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2025年7月6日日曜日

参政党の急躍進と日本保守党の台頭:2025年参院選で保守層の選択肢が激変

まとめ
  • 参政党の急成長: 2020年結成の参政党は、2022年参院選で177万票、2024年衆院選で3議席、2025年東京都議選で3議席を獲得。支持率5~7%で、参院選の台風の目。「日本人ファースト」やリベラル政策で保守層や無党派層に支持拡大。
  • 地道な活動の成果: 地方議員150人、資金20億円(4億3000万円をパーティー等で確保)。街頭演説や「神谷カフェ」で有権者と対話し、ネット戦略と「メディア不信」で熱狂的な支持を集める(総務省, X)。
  • 日本保守党の台頭と課題: 2023年結成、2024年衆院選で3議席獲得。百田尚樹氏と有本香氏が結成、河村たかし氏が合流。支持率は参政党に及ばず、内部対立や保守系雑誌の批判が課題だが、成長の余地あり(coki.jp, bunshun.jp)。
  • 保守層の選択肢拡大: 自民党への不満から参政党や日本保守党に保守層が流れ、Xで「自民離れの受け皿」と比較。両党の政策多様化が政治議論を活性化(X)。
  • 高まる政治関心: 神奈川選挙区の95.0%が参院選に高い関心を示し、10代100%、全世代9割超え。参政党や日本保守党の台頭と自民党不満が背景(神奈川新聞)。
参政党の急躍進とその背景

参政党代表 神谷宗幣氏

2025年7月3日公示の参院選で、参政党が旋風を巻き起こしている。2020年4月、神谷宗幣氏を中心に結成されたこの党は、YouTube視聴者を含む約3000人の党員から始まった。反ワクチンやナショナリズムを掲げ、保守層の心をつかんだが、内部対立も経験した。

2022年参院選で177万票を獲得し神谷氏が比例区で当選。2024年衆院選で3議席、2025年東京都議選では世田谷区、練馬区、大田区で4候補中3人が当選するなど、勢いは止まらない。世論調査では自民党、立憲民主党に次ぐ支持率5~7%を記録。参院選の台風の目だ。

「日本人ファースト」を旗印に、外国人による土地購入規制や医療保険の明確化を訴える。一方、フリースクール推進やオーガニック給食でリベラル層にも食い込む。神谷氏の街頭演説には元航空幕僚長の田母神俊雄氏らが駆keつけ、支持者は外国人トラブルへの対応や自民党、国民民主党への失望から共感を寄せる。

世田谷区では立憲候補を上回り、維新の会やれいわ新選組の支持層にも影響を与える。神谷氏の過去の発言―コロナ陰謀論、反ワクチン、沖縄戦関連―は批判を浴びたが、支持者は意に介さない。YouTubeやXでの発信と「メディア不信」を煽る戦略で、熱狂的な支持を広げる。


北海道や福岡など複数人区での候補者擁立も注目され、自民や立憲を脅かす情勢だ。参政党の躍進は、地道な活動の積み重ねによる。地方議員を増やし、2025年6月時点で150人に拡大。全国の選挙区に候補者を擁立し、街頭演説や「神谷カフェ」などのイベントで有権者と直接対話。

2023年の政治資金収支報告書では、資金20億円のうち政治資金パーティーやグッズ販売で4億3000万円を確保し、草の根の支援を固めた([総務省 政治資金収支報告書](https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/))。Xでは「地道に根を張る戦略」と評価され、演説に人が少なくても票を獲得する力強さが指摘される(Xでの関連投稿)。 

日本保守党の台頭と課題

日本保守党、右から有本氏、河村氏、百田氏

2023年10月に百田尚樹氏と有本香氏が結成した日本保守党は、河村たかし氏が後に共同代表として合流。2024年衆院選で3議席を獲得し、結党から1年で国政政党となった。参政党が2年3カ月かかったのに対し、その速さに驚く。だが、2025年6月時点で支持率は参政党に及ばず、認知度不足が課題だ。

参政党は5年で地方議員150人、国会議員5人に拡大。ネット戦略と保守層の取り込みが鍵だった。日本保守党も保守政策とSNSで支持を集めるが、参政党のように幅広い層に訴求できれば、参院選での議席増が期待できる。Xのフォロワー33万人超や党員4万6000人超の基盤は、参政党の初期に似る。

しかし、保守系雑誌「WiLL」や「月刊Hanada」は、LGBT理解増進法への姿勢や党運営を「偽善的」と批判。元候補者・飯山陽氏の党幹部批判や百田氏と河村氏の「ペットボトル事件」で内部対立が表面化している。それでも、参政党が地方議員を増やし議席を拡大したように、日本保守党もネット戦略や保守層の取り込みを強化すれば、参院選での成長が期待できる。

保守層の選択肢拡大と高まる政治熱

保守層にとって選択肢が増えた意義は大きい。自民党のスキャンダルや経済政策への不満から、保守層の一部が参政党や日本保守党に流れている。Xでは「自民離れの受け皿」として両党が比較される。参政党は全国での候補者擁立と生活者目線の政策で支持を拡大。日本保守党は消費税ゼロなど保守の強さを訴え、組織力で勝負する。


こうした選択肢の多様化は、保守派が自身の価値観に合う政党を選びやすくなり、政治の議論を熱くする。この動きは有権者の関心を高めている。共同通信社が7月3~4日に実施した参院選序盤情勢調査によると、神奈川選挙区の95.0%が「大いに関心がある」(70.0%)または「ある程度関心がある」(25.0%)と回答。過去6回の調査で最高だ。

10代が100%、50代が97.4%、30代でも90.2%と全世代で9割超え。前回の男女差5ポイント以上が1.7ポイントに縮まり、男性95.4%、女性93.7%と関心が急上昇(神奈川新聞)。この高揚は、参政党や日本保守党の台頭と自民党への不満が背景にある。保守派も含めた有権者の政治への熱が、選挙戦をさらに激化させるだろう。

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保守分裂の危機:トランプ敗北から日本保守党の対立まで、外部勢力が狙う日本の未来 2025年6月6日
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2025年7月21日月曜日

落選に終わった小野寺勝が切り拓いた「保守の選挙区戦」──地方から始まる政党の構図変化

 まとめ

  • 日本保守党は結党から2年足らずで衆参5議席を獲得し、比例だけでなく選挙区(北海道)にも挑戦。百田尚樹氏が参院比例で当選し、存在感を確立した。
  • 北海道選挙区で落選した小野寺勝氏は、保守党として初の地方区本格挑戦を果たし、国防やアイヌ政策を訴えて一定の得票を得るなど、今後に向けた布石となった。
  • 参政党は4~5年かけて勢力を拡大し、2025年参院選で8議席を獲得。だが、神谷宗幣氏は「参政党は保守ではない」と発言したとされ、保守党との立ち位置の違いが明確に。
  • 両党は急成長する一方で、飯山あかり氏や保守系雑誌など、同じ保守陣営からの批判にも直面してきた。
  • 日本保守党は明確な保守主義と党首の高い知名度を武器に、参政党は大衆政党としての浸透力で、それぞれ異なる方向から「新しい保守」の形を模索している。
百田尚樹の参院当選と日本保守党の異例の急成長
 

