2018年1月9日火曜日

中国、印北東州で道路建設 インド側反発「インフラ整備で領有権主張する常套手段」―【私の論評】中華サラミ戦術には逆サラミ戦術で対抗せよ(゚д゚)!



インドが実効支配し中国も領有権を主張する印北東部アルナチャルプラデシュ州で、中国の作業員グループがインドが主張する実効支配線を越えて道路を建設していたことが判明し、インド側が反発を強めている。歴史的に国境をめぐって摩擦が続く両国だが、インフラを整備して領有権を主張する中国の手法に反発は根強く、火種は今年もくすぶり続きそうだ。

 インド英字紙インディアン・エクスプレスなどによると、工事が発覚したのは昨年12月28日。中国人数人のグループが中国南西部チベット自治区から、同州側に1キロほど入り、重機を使って600メートルほど道路を建設していた。

 一団はインドの国境警備隊に発見されて中国側に戻ったが、立ち去った際に掘削機などをその場に残していったという。同紙はインド政府高官の「このような一方的な活動は激しく非難される」というコメントを掲載し、反発している。

 両国は昨夏に中印ブータンが国境を接するドクラム地区で、約2カ月半にわたって軍が対峙したが、発端は中国軍が道路の建設を始めたことだった。「それだけに今回の動きには敏感にならざるを得ない。インフラ整備を進めて領有権を主張するのは中国の常套手段だ」とインド紙記者は分析する。

 インド側の反発に中国側も敏感に対応した。中国外務省の耿爽報道官は3日の記者会見で、道路作業員についての言及は避けつつも、「中国はいわゆるアルナチャルプラデシュ州という存在を認めていない」と改めて強調した。中国は同州を「蔵南」(南チベット)と呼んで自国領土と主張しており、2016年には中国軍が実効支配線を越えて約45キロ侵入し、数日駐留した経緯がある。

 インドが実効支配し中国も領有権を主張する印北東部アルナチャルプラデシュ州で、中国の作業員グループがインドが主張する実効支配線を越えて道路を建設していたことが判明し、インド側が反発を強めている。歴史的に国境をめぐって摩擦が続く両国だが、インフラを整備して領有権を主張する中国の手法に反発は根強く、火種は今年もくすぶり続きそうだ。

 インド英字紙インディアン・エクスプレスなどによると、工事が発覚したのは昨年12月28日。中国人数人のグループが中国南西部チベット自治区から、同州側に1キロほど入り、重機を使って600メートルほど道路を建設していた。

 一団はインドの国境警備隊に発見されて中国側に戻ったが、立ち去った際に掘削機などをその場に残していったという。同紙はインド政府高官の「このような一方的な活動は激しく非難される」というコメントを掲載し、反発している。

 両国は昨夏に中印ブータンが国境を接するドクラム地区で、約2カ月半にわたって軍が対峙したが、発端は中国軍が道路の建設を始めたことだった。「それだけに今回の動きには敏感にならざるを得ない。インフラ整備を進めて領有権を主張するのは中国の常套手段だ」とインド紙記者は分析する。

 インド側の反発に中国側も敏感に対応した。中国外務省の耿爽報道官は3日の記者会見で、道路作業員についての言及は避けつつも、「中国はいわゆるアルナチャルプラデシュ州という存在を認めていない」と改めて強調した。中国は同州を「蔵南」(南チベット)と呼んで自国領土と主張しており、2016年には中国軍が実効支配線を越えて約45キロ侵入し、数日駐留した経緯がある。

【私の論評】中華サラミ戦術には逆サラミ戦術で対抗せよ(゚д゚)!

2016年の人民解放軍によるアルナチャルプラデシュ州侵入については、このブログでもとりあげました。
孤立浮き彫りの中国 ASEAN懐柔に失敗 あの外相が1人で会見の異常事態―【私の論評】海洋戦略を改めない限り、これから中国は大失態を演じ続けることになる(゚д゚)!
中国の王毅外相
この記事は、2016年6月15日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では当時の南シナ海での中国の侵略に加えて、当時人民解放軍がインドのアルナチャルプラデシュ州に侵入していたことを掲載しました。その部分のみ以下に引用します。
インドと中国が領有権を争い、インドの実効支配下にある印北東部アルナチャルプラデシュ州に今月(一昨年6月)9日、中国人民解放軍が侵入していたことが分かりました。印国防省当局者が15日、産経新聞に明らかにしました。中国は、インドが日米両国と安全保障で連携を強めていることに反発し、軍事的圧力をかけた可能性があります。 
中国兵約250人は、州西部の東カメン地区に侵入し、約3時間滞在しました。中国兵は3月にも、中印とパキスタンが領有権を主張するカシミール地方でインドの実効支配地域に侵入し、インド軍とにらみ合いになっていました。アルナチャルプラデシュ州への侵入は、最近約3年間、ほとんど確認されていませんでした。
アルナチャルプラデシュ州 地図の赤い斜線の部分
 ドクラム地区への人民解放軍の侵入もこの記事でとりあげています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中印紛争地区、離脱合意のはずが「中国固有の領土だ」 軍駐留を継続、トンネル建設も着手か―【私の論評】この動きは人民解放軍による尖閣奪取と無関係ではない(゚д゚)!

この記事は、昨年12月3日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくもとして、一部を以下に引用します。
インド、中国、ブータンの国境付近のドクラム地区で中印両軍の対峙(たいじ)が続いた問題をめぐり、中国側が最近、「ドクラム地区は固有の領土」と改めて発言し、軍隊駐留を示唆したことが波紋を広げている。中国軍が付近でトンネル建設に着手したとの報道もあり、インド側は神経をとがらせる。双方「要員の迅速離脱」で合意したはずの対峙だが、対立の火種はくすぶり続けている。
 中国国防省の呉謙報道官は11月30日の記者会見で、ドクラム地区をめぐり、「冬には撤退するのが慣例だが、なぜ(部隊が)依然、駐留しているのか」と質問され、「中国の領土であり、われわれはこの原則に従って部隊の展開を決定する」と応じた。

中国国防省の呉謙報道官

 ドクラム地区はヒマラヤ山脈の一角に位置し、冬は積雪のため部隊配備が困難となる。中国側は現在も軍隊が駐留していることを否定せず、配置を継続させることを示唆した格好だ。 
 発言にインドメディアは反応し、PTI通信は「中国が軍隊を維持することを示唆」と呉氏の発言を報じた。中国側の動きに敏感になっていることがうかがえる。 
 ドクラム地区では、中国軍が道路建設に着手したことを契機に6月下旬から中印両軍のにらみ合いが発生。8月28日に「対峙地点での国境要員の迅速な離脱が合意された」と宣言され、事態は収束したかのように見えた。
この中国のやり方、本格的な衝突にまではならないように、すこしずつ国境をずらしているようなものです。南シナ海でも、最初は人一人がようやっと、上陸できるようなところに掘っ立て小屋を立て、人一人を交代で常駐させるようにして、中国の占拠がはじまりました。

あれから、何十年もたって、今では環礁が埋め立てられ、港はもちろんのこと空港まで整備している有様です。

この戦術何やら、どこかで聴いた話と似ています。それは、バス停をずらした婆さんの話です。以下にその話を掲載します。

むかしむかし、小さな駄菓子屋を一人できりもりしているばあさんがいました。その駄菓子屋は広い道路に面していて近くに中学校もあったのですが、売り上げは思わしくなくばあさんは質素な暮らしを強いられていました。 
その中学校は田舎の中学校のため、バスで通学している学生も多かったのです。バス停はばあさんの店から十メートルほど離れたところにあり、登下校の時間になると学生たちで賑わっています。あの学生たちが店に来てくれれば……。そう考えたばあさんは一計を案じました。その日から、毎日夜になるとこっそりとバス停を店の方向に動かしたのです。バレないように、一日に五ミリずつ。 
そして数年後。バス停はばあさんの店の真ん前に移動し、店はバス待ちの学生たちで賑わうようになった、といいます。 
この話は、本当なのかどうかはわかりませんが、何かを一気に動かすと多くの人々に気付かれるのですが毎日少しずつ動かしていると意外とバレないものなのです。カツラも同じです。ある日突然、急激に髪の毛が増えるとこれは絶対にカツラだとバレます。だから少しずつ植毛していき、不自然にならないように増やしていくのです。

それはともかく、この現象はやはり人間の認識能力の盲点を突いたものでしょう。大脳の空間識野は、特に急激な変化、すなわち微分情報を抽出するように働きます。それゆえ、微分量が少ない緩やかな変化は認識されにくくなっているのです。

なぜこのような働きをするようになったのかは、進化論で簡単に説明がつきます。ある動物の認識する外界は、動くものと動かないものに大別されます。動かないものというのは、大地・山・樹木などです。これらはその動物にとって、友好的ではないが敵対的でもありません。中立なのです。ゆえに、特殊な場合をのぞいてはこれらの動かないものに注意する必要はないです。

これに対して動くものは要注意です。動くものは、さらに三種類に分けられます。すなわち、敵・餌・同種の異性です。敵からは逃げねばならぬし、餌と同種の異性は追いかけねばならないです。これらを素早く発見することは、生きていくためには重要な能力です。したがって、動くもの、すなわち微分量が大きいものを認識する能力が進化の過程で身についたのでしょう。



これと、似たような話で、「サラミ戦術」というのがあります。サラミ戦術(サラミせんじゅつ、ハンガリー語: szalámitaktika [ˈsɒlɑ̈ːmitɒktikɒ] サラーミタクティカ)とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法です。 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれます。


ロバート・ハディック米特殊作戦司令部の契約要員が、2014年11月24日付のナショナル・インタレスト誌に、「中国のサラミ戦術に対抗する6つの方策」という論説を寄せています。
ロバート・ハディック氏

戦争の理由になるには小さすぎる行動も、積み重なると、相当な戦略的変化になります。この中国のサラミを切るような戦術に対抗するには、ハディック次の6つのことをすべきであるとしています。
第1:東・南シナ海での漁船団を拡大すること。中国の民間船舶プレゼンスに対抗し、国家安全保障上の優先事項として漁船団を拡大すべきである。これは法執行および沿岸警備の船舶(白塗りの船舶)のプレゼンスも正当化する。 
第2:海洋での法執行と沿岸警備の能力、プレゼンスを拡大すべきである。各国は軍艦よりも非軍事的な船舶(白塗り船舶)に予算を回すことで、より速く能力改善を達成し得る。中期的には中国の海軍の能力増強に隣国は対抗しえない。しかし白塗り船舶での競争はより有利に行える。 
第3:米国と同盟・パートナー国の海洋当局(軍も含む)は情報交換、将校交流、多数国間訓練を拡大すべきである。これは低コストの能力向上になる。 
第4:米国などは、即時情報共有システムを樹立すべきである。事件の時の対応に役立つ。 
第5:米国と同盟・パートナー国の政策・企画担当者は多数国間の危機対応の準備をすべきである。 
第6:地域の関心国をこの構想に加わるように招請し、この構想への国際的支持を広めるべきである。
この対抗策というのも、悪くはないとは思いますが、これではあの傍若無人な中国に対しては不十分だと思います。ただし、ロバート・ハディック氏は、中国がいわゆる「サラミ戦術」を用いているということを多くに人々に認識させたという点で、大きく貢献したと思います。そうして、中国は南シナ海でも、尖閣でも、中印国境でもこのような戦略をとっています。

