2017年2月14日火曜日

【WSJ社説】アジア外交で勝利するトランプ氏―【私の論評】日本のリベラル・左派、左翼の本来の使命は「政権・権力と戦うこと」とではない(゚д゚)!



 ドナルド・トランプ米大統領はここ数日、アジア諸国との外交活動に忙しかった。9日には中国の習近平国家主席と就任後初の電話会談。翌10日に安倍晋三首相とホワイトハウスで日米首脳会談を行い、続く週末には首相と27ホールのゴルフに興じた。北朝鮮の弾道ミサイル発射実験を受けて11日には共同記者会見も行った。これまで一部の外国首脳を相手に示してきた態度とは異なり、トランプ氏は堅実かつ慎重に練られた対応ぶりを見せ、同盟諸国に敬意を払っている。

 習氏との電話会談の注目点は、台湾に関して中国が掲げる「一つの中国」政策を長年尊重してきた米国の姿勢をトランプ氏が確認したことだ。トランプ氏は以前、この原則について貿易問題などと同様に「交渉対象」になると述べていた。この変わり身について、トランプ氏が「張り子の虎」である証しだと指摘するメディアもある。中国政府関係者の話として、習氏はトランプ氏がスタンスを軟化させるまで対話を拒否していたと報道は伝えている。ただ、こうしたトランプ氏の変わり身の中身は驚くべきことでも、劇的なことでもない。

 これは台湾が中国の一部であるとする「一つの中国原則」をトランプ氏が受け入れたということではない。台湾の国際的な立場を巡り中台が反目状況にあることを認識するという米国の政策を確認しただけであり、この問題に対する米国の判断を留保したうえで、台湾の人々の同意による平和的な解決を求めているのだ。過去数十年間においてそうであったように、これは中台の反目を認識した以上のことを意味するわけではない。ましてや、独立国家としての台湾を正式に認めること以外で続けてきた台湾への支援を中止するわけでもない。

 昨年12月にトランプ氏が電話会談を行った台湾の蔡英文総統との関係を前進させ、経済・外交・軍事的つながりの強化を図ることを止めることでもない。そうではなく、台湾の独立国家としての地位というデリケートな問題を巡って中国と衝突し、地域を不安定化するようなリスクは冒さないというメッセージを送っている。そうすることによってトランプ氏は、慎重さが要求され、しかも依然として影響力の大きい台湾問題に関して、台湾や日本をはじめとする友好国・地域のリーダーからより多くの支援が確実に得られる状況を作ってみせたのだ。

 そこに驚くほど友好的な日米首脳会談が行われた。中国はアジアの覇者を狙う野望に対する反対勢力の急先鋒が安倍首相だととらえている。その認識は正しく、今回の日米首脳会談の意味を中国の指導部が理解しているのは間違いない。「われわれの間にはとても良好な絆がある。非常にうまが合う」。共同記者会見でトランプ氏はそう熱く語り、こう続けた。「車のところで彼(安倍首相)を出迎えた際、握手したが、彼を引き寄せ肩を抱いた。そうしたいと感じたからだ」。これが、日本はただ乗りの同盟国だと選挙期間中に批判していたトランプ氏の身の変わりようだ。

 「われわれは日本の安全保障に関与する」。トランプ氏はそう宣言した。尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲内だとするジム・マティス国防長官の発言と同じ認識を表明した。たとえ関係が最良の状況下にあってもトランプ氏との間では泣き所になりかねない貿易面では、マイク・ペンス副大統領と麻生太郎副総理・財務相をトップとする経済協議の枠組みを設けることで合意した。

 新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」を日本海へ向けて11日に発射した北朝鮮も、日米間の連携強化の重要性を示すことに一役買うことになった。北朝鮮がミサイルの発射実験を行ったのはトランプ氏の就任後では初めてだ。今回の発射は北朝鮮が開発を進めている大陸間弾道ミサイルではなかったものの、同国の核開発が多面的に前進しつつあることをあらためて知らしめた。トランプ氏は「米国は素晴らしい同盟国である日本を100%支持する」と述べた。まったく同感だ。

【私の論評】日本のリベラル・左派、左翼の本来の使命は「政権・権力と戦うこと」ではない(゚д゚)!

ブログ冒頭の、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事いたってまともです。

このブログでは、以前から米国のメディアは90%がリベラル・左派占められていて、特に大手新聞ではリベラル・左派が100%であり、日本にたとえると産経新聞が存在していないような状況にあることを掲載してきました。

そのためか、米国のメディアで報道される内容は非常に偏りがあって、人口でいえばおそらく半分くらいは存在するであろう、保守層の声がほとんどかき消されていて、私たちは米国の半分を知らない状況にあるといってさえ良い状況にあります。