2025年7月21日、日本保守党代表の百田尚樹氏が、前日に投開票された参議院選挙の比例代表で当選した。同党からは弁護士・北村晴男氏がすでに当選しており、百田氏はこれに続く2人目の当選者となった。日本保守党にとって、これは参議院での初の議席獲得である。

百田氏はもともとテレビ放送作家として活躍し、「探偵!ナイトスクープ」などの人気番組を手がけた。50歳で作家デビューを果たすと、「永遠の0」でベストセラー作家となり、「海賊とよばれた男」では本屋大賞を受賞するなど、文壇でも強い存在感を示した。そんな百田氏が、ジャーナリストの有本香氏らとともに2023年10月に日本保守党を立ち上げたのは、自民党が左傾化する現状への明確な異議申し立てであった。翌2024年の衆議院選挙では、結党からわずか1年足らずで3議席を獲得し、今回の参院選ではさらに2議席を積み上げた。わずか2年も経たぬうちに、同党は衆参あわせて5議席を有する国政政党に成長したのである。

小野寺勝氏

また今回、日本保守党は比例区だけでなく選挙区にも初挑戦しており、北海道選挙区に立候補した小野寺勝氏の動きは注目に値する。落選こそしたものの、地方選出の新人としては異例の得票を記録し、保守党が地方区でも一定の存在感を示した初の事例となった。小野寺氏は国防・教育・アイヌ政策に関する問題を真正面から訴え、既存政党が触れようとしない論点を堂々と争点化。北海道という難しい選挙区で戦いながらも、党の全国的な支持拡大の「突破口」としての役割を果たしたといえる。

保守党と参政党──成長スピードと立ち位置の違い
 
参政党代表 神谷氏

この躍進は異例である。特に比較すべきは、2020年に結党された参政党だ。参政党は結党から2年後の2022年参院選で初の国政議席(比例1議席)を獲得。その後、2024年の衆院選で3議席、2025年6月には梅村みずほ議員が合流し、議員数は5名に達した。そして同年7月の参院選では、東京・茨城などの選挙区で初めて候補者が当選し、比例と合わせて計8議席を獲得。まさに急伸と言える結果である。

だが、ここで注目すべきは、両党の“成長の質”である。参政党が議席拡大までに4〜5年を要したのに対し、日本保守党はわずか2年足らずで衆参両院に足場を築いた。しかも、その原動力は党首自身の圧倒的知名度と発信力であった。

百田氏は、結党前から国民的知名度を有していた稀有な存在だ。作家としての成功に加え、言論活動を通じて保守層から圧倒的な支持を得ていたことが、党勢拡大を強く後押しした。一方、参政党の神谷宗幣氏は地方議員出身で、当初の知名度は限られていたが、YouTubeやオンライン講座などを駆使して地道に支持層を広げた。この点で両者は対照的である。

支持層の性質にも決定的な違いがある。日本保守党は、既存の自民党に失望した保守層、特に安倍晋三元首相の政治姿勢に共鳴する層を中心に支持を広げた。政策も伝統重視・国益重視が明確で、理念がぶれていない。一方、参政党は「反ワクチン」や「オーガニック志向」といった、保守・リベラルの枠組みを超えた主張を打ち出し、政治未経験層やスピリチュアル層にも広がりを見せた。

実際、神谷氏自身が「参政党にはリベラルな人もおり、参政党は保守ではない。保守は日本保守党に任せる」と語ったとされる発言が、SNS上などで注目を集めた。これは、参政党がイデオロギーにとらわれない保守も含めた大衆政党を目指している姿勢を示す一方で、日本保守党があくまで保守主義に軸足を置いているという違いを如実に浮かび上がらせる発言である。

支持と批判の狭間で──試される“保守の新興勢力”
 

もっとも、両党ともその急成長の裏で、同じ保守系の内側から厳しい視線を浴びてきた点は共通している。日本保守党に対しては、飯山あかり氏をはじめとする保守系評論家や、『Hanada』『WiLL』といった保守系メディアからの批判が相次ぎ、百田氏の言論姿勢や党の運営体制に疑問が呈された。一方、参政党もまた、結党当初から陰謀論的な主張やスピリチュアル色の濃い発信が、保守論壇から冷ややかに見られてきた。

つまり、両党はともに、既成政党に見切りをつけた有権者の受け皿となりながら、同時に保守陣営内部からの試練にもさらされてきたのである。その中で、日本保守党は知名度と明確な国家観を武器に、参政党は草の根運動と非主流層への共感を力に、それぞれ異なる道筋で台頭してきた。

今後、この二つの新興勢力が保守再編の中でどう存在感を強めていくのか。理念か大衆か、論戦か情念か──その行方は、日本政治の未来そのものを映す鏡となるだろう。

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石破vs保守本流」勃発!自民党を揺るがす構造的党内抗争と参院選の衝撃シナリオ 2025年7月17日 
今回の参院選は、単なる政権の勢いを問うものではない。自民党という政党のあり方、その先にある国家の背骨を巡る構造的な転換点なのだ。

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参院選2025で「外国人問題」が大争点に!国民の怒りが噴出、メディアは沈黙?読売新聞が挑む「規制と共生」の議論。 あなたの1票が日本の未来を変える! 投票に行こう!

参政党・神谷宗幣の安全保障論:在日米軍依存の減少は現実的か?暴かれるドローンの落とし穴 2025年7月9日
神谷のビジョンは情熱的だが、情熱だけでは足りない。私が気づくようなドローンの落とし穴を放置し、専門家からも批判されるようでは、参政党の未来は危うい。

2025年8月24日日曜日

参院過半数割れ・前倒し総裁選のいま――エネルギーを制する者が政局を制す:保守再結集の設計図


まとめ

  • 自民党は参院で過半数を失い求心力が低下したが、綱領に「保守」「改憲」を明記する本来の保守政党であり、保守系は“ガス抜き要員”ではないという立場を再確認した。総裁選は推薦人20人が必要で、運用次第で政局は大きく動く。
  • 現状打開には、自民党内保守×参政党の保守的潮流×日本保守党×草の根・保守メディア・論壇を横断連結して結束を固めることが要諦だ。
  • 国家運営の土台はエネルギーであるとの前提に立ち、短中期はLNGで安定を確保しつつ既存原発を活用、並行してSMRを立ち上げ、長期は核融合へ投資する「多層戦略」を採る。家計・企業負担となる再エネ賦課金は見直し(縮減・廃止)を争点化する。
  • 技術ロードマップは、SMRの国際連携・国内整備を進めつつ、核融合はJT-60SAで運転知見を蓄積し、ITERの工程(D-T運転の段階的開始見通し)と接続して2030年代の発電実証、2040年代の商用化を狙う。
  • 象徴的リーダーには高市早苗氏が最適と評価する。政・官・党の実務経験(経済安保担当相、総務相、政調会長)、安保・外交での一貫性、エネルギー戦略との整合性、世論調査での競争力という点で条件を最も満たす。
🔳いま何が起きているのか――政局の骨格
 