私はサラミ戦略に対しては、「逆サラミ戦略」という戦略を採用すべきだと思います。 それは、さきほどのバス停を動かした婆さんのたとえでいえば、バス停が動いたと認識した段階で、それを元に戻すのです。元に戻すにしても、いきなり元の位置に戻すというのではなく、これも一度に5mm程度を戻すのです。

これは、婆さんが毎日5mm動かしているとすると、ある時点で、婆さんが日々5mm移動しても、バス停は全く動かなくなることを意味します。そうすると婆さんは、動かしても無駄だと思うようになり、諦めてしまいます。

諦めた後でも、毎日5mmずつ動かすのです。そうして、元の場所に戻ったら動かすのをやめるのです。このやり方を「逆サラミ戦略」とでも名付けたいと思います。

ただし、現実にはバス停とは異なるので、もっと複雑なものになるでしょう。尖閣であれば、最初は尖閣諸島に何らかの理由をつけて、とにかく人を常駐させるようにします。次の段階では、少人数の武装兵力を常駐させるようにします。

そうして、最終的に尖閣を要塞化するのですが、要塞化するまでに20年〜30年かけるようにするのです。尖閣諸島付近の海域にも、自衛隊の艦艇や空母が日々往来するようにしますが、そうなるまでにやはり、数十年の年月をかけるのです。そうこうしているうちに、中国は尖閣を諦めることでしょう。諦めなければ、本格的な武力衝突になりますが、そうなったら、それでやむを得ないという精神で望めば良いのです。

そのときは、尖閣を日々往来する艦艇、空母、尖閣の要塞が一気に火蓋をきり、尖閣付近の中国軍を一掃すれば良いだけのことです。しかし、こうした覚悟は中国にも事前に十分に伝わることでしょう。いままで、他国にそのようなことをされたことがないので、中国は思い違いをしてきたものと思います。そうして、オバマの戦略的忍耐がこれに拍車をかけたのです。



ブログ冒頭の記事の事例では、アルナチャルプラデシュ州で、中国の作業員グループがインドが主張する実効支配線を越えて道路を建設したという事例では、掘削機など捕獲し、道路は破壊し、今度は逆に中国領に数百メートルインド側が中国領内に進み、その地点に掘削機を置くようにします。

中国側が何も言ってこなければ、インド側はそこに居座りつづます。中国側がクレームを言ってくれば、削岩機をそこに残して、元の国境線内に戻すようにします。このようなことを繰り返し、中国側が1mmもインド側に入ってこれないようします。

南シナ海の場合は、中国の環礁を多数の艦艇で取り囲み、燃料・食料・水などを補給できないようします。その場合、中国側の平和的な撤退は許すようにします。その後は、米国や近隣諸国が中国の環礁を共同管理し、破壊するなり、軍事基地として使うなりします。

ただし、こうしたことをするにしても、あくまでもサラミ戦術で数十年かけて行うようにします。オバマの戦力的忍耐を元に戻すには、これくらい長い年数をかける必要があります。ただし、諸状況が好転すれば、その時点では速度をはやめるべきですが、基本はあくまで逆サラミにすべきです。

とにかく、中国が今後も国境線を破るようなことをすれば、このようにすべて逆サラミ戦術で押し返すのです。それも、日米印露豪、ASEAN諸国すべてが合同でこれを行うのです。

この中で、露はすでに、中国と国境問題を解決ずみです。ソ連時代には国境紛争がありました。しかし、2004年、中国とロシアは国境問題を最終決着させ、国境河川の中州である黒瞎子島/大ウスリー島・タラバロフ島の半分などが中国に引き渡されました。

中露の国境紛争は、さかのぼれば17世紀から存在し、たび重なる武力衝突をも引き起こしてきました。にもかかわらず、最後は“交渉”によって決着するという、きわめて珍しいケースとなっています。これについては、本日述べると長くなるので、いずれ日を改めてまた掲載しようと思います。

大規模紛争や本格的戦争にならずに、中国の野望を完璧に打ち砕くには、このようなやり方が有効だと思います。

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2018年1月8日月曜日

韓国と北朝鮮の「南北会談」になんの期待も抱けない、歴史的な理由―【私の論評】周辺諸国は北崩壊後は「助けず、教えず、関わらず」の「非朝鮮半島三原則」を貫け(゚д゚)!

韓国と北朝鮮の「南北会談」になんの期待も抱けない、歴史的な理由

3月を越えればどうせまた…

髙橋 洋一氏  プロフィール

危機的状況になんら変わりなし

新年早々、北朝鮮情勢が動いている。1月1日、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は、新年の辞で、韓国との対話チャネルが開かれているとし、2月の平昌オリンピックについて北朝鮮の選手団を派遣することを示唆した。

これに、韓国の文在寅大統領がすぐに飛びついた。これまで韓国の対話要求に対して北朝鮮は無視してきたが、金正恩氏の歩み寄りとも取れる発言を歓迎。早速、9日の南北高官級会談を北朝鮮に提案した。

一方、アメリカのニッキー・ヘイリー米国連大使は、北朝鮮が完全に非核化するまでは、いかなる話も真剣に受け止めないとして、今後北朝鮮と韓国との会談があってもアメリカ政府が重要視することはないと反応した。アメリカ国務省のナウアート報道官も、「北朝鮮の狙いは米韓分断にあるかもしれない」と警戒した。

金正恩氏は新年の辞で、「核のボタンが私の事務室の机の上にいつも置かれている」と述べており、対話路線とも取れる発言の一方で、アメリカには強硬姿勢を崩してはいない。

ただし、アメリカは、平昌オリンピック開催中の2月9日から25日までの間とその直後、そしてパラリンピックの期間中3月9日から18日までの間、米韓合同軍事演習を実施しないとし、韓国と北朝鮮の交渉を見守る姿勢を見せた。

それを受けて、5日、北朝鮮は韓国が提案していた南北高官級会談について応じるとの連絡を送ってきた。

以上が、今年に入ってからの米韓朝の動きである。

その背景には、国連の北朝鮮に対する経済制裁が累次に及び行われた結果、制裁決議内容はほぼ限界にまでなっていることが大きく影響しているだろう。この冬にエネルギー関係の対外取引を制限されるのは、北朝鮮にとっても痛いところだ。

昨年だけでも、

国連安保理決議第2356号(2017年6月2日 http://www.un.org/en/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/2356%282017%29)、

国連安保理決議第2371号(2017年8月5日 http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/2371%282017%29)、

国連安保理決議第2375号(2017年9月11日 https://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/2375%282017%29)、

国連安保理決議第2397号(2017年12月22日 https://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/2397%282017%29

とかなり実効的な措置が採られており、国連内からもこのままでは北朝鮮経済は壊滅的になるという見方もでている。たとえて言うと、クビを絞めているが、ほんの少し力をぬいている状態とはいえ、長時間になれば窒息死する程度である。


