつて、2001年イルクーツク首脳会談で、当時の森首相がプーチン大統領に2島先行返還で後の2島は継続協議という案を示したことがある。今回は、日本としてはエネルギー確保という長期メリットも加わっており、森提案でも、日本の国益はプラスというリアルな判断もあるのではないだろうか。何もせずに問題が固定化すると、将来の解決がますます困難になるので、少しでも前進させるというのは現実的な解決策だ。どう安倍首相が交渉するのか見物である。

【私の論評】ロシア経済の脆弱性は相変わらず!今こそ交渉の進め時だ(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事では、珍しくロシア経済に関する論評がほとんどないので以下に、掲載することにします。

7月14日、IMF(国際通貨基金)はロシアの経済見通しを発表しました。

2016年のGDP(国内総生産)成長率は貸出条件の厳格化と実質所得の減少、さらに国内投資の低迷を背景にマイナス1.2%と依然マイナス成長ですが、前回見通しのマイナス1.5%からは上方修正されています。

さらに2017年については、金融緩和と国内需要の緩やかの回復を背景にプラス1.0%の成長を見込んでいます(図表1)。

しかも、この予測の前提となる原油価格(年平均)は2016年が42.2ドル、2017年が48.8ドルです。足許の原油価格の推移を見ると原油価格はこれらの予測値を上回って推移しており、GDP成長率もさらに上方修正される可能性もあります。

実際、7月初にロシア連邦統計局が発表した2016年第1四半期のGDP成長率は前年同期比マイナス1.2%と市場予想よりも下落率は小幅にとどまりました。


ロシア経済が「底打ち」した理由はまず第1に原油価格の反発です。

ブルームバーグによれば、ロシア産石油の今年の輸出量は過去最高となる勢いです。イランが欧州向け供給を増やす中、欧州市場をめぐる競争が激化しています。

ロシアエネルギー省のデータによると、1-6月の輸出量は前年同期比4.9%増の日量555万バレルとなりまし。6月単月では前年同月比1.14%増え日量1084万3000万バレル。2014年7月以来、毎月増加を続けています。

BMIリサーチの石油・ガス担当責任者、クリストファー・ヘインズ氏は、「生産が堅調に推移すれば、通年の輸出量は過去最高となる公算が大きい」とし、「これは競争が厳しくなることを意味します。とりわけイランが南欧諸国への石油輸出を増やしている」と説明しました。

石油輸出国機構(OPEC)はイランの参加が見込めないことなどを理由に、供給過剰の緩和に向けた措置を講じることができませんでした。これを受けてロシアは、4月に生産と供給の引き上げを示唆しました。1月の経済制裁解除後、イランは増産に素早く動き、欧州で顧客を再獲得しました。核開発問題でイランが2012年に欧州での原油販売を禁止された後、主に恩恵を受けたのはイラン産と性質が似るウラル原油を産出するロシアでした。

ノバク・エネルギー相は最近の見通しで、今年の石油輸出量が2億5200万トン(日量換算で505万バレル)になると見込んだのですが、現状はこれを超えるペースです。テクスレル第1次官は4月に最大2億5500万トンと予想しました。エネルギー省によると、これまでの最高は2007年に記録した2億5390万トン。さらにもう1つの理由を挙げるとすれば経済構造がルーブル安に適合し始めたことです。つまりルーブル安を有利に使い始めたことです。すなわち「輸入代替」の進展であり、この輸入代替の動きは農業と軽工業に顕著に見られます。

さらにロシア経済持ち直しまもう1つの理由を挙げるとすれば経済構造がルーブル安に適合し始めたことです。つまりルーブル安を有利に使い始めたことです。すなわち「輸入代替」の進展であり、この輸入代替の動きは農業と軽工業に顕著に見られます。

欧米による経済制裁の継続、ルーブル安、原油価格の下落を受けた非資源産業の育成ニーズを背景に、ロシア政府による工業分野での輸入代替政策が進展しています。公共調達分野における輸入と外国企業による役務・サービス提供を一部制限するとともに、「特別投資契約」という新たな投資促進措置を導入し、製造業の育成と生産振興に力を入れています。

