2015.06.22 16:00
長谷川幸洋氏 |
安全保障法制の見直しをめぐる論議はなぜ迷走しているのか。憲法学者が違憲と断じたと言っても、それは安倍晋三政権が昨年7月に安保法制見直しの閣議決定をしたときから出ていた話だ。国民から見たら、同じ話の蒸し返しでまったくつまらない。
そこで、今回はもっと根本的な話を書く。日本は集団的自衛権を認めてこなかったのか。そんなことはない。実はとっくの昔から認めていた。どういうことかといえば、そもそも日米安保条約は集団的自衛権を前提にしているのだ。最初に結ばれた1951年の条約前文にこうある。
「日本は主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有し、国連憲章はすべての国が個別的および集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。これらの権利の行使として、日本は日本国内に米国が軍隊を維持することを希望する(要約)」
1960年に改定された現在の条約も同様に前文で、日米両国が「個別的および集団的自衛の固有の権利」を確認したうえで、日本が米国の基地使用を認めている。
つまり、日本は米国に基地を使わせることで国を守ってもらっている。これは集団的自衛の構造そのものだ。条約を改定した岸信介元首相は国会で「他国に基地を貸して自国のそれと協同して自国を守るようなことは従来、集団的自衛権として解釈されており、日本として持っている」と述べている。
それどころか、米国は日本だけでなく極東(韓国、台湾、フィリピン)も守っている。朝鮮半島危機が起きれば、米軍は韓国防衛のために沖縄や横田の基地から出撃する。けっして遠いハワイやグアムからではない。
そのとき日本は米国と事前協議するが、あくまで建前にすぎない。2010年に暴露された外務省の密約文書によれば、米国は日本と事前協議しなくても韓国に出撃できる約束になっていた。当時は民主党政権(*注)だったから、民主党は事情を知っているはずだ。
【*注:鳩山内閣が設置した「いわゆる『密約』問題に関する有識者委員会」が2010年3月に調査報告書を公表した。それまで公然の秘密だった「日米密約」の存在を政府が認めた】
もしも「米国が日本防衛に集団的自衛権を発動するのは勝手だが、日本の集団的自衛権行使は違憲だから、極東防衛に日本の基地は使わせない」と日本が言ったら、どうなるか。
それだと安保条約は成立しなかった。沖縄だって日本に戻ってこなかった。いま、それを言い出したらどうなるか。極東防衛を書き込んだ条約第6条が違憲であり間違い、という話になる。
同盟破棄を唱える日本共産党はともかく、民主党は「安保条約は間違いだから改定すべきだ」と言うつもりなのか。それは言えないだろう。
民主党だって、実は米軍への基地提供によって日本と極東を守る集団的自衛体制に同意しているからだ。自らそういう事情は説明しないだろうが。そんな論点を詰めていったら、党が分裂してしまう。
以上が集団的自衛権の核心である。野党は米軍基地と集団的自衛権の本質をめぐる議論から逃げ、政府与党も説明を避けてきた。深入りすると、野党は集団的自衛権を容認せざるをえず対案を提示できない。一方、政府与党も国会紛糾を避けたいからだ。
結局、いまの混乱は政治家が集団的自衛権を前提にした日米同盟の本質を語らず、その場しのぎに終始してきたツケが回ってきたようなものだ。それでもまだ憲法がどうのこうの、と憲法学者に責任を押し付けている。
まったくばかばかしい。中国、北朝鮮の脅威が現実になる中、平和ボケをいつまで続けるつもりなのか。
■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)
【私の論評】民主党が今更異議を唱えるのはまったく奇異であるこれだけの理由(゚д゚)!
