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2017年1月18日水曜日

「賃金上昇でも消費伸びない」 経団連見解は消費増税スルー…財務省路線に乗り続けるのか―【私の論評】スロートレードの現状では企業にとって内需拡大が望ましいはず(゚д゚)!

「賃金上昇でも消費伸びない」 経団連見解は消費増税スルー…財務省路線に乗り続けるのか

経団連の榊原定征会長 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 経団連の榊原定征会長は5日の記者会見で、「過去3年、賃金引き上げを続けているにもかかわらず、個人消費が伸びていない」と話したという。

 経団連は、今年の春季労使交渉における経営側の基本姿勢として、将来不安を解消するため、社会保障制度改革の推進や教育費の負担軽減策などを盛り込んだ「経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」を17日に正式決定、政府に要望する。

 これまで経団連は、法人税の減税などを政府に働きかけ、実現させている。法人税減税と同時に消費税増税も主張してきた。大企業中心の圧力団体として自己の利益に沿った提言を行っており、法人減税と規制緩和が提言の柱である。

 ここで残念なのは、法人減税に関する理論武装がまったくないことだ。理論的には、法人税は二重課税の典型なので、個人段階で税の捕捉が十分にできれば、法人税は不要であるという基本から提言すればいい。そうなると、個人所得の捕捉のために、マイナンバー制や歳入庁創設が必要だということにつながるだろう。

 ところが、経団連傘下の大企業は、租税特別措置による恩恵も大きく、財務省には頭が上がらないようだ。そのためか、こうした「王道」の提言にはあまり積極的ではなく、財務省が唱える財源論に乗っかり、消費増税を主張してきた。ただし、法人減税と消費増税がバーターというのではさすがに国民の批判を浴びるので、社会保障改革として消費増税を主張してきたようにみえる。

 そうした経団連の「努力」もあってか、2014年4月から消費増税は実施された。ところが、「消費増税しても景気は悪くならない」という財務省の主張はウソであり、実際に14年4月以降、景気は落ち込んでいる。

経団連ビル
 「賃上げをしても消費が伸びない」というのは、経団連も主張してきた消費増税には触れずに、消費低迷に言及したもので、なかなか滑稽な話だ。標準的な経済理論によれば、消費が伸びていないのは可処分所得が伸びていないからであり、可処分所得が伸びないのは、消費増税に加えて、賃金の上昇が不十分なためだ。

 そうであれば、消費を伸ばすために消費減税や消費増税の凍結を主張してもいいはずだが、「民僚」ともいわれる経団連は自らの政策提言の失敗を認めず、消費増税路線のままだろう。経労委報告の提言でも社会保障制度改革の推進が掲げられているからだ。

 経団連は、賃金の上昇を恐れており、これ以上の金融緩和も望まないのだろう。追加緩和で完全雇用が実現すれば賃金上昇が本格化するからだ。一方で財務省の路線に乗って緊縮財政と消費増税の旗も降ろさない。

 となると、残るのは規制緩和、構造改革によって消費増加という、ちょっと不可解な方向性だ。未来への投資として、教育・科学技術を国債発行で賄う案でも出せばいいと思うのだが…。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】スロートレードの現状では企業にとって内需拡大が望ましいはず(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事で解説していたように、経団連は、結局のところ自分たちに都合が良い政策をしてもらうための、圧力団体であるという側面があることは否めません。つい最近までは、日本の一番強力な圧力団体というと、農協と創価学会体でした。しかし、農協は自民党との不和によってその地位を失いました。

そうして、経団連や日本医師会もそれに次ぐ圧力団体といえると思います。現実には、法人減税と消費増税がバーターということで、消費増税を主張してきたのが事実です。

8%消費税を導入して消費が伸びなくなるのは当たり前です。そうして、増税後に消費が低迷しているのは、明確な事実です。それについては、以前もこのブログに何度か掲載しています。その記事の典型的なものを以下に掲載します。
日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ―【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!
この記事より、消費税増税の悪影響に関する部分を以下に掲載します。
消費増税の悪影響を如実に示すグラフを以下に掲載します。