石破茂内閣は昨年秋に発足し、今年7月20日の参院選で与党(自民・公明)が過半数を割り、政権は上下両院で“少数与党”となった。総裁である石破首相が続投表明をしつつも、党内外から責任論と路線論が交錯する構図だ(選挙の結果と与党の過半数割れは nippon.comの選挙分析(日本語)同(英語) 参照)。

自民党のルール面を押さえる。総裁選は党則と「総裁公選規程」に基づき、立候補には国会議員20人の推薦が必要である。運営の細目は執行部の裁量余地が小さくないが、規程が示す枠(推薦人要件、投票主体など)が基盤である点は変わらない。自民党は「立党宣言・綱領」に保守政党であること、そして「憲法改正を目指す」ことを明記してきた事実も確認しておくべきだ。
 
🔳自民保守は“ガス抜き”ではない――勢力図と再結集
 
SNSの保守層が自民は「所詮ガス抜き」と辛らつな反応が目立つように

「自民党保守系は党のガス抜き要員にすぎない」という揶揄がある。だがこれは間違いだ。第一に、綱領上の自己規定は保守であり、改憲推進を掲げるという“党の芯”がある(前掲の綱領・改憲特設サイト 自民党 憲法改正実現本部 参照)。第二に、数の上でも保守色を持つ議員層が最大であることは衆目の一致である。確かに派閥資金問題を経て派閥は形式的に解体・縮小し(派閥解体の難しさを解説する論考 参照)、旧来型の“締め付け”は弱まった。だが、だからこそ理念軸での結束が効く。左派リベラル・対中融和的な結束の強さに押され、総裁選の力学で主導権を奪われたという反省は重い。ここからの反転には、保守が“同盟”を組むしかない。自民党内保守、日本保守党、参政党の保守層、他党保守系、草の根・メディア・論壇まで、横串に束ねる発想である。象徴としての人選は効果が大きい。たとえば高市早苗氏のように、改憲・安保・エネルギーに明快な旗を立てられる総裁像を担ぎ、以後は“数の力”を健全に回しながら、保守内部で政権交代が起こり得る仕組み(政策競争の土俵)を整えるべきだ、という提案である。

新勢力の動きも直視する。参政党は党員主導・草の根色の濃い“参加型”の運営を打ち出しており(公式の政策ページ)、保守層を含む大衆政党志向が強い。他方、日本保守党は綱領・政策の明確さが前面に出る“理念先導型”の保守政党で、エネルギー・税・移民などで明瞭な選好を提示している(党公式サイト /政策詳細は後述リンク)。7月の参院選で日本保守党は比例で議席を得て国政政党としての足場を固め、存在感を一気に増した(例:比例上位候補の当選報道として 毎日新聞の速報)。“破竹”の言を控えても、短期間での到達点としては十分に大きい。支持層の細かなデモグラフィックについては、公的な大規模データの公開がまだ限定的であるため、確定的断言は避ける。
 
🔳なぜエネルギーを最優先に据えるのか――安保・外交・改憲を支える土台
 
安保、外交、そして改憲。三つの論点はいずれも国家の大黒柱だ。だが、それらを支える“根太”がエネルギーである。供給が揺らげば、防衛生産も外交交渉力も財政運営も脆くなる。中東有事とホルムズ海峡への依存はアジアの急所であり、日本の脆弱性は繰り返し指摘されてきた(APの分析記事)。ゆえに、当面は安価で機動的な“つなぎ”のエネルギーとして、天然ガス(LNG)へのフォーカスを強めるべきだ。

そのうえで、中長期の“勝ち筋”を二本柱で描く。第一がSMR(小型モジュール炉)、第二が核融合だ。SMRは工場モジュール化で建設リスクを抑え、系統安定と産業熱供給の両面で使い勝手がよい。政府は国際連携で「2030年前後の技術実証」をめざす方針を示してきた(政策枠組みの一端は 経産省資料(英)資源エネ庁の解説記事(英)2025年版エネルギー白書・原子力章 参照)。規制は、推進(経産省・資源エネ庁)と規制(原子力規制委員会)の分離が前提で、独立性の高い三条委員会体制が安全確保の要である(原子力規制委の位置づけ解説)。

出典)© 2021 Joint Special Design Team for Fusion DEMO All Rights Reserved.(原型炉設計合同特別チーム)

核融合は「日本が勝ちにいける」戦略分野だ。国内では、JT-60SAが世界最大級の超伝導トカマクとして2023年10月に初プラズマ達成、統合試運転を重ねている(QSTのリリースFusion for Energyの発表)。国際協力の要であるITERは、2024年の「In a Few Lines」で工程を見直し、D-T運転開始は2039年見通しを公表した(ITER公式の要約ページマックスプランクIPPの解説)。日本政府も「2030年代の発電実証」に向け明確化を進める方向を示した(内閣府・フュージョン戦略(改定素案)文科省・委員会サイト)。

ここで再エネ賦課金だ。家計・企業コストの観点からは、電気料金の構造的圧力になっている。2025年度の標準的な賦課金単価は3.98円/kWhと公表されている(資源エネルギー庁の発表(英))。負担の見直し、とくに景気と産業競争力を重視する立場からは、賦課金の段階的縮減や廃止を求める声が強い。さらに、最近では国立公園内の釧路湿原にメガソーラを設置しようという動きすらあり、国民の多くが怒っている。日本保守党は政策として「再エネ賦課金の廃止」を明記しており、保守連合の共通公約に据えやすい論点である。

さらにガソリン税問題は単なる税制議論ではなく、日本のエネルギー安全保障や国家戦略の入口だ。本来、価格高騰時に税を止める「トリガー条項」は国民を守る仕組みだが、長年凍結され政治の怠慢を象徴している。

今こそ税制見直しを突破口に、石油依存の脆弱性や再エネの限界、原子力の現実的運用を含むエネルギー政策全体を再構築すべきだ。筆者の結論は明快だ。短中期は天然ガスを基軸に電力安定を確保しつつ、SMRを最速で立ち上げ、核融合は国家総力戦で前倒しする。その“橋”としての化石燃料重視は現実主義であり、安保・外交・改憲のいずれを進めるにも不可欠の土台である。

最後に、政局への帰結をもう一度明確にする。自民党は“左派リベラル・親中”に乗っ取られたという憤懣が保守層に強いのは事実だが、これは見方の問題でもある。派閥解体後の“自由化”で思惑が表に出やすくなり、結果として結束で劣った――それが敗因の核心である。ここからの挽回は、理念で束ねる横断連携と、象徴的リーダーの下で“勝てる政策”(とくにエネルギー)に集中投資することだ。保守はもう“ガス抜き”ではない。国家の屋台骨をもう一度組み上げる当事者である。
 
🔳象徴的リーダー――なぜ高市早苗氏なのか
 
高市早苗氏

結論から言う。現状で象徴的リーダーに最も相応しいのは高市早苗氏だ。理由は四つある。

第一に、経験と実績だ。高市氏は岸田内閣で「経済安全保障担当相」を務め、内政・技術・安全保障が交差する最前線で意思決定を担った。過去には総務相を歴任し、党内では政調会長も務めた(自民党公式プロフィール)。この“政・官・党”の三面経験は、エネルギー・半導体・安全保障が一体化する時代に強い武器である。

