2018年3月15日木曜日

米、中国に貿易黒字1000億ドル削減要求=ホワイトハウス―【私の論評】米国の中国非難は理解できるが、同盟国まで非難するのは筋違い(゚д゚)!


トランプ大統領

米ホワイトハウスの報道官は14日、トランプ政権が中国に対し対米貿易黒字を1000億ドル削減するよう求めていることを明らかにした。

トランプ大統領が中国に米国との貿易不均衡を10億ドル是正するよう要請したとツイッターに先週投稿したことについて、報道官は「10億ドル」は「1000億ドル」の誤りだったと述べた。

ただ同報道官は、貿易黒字削減に向け米政府が中国に求める具体的な方法については言及せず、中国に対し大豆や航空機などの米製品の輸入を増やすことを求めるのか、国営企業への政府助成の削減や鉄鋼とアルミニウムの生産能力削減などを求めるのかについては明らかにしなかった。

中国は米企業が中国市場へのアクセスを得るためには中国の合弁相手への技術移転が事実上必要となる投資政策を導入しているが、これに対し米国では不満の声が上がっている。米政府が中国に求める貿易黒字の削減がこうした問題への対処となるかは現時点では不明。

中国との貿易を巡っては、トランプ政権が中国からの輸入品のうち最大600億ドルに相当する製品に関税を課すことを計画していることが前日、関係筋の話で明らかになっている。

中国国営紙の環球時報は、15日付の論説記事で「貿易赤字を削減したいなら外国に変化を求めるのではなく、米国人をより勤勉にし、国際市場の需要に沿った改革を実行する必要がある」とし、貿易戦争がいったん始まれば、妥協は選択肢にないと主張した。

【私の論評】トランプ大統領の中国非難は理解できるが、同盟国まで非難するのは筋違い(゚д゚)!

トランプ大統領が、中国に対して対米貿易黒字を1000億ドル削減するよう求めていることについては、私もある程度妥当であると考えます。

1000億ドル自体が、妥当なものかどうかは、正直なところわかりませんが、中国による米国への輸出に関しては、自由貿易という観点からは、非常に不公正なところがあり、それが結果として米国の労働者の雇用を奪うなどのことに結びついている側面があるのは確かであると考えられるからです。

習近平とトランプ

ただし、対米貿易黒字だからといってそれ自体を問題にするような考えかたは、間違いです。そうして、これは経済学上の常識です。

統一通貨を用いている、ユーロ圏では日本のように一国の独断では、通貨や国債発行はできません。さらに、同じユーロ圏同士の国々では、為替レートも関係ないので各国間の貿易の格差は拡大します。そのため、ユーロ圏内では特に「輸出額=輸入額」ということが必要になります。

しかし、米国、日本、中国のような国民経済では、自国の意思で自国通貨を擦り増しや、国債発行が自由にできるので、そのような必要性はありません。本来、貿易黒字がどうの赤字がどうのと騒ぐ必要性など全くないです。

実際、経済が成長していると、輸入が増えて、貿易赤字は増える傾向にあります。この場合、貿易赤字が単純に悪いとはいえません。貿易赤字に関しては、あくまで中身を検討した上で良い悪いを判断すべきなのです。

トランプ政権の過去の1年では、経済成長をしつつ貿易赤字が減らなかったということですから、これはほとんど問題などありません。だから、貿易赤字など問題にすること自体が間違いです。

ただし、中国と米国を比較した場合、米国は中国と比較すれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がはるかに進んでいます。これらが、進んでいない中国では、労働者を不当に悪い条件や、低賃金で働かせたり、政府の都合で経済に直接介入したり、法律を変えたり、新たな規制をもうけたりすることを無制限にすることができます。

さらには、知的財産権の保護なども全く不十分です。そうなると、中国と米国の間では、そもそも自由貿易など成り立ちません。



米国が抜けたため、日本が主導するTPP11は、参加予定国が新協定に署名し、19年に発効することとなりました。このTPPには、最初から中国は参加していません。無論、中国もそれを希望していませんでしたし、TPP参加予定国も特に中国の参加を希望もしていませんでした。

なぜかといえば、中国がTPP参加国として、自由貿易をするためには、抜本的な構造改革をして、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめなければならないことになり、現在の中国の体制では困難だからです。

韓国も、TPPには参加していなかったものの、TPP11には参加の意向があったようではありますが、結局参加しないまま、TPP11は19年に発効の運びとなりました。

これは、韓国は最初は米国とのFTAを進めていたということもありますが、やはり、韓国も平昌五輪の女子カーリング日本チームが休憩のときに食べていた苺に象徴されるように、知的財産権の権利の保護に対して意識が希薄なところがあったり、中国ほどではないにしても、やはり民主化、政治と経済の分離、法治国家化が遅れているところがあり、TPPの目指す自由貿易にはなじまないところがあるからです。

韓国の苺は元々は日本の苺の種苗を盗んだものだった

以上のようなことから、トランプ大統領が中国の貿易黒字に対して、非難して、米国が被ってきた損失を補填するように迫るということはある程度理解できます。

しかし、トランプ大統領は驚いたことに、14日、中西部ミズーリ州で開かれた地元選挙の資金調達会合で、日韓を含む同盟国が何十年にもわたって米国の雇用を奪ってきたと非難し「同盟国は自国のことを気にして、米国のことはどうでもいいと思っている」とこき下ろしました。

韓国との貿易が米国に有利にならなければ、在韓米軍に何が起きるか「様子を見よう」と述べ、撤収もあり得るとの考えを示唆しました。また、日本の自動車市場は閉鎖的だと主張しました。同紙は、トランプ氏によるこれまでで最も保護主義的な発言の一つだと報じました。

トランプ氏は、カナダのトルドー首相に対し、両国の貿易収支に関して事実に反し「米国は赤字を被っている」と伝えたと自慢げに語った。米通商代表部(USTR)は米国の対カナダ貿易は黒字だとしています。

以上で述べたように、そもそも貿易赤字を会社の決算の赤字のように捉えるのは全くの間違いですし、TPPのような自由貿易協定に入ることができない程、国内の整備が遅れている中国が非難されることはわかります。

しかし、カナダや他の同盟国にまで、非難の矛先を向けるのは筋違いです。韓国も遅れたところは、ありますが、それでも中国よりは、はるかに整備されています。

単純に貿易赤字だからといって、それを非難して、挙句の果てに関税でもかけるようなれば、今度は米国国民が、本来自由貿易の結果得られるメリットを得られないようなことになり、不利益を被ることになります。

トランプ大統領は同盟国を貿易赤字で非難することは、やめるべきです。米国が同盟国に対して関税障壁を設けたりすれば、同盟国側も黙ってはいないでしょう。米国に対して報復関税をかけることにもなりかねません。そうなれば、世界の自由貿易が阻害されることになります。

さて、中国についてですが、1980年代の日米貿易摩擦と違って、米中は同盟国ではなく敵対国であり、相容れない政治体制でもあるので、日米構造協議のような解決は無理でしょう。

どのみち中国経済は無理がたたっているので、今後緩やかに下落していくでしょう。また習近平が 国家主席の任期を撤廃して長期政権が可能になりましたが、これこそ『中国の終わり』の始まりです。

中国がいつまでも、構造改革をしないというのなら、米国は中国に対して貿易障壁を設けるようなことにでもなるかもしれません。そうなれば、他国も同様のことをすることでしょう。そうなると、中国はますます経済が低迷することになります。

習近平の独裁は、以前もこのブログでも述べたように、10年ももたないと思います。これから20年位かけて中国は衰退し分裂していくことになるでしょう。

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