2011年5月17日火曜日

中国の高速鉄道には重要な軍事的意図が隠されている―米誌―【私の論評】敵に塩をくれてやっただけではなく、軍事力の増強にも手をかしている平和ボケ日本!!

中国の高速鉄道には重要な軍事的意図が隠されている―米誌

中国高速鉄道と女性乗務員
14日、米ジェイムズタウン財団が発行する雑誌チャイナ・ブリーフは、中国人民解放軍総後勤部・軍事交通運輸部の話として、中国の1000を超える鉄道駅には軍事輸送施設が備わっていると報じた。写真は江蘇省蘇州市にある崑山南駅。

2011年5月14日、米ジェイムズタウン財団が発行する雑誌チャイナ・ブリーフは、中国人民解放軍総後勤部・軍事交通運輸部の話として、中国の1000を超える鉄道駅には軍事輸送施設が備わっていると報じた。以下はその概略。

国際社会における中国の台頭に伴い、中国の軍事力も大幅に増強。中国指導者たちの理想は日増しに膨らみ、さらに積極的に自国の利益保護を追求するようになった。中国が鉄道網の整備に全力を挙げているのも、人民解放軍の移動能力を向上させるため。それらはさらに周辺地域にまで延伸しており、米国を始めとする西側諸国の同地域における利益に重大な影響を及ぼしている。

中国は現在、チベットとネパールに続く高速鉄道路線を開通させており、さらにラオス、シンガポール、カンボジア、ベトナム、タイ、ミャンマーにも伸ばす予定。また、昨年11月には新疆ウイグル自治区−キルギスタン−タジキスタン−アフガニスタン−イランを結ぶ路線を建設することで各国と合意。このほか、イラク−シリア−トルコ−欧州を結ぶ路線の開通も計画している。

これらは国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が提唱するアジア横断鉄道(TAR)の理念に基づいたもの。これは中東を中枢としたアジア間およびアジアと欧州を結ぶ鉄道路線網である。こうした鉄道網の充実に加え486.1キロという世界最高速度が、中国の遠征能力を格段に向上させるだろう。現代版の「シルクロード」が米国および西側諸国の脅威になることは間違いない。(翻訳・編集/NN)

【私の論評】わざわざ当たり前のことを発表する米誌の意図は?

ドイツ列車砲ドーラ 右から二番目がヒトラー、右が軍需大臣のアルベルト・シュペーア
鉄道が、軍事目的のためにも存在することは、世界の常識です。駅付近に、軍事施設をおくおかないは別にして、それは、昔からの常識です。ちなみに、上の写真は、第二次世界大戦中のドイツの列車砲「ドーラ」です。列車砲の近くに立っている兵隊との対比でみると、その大きさが容易に理解できると思います。

日本でも、昔から、兵隊や、戦車、車両、軍事物資など鉄道で輸送することは昔から普通に行われています。下の写真は、自衛隊の戦車を鉄道で運んでいる様子です。戦車など、重いですから、戦車が自走して、離れた目的地に行くよりも、こうし運んだ方が、燃料もあまりかからず、合理的です。それに、新幹線だって、いざというときには、兵隊を素早く移動するためにつかうことも当然のことです。

最近は、自衛隊員を鉄道で運ぶことはあまりないようですが、私が子供ときは、列車に自衛隊員が多数乗り込んで移動していることもありました。そんなときに、自衛隊員に、「どこに行くのですか」と質問しても、応えてはくれませんでした。やはり、いくら訓練とはいえ、軍事的な機密事項だったからでしょう。

ただし、鉄道輸送には、欠点もあります。それは、一度爆撃、特に複数個所や、要所を爆撃されれば、復旧に時間がかなりかかるということです。だから、戦争になれば、真っ先に爆撃されるのは、鉄道網です。



とにかく、鉄道は、設立当初から軍事目的とは、密接な関係がありました。それでは、なぜ、米国誌がわざわざ、この当たり前を掲載したのか、その意図を探ってみましょう。

それは、やはり、上の文書にも書かれてあるとおり、「米国を始めとする西側諸国の同地域における利益に重大な影響を及ぼしている」のであり、やはり、米国としては、軍事的脅威を煽っておく必要があるためです。

軍事的脅威とはいっても、すぐ戦争になるとかならないとかという意味ではないです。中国による軍事的な脅威が高まれば、アメリカなどは、中国の近隣にも軍隊を派遣しなければならず、軍事費が膨大になるおそれがあるということで、そうならないためにも、脅威があることを明示しておき、近隣諸国に警告を発信するという意味があるのだと思います。

おおかたの日本人は、平和ボケでこのような見方はできなくなっているのではないかと思います。最近、アメリカの中国に対する態度は随分かわってきています。将来の市場として、大きな魅力があるのでしょうが、最近では、中国の軍事力が以前よりは確実に伸びてきています。

しかし、少なくとも、中国の軍事力の実力からいって、10年以上もしなければ、アメリカと局地戦すら満足に戦うことはできないでしょう。空母を導入したとしても、運用までに最低5年、最長で10年はかかるものであり、全く軍事力としてはアメリカには太刀打ちできないです。いまの水準では、日本にも勝てません。