これについては、詳細は、通商弘報をご覧になって下さい。

結局のところ、ロシア経済の持ち直しは、原油価格の反発と、「輸入代替」という名の輸入制限です。特定の物品の輸入を制限して、その代替のロシア製の物品を製造する企業などに投資をして、ロシア産品に変えるということです。

この「輸入代替」という手法は、我が国をはじめとする、自由主義経済圏の先進国では、やりたくてもなかなかできないことです。これは、政府のよる統制経済の一手法です。やはり、ロシアのような体制の国だからできることです。

しかし、このロシアの経済回復の中身をみてみると、決してまともな構造改革によるものではなく、一時しのぎに過ぎないことが良く理解できます。

もう一度、原油高に転ずれば、すべては帳消しになります。そうして、現在中国の経済がかなり低迷しかつ長期に続きそうなことから、当然のことながら、石油の需要量は減ります。やはり、このロシア経済の弱点は本来であれば、ロシアが何か国内で、別の産業を振興し、それを育成しなければ、いつまでも、いつ何時脅かされるかもしれない脆弱なものであることには変わりありません。

G20でのプーチン大統領
このような状況にあるにもかかわらず、プーチン大統領はG20で強気の発言をしています。

プーチン大統領は、中国・杭州での20カ国・地域(G20)首脳会議で、「ロシア経済は安定した」と述べ、また「財政赤字の削減に注力する」と表明しました。

また、石油・ガス輸出に対する依存の低減に取り組むと述べました。このほか、今後もロシアでの事業環境の改善を目指す方針を示しました。

原油価格の急落やウクライナをめぐる国際制裁を背景に、2015年のロシア国内総生産(GDP)は3.7%減となりました。

ロシア中央銀行のアナリストらは、第3・四半期と第4・四半期の経済成長率が前期比で低い伸びになるとの見通しを示している。

ロシア経済は、マイナス成長が予測され、金融政策も、現在のインフレ率(6.6%)
であることを考えると、金融緩和にも限界があり、あまり大規模な追加緩和をすると、ハイパーインフレになる可能性すらあります。

こんな時に、財政赤字の削減をするとはどういうことでしょうか。本来ならば、そもそも財政赤字などGDPの数%しかないのですから、本来ならもっと借金をしてでも、積極財政を実行して、経済を建てなおすべきです。

ロシアの経済の脆弱性はまだあります。それは、国家基金が底をつく危険です。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載います。
露の国家基金「2019年初めに底つく」 資源頼み、欧米制裁…プーチン政権さらに窮地―【私の論評】小国ロシアの底が見え始めた最近のプーチンが、軍事的存在感の増加に注力するわけ?

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部抜粋して掲載します。
2008年のリーマン・ショック時にロシア経済を下支えた、石油や天然ガスの税収を基盤とする露政府の基金が19年にも枯渇する見通しであることが明らかになった。財政赤字を補填(ほてん)するための基金からの支出に歯止めがかからないことが原因だが、資源収入頼みの経済政策の行き詰まりが背景にある。欧米の制裁で基金に要請が急増している企業支援も困難になる可能性があり、プーチン政権にも痛手となりそうだ。 
露政府は石油・ガスの採掘・輸出税収が潤沢な際にその一部を積み立てており、赤字補填に使う「予備基金」と、景気刺激策に利用する「国民福祉基金」の2つの国家基金を抱えている。ロシアはリーマン・ショックの直撃で09年には経済成長率がマイナス7.9%に落ち込んだが、その後政府が実施した巨額の景気対策の原資となったのが、これらの基金だ。 
しかし露中央銀行がこのほど発表したリポートによると、政府は15年1~10月に赤字の埋め合わせに予備基金から1兆5600億ルーブル(約2兆4400億円)を使い、16年にはさらに2兆1370億ルーブルを使うと予測。このペースで支出を続ければ、17年には国民福祉基金も赤字補填が必要となり、「19年初めには両者が底をつく」と指摘した。
無論この予測は、昨年のような経済状況がこれからも続けば、国家基金が19年で底をつくということなのでしょうが、それにしてもこれからも、原油安がまたぶり返せば、同じことで、やはりロシア経済は外的要因に左右される脆弱なものであり、今回たまたま息を吹かえしかけているというだけであり脆弱な基盤の上に立っていることは間違いありません。