そうして、このウォール・ストリート・ジャーナル紙も無論のこと、リベラル・左派の新聞です。

しかし、日米首脳会談に対する極めて的確な報道をブログ冒頭のWSJの社説は果たしています。日本のテレビや新聞などの偏った解説とは異なります。

日本のリベラル・左派のマスメディアや、有識者などもこの態度は見習うべきでしょう。

日本ではマスメディアも酷いですが、いわゆる有識者などと言われている人たちも酷いものです。

政治学者の山口二郎氏は13日、朝日新聞の神田大介テヘラン支局長が安倍晋三首相を中傷するような投稿を行い、インターネットで批判を受けて削除したことについて、「最高権力者をおちょくることに、何の遠慮が必要か」と自身のツイッターに書き込みました。

山口二郎氏

神田支局長は、日本時間11日未明に米ワシントンで行われた安倍晋三首相とトランプ米大統領の首脳会談を伝える映像を引用し、「安倍首相、大丈夫かな…またおなか痛くなっちゃうのでは」と自らのツイッターに書き込みました。

この投稿にネット上で批判が相次ぎ、神田支局長は投稿を削除し、「このツイートは不適切だったので削除しました。安倍首相をはじめ、病気を揶揄するつもりはなかったんですが、そのように受け取られて当然のひどいツイートでした。お詫びし、撤回します。申し訳ありませんでした」と釈明しました。

朝日新聞の神田大介テヘラン支局長
さらに神田支局長は「自分の考えの至らなさ、まったくお恥ずかしい限りです。以後、このようなことがないよう注意いたします。重ねて安倍首相をはじめ、みなさまにお詫びします」「本当に、トランプ氏の登場による首相への重圧を心配してツイートしたんですが、そのように伝わらなくて当然だったと思います」「意図が伝わらないようなツイートをしてしまったこと、記者として恥ずかしく思います」などと連続して投稿していました。

このような出来事から、やはり日本のリベラル・左派、左翼といわれる人々の中には、山口二郎氏のように、多くのリベラル・左派、左翼のマスコミや識者は「政権や権力と戦うのが使命」であり、その使命を貫徹するためには安倍総理に対する個人攻撃をすることも当然と思っているようです。

しかし、私は政権と戦うのがリベラル・左派、左翼の使命であるなどとは絶対に言えないと思います。そんなことをしていたら、リベラル・左派はいつも政権反対の立場に縛られてしまうことになります。

自民党が政権をとったら自民党反対で、民主党政権になれば民主党反対ということになってしまいます。そうではなく、リベラル・左派、左翼は政権がどうであろうと自分自身が自由に考え、意見を述べるべきです。リベラル・左派、左翼が単なる政権の逆反射に陥れば、自由に考えているのは政権の側で、リベラル・左派、左翼は思考停止になってしまうことになります。

まさに、今回の日米首脳会談ではこのことが鮮明になったと思います。日本のリベラル・左派の方々も、ウォール・ストリート紙をみならって、まともな考え方をすべきです。この新聞は、「政権や権力と戦うのが使命」などとは思っていないからこそ、自由な発想と情報源から上記のような記事が書けるのです。

そうでないと、いつも反政権の立場に縛られて、まともなことが言えなくなってしまいます。その顕著な例が、いわゆるリフレ派の政策に対するリベラル・左派の人々の考え方です。

このリフレ派という言葉は、私はあまり好きではありません。そもそも、リフレ派による積極的な金融政策を中心にデフレから脱却することを重要課題とする主張は、他の先進国では当たり前の政策であり、この政策を主張する人々を他の先進国ではわざわざリフレ派と読んで区別することもありません。

リフレ派という言葉、日本独自のものと考えても良いです。そうして、このリフレ派の主張は欧米では雇用を改善して労働者にとって良い政策であるということから、リベラル・左派、左翼、労働組合などが賛同する政策でもあります。まさに、安倍政権はアベノミクスという名称で、世界的な見地からすれば、リベラル・左派的な政策を実行しているわけです。

しかし、日本ではリベラル・左派も左翼の方々も、「政権や権力と戦うのが使命」という古いイデオロギーにしがみついているせいか、金融政策の有効性を認めません。特に、金融政策が雇用と不可分に結びついているということを絶対に認めません。

このような頑な態度をとっていれば、やがてリベラル・左派の中でも分裂が起こるのではないでしょうか。実際、その兆候は見られています。

広葉樹の移植のための畑を耕す「化学総連」の皆さん
クリ・コナラなど塩に強い品種の広葉樹も
実験的に植えるのだそうです
化学大手の労働組合でつくる全国化学労働組合総連合(化学総連)が昨年連合から離脱しました。

化学総連は昨年5月末、春闘などで連合との窓口になっていた「日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC連合)」との協力関係を解消しました。事実上の連合離脱であり、産別(産業別労組)が抜けるのは、平成元年の連合発足後、初めての事態です。

この動きの根底には、リベラル・左派、左翼は「政権や権力と戦うのが使命」であるとの考え方に対する反発があるのは明らかです。

私自身は、自分はどちらかというと保守派だと思っていますが、リフレ派的な考えは正しいものであり、それは統計上も十分に証明されているものと思いますから、自分が保守であろうがなかろうが、リフレ派の主張には賛同しています。

リベラル・左派、左翼の方々も、「政権や権力と戦うのが使命」という呪縛から逃れて自由な発想をすべき時にきているのではないでしょうか。

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