第二に、安保・外交での骨の通った姿勢だ。高市氏は保守色が明確で、歴史認識や安全保障で一貫していることは国内外メディアも繰り返し報じてきた(ロイターの人物紹介)。また、今年8月には台湾の頼清徳総統と会談し、供給網・新技術・防衛協力などで「価値観を同じくする国々の連携」を強調した(台湾総統府・英語リリース)。地域秩序の核心である台湾海峡と経済安全保障を一体で語れる政治家は、いまの日本に多くない。

第三に、エネルギー政策との整合性だ。自民党総裁選における原子力の扱いは常に争点だが、近年は「脱原発一辺倒」から現実路線への回帰が進み、候補者群の中で原子力を一定の役割として認める機運が強まっている(Japan Timesの総裁選と原子力を巡る分析同・原子力への姿勢の変化)。高市氏は経済安保の現場と接点が深く、LNG・既存原発・SMR・核融合という多層戦略を政治的に束ねる「顔」になり得る。

第四に、勝てる可能性だ。直近の報道ベースでも、高市氏は保守系の中核として世論調査で上位に位置づけられてきた(例:読売の支持率データを引く ロイターのまとめ記事)。もちろん、最終的な勝敗は派閥力学と都道府県連の動きに左右される。だが、保守を横断で束ねる“象徴”としての条件を最も満たしているのは高市氏である。

要するに、理念の明確さ、実務の厚み、外交安保の発信力、エネルギー戦略との整合性、そして選挙戦での実効性。この五点が合わさった政治家は希少だ。高市氏は“旗”を立てられる人材であり、保守再結集の号令役として最適任だと判断する。

参考・根拠(主だったもの)
(注)本文の主張のうち、価値判断・将来提案に属する部分は筆者の分析であり、事実部分は上掲の一次・準一次情報で検証可能である。リンクはすべて辿れる公開情報のみを用いた。

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2025年7月17日木曜日

「石破vs保守本流」勃発!自民党を揺るがす構造的党内抗争と参院選の衝撃シナリオ

まとめ
  • 自民党内で石破派とFOIP戦略本部の間に、政策・国家観を巡る深刻な構造的対立が進行中。これは単なる派閥抗争ではなく、党の再編を伴う可能性がある。
  • FOIP戦略本部は対中抑止を軸とした安倍路線を継承し、保守派の再結集の中心として機能している。麻生・高市・旧安倍派が連携しつつある。
  • 多くのメディアは、この構造的対立を「選挙戦術」やスキャンダルとして矮小化し、実質的に石破政権寄りの報道を続けている。本質的な政策対立は意図的に報じられていない。
  • 参院選で自民党が敗北すれば、石破政権の居座りと立憲民主党との連携という事態が現実化し、自民党の保守政党としての輪郭が崩れかねない。
  • 今回の選挙は、自民党の理念と国家戦略を問う「構造闘争」の節目であり、保守派の再結集と党再編が今まさに始まろうとしている。
自民党内は、国家の背骨を変える闘いに直面している

自民党内部では、石破茂氏が推進するリベラル・左派路線と、安倍・麻生・高市系保守による「自由で開かれたインド太平洋戦略本部(FOIP戦略本部)」との政策的対立が、もはや単なる派閥抗争ではなく「構造的な党再編」へと深化している。石破氏は「派閥解体」「現場主義」「脱イデオロギー」を掲げ、中国・韓国との関係改善を志向する。一方でFOIP本部は、対中抑止を核とした実務路線を堅持し、党の国家戦略の本流として明瞭な意思を示している。

しかし主要メディアはこの重大局面を「商品券配布」や「人事騒動」へと貶め、真正面から政策軸の対立を扱おうとしない。彼らは石破氏を「穏健で現実的な改革派」と位置づけ、その継続を好意的に受け止める姿勢を隠さない。メディアの多くがその方向性に与し、構造的な対立を意図的に報じない現実が、いま政党の分断を助長しているのだ。
 
メディアの視線の盲点──政策対立をなぜ報じないのか
 
東洋経済表紙

たとえば東洋経済オンラインは、「石破降ろし」「商品券配布問題」など人事スキャンダルに終始し、構造転換の本質には一切触れない。これは日本のメディアにしばしば見られる「争点の回避」にほかならない。日本の報道では、政権批判にもかかわらず、党の根幹を揺るがす政策闘争を読み解く視座が欠けている。これは日本の主要メディアが左派リベラル的な世界観を支持し、石破政権の安定志向を歓迎しているからこそ起きている現象である。

確かに、メディアには「物語として描きやすい」に越したことはない。だが本来取り上げられるべきは、国家の方向性そのものを左右する構造的分岐だ。書きやすい「派閥対決」に逃げ込むならば、本質は闇に埋もれる。その傾向を変えるのは我々の視点と要求なのである。
 
参院選と再結集の呼び水──党再編シナリオの加速

年金法案で3党合意した自公立民

都議選や政権支持率の低迷から、参院選では自民党が歴史的敗北を喫する可能性が高まっている。石破氏がそれでも政権に居座り、立憲民主党との連携に舵を切るような事態になれば、自民党は保守政党としてのアイデンティティを失う。その時、再び注目されるのがFOIP戦略本部である。

安倍派・麻生派の有志による「保守再結集」はすでに始まっている。今回の選挙敗北を契機に、党内の保守主流が明確な国家観と価値観を掲げ、構造的に再結集する流れが生まれるだろう。メディアが構造の視点を無視し続けるかぎり、政党の分断と理念の空洞化は加速する。報道に求められるのは、スキャンダルではなく政策の分岐点に注目し、それを読み解く眼を研ぎ澄ますことである。 

結語──今、自民党は“国家の背骨”を書き換える闘いに直面している
 
自民党の「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」の初会合であいさつする麻生最高顧問(5月14日、党本部)

今回の参院選は、単なる政権の勢いを問うものではない。自民党という政党のあり方、その先にある国家戦略を巡る構造的な転換点なのだ。まさに自民党は“国家の背骨”を書き換える闘いに直面しているのだ。 FOIP戦略本部は、それを支える保守派の砦であり、党再編の舵取りを担う存在である。読者は今こそ、報道の罠に惑わされず、構造的な視座でこの政界の動きを見届け、自民党と日本の未来を考える必要がある。

【関連記事】

神谷のビジョンは情熱的だが、情熱だけでは足りない。神谷氏の安全保障観は専門家から国際舞台で通用しないと批判されるようでは、参政党の未来は危うい。

参政党の急躍進と日本保守党の台頭:2025年参院選で保守層の選択肢が激変 2025年7月6日 
保守派も含めた有権者の政治への熱が、今回の選挙戦をさらに激化させるだろう。

自民党の消費税減税反対は矛盾だらけ! 経済の真実を暴く 2025年6月30日
自民幹部には経済の真実と向き合う覚悟がない。物価高に苦しむ国民への素早い対応と、国の未来を切り開く変革を両立させる勇気が、今こそ求められている。

