2018年3月13日火曜日

日米露中まで頭痛のタネ 世界に広がる「韓国疲れ」―【私の論評】南北統一で、主体思想に染まった経済的にはロシアより大きな、核武装した軍事独裁政権ができあがる(゚д゚)!

日米露中まで頭痛のタネ 世界に広がる「韓国疲れ」

文大統領は御満悦だが・・・・

平昌五輪を“利用”して北朝鮮との対話を始めた韓国。五輪後に訪朝した特使団は10年ぶりとなる南北首脳会談まで取り付け、あれよあれよという間に南北が大接近。一方で金正恩朝鮮労働党書記長はトランプ大統領に会談を申し入れ、5月までに実現する見込みとなった。見守るしかない世界の国々は“この先”の難儀を察して頭を痛めている--。

韓国の特使派遣は、朝鮮半島の平和実現に向けた大きな前進--というのが世界の表向きの評価である。4月末の南北首脳会談の開催に加え、北朝鮮が非核化に向けた米朝協議の用意があると表明したことを受け、米国のトランプ大統領も、「前向きだ」と評価した。

だが、韓国の“単独行動”に、各国は内心ヒヤヒヤしている。

「文在寅大統領の判断は、国連決議も含めて、世界各国が取り組んできた北朝鮮への圧力路線を壊すもの。各国はリップサービスのコメントを出していますが、本音では“韓国のおかげでこれまで続けてきた制裁や圧力がすべて無駄になった”と嘆いている」

こう指摘するのは、元在韓国特命全権大使で外交経済評論家の武藤正敏氏だ。

「今回、特使が伝えた合意内容は非常に曖昧で、『北朝鮮に対する軍事的脅威が解消されて体制の安全が保障されれば、核を保有する理由がない』というのは、米国が求める非核化とは程遠い。米国の情報関係者は揃って南北対話に懐疑的だし、日本はもちろん、欧州やアジア各国も同様です。韓国はあまりにも北朝鮮側に妥協、譲歩しすぎている」

慰安婦問題でさんざん「ゴールポスト」を動かされてきた日本にとっては、またも韓国の行動に翻弄される事態だ。2014年1月には米スタンフォード大学アジア太平洋研究センターのダニエル・スナイダー研究副主幹が、日本の政治指導者が「韓国疲労症」にかかっていると指摘したこともある。

だが、日本だけでなく、「コリア・ファティーグ(韓国疲れ)」は米国でも流行語になった。きっかけは執拗な“反日”だ。最初にこの言葉が、使われたのは6年ほど前のこと。

2012年4月、米国歴史教科書の「日本海」表記を「東海」に修正させようと、ホワイトハウスの公式サイトに「東海」支持の韓国人と見られる書き込みが殺到。サーバーが一時パンクする騒ぎになった。2015年4月には安倍首相の米国議会でのスピーチ阻止のため、在米韓国人が「訪米反対声明」を発表し妨害工作を展開。米国政府を激怒させた。

◆トランプは「弱腰」と指摘

今回の特使派遣についても、米外交専門メディア『ザ・ディプロマット』はこう書いている。

〈五輪後の金正恩の友好ムード演出は、文在寅の気前の良さと統一への情熱を食い物にして、食糧援助と制裁解除を獲得するための試みだ。ソウルと国際社会は、太陽政策を再試行しても、国民を無視し国防費を優先させる北朝鮮を変えることができないことを自覚するべきだ〉(3月6日配信)

産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が言う。

「米国は北朝鮮が韓国のすり寄りを利用して、核開発のための時間を稼ぎ、自分たちに都合のいい形での米朝対話を画策する可能性を懸念しています。トランプ大統領の文大統領に対する不信感は根強い。象徴的なのが、文大統領を『appeasement』と批判した昨年9月のツイート。これは直訳すると『宥和』で、相手に不必要な妥協や譲歩をしてすり寄る姿勢を批判する時などに使われ、“弱腰”という強い意味が込められている。同盟国のトップに使うのは極めて異例です」

