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2019年3月15日金曜日

かつての米国の敵・ベトナムは今や重要なパートナー―【私の論評】北朝鮮がベトナムのような発展を目指すには?

かつての米国の敵・ベトナムは今や重要なパートナー

岡崎研究所

 第2回米朝首脳会談が行われたべトナムのハノイでは、2月27日、もう1つの重要な首脳会談が開催された。それは、トランプ大統領とグエン・フー・チョン共産党書記長兼国家主席との米越首脳会談である。

ハノイで27日、会談に臨んだトランプ米大統領(左)と
グエン・フー・チョン書記長=背後はホー・チ・ミン初代国家主席の銅像

 同日、ホワイト・ハウス(米大統領府)は、ホーム・ぺ―ジの外交政策の欄に、「トランプ大統領はベトナムの米企業との提携拡大を歓迎する」と題して、以下のような内容のファクト・シートを掲載した。

・トランプ大統領は、「パートナーとして前進することで、我々は、米越両国の国民に、素晴らしい繁栄と成功をもたらすだろう。」と述べた。

・トランプ大統領は、ベトナムの航空会社が、米国企業から新たに航空機、エンジン及びサービスを購入することを嬉しく思う。

・米越両首脳は、ベトナムの航空会社と米企業との貿易取引の署名に立ち合った。

・これらの合意は、米越間の深化した経済連携の表れである。

・取引の総額は、210億ドルを超え、以下のものを含む。

ベトジェットは、米国製ボーイング737-MAX100機とGEが開発したLEAPエンジンを215個購入予定である。

バンブー・エアウェイズは、ボーイング787-9を10機購入する。

ベトナム航空は、5千万ドル以上の予約システムやその他サービスをサーブル・コーポレーションより購入することを決めた。

・これらの購入は、米国の83000人以上の雇用を支え、ベトナムその他の旅行者の安全と信頼性を高める。

・これらの取引は、今までトランプ大統領が両国のパートナーシップを強化するために手掛けてきたことの反映である。

・2017年5月、トランプ大統領とグエン・スアン・フック首相は、両国間の包括的パートナーシップを強化することで合意した。

・その中で、両者は、相互に利益のある経済関係を促進し発展させることを約束した。

・2017年11月、トランプ大統領の初めての歴史的訪越の際、ベトナム企業は、120億ドル相当の米国の物品・サービスを購入することに合意した。

・ベトナムは、また、米国農産物の輸出に対して貿易障壁をなくし、米国農家に市場を開放することを約束した。

・トランプ大統領は、米国のために自由で公平かつ相互的な貿易を強化し、米国民の為により良い取引の交渉を行うために毅然とした行動をとっている。

参考:White House ‘President Donald J. Trump Hails Vietnam’s Commitment to Expanding Commercial Partnerships with American Companies’ February 27, 2019

 結果はどうであれ、ベトナムで米朝首脳会談を開催したのには、それなりの意義があった。トランプ大統領も指摘したように、ベトナムは、北朝鮮にとって、モデルになる国である。米国とベトナム戦争という激しい戦いを繰り広げながらも、1995年には国交を正常化し、現在は、ASEAN(東南アジア諸国連合)の中でも経済成長している優等生である。トランプ大統領は、金正恩委員長に、非核化をきちんとすれば、ベトナムのように経済発展できると促した。

 上記のファクト・シートでは、貿易取引のことばかりが語られているが、米越首脳間では別の議題も取り上げられた。ポンペオ米国務長官は、自らのツイッターで、「トランプ大統領とチョン書記長は、北朝鮮の最終的、完全かつ検証された非核化、自由で開かれたインド太平洋及びより強固な米越の包括的連携に向けて、継続した前進の必要性を確認した。」と述べている。従って、安全保障を含む様々な議題がテーブルに上ったことになる。おそらく、南シナ海問題や中国についても触れたに違いない。

 かつての米国の敵、ベトナムは、今や重要な米国のパートナーとなっている。そういえば、2017年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議は、ベトナムの保養地ダノンで開催され、トランプ大統領は、インド太平洋地域の平和と安定について素晴らしい演説をした。

【私の論評】北朝鮮がベトナムのような発展を目指すには?

ハノイでの米中首脳会談が決裂した後、北朝鮮は、再び核施設を稼働させており、また、サイバー攻撃や「瀬取り」で、不当な手段で核開発資金を稼いでいます。一方、首脳会談が行われたベトナムは、今や国際社会に開かれた国になって、経済発展を遂げています。

北ベトナムは、第二次大戦後、フランス、そして米国という大国と戦って勝利しました。そして、南ベトナムを降伏させて南北統一を果たし、1976年にベトナム社会主義共和国として新たなスタートを切りました。復興を目指すベトナムは、鄧小平が進めた中国の改革開放路線と同様な「ドイモイ」政策を、1986年に採用しました。

サイゴン

経済の飛躍的発展を目指し、日本など先進諸国に援助を仰ぎ、国際社会に開かれた国造りに励んでいるベトナムは、1995年には、ベトナム戦争で戦ったアメリカとも和解し、協力関係を深めています。北朝鮮は、朝鮮戦争でアメリカと戦っており、この点では北ベトナムと同じです。

北朝鮮の改革モデルとなるのは、中国であり、ベトナムです。中国は、改革開放政策で社会主義市場経済を進め、今やGDPで日本を抜いて世界第二位に躍り出て、アメリカの覇権を脅かすまでになっています。

北朝鮮がベトナムや中国と決定的に違うのは、金ファミリーによる「王朝」だという点です。ベトナムや中国は、独裁制であっても、それは共産党による独裁であって、特定の政治家ファミリーによる支配ではありません。「王朝」ではないし、世襲でもなく、集団指導体制です。

平壌では、金正恩に反抗すれば身内でも粛清に遭う恐怖政治が続いており、経済改革も基本的人権の擁護も進んでいません。金正恩の最大の目的は「金王朝」の維持であり、改革開放政策は王朝の崩壊につながる危険性を孕んでいます。

金日成、金正日の遺訓を受け継ぐ金正恩が、体制崩壊の危険を冒すことはないです。つまり改革開放の扉を開けることはまずないです。核兵器の保持に固執する理由は、米国からの攻撃の危険性から「金王朝」を守ることにあります。そうして、中国からの干渉を削ぐことです。

ベトナムと違って、そもそも朝鮮半島は統一しておらず、北朝鮮が計画経済から市場経済に移行すれば、それは韓国と同じ体制になり、韓国主導の統一国家になる可能性につながります。

それは、西が東を吸収したドイツ型統一である。それを金正恩が受け入れることはないでしょう。一方、北が南を吸収するベトナム型統一は容易には実現しないでしょう。

古代以来、東夷西戎南蛮北狄のうち、中国にとって最も警戒すべき国は朝鮮とベトナムでした。日本と違って陸続きですが、小国ながら強力で一筋縄ではいかない国だったからです。

ベトナムは、中越戦争を戦い、今でも南沙・西沙諸島領有件で中国と対立しています。北朝鮮は金正男、張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長を殺害するということで、中国に対決する姿勢を露わにしました。さらに、今回の米朝収納会談の後には北京を素通りして、習近平と会談することもなく平壌に帰りました。

ベトナムのように中国と戦争はしていませんが、核兵器を開発することで、中国の過度な干渉を退けています。一方韓国は、中国に従属しようとしていますが、中国と韓国の間には、核武装した北朝鮮があるため、結果として北朝鮮が中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。