この統計は、総務省「家計調査」のなかの一つです。この統計は、全国約9000世帯を対象に、家計簿と同じように購入した品目、値段を詳細に記入させ、毎月集めて集計したものです。


増税から一年半以上たっても消費税引き上げ直後の“反動減”の時期に当たる4月95.5、5月92.5とほとんど変わらない数字です。特に2015年11月は91.8と増税後最悪を更新しました。 
増税前後のグラフを見ていただければ、L字型となっていて、数値が底ばい状態であることが判ります。これは反動減などではなく、構造的な減少です。現時点でも、2015年の平均を100とした指数で90台の後半をさまよい続けています。データでみれば一向に個人の消費が上向く兆しはありません。 
この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。 
平成14年3月までは、105円出して買えていたものが増税で108円出さなければ買えなくなりました。その一方で、多くの消費者の給料は消費税増税分をまかなえるほど上昇していません。それは以下のグラフをみてもわかります。
名目賃金は、2013年あたりで下げ止まり、若干上昇傾向です。実質賃金は、2015年あたりで下げ止まり16年からは上昇傾向にはあります。ただし、実質賃金は日銀の金融緩和政策によって、雇用状況が改善して、パート・アルバイトや正社員であっても、比較的賃金の低い若年層が多く雇用されると、一時的に下がります。このグラフだけ見ていていては、現実を認識できません。

そこで、例を挙げると、たとえば昨年2015年の春闘で、日産自動車は大手製造業最高の賃上げを記録しました。そのベースアップ(基本給の賃上げ分)を含む1人当たり平均賃金改定額は1万1千円、年収増加率は3・6%。しかしベースアップ分だけなら、月5千円で、2%を切ります。他にも物価上昇が起きている中で、これでは消費増税増加分すらまかなえません。日産という自動車大手最高の賃上げでもこういう状況でした。

日本中のサラリーマンの給料が実質的に目減りをしたのです。これが2014年4月から続く「消費不況」の大きな原因です。
上の消費支出のグラフは2015年までしか掲載されていないので、以下にその続きも含んだグラフを掲載します。


消費税増税直後よりは、良いですが、それでも2016年の8月は前年同月比で-4.6%ですから、どうみても悪いとしか言いようがありません。この傾向は、現在も続いています。

やはり、2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているのですが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、企業の設備投資にも慎重になるのはやむをえず、昨年はGDPの伸びが横ばいにとどまったのです。

これは、日本のGDPに占める個人消費の割合が60%であり、最大であるということを考えると当然といえば当然です。消費が伸びていないのは可処分所得が伸びていないからであり、可処分所得が伸びないのは、消費増税に加えて、賃金の上昇が不十分なためです。これは、上のグラフにより、明白です。

これらの事実があるにもかかわらず、「賃上げをしても消費が伸びない」という榊原定征氏の発言は、経団連も主張してきた消費増税には触れずに、消費低迷に言及したものであり、ブログ冒頭の記事で、高橋氏が言及しているように、滑稽といわざるをえません。

経団連(日本経済団体連合会)は昨年6月2日、定時総会を開催しました。2期3年目となる榊原定征会長はその総会で挨拶に立ち、「首相の決定を尊重したい」と安倍政権による消費増税延期を支持していました。さらに、「政権と経済界は車の両輪」と発言し、安倍政権との「蜜月」をアピールして見せました。

しかし、今年の5日の記者会見での榊原定征会長の「過去3年、賃金引き上げを続けているにもかかわらず、個人消費が伸びていない」という発言は、やはり財務省を意識したものでしょう。