この脆弱な基盤を抜本的に改めるには、やはりソチでの首脳会談において日本が提示した8項目の「協力プラン」のうち、"(5)ロシアの産業多様化・生産性向上"は、喫緊のが課題でしょう。やはり、ロシアは、資源一辺倒の産業構造から、日本などのように産業の多様化を目指さなければなりません。しかし、これは、長期的な課題です。短期的には、日本からのエネルギーの大量購入や、経済支援が重要な意味を持ちます。

ご存知のように、ロシアは米英から経済制裁を受けています。日本は、制裁をしているとはいいながら、G7の中では最も甘い制裁しかしていません。ロシアの経済援助に対応できるとすれば、現在は日本と中国くらないなものでしょうが、ロシアと中国は表面上とは異なり、実は犬猿の中です。

ロシアは、世界で一番中国と長く国境を接している国です。さらに、最近では国境を越境してロシア領内で商売をしたり、居住する中国人が増え、国境溶解などとも呼ばれいます。

今や、中国のほうがロシアよりも圧倒的にGDPは大きいですし、人口はロシアが一億四千万人(日本よ若干多い程度)、中国は13億人以上です。今のところ、軍事力においてロシアがかなり優っていますから、国境紛争などが起こったにしても、ロシアが圧倒的に強いですが、これからはどうなるかはわかりません。

ロシアにとって、中国は潜在的にも顕在的にも脅威なのです。しかし、日本がロシアにとって、脅威になるということは考えにくいです。それに、中国は現在では景気が低迷し、当面復活する見込みはありません。

7月26日夜、エネルギッシュな音楽とともに、10人ほどのロシア人美女たちが集まり、
南京でビキニパレードを行った。このパフォーマンスで水遊びで暑気払いをしていた
市民たちの気分を大いに盛り上げた。中国新聞網が伝えた。
そうなると、プーチンとしては、日本の経済援助などに頼りたくなるのも無理からぬ話です。というより、日本のGDPはロシアなどと比較すれば、桁違いに大きいですし、先日も示したように、日本の財政再建は今年中で終わりそうです。プーチンにとっては日本の援助は垂涎の的のはずです。このあたりを日本側は、良く理解すべきです。現在のロシアは、現状を維持できるか、あるいは一昔前のソ連のように経済が疲弊して、国民に途端の苦しみを強いて何とかやりすごすことしかできなくなるかのいずれかを選択するしか道はありません。

日本が、直近でロシアに短期的には経済援助や、エネルギーの輸入などをして、さらに長期的にロシア経済の構造転換に力貸すことを約束すれば、ロシア経済が立ち直る可能性は高まります。米国やEUは経済制裁を実施している最中なのでそのようなことはできません。

そうなると、日本がロシアの頼みの綱ということになるわけです。これを背景として、ロシアと北方領土の交渉をすれば、かなり有利にできます。

まさに、今が交渉の時です。安倍政権には、四島一括変換か、少なくとも将来に四島変換に含みを持たせた、2島変換に成功していただきたいものです。

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2016年9月7日水曜日

NY地下鉄に川重応札へ 安値攻勢の中国大手車両メーカーも関心 “日中対決”か―【私の論評】本当に世界中で失敗続きの中国の車両が検討されるのか?