さて、このような北朝鮮がベトナムのようになる可能性はあるのでしょうか。現状のままでは無理です。しかし、現在北朝鮮の社会が変わりつつあります。

それは、北朝鮮にもある程度の民主化の可能性がでてきたということです。これについは、以前もこのブログで述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
決裂すべくして決裂した米朝首脳会談だが・・・―【私の論評】今回の正恩の大敗北は、トランプ大統領を見くびりすぎたこと(゚д゚)!
ベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談で、休憩中に散歩するトランプ大統領(右)と
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長(左、2019年2月28日撮影)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
金正恩体制は、恐怖政治で国民の動向を統制し、社会主義の体裁を取り繕っています。しかし実のところ、同国の計画経済はすでに崩壊しており、なし崩し的な資本主義化が進行しています。貧富の差が拡大し、良い意味でも悪い意味でも「自由」の拡大が始まっています。 
それを後押ししてきたのは、実は金正恩氏自身でもあるのです。市場に対する統制を緩めたり強めたりを繰り返した父の故金正日総書記と異なり、金正恩氏は放任主義を続けてきました。この間、「トンジュ(金主)」と呼ばれる新興富裕層の存在感はいっそう大きなものとなり、彼らなしでは北朝鮮の経済は成り立たなくなっているのです。
平壌市内のトンジュ向けのカフェで
北朝鮮で民主化が起きるなら、虐げられた民衆が暴政を倒す「革命」として実現する可能性が高いと多く人が信じてきたようです。政治犯収容所などにおける現在進行形の人権侵害を止めるには、それしか方法がないからです。 
しかし、北朝鮮の体制はそれほどやわではありません。民衆が本気で権力に歯向かう兆候を見せたら、当局はすぐさま残忍に弾圧してしまうだろうことを、歴史が証明しています。
その一方、北朝鮮の体制は「利権」の浸食にめっぽう弱いです。北朝鮮社会では、当局の各部門が持つ大小様々な権限が利権化しています。北朝鮮経済は、利権の集合体であると言っても過言ではないほどで、その仕組みは「ワイロ」という名の潤滑油で回っています。軍隊の中にすら、同じような仕組みが存在するほどです。
ただ、国際社会による経済制裁に頭を抑えられているため、その仕組みはなかなか大きく成長することができませんでした。しかし、ここで制裁が緩和されたらどうなるでしょうか。 
海外から流れ込む投資は、北朝鮮の経済の成長を促し、同国の人々が見たこともないような巨大な利権を生み出すでしょう。また、利権の数自体も爆発的に増え、利害関係の錯綜も複雑さを増します。もはや、ひとりの独裁者の権力の下に、すべての利害を従えることなど不可能になるのです。 
そして、無数の利害関係を最大公約数的に調整する多数決の仕組み、つまりは民主主義が必要になるわけです。 
いずれにしても、北朝鮮経済のなし崩し的な資本主義化の流れは止まらないです。あの国は遅かれ早かれ、上述したような道を辿ることになります。
このような道を辿る道筋には、まずは金王朝の崩壊があるでしょう。そうして、ベトナムや中国のような集団指導体制になることが考えられます。中国の指導体制は、現在習近平がかなり優性であり、習近平終生主席の座につきました。ただし、他の派閥が完璧に崩れたわけではないので、集団指導体制であることには変わりないと思います。

まさにそのとき、北朝鮮はベトナムのような国になることを目指すことができるのです。その後は、中国・ベトナムのようになかなか民主化に踏み切れない状態が続くかもしれません。

それにしても、集団指導体制が構築できれば、ベトナムのように経済発展でき、少なくと国家資本主義のような体制を構築することはできるでしょう。ただし、これはここ5年くらいの話ではなく、もっと後になる可能性が高いです。ただし、着実にその方向には向かっています。

このような道を辿る途中で、核問題も解決される可能性があります。ただし、中国が体制を変えるか(共産党1党独裁の廃止)、米国の対中国冷戦により、経済が弱体化し、他国に影響力を及ぼせなくなるかのいずれの状態にならなければ、核の完全廃棄は難しいでしょう。

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2019年2月27日水曜日

北朝鮮とベトナムの友情の秘密―【私の論評】友情の背景には中国の覇権主義が(゚д゚)!

北朝鮮とベトナムの友情の秘密

パスカル・ヤン (著述家)

 フレデリック・フォーサイスの『戦争の犬たち』が映画化されたのは、1980年のことだった。小説が素晴らしいので楽しみにしていると、ベルギーで友達になった米国人女性が既に観たが、がっかりでむしろ同種の傭兵映画『ワイルド・ギース』を激賞し、小説『リンガラ・コード』もいいが、『戦争の犬たち』の映画を酷評していた。

 彼女は、ザイールのキンシャサ駐在員の妻で、健康診断と休暇をかねてベルギーのブリュセルに数週間滞在しているようだった。

 彼女のお陰で、立て続けにアフリカを舞台にした映画を見ると、ソ連邦の影響なのか、キューバ兵が必ず登場する。米国の世界戦略に対して、ソ連も当時は元気いっぱいで、世界を手中に収めるべく、たとえば、イスラエルとの中東戦争では、操縦士を東ドイツからエジプトに派遣し、現地の操縦士の苦手な夜間の空中戦に備え国際化していたのだ。今で言えば中国のアフリカ進出と同じであろうか。

ソビエト社会主義共和国連邦大使館広報部が日本人向けに刊行していた月刊広報誌
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 歩兵軍団としては、ソ連の代わりにキューバ兵が共産化したアフリカ中央部に多数派遣され、上記の映画では、『怪傑ゾロ』のスペイン兵のように必ず登場し、死んでも死んでも登場していたと記憶する。

ソ連への旅

 そんな折、留学中のベルギーの大学にビラが貼られ、真冬のモスクワとレニングラード(現在のサンクトペテルスブルグ)に15日間現在の貨幣価値でも5万円程度で行けると出ていた。

 試験も終わり、真冬ではあるが、ソ連をみる絶好のチャンスだと思い参加をきめた。その間、二回ほど事前の集合があったが、手続き的な説明でビザや通貨の問題であり、洗脳教育はなかったのか、あったのか、眠っていたので不明だ。

 パスポートは、白紙でできたものをソ連の国営インツリーストが用意してくれ、旅の最後に回収とのことであった。「ソ連の入国スタンプがあると就職にも困るだろう」だと、よく知っている。

 既に、冷戦も末期になっており、軋みが生まれ始めるなか、ソ連は必死に軍備拡張と人気取りをしながら、厳しいアフガン戦争の最中であったのだ。

 1月も半ばに成り、凍え死ぬようなベルギーからアエロフロートのイリューシン62に乗って、更に極寒地モスクワのシュレメチボ第二空港に到着した。そこからは、インツリーストの手配に乗り、コンベアーに乗って盛りだくさんな旅がはじまった。

 時々、洗脳教育の時間があったが、講師はすべてフランス語が完璧に話すロシア人であり、フランス語系ベルギー大学生なので、ヒートアップした議論が展開されることになる。メンバーで外国人は、僕のほか米国人が数名いたが、「SS20配置」問題やシベリアガスパイプライン問題、アフガン問題に関する議論には、僕らは聞くだけであった。白熱して入ることはできなったと言うべきだろう。

 しかし、ロシア人はフランス語を使いながら、極めて丁寧に防戦し、社会主義がいかに素晴らしいかを教えているのだが、ハンガリー動乱やプラハの春についての話になると、さらに防戦一方になっていたようだ。

1989年 全ソビエト労働組合の水着コンペティション作品

 不思議なことに、米国人学生の一人は、三沢にとても詳しくその後、彼とは音信不通になって現在に至っている。

 そんなチームとの珍道中で、有名な大学のキャンパスや星の町も訪問し、レニングラードではコンサート三昧や食事三昧であった。食糧難のソビエト連邦で、僕らに対する見栄なのか、後半は食べ疲れてしまい、半分以上は手つかずで、残るのを見計らったかのように、ウエーターが別の容器に回収していた。その手際の良さは、神の手のようであり、バナナなど南方の果物は金貨を扱うように回収していたのを思い出す。

 米国人は、ソ連の崩壊をいっていたが、確かにその後10年は持たなかったのだ。アンドロポフ、チェルネンコ時代であり、モスクワもレニングラードにも笑いは全く存在していなかった。地下鉄の過度な美しさやシステムに驚いたが、逆に国内便の旅客機は、飛ぶのが不思議な代物で、当時禁止されていた、『ドクトル・ジバゴ』の映画、ララのテーマが何度も機内でながれていて、ちぐはぐさに全員で大笑いした。

 中でも、世界から青年を集めたパトリス・ルムンバ大学で、別のちぐはぐさを目撃した。平等のはずの社会主義で、肌の色による差別が隠然と存在していることを知り、その後、たまたまタクシーを待つことになり、僕と黒人の仲間を少し離れて待つように先方の学生からアドバイスをうけた。後で聞くと、ソ連は人種のカーストがあり、黒人、アジア人、アラブ人は、差別されてしまうとのこと。それもあからさまだそうだ。

ソ連での北朝鮮人とベトナム人の出会い

 そういえば、アフリカからの留学生も多いし、アジア人も多数いたが、フランスやベルギーの大学でよく見る、黒人と白人のカップルは皆無であったのだ。

 聞いてみると、はやりアジア人同士の結束や、ラテンアメリカ人同士のコミニティーはあるが、人種を超えての結束は皆無だとのこと。かといって同国人の結束が強いかというと違うようだ。