◆中国も「面白くない」

文大統領は政権発足以来、歴史問題で足並みを揃えようと中国に接近してきたが、その中国からも嫌われているという。中国に詳しいジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聰氏が言う。

「朝鮮半島が平和へと向かうことに中国は賛成していますが、中国自らが主導して、北朝鮮が核とミサイル開発をやめる一方、米韓も大規模な合同軍事演習を当面中止する『ダブル・フリーズ』で非核化への交渉再開の条件を作り出そうとしていた。昨年7月にはロシアも合意して、それに乗る形になった。

中国は北朝鮮に特使を派遣していたが、今回の件で、韓国に主導権を持っていかれてしまった形です」

ちなみに中国の特使は金正恩氏に会えなかったというから、メンツを重んじる中国が怒らないはずがない。加えて、その中国に乗ったロシアも、韓国にハシゴをはずされた形だ。元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏が言う。

金正恩も御満悦・・・・?

「南北首脳会談が、そのまま非核化に繋がるとは考えにくい。それどころか会談の中で“米国の干渉排除”や“経済制裁の中断”が議題にのぼり、その時に決裂を恐れる文大統領が強く否定できない展開もあり得る。

金正恩氏の狙いは日米韓の分断です。いずれ韓国はこの宥和策から降りなければいけない。そうなった時、米国や日本が対応することになる」

18年前に訪朝した金大中大統領(当時)はノーベル平和賞まで受賞したが、核放棄に繋がらず、逆に北朝鮮に開発の猶予を与える結果になった。だが、韓国の『中央日報』はこう書く。

「平昌でまいたタネを平和の巨木に育てることは、文大統領にとって重い歴史的荷物であると同時にノーベル平和賞までいける千載一遇の機会だ」

振り回される世界が疲れるのも無理はない。

※週刊ポスト2018年3月23・30日号

【私の論評】南北統一で、主体思想に染まった経済的にはロシアより大きな、核武装した軍事独裁政権ができあがる(゚д゚)!

韓国と北朝鮮の歩み寄りは、いずれ南北統一につながる可能性が高いです、そうして統一朝鮮が朝鮮半島に出来上がることには、日米中ロの四つの国にとっては脅威です。

これは、以前もこのブログで指摘してきたことです。統一朝鮮が出来上がった場合どのようなことになるかといえば、北朝鮮と韓国が一緒になるということですから、半島全体が核武装をした(あるいはいつでも核武装できる)一つの国になることを意味します。さらに、韓国の進んだ工業力と北の核が結びつけば、朝鮮に核大国が出来上がる可能性も否定できません。

さらに、韓国のGDPは東京都なみであり、日本人からみればたいしたものではないと感じられるかもしれませんが、ロシアと同等以上であり、これが北朝鮮と結びつけば、ロシアより完璧に大きな経済になります。

これは、核武装をしたロシアよりも経済の大きい国家の誕生を意味します。この統一朝鮮が、独裁軍事国家になり、さらなる軍拡をする可能性は、かなり大きいです。そうなれば、将来的には核武装したロシアなみの独裁軍事国家が半島にできあがる可能性も否定できません。

そのような国が半島にできあがることは、日米中ロにとっては望ましいことではありません。

そうして、統一朝鮮が、北に近いような政治風土の国になった場合、「韓国疲れ」どころではなく「北朝鮮疲れ」のような状況どころか、大きな脅威が世界各国を悩ませることになるでしょう。

なぜそうなるかといえば、北朝鮮は主体(チェチュ)思想なるものがあるからです。

この思想は、中ソ対立のはざまで、自国の自主性維持に腐心する金日成が、「我々式の社会主義(ウリ式社会主義)」に言及する中で登場し、金正日によって体系的に叙述された。

この過程で、モスクワ国立大学哲学博士である黄長燁が哲学的緻密化に貢献したといわれる。後に金日成により性格づけられ、1972年の憲法で「マルクス・レーニン主義を我が国の現実に創造的に適用した朝鮮労働党の主体思想」と記載されました。朝鮮人民が国家開発の主人であり、国家には強力な軍事的姿勢と国家的資源が必要、とするものです。