2025年東京都議選の衝撃結果と参院選への影響 2025年6月23日
東京都議選の結果は、来るべき参院選への重要な示唆を与える。国会での与野党の力関係が拮抗すれば、より活発な政策議論が期待され、国民にとってより良い政治環境が整うだろう。

【自民保守派の動き活発化】安倍元首相支えた人の再結集—【私の論評】自民党保守派の逆襲:参院選大敗で石破政権を揺さぶる戦略と安倍イズムの再結集 2025年5月22日

2025年7月9日水曜日

参政党・神谷宗幣の安全保障論:在日米軍依存の減少は現実的か?暴かれるドローンの落とし穴

まとめ

  • 神谷宗幣の発言と参政党の政策は、在日米軍依存の減少を目指す点で一致。
  • 私が指摘する神谷の盲点は、ドローンやAIに偏重し、索敵能力や情報統合能力を見落としていること。
  • ウクライナの「蜘蛛の巣」作戦やイスラエルの対イラン攻撃は、索敵と情報統合が現代戦の鍵であることを示す。
  • 高橋洋一は神谷の安全保障理解を「幼稚園レベル」と批判し、党首の資質に疑問を投げかける。
  • 神谷の専門性欠如は、参政党の信頼性と選挙での支持に影響を与える可能性がある。

参政党の神谷宗幣代表

参政党の神谷宗幣代表が打ち出す安全保障論は、日本の自主防衛を掲げ、在日米軍への依存を減らす大胆なビジョンだ。しかし、その主張には私のような一般人でも気づく致命的な穴がある。2025年参院選を前に、この問題は党の信頼性や神谷の指導力を揺さぶっている。以下で、その核心を明らかにする。

神谷の主張と参政党の政策:米軍依存からの脱却

2025年7月6日、ニコニコ動画の「ネット党首討論 参院選2025」で、神谷は日本の国防が在日米軍に頼りすぎていると問題視した。段階的な米軍撤退と日米地位協定の見直しを訴え、軍事費増強には慎重な姿勢を示した。高額な外国製武器購入を批判し、サイバー戦争対策、スパイ防止法、AIやドローンの活用を優先すべきだと力説した。特に、プロゲーマーを起用したドローン部隊の創設や国産兵器の開発を提案し、専守防衛を前提に内需拡大につながる軍拡なら支持すると述べた。

ヘグセス米国防長官(右)と中谷防衛相(3月30日)

この発言は、日米集団防衛体制を揺さぶるものと受け止められる可能性がある。参政党の改定憲法草案に「外国軍の駐留や基地設置を禁止する方針が明記されている」という情報は、2025年初頭の情報源(例:Wikipedia, 2025-07-03)やX上の投稿(例@kogurenob, 2025-07-07)で確認されていた。しかし、最新の調査(2025年7月9日時点)では、参政党の公式サイト(参政党公式サイト)や最新の政策カタログ(参政党政策カタログ)にこの記述は見当たらない。Xの投稿(例:@tohgafujita, 2025-07-07)によると、この方針が選挙戦での批判や外交上の現実的配慮により削除された可能性が指摘されている。ただし、削除の公式発表や理由は不明であり、党の公式見解を確認する必要がある。神谷の発言は引き続き米軍依存の脱却を訴えており、過去の草案と一致していた時期があったことは事実と見なせる。これは、日本の安全保障はもとより、アジア太平洋地域、いや世界の安全保障から言ってもあり得ない認識と言わざるを得ない。

神谷の盲点:ドローン偏重の落とし穴

神谷はドローンやAIの軍事活用を声高に叫ぶが、現代戦の核心である索敵能力(人的・電波など・公式資料からの情報収集能力)や情報統合能力には一切触れていない。私のような一般人でも、この見落としは明らかだ。ウクライナの「蜘蛛の巣」作戦は、ドローン攻撃の成功例だが、ウクライナ軍と米軍の高度な索敵能力と情報統合能力が支えた。

イスラエルによる対イラン攻撃も、精密な索敵と情報統合が鍵だった。敵を見つけられなければ、どんなドローンや兵器も無力だ。索敵能力があっても、情報が統合されなければ軍事力は機能しない。神谷がこの基本を見落としているのは、彼の安全保障論が表面的である証拠だ。ドローンは軍事的には、道具にすぎない。

専門家の批判と選挙への影響:信頼性の危機

高橋洋一チャンネル

経済学者で安全保障に詳しい高橋洋一氏は、YouTube動画(高橋洋一チャンネル)で、神谷の主張を「幼稚園レベル」「安全保障0点」「国際舞台に立てない」 「政党の代表どころか、議員としても相応しくない」と一刀両断した。高橋氏の批判は、私が感じた神谷の知識不足を裏付ける。安全保障は国家の命運を握る。党代表が基本を見誤るのは、党の信頼を揺さぶる。神谷のビジョンは情熱的だが、情熱だけでは足りない。私が気づくようなドローンの落とし穴を放置し、専門家からもその安全保障感を批判されるようでは、参政党の未来は危うい。日本は米国との同盟を基盤に安全保障を構築している。米軍撤退は地域の安定を崩しかねない。選挙戦で有権者がどう判断するか、注目が集まる。 【関連記事】

トランプの関税圧力と日本の参院選:日米貿易交渉の行方を握る自民党内の攻防 2025年7月8日
日本の未来は、参院選の結果と自民党内の力のせめぎ合いに懸かっている。トランプの強硬策にどう立ち向かうか。日本は今、試されている。

トランプ関税30~35%の衝撃:日本経済と参院選で自民党を襲う危機 2025年7月3日
日本の防衛費増への消極姿勢や中国寄りの経済協力が、トランプの不満を煽り、交渉を複雑化させる。歴史的傾向、現在の政治的脆弱性、選挙直前のタイミングを考えれば、支持率低下は確実だ。

トランプの「公平」に挑む英国の勝利と日本の危機:石破退陣でTPPを世界ルールに! 2025年7月2日
日本は関税の危機を跳ね返し、自由貿易の旗手として世界に立つ。トランプ氏の「公平」を逆手に取れ。日本にその力はある。

保守派も含めた有権者の政治への熱が、今回の選挙戦をさらに激化させるだろう。

2025年東京都議選の衝撃結果と参院選への影響 2025年6月23日
東京都議選の結果は、来るべき参院選への重要な示唆を与える。国会での与野党の力関係が拮抗すれば、より活発な政策議論が期待され、国民にとってより良い政治環境が整うだろう。

2024年4月30日火曜日

「想定よりはるかにいい結果」日本保守党の飯山陽氏を独占直撃 衆院東京15区補選で4位「私なりのやり方で活動続ける」―【私の論評】保守勢力の危機的状況と再生への道筋 - 東京15区補選の教訓

「想定よりはるかにいい結果」日本保守党の飯山陽氏を独占直撃 衆院東京15区補選で4位「私なりのやり方で活動続ける」

まとめ
  • 衆院東京15区補選で4位となったが、想定より良い結果だった
  • 日本保守党は結成以来初の国政選挙に挑戦し、2万票台を獲得
  • 出馬理由は国に恩返ししたいという思いから
  • 今後の政治活動については白紙だが、日本のために尽くす活動は続ける
  • 一部メディアは「自民不満層」に響いたと報じたが、日本のための政治・政策を広める活動を続ける