しかし、そうはいっても、中国の隣国といえば、ロシア、インド、日本などをのぞけば、軍事的弱小国ばかりです。特に、中央アジアは別として、東、東南アジアなどでは、日本くらいしか、抑止力になる国はありません。

しかし、その当の日本ですが、特に軍事力を含め、様々な分野で、弱小化しつつあります。こんな、有様では、いつ中国が、この隙に乗じて、東アジア、東南アジアに対して、覇権を強めてくるかわかりません。実際、戦争をすれば、赤子の手をひねるように簡単なことなのですが、実際そうしたり、あるいはそうならないためには、膨大な軍事費を必要とします。イラク、アフガンなどに派兵し、すでに膨大な軍事費を投入しているアメリカは、そのようなことをなるべく避けたいのです。

だからこそ、隣接諸国に対して、警告を発して、できれば、隣接諸国に軍事的な備えをしてもらいたいのです。そうして、はっきり言ってしまえば、アメリカは、日本にその役割をになって欲しいのです。しかし、平和ボケ日本人の多くは、尖閣列島の問題などがあっても、まだ、そのことに気づかないようです。

アメリカ議会では、日本が軍事的備えをする最大の障害ともなっている、日本国憲法につき、改憲に賛成するほうが、多数派になっています。そのことは、以前のこのブログにも掲載しました。当の日本人だけか、そのことに未だ鈍感なようです。

なお、中国の高速鉄道は、日本の技術を盗用していることはこのブログにも掲載しました。日本人は、こうした技術の盗用に関しては気がつくようですが、当たり前の真ん中の、鉄道の軍事利用にまでは、頭が回らないのだと思います。これでは、まるで、敵に塩をくれてやっただけではなく、軍事力の増強にも手をかしているようなものです。平和ボケ日本、ここにきわまれりという所だと思います。米誌は、こうしたことも、やんわりと、指摘するという目論見もあったのかもしれません。

【関連記事】

【中国人船長釈放】インド、“中国脅威論”を裏付ける―世界最大の民主国家インドはなぜアメリカ公認核保有国になることが出来たのか?インドの智慧を見習おう!!

温首相、政治改革に言及 内部分裂激化の証しか―恥知らずの中国は尖閣問題で日本のご機嫌を損ねると破綻する?

中国巨大な壁にぶちあたる【China Hits A Great Wall】―この記事の内容は、このブログでも再三掲載したことであり驚くには値しない!!

F22、生産中止へ=下院も可決、日本導入困難に―F22は、日本の塗装技術がなければつくれなかった!!


2 件のコメント:

ここノせ さんのコメント...

ども ども、娯楽ニュースの ここノせ です。

「中国の高速鉄道には重要な軍事的意図が隠されている」でコメントありがとうございました。

「平和ボケ日本!!」

確かにそうですね。

だけどそれって・・・・・・・しょうがなくね?

日本は戦後半世紀以上戦争なんてなかったですから、平和ボケになってもしょうがないと思いますけどね。

・・・というか。

あの大戦で負けて、戦争に対して大きな傷を負っただけでなく、その後商売に力を入れて気づいたんでしょう。

「戦争やって領土奪うより、商売をやったほうが安全に利益を獲得できるんじゃね?」と、そんな当たり前なことを。

そして半世紀以上も軍備そっちのけで商売にチカラをいれてここまでこれたんですから、今の日本の姿勢を全て否定するのはできないしなぁ・・。

だから平和ボケな日本にとっては技術は商品という感覚で軍事転用とかそっちのけなんでしょうね。

どうにかならんかなと自分でもそう思うけど、やっぱり先の不安より目の前のお金に目がいっちゃうんですね~。

あっ、あとそれとアメリカさんの思惑よくそこまでわかりましたね。

自分はお恥ずかしながらそこまで見抜けませんでした。

すごいですね。

しかし中国の抑止力として日本がその役割を担って欲しいなんて・・・・ねぇ。

山田 豊 さんのコメント...

ここノせ 様 まさに、おっしゃる通りです。アメリカにより、平和ボケにされてきた日本です。
しかし、アメリカも、日本がこのままさらに、日本が弱体化していけば、自国にとっても不利益になると考えているということです。
自分のことは、自分で守るという当たり前のこと、日本もそろそろやらなければならない時期にさしかかっているということです。
いつまでも、外国の軍隊が駐留しているという事自体が異常なことです。
憲法も変えて、何とかしなければならなくなる時期が確実に来ることでしょう。

財政審「コスト重視」の噴飯 高橋洋一氏が能登復興遅れ激白 補正予算編成せず 過疎地の財政支出「ムダと認識」で邪推も―【私の論評】災害対策の予算措置は補正予算が最適!予備費では遅れる

高橋洋一「日本の解き方」 財政審「コスト重視」の噴飯 高橋洋一氏が能登復興遅れ激白 補正予算編成せず 過疎地の財政支出「ムダと認識」で邪推も 高橋洋一 能登半島地震の復興が、従来の復興に比較して遅れている。 野口健氏が「東京と現地の温度差」を指摘し、被災者に「見捨てられた」感があ...