制裁決議に反する闇の取引は依然行われているが、アメリカは、制裁決議に反する取引を規制するために、半軍事行動ともいえる「臨検」実施の可能性もちらつかせている。現在では国連憲章第7章41条(主として経済制裁)の実効性を高めるために、臨検が認められているとはいえ、戦時下では「軍事活動」ともされる行為である。
しかも、昨年12月末のクリスマス休暇で、在韓米軍の家族は一時アメリカに帰国している人も少なくない。そのまま、アメリカに滞在して韓国に戻らなければ、アメリは比較的容易に軍事オプションを行使できうる状態になっている。
そうした状況に対して、金正恩氏がついに反応せざるをえなかったのだろう。金正恩氏の言葉は威勢がいいが、ミサイル実験では、間違ってもアメリカを刺激しないような範囲に撃ってきている。この点から、かなりアメリカを配慮しているのは、北朝鮮問題の専門家では周知の事実である。
最悪のシナリオ
北朝鮮は、核ミサイル開発を進め、アメリカにそれを認めるように直接交渉を望んでいた。しかし、アメリカの強硬姿勢を崩さなかったためそれが挫折した。今さら中国にアメリカとの仲介を頼めないし、ましてアメリカと歩調を合わせる日本にもできない。そこで、もっとも与しやすい韓国を選んだのだろう。
韓国は、是非とも2月の平昌オリンピックを成功させたいという弱みがあるため足下を見られている。北朝鮮の誘いに対して、韓国が直ちに歓迎姿勢を示したのは、北朝鮮にまんまとはめられた公算が高い。金正恩氏の話の中には、繰り返し北朝鮮の核の力について言及している箇所もある。
北朝鮮は、決して非核化せずに、韓国にささやきながら、時間稼ぎをして、いまだ未完成とされる核ミサイルの再投入技術を最終的に完成させ、核ミサイルの実戦配置を成就させようという魂胆だ、とみたほうがいい。ここで非核化を飲むようなら、金正恩氏の失脚にもなりかねないからだ。
なお、再投入技術も、あと半年から1年以内で完成する予定という点は専門家間では意見の相違はほとんどない。ということは、この平昌オリンピックとパラリンピックの2月から3月までの時間を有効利用しないことはありえないはずだ。
これまで、6ヵ国協議でも北朝鮮の核ミサイル開発は止められなかった。それを韓国が実効的に止めれば、世界の平和のためには素晴らしい出来事だ。真のノーベル平和賞にも値するだろう。ただし、これまで国際社会を欺いてきた北朝鮮である。楽観論は禁物で、ここ2カ月は韓国のお手並み拝見である。
一方で筆者はこの時期に、韓国外務省が日韓合意について、日本政府との交渉過程についての検証結果を発表し、さらに文在寅大統領が、慰安婦問題をめぐる日韓合意に強く反対する元慰安婦の女性らと面会し「合意は政府が一方的に進めたもので、誤りだった」と謝罪したことがとても気になっている。
北朝鮮の誘いに韓国が乗ったことについて、米韓の分断を危惧するのは上に述べたとおりである。そのうえこの時期に、日韓合意を反故にするといわんばかりの韓国の行動は、日韓の分断を懸念させるものだ。
この事態について、日本の外務省は日韓関係がマネージ不能になると警告している。西側諸国としては、常識的にはちょっと首をかしげたくなることだが、韓国外交はどのような行動原理に基づいて動いているのか。
文在寅大統領は、昨年12月に中国国賓訪問したが、実はこれとあわせて考えると、韓国の外交スタイルが見えてくる。
歴史を紐解けば分かる
カギは半島国家としての韓国の歴史にある。
地続きの大陸側と海を隔てた海洋側に挟まれながら、国家運営をする宿命をもつ韓国。朝鮮半島の歴史をみても、朝鮮王朝では「事大交隣」、つまり大陸側には「事大」、海洋側とは「交隣」という関係だ。
事大とは「大国に事(つか)える」ことであり、陸続きの中国へ服従する朝貢関係だ。交隣は「隣国と交わる」ことであり、海を隔てた日本とは距離を置いた対等交際だ。
しかし、朝鮮戦争でこの構図に変化が起こった。アメリカが介入し、朝鮮半島は南北に二分され、南半分の韓国は大陸側の中国から離脱して、海を隔てた日本を含めた西側についた。韓国は、アメリカと同盟関係を結んだ。
一方、韓国と対峙する北朝鮮は中国の同盟国となった。韓国は「事大交隣」を大きく変更せざるを得なくなり、アメリカの同盟国である日本も並べての、日米韓という新しい関係になった。
そもそも、朝鮮半島の歴史において、現在の韓国のように朝鮮半島の一部が大陸側の影響を直接的に受けないのは、高句麗、百済、新羅の三国時代以来ともいえる。
この中で、韓国のTHAAD問題がある。いまは「事大交隣」ではなく、韓国が西側の一員になったという新たな関係である以上、北朝鮮の脅威に応えるためには、THAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)の韓国配備は自然であるが、これが超大国への道を歩もうという中国を刺激した。
この中国の怒りを前にして、韓国は最近忘れかけていた「事大交隣」のDNAがふたたび働き出したと考えるのがいい。正確にいえば、近年の中国の躍進に、韓国が恐れおののいて「事大交隣」の記憶がよみがえり、2015年9月、抗日戦争勝利70周年軍事パレードに朴槿恵大統領が西側諸国の国家元首でただ一人参加した。
これを受けて、中国に接近しすぎる勧告をけん制するために、アメリカがTHAADミサイルを配置させたといったほうがいいだろう。
3月超えればまた一触即発に
冒頭の文大統領の訪中は、いくら中国に冷たくされたとはいえ、まさに「事大」である。また、今回の北朝鮮の誘惑に乗るのも「事大」である。
しかし、日米に対しては「交隣」を保っている。今回の北朝鮮の誘いに乗って米韓関係がうまくいかなくても、慰安婦問題で日韓関係をこじらせても、もともと「交隣」の関係であるからかまわないという姿勢だ、としか思えない。昨年9月にニューヨークで開かれた日米韓首脳会談で、北朝鮮への圧力で合意しながら、韓国は北朝鮮への人道支援を打ち出したのも、日米には「交隣」という姿勢であることのあらわれだ。
さらに、トランプ大統領の訪韓時に元慰安婦を晩餐会に招いたことも、日本へは慰安婦問題の日韓合意を反故にしようとすることも、あるいはその一方で平昌五輪が窮地になると安倍首相に訪韓要請をするなどの傍若無人ぶりも、「交隣」という概念で理解できる。
しかしながらこれだけは言っておきたい。北朝鮮問題で、韓国が歴史的伝統とも言える「事大交隣」の姿勢を採ると、世界平和が脅かされる事態になってしまう、ということだ。
北朝鮮の核ミサイルは、いまや世界の脅威となっている。米国国民ですら、北朝鮮の核ミサイルを現実的な脅威と考える人が8割にもなっている。これは、実際にアメリカ本土まで核ミサイル攻撃があり得るという意味だけではない。
アメリカは、中東政策も転換しているが、もし北朝鮮が核ミサイル技術を手中にしたら、中東のイランへの核拡散が現実化して、中東の軍事バランスを一気に崩れかねない。となると、中東での核ミサイル保有がドミノ的に進展することは不可避である。
この核拡散は、アメリカのみならず世界によって最大級の脅威にならざるを得ない。そうした世界的な安全保障を考えると、アメリカはなんとしても朝鮮半島の非核化は譲れないところなのだ。これは、同じ核保有国である中国やロシアにとっても同じである。こうした大局観が韓国には欠けているようにみえる。
韓国は慰安婦問題でも、日韓の外交成果を反故にしようとしている。国家間の約束を無視することで、韓国外交の信用失墜になるだろう。
その「不誠実国家」の韓国と「ならず者国家」の北朝鮮が話し合っても、平昌オリンピック・パラリンピックを見かけだけでも成功させたい韓国と、核ミサイル完成のために時間稼ぎがしたい北朝鮮の思惑が当面の3月まで合致するだけで、朝鮮半島の非核化にはほど遠い内容になりそうだ。
これでは、国際社会から受けいれられるものになりそうもない。というわけで、2、3月は何とかなっても、その後は依然として朝鮮半島が一発即発の危機状況であることは、変わらなさそうだ。

【私の論評】周辺諸国は北崩壊後は「助けず、教えず、関わらず」の「非朝鮮半島三原則」を貫け(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は、北朝鮮問題で、韓国が歴史的伝統とも言える「事大交隣」の姿勢を採ると、世界平和が脅かされる事態になってしまう、としています。

この歴史的伝統については、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【書評】寄らば大樹の陰。朝鮮内部抗争に振り回された日本の歴史―【私の論評】過去の歴史に学び朝鮮半島とのつきあいは、拉致問題などの例外は除きほどほどにすべき(゚д゚)!
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
この記事では、石平氏の『韓民族こそ歴史の加害者である』を紹介させていただきました。タイトルこそセンセーショナルですが、冷静な筆致で史実を丹念に辿り、その上で、このタイトル通りの結論を引き出しています。

「目から鱗(うろこ)」という使い古された表現がありますが、この本はまさに、今まで我々の目を覆っていた「韓民族は日本帝国主義の被害者だった」という鱗を取り除き、韓民族の真の姿をはっきりと見せつけてくれます。この本を読まずして、北朝鮮や韓国に関する歴史も外交も議論できないでしょう。
前置きが長くなりましたが、本書は、韓民族が内部抗争に勝つために周辺諸国を戦争に引きずり込んだ、というパターンが、7世紀初頭の高句麗・百済・新羅の三国統一戦争から、20世紀の朝鮮戦争まで繰り返されたという史実を克明に描いています。

その中で、日本が巻き込まれたのが、西暦661年の白村江の戦い[a]、1274(文永11)年、1281(弘安4)年の元寇[b]、そして近代の日清戦争、日露戦争ある。特に元寇では、高麗国王が自らの生き残りのために、日本征伐をフビライに提案する経緯が生々しく描かれていて、「そうだったのか」と思わせます。

この記事では、近代における日清、日露、朝鮮戦争の部分のさわりのみを紹介させていただきます。この書籍まだご覧になっていない方は、上のリンクをご覧になれば、一部紹介しています。一部しか紹介していないので、是非ご覧になってください。まさに「目から鱗」です。

内部抗争から始まった朝鮮戦争
 日本の降伏後、米ソは38度線を境にして、それぞれ南北を占領した。米ソ英は5年間の信託統治期間の後、朝鮮の独立と統一政権の樹立を図るという「モスクワ協定」を結んだが、肝心の韓民族自身が、例の如く内部闘争に明け暮れて、統一政権どころではなかった。 
 結局、ソ連を背景とした金日成と、アメリカから戻った李承晩が、それぞれ北朝鮮と韓国の政権を樹立した。それだけでなく、彼等は、それぞれ相手国を打倒して、自らが朝鮮の統一政権になることを目指していた。 
 最初に仕掛けたのは金日成だった。当時は日本の産業施設が多く残っていた北朝鮮の方が、農業中心の韓国よりも、圧倒的に国力は上だった。金日成はソ連のスターリンに南進の許可を求めた。邪悪な政略の天才スターリンは、もしアメリカとの戦争になったら、中国を矢面に立たせようと、毛沢東の支援を得るよう指示した。 
 中華人民共和国を建国したばかりの毛沢東は慎重で、38度線を越えてアメリカが攻め込んできたら、自国の国境が脅かされるので参戦をする、と消極的な支持を表明した。これをもとに、北朝鮮は1950年6月25日、38度線を越えて、韓国内に侵攻した。
3ヶ月で済んでいたはずの朝鮮戦争が..........
 北朝鮮は2ヶ月後の8月末には南朝鮮の90%以上の領土を占拠したが、ここで米軍を中心とした国連軍が救援に入り、わずか1ヶ月でソウルを奪還した。米軍もも国連軍も、38度線まで奪還すれば、そこで戦闘を止める計画だった。その通りに事が運んでいたら、朝鮮戦争は3ヶ月で停戦を迎えていたはずだった。
 しかし、ここで李承晩は一気に北朝鮮を打倒して統一政府を作ろうと、韓国軍に38度線を突破させた。これに引きずられる形で、国連軍も38度線を越えて進撃し、ついには中国国境沿いにまで近づいた。ここで毛沢東はやむなく中国共産党軍を投入したのである。
 こうして米中の激突となった朝鮮戦争はさらに2年9ヶ月以上も続き、結局、38度線の振り出しに戻って、停戦を迎えた。金日成なくば、そもそも朝鮮戦争は起こらずに済んだかも知れないし、李承晩がいなければ、3ヶ月で終わって、その後の6百万の犠牲者の大部分は失われずに済んだろう。
 結局、韓民族の内部抗争と外部勢力の引きずり込みという伝統的な宿痾で、米中ともに何の益もない戦争に巻き込まれたのである。
活用し損ねた歴史の叡知
 こうして朝鮮半島の歴史を通観して見ると、日清、日露、朝鮮戦争という3つの戦争とも、同じ構造をしていることが明らかになる。韓民族が内部抗争に勝つために、それぞれ周辺諸国を戦争に引きずり込むというパターンである。
 通常の民族のように、韓民族が一つにまとまって独立統一国家を作っていれば、中国、ロシア、日本の緩衝地帯となり、東アジアの平和が保たれていた可能性もある。そう考えると、韓民族は「東アジアのトラブルメーカー」だ、という石平氏の指摘は説得力を持つ。
 韓民族が内部抗争という宿痾を自ら克服できないなら、今のように南北でせめぎ合い、結果として日米中ソの緩衝地帯になっている方が良い、というのは、冷酷な地政学的戦略から言えば、合理性がある。米中とも、現在はその戦略をとっているのだろう。だから、北朝鮮で膨大な餓死者が出ようと、各国は手は出さないのである。これが冷厳な国際社会の実態である。
「半島とは一定の距離をおいて、韓民族内部の紛争にできるだけ関与しないようにするのが、もっとも賢明な道」とは石平氏の結論ですが、この本で半島の歴史を丹念に辿ってみれば、頷くしかない結論です。

この結論は、日清戦争前に金玉均が残忍な方法で処刑された後、彼を支援していた福沢諭吉が『脱亜論』で「我れは心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」と語ったのと同じです。この叡知を当時から活用していれば、我が国の近代史もまた別の形になったでしょう。我々は歴史の叡知を活用し損ねたようです。
石平氏の書籍からもわかるように、韓国が大陸との緩衝地帯になるという見方がありますが、歴史を見れば緩衝地帯と言うよりも、内部の勢力争いから外国勢力を引き入れて戦争を引き起こしてきた事の方が多いのです。最近では朝鮮戦争が良い例ですが、朝鮮戦争において米国は韓国を助ける必要があったのでしょうか。
朝鮮半島が統一国家であったとしても、ロシアや中国に対して完全な独立国であることが出来るでしょうか。現在も北朝鮮は中国に依存し、韓国はアメリカに依存して生きています。歴史的に見ても朝鮮王朝が中国王朝に対して単独で戦って勝ったという歴史はありません。だから緩衝地帯になる事はあまり期待出来ないです。