上の記事で、長谷川氏が指摘している日米安保条約は集団的自衛権を前提としているのは周知の事実です。だからこそ、長谷川氏は、日米安保破棄唱える共産党以外は集団的自衛権にNOとは言えないとしているのです。
さらに長谷川氏は、「2010年に暴露された外務省の密約文書によれば、米国は日本と事前協議しなくても韓国に出撃できる約束になっていた。当時は民主党政権(*注)だったから、民主党は事情を知っているはずだ」とも述べています。
しかし、民主党が集団的自衛権にNOと言えないはずであるとの論拠は他にもあります。これについては、枝野氏が二年前に放った発言が物議を醸しています。
その動画を以下に掲載します。
詳細は、この動画をご覧いただくものとして、以下に、動画の発言の内容を一部掲載します。
それについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、過去に民主党が集団的自衛権に関して、認めていたと判断できる部分のみを引用します。
記憶喪失になったのか、反対のための反対を繰り返しているだけとしか思えません。
上の写真は、イスラエルのビーチの写真です。イスラエルでは、ビーチでも武器を携帯して歩く女兵士は珍しくはありません。ビーチでも何かあれば、即応できるようにしているのです。
無論、武器を使うようなことはないにこしたことはありません。しかし、そのような危険の可能性もありえるとすれば、このようなこともするのです。
日本ではあまりにも長い間平和だったので、平和ボケしてしまい、国会でも安全保障に関するまともな議論がされておらず、野党は集団的自衛権に異議を唱えるばかりで国民を混乱させるばかりです。マスコミもこの問題に関しては、政府がHPなどで詳しく説明しているのにもかかわらず、ほとんどその内容は無視して、的外れの報道を繰り返すばかりです。
安保法制審議のために、国会は今まで例をみないほどに延長されることが決まったようです。この機会に、野党側もただ反対しているだけではなく、野党側としては、安全保障をどのように考えているのか、国民の前に明示すべきと思います。自らは、ほとんど考えを示さず、単に安倍政権を非難するために、重箱の隅をつつくような個別具体的な質問をくりかえしたり、合憲だ違憲だなどと本来司法が下すべき判断を国会で繰り返しても意味がありません。反対するなら、自らの党の安全保障の基本的な考え方を示した上で反対してもらいたいものです。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
【関連記事】
民主・長島氏が党批判 労組依存、何でも反対路線…「民主は目を覚まさなければ消えゆくのみ」―【私の論評】橋下氏も三行半をつきつけた民主党というボロ船は、座して沈没を待つだけ(゚д゚)!
【関連図書】
1:45~
https://www.youtube.com/watch?v=_Jev3GbdbkY 西修(参考人、憲法学者)
「(略)4、集団的自衛権は個別的自衛権と共に主権国家の持つ固有の権利、即ち自然権である点。国連憲章51条であります。不可分であります。
そこで、枝野幸男、現在民主党幹事長は次のように仰っておられます。
『そもそもこうして個別的自衛権か集団的自衛権かという二元論で語ること自体おかしな話です。そんな議論を行っているのは日本の政治家や学者くらいでしょう。』
私はもう個別的自衛権とか集団的自衛権とか区別して論ずるのはもうお止めになっていただきたい。
枝野幹事長のこの言葉、非常に強く重く感じるわけであります。
敢えてこれについて言うならば、岡田党首は党首討論において最後に『私たちは個別的自衛権はやります!集団的自衛権はいりません!』確かそんな風に仰っていらしたと思います。
どうしてこれ分けるんでしょうか。どうやって分けるんでしょうか。またやることにどんな意味があるんでしょうか。
私はあの言葉を聞いてこの枝野幹事長の言葉を思い出した次第であります。この点を是非ご議論頂きたい。こんな風に思うわけであります。(略)」
0:13~
https://www.youtube.com/watch?v=F148WOYQoX8 平沢勝栄
「(略)西先生にちょっとお聞きしたいんですけど、西先生、枝野民主党幹事長のご発言に言及されました。
資料を読ませていただきますと、枝野幹事長は『そもそもこうして個別的自衛権か集団的自衛権かという二元論で語ること自体おかしな話です。そんな議論を行っているのは日本の政治家や学者くらいでしょう。』と。
なかなか立派なこと言っておられるなと思いましたけども、そこで西先生、参考人にお伺いいたしたいと思いますけど、これは文藝春秋の一昨年のやつに出たということ、でしょうね。ですからつい最近のお話ですよね?
