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2018年7月11日水曜日

ますます強固になりそうなトランプ政権の対中姿勢―【私の論評】トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、他ならぬ中国に理解されていくことになる(゚д゚)!


共和党議員からの糾弾で「親中派」キャリア外交官が引退


トランプ大統領が直接くびしたわけではないが、トランプ政権では
キャリア外交官のスーザン・ソーントン氏が引退に追い込まれた

 トランプ政権から東アジア太平洋担当の国務次官補候補に指名されていたキャリア外交官のスーザン・ソーントン氏が、議会共和党から中国への姿勢が軟弱にすぎると非難され、引退へと追い込まれた。

 同氏はオバマ政権時代にも中国などを担当していた女性外交官だ。トランプ政権になってから中国政府に対して甘すぎるとして議会の共和党有力議員から激しく糾弾されていた。

 新たな候補には対中強硬派の名前が挙がっており、トランプ政権の対中姿勢がますます強固になることも予測される。

中国への融和的政策に関与していたソーントン氏

 この発表はやや意外に受け止められた。ソーントン氏が次期の国務次官補に正式に指名されていたからだ。同氏は今年(2018年)2月にはトランプ政権下の当時のレックス・ティラーソン国務長官により次の東アジア太平洋担当国務次官補に指名されていた。

 7月初め、米国務省報道官は「東アジア太平洋問題担当の国務次官補代行を務めるスーザン・ソーントン氏が7月末で外交職務から引退する意向を表明した」と発表した。

スーザン・ソーントン氏 写真はブログ管理人挿入

 ソーントン氏はキャリア外交官として1990年代から主に中国を担当する多数のポストに就いてきた。オバマ前政権下では2016年2月に東アジア太平洋担当の国務次官補の筆頭代理となり、同次官補だったダニエル・ラッセル氏の補佐を務めてきた。ラッセル氏がトランプ政権時代が始まってすぐの2017年3月に退任すると同次官補代行となり、国務省における日本や中国を含む東アジア地域担当の事実上の実務最高責任者となってきた。

 今年2月にはティラーソン長官の推薦で正式の国務次官補に指名され、連邦議会の承認を求めるプロセスに入っていた。

 だが、トランプ政権を支える共和党勢力からは、ソーントン氏はオバマ政権時代の中国への融和的な政策に関与しすぎたという批判が絶えなかった。

 連邦議会の上院外交委員会がソーントン氏の国務次官補指名を審議する一連の公聴会で、共和党有力メンバーのマルコ・ルビオ議員らがソーントン氏の対中姿勢はトランプ政権の政策には合わないという趣旨の批判を繰り返し述べた。その結果、同外交委員会での指名承認に必要な賛成票が得られない見通しが生まれていた。

トランプ政権下の中国との折衝には「不適格」

 ルビオ議員らが、公聴会での発言や国務省あての直接の書簡などで明らかにしたソーントン氏の人事への反対の理由は、以下のとおりである。

(1)ソーントン氏はオバマ政権下の国務省で対中政策に関わった際、いまのトランプ政権の中国への強い抑止や対決の政策とはあまりに異なる宥和策の推進に深く関与してきた。そのため、トランプ政権での中国との折衝には不適格である。

(2)米国に亡命して中国共産党を批判していた中国人実業家の郭文貴氏を帰国させるために、2017年5月、中国国家安全部次官の劉彦平氏らがニューヨークに到着した。FBI(連邦捜査局)が彼らを入国手続き違反で逮捕しようとした際、ソーントン氏は反対し、逮捕を阻んだ。

(3)ソーントン氏は国務省の公式ウェブサイトに掲載された台湾(中華民国)の国旗を中国政府の要請に応じる形で削除した。この措置は中国政府の圧力への屈服であり、トランプ政権の台湾政策に反する。

 以上のようなルビオ議員のソーントン氏批判は広範に公表され、共和党が多数を占める上院外交委員会でも同氏の指名に反対する動きが強くなっていた。

 こうした動きの中で、ソーントン氏はトランプ政権の意向も踏まえて、自ら指名を辞退する形をとったとみられている。

 この動きは、トランプ政権や議会共和党の中国に対する姿勢がますます強硬となり、オバマ政権が続けてきた対中関与政策の排除が一層進んだことを反映したといえる。ソーントン氏の引退で空席となった次期のアジア太平洋担当の国務次官補候補には、2代目ブッシュ政権で国防総省の中国部長を務め、現在は民間研究機関のAEIの中国研究部長のポストにあるダン・ブルーメンソール氏らの名前が浮上している。同氏は中国への抑止強化論者として知られる。

【私の論評】トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、他ならぬ中国に理解されていくことになる(゚д゚)!