 各国の共産主義の度合いに応じてもカーストがあるようで、キューバは圧倒的に高いようだが、役割としては兵士をアフリカに提供することのようであった。

 そして、北朝鮮からの学生は原典を徹底して勉強し、ベトナムの学生と成績を争っているとのこと。

 当時パリの日本館や国際学生村を思い出したが、そこでも台湾からの学生と日本からの学生は旧知のようなつきあいがすぐに始り、その後終生続く場合も多い。

 ベトナムからの留学生と北朝鮮からの留学生は今でもひとたびロシア語になれば、時空を超えて、モスクワでも学生時代に戻るに違いないのだ。

 ベトナムも北朝鮮もソ連邦のお陰で、そんな財産をもっていることを,トランプ大統領は知ってのだろうか。

【私の論評】友情の背景には中国の覇権主義が(゚д゚)!
冒頭の記事では、

「ベトナムからの留学生と北朝鮮からの留学生は今でもひとたびロシア語になれば、時空を超えて、モスクワでも学生時代に戻るに違いないのだ。

ベトナムも北朝鮮もソ連邦のお陰で、そんな財産をもっている」

などとしていますが、北朝鮮とベトナムの友情の背後には、無論そういう側面もあることは否定しませんが、そのようなことよりももっと大きな背景があると思います。本日はそれについて解説します。ただし、上の記事を書いた人は、そのことは当然であり、その上でソ連のとりもつ縁を語っているのかもしれません。

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩党委員長は2月27~28日に、ベトナムの首都ハノイで2度目の首脳会談を開催中です。

握手するトランプ米大統領と金正恩労働党委員長=27日、ハノイ

昨年6月のシンガポール会談は華やかなイベントにすぎず、「取りあえず世界から脚光を浴びよう」と両首脳とも思ったのでしょうが、今回は違うはずです。米朝両国にとって、ベトナムは特別な国です。この因縁の地で長い対立に終止符を打ち、一歩前へ踏み出そうとしているのではないでしょうか。

かつてベトナムは泥沼の戦争に耐えて、米国を敗走させました。ベトナム戦争終結から20年余り後の95年に国交正常化を実現。その間、ベトナムは86年からドイモイ(刷新)政策を進めて経済発展を遂げ、国際的な孤立状態から脱出していました。米国からすれば、ベトナムは対立から和解へと移行できた建設的なパートナーといえます。

一方、朝鮮戦争で戦った北朝鮮とは53年に休戦協定を結んだ後も国交樹立には程遠く、朝鮮半島は「冷戦最後の地」と言われています。国民を飢餓に追い込みながら軍事優先で核ミサイル開発に突き進んできた北朝鮮の歴代指導者も経済発展の重要性は認識していただでしょうが、本格的な改革開放に踏み切れないでいました。実際、金が中国を訪問するたびに先端科学技術を誇る同国の工場や研究所を見学するのは、

「自国を豊かにしたい」という気持ちの表れでしょう。問題はどこを経済発展のモデルとするかです。「ベトナムに見習え」と、トランプは金に言い聞かせるかもしれないです。もはや行き詰まりを見せつつある中国流社会主義市場経済の「成功物語」よりも、対米関係において同じような歴史問題を見事に解決してきたベトナムのほうが身近な模範になりそうです。

金にとっても、ベトナムは親しみを覚える相手です。昨年12月3日、在ハノイ北朝鮮大使館は、「建国の父」金日成(キム・イルソン)国家主席のベトナム訪問60周年を記念する行事を開催して、両国の厚情を温めました。

中国の覇権主義に対抗

容姿から歩き方まで祖父そっくりの正恩にとって、ベトナム訪問を実現すれば対内的に二重の宣伝になります。祖父の「偉大な足跡」をたどっていることと、祖父でさえ解決できなかった「米帝との戦後処理」を清算した、と誇示できるからです。

ベトナムと北朝鮮の対米関係を考える場合、陰の存在となってきた大国、中国を忘れるべきではありません。

中国は「抗米援朝/援越」という歴史ドラマの主人公でした。朝鮮戦争では50年から最終的に撤退する58年まで、中国は約135万人以上の「志願軍(義勇軍)」を投入しました。犠牲者の中には最高指導者・毛沢東の息子も含まれています。中国と文字どおり「鮮血で固められた友情」を構築したことで、北朝鮮は国家の命脈を保てました。

ベトナムに対しても、中国は志願軍としての派遣こそなかったものの、数十万人規模に上る軍事技術者と労働者を送り込み、武器弾薬の提供を惜しみませんでした。社会主義体制を守るために共同戦線を組んでいました。

しかし、大国米国に勝った小国ベトナムは、温情を装った中国の覇権主義的内政干渉に果敢に異議を唱えました。中国が「恩知らずを懲罰」しようとして起きたのが79年の中越戦争です。ベトナムと同じく、歴史的に長らく陸続きの中国による支配下に置かれてきた北朝鮮はこの懲罰戦争を苦々しく傍観し、心情的にはベトナムを支援したことでしょう。

結局、中越戦争は社会主義国同士が交戦することで、冷戦体制の崩壊を促しました。イデオロギー的な対立以上に中国の覇権主義こそが脅威、という現実を国際社会に認識させたからです。

1979年に中国・ベトナム間で勃発した戦争。ポル・ポト政権を崩壊させたベトナムへの懲罰として
中国は解放軍10万人を派遣。しかし、装備・練度共に優越するベトナム軍に解放軍は
大損害を被り、1ヶ月足らずで撤退を余儀無くされた。

ベトナムも北朝鮮も中国と直接国境を接しています。ベトナムは中越戦争に勝利して中国を屈服させました。これは、同じく中国と国境を接している北朝鮮は大いに勇気づけられたでしょう。

一方の北朝鮮は、中国と戦争をしたことはありませんが、やはり中国と国境を接しており、中国に何かと干渉されていました。ところが、北朝鮮が核とミサイルを開発してからこれはずいぶんと変わりました。

北朝鮮と中国は国境を接していることから、短距離ミサイルでも中国を攻撃できます。国境付近で中国が不穏な動きをみせた場合は、短距離核ミサイルでこれを撃破することができます。

さらに、中距離核ミサイルでも、北京や上海などの大都市を攻撃することができます。ICBMでなくても、中国の要衝を叩くことができます。

これは、米国よりも中国のほうが脅威を感じていると言っても過言ではないでしょう。もし、北朝鮮が核を有していなければ、金正恩は叔父である張成沢を粛清したり、兄である金正男を暗殺することはできなかったでしょう。それを実行すれば、ただちに中国が何らかの行動に出た可能性が大です。

しかし、核を持つ北朝鮮に対して、中国はそれはできませんでした。そうして、現状をみまわしていると、北朝鮮は中国に従属しようとする韓国にかわって、今や朝鮮半島が中国に侵食されないように防波堤の役割を担っているのです。

ただし、無論私はこの金正恩の決断を支持するわけではありません。それはまた世界がより危険になることを意味するからです。混み合う空港で異母兄の殺害を命じる男ならば(韓国の情報当局が正しければ)、より多くの人々を死滅させることが自身の存続を保証すると思えば、あるいはもう失うものは何もないと感じれば、ためらうことは何もないことでしょう。

しかし、もし北朝鮮が核を有していなければ、今日米国と首脳会談を開催することなどできなかったでしょう。それどころか、金王朝は滅ぼされ、北には中国の傀儡政権が樹立され、今頃韓国を最終的に組み込もうとしていたに違いありません。

これに関しては、ベトナムを多いに勇気づけたことでしょう。北の核は、中国の注意をそれにひきつけるということで、ベトナムにとっても、安全保障上のメリットがあることはいうまでもありません。実行するしないは別にして、ベトナムも核を持つという選択肢もあり得ることを認識しているに違いありません。

2月のハノイには中国の習近平(シー・チンピン)国家主席も晴れ舞台に登場したいに違いないですが、今のところ誰からも招待されていないようです。ただ米朝会談後、金が帰途に北京詣でをするならば、習は金を「礼儀正しい、儒教精神の長幼の序をわきまえた好青年」と評価することでしょう。

ただし、核を持つ北朝鮮に対しては、習近平といえども好き勝手に干渉することはできません。その北朝鮮が米国側につくことになれば、中国の安全保障政策も大きく変わるに違いありません。

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2018年8月31日金曜日

米も知らなかった…日朝極秘接触 7月にベトナムで拉致問題全面解決に向け協議 日米連携に影落とす危険性も ―【私の論評】ワシントン・ポストでは相変わらずパンダハガーが勢いを維持している(゚д゚)!