韓国の軍部ですら、在韓米軍が撤退したら韓国軍は北朝鮮に勝てないと言っているくらいです。歴史的に見ても朝鮮半島が一番安定していた時は中国の属国になっていた時であり、あるいは南北に分かれて国家が存立していた時です。
三世紀の朝鮮半島
だから朝鮮半島は日本の手が離れてからは、中国の属国となるか、南北に分かれて大陸と海洋勢力で均衡がとられるかのどちらかです。北朝鮮が崩壊して韓国によって統一される事はあるのでしょうか。あるとすれば韓国が中国と手を組んで北朝鮮を滅ぼす事かもしれません。

歴史を見れば新羅が唐と手を組んで高句麗を滅ぼしました。しかし唐は内乱状態となり朝鮮統治に手が回らなくなり新羅が朝鮮を統一しました。文在寅大統領は、中国の手を借りて北朝鮮を併合して、新羅のように朝鮮半島を統一できると夢見ているのかもしれません。しかし、これは古代の事であり11世紀以降は高麗と李氏朝鮮の時代となり、大陸国家の一部となりました。

朝鮮半島は内部抗争が激しく、歴代の中国王朝も手を焼いたから属国として統治しました。ところが、日本は朝鮮半島を併合して直接統治しようとしました。それが間違いの元であり、朝鮮民族は統治が難しく冊封していた歴代中国王朝も手を焼いてきました。

朝鮮半島が分断国家となったのは、ロシアや中国やアメリカとの勢力争いで戦争となったからですが、冷戦体制は共産主義勢力の圧倒的な攻勢が続きました。韓国が共産主義に落ちれば他のアジア諸国にも影響が及ぶと恐れられるほどになり、日本にも共産主義の脅威は吹き荒れました。

韓国はかろうじて独立は保ち、韓国の高度経済成長は自由主義のショーウィンドウとして機能しました。しかし政治的には安定せず経済成長も財閥経営であり一部のものにしか恩恵が回りませくん。一昨年大韓航空機が羽田で事故を起こしても会社側は事故を認めず、羽田が一日中混乱したにもかかわらず大韓航空の謝罪はありません。

韓国は日本に仕掛けて来た「歴史戦」でも、謝罪や賠償を求め続ける姿は朝鮮民族の統治の難しさを実感させるものです。日本国を非難し続けるのも、過去の歴史のトラウマが残っているからであり、日帝時代に大規模な独立運動が起きなかったのもトラウマであり、3.1の独立運動も過大に評価したものに過ぎません。韓国の歴史では中国に亡命政権が出来て韓国は戦勝国と教えられているようです。

米国が北朝鮮を最近まで放置状態にしていたのも、米国は関わりたくないだけであり、中国に丸投げしてきたということです。北朝鮮も韓国も対外的に騒ぎまくるのも、放置される事を嫌うからであり、日本に対する嫌がらせ攻勢も無視されたくないから従軍慰安婦や竹島でも騒ぎ立てて無視されないようにしているのです。
韓国は、中国寄りの姿勢を変えず「事大主義」を繰り返し、北朝鮮と交わり「交隣主義」を繰り返そうとしています。その果にあるのは、朝鮮半島統一かもしれませんが、こんなことでは、とても韓国は北朝鮮の脅威に立ち向かえそうにありません。
私自身は、いずれ朝鮮半島は、北が崩壊しその後は日米中露が、国連軍などの形で北の領土を分割して統治し、韓国もいずれ内乱などがおこり、それを日米中露は無視して、2つから3つに分割し、半島に小さな国家群ができあがるようになれば、最も良いのではないかと思います。
そうして、いずれは日米中露も撤退しつつも、国境は一ミリにたりとも侵犯されないようにしてこれを囲み、朝鮮半島のこれら複数の国家群が互いに「事大交隣」を繰り返し、幾つかの国が合同したり、離散したりを永遠に繰り返している状態になりただし、周りの国々はそれを助けもせず放置して、害が及ばないようにするのが最も良いのではないでしょうか。
周辺諸国が「助けず、教えず、関わらず」の「非朝鮮半島三原則」を貫き、半島内の諸国が互いに「事大交隣」で疲弊し、半島外の国々に害を及ぼさないように隔離するのです。そうでないと、いずれ周辺諸国や米国も、悪影響を被ることになります。
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2018年1月7日日曜日

【アジアを先導する日本】台湾海峡を中国から守る“主役”は日本 日台、中国共産党の野望を打ち砕くソフトパワーに―【私の論評】「いずも」の空母化は、中共の野望を粉微塵に打ち砕く(゚д゚)!

【アジアを先導する日本】台湾海峡を中国から守る“主役”は日本 日台、中国共産党の野望を打ち砕くソフトパワーに

 米フーバー研究所フェロー、エミリー・チェン氏(在米台湾人)が2016年2月、米外交専門誌『ナショナル・インタレスト』で発表した論文「台湾海峡の次の主役は日本か?」は、タイトルから十分刺激的だった。

 台湾海峡は、台湾と中国・福建省を隔てる海峡で、1950年代から90年代まで、何度も台湾海峡危機と呼ばれる軍事的緊張が高まった。96年の台湾総統選挙では、台湾独立志向が強い李登輝氏が「民主」というスローガンを掲げて出馬したことに、中国共産党は強く反発した。

 中国人民解放軍は軍事演習として、ミサイルを台湾海峡に立て続けに撃ち込み、台湾を恫喝(どうかつ)した。これに対し、当時のビル・クリントン米大統領は空母2隻を中心とする艦隊を台湾海峡に派遣し、中国共産党に圧力をかけ、事態の沈静化を図った。中国による軍事的威嚇は台湾人をかえって団結させ、総統選挙では李氏が圧勝した。

 そんな、朝鮮半島の38度線と並ぶ「アジアの火薬庫」といえる台湾海峡の命運は日本が握っていると、チェン氏は論文に記した。

 彼女は、日本の軍事力で中国の台湾侵攻を阻止できる-と単純に考えたのではない。論文では軍事には触れず、この10年の日台間の民間交流の爆発的拡大と、濃密な親密度、相互理解について、日本文化の台湾への侵透から解き明かしている。そんな日台関係が、中国共産党の野望を打ち砕くソフトパワーになると、さまざまなデータを用いて論じているのだ。
チェン氏がそんな構想を描けた背景に、安倍晋三首相が第二次政権発足直後の2012年暮れに発表した「アジアの民主的安全保障ダイヤモンド(セキュリティーダイヤモンド)構想」があったのである。

 現実的な問題として、現在、日台間の軍事交流を進められる環境はない。だが、台湾は確実に、中国共産党の独裁政権を嫌う、成熟した海洋民主国家として、新しい一歩を踏み出している。この論文は、民進党の蔡英文総統が16年1月の台湾総統選挙で、国民党候補を打ち破るという予兆の中で書かれたものだった。

 昨年7月、中国の空母「遼寧」が台湾海峡を通過し、戦闘機や爆撃機も不穏な動きを見せた。中国共産党にしてみれば、クリントン米政権に空母を派遣された恨みを20年後に晴らすとともに、独立志向の蔡政権への脅しと嫌がらせの一環である。

 そんななか、海上自衛隊のヘリ搭載型護衛艦「いずも」は昨年6月、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国11人の士官を乗せて、南シナ海で不審船対処や救難訓練など国際法に準拠した研修を実施した。それは、中国が国際法を無視して、南シナ海の岩礁を埋め立て要塞化している海域の近くだった。

 ■西村幸祐(にしむら・こうゆう) ジャーナリスト。1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部中退。在学中、「三田文学」の編集を担当し、80年代後半から、作家、ジャーナリストとして活動。2002年日韓サッカーW杯取材後、拉致問題や歴史問題などにも、取材・執筆分野を広げる。アジア自由民主連帯協議会副会長。著書に『21世紀の「脱亜論」 中国・韓国との訣別』(祥伝社新書)、『報道しない自由』(イースト・プレス)など。

【私の論評】「いずも」の空母化は、中共の野望を粉微塵に打ち砕く(゚д゚)!

ブログ冒頭の西村氏の記事で、最後に「いずも」のことが出ているのは、当然といえば当然です。エミリー・チェン氏が触れていなかった、軍事力によっても日本が「台湾海峡の次の主役」になり得る可能性が高まってきたことです。

それは、この「いずも」の軽空母化です。これは、中国が極度に恐れていることです。米国の空母に加えて、日本の空母が台湾海峡を頻繁に行き来するようになることを恐れているのです。

なぜそこまで、中国は「いずも」空母化を恐れるのでしょうか。

日本ではF-35Bの導入検討が報道されました。共同通信によれば防衛省には「来年後半に見直す「防衛計画の大綱」に盛り込むことも想定」した検討が進められているといいます。

これはF-35Bを搭載した軽空母を作るということです。空自導入中のF-35Aの一部を軽空母用のB型に改めるのです。それを現在ヘリコプターを運用している海自軽空母「いずも」、「かが」で運用しようとする検討です。

なぜこのような構想が持ち上がったのでしょうか。簡単にいえば中国への対抗策です。日本は中国海軍力の成長に脅威を感じています。中でも日本が持たない空母を中国が保有しました。これは日本にとって大きな脅威です。それに対抗するためには日本も空母を持つしかない。それがF-35Bの「いずも」型搭載検討なのです。

さらにいえば、F-35B軽空母は対中海軍力の劣勢を一挙に改善できる力を持っています。

なぜなら日本が軽空母を持てば以下のようなことが実現できるからです。
1中国空母を陳腐化
2中国艦隊戦力の更新強要
3中国潜水艦戦力の更新遅滞
を引き起こせるからだ。


1 中国空母の陳腐化

日本がF-35B搭載の軽空母を作ると中国の正規空母は建造中を含めて全て旧式化することになります。なぜなら、中国の空母は艦載機の性能で圧倒的劣勢に陥るからです。中国空母が搭載しているJ-15戦闘機は第4世代戦闘機である。第5世代のステルス戦闘機F-35には手も足もでないです。レーダ探知できないF-35Bに対し中国のJ-15は一方的劣勢の立場に転落するからです。

中国初の国産空母。昨年4月26日水曜日に中国・大連で行われた進水式にて
実運用の差はさらに広がることになります。現用の中国空母はカタパルトを持ちません。このためJ-15戦闘機は発進時に重量制限が掛けられています。性能上は最大離陸重量33トンだが実際には28トンでの発艦も厳しいのです。しかも滑走路を長く取る必要があるためめ発艦の間隔も相当に間延びします。

日本軽空母にはそのようなことはありません。F-35Bはカタパルト無しでも満載重量で発艦できます。しかも着艦帯との取り合いもないため連続発進が可能となります。その結果、中国空母は日本軽空母に勝てない二線級装備となります。

そうしてこれは平時にも有効です。日本の軽空母に比較して、中国空母は旧式扱いされることになります。日本軽空母と並べられた場合「中国空母は日本空母に敵わない」ということが誰の目にも明らかになります。