NY地下鉄に川重応札へ 安値攻勢の中国大手車両メーカーも関心 “日中対決”か

川崎重工米国現地法人カワサキモータース・マニュファクチャリング・
コープUSA社の車両工場(ネブラスカ州リンカーン市)
川崎重工業が、米ニューヨークの地下鉄が導入する新型車両の製造を目指し、発注先を決める入札に参加する方針を固めたことが7日、明らかになった。安値で攻勢を強める中国の大手鉄道車両メーカーも応札に関心を示しており、日中対決となる可能性がある。

発注は最大1545両で、早ければ来年半ばにも受注メーカーが決まる見込み。川重によると、同社はニューヨーク地下鉄の保有車両のメーカーでシェア最大。技術力を武器にさらなる受注を目指す。

ニューヨークの地下鉄は朝夕のラッシュ時の遅れが深刻で、ニューヨーク市交通局は乗降しやすいように客室の扉を広くした新型車両「R211」を入れ、老朽車両と置き換える。

車内では利用者が自分のスマートフォンでインターネットを楽しめるようにWi-Fi(ワイファイ)を提供し、充電もできるようにするなど快適性も高める。川重以外にも、中国の中国中車、カナダのボンバルディアなどが応札に関心を示している。

【私の論評】本当に世界中で失敗続きの中国の車両が検討されるのか?

ブログ冒頭の記事を読んだとき、最初に頭に浮かんだのにが、中国の鉄道事業が世界中で大失敗しているという事実です。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事の、リンクを以下に掲載します。
【ビジネス解読】中国製車両が海外で初の大規模リコール シンガポール都市鉄道が故障だらけ 鉄道受注合戦さらに暗雲―【私の論評】中国高速鉄道には元々安全性に問題!導入すれば大惨事を招くだけ(゚д゚)!
廃墟のようになったベネズエラ・サラサの高速鉄道関連工場
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、とにかく中国の高速鉄道の導入は、世界中で失敗しています。

具体的には、インドネシア、ベネズエラ、タイ、米国で失敗しています。このうち、インドネシア以外は、中国の高速鉄道の導入は事実上白紙状態になっています。インドネシアも、今後の展開ではどうなるのかわかりません。

高速鉄道がこの有様ですから、私には、地下鉄も中国には無理ではないかと考えてしまいます。

そもそも、中国には鉄道に関する高い技術はありません。ただし、高速鉄道ということになれば、ほとんどの国に導入経験がないので、線路から駅から、車両から安全システムから何もかも、既存の鉄道とは異なるので、導入するには莫大な経費と時間がかかります。

しかし、今回の地下鉄の場合は、地下鉄システムを全部導入するというわけではなく、新型車両の発注だけです。これなら、何とか中国もできるのかもしれません。

それにしても、中国は高速鉄道を含めて鉄道の事故がかなり多いです。地下鉄の事故もかなりです。

2010年7月浙江省で起きた高速鉄道の大事故
2010年7月に浙江省で起きた高速鉄道の大事故については記憶にとどめている方も多いかもしれません。それからたった2ヶ月後の9月27日は上海の地下鉄で大規模な衝突事故が起きました。この事故では、死者こそ報告されていませんでしたが、日本人2人を含む270以上の乗客が負傷しました。

当時この事故後、ろくすっぽ原因の調査もせず、まともな安全確認も行わないまま、わずか4時間後に運転再開したというのですから、浙江省の高速鉄道のときと同じく、鉄道当局はこの種の事故にいかに鈍感かを示した形になりました。

これには中国人自身も怒っていました。中国版SNS微博には、上海の鉄道当局の無神経振りを非難する書き込みが氾濫していました。

浙江省の高速鉄道事故の基本的な原因は信号システムの不備にあったのと同様、この上海の地下鉄事故もやはり信号システムの不備が原因していたようです。もし、信号システムが機能しない状態では、列車が衝突するのは当たり前といえば当たり前でした。

事故のあった上海の地下鉄10号線は2010年4月に開業しました。その時点ではまだ、信号システムが完成していなかった可能性があったそうです。この地下鉄は、未完成な信号システムで1年以上も運行していたのです。いつ事故が起きてもおかしくなかったということでした。というより、これまで事故が起きなかったことのほうが不思議だったということでした。

