2018年3月23日金曜日

【石平のChina Watch】「精神的日本人」の登場―【私の論評】現代中国の精日から次世代中国リーダーがでてくるかもしれない(゚д゚)!

【石平のChina Watch】「精神的日本人」の登場

 中国で最近、「精日=精神的日本人」と呼ばれる人々の存在が注目を集めている。

 例えば2月20日、2人の若者がネット上にアップした1枚の写真が波紋を呼んだ。四川省出身の唐さん(25)と南京市在住の宗さん(22)が、南京市内の山中にある日中戦争遺跡のトーチカをバックに撮った記念写真である。そのとき2人は、旧日本陸軍の軍服を身につけ、オモチャの軍刀と小銃を手に持ち、日の丸の旗を掲げていた。それがネット上で公開されると、2人は直ちに「悪質な精日」だと認定され、「日本の侵略戦争に対する賛美だ!」「民族感情を踏みにじった卑劣行為!」との批判の声が全国的に広がった。そして22日、2人の身元は警察によって割り出され、拘束される憂き目にあったのである。

四川省出身の唐さん(25)と南京市在住の宗さん(22)が
撮影した写真の一枚

 旧日本軍の「軍服」を着ただけで警察の厄介になるとはいかにも中国らしい出来事であるが、事態はこれで終息したわけではない。今月8日、全人代の記者会見に臨んだ王毅外相は、この一件に関連して記者から「精日のことをどう思うか」と聞かれ、顔色を変えて「中国人の堕落者だ!」と声を荒らげた。

「精日のことをどう思うか」と聞かれ、顔色を変え「中国人の堕落者だ!」と声を荒らげた王毅外相

 このように、ただ1枚の「コスプレ写真」が政府高官である王外相の厳しい批判まで招いたのだが、ここに出てくる「精日=精神的日本人」とは、一体どういう人たちなのか。

 「精日」という言葉はそもそも最近の新造語だから、いかなる辞典にも載せられていない。中国国内最大の検索エンジンである「百度」を見てみると、「精日」に対する定義は実に簡単で、「精神的に自分のことを日本人と同一視する人々のこと」である。百度はさらに、「精日の特徴」について一言を付け加えている。「精神的日本人の中には、日本を崇拝して自らの民族を恨み、中国人であることを恥じる極端な者もいる」という。

 今月9日付の法制晩報が掲載した記事も前述の百度と同様、「精神的においては自分自身のことを日本人と同一視する人々」と定義している。こうした人々の特徴について、法制晩報はさらに、「精神的日本人たちは、ファッションや生活習慣が日本風になるだけでなく、日本社会のモラルやマナーに従って行動する」と報じている。そして法制晩報の取材によると、「精神的日本人」のほとんどは10代か20代の若者であるという。

中国江蘇省南京市で2015年に開かれた「南京日本文化交流会」。
「渋谷系」「原宿系」などの化粧が紹介された

 こうしてみると、「精神的日本人」の多くは要するに、ファッションからマナーまで、日本の精神文化に傾倒し自らの民族的アイデンティティーを変えて日本人になろうとする人々のことであろう。

 ここで注目すべきなのは、前述の法制晩報も指摘しているように、「精神的日本人」のほとんどが10代か20代の若者であることだ。周知のように、今の中国の10代20代の若者たちは全員、1990年代からの「反日教育」の中で育った世代である。物心がついてから政府主導の反日教育をたっぷりと受けていながら、その中の一部が「精神的日本人」になろうとしているとは、まさに興味深い。

 つまり彼らの出現は、中国政府の反日教育の部分的失敗を意味すると同時に、わざと日本軍の軍服を身につけて記念写真を撮る前述の2人の若者の行動は、「日本軍がすなわち悪」という政府の反日教育に対する彼らの正面からの造反でもある。

 そして、「中国人であることを恥じる」という百度の解釈からも分かるように、「精神的日本人」になろうとする若者たちの多くはむしろ、現代中国の堕落と醜悪に嫌気がさしているからこそ、「理想」としての日本文化に同化しようとするのではないかと思う。若者層における「精神的日本人」の登場は、興味深い現象の一つであろう。
                 

【プロフィル】石平せき・へい 1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。

【私の論評】現代中国の精日から次世代中国リーダーがでてくるかもしれない(゚д゚)!

政府を刺激している、これら精日といわれる人々は、アニメや芸能人にとどまらず、一般の人も巻き込んで、旧日本軍を賛美しています。
ブログ冒頭の石平氏の記事にも掲載された、日本軍の服装をして南京虐殺事件の戦地の前で記念撮影した2人が、ネット上に投稿し自慢する事件が起きました。