2中国艦隊戦力の更新強要

日本軽空母登場により中国艦隊は日本に対して質的劣位に陥ることになります。中国は、対米劣勢に加え対日劣勢にも陥ることになります。実際上は、このブログで述べているように、アジア最大の海軍力を持つのは日本なのですが、それでも、中国の時代遅れの空母や、他の艦艇も数は多いので、なかなかそれを認識できないということがありますが、日本が軽空母を持った場合、誰の目から見ても明らかに中国は劣勢になります。その結果、中国は自国艦隊戦力を今以上に近代化しなければならなくなります。



これは駆逐艦以下にも及ぶことになります。空母にカタパルトを付け、ステルス艦載機を開発するだけではありません。空母を護衛する055、052C/D、054Aといった駆逐艦・フリゲートもF-35によるステルス攻撃に対抗しなければならないのです。

特にF-35向けに開発されたの対艦/対地/巡航ミサイルであるJSM対艦ミサイルの登場は、中国の護衛艦に厳しいことになります。ステルス性能が高いため正面からではレーダに映らないです。ミサイル側はレーダを使わない画像誘導のため逆探知も効きません。その上、従来ミサイル同様に高度2.5m程度の超低空を飛んでくるのです。

軍艦のレーダで波の乱反射の中を飛んでくる対艦ミサイルの探知は難しいです。その上、高ステルス性のJSMではミサイル反応が乱反射ノイズよりも小さくなるのです。

仮に探知できても迎撃できません。中国迎撃ミサイルは基本的に陸上転用型です。米国製とは異なり海面乱反射対処や超低空目標対処能力は高くはないです。一部の光学誘導あるいは電波・光学複合誘導タイプを除けばロックオンできないのです。

結果、中華イージス以下のシステムは、全く役立たずとなり更新を迫られることになります。空母、艦載機、駆逐艦の更新の結果どういうことになるでしょうか。

中国海軍の数的増勢は難しくなります。90年代建造の旧式艦更新もままならなくなることからすれば、今後は艦隊規模は縮小することになります。

3中国潜水艦戦力の更新遅滞

日本軽空母導入は中国に空母、艦載機、駆逐艦の更新を迫ることになり、それにより中国海軍の成長を抑制し、縮小方向に進めることになります。

そうしてこれは、中国潜水艦の更新増強を邪魔することにもつながります。

元々、中国空母は海軍力競争では脅威ではありますが、実際の戦闘ではさほどの脅威ではありません。日米は日本本土周辺なら容易に沈められます。所詮は艦載機30機未満の空母に過ぎません。搭載している早期警戒機もヘリコプターのZ-18AEWであり低性能です。

中国海軍初の原子力攻撃潜水艦。原子炉や戦闘システムが未熟であり、
静粛性や放射能漏れなどの問題があったが、数度の改修により改善されている
本当に面倒な敵は中国潜水艦です。性能向上は大幅に進んでおり、今のところはかなり簡単に探知できるのですが、近いうちには探知不能、もしくはかなり難しくとなるかもしれません。

実戦ではその対処に苦労することになります。どこに潜っているのかわからないということにもなりかねません。その中国潜水艦に対処するため日米海軍力は、多くの海域に軍備を分散して配備をせざるを得ないことになる可能性もあります。

このような背景から、日本の軽空母は、潜水艦への資源配分を妨害できる点もメリットです。空母建艦競争等は日米にとって都合の良い話なのです。中国は空母機動部隊1つを作るために最新の通常潜水艦10隻と原潜2隻を諦めることになります。これは日米にとって良い取引です。

防衛省がF-35Bを導入したいと考える理由はこのようなものだ。日本は導入と軽空母運用により中国との軍事力積み上げゲームを有利にできるのである。

導入コストは?

さほどではありません。F-35Bそのもののコストは大したものではありません。もともと計画されている空自F-35Aの一部をF-35Bに改める形ででできます。もちろん1機あたりの取得コストが20億円程度上昇することになります。エンジン等一部部品の集積を行う必要も生まれます。とはいいながら、全く新規の巨大事業ではありません。

空母もすでに準備されています。「いずも」「かが」はそのまま使えます。最初から各部寸法はF-35Bに合わせて作ってあります。格納庫も無理に詰め込めば14機は入ります。短距離離陸のためのスキージャンプはいりません。微速・無風でもF-35Bは軽量状態で100m未満で発進可能です。20ノット(約40km)、向かい風10mもあれば満載状態でも100mで発進できます。

あるいは中古コンテナ船を改修してもよいです。90年代末に建造された4000TEUクラスはただ同然で入手できます。経済性低下と排ガス規制でスクラップ処理がはじまっているからです。とはいいながら、全長300m、25ノット(約50km)出せる優良船です。飛行甲板を貼るだけでF-35B母艦として運用できます。


結論

日本が軽空母を数隻持ち、交代で台湾海峡を航行するようになれば、どういうことになるでしょうか。中国共産党の野望を打ち砕くソフトパワーとともに有効なハードパワーにもなります。

さらに、米国の空母も台湾海峡を不定期なが、航行させ、さらに日本の軽空母とともに、5隻程度の空母とともに、台湾海峡で大規模な軍事演習など行えば、中国は極度のプレッシャーにされされることになり、対抗上空母開発とともに海軍力の再構築に追い込まれることになります。

だからこそ、中国は「いずも」の空母化を極度に恐れているのです。「いずも」の空母化と、さらなる親密な日台関係が、中国共産党の野望を打ち砕く巨大パワーとなるのです。

2018年1月6日土曜日

【日本の解き方】AI時代に消えゆく「士業」、役人の仕事こそ代替可能だ 残るのは付加価値生む仕事―【私の論評】コミュニケーション能力こそ、AIでは不十分な人間にとって最後の砦(゚д゚)!

【日本の解き方】AI時代に消えゆく「士業」、役人の仕事こそ代替可能だ 残るのは付加価値生む仕事


 人工知能(AI)やロボットの導入により、今後多くの仕事が失われるとの予測がある。今後も必要とされるスキルや身につけておくべきは何か。

 2013年に発表された英オックスフォード大のフライ氏とオズボーン氏による『雇用の未来-コンピューター化によって仕事は失われるのか』の中で、タクシー・トラック運転手、ネイリスト、銀行の融資担当者、弁護士助手らの仕事は、コンピューターに代替される確率が90%以上とされている。

 ほかにも、コールセンター業務、電話オペレーター、集金人、時計修理工、映写技師、カメラ・撮影機器修理工、ホテルの受付係、レジ係、レストランの案内係、不動産ブローカー、スポーツの審判、仕立屋(手縫い)、図書館員補助員などの伝統的な仕事もなくなるという。

 金融業界も大転換があり、投資判断、資産運用アドバイス、保険の審査担当者、税務申告書代行者、簿記・会計・監査の事務員などは消えるとしている。

 これらには、専門的なスキルといわれてきた「士業」が多く含まれている。法律などによる専門資格を要件としているが、そうした「専門的スキル」と称されるものがAIで代替可能になるというわけだ。

 例えば、弁護士は、難関の国家資格が必要とされる業務である。しかし、その実態といえば、過去の判例を調べることが中心ともいえる。過去の判例はデータベース化されているので、適切な類似例を調べるのは、今でもパソコンを使ってやっている。そうであれば、AIでもかなり代替できる可能性がある。

 筆者は、定型的な業務が多い役人こそAIに向いていると思っている。役所の業務は定型的であるとともに、えこひいきはご法度だ。それはAIの特徴とかなり適合する。

 国家公務員の残業の一因となっているのが国会対応だが、国会想定問答の大半は過去のものと同じである。筆者の経験では、一晩に100問以上の想定問答を作ったこともあるが、ほとんどは過去のパターンの繰り返しであるので、AIならもっと速くできるだろう。実際、経済産業省ではAIで国会想定問答に対応した結果、すでにこの種の残業がなくなっているといわれている。

 金融業界では、将来をにらんで大リストラ時代に入ってきている。

 定型的な労働はロボットでもできる。定型的な知的作業で資格規制によって守られている業務は将来なくなるので、そうした資格は今後必要とされなくなるだろう。

 冒頭の論文では、芸術など感性に基づいた仕事については代替確率は低い。芸術と限定することはないが、自分の力で付加価値を生み出せるものは、AI時代でも生き残れるというわけだ。

 それは、「言うは易く行うは難し」というのが現実だろう。というのは、簡単にできるのならばAIやロボットでもできてしまうからだ。難しいからこそ付加価値を生み出せるので、それを考えることこそが、重要なのではないだろうか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】コミュニケーション能力こそ、AIでは不十分な人間にとって最後の砦(゚д゚)!
さて、AIにより、これから世の中で様々なことが変わっていくことと思います。経営学大家ドラッカー氏は変化について以下のように語っています。
変化はコントロールできない。できるのは変化の先頭に立つことだけである。(『ドラッカー 365の金言』)
今日のような乱気流の時代、200年に一度という大転換期においては、変化が常態だとドラッカーは言います。変化はリスクに満ち、楽ではありません。
しかし、この変化の時代を乗り越える唯一の方法が、あえて変化の先頭に立ち、変化の生み手になることだというのです。
恐怖は、後方の席に深々と腰を落ち着かせたとき、高まります。変化は、最前列で腰を浮かせハンドルを握るとき、初めてコントロールできるものです。 
いわんや今日の乱気流下の悪路にレールはないのです。自らハンドルを握ることなく、転覆を避けることはできません。急激な構造変化の時代を生き残るのは、チェンジ・リーダーとなる者だけなのです。
そして、そのチェンジ・リーダーになるための方法が、変化を脅威でなく、チャンスとしてとらえることだといいます。進んで変化を探し、本物の変化を見分け、それら本物の変化を利用することです。
おそらくはこれこそが、ポストモダンにおける生き方、考え方、事業の仕方の王道、常識となるべきものです。
この方法が成功を保証してくれるわけではないのです。しかし、この方法なくして成功することはありません。
みずから未来をつくることにはリスクがともなう。しかし、みずから未来をつくろうとしないことのほうがリスクは大きい。(『ドラッカー 365の金言』
だかこそ、私達はAIによる変化の先頭に立たなければならないのです。AIによる、未来はどのようなものになるのでしょうか。
ドラッカー氏は「すでに起こった未来」について以下のように語っています。
社会的、経済的、文化的な出来事と、そのもたらす変化との間にはタイムラグがある。(『創造する経営者』)
あらゆる変化が、他の領域に変化をもたします。そして機会をもたらすのです。AIによる変化も例外ではありません。
人口、社会、政治、経済、産業、経営、文化、知識、意識が変化します。特にAIにもたらす変化は、知識の変化であると考えられます。その変化が次の変化をもたらすのです。ただちにではありません。そこには、タイムラグがあります。そこでドラッカーは、それらの変化を“すでに起こった未来”と呼ぶのです。
すでに起こった未来に資源を投じることにも、不確実性とリスクが伴います。しかし、そのリスクは限られています。
例えば、人口構造の変化は、労働力、市場、社会的圧力、経済的機会に基本的な変化をもたらします。人口の変化は逆転しにくいです。その変化は早く影響を現します。小学校の施設に対する圧力となって現れるのは、わずか5~6年後です。
20年後、25年後には労働力人口に重大な影響をもたらします。市場を変え、経済と社会を変えます。AIによる変化ももうすでに起こってしまったのです。
組織の内部にもすでに起こった未来を見つけることができます。新しい活動が組織内に変化を引き起こし、すでに受け入れられているものと対立します。知らずして急所に触るのです。
すでに起こった未来は、体系的に見つけることができる。(『創造する経営者』)
さて、人にはできて、AIにはできないことがあります。それは、大雑把にいうと以下に3つです。