 衆院東京15区補選で4位となった日本保守党の新人・飯山陽氏が、想定よりよい結果だったと振り返った。

 日本保守党は結成以来初の国政選挙に挑戦し、飯山氏は2万票台を獲得した。出馬の理由は国に恩返ししたいという思いからだった。

 今後の政治活動については白紙だが、日本のために尽くす活動は続けていきたいと語った。一部メディアは「自民不満層」に響いたと報じたが、飯山氏は日本のための政治・政策を多くの人に知ってもらう活動を続けると述べた。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】保守勢力の危機的状況と再生への道筋 - 東京15区補選の教訓

まとめ
  • 立憲民主党が東京15区で当選を果たし、首都圏の野党支持層の根強さと自民党不在の影響が大きかった。
  • 一方で、日本維新の会の低迷や無所属候補への保守層支持の分散など、東京での保守勢力の組織力の脆弱さが露呈した。
  • 島根1区、長崎3区でも立憲民主党が勝利しており、地方での保守勢力の地力にも開きがある。
  • 投票率の低迷から、保守・野党双方で支持基盤拡大が課題であることがわかる。
  • 保守勢力は理想論に囚われず、現実的な政策提言と誠実な姿勢で「保守の要件」での結集と大同団結が必要不可欠である。
東京15区衆院補選で立憲民主党の新人の酒井氏が当選

東京15区の補欠選挙は、結果は以下です。

▽酒井菜摘(立民・新)当選 4万9476票

▽須藤元気(無所属・新)2万9669票

▽金澤結衣(維新・新)2万8461票

▽飯山陽(諸派・新)2万4264票

▽乙武洋匡(無所属・新)1万9655票

▽吉川里奈(参政・新)8639票

▽秋元司(無所属・元)8061票

▽福永活也(諸派・新)1410票

▽根本良輔(諸派・新)1110票

立憲民主党の新人の酒井氏が、日本維新の会の新人などほかの8人の候補を抑えて、初めての当選を果たしました。

東京15区では、立憲民主党が当選を果たし、首都圏における野党支持層の根強さと自民党不在の影響が大きかったことが露呈しました。一方、日本維新の会の低迷や、乙武氏への一定の保守層支持層による票の分散など、東京での保守層の組織力の脆弱さを示す結果となりました。

乙武氏を応援する小池百合子東京都知事

島根1区、長崎3区でも立憲民主党が勝利を収めており、地方においても保守的政策を打ち出す勢力の力は弱く、首都圏での足がかり確保が大きな課題です。

衆院東京15区の補欠選挙の最終的な投票率は40.70%でした。前回の衆院選(2021年)の投票率を18.03ポイント下回っています。今回の補欠選挙の最終的な投票率は40.70%でした。前回の衆院選(2021年)の投票率を18.03ポイント下回っています。そのため、今回の選挙では、無党派層の動きは少なく、立憲民主党の組織票が有利に働いたとみられます。

これに加えて、衆院東京15区、島根1区、長崎3区の3補選において、立憲民主党は有権者の支持を受けています。その具体的な要因は以下の通りです。

島根1区では、自民党と立憲民主党の与野党一騎打ちの構図となり、立憲民主党候補の亀井亜紀子氏が先行しています。亀井氏は立民支持層の9割、日本維新の会支持層の7割強、無党派層の4割強に浸透しているのが特徴です。

東京15区では、立憲民主党の酒井菜摘氏が一歩リードしており、他の候補者たちが続いています。酒井氏は立民支持層の7割を固めている状況にあったとされています。

長崎3区では、立憲民主党の山田勝彦氏が当選しました。山田氏は立民支持層の9割弱を固めているだけでなく、無党派層の5割弱、自民支持層の4割弱にも浸透しているのが特徴だったとされています。

これは、立憲民主党を支援・応援する勢力が互いに協調して選挙にあたったことが大きいのではないかと思います。

飯山あかり氏については、新党・保守党からの立候補で組織票がなく準備期間が短かったことを考えると、泡沫候補となってもおかしくなかったのが、2万4264票と一定の得票をしており、これはかなりの善戦だったと評価できます。これによって、日本保守党はその力を示すことができたと思われます。

ただし、飯山氏(日本保守党)と吉川氏(参政党)の得票合わせても 酒井氏の三分の二にもなっていません。これは、保守が大同団結しても届かないことを示しています。

こうした現実を踏まえれば、保守勢力が今後多くの国民の支持を得るには、理想論に囚われず、現実的かつ建設的な政策提言と誠実な姿勢が不可欠です。「保守の要件」で最低限の結集を果たし、「小異を残し大同に就く」自覚が肝心です。

憲法改正、金融財政政策、安全保証などの基本的な部分が同じであれば、統一まですることはできないでしょうが、協調はすべきです。

そうして、協調には妥協が必要です。ただし、妥協するにしても正しい妥協とそうでない妥協があります。

正しい妥協とは、原理原則を譲らず、目的や目標を明確に持ち続けながら、手段や方法を柔軟に変更することです。つまり、最終目標は変えずに、そこに至る過程で現実的な調整を行うことです。

一方、そうでない妥協とは、原理原則や目的、目標そのものを曖昧にしてしまい、最終的にはほとんど何も達成できなくなってしまうような妥協のことです。短期的な利益や都合のために、本来の目標から外れてしまう危険性があります。

ドラッカーは、正しい妥協こそが賢明な選択であり、リーダーには原理原則と最終目標を貫きながら、現実的な調整能力が求められると説いています。一方、目的や原則そのものを妥協してしまえば、本来達成すべきことから外れてしまいます。

つまり、正しい妥協とは、最終目標を変えずに、そこに至るプロセスを現実に合わせて柔軟に変更することであり、原理原則を守りながら、現実的に対応していくことが重要だと述べています。

ソロモン王の裁きは、正しい妥協の重要性を示している

保守勢は、失政の原因と対策を分かりやすく示し、各団体が調整・調和を図り、投票への機運を高める世論形成に取り組む必要があります。党派の違いを乗り越え、理想主義的で非現実的な政治は、大きな危機を招くことを主張し、有権者の無関心と政治不信を払拭し、積極的な関心と参加を促さねばなりません。

欧州では保守・右翼勢力が一定の支持を得て勢力を拡大している傾向がある一方で、日本の保守勢力は足元が揺らぎ、そうした欧州の潮流とは方向性が異なっていることを考えれば、日本の保守陣営が大同団結し協調し、明確なメッセージと施策を国民に示すことが急務です。

そうでなければ、保守勢力は一層後退する恐れがあります。中長期的な視点で、首都圏を足がかりに、地方での勢力回復とともに、地道な支持基盤の組織作りと有権者への訴求を続けることが、全国的な保守勢力の再生につながるはずです。