上海地下鉄事故直後の駅周辺の様子
日本でも、地下鉄事故はあったこともありましたが、それにしても、中国のような杜撰なやり方で発生したわけではありません。また、事故後の対応も中国のような杜撰なことはしていません。

以上のようなことを考えると、いずれの国にせよ、中国の地下鉄を導入するなど安全性の面からいってかなり問題があります。中国の車両など導入すれば、結局のところ安物買いの銭失いということになるのではないでしょうか。

中国では、地下鉄や高速鉄道などの人身事故がおこっても、賠償は日本や他の先進国と比較すれば、雀の涙であり、安全性がないがしろにされるのも無理もありません。しかし、米国などでは、一度事故がおこってしまったら、大変なことになります。特に、人身事故の場合は、会社の存続さえ危ぶまれるような事態になりかねません。

もともと、このようなことに対する意識の低い中国では、製造物責任もあいまいです。もし、車両に問題があったにしても、日本のような先進国による対応とは雲泥の差であると思います。

川重には是非受注していただきたいものです。そうして、川重には実績があります。たとえば、同社が2005年から06年にかけて受注したニューヨーク・ニュージャージー港湾局ハドソン横断公社向け地下鉄電車「PA-5」、メトロノース鉄道向け通勤電車「M-8」の同時製造に加え、米国で見込まれている高速鉄道プロジェクト、既存車両の置き換えや輸送力増強に関するプロジェクトなどの鉄道車両の需要増に対応するために、2011年には、製造能力を増強のために、米国現地法人カワサキモータース・マニュファクチャリング・コープUSA社の車両工場(ネブラスカ州リンカーン市)で拡張工事をしました。

いずれにしても、いずれの国であろうと、中国の車両など導入するべきではないです。もし、ニューヨークが中国の地下鉄車両を導入すれば、恐ろしくて、ニューヨークに行っても不便です。

こんなことをいうと、神経質なことをという人もいるかもしれませんが、そのような人には大連の事例をあげておきたいです。

交通状況が年々悪化する中国大連で待望の地下鉄が昨年5月22日から試営業を開始してから1か月が経過していました。中国は、毎年のように、各地で地下鉄が開業しており、遼寧省では瀋陽に次ぐ2番目の開通となりました。中国では、都市の規模や人口によって地下鉄建設が認可されるため、どこにでも地下鉄を作れるわけではありません。いわば、中国の地下鉄は選ばれた大都市の証とも言える存在なのです。

大連地鉄(大連地下鉄)は、2010年3月から建設が始まり、幾度も開通延期を繰り返しながらようやく開通へこぎつけたので、さぞかし、賑わっているかと思えば、地上を走るバスがすし詰め状態の通勤時間でも、立っている人がちらほら見かける程度と蟻の這い出る隙もないバスと比べるとガラガラと言える状態が続いていました。

開業二日目の大連の地下鉄車両内部
それは、なぜかと聞いてみると、大連市内の米系IT企業へ勤務する20代の中国人女性「地下鉄を怖がって私も含めて同僚も誰も乗っていません」と答えてくれました。

そう、中国人は地下鉄を怖いと感じているようなのです。さらに聞いてみると、「自国の技術をあまり信用していないこともありますし、大連の地盤はもろく地下鉄にも不向きだと言われていますから、私も1年くらいは事故がないことを確認してから乗ります」

では地下そのものが怖いのかと思えば、地下が怖いわけでないようです。たとえば、大連最大のショッピングゾーンは、大連駅前にある勝利広場という元防空壕を再利用した地下3階まで広がる巨大エリアがあり、年中活気があるくらいなので、地下だから怖がっているといわけではないようです。

ただ、私も何度か建設中の地下鉄落盤事故のニュースを耳にしています。それらの事故の否定的なイメージが頭から離れないのかもしれないです。

当の自国民ですら、危険視する中国の地下鉄です。このような国の地下鉄車両を導入の検討をするなどということは考えられません。まあ、応札した場合、無下にもできないでしょうから、一応は検討するものの、最初から本気で導入するつもりなどないでしょう。

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