「主体(チュチェ)」は、哲学およびマルクス主義の用語「主体」を朝鮮語に変換したもので、また「主体」とは、北朝鮮では「自主独立」や「自立精神」を意味する場合も多いです。主体思想は「常に朝鮮の事を最初に置く」との意味でも使われています。金日成は、主体思想は「人間が全ての事の主人であり、全てを決める」という信念を基礎としている、としました。

簡単にいうと、 人間は自己の運命の主人であり、大衆を革命・建設の主人公としながら、民族の自主性を維持するために人民は絶対的権威を持つ指導者に服従しなければならないと唱える思想です。

チュチェ思想は、人間に譬えるなら「首領」は「頭」であり、「党」は「胴体」であり、「人民大衆」は「手足」であると北では説明しています。胴体と手足は頭が考えた通りに動く必要があります。また頭がなければ生命が失われてしまいます。故に首領の権威は絶対的で、あらゆる人民大衆は無条件に首領に従わなければならない。云々、云々・・・。

書きながら頭が痛くなってきそうな内容ですが、これがどうやって導かれるのか、私には全く理解することができません。ちなみに「主体思想」は序論として「哲学的原理」なるものを掲げており
*人間は世界と自分の運命の主人で、これを開拓する力をもつ 
*人間は自主性、創造性、意識性をもつ社会的存在である 
*人間の自主性、創造性、意識性の高まりが社会により強く影響する方向に社会は発展する
と、これだけ取り出せば、悪くなさそうにも見えるお題目が並ぶのですが、このあと「故に」として「必ず首領の指導を受けねばならない」と来るのです。いったい何が「故に」なのか理解不能です。

相手が「首領」であれなんであれ、「絶対的な服従」というのは人間の自主性、創造性、意識性の否定以外の何ものでもなく、世界と自分の運命の「主人」たることを放棄させることとしか、論理的には読みようがないものです。

「主体思想」の「主体性」とは首領様への絶対服従が原点であり到達点になっている。理屈では通りません。

この思想に染まっている人間に対しては、理屈などの通りません。宗教の一種と考えると、話がすっきり通るかもしれません。指導者を政治的に見るとピンと来ないことが「生き神様」と考えれば「個人崇拝」の構造が別の様相を見せるようになります。主体思想でのそもそもの首領とは金日成国家主席個人を指したわけで、この「生き神様」を祭り上げる、一種の擬似宗教として、これを見ることができるかもしれません。

この主体思想に染まったのが、北朝鮮であり、北と南が統一された、統一朝鮮にもこの主体思想が受け継がれ、生き神様である「金王朝」の出身者を首領とするような国家になったとすれば、これはまともな理屈も何も通じないような、経済的には先進国なみの、核武装した軍事独裁政権ができあがるかもしれません。

文在寅はこのチェチュ思想の恐ろしさを認識しているとはとても思えません。仮に文在寅が、南北統一を推進するということになれば、文はどうあがいても、チェチュ思想による狡猾さには太刀打ちできないでしょう。

統一すれば、元韓国の大統領や政権の幹部など、すぐに暗殺されるか幽閉されるでしょう。チェチュ思想に染まった連中にとっては、このくらいのことは朝飯前の所業でしょう。

そうして、核武装した軍事独裁政権が主体思想という宗教を信奉することになれば、それはとんでもないことになります。

主体思想については、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
朝鮮大学校元幹部逮捕 「スパイ天国・日本」狙い撃ち 北朝鮮の指示役、韓国大統領選でも暗躍―【私の論評】日本人は、事件の裏にある主体思想の精神破壊力に目覚めよ(゚д゚)!
この記事は、2016年2月3日のものです。以下に主体思想の破滅的な破壊力について解説した部分を引用します。