北朝鮮交換と接触したとされる北村滋内閣情報官
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 日本と北朝鮮の情報当局高官が7月、ベトナムで極秘接触していた。日本人拉致被害者の全員救出を目指し、安倍晋三首相が信頼する内閣情報官が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の側近である、金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長(統一戦線部長)に直結する女性幹部と非公式協議を行ったという。日朝首脳会談の可能性も探ったとみられる。ただ、ドナルド・トランプ米政権には事前に伝えておらず、今後の日米連携に暗い影を落とす可能性もある。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は28日、衝撃の「日朝極秘接触」のニュースを、関係者の話として伝えた。

 同紙によると、日本からは北村滋内閣情報官、北朝鮮からは南北関係を担当する統一戦線部の金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線策略室長が出席した。拉致被害者問題などについて協議したという。

金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線策略室長

 北村氏は警察庁出身で、第1次安倍政権では首相秘書官(事務担当)を務めた。民主党政権時代の2011年12月末に、内閣情報調査室(内調)を率いる内閣情報官となった。自民党の政権奪還後も留任し、「首相動静」の登場回数が断トツなど、安倍首相の信頼は絶大である。

 金聖恵氏は、金日成(キム・イルソン)総合大学出身とされるエリート官僚で、金英哲氏が5月、正恩氏の親書を持参して訪米した際に同行して注目された。統一戦線部は、CIA(中央情報局)とともに、6月の米朝首脳会談への事前交渉を主導した工作機関であり、金聖恵氏は実務責任者とみられている。

 トランプ大統領と正恩氏がシンガポールで行った米朝首脳会談で、正恩氏は「日本と対話する用意がある」と前向きに語ったとされる。拉致問題は、米国任せだけでは解決しない。そこで、北村氏と金聖恵氏による日朝極秘接触がセットされたようだ。

 官邸周辺は「正恩氏は昨年以降、米朝対話の総指揮を金英哲氏に一本化している。米国でいえば、金英哲氏は国務長官とCIA長官を兼ねているような存在で、北朝鮮の外交と諜報の両面で絶大な力を持つ。官邸とすれば、拉致問題の解決のためには、金英哲氏に絶対につながる金聖恵氏は、ノドから手が出るほど欲しいパイプだった。このため、本来は格が上の北村氏(=格的には金英哲氏と同等)を直々に接触させたと聞く」と語る。

金英哲氏

 この後、8月にも河野太郎外相が訪問先のシンガポールで、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相と短時間接触した。

 安倍首相にとって、拉致問題の全面解決は悲願である。

 拉致被害者家族会の結成20年にあたる昨年、安倍首相は夕刊フジの独占インタビューに応じ、次のように語った。

 「13歳の少女(横田めぐみさん)を含む、多くの日本人が拉致され、今も北朝鮮でとらわれたままだ。この問題を解決するのは、安倍政権にとって最重要課題だ」

 「正恩氏に対し、『拉致、核、ミサイルの諸問題を解決しない限り、北朝鮮は世界からますます孤立し、明るい未来を描くことはできない』と理解させなければならないと思っている」

 「拉致問題を解決するために、あらゆる選択肢を検討する用意はある。一方、『対話のための対話』では意味がない。私と正恩氏が握手するショーのための会談は、むしろ行うべきでないと思う」

 2002年の日朝首脳会談にも、官房副長官として出席した安倍首相は、北朝鮮の欺瞞(ぎまん)性を熟知している。北朝鮮が何度も日本や世界をだましてきたことも体験している。

 このため、安倍首相は6月、官邸で拉致被害者家族と面会した際、「拙速にはやらない。北朝鮮が被害者をすべて帰すといったら(北朝鮮に)行く」と、慎重に語った。

 「北朝鮮の非核化」をめぐる米朝協議が停滞・難航するなか、拉致問題をめぐる日朝協議の進展も簡単ではない。

 加えて、日朝極秘接触が事前に知らされなかったことに、米政府当局者らは不満を高めているという。

 前出のワシントン・ポストによると、複数の米政府高官は、北朝鮮政策について日本と日々情報を共有しているにもかかわらず、日本政府が接触の計画を事前に伝えなかったことに不快感を示したという。

 官邸周辺は「情報の出方を精査する必要があるが、今回の(ワシントン・ポストへの)リークは、北朝鮮問題をめぐる日米連携に暗い影を落とす危険性がある」と語っている。

【私の論評】ワシントン・ポストでは相変わらずパンダハガーが勢いを維持している(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事における、ワシントン・ポストの報道はすぐに真に受けない方が良いと思います。

ワシントン・ポストには「複数の米政府高官は、北朝鮮政策について日本と日々情報を共有しているにもかかわらず、日本政府が接触の計画を事前に伝えなかったことに不快感を示した」としていますが、これが具体的には誰なのかについては触れられていません。

当然のことながら、日本が北と接触することは、内密に行われていたことであり、米国には全く知らせないか、知らせたにしても、ごく一部にしか知らせない可能性もあります。

仮にワシントン・ポストが比較的下の職位の関係者に複数確認を入れたとしても、知らないのは当然なのかもしれません。

もし、複数の関係者の名称が具体的にあげられていたら、このワシントン・ポストの報道はかなり信憑性があると考えて間違いないです。日本側の関係者の実名もあげられていれば、さらに信憑性があるものといえます。

それに、そもそも独立国である日本が、米国に対して日本の高官が、北朝鮮の比較的低い職位の関係者に会ったことまで、何もかも報告する義務があるのでしょうか。

日米関係については、日本は何でも米国の言うとおりとする識者も結構いますが、それは、あのTPP交渉において、そうとばかりはいえないことがはっきりしました。TPP交渉反対派の人々は、TPP交渉をすれば日本は米国の良いようにされるといって大騒ぎしましたが、その懸念はトランプ大統領がTPPから離脱し、そうではなかったことがはつきりしました。

無論、今でも日本は米国の大きな影響下にあることは否定しませんが、何もかも米国の言いなりというのは、正しくはないです。

なぜ、このようなことを言うかといえば先日も、ワシントン・ポスト氏はトランプ大統領に関して間違った報道をしていましたので、特に日米関係の報道は、信憑性が疑われるからです。

それについては、昨日のこのブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
「真珠湾攻撃忘れないぞ」トランプ米大統領、安倍首相に圧力―【私の論評】日本のメディアは米国保守派の歴史観の変貌に無知(゚д゚)!
会談で握手する安倍首相(左)とトランプ米大統領=6月、ワシントンのホワイトハウス

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
米紙ワシントン・ポスト電子版は28日、トランプ大統領が6月にホワイトハウスで安倍晋三首相と会談した際「(第2次大戦の)真珠湾攻撃を忘れないぞ」と前置きした上で、難航している通商問題の協議を始めたと伝えた。異例の発言の背景には、対日貿易赤字の削減を目指し圧力を強める狙いがありそうだ。 
・・・・・〈中略〉・・・・・・・ 
一方多少まともに報道しているところもあります。これは、FNNの取材でわかったことですが、6月にアメリカで行われた日米首脳会談において、トランプ大統領は確かに「アメリカが日本の防衛費を負担して、対日貿易赤字も解消されなければ、ダブルパンチになる」と不満を表明しました。 
そのうえで、「真珠湾攻撃を忘れていない。日本も昔はもっと戦っていただろう。日本も周辺国ともっと戦うべきだ」と述べたのです。
この発言は、「日本が自国の防衛を強化して、アメリカの防衛費の負担を減らすべきだ」と、暗に求めたとみられます。 
関係筋などによると、この時トランプ大統領は、「日本はかつて真珠湾を攻撃したほどの軍事強国であったじゃないか」と言う意味で述べたもののようです。
日本は「防衛費をもっと増やすべきだ」という意味で発言したもので、通商問題で日本を非難する意味ではなかったとしています。
 また、トランプ大統領は、「パールハーバー」と発言したものの、「あのひきょうな攻撃を忘れないぞ」という批判的な意味、言い方はしていないとのことです。
外交上、際どい言葉は、異なる解釈を生み出すケースがあるため、そうした言葉が波紋を生んだケースだといえそうです。 
また、メディアとの関係もあります。トランプ大統領に対して批判的な米リベラル・メディアは、そういうふうに報道したというベースがあるとも忘れてはいけないです。
また、この記事では、 日本のパールハーバー攻撃を卑怯なだまし討とみるのではない見方もあることも掲載しました。米国では特に保守層では、真珠湾攻撃は日米両国がそれぞれの国益を追求した結果起こったものであるとして、日本を「侵略国」であると決めつけた「日本悪玉史観」は事実上、見直されているのです。