1. クリエイティブ

0から1を作り出す事。これは機械には出来ません。AIは過去のデータを元に未来を予測する事は出来ますが、全く新しいものを作り出すのは人間にしか出来ません。デザイナーやエンジニア等のクリエイティブな仕事はこれからもどんどん必要とされていく一方になることでしょう。

2. リーダーシップ

優れたビジョンを掲げ、卓越したコミニュケーション能力で人々を導いて行く存在。人間との心の通じたやりとりができるそのスキルは自動化が進む現代こそ一層求められています。人間がロボットのリーダーに従って心が一つになる時代は恐らくしばらくは来ないでしょう。いや、永遠に来ないかもしれません。

3. 起業家

機械は基本的には起業しない。むしろ絶対にしないでしょう。交渉力、ビジネスセンス、問題解決能力が求められるのが起業的スキルです。その点においてはテクノロジーがどんなに進化しても、新しいプロダクトやビジネスを通じ社会を変えて行く起業家は世の中にとって今後もより一層必要とされるでしょう。
この3つを支えるのはやはり「言語能力」だと思います。上の3つをうまくするためには、飛び抜けた言語能力が必要です。

言語を理解することはとても難しいことです。それに関していえば、実は単純な翻訳技術の精度は相当上がっています。例えばGoogle翻訳ですが、米Googleは一昨年11月15日、ニューラルネットワーク技術を活用した新しい機械翻訳システム(Neural Machine Translation)を、日本語など8言語に適用したと発表した。従来より自然な翻訳が可能になり、「飛躍的な前進」としていました。

実はこれがかなりできるようになりました。精度が相当上がっているはずなので、ドイツ語やフランス語の文章などを日本語に翻訳するというのは、割とできるようになってきています。


私自身、Google翻訳がではじめた頃、実際に使ってみて、使用に耐えないと判断して、それからずっと使っていませんでした。ところが、一昨年SNSでかなり良くなったということを言う人がいたので実際使ってみたところ、かなり能力が上がっていることに驚きました。

このように大まかな外国語の理解は簡単なのですが、それを超えた言語の理解をするためには、人間の言語の理解に背景知識を相当必要とします。言葉の単語の意味だけ分かっていても、その背景の歴史的な経緯や、(例えば会話する)二人の人間性、あるいは社会のコミュニティーの雰囲気などを反映します。

同じ言葉を話していても、意味合いが違っているということがあるため、実はそういう背景知識や個性がすごく強いのです。そのため、AIに全てを理解させることは難しいのです。
サッカーのワールドカップの監督に外国人が来ます。日本チームの監督はずっと外国人で、それぞれに通訳が付きます。あの通訳の人たちは、実は全然正しく翻訳をしていません。

ワールドカップ日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督
NHKの番組で、過去の通訳の経験者3人ほどで鼎談(ていだん)をしている番組がありました。これが大変面白く、言語を翻訳するとはいったいどういうことかについての本質が見えてくるような番組でした。

そこで言われていたことは、「正しく伝える」「文字通りに翻訳する」ことが、監督の言葉を正しく伝えることではないということです。文字通り正しく伝えてしまうと、間違った意図として受け取ってしまうことがたくさんあるため、わざと違った言葉に置き換えるのです。

「ライオンが何とかをした」という比喩があるらしいのですが、その比喩をそのまま伝えると、日本人には全く伝わらないです。場合によると、ものすごく勇敢にやるという意味に取られてしまいます。

でも本当は、そんな意味では全然ないのです。そのことわざは、その言葉の歴史的な背景の下で出てきているからです。そこで通訳は、言葉を完全に言い換えてしまうのです。話を聞いていると、それは翻訳ではないだろうといったことを話しています。でもそれが必要なのです。そういうことは、AIにはできません。

ここに、人間の強みがあります。コミュニケーション能力の大事なポイントがあります。人間同士のコミュニケーションは、AIには完璧にできないのです。個別化が非常に強いからです。こうやってお話をして、微妙なニュアンスを伝えるのは、AIには無理で、人間だけがやれることなのです。

ドラッカー氏

コミュニケーションについてドラッカー氏は以下のように語っています。

上司の言動、些細な言葉じり、癖や習慣までが、計算され意図されたものと受け取られる。(『エッセンシャル・マネジメント』)
階層ごとに、ものの見方があって当然です。さもなければ仕事は行なわれません。しかし、階層ごとにものの見方があまりに違うため、同じことを話していても気づかないことや、逆に反対のことを話していながら、同じことを話していると錯覚することがあまりに多いのです。

コミュニケーションを成立させるのは受け手です。コミュニケーションの内容を発する者ではありません。彼は発するだけである。聞く者がいなければコミュニケーションは成立しないのです。

ドラッカーは「大工と話すときは、大工の言葉を使え」とのソクラテスの言葉を引用しています。コミュニケーションは受け手の言葉を使わなければ成立しないのです。受け手の経験に基づいた言葉を使わなければならないのです。

コミュニケーションを成立させるには受け手が何を見ているかを知らなければなりません。その原因を知らなければならないのです。

人の心は期待していないものを知覚することに抵抗し、期待しているものを知覚できないことに抵抗します。
受け手が期待しているものを知ることなく、コミュニケーションを行うことはできない。期待を知って初めてその期待を利用できる。あるいはまた、受け手の期待を破壊し、予期せぬことが起こりつつあることを認めさせるためのショックの必要を知る。(『エッセンシャル・マネジメント』)
受け手の期待していることを理解しなければ、報告をしようが受けようが、連絡しようが受けようが、相談しようがされようが、何をしても結局何も伝わりません。

では、相手の期待を知るためにはどうすれば良いのでしょう。それには、ドラッカー氏も言っているようにまずは、「コミュニケーションとは、私からあなたへ、あなたから私へと一方的に伝わるのではない」ということを理解しなければならないです。

コミュニケーションとは、「私達の中の一人から私達の中のもう一人」に伝わるものなのです。ですから、普段から「私達」という関係を築いておかなければ、コミュニケーションは成り立たないのです。

そうして、普段から「私達」といえる関係を構築して、コミュニケーションが成り立っていれば、たとえ何かの理由でかなり叱責したとしても、それが正当なものであれば、全く関係がこじれるなどということはありません。

このことを忘れている人が多いです。そうして、「私達」という関係を築くためには、ドラッカー氏は「目標管理」を第一にあげています。しかし、私はそれも重要だと思いますが、これはドラッカー氏も否定はしていませんが、「経験の共有」が一番だと思います。

親しい人などとは、コミニケーションが通じやすいことが多いものですが、これは知らず知らずのうちに、その親しい人と過去において「経験の共有」を積み重ねてきたからに他なりません。

このようなことはAIには不可能です。そうして、私自身はAIが知識労働者の仕事全部を奪ってしまうことはないと思います。比較的簡単で複雑でない知識労働はひよっとして、全部奪われるかもしれませんが、特に高いコミュニケーション能力を必要とする知識労働に関しては、完璧にAIに奪われることはないと思います。

むしろAIは人間の頭を使う部分のうち、計算とか、条件に基づく判断とか、膨大な知識を保存しておき、必要なときに必要な知識を取り出すことなどに使われ、コミュニケーションの部分はやはり人間が行うことになるのではないかと思います。

クリエイティブであったとしても、それを伝える能力がなけば、ないのと同じです。リーダーシップもコミュニケーション能力と不可分です。起業家にも、コミュニケーション能力は不可欠です。

そうして、なぜコミュニケーションが重要かといえば、結局AIは何のために存在するかといえば、人間のために存在しているということです。人間のために存在しない、AIなど全く意味を持たないからです。

AIは人間のために、人間がコミュニケーション能力を十分に発揮できるように補佐するとき最も威力を発揮できることになると思います。これが、AIの強みを発揮するということだと思います。

やはり、コミュニケーション能力こそ、AIでは不十分な人間にとって最後の砦なのかもしれません。

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2018年1月5日金曜日

【アジアを先導する日本】中国の領土侵略の脅威説き世界の主役に躍り出た安倍政権 自国の外交論文を取り上げないメディアの異常―【私の論評】安全保障論議から自ら退場した日本のマスコミ(゚д゚)!


安全保障でも連携を強める(左から)安倍首相とトランプ米大統領、ターブル豪首相
新幹線車両「E5系」の前で握手する安倍晋三首相とインドのモディ首相
 第二次安倍政権が発足して、昨年12月26日で丸5年になった。一部メディアは、アベノミクスについて「実感がない」などと批判的に伝えるが、客観的データは以下の通りだ。

 日経平均株価は、2012年12月の政権発足時1万230円36銭だったが、5年後の同日は2万2892円69銭と、2倍以上も上昇した。

 名目GDP(国内総生産)も、12年10~12月期の493兆円から、17年7~9月期の549兆円に増加。有効求人倍率は0・83倍(12年12月)から、1・55倍(17年10月)に。消費者物価指数も、マイナス0・2%(12年12月)から、0・8%(17年10月)に増えた。

 景気回復に成功したのは間違いない。

 さらに私は、安倍政権の外交戦略にも注目していた。

 安倍晋三首相が政権発足翌日、チェコにある言論プラットホーム「プロジェクト・シンジケート」に、英語で「アジアの民主的安全保障ダイヤモンド(セキュリティーダイヤモンド)構想」という論文を発表したからだ。

 不思議なことに、この論文は発表直後、産経新聞と東京新聞が取り上げたぐらいだった。自国の外交安保方針に関わる首相の論文を、メディアが取り上げないのは異常だ。政権発足直後から、安倍首相は偏向報道とフェイク・ニュースに攻撃されていたのではないか。

注目の論文は、冷戦時代、オホーツク海が「ソ連の内海」と言われたのに対比させて、《南シナ海がいま「北京の湖」になっているかのように見える》と、中国による領土侵略の脅威を説いている。

 そのうえで、《日本と米国ハワイ、オーストラリア、インドによって、インド地域から南太平洋に広がる海洋権益を保護するダイヤモンドを形成する国々》は、成熟した海洋民主国家として、法によって支配される平和的エリアを形成すべきだ-と、世界に訴えているのだ。

 この5年間、安倍首相はこの通りの外交を着々と進めてきた。わが国の歴史上、こんな宰相が存在しただろうか?

 在米台湾人の若き女性研究者、エミリー・チェン氏(米フーバー研究所フェロー)が16年2月、米外交専門誌『ナショナル・インタレスト』に「台湾海峡の次の主役は日本か?」という論文を発表したとき、私が少しも驚くことはなかった理由がそこにある。

 ■西村幸祐(にしむら・こうゆう) ジャーナリスト。1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部中退。在学中、「三田文学」の編集を担当し、80年代後半から、作家、ジャーナリストとして活動。2002年日韓サッカーW杯取材後、拉致問題や歴史問題などにも、取材・執筆分野を広げる。アジア自由民主連帯協議会副会長。著書に『21世紀の「脱亜論」 中国・韓国との訣別』(祥伝社新書)、『報道しない自由』(イースト・プレス)など。

【私の論評】安全保障論議から自ら退場した日本のマスコミ(゚д゚)!