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2025年9月2日火曜日

伝統を守る改革か、世襲に縛られる衰退か――日英の明暗


まとめ
  • 英国の最近の政治改革は、爵位を理由に自動的に議席を継承する制度を廃止したもので、親が議員だから政治家になれないという差別的制度ではない。
  • 貴族院は13世紀以来、爵位で議席を得られる伝統が21世紀まで存続していたことは驚きであり、今回の改革はその歴史を断ち切りつつ議会制度を現代化した。
  • ドラッカーの「改革の原理としての保守主義」は未来志向と現実主義を基盤にし、理念先行の改革を戒める思想である。
  • 英国は貴族院改革で成功した一方、移民・エネルギー政策では失敗を重ねた。この対比が「改革哲学の重要性」を示す。
  • 石破茂氏は典型的エリート政治家であり、その低迷は日本政治の構造的停滞を象徴している。英国の経験は日本に大きな教訓を与える。
🔳英国貴族院改革の本質と驚きの歴史的背景
 
英国政治に激震が走った。今年、政府は新たな世襲貴族の任命を全面的に禁止し、議員退職制度を導入するという歴史的改革に踏み切った。ただし、この「世襲貴族任命禁止」は、親が議員であるからといって政治家になる権利を奪うものではない。これはあくまで、爵位を理由に自動的に上院議席を継承する特権を廃止することを意味し、血統主義を改め、民主主義を強化するための改革である。

英国貴族院

驚くべきは、この特権的慣習が長らく英国に根付いていたことだ。13世紀に王の諮問機関として始まった貴族院は、長らく貴族と聖職者の支配の象徴であり、爵位を持つ者が選挙を経ずに議席を得る制度は、21世紀に入っても一部で存続していた。この「自動議席継承」は1999年の改革でも92議席が残され、制度疲労の象徴となっていたが、今回ついに終止符が打たれた。

重要なのは、この改革が伝統を破壊せず、議会の歴史的価値を尊重した点である。貴族院は英国政治文化の基盤であり、熟議を重んじる上院の機能を保ちつつ、特権を撤廃した。この決断は、歴史を重んじながら時代に合わせて制度を改める英国の強さを象徴するものであり、伝統と改革の調和を体現している。

🔳ドラッカーが説く「改革の原理」と英国政治の思想的成熟
 

ピーター・ドラッカーは『産業人の未来』で、真に成功する改革は「保守主義」の原理に従うべきだと断言した。ここでの保守主義は過去を美化する懐古主義ではない。むしろ未来を見据え、社会を健全に機能させ続けるための哲学だ。ドラッカーは、大設計や万能薬に頼る改革は必ず失敗し、社会を混乱させると警告し、改革は理想の青写真を描くことではなく、現実の課題を一つずつ解決する地道な作業であると説いた。そして、そのためには歴史の中で実証済みの制度や慣行を最大限活用することが欠かせないと指摘した。

英国の貴族院改革は、この思想を忠実に反映している。特権的な制度を見直しつつも、貴族院という歴史の象徴を廃止することはせず、漸進的な改革によって社会の安定と信頼を保った。英国政治には、まさにドラッカーが説いた「改革の原理としての保守主義」が息づいている。一方で、英国の移民政策やエネルギー政策は理念先行の急進的改革が裏目に出て社会の分断やエネルギー危機を招き、哲学なき改革がいかに危険かを示す教訓となった。英国にも政治的混乱はあるが、それにしても今の日本ほど酷くはない。選挙で負けた首相が居座ったことは一度もない。英国の成功と失敗は、改革の命運を分けるのは思想と原理であることを物語っている。

🔳日本政治の世襲構造と石破茂の象徴性

石破茂氏が衆院選に初当選した時のテレビのインタビュー

日本政治は世襲議員の比率が高く、衆議院議員の約3割、自民党内では約4割が世襲出身である。選挙基盤や後援会を受け継ぐ仕組みは権力の固定化を生み、政治文化を硬直化させてきた。石破茂首相はその典型例である。父・石破二朗氏(元自治大臣・鳥取県知事)の地盤を継ぎ、慶應義塾大学法学部を卒業後、銀行勤務を経て政界に進出した。強固な慶應三田会ネットワークを背景に、若くから名門の文化と人脈の中で育った典型的エリート政治家だ。

高校時代は体育会ゴルフ部に所属し、多くの部員が大学でもゴルフ部に進む中で「スコア100を切ったことはない」と語ったエピソードも残る。スポーツの実績は平凡でも、名門校文化の中で築いた人脈や学歴・家系・組織力の三拍子は、まさにエリート政治家の典型だ。しかし、石破氏の低迷する支持率は旧来型政治の求心力が失われたことを示し、エリートモデルの限界を浮き彫りにしている。

英国は貴族院改革で伝統を尊重しながら制度疲労を取り除き、漸進改革によって信頼を築いた。一方で移民やエネルギー政策では理念先行の失敗が社会を混乱させた。この対比は「改革には哲学が必要」というドラッカーの思想を裏付ける。日本は世襲と旧派閥のしがらみで停滞しており、石破氏は旧来型政治の象徴である。英国の経験は「伝統を守りながら変わる」というモデルの重要性を日本に示すものである。

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安倍暗殺から始まった日本政治の漂流──石破政権の暴走と保守再結集への狼煙 2025年8月2日
安倍晋三元首相暗殺後の日本政治の迷走と石破政権の動向を分析し、保守再結集の可能性を探る。

参政党の急躍進と日本保守党の台頭:2025年参院選で保守層の選択肢が激変 2025年7月
2025年
参院選で参政党や日本保守党が台頭し、保守層の選択肢が大きく変化した背景を詳述。

石破vs保守本流:自民党を揺るがす構造的党内抗争と参院選の衝撃シナリオ 2025年7月
自民党内部の権力闘争と参院選の結果が党の将来に与える影響を読み解く。

保守分裂の危機:トランプ敗北から日本保守党の対立まで、外部勢力が狙う日本の未来 2025年6月6日
米国の政治変動が日本保守陣営に与える影響や分裂リスクを検証。

夫婦別姓反対!日本の家族と文化を守る保守派の闘い 2025年6月7日
夫婦別姓議論を通して日本の家族制度や文化を守る保守派の立場を明確に示す。

2024年10月30日水曜日

【解説】首相は誰に? 1回目の投票で過半数「233議席」獲得へ…国会議員の間に浮上する“3つの案”とは?―【私の論評】4つ目の案自民党総裁選の可能性とは?石破総裁辞任と高市氏新総裁待望論の背景と展望

【解説】首相は誰に? 1回目の投票で過半数「233議席」獲得へ…国会議員の間に浮上する“3つの案”とは

まとめ
  • 特別国会の首相指名選挙に向け、過半数を目指す3つの案が検討されている。
  • 1つ目は「与党+一本釣り」で、自民・公明党が野党無所属議員を取り込み、石破首相続投を狙う案。
  • 2つ目は「野党大連合」で、複数野党が協力して立憲民主党の野田氏を首相に推す案。
  • 3つ目は「与党+国民民主党」で、国民民主党の玉木氏を首相に据える案が浮上している。
  • 現段階での実現可能性は不明であり、決選投票に持ち込まれる可能性が高い。
日テレの報道

 来る特別国会での首相指名選挙をめぐり、与党が過半数を割る中で、政界に緊張が走っていることが、日テレニューで報道された。日テレでは、11月11日に召集される見込みの特別国会で行われる首相指名選挙において、1回目の投票から過半数の議席を獲得するための3つの案が浮上している。