トランプ氏も保守派であることから、当然のことながら、こうした歴史観に立脚して「リメンバー・パール・ハーバー」という言葉を使っているとみるべきなのです。であれば、対日貿易赤字の削減を目指し圧力を強める狙いでこの言葉を使った事はありえないわけであり、ワシントン・ポスト紙によるトランプ大統領の「リメンバー・パールハーバー」報道はかなり偏向しているといわざるをえません。

ワシントン・ポスト紙は以前から、日本報道に関して、かなり偏向していました。たとえば、在米の複数の中華系団体は2016年8月15日付け付の米紙ワシントン・ポスト無料版に、日本最南端の東京都・沖ノ鳥島は「島ではない」と主張する意見広告を出しました。また、台湾が実効支配する南シナ海の太平島は「島」ではないとした7月の仲裁裁判所の判断は「不合理だ」と訴えました。

意見広告には台湾の大学の卒業生が組織したとみられる団体や、日本の戦争責任を追及する中華系の団体など台湾系を中心とするグループや個人が名を連ねました。仲裁判断への不満や、沖ノ鳥島を巡る異論を米国で認知させる狙いがあるとみらます。

このことから、ワシントン・ポストは、パンダハガー(親中派)が力を持った新聞であると考えれます。ちなみに、ワシントン・ポストは米国では発行部数が第5位です。

ルパート・マードック氏(左)と三番目元妻ウェンディ・トン氏(右)

一方米国で販売部数が第1位のウォール・ストリートはオーナーのルパート・マードック氏は三番目元妻ウェンディ・トン氏が、中国系であり、親中派であったとみられていますが、その後離婚しました。そのせいもあるのか、極端に親中的な報道をするということありませんでした。

そうして、今年の3月に、ウォール・ストリート紙は、ウェンディ・トン氏は「中国のスパイ」との疑惑を報じています。トン氏は米ドナルド・トランプ大統領の娘婿で、大統領上級顧問を務めるジャレット・クシュナー氏との親しい関係を利用して、トランプ政権内部の機密情報を入手し、中国共産党指導部に流しているというのです。

さらに、親中派の論客として知られ『鄧小平伝』も書いたデーヴィッド・シャンボー(ジョージワシントン大学教授)は大胆にも中国共産党の崩壊を予測し、「ウォール・ストリート・ジャーナル」(2015年3月10日)に寄稿していました。

これについては、詳細は、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国寄りの専門家さえついに唱えだした「中国大崩壊」の論拠―【私の論評】ニッポン人中国スパイ、親中派、媚中派は速やかに転向せよ、そうでないと飯のくいあげになるぞ(゚д゚)!
デビッド・シャンボー教授
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、これはタイトルの通り、中国共産党による支配が、今後〈終焉に向かうだろう〉ことを、理由を挙げながら指摘したウォルストリート紙のコラムで。

これが世界的な話題となった理由の一つは、チャイナハンド(*注)と考えられた人物が中国の崩壊に警鐘を鳴らしたからです。中国に対するスタンスは本人も認めているようで、天安門事件後に体制崩壊と衰退が不可避だと主張する中国ウォッチャーがいるなか、より慎重な立場をとってきたとしています。

【*注:中国の立場を理解する外交官、ジャーナリスト、学者の総称】

つまり衝撃の正体は「あの中国にやさしい専門家さえ『危ない』といっている」という点にあったのです。

以前からこのブログで指摘しているように、米国の新聞は、全部がリベラル系であり、日本でいえば産経新聞がないといっても良い状況ですが、その中でも老舗のウォール・ストリート・ジャーナルは比較的まともな報道をしているといえそうです。

しかし、ワシントン・ポストはあいかわらす、パンダハガー(親中派)の勢いが強いのでしょう。

これは、同時に中国の現状の大変さを物語っているとも受け取れます。日米が協同して、中国を叩くということになれば、中国には太刀打ちできません。

中国としては何とかして、日本を味方に引き入れ、日本を親中派政権にして米国の経済冷戦をかわしたいと考えているのかもしれません。だからこそ、ワシントン・ポストを利用して、日米が離反するように仕向けている可能性があります。しかし、次の総裁選では安倍総理が圧倒的に有利ですから、そのような目論見は成就することはないでしょう。

これは、しばらく趨勢をみてみないことには、まだなんとも言えませんが、ワシントン・ポストの報道にはこういう背景があるということを知った上で、報道を吟味すべきと思います。特にワシントン・ポストを鵜呑みにする日本の報道には、留意すべきです。

【私の論評】


2018年3月6日火曜日

米空母カールビンソン、ベトナム・ダナンに寄港 戦争終結後初 BBC―【私の論評】新たな日米英同盟が、中国の覇権主義を阻む(゚д゚)!

米空母カールビンソン、ベトナム・ダナンに寄港 戦争終結後初 BBC

ベトナム・ダナン沖の米原子力空母カール・ビンソン=5日
米海軍の原子力空母カールビンソンが5日、ベトナムに寄港した。1975年にベトナム戦争が終結して以来、最大の米艦船による寄港となった。

カールビンソンが寄港したのは、港湾都市のダナン。ベトナム戦争時には、米軍が最初に上陸した場所で、非常に象徴的な場所となっている。

カールビンソンの寄港は、両国の軍事的結びつきの強まりを示す狙いがある。

しかし、専門家らは、ベトナムが中国と南シナ海で領有権をめぐって対立するなか、米空母の寄港が中国に対する何らかのメッセージを送る行為になるのは避けられないと指摘した。

中国ではこの日、全国人民代表大会(全人代)が開幕し、2018年の国防予算が前年比8%増の1.11兆元(約18兆5000億円)となったことが発表されている。

ダナンで取材するBBCのジョナサン・ヘッド記者は、米軍とベトナム軍の協力関係は依然として限定的で、ベトナムは寄港の意味合いがどう受け止められるか、慎重に対応する必要があると語った。

中国は今や、地域の実質的な超大国で、ベトナムにとっても最も重要な貿易相手国。このためベトナム共産党の指導部は、中国との関係を荒立てるようなことを慎重に避けようとしていると、ヘッド記者は指摘した。

中国は南シナ海のほぼ全域の領有権を主張しているが、他国が領有権を主張する岩礁や島も含まれている。ベトナムは、西沙(英語名パラセル)諸島や、南沙(同スプラトリー)諸島への領有権を主張し、中国と対立している。

米国は、南シナ海をめぐる対立で一方を支持しない姿勢
を常に示してきたが、米海軍は繰り返し、いわゆる「航行の自由作戦」を同海域で実施しており、中国の領土主張に明確に挑戦する行動をとっている。

カールビンソンは数十年に及ぶ就役で、同海域や周辺を多数回訪れており、最近も通過したことが確認されている。

ダナンはベトナム戦争時、米軍の主要な基地だった。最大90機が搭載可能なカールビンソンは、ベトナム戦争が終結し南北が統一された1975年以降で、米軍として最も大規模なベトナム訪問となる。

長年戦われ多数の犠牲を出したベトナム戦争は、ベトナムでは「米国戦争」と呼ばれている。ベトナム政府は、共産党の兵士と市民の両方で何百万人もの人々が命を落としたと推計しているが、米軍の死者・行方不明者は5万8000人強だった。

(英語記事 US aircraft carrier Carl Vinson in historic Vietnam visit

【私の論評】新たな日米英同盟が、習近平独裁国中国の覇権主義を阻む(゚д゚)!