南京虐殺事件は中国が対日交渉に利用しているのですが、記念碑などは作ったまま放置されていて、警備もされていないし荒地になっています。

嘘で固めた南京大虐殺記念館

南京市公安局はネットユーザーによる告発を受けて2人を逮捕し15日間の拘留処分にしました。

中国では逮捕するのに、理由は不要で裁判所の許可も要らないし、罪状を発表する必要もありません。

2015年にも、中国全土で弁護士数百人が逮捕されたましたが、警察はドアを蹴破って理由も告げずに彼らを連れ去りました。

警察に問い合わせても逮捕した者の現状や理由の説明はされないし、裁判の経緯や判決も公表する義務もありません。

そのため、この二人がその後どうなったのかは、つまびらかではありません。

中国で日本好きを公言したり日本軍のコスプレをするのは相当なリスクを負うし、本人達もおそらくそれを分かってやっています。

それでもこうした人が増えているのは、中国に思想の自由がないことの反動なのでしょう。

この2人が、逮捕されたにも関わらず、模倣した人が再び南京市で同じようなコスプレ写真を撮り、ウェイボー(微博)に投稿しました。

因みに日本軍の軍服はネット上で2,000円以下でたくさん売られていて、サイズも選べたのですが、現在は取締りで買えなくなったようです。

皮肉にも日本軍の軍服が中国でブームになった理由は、政府が抗日ドラマを大量生産したからで、日本軍の将兵は、中国人にはお馴染みのキャラになっています。

中国の抗日ドラマにでてくる日本兵は中国人にはおなじみのキャラ

抗日ドラマの中の日本軍は悪逆非道なことばかりするのですが、それもある種の「かっこ良さ」に見えているようです

王毅外相は3月8日にブログ冒頭の記事にもあるように、「精日中国人的敗類」(精神的日本人は中国人のくず)と激怒してみせましたが、政府高官がそう言わざるを得ないほどに増えているようです。

抗日ドラマやネット弾圧強化によって、中国では自国に疑問を持ち日本について関心を持つ人が増えたのです。

「毛沢東は日本かぶれで日本軍と協力していた」という日本人があまり知らないことも、中国のネット上では(隠語で)揶揄されています。

「日本は中国を侵略した」ということがよく言われてきましが、それは正しくはありません。日本が中国に進出したのは、もともと中国の内戦に巻き込まれた、というのが実情です。しかし日本は、それでも中国に足を踏み入れた以上、中国の内戦を止め、中国を救おうと奔走しました

それは中国に安定と秩序をもたらすための人道的、道義的介入でした。当時の中国はひどい混迷と分裂の状態にあり、内乱と騒乱にあけくれる史上最悪の内戦国家でした。

各軍閥(ぐんばつ)は血で血を争う抗争を続け、その犠牲となっているのは一般民衆でした。民間の犠牲者は、ときに数百万人、また数千万人にも達していました。そのうえ、頻繁に起こる飢饉により、百万人単位の民衆が餓死するといった事態も、何度も起きていました。これを何とかしようとし、日本は泥沼にはまってしまったのです。

そうして、日本は最終的には蒋介石率いる国民党軍と宣戦布告なしの戦争をするに至りました。実際毛沢東の共産党軍は、当初は蒋介石率いる国民党軍と比較すると弱小で国民党軍と直接戦うことなく、中国内を逃げ回っていました。

とこが、日本軍が国民党軍と戦争をしたため、国民党軍は弱体化し、中国共産党軍がこれを打ち負かし、台湾に追い出し、毛沢東は大陸に中華人民共和国を建国することができました。

実際、毛沢東は戦後、中華人民共和国を設立できたのは、日本軍のおかげてあると述懐していたそうです。

毛沢東はかなりの、日本かぶれでもあり西郷隆盛を尊敬し、中国で明治維新を起こそうと考えて共産主義運動を始めましたた。

青年時代の毛沢東

日本の敗戦後に日本軍と日本人の復員を助けたのは徹底した日本好きだった毛沢東でした。無論、一方では洗脳や対日工作もしました。

毛沢東は、日本に留学したことはありませんでしたが、日本は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、清国(中国)からの留学生を毎年喜んで受け入れました。日本は清国から学びに来る彼らに、知識を与え、独立心を育てていきました。

その中国人留学生の数は、ピーク時の1906年には、2〜3万人にものぼったといいます。中国人留学生が日本の港に到着して、まず驚いたことは、小さな学童たちがみな学校へ通う姿でした。それは当時の中国では、考えられない光景だったからです。中国では、学校というのはごく一部の人々のためでした。大多数の人は字が読めませんでした。

しかし、向学心に燃えた中国人たちが、競って日本に学んでやって来るようになりました。のちに中国に、親日また反共(反共産主義)の南京国民政府を樹立した汪兆銘も、法政大学で学んだ人物です。日本は彼らを喜んで受け入れ、中国の未来のために官民をあげて支援していったのです。

しかし、日本人の中には共産主義に共鳴するものたちも存在し、それらが留学生たちに共産主義思想を植え付けました。それが、後に中国が共産化するきっかけにもなりました。

ただし、毛沢東自身は、共産党は当時極貧だった中国をまとめるための方便に使ったようです。毛沢東自身は、米国と近い関係になりたいと考え、戦後に米国に秋波を送りましたが、米国がそれに一切応じなかったために、仕方なく当時のソ連と接近したといわれています。

このような中国の歴史は、現在の中国では捏造され、日本軍は平和な中国に一方的に侵略したことにされています。そうして、この憎き日本軍を中国の共産軍が打ち破り、独立したことになっています。その憎き日本軍は、南京で数十万の市民を虐殺したことにされています。

この捏造により、中国共産党ははじめて、中国人民に現在の中国共産党の統治の正当性を主張できるのです。だからこそ、戦後70周年のときに、噴飯ものの「抗日軍事パレード」を開催したのです。

このようなこと、少し歴史を深く調べれば、すぐに虚偽であることがわかります。中国政府はこうした事を国民に知られてはならず、より一層精日を警戒するのです。

中国で精日が増えているといことは、共産党の歴史の捏造に気づく若者が増えているということかもしれません。

現在の中国の共産党一党独裁はかなり制度疲労をおこしています、現在の状態がそのままつづくとは考えられません。この体制が崩れたとき、かつての毛沢東が精日だったように、現在の中国の精日から次世代の中国のリーダーがでてくるかもしれません。

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