冒頭の記事に掲載されている「アジアの民主的安全保障ダイヤモンド(セキュリティーダイヤモンド)構想」については、このブログでもことあるごとに掲載してきました。そうして確かに、安倍総理は過去5年間この構想に基づき行動してきしまた。

しかし、上の記事にもあるように、この構想を報道したのは、産経新聞と東京新聞くらいで、他の新聞はもとより、テレビ局なども全く報道していません。

このような重要な構想を報道しない報道機関は全く異常です。そのことに関して掲載したこのブログの記事のリンク以下に掲載します。
安倍首相の「安保ダイヤモンド構想」、対中抑止へ完成間近-【私の論評】鳩山の構想は報道しても、安部総理の構想は一切報道しない日本のマスコミの存在意義を問う(゚д゚)!
安倍晋三首相とインドのモディ首相
この記事は、2014年5月2日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この時もマスコミは安倍総理のこの構想を完璧に無視していました。この記事には、この構想の日本語訳も掲載しました。まだ読まれていない方は是非ご覧になって下さい。

安倍総理はこの構想通りに動き、今日に至っています。その結果上の記事にも掲載されていように米国、オーストラリア、インドにおよばずASEAN諸国とも良い関係を構築しています。

そうして、米国のトランプ大統領は外交経験も乏しいことから、外交面で安倍首相に頼るところが多くなってきています。

トランプ大統領は、大統領選挙選の頃から中国に対峙すると語っていましたが、中国は、米国が主導する国際秩序への最大の挑戦者であるという内容で、昨年12月18日「国家安全保障戦略」を発表しました。これによって、トランプ大統領は長期的には中国の膨張を抑える対決の道を選ぶという姿勢を明確にしました。

これには、当然のことながら安倍首相の構想が大きな影響を与えているものと考えられます。

さて、これで日米両首脳により、両国は中国の膨張を抑える対決の道を選ぶという姿勢を明確にしたことになります。

2016年国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は、中国が南シナ海に設定した独自の境界線「九段線」には国際法上の法的根拠がないと認定しました。同裁判所はこのほか、「南沙諸島には排他的経済水域(EEZ)を設けられる国連海洋法条約上の『島』はなく、中国はEEZを主張できない」「中国がスカボロー礁でフィリピン漁民を締め出したのは国際法違反」「ミスチーフ礁とセカンドトーマス礁はフィリピンのEEZ内にある」などと認定。中国の主張をほとんど退け、中国の国際的孤立を浮き彫りにしましました。

案の定、中国は逆上し(たふりをし)、「違法茶番劇」(中国メディア)、「紙くず(注――裁判所の判決)に外交努力が邪魔されるべきではない」(駐米大使)と批判して、領有権問題は当事者間の対話で解決されるべきだと、中国政府の従来の主張を繰り返しました。
中国は二国間対話を進めれば、孤立しないと思い込んでいるようです。

しかし、「これは中国の錯誤である」――。米国の世界的な戦略家であるエドワード・ルトワック氏は「中国4.0――暴発する中華帝国」(文春新書)の中で、中国の動きを予測するかのように書いています。

(ベトナムのような)小国は圧倒的なパワーを持つ中国と二国間交渉をするはずはなく、他国の支援、同盟によって対抗しようとします。ベトナムより大きい日本でも同様です。
中国が大きくなればなるほど、それに対抗しようとする同盟も大きくなるのだ。……中国が日本に対して圧力をかけようとすると、アメリカが助けに来るし、べトナム、フィリピン、それにインドネシアなども次々と日本の支持にまわり、この流れの帰結として、中国は最初の時点よりも弱い立場追い込まれる。これが(中国の錯誤の)核心である
安倍首相の活発な海外歴訪が示すように、昨今の動きはそうなってきています。その分、国際法を無視する中国の孤立化が進んでいます。オランダの仲裁裁判所の判決はその決定打というべきものなのですが、中国はそれに気付いていないのです。あるいは気付いていても対応を変えられないのです。

ルトワック氏の「チャイナ4.0」とは、かつて国民党軍の高官が酔っ払って書いた「九段戦」という馬鹿げた地図を放棄し、アメリカの警戒感を解消するために空母の建設を放棄することにあります。
(このチャイナ4.0は)今の中国にとって究極の最適な戦略だが、現在の中国にはおそらく実行不可能(だ)
1つは今の中国は内向きで海外の正確な情報が習近平にまで届かず、極めて不安定だからです。また、外国を理解できず、「自分たちこそ世界一、後の国は我々の家来だ」という昔ながら「冊封体制」のメンタリティが外国への理解を阻んでしまいます。2000年代半ば以降の経済大国化(の幻想、過信)が「冊封」メンタリティをいやまし高め、それが大きな弊害となっているのです。
今1つは習近平がチャイナ4.0を思いついたとしても、彼は人民解放軍に殺されるかもしれないし、人員解放軍がわざと対外危機を起こすかも知れない
世界の大国にのし上がりながら、北朝鮮とそれほど変わらない独裁国家の不安定性が増長されています。「今そこにある危機」です。

国内政治の間で苦悩する習近平
では、日本はどうすればいいのでしょうか。日本人は今、昨今の尖閣領域への中国軍の侵入の増加などから「中国政府が軍をコントロールできていないために、現場が暴走するのではないか」という懸念を持っています。ルトワック氏は「この懸念は実に真っ当なもの」として対中「封じ込め政策」を提案しています。

その提案は結論から言えば「尖閣領域のような小さな島の問題はアメリカに頼らず、自分でやれ」ということです。

米国は核抑止や大規模な本土侵略に対する抑止は日米条約によって提供します。しかし、島嶼奪還のような小規模なことにまで責任は持てないです。「日本が自分で担うべき責任の範囲なのです」。

ルトワック氏は戦略家として米国の軍事戦略にも深くかかわっています。だから、この姿勢は米政府もほぼ同様だ、と言って良いです。

島嶼防衛は日本独自の責務--。そのためには多元的な対中封じ込め戦略が不可欠である、とルトワック氏は提案します。
(海上保安庁、海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊、外務省などが)独自の対応策を考えておくべきなのである。「多元的能力」を予め備えておくことによって、尖閣に関する「封じ込め政策」は、初めて実行可能なものとなる
その際、「慎重で忍耐強い対応」という日本の役所の大好きな「先延ばし戦略」は逆効果だ、とルトワック氏は警告します。
そもそも中国は、(過去)15年のうちに三度も政策を変更している。さらに作戦レベルや現場レベルで、ソ連でさえ決して許さなかったような軍事冒険主義が実質的に容認されている
昨今の東シナ海、南シナ海での中国海軍の危なっかしい行動にそれが現れています。
これに対抗するには、有事に自動的に発動される迅速な対応策が予め用意されていなければならない。中国が突然、尖閣に上陸したとき、それに素早く対応できず、そこから対応策を検討したり、アメリカに相談をもちかけたりするようでは、大きな失敗につながるだろう
自分でやらずに、すぐにアメリカに頼る日本の外務省の体質を熟知したような指摘です。そして外務省も尖閣侵入のような有事に備えて海外諸国と連携した対応策を容易しておかねばならない、と説いています。

例えば、中国との貿易が多いEU(欧州連合)に依頼して、中国からの貨物処理のスピードを遅らせるよう手配するのです。
こうすれば中国はグローバルな規模で実質的に「貿易取引禁止状態」に直面することになり……かなり深刻な状況に追い込まれるはずだ
大事なのは、こうした具体的な行動が自力で実現できるように、平時から準備しておくことです。

対米依存度の高い外務省や防衛省は「今そこにある危機」に対応し、それをやっているのでしょうか。そこが問題です。

そうして、先日もこのブログに掲載したように、米国はいざとなれば、中国に対して大規模な金融制裁ができます。大規模な金融制裁を実施された場合、中国は身動きがとれなくなります。だから、米国や日本に対して、どこまでも自分の要求をつきつけるということはできません。どこかで、折れるしかありません。

しかし、上のルトワック氏の主張にもあるように今の中国は内向きで海外の正確な情報が習近平にまで届かず、極めて不安定です。また、外国を理解できず、「自分たちこそ世界一、後の国は我々の家来だ」という昔ながら「冊封体制」のメンタリティが外国への理解を阻んでしまいます。2000年代半ば以降の経済大国化(の幻想、過信)が「冊封」メンタリティをいやまし高め、それが大きな弊害となっているのです。

結局、軍事力でも金融力でも米国にかなり劣っている中国は、米国に直接挑むことはできません。

昨日もこのブログで述べたように、習近平にとっては反日を叫んでいなければ、「毛沢東が建国前の日中戦争において、日本軍と共謀していた事実」が明るみに出ることになります。これだけは絶対に避けたいために言論弾圧をヒステリックなほど強化しているのです。グローバル化が進めば進むほど、「嘘をつき続けることが困難になる」からです。

このブログにも過去に何度か掲載してきたように、現在の中国で「反日」の姿勢が崩れれば、中共政府は人民に「統治の正当性」を疑われることになり、それこそ体制が崩壊してしまいかねないのです。

中国にとっては、米国との大国二国間による対等な関係を模索し、いずれ太平洋を米中で二分して、支配しようという目論見は、米国の「国家安全保障戦略」によりすでに完璧に外れてしまいました。

そうなると、国内で「統治の正当性」を維持しつつ、反日を標榜し、国内の政治力学が何よりも重要な中国では、習近平は米国との対峙が無理というのであれば、まずはその矛先を本格的日本に向けることになる可能性は高いです。それ以前にまずは台湾を奪取するという冒険に出るかもしれません。

ここまで、述べるといかに安倍首相の「安全保障のダイヤモンド」構想が重要なものであるか、おわかりいただけるものと思います。

本来日本のマスコミは、安倍総理の構想など、立場や、良い・悪い、賛成・反対などは別にして、日本の総理大臣の構想として、報道し論評すべきです。それをしないで報道しない自由を行使するということは、日本マスコミのほとんどは、安全保障論議からすでに表舞台から退場したものとみなされても仕方ないです。

日本のマスコミの安全保障論議など、見聞きしても、何の益もないどころか、かえって混乱するだけです。最近も、村本大輔のように大混乱している人がいるようです。まったく、日本の安全保障論議からすでに退場したマスコミに情報に頼っているようでは、混乱するのはも無理はないと思います。

それよりも、現代中国の真の歴史を学ぶ、安倍首相の構想を読み解く、米国の戦略を読み解くことなどによって、まともな安全保障の論議が醸成されていくことになると思います。日本の安全保証論議をするなら、マスコミなど頼るべきではないです。

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やはり「中国と対決」の道を選んだトランプ政権―【私の論評】背景には米国内での歴史の見直しが(゚д゚)!