米空母のベトナム寄港は、ブログ冒頭の記事で英国の公共放送のBBCも報じている時代の画期的変化です。これを理解できない日本の政治家やメディアは、本日も近畿財務局という財務省の一下部機関のしでかしたミスに色めきだっています。

そもそも、文書改竄で内閣総辞職などということが起こり得るはずもありません。もしそうなら、公務員は自分の好きなときにいつでも、総理大臣をやめさせることができることになります。この事件の真相は、朝日新聞が決済文書が改竄されたと大騒ぎして、倒閣しようとしていたのが、朝日新聞が逆にピンチに陥ったというところでしょう。

実際民主党政権だった頃の、2010年にも厚労省東北厚生局が258ヶ所の公文書改竄をしていたにも関わらず時の内閣は総辞職どころか厚労大臣すら辞めていません。

こんなことに色めきたつ日本の政治家やメディアなどは、このベトナムや米国の動きなど全く関心などないのでしょう。

米最大級の空母カールビンソンは最近は我が海上自衛隊との共同演習で日本人にもお馴染みですが、ベトナム戦争以来初めてベトナムの軍港に寄港です。世界の非難をよそに南シナ海を要塞化するシナへの圧力です。

そうして、先にも述べたように、BBCは英国の公共放送ですが、その英国がアジアに戻ってくる気配を見せています。

それについては、以下の動画をご覧いただければ、良くご理解できると思います。


この動画にもあるとおり、英国は空母を南シナ海に派遣することを検討しています。

英国は、航行の自由を確保するために最新空母2隻を南シナ海へ派遣する計画です。これは、昨年7月27日、オーストラリアを訪問中のジョンソン英外相が、シドニーで開いた記者会見で発表しました。

外相は空母派遣の目的について「国際制度のルールや国際貿易に絶対的に必要不可欠な海路の航行の自由に基づく我々の信念を証明することだ」と述べました。さらに、外傷は「英国はEU離脱(Brexit)後にアジア太平洋地域でより大きな役割を担う計画であり、必要であれば地域に英軍を配備する用意もある」と表明しました。

英国の航空母艦HMSクイーン・エリザベス号

また、昨年のこの時期には、中国の戦闘機J-10は南シナ海上空を飛行していた米海軍の軍用機におよそ90メートルの近さまで急接近しました。

一去年、7月、ハーグの仲裁裁判所は南シナ海の広汎な海域に対する中国の領有権主張を退けました。なおその海域は近隣に位置する東南アジア諸国も領有権を主張しています。こうして国際仲裁裁判の判決によって中国は南沙諸島(スプラトリー諸島)の海域での排他的経済水域(EEZ)を主張できないことになりました。

さらに、日本と英国といえば、昨年は事実上の日英同盟の復活がありました。2017年8月30日、英国のテリーザ・メイ首相が日本を訪問しました。アジア諸国の歴訪でもなく、メイ首相はただ日本の安倍晋三首相らと会談するためにだけに、日本にまで出向いて来たのです。その目的は、英国と日本の安全保障協力を新たな段階に押し上げることにありました。

日本を訪問した英メイ首相と安倍首相

英国は1968年、英軍のスエズ運河以東からの撤退を表明しました。以来、英国はグローバルパワー(世界国家)の座から退き、欧州の安全保障にだけ注力してきました。ところが、その英国は今、EUからの離脱を決め、かつてのようなグローバルパワーへの返り咲きを目指しています。

そして、そのために欠かせないのが、アジアのパートナー、日本の存在です。日本と英国は第二次世界大戦前後の不幸な時期を除いて、日本の明治維新から現代に至るまで最も親しい関係を続けてきました。

日本の安倍首相とメイ首相は「安全保障協力に関する日英共同宣言」を発表し、その中で、「日英間の安全保障協力の包括的な強化を通じ、われわれのグローバルな安全保障上のパートナーシップを次の段階へと引き上げる……」と述べ、日英関係をパートナーの段階から同盟の関係に発展させることを宣言しました。

そして、「日本の国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の政策と英国の『グローバルな英国』というビジョンにより」と述べ、英国がグローバルパワーとして、日本との同盟関係を活用して、インド太平洋地域の安定に関与していく方針を明確にしました。

この突然ともいえる、日英同盟の復活ですが、これにはそれなりの背景があります。日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っているといえます。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒しているし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのです。

そうして日英同盟は結局、日英米の三国による同盟関係の追求に発展することでしょう。それは覇権の三国同盟ではなく、新しい安全保障の枠組みとしての「平和と安定の正三角形」になることでしょう。そうして、それこそ、新日英同盟の本当の意味があり、それが実現すれば、日本の国際的地位と外交力は飛躍的に向上することになるでしょう。

そうして、この動きは中国の習近平が、終身独裁を目指していることがはっきりしたので、ますます加速されることになります。何しろ、中国が習近平の独裁国家になるということは、中国が北朝鮮化するといっても過言ではないからです。

これでは、いかに日英米の親中派、媚中派が「中国は経済発展して、いずれ民主的な国家になるのだから、中国と対峙すべきではない」と主張したとしても、ほとんど説得力がありません。今のままでは、日本国内でもいくら「習近平を信じろ、中国を信じろ」などと擁護してみても、ほとんど影響力を行使することはできないでしょう。

ただし、この日米英の同盟を成功させ、有効なものにするには、日本としてもさらに軍事力を強化することが求められるのは間違いないでしょう。

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2016年8月11日木曜日

【緊迫・南シナ海】ベトナムが中国・人工島射程にスプラトリー諸島でロケット弾を配備 インドからミサイル購入も―【私の論評】日本の備えはベトナムよりはるかに強固、戦えば中国海軍は崩壊(゚д゚)!


ベトナムがイスラエルから調達した最新鋭のEXTRAロケット弾。10mの範囲でHitさせる高性能
ベトナムが南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島に移動式のロケット弾発射装置をひそかに設置したことが10日、分かった。ロイター通信が複数の欧米の当局者の話として伝えた。ロケット弾は中国が軍事拠点化を進めている同諸島の人工島を射程に収めるとされ、中国の反発で緊張が高まる恐れがある。

 ロケット弾発射装置は、ベトナムがイスラエルから調達した最新鋭のEXTRAロケット弾発射システム(最大射程150キロ)とみられ、数カ月前にベトナム本土から同国が実効支配する岩礁など5カ所の拠点に船で移送された。数日中に稼働を開始できるという。

 ロケット弾は重さ150キロの高性能爆薬やクラスター爆弾を搭載でき、発射装置の機動性も高いため、敵の上陸作戦にも効果的に対処できる。現在の配備地点からは、中国が滑走路などを建設したミスチーフ(美済)礁、スービ(渚碧)礁、ファイアリークロス(永暑)礁が射程に入る。

 ベトナム外務省はロイターに情報は「不正確」としたが、専門家らは、南シナ海での主権主張を仲裁裁判所に否定された中国が強硬手段に出る事態を警戒し、ベトナムが防衛体制の強化に動いたと分析している。

 一方、インドからの報道では、モディ首相は9月に訪越し、南シナ海問題などを協議する見通し。インドは中国を牽制する思惑から、ベトナムに最新式の巡航ミサイルや対潜魚雷を供与する方向で協議を進めると予想されている。

【私の論評】日本の備えはベトナムよりはるかに強固、戦えば中国海軍は崩壊(゚д゚)!

日本では、未だ尖閣諸島そのものには人員も配置していないし、兵器も設置していません。

しかし、日本も手をこまねいているわけではありません。日本もすでに、海上自衛隊の護衛艦や、P3Cなどの対潜哨戒機や、それを護衛するための航空機、潜水艦など配置していると考えられます。実際に武力衝突ということになれば、ベトナム軍の比ではないほどに強力な備えはしています。

日本のP3C対潜哨戒機 日本の対潜哨戒能力は世界一の水準
ベトナム軍は、派遣しようにも、強力な軍艦も、潜水艦も対潜哨戒機も所有していないため、陸上に強力なロケット弾を配置したのでしょう。それにしても、かつては中越国境紛争で中国を撃退したベトナムです。海上でも意地を見せてほしいです。そのためには、日本は、協力を惜しむべきではないです。

ただし、日本の場合は、軍事秘密ということもあり、さらには中国を無用に刺激したくないということで、明らかにされていないことがいろいろあるようです。

特に、中国側を無用に刺激したくないという意識があることは、未だに尖閣水域に中国漁船が200隻以上も集結している写真が公表されていないことからもうかがい知ることができます。

これは、報道陣も同じことです。これなど、撮影するつもりがあれば、ドローンを飛ばして撮影すれば、さほど困難もなくできるはずです。これなら撃墜されたとしても、犠牲者は出ませんし、撃墜される直前の画像などかなり迫力のある画像が撮影できるはずです。