"
この主体思想の破滅的な破壊力については、2005年4月のNHKスペシャル、「ドキュメント北朝鮮・第1集 個人崇拝への道」という三夜連続のドキュメンタリーで報道されていました。これは、当時のNHKとしては、かなりまともな報道でした。

この番組の後ろのほうで、元旧ソ連共産党中央委員会委員のワディム・トカチェンコ(ロシア科学アカデミー極東研究所朝鮮研究センター長)がしみじみ語った言葉こそ、今日本人が最も重要なキーワードとして胸に刻まなければならない言葉です。トカチェンコは苦々しい顔をしてこう回想しました。
「北朝鮮はソビエトにとって常に頭痛の種でした。彼らは主体思想を教え込まれ、目的達成のためならどんな手段を用いてもかまわないと考えています。国家のためならば何をしても許されるのです。 
私は時折思いますます。このような人々と全く関わり合いをもたないほうがいいと。不用意に関わるとこちらが病気になり、傷つくことになるのです。」

この動画、以前はYouTubeにも掲載されていたのですが、現在は削除されています。ただし、ニコニコ動画のほうには未だ掲載されています。ご覧になっていない方は、是非視聴していただければ、北朝鮮の本質に迫ることができると思います。

元旧ソ連共産党中央委員会委員のワディム・トカチェンコをして、ここまで言わせた、恐るべきチュチェ思想です。あまりこのような、思想に慣れていない日本人など、この思想に触れてしまえば、あっという間に北朝鮮側に籠絡されると思います。

このチュチェ思想は、北朝鮮では、主体思想塔(チュチェササンタプ、しゅたいしそうとう、韓国語: 주체사상탑)として目に見える形に体現されています。この塔は、朝鮮民主主義人民共和国の平壌市中区域にあります。高さ170メートル。金日成の70歳の誕生日を記念して建てられ、1982年に完成しました。

主体思想塔

こんな思想に基づいて動く国ですから、拉致問題も平気で起こすし、人民が食うや食わずでも、核開発は行うし、他の国のことなどおかまいなしに、全く自分のペースで動くのです。あの中国ですら、主体思想にはかなり悩まされているのではないかと思います。
"

南北統一によって、このような思想に染まった、軍事独裁政権が半島に出来上がる可能性があるのです。そうして、統一朝鮮は、習近平の独裁体制となった中国よりもさらに厄介な存在になるでしょう。朝鮮族の多い、中国の東北地方(満州)に領土的野心を抱くようになるかもしれません。日本の竹島は永遠に日本に戻らなくなるかもしれません。それどころか、中国と同じように尖閣付近で問題を起こすかもしれません。

金正恩ももちろんこの思想に染まっていることでしょうから、トランプ氏と会談したにしても、その場では何か、トランプ氏の意向に沿ったような話をしたとしても、都合が悪くなれば、すぐに裏切ることに関しては何の躊躇もしないことでしょう。

ただし、トランプ氏は高齢であり、長い間自由主義経済の中で商売をしてきて、その時々で失敗したり、成功したりした経験もあるでしょうし、金正恩に匹敵するような狡猾な人物と取引してきた経験もあるでしょう。さらに、年齢も70歳台ですから、若い世代よりは簡単に主体思想に巻き込まれるということないとは思います。

しかし、金正恩などとまともに話ができるなどと考えていては、「韓国疲れ」どころか、深刻な「主体思想疲れ」に見舞われることでしょう。

私自身は、従来のように段階を踏んだり、戦略的忍耐などをしていると、「主体思想」に破れて、南北統一朝鮮が成立してしまうと思います。

その前に、当面は南北統一の動きを見せた場合や、核開発を始めた場合は、米国はためらうことなく即座に軍事的行動をとることを金正恩に納得させ時間稼ぎをして、主体思想なる宗教を破壊することが最善の策だと思います。さらに、実際に北が不穏な動きを見せれれば、すぐに軍事行動に打ってでるべきです。これに関しては、日米中ロで合意することはさして難しいことではないと思います。あるいは、すでに条件付きで合意に達している可能性もあります。

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