ということを確認させていただきたいというのと、もう一つはこういったお考えについて先生はどうお考えになられたか。それをちょっとお聞きさせてください。」枝野氏がこのようなことを語っていたというのですから、民主党の集団的自衛権反対というのは無理があります。しかし、それだけではありません。民主党は過去に、集団的自衛権を認める発言をしていました。
(続く)
それについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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詳細は、この記事をご覧いただくものとして、過去に民主党が集団的自衛権に関して、認めていたと判断できる部分のみを引用します。
実は民主党は過去おいては、集団的自衛権を認めるべきだと主張していました。
2010年8月鳩山内閣でまとめた「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会の報告書」で集団的自衛権を行使できないとするこれまでの憲法解釈を批判しまた。
2012年12月野田内閣「国家戦略会議」の報告書で「集団的自衛権の見直しを図るべきだ」と提言していました。
菅内閣では仙谷官房長官が「内閣が責任を持って憲法解釈変更を国民に提示すべきだ」と発言していました。
現在の枝野氏は安保法制改正に現在では、大反対していますが、民主党内閣閣僚のときには「内閣法制局の意見は大事だが判断するのは担当大臣の私であり、最終的には閣議だ」と述べています。
過去の自民党政権で2回。民主党政権で2回。計4回作成された有識者会議の報告書はいずれも政府の憲法解釈変更を提言しています。
一般には、安保法制改正は、安倍首相が突然言い出したように思われていますが、実は麻生内閣でも民主党内閣でも集団的自衛権は認めるべきだとする方向でした。
民主党は野党になったとたんに、これまで主張していたことと正反対のことを言い出したのです。こんなことからも、 民主党が今更集団的自衛権に関して、異議を唱えるのはまったく奇異としかいいようがありません。
記憶喪失になったのか、反対のための反対を繰り返しているだけとしか思えません。
無論、武器を使うようなことはないにこしたことはありません。しかし、そのような危険の可能性もありえるとすれば、このようなこともするのです。
日本ではあまりにも長い間平和だったので、平和ボケしてしまい、国会でも安全保障に関するまともな議論がされておらず、野党は集団的自衛権に異議を唱えるばかりで国民を混乱させるばかりです。マスコミもこの問題に関しては、政府がHPなどで詳しく説明しているのにもかかわらず、ほとんどその内容は無視して、的外れの報道を繰り返すばかりです。
安保法制審議のために、国会は今まで例をみないほどに延長されることが決まったようです。この機会に、野党側もただ反対しているだけではなく、野党側としては、安全保障をどのように考えているのか、国民の前に明示すべきと思います。自らは、ほとんど考えを示さず、単に安倍政権を非難するために、重箱の隅をつつくような個別具体的な質問をくりかえしたり、合憲だ違憲だなどと本来司法が下すべき判断を国会で繰り返しても意味がありません。反対するなら、自らの党の安全保障の基本的な考え方を示した上で反対してもらいたいものです。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
【関連記事】
民主・長島氏が党批判 労組依存、何でも反対路線…「民主は目を覚まさなければ消えゆくのみ」―【私の論評】橋下氏も三行半をつきつけた民主党というボロ船は、座して沈没を待つだけ(゚д゚)!
【関連図書】
民主党は、結局のところ自民党のコピーのような政党であり、コピーした分だけ劣化しています。それは、民主党政権によって、白日のもとにさらされたのですが、喉元すぎれば熱さを忘れの格言の通り、そのことが忘れられています。
そのことを思い出していただくための書籍を以下にチョイスしました。
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