やはり、財務省があの手この手で、攻勢をかけた結果として、榊原会長は再度財務省側についたか、官邸と、財務省の間で揺り動いているのかもしれません。

ちなみに、経団連の他の商工会議所も経済同友会も財務省よりです。これらの団体も消費増税すべきとの考えです。

経団連に所属する企業は、大企業であり、輸出をしている企業も多いです。そうして、この「輸出」をめぐっては、過去にはなかった大きな世界的な変化があります。それは、現在の世界が「スロー・トレード」の時代に突入しているという現実です。

スロー・トレードとは、「実質GDPが成長しても貿易量が増えない」現象のことです。IMF(国際通貨基金)のデータによると、1990年代は世界の実質GDP成長率が平均3.1%だったのに対し、貿易量は6.6%も拡大した。貿易の成長率が、実質GDPの2倍以上に達していたのです。

それが、2000年から2011年までは、GDP4%成長に対し、貿易量が5.8%成長と倍率が下がりました。そして、2012年から2015年を見ると、GDP3.3%成長に対し、貿易量は3.2%となっているのです。ついに貿易量の成長率が、GDP成長率を下回ってしまったのです。


この原因は様々な要因があるとは思いますが、まずは世界貿易を牽引する役割を担ってきた新興国の自立ということがあると思います。

少し前までの新興国では資源などを先進国に輸出し、それで得た外貨で先進国から製造品を輸入する構図がありました。成長著しい新興国は、こうして経済を発展させました。しかし経済規模が大きくなると、製造品を自国で作り、自国で消費する方が効率的となります。

自動車やスマホなどを見ても、中国や台湾、インドなどの新興国メーカーが台頭してきている背景はそれが理由です。
こうして新興国が自立し、「自国生産・自国消費」を進めることが貿易量の低下の原因となっている面は否めません。

そうして、もう一つは、反グローバル主義の台頭あります。これまで世界は、貿易量の増加でグローバル化が進みました。

先進国ではこのグローバル化によって、雇用や生産を新興国に奪われていると考えています。
そこで台頭してきたのが、反グローバル主義です。アメリカでは反グローバル主義のトランプ氏が大統領選に勝利し、国内での製造への転換を図ろうとしています。

WTOの発表でも08年以降G20で導入された関税引き上げなどの措置は1671件にのぼり、撤廃は408件を大きく上回っています。

このスロートレード、長引くのか、あるいは収束するのか、今のところは判断が難しいです。

スロートレードが長引くと、世界経済の減速につながるのは確かです。なぜなら、各国得意分野と不得意分野があるからです。人間と同じように、不得意分野を補い合うことで効率が高まり、世界規模で生産性が上がる。それに歯止めがかかるということです。
このスロートレードが長引かないことを祈るばかりですが、これからも続くことも考えられるし、景気循環的に定期的にやってくるようになるのかもしれません。

これを前提とすれば、やはり日本も含めて、世界中の国々がまずは自国の内需を高めることが望ましいはずです。

日本は、貿易立国だなどとする人々もいますが、それは事実ではありません。実際、20年ほど前までは、日本のGDPに占める割合は8%に過ぎませんでした。現在は、11%程度です。

日本は、昔から内需大国だったのです。スロートレードの現在、大企業は輸出の伸びはあまり期待できないわけですから、日本の内需が拡大したほうが良いはずです。

中小企業も、財務省からの補助金があったにせよ、まずは内需が伸びないようでは死活問題です。補助金があっても、内需が低迷すれば、中小企業は成り立ちません。

増税すれば、個人消費が低迷して内需は低迷します。これは、決してすべての企業にとって良いはずはありません。

これを考えれば、経団連などの企業の団体こそ、消費税延期、消費税減税、さらなる量的金融緩和を主張すべきです。とにかく、日本国内の内需を拡大する方向にもっていくべきであると主張するのが当然です。ましてや、デフレを放置したり、デフレスパラルにどっぷりと再びはまることになる消費税増税などとんでもないです。

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