陸上自衛隊のヘリコプター型のドローン「UAV」

これをしないのは、中国側の報道規制を恐れてのことでしょう。もしそのような報道をすれば、中国側から取材を拒否されることを懸念してのことであると思われます。

軍事秘密ということでは、潜水艦の配置などは、全くスルーでしょう。これは、最新型潜水艦を所有している国では共通のことです。しかし、日本の最新鋭「そうりゅう型」潜水艦などのは尖閣水域のいずれかに複数潜伏しているのは間違いないです。

手前「はるしお」型、後方「そうりゅう」型潜水艦
日本の最新鋭の潜水艦は、工作技術が優れており、ほとんど無音に近いくらいに音を発することがないので、中国は全く探知できません。しかし、中国の潜水艦は、工作技術が低レベルなので、水中をドラム缶を「ドンドン」と叩いて進むような音を出すのと、東シナ海の海の推進は浅いので、日本側はすぐに探知できます。

日本の潜水艦は、逐一中国側の艦艇や、潜水艦の位置を知りながら航行できるのに対して、中国側は、日本の潜水艦の動きを知ることはできません。中国の漁船などはまさか、潜水艦に撃沈されることはないと思っているでしょうが、中国海警や、海監などの艦船や軍艦などは、本当はおっかなびっくりでこの水域に入っているはずです。

さて、こうした海上自衛隊の尖閣付近での動きなど、軍事機密にされている部分もありますが、中には報道されているものもあります。

たとえば、以下の報道がされています。
【防衛最前線(75)】尖閣接続水域で中国フリゲート艦と対峙した海自護衛艦「せとぎり」 対中任務の要として存在感高め…
海上護衛艦「せとぎり」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部のみ引用します。
 6月9日午前0時50分ごろ、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域で海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」の警戒監視網が、1隻の不審な船影を捉えた。中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦。尖閣諸島の久場島北東の接続水域に侵入しており、そのまま進めば領海に入る可能性もあった。 
 せとぎりは海自のP3C哨戒機とも連携しながら監視を続行。同時に、中国軍艦に無線で退去を呼びかけた。しかし、返ってくるのは「ここは中国固有の領海だ」という趣旨の国際法を無視した一方的な主張のみ。日本政府は中国の軍艦が尖閣諸島の領海に入れば、海自に海上警備行動を発令する方針を固めている。それだけに緊張が走る場面だった。

 中国のフリゲート艦と対峙(たいじ)した海自の「せとぎり」は、「あさぎり」型護衛艦の6番艦だ。全長137メートル、幅14・6メートル、基準排水量は3550トン、乗員約220人。平成2年に就役した。艦名は「瀬戸に立つ霧」に由来する。
 搭載する武器は高性能20ミリ機関砲、76ミリ速射砲、短SAM装置一式、アスロック装置一式、3連装短魚雷発射管など。哨戒ヘリ1機も搭載する。
上の記事で気になるのは、「中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦」です。フリゲート艦とは、フリゲート艦の定義は各国によってまちまちですが、駆逐艦や巡洋艦よりは、小型で軽装であることは共通です。日本でいえば、海上保安庁の巡視船の武力を強化したものくらいに捉えれば、良いくらいのものです。
これが、諸外国でいえば駆逐艦なみの護衛艦「せとぎり」と対峙したということです。フリゲート艦では、とても歯が立ちません。さらに、海中には日本の最新鋭潜水艦が潜伏している可能性が高いことも、中国側は承知していることでしょう。

だからこそ、接続水域を航行する以外のことはせずに、離脱したのでしょう。「せとぎり」側の警告を無視すれば、簡単に撃沈されてしまいます。中国側の、フリゲート艦の艦長や乗組員からすれば、命がけの冒険だったことでしょう。

日本では、中国が軍艦を派遣したという報道されていますが、その実は軽装のフリゲート艦です。中国が本気で日本と対峙しようとするなら、フリゲート艦ではなく、駆逐艦クラスを数隻派遣すべきだと思います。

しかし、そのようなことはしません。つい最近では、漁船が300隻、公船が十数隻尖閣付近の水域に入りました。しかし、これもなぜか本日姿を消しました。

これは、私の推測ですが、やはり、中国にとっては、日本の海上自衛隊は手強いのだと思います。日本の海上自衛隊が本気で中国海軍と対峙すれば、中国の空母や、駆逐艦などは、ことごとく海の藻屑と消えることははっきりしています。

航空戦力も便りになりません。中国は合計で1450機程度の戦闘機と攻撃機を保有しています。航空自衛隊は350機未満であり圧倒的な大差があります。

テレビや新聞はこの数字を根拠に「中国空軍は日本より圧倒的に強大で、今やアメリカより強い」などとしています。

だが中国空軍の内訳を見ると朝鮮戦争後のミグ21(ソ連)を国産化したJ-7戦闘機が700機を占めています。

中国空軍の大部分を占めるJ-7戦闘機

ベトナム戦争で北ベトナム軍が使用していたソ連機です。いくら何でもこれは論外で、戦力に含める事はできません。

次に多いのがミグ21を改良したJ-8Ⅱの300機で、双発エンジンにしたり、電子機器を大型化したりしています。しかし、所詮ミグ21であり、これも戦力外通告しましょう。

これで残り450機になり航空自衛隊に近づいてきました。さらに戦力外を引いていきます。

J-10という中国の国産戦闘機が現在も生産されていて、200機以上を保有している。

設計はイスラエルのラビという試作機が元になっていて、中国とイスラエルの軍事交流が盛んだった頃の遺物です。

電子機器や装備もイスラエルの協力を受け、当時の西側に近い機能を持たせてあります。ミグ21より遥かに優れているのですが、外観・機能ともに北欧やフランスの軽戦闘機に類似しています。

初飛行は1998年で、当時の中国の航空技術を考慮すると、どう考えても「それなり」の性能でしかありません。西側のF15やF16に通用するとは考えられず、これも戦力外とします。

Su-27は設計が旧ソ連製で西側のF15やF16に対抗して開発した最後の戦闘機です。Su-27の中国版がJ-11で170機を保有しています。

さらにSu-27の攻撃機型のSu-30系をロシアから76機輸入しています。つまり中国の現有航空「戦力」は全部で246機となります。

J-11
航空自衛隊の350機よりかなり少なくなりました。これに日本と中国の稼働率を掛けてみます。

保有していても稼動しないのは飛べないので、存在しないのと同じです。航空自衛隊の稼働率90%、従って実数は315機です。中国空軍の稼働率推定20%、従って実数は50機です。

日本と中国が尖閣諸島で戦う時には、日本の315機が中国の50機の戦闘機と戦う事になるのです。これも、中国が本格的に尖閣に攻めて来ない理由なのです。

しかしながら、日本は中国機のスクランブルできりきり舞いさせられているということも報道されています。あれは、いつどこに来るか前もってわからないことと、中国は戦力外といいながらも多数の戦闘機を持っているからです。

先日は、北朝鮮の弾道ミサイルが予告なしで発射され、秋田沖のEEZ(排他的経済水域)に落下し、日本は前もって察知できなかったという出来事もありました。日本の安全保障のために、中国空軍の不穏な動きや、北朝鮮の弾道ミサイルへの迅速な対応ができるように、日本の航空自衛隊の質的転換が迫られていると思います。

これに対応するには、一日24時間、軍事偵察ドローンを日本の上空を飛ばせることで対応できます。技術的には、日本なら十分可能です。

中国としては、日本と本気で対峙して、本当に戦争になれば、中国海軍が崩壊してしまうことを懸念しているのだと思います。今失ってしまえば、またもう一度ゼロから構築しなおさなければならなくなります。

航空支援もあまり期待できない中国の海軍は、まだまだであり、日米英露などの海軍には勝てないことは、重々承知しているのだと思います。日本との本格的な対峙は、避けて、海軍力を温存して、いずれ捲土重来を期すると考えているのだと思います。

しかし、国内に対して、東シナ海での示威行動をアピールするため、民兵を積載した中国漁船と公船などを大量にこの海域に派遣して見せたのでしょう。これが、現在の中国がとり得る最大の示威行動なのでしょう。

しかし、日本が少しでも、弱みを見せれば、中国は再び尖閣奪取を成し遂げようと虎視眈々と機会を狙っています。さらに、中国は日々軍備を近代化していることも忘れるべきではありません。

日本としては、さらに尖閣の備えをより強固にすべきです。

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2014年7月2日水曜日

香港で返還記念日に反中デモ、過去10年で最大規模か―【私の論評】日本のマスコミや似非平和主義者は、本格的権力闘争に入った中国のどの勢力に迎合しようというのか?本来は日本の国益を再優先すべきではないのか(゚д゚)!