上の記事にもあるように、トランプ政権や議会共和党の中国に対する姿勢がますます強硬になりそうです。しかし、中国政府は未だ楽観的に構えているようです。

トランプ米大統領が中国の貿易慣行に対して厳しい措置を講じることを真剣に検討していたときに、中国当局者は真に受けておらず、首都北京では危機感がほとんど感じられていないようでした。

中国はこれまで、1992年と95年の場合も含め、米通商法301条による調査を交渉で乗り切ってきた経緯があります。

だから、今回も何とかなるであろうと考えているのかもしれません。しかし、今回の場合、中国が米国側と協議したりやWTOによる解決に頼ろうとする姿勢は、中国の計算ミスとなる可能性があります。

中国政府が理解していないのは、トランプ政権が「大真面目」だということです。トランプ政権)は小さなことで手を打つことはしないでしょう。

そもそも、トランプ政権の狙いは、貿易戦争により貿易赤字を減らすとか、中国の市場を開放させるとか、人民元自由化などということだけではないでしょう。無論これらも、中途の目標ではありますが、最終目標ではないと私は考えています。

トランプ大統領の最終目標は中国にたっぷり貯め込んだ外貨を散財をさせて、その国力を弱体化させることではないかと思います。それも、かなり弱体化させ、二度と米国に立ち向かうことができなくすることでしょう。米国は中国が呼びかけているAIIB(アジアインフラ投資銀行)に最初から冷たくあしらっていました。日本も参加する意思はありません。

トランプ大統領は、外貨がなくなるというか、自らなくそうとしている、国のインフラ投資銀行にわざわざ加盟することはないでしょう。日本もトランプ大統領の対中国戦略の最終目標を知りながら、これにわざわざ加入するような愚かな真似はしません。

トランプ大統領としては、本来ならば中国と戦争をして、中国を屈服させたいのでしょうが、これに関しては米国ドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)達も中国と武力衝突するのは現実的ではないと考えいます。

トランプ政権は、武力にかわるもので、中国を徹底的に弱体化する方策を考えていて、そのもっとも良い方法が、貿易戦争と厳しい金融制裁ということになったと考えられます。

なぜそのようになったかといえば、以下のような背景があると考えられます。

第一にトランプの戦略は中国国内の金利政策、外貨規制に静かに照準を合わせていると考えられます。中国の外貨準備が底をつけば、必然的に人民元は激安へ向かいます。このことは中国人民銀行中枢もよく理解しており、二年前から資本規制を強めて対応してきましたた。

外貨による送金が事実上不可能となり、海外旅行の持ち出し外貨も制限され、海外の不動産購入は認めなくなりました。例外的に海航集団などの欧米企業買収はみとめてきたが、金額ベースで比較すると減少していたという事実があります。

第二に中国の不動産バブル崩壊は必定ですが、それを早めることができます。つまりFRBが金利を上げると、投機資金は米国へ環流します。不動産価格を下支えしているのは、国有企業、国有銀行などが巧妙に公的資金を注入しているからです。中国の庶民がかかえる住宅ローンも、金利が高まれば個人破産が増え、すでに暴動が頻発しています。

第三に中国経済がかかえている難題は「株安」「債券安」「人民元安」と、三つの市場における連続的な下落です。ところが賃金高、物価高、金利高になって、その乖離は激烈になっています。

第四に中国は国内に鬼城と呼ばれるゴーストタウンを量産しましたが、くわえて週一便しか飛ばない辺地に飛行場を造成し、乗客が見込めない田舎にまで新幹線を建設し、あちこちに橋梁を架け、トンネルを掘り、都市部から離れた田圃に新駅を造り、50の地方都市では採算が合わないとされる地下鉄網をつくって、エベレストより高い借金の山をつくりました。

ちなみに中国の新幹線は、いまや25000キロ(鉄道の総延長は12万7000キロ)、とくに新幹線は2012年比較で2・5倍となって、最新鋭「復興号」は、北京上海を350キロ、四時間半で結んで世界一と自慢しました。中国は16両連結を自慢したが、従来は馬力の関係から8両連結をしていました。

第五に遅れて参入した生損保、とりわけ生命保険が迎えるインソルバンによる危機。また老人年金はすでに多くが基金を取り崩しています。悪名高い一人っ子政策により、少子高齢化の速度は日本より速いのですが、中国には介護保険制度はなく、老人ホームは富裕層しか入居できません。

そうして、全世界で展開中のBRI(一帯一路)は、もしすべて完成すると総額は8兆ドルなります。米国からみると、この中国の世界的規模の投資は、当該国経済を活性化させたかつてのマーシャルプランのような公共財の提供ではなく、まさに不良在庫処理と、労働力の輸出であり、相手国経済を収奪することです。


工事中断に至っている案件はニカラグア運河、ベネズエラ高速鉄道、インドネシア新幹線、ミャンマーの水力発電などで、最近ではマレーシア東海岸鉄道事業も中止に追い込まれています。目標通りに完成させたのはヨーロッパをつなぐ鉄道くらいです。大風呂敷のまま終わったのはラス-ロス間の新幹線プロジェクトほか、これまた山のようにあります。