 第一の案は「与党+一本釣り」で石破首相の続投を図るものだ。自民党と公明党の議席に加え、非公認や無所属の議員、さらには野党議員に個別に働きかけて233議席の確保を目指すというものだ。

 第二の案は「野党の大連合」で、立憲民主党を中心に維新、国民民主党、れいわ新選組、共産党、参政党、社民党といった野党勢力を結集させ、235議席を確保するというものだ。この場合、最大野党である立憲民主党の野田代表が首相に就任する可能性が高い。

 そして第三の案として、「与党+国民民主党」で国民民主党の玉木代表を首相に据えるという、いわゆる「ウルトラC」的な案も密かに浮上している。この案が実現すれば243議席となり、過半数を確保できる。しかし、玉木代表は現在、連立入りを否定しており、この提案を受け入れるかどうかは「究極の選択」となるだろう。

 これらの案は、1994年に自民党が長年対立してきた社会党と手を組み、村山富市氏を首相に担ぎ上げた過去の例を想起させる。しかし、現時点ではいずれの案も実現可能性は不確実でだ。そのため、各党がノーガードで首相指名選挙に臨み、結果として決選投票に持ち込まれる可能性が高い。

 この状況下で、国民民主党の玉木代表の動向が注目されている。玉木代表は現在、石破内閣との連立や閣僚就任を否定しているが、首相の座を提示された場合、政策実現の絶好の機会と批判を浴びるリスクの間で難しい判断を迫られることになるだろう。

 最終的な結果は依然として不透明であり、特別国会までの間に様々な政治的駆け引きや交渉が行われると予想される。この首相指名選挙の行方は、日本の政治の今後を大きく左右する可能性があり、国民の関心も高まっている。政治家たちの決断と、それに伴う政局の展開が注目されるところだ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。


【私の論評】4つ目の案
自民党総裁選の可能性とは?石破総裁辞任と高市氏新総裁待望論の背景と展望

まとめ
  • 自民党内の不満が増大し、石破総裁の辞任を求める声が強まっている。
  • 党内保守派は、石破総裁の辞任を求めるため、両院議員総会を開催するのは現実的な案である。
  • 過去の敗北時には、総裁が責任を取って辞任するのが自民党の慣例である。
  • 石破氏辞任後に、総裁選が行われれば、党内保守層の支持を得る高市氏が有力候補として浮上する可能性が高い。
  • 高市氏が総裁になれば、自民党内外の支持基盤強化や、経済・外交・安全保障政策の推進につながる可能性が高まる。

過去の自民党両議院総会

上の記事の三つの案以外に、第四の案が存在する。それは自民党が両院議員総会を開き、石破総裁を辞任に追い込むというものだ。これは単なる勢力争いにとどまらず、党内の存亡をかけた試練である。総裁辞任後には総裁選が行われ、新たな総裁が選出される。その後、首班指名選挙に臨む形になるが、この案はマスコミや自民党リベラル派議員が最も忌避される案だろう。

だが、彼らがどう考えようと、党内の保守派や選挙戦略上の危機感を持つ議員たちにとって、これこそが「選択肢の一つ」として現実味を帯びつつあるのである。

そもそも、石破総裁が辞任を表明していないこと自体が、党内の反発と不満を増幅させている。自民党の歴史を振り返っても、大敗を喫した総裁が責任を取って辞任することは、ある種の伝統であり、例外はない。

2012年、衆院選で民主党が歴史的な敗北を喫した際、当時の代表であった野田佳彦氏は潔く辞任した。この時の潔い決断は、政治の世界で責任を取るという厳格な姿勢を象徴していた。

野田佳彦氏

同じく自民党においても2007年、参院選で大敗を喫した安倍晋三総理が辞任し、その直後には福田康夫総理が支持率低迷を受けて辞任を決意している。また、2021年においては、菅義偉総理が衆院選で自民党の議席を大幅に減少させたことを受け、事実上の辞任を表明。岸田総理も次期総裁選に出馬しないと発表し、総裁交代の波が続いている。

こうした過去の流れを見れば、今回もまた、党内で石破総裁の辞任を求める声が高まるのは当然の帰結である。

さらに、2025年の参院選が迫る中、特に参院議員たちは石破総裁のもとで戦うことに不安を抱いている。国民の間では支持率低迷に対する不満が根強く、このままでは選挙戦で大敗するリスクがあるため、新たなリーダーシップを求める声が党内で強まっているのだ。

両院議員総会は、こうした危機的状況に対応するために、党内の重要な意思決定の場であり、必要に応じて臨時に開催されることもある。過去の選挙結果を受けて緊急の対応を行い、迅速に方向性を定める場としても機能してきた。万が一、今回石破総裁辞任が両院議員総会で決議されるならば、それは前例のない一大事であり、党史に刻まれる出来事となろう。

仮に総裁選が行われるとすれば、前回次点であった高市氏が有力候補として浮上するが、彼女の勝利が確実であるとは言えない。しかし、もし高市氏が総裁となれば、自民党の内外での支持基盤が強化される可能性が高い。

高市氏は今年の総裁選においても第一回投票で多くの票を得ており、党内の保守層からは強い支持を受けている。また、高市氏は自民党初の女性総裁候補として女性の政治参加を象徴する存在である。これにより、女性有権者の支持を集めるのみならず、党内における女性活躍の推進という課題にも応えられるという利点があるのだ。


高市氏は経済政策においても、積極財政と金融緩和を基盤とした成長戦略が打ち出されている。経済の低迷に苦しむ現状において、こうした政策は日本経済の復活の糸口となるだろう。実際、高市氏は経済政策において「デフレからの脱却」を掲げており、そのための具体策を提示してきた。

たとえば、財政支出の拡大と同時に地域経済の活性化に力を入れることで、都市と地方の格差解消にもつながるとされる。加えて、彼女の外交・安全保障政策も堅実であり、台湾有事や北朝鮮の脅威に対する対策が盛り込まれている。これらの対策は、アジア地域の安全保障情勢を踏まえたものであり、日米同盟を基軸とした防衛強化にも資するものである。このような高市氏の政策の堅実さは、国民の安全を第一に考えたものであり、幅広い層からの支持を集めやすい。

さらに、高市氏のリーダーシップの下であれば、国民民主党との連携もスムーズに進む可能性がある。国民民主党もまた積極財政を掲げており、経済政策において方向性が一致する部分が多い。これにより、連立政権を組む際にも、両党が協調して政策実行に向かうことが期待される。

高市氏が新総裁となることで、自民党内の結束が強化されるのみならず、新たな支持層の開拓にもつながる。自民党は今、大きな転機を迎えているが、この歴史的な場面で、高市氏というリーダーを迎えることで、真の変革を果たす機会を得ることができるのだ。

結論として、高市氏を総裁に迎えることは、経済再生から外交・安全保障の安定まで、多岐にわたる政策課題に対応する上で最も効果的である。経済、外交、安全保障において確かなビジョンと実行力を持つ彼女こそが、党内外から信頼され、次世代のリーダーとして国を牽引するにふさわしい存在であろう。

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