7月1日、香港で民主派による大規模な反中デモが
開催され、参加者が香港での高度な自治の維持などを訴えた

香港で1日、民主派による大規模な反中デモが開催され、参加者は香港での高度な自治の維持などを訴えた。主催者によると、今回のデモは過去10年間で最大規模になる見通し。

デモのスタート地点であるビクトリアパークでは、「香港市民の自治を守れ」「中国共産党の脅しを恐れるな」などと書かれたバナーが掲げられた。参加者の中には梁振英行政長官の辞任を求める人もいた。

7月1日は、1997年に香港が中国に返還された記念日に当たる。この日は毎年デモが行われており、主催者は今回、自由な選挙制度の実施を求めて、中国共産党に圧力をかけたい意向だ。

梁行政長官は中国返還の記念式典で、2017年の行政長官選挙について、香港政府は普通選挙の実現に向けて「最大限の努力をする」と強調した。

香港では先週、行政長官選挙の実施方法をめぐり非公式の住民投票が行われ、80万人近くが参加。投票は、民主派の野党候補の立候補も認めるよう中国政府に要求することを目的に実施された。

【私の論評】日本のマスコミや似非平和主義者は、本格的権力闘争に入った中国のどの勢力に迎合しようというのか?本来は日本の国益を再優先すべきではないのか(゚д゚)!

昨日は、日本で集団的自衛権そのものが話題になっていましたが、上記にあげたように、香港では過去10年で最大規模の反中デモが開催されています。



7月1日は、1997年香港が中国に返還された日でもあります。香港の人からすれば、中国統治よりも、英国統治時代のほうがましだったとの意思表明でもあると思います。少なくとも、英国統治時代にはある程度まともな選挙が開催されていました。



ベトナムでは以下のようなことがありました。
越書記長、戦争に言及 南シナ海の中国との対立で

ベトナム最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長

 ベトナムの国営メディアによると、同国の最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長は1日、南シナ海での中国との対立について、戦争も含めてあらゆる可能性に対して準備する必要性に言及した。ハノイでの有権者らとの会合で語った。 
 南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近で5月に中国が石油掘削作業を始めたのをきっかけに、現場海域では両国の公船や漁船の衝突が相次ぎ、今も緊張が続いている。 
 チョン氏は「戦争が起きるのかと問う人がいる。ならば、われわれはあらゆる可能性への準備をしておかなくてはならない」と述べる一方、「われわれは戦争を望んではいないし、起こらないようにしなくてはならない」と強調した。 
 チョン氏は平和的方法での問題解決を目指すとの立場をあらためて表明。中国の一般国民と、拡張主義の中国指導部とは分けて考えなければならないとも述べた。

そして日本では、中国からの脅威に対抗しての集団的自衛権行使が容認されました。習政権の侵略・抑圧政策は今、国内外からの総スカンを食らっているということです。

日本国内だけ見ていると、メディアは集団的自衛権そのものの是非が問われているような印象操作をしていますが、これは全くの見当違いです。

習近平は最近軍の幹部の党籍を剥奪するという大きな賭けにでました。以下のそのニュースのURLを掲載します。
習近平指導部、軍掌握へ賭け 中国軍ナンバー2の党籍を剥奪
新華社通信によると、中国共産党中央政治局は30日、胡錦濤政権で中央軍事委員会の副主席を務めた徐才厚氏(71)に対し、党籍剥奪の処分を決めた。汚職など「重大な規律違反」があったとの理由で、事案は司法機関に送られた。今後、軍法会議に訴追される。 
徐才厚氏
 徐氏は人民解放軍を舞台とした巨額汚職に関与したとして、これまで水面下で党機関による実質的な捜査が伝えられていた。軍首脳経験者への党籍剥奪と司法送致の機関決定に踏み切ったことは、習近平政権が軍内の不満を抑えて処理を進められると判断したためとみられる。 
 習近平指導部が中国人民解放軍のナンバー2だった徐才厚・前中央軍事委員会副主席の党籍を剥奪したことは、軍の掌握に向けて大きな賭けに出たといえる。しかし、党内の権力基盤が決して強くない習指導部が軍の実力者に捜査のメスを入れたことで、党や軍から大きな反発を受けることも予想され、政権を一層不安定化させる可能性もある。 
 中国共産党筋は「徐才厚氏の党籍剥奪は北朝鮮の張成沢(チャン・ソンテク)氏処刑と同じくらいインパクトがある」と話す。今後、徐氏の裁判をうまく乗り切れば、習政権にとって大きな成果となる。しかし、中国の軍は「汚職のデパート」といわれている。徐氏だけではなく郭伯雄・前軍事委員会副主席など、ほかの軍首脳にも多くの汚職疑惑がある。習指導部はそうした疑惑すべてに手をつけられるのか。また、身の危険を感じた軍幹部が逆に結束して反撃してくる可能性もあり、今後の展開は予断を許さない。
香港、ベトナム、日本からは総スカンを喰った習近平、苦し紛れに軍に手を入れたようですが、これは、失敗する可能性が大きいです。

習近平が、失脚すれば日本に対しては今までよりは少しはまともになるかもしれません。ただし、あくまで少しという範囲内で、中国のアジアに対する脅威がなくなるというわけではありません。

習近平が失脚せずに、現在の地位にとどまることができたとしても、政権はかなり不安定になります。そうなると、日本への露骨な示威行動がさらにエスカレートする可能性が高いです。

ここしばらくは、中国国内権力闘争がエスカレートしますから、少しの間は小康状態を保つかもしれません。しかし、今後習近平が勝利しても、軍が勝利しても、日本を含むアジアにとっては、予断を許さない状況であるには変わりありません。

世界的視野から観た場合、日本の集団的自衛権が容認されるのは当然のことです。

アメリカもそのようにみています。以下にその関係のニュースのURLを掲載します。

米ケネディ大使 「閣議決定を歓迎し支持」

岸田外務大臣はアメリカのケネディ駐日大使と会談し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことを受けて、日米防衛協力の指針=いわゆるガイドラインの見直し作業を進める意向を伝え、ケネディ大使は日本の取り組みを歓迎し支持する考えを示しました。 
岸田外務大臣は1日、先週亡くなったアメリカのベーカー元駐日大使の弔問のためアメリカ大使館を訪れ、その際、ケネディ駐日大使と会談しました。 
この中で、岸田大臣は政府が集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことを伝え、「今後、日米防衛協力の指針=いわゆるガイドラインの見直し作業をさらに進めていきたい」と述べ、ガイドラインの見直し作業を進める意向を伝えました。 
これに対し、ケネディ大使は「今回の閣議決定は日本だけでなくアジア太平洋地域にとって重要なステップであり、喜ばしい。日本の取り組みを歓迎し支持している」と述べました。
また、岸田大臣は中国の北京で行われた日本と北朝鮮との政府間協議に触れ、今後、協議の内容や政府の対応をアメリカなど関係国に説明する考えを示しました。
これらに対しては、中国の新華社は昨日、集団的自衛権容認に関する論評を掲載して「平和憲法が破壊され日本の海外参戦の道が開かれた」と批判しました。このような発言は、日本国内の反対派の常套句そのままではありませんか。日本の「似非平和主義者」が、中国と同じ論調で日本批判していることはただの偶然ではないと思います。

集団的自衛権の容認反対するデモでは、中国人も多数目撃されています。こうした動向を見ていると、やはり、日本国内での集団的自衛権の容認は正しいことであったと判断せざるを得ません。

?不明白?

それにしても、本格的な権力闘争に入った中国、習近平の今後も不確かな現在、中国の意図などというものはないのも同然です。習近平か、軍か、あるいは他の勢力の意図が、そのときどきで強くなり、中国の意図のように報道されるだけです。

今後マスコミや、日本国内のいわゆる似非「平和主義者」は一体中国のどの勢力の誰の意図に迎合していこうというのでしょうか?

そんな彼らに言いたい、中国のいずれかの意図に迎合するなどという情けないことはやめなさい。一番先に考えるべきは、日本の国益でしょう。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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