2018年1月4日木曜日

【北ミサイル】昨年4月失敗の「火星12」、発射場近くの町に墜落 大爆発で建物被害 日本通過でも同様危機と米誌警告―【私の論評】中国の反日姿勢が北を日本攻撃に駆り立てている(゚д゚)!


文在寅と金正恩
 米外交専門誌「ディプロマット」(電子版)は3日、北朝鮮が昨年4月に発射した新型の中距離弾道ミサイル「火星12」が作動不良で発射場から約39キロ離れた同国内の町に落下し、建物などに被害が出ていたことが分かったと報じた。

 北朝鮮は昨年8月と9月に火星12をそれぞれ1発発射し、日本上空を越えて太平洋に着水させている。同誌は、火星12が将来の発射実験で日本上空で作動不良を起こし、日本を攻撃するかのような落下軌道をとった場合、「たとえ弾頭を積んでいなくても北東アジアに深刻な危機をもたらす恐れがある」と警告した。

 同誌が米政府筋の話と商業衛星写真の分析に基づいて伝えたところでは、北朝鮮は昨年4月28日(現地時間29日)、平安南道(ピョンアンナムド)の順川(スンチョン)市にある北倉(プクチャン)飛行場から火星12を発射したが、エンジンが点火から1分後に故障し、飛行場から北東にある徳川(トクチョン)市内の建物に墜落した。

 墜落の際、搭載していた燃料が大爆発を起こしたとみられるが、死傷者の有無は不明。発射が成功していれば、ミサイルは日本海北部に着水するはずだったとしている。

 同誌はまた、北朝鮮の「労働新聞」に掲載された、北倉飛行場を訪れた金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の様子を移した写真を分析したところ、ミサイルの地下格納庫やトンネル、貯蔵施設が新たに建設されていることが確認された。

 こうした施設は北朝鮮各地に存在すると推定される。また、事故の危険は伴うものの、ミサイルを格納庫で横にしたたま液体燃料の充填を行った上で移動式発射車両で引き出すことができるようになり、米韓や日本の情報当局が発射の兆候を察知することが一層に困難になっていると指摘した。

【私の論評】中国の反日姿勢が北を日本攻撃に駆り立てている(゚д゚)!

北朝鮮の挑発は止まらないです。昨年も、予想通りというか、予想を超えてと言うべきか、深夜に発射されて日本の排他的経済水域(EEZ)にミサイルが落下しました。大陸間弾道弾であることは確実で、距離的にはシカゴには届くレベルだろうと報道されていました。

作動不良で発射場から約39キロ離れた同国内の町に落下し中距離弾道ミサイル「火星12」
 米NBCテレビは2日、複数の米軍当局者の話として、北朝鮮が数日以内に弾道ミサイルを発射する可能性があると伝えています。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射すれば、昨年11月29日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射以来となります。

NBCによると、北朝鮮でミサイル関連の装置を移動させるなどの活動が活発化しており、米情報機関はミサイル発射の兆候の可能性があるとみている。当局者の一人は「今週半ば」にもミサイル発射があり得るとの見方を示したといいます。

そうして、私はこのミサイルも日本のEEZ内に落ちる可能性が高いとみています。

北のミサイルが、EEZ内に落下したのは初めてではないし、それこそブログ冒頭のニュースのように、EEZ内に落とすつもりが、誤って北海道の陸地に落ちる可能性も十分あったと思います。さらに、運が悪ければこのEEZ水域内で操業している漁船、上空を飛ぶ航空機に当たる可能性も十分あったはずです。

 こんなことが起こった後で、「毅然とした態度で臨みたい」とか「遺憾である」という言葉を引き出して終わるだけでは済まないでしょう。人命被害が出れば、宣戦布告されたに等しい状況です。

そうして、どうやら北朝鮮は、日本を本格的にターゲットにし始めたようです。その理由は簡単です。中国が北の先制攻撃に軍事的警告を発したのは「アメリカ領」であって、「日本」ではないからです。中国の報復攻撃に怯えている北は、反日中国を意識しているようです。

中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹紙である「環球時報」が北朝鮮に対して何度か警告を発してきました。

たとえば、8月10日、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は社説として以下の警告を米朝両国に対して表明しました。
(1)北朝鮮に対する警告:もし北朝鮮がアメリカ領を先制攻撃し、アメリカが報復として北朝鮮を武力攻撃した場合、中国は中立を保つ。(ブログ管理人注:中朝軍事同盟は無視する。) 
(2)アメリカに対する警告:もしアメリカが米韓同盟の下、北朝鮮を先制攻撃すれば、中国は絶対にそれを阻止する。中国は決してその結果描かれる「政治的版図」を座視しない。 
(3)中国は朝鮮半島の核化には絶対に反対するが、しかし朝鮮半島で戦争が起きることにも同時に反対する。(米韓、朝)どちら側の武力的挑戦にも反対する。この立場において、中国はロシアとの協力を強化する。
この内の(1)と(3)は、北朝鮮にとっては存亡の危機に関わる脅威です。もし北朝鮮がグアムなどのアメリカ領を先制攻撃してアメリカから報復攻撃を受けた場合、中国は北朝鮮側に立たないということであり、その際、ロシアもまた中国と同じ立場を取るということを意味します。

北朝鮮にとって中国は世界で唯一の軍事同盟を結んでいる国なので、中国が「中朝軍事同盟を無視する」と宣言したとなれば、北朝鮮は孤立無援となります。北朝鮮の軍事力など「核とミサイルと暴走」以外は脆弱なものです。韓国や日本には大きな犠牲を招くでしょうが、アメリカと一国で戦えば全滅します。したがって14日、グアム沖合攻撃は延期(実際上放棄)することを表明し、現在にいたるまで実施されていません。

無論、その後安倍、トランプ、習近平、プーチンなどがAPECなどでそれぞれ二国間首脳会談をして、北朝鮮崩壊後の新たな体制について話し合いをしていることは確かです。その中で、中国が譲歩し可能性も高いです。

ただし肝心なのは、金正恩にはこの話し合いの内容は伝わっていないことと、環球時報の警告文の中には、「日本領」とも書いてなければ、「在日米軍基地」とも書いていないことです。

「北朝鮮が日本あるいは在日米軍基地を先制攻撃して米軍による報復攻撃をした場合、中国は中立を保つ」とは書かれていません。

反日をやめない習近平
中国はあくまでも安倍政権が軍国主義の方向に向かっているとして、中央テレビ局CCTVでは日本よりも詳しく安保関連法案や憲法改正(特に九条)などに関して毎日のように報道してきました。「モリカケ」問題に関しても特集を組んだり、反安倍報道なら、喜んで報道します。

どんなに「日中雪解け」的な報道が日本であったとしても、それは一帯一路に日本を組み込みたい中国の魂胆があるだけで、「反日」の姿勢は絶対に代わらないのです。中国共産党の一党支配体制が崩壊するまで、その要素は変わりません。

習近平にとっては反日を叫んでいなければ、「毛沢東が建国前の日中戦争において、日本軍と共謀していた事実」が明るみに出ることになります。これだけは絶対に避けたいために言論弾圧をヒステリックなほど強化しているのです。グローバル化が進めば進むほど、「嘘をつき続けることが困難になる」からです。

このブログにも過去に何度か掲載してきたように、現在の中国で「反日」の姿勢が崩れれば、中共政府は人民に「統治の正当性」を疑われることになり、それこそ体制が崩壊してしまいかねないのです。

だから中国は決して北朝鮮に「北朝鮮が日本あるいは在日米軍基地を先制攻撃して米軍による報復攻撃をした場合、中国は中立を保つ」とは言わないのです。金正恩もまた、このニュアンスは嫌というほど「理解」しているはずです。

だから、もしかすると中国による北朝鮮に対する武力攻撃があるかもしれないと察知した北朝鮮は、中国が政権の中心に置いている「反日姿勢」に迎合することを選んだのでしょう。反日国家を武力攻撃するのは、中国にも躊躇が生まれます。尖閣を奪うためにも不利となるからです。

結果、金正恩にとって、「反日は(中国に対する)最高の保身」となるのです。日本のメディアは最近、「なぜ北朝鮮は日本をターゲットにし始めたのか」に関して苦労しながら分析しようとしています。そのいずれも的を射ていません。


それは中国の本心も北朝鮮の建国時の姿勢をも知らないからに違いありません。中国、北朝鮮、韓国、いわゆる特亜三国にはある共通点があります。

一つは、全体主義国家であり、人民が政府対して強烈な不満を持っているということです。もう一つは、これらの国々(中華人民共和国、朝鮮民氏主義人民共和国、大韓民国)は、一度も日本と戦争したことがないにも関わらず、あたかも日本と戦争したかのような印象操作をそれぞれの国の人民に対してしているということです。

日本が我が国に対して非道な戦争を仕掛け、植民地化し人民に圧政を強いたのを自分たち(それぞれの国の政府)が戦いを挑み、勝利して、日本を放逐して、国家を築いたという幻想をそれぞれの国々の人民に植え付けています。

そうして、日本を悪者に仕立てないと、自国の「統治の正当性」が人民に疑われることになり、自分たち(各々の国の政府)が人民の憤怒のマグマを直接浴びて、体制崩壊をしてしまいかねないからです。

中国が何としても絶対に譲らないのは「反日姿勢」です。中国共産党は、日中戦争において日本軍と共謀していた事実が明るみに出ないようにするために、それだけは貫徹するでしょう。日本の真の平和は、中国の民主化によってしかもたらされません。中国が民主化すれば、北も韓国もそれに追随するしかなくなるでしょう。

そうして、日本にとって最大の悪夢は、特亜三国がさらに「反日」を強め、北朝鮮のように軍事的威嚇を実行するようになることかもしれません。

その予兆は十分にあります。中国は、尖閣での領海侵入が頻繁に繰り返しています。韓国はことあるごとに慰安婦問題での「日韓合意」を日本側に撤回させようとしています。

この特亜三国の反日は、現状のレベルですんでいますが、この三国の体制が揺るげば、揺るぐほど、「反日」の度合いは高まり、いずれ「反日」で結託して、さらにエスカレートしてくる可能性が大です。

中国や、韓国も北朝鮮のように日本をターゲットとした軍事挑発をはじめるようになるかもしれません。それらがエスカレートすれば、事実上の特亜三国反日軍事同盟ができあがるかもしれません。

北がいつまでも屈服することなく、これからも核開発を続けていくということにでもなれば、その可能性は高くなります。無論北が屈服するなり、米国が北に軍事攻撃を加えれば、そのようなことになる可能性はいっとき遠のくかもしれません。

しかし、韓国と中国との軍事同盟の可能性は残ることになります。

日本としては、その可能性も含めて、特亜三国に対抗する手段を今から用意すべきです。それには、日本がさらに軍事力を強化させる必要があります。これら特亜三国が結託して、日本を攻撃しても、反撃されて大きな損失を被るだけであることを、思い知らせるべきなのです。

さらには、米国などとの同盟もさらに強化すべきです。日本に戦争を仕掛ければ、米国などの国々も巻き込むことになり、その結果自分たちの体制は崩壊することになることを思い知らせるべきなのです。

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特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...