親中派のチャンピオンであるパキスタンですら、現実には大判振る舞いのCPEC(中国パキスタン経済回廊)に570億ドルを投じていますが、随所で工事が寸断しています。パキスタンはIMF管理にはいるほど財政が悪化、中国は渋々10億ドルの追加融資を決めました。ほかにも中国の商業銀行は20億ドルを貸しているという情報もあります。2013年にパキスタン危機では67億ドルの負債を返済できずに、IMF管理となりました。

また中国は鼻息荒く全米の企業買収のみか、不動産を買いまくったのですが、これもかつての日本のように、堤清二、秀和の小林某、イアイアイの高橋某と、乗っ取り王といわれたバブル紳士たちは、高値を掴まされ、最後には底値で物件を手放し、馬鹿を見ました。

中国勢はハリウッド映画買収に失敗、ウォルドルフアストリアホテルを買い取った呉小暉は逮捕され、安邦生命は国有化という惨状をすでに露呈しました。

他方で、トランプ大統領は中国企業がアメリカに進出すると喜びを素直に表現しています。ウィスコン洲でFOXCOM(鵬海精密工業)の工場の起工式に、トランプはわざわざ出席し鍬入れセレモニーに参加しました。この式典には孫正義も参加しています。孫のファンドが出資しているからです。

トランプは起工式でこう語りました。「この工場は米国の美しい鉄鋼と、アルミ、そして部品を使う。素晴らしい工場になる。ウィスコンシン州で私は勝った。レーガン大統領も負けた土地(戦局)で私は勝ったのだ」と意気軒昂に吠えました。

かつて日本はスーパー301条発動に加えて「ローカル・コンテンツ法」によって、自動車メーカーは米国進出を余儀なくされました。それによって部品の下請け、孫請けもぞろぞろと米国へ進出したため、国内は空洞化を来しました。中国もいずれ、そうなるでしょう。

結局、米中貿易戦争とは、米国による中国貧窮化政策であり、次の段階では厳しい金融制裁に打って出て、中国の外貨を吐き出させ、中国の息の根を止めようとしているのです。

そうして、その背景にはやはり、トランプ氏が米国の保守を地盤としているということが大きく影響していると考えられます。

そうして、米国の保守派の間では近年、「真珠湾攻撃背後にソ連のスターリンの工作があった」とする「スターリン工作説」が唱えられるようになってきています。そうしてこれは、90年代に公表されたヴェノナ文書の裏付けもあります。

ベノナ文書 最近も研究が進み様々な事実が明らかにされつつある

本来日米は戦争をするようなことはあり得なかったにもかからず、スターリンの工作により、日米は戦うように仕向けられ、あのようなことになってしまったという考え方です。

この米国の誤りが、ソ連を台頭させ、ソ連は崩壊したものの、最近ではそれに変わって中国を台頭させ、北朝鮮による核の脅威に米国はさらされている。ソ連や中国など断じて許すわけにはいかない。

というのが、米国草の根保守のリーダーであった、故フィリス・シュラフリー女史の発言でもあります。

シュラフリー女史のこの発言に米国の保守層は多大な影響を受けています。トランプ氏も当然影響を受けています。トランプ氏にとって、中国は倒すべき敵なのです。

だから、トランプ氏は何としてでも、中国を徹底的に弱体化しようと日々行動しているのです。そうして、弱体化して中国を米国にとって無害な存在にし、あわよくば、中国の現体制を崩壊させたいと目論んでいることでしょう。

この背景を中国側は、良く理解していないようです。そうして、日本人の多くも理解していないようです。トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、多くの人々そうして、他ならぬ中国に理解されていくことになるでしょう。

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2016年8月11日木曜日

【緊迫・南シナ海】ベトナムが中国・人工島射程にスプラトリー諸島でロケット弾を配備 インドからミサイル購入も―【私の論評】日本の備えはベトナムよりはるかに強固、戦えば中国海軍は崩壊(゚д゚)!


ベトナムがイスラエルから調達した最新鋭のEXTRAロケット弾。10mの範囲でHitさせる高性能
ベトナムが南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島に移動式のロケット弾発射装置をひそかに設置したことが10日、分かった。ロイター通信が複数の欧米の当局者の話として伝えた。ロケット弾は中国が軍事拠点化を進めている同諸島の人工島を射程に収めるとされ、中国の反発で緊張が高まる恐れがある。

 ロケット弾発射装置は、ベトナムがイスラエルから調達した最新鋭のEXTRAロケット弾発射システム(最大射程150キロ)とみられ、数カ月前にベトナム本土から同国が実効支配する岩礁など5カ所の拠点に船で移送された。数日中に稼働を開始できるという。

 ロケット弾は重さ150キロの高性能爆薬やクラスター爆弾を搭載でき、発射装置の機動性も高いため、敵の上陸作戦にも効果的に対処できる。現在の配備地点からは、中国が滑走路などを建設したミスチーフ(美済)礁、スービ(渚碧)礁、ファイアリークロス(永暑)礁が射程に入る。

 ベトナム外務省はロイターに情報は「不正確」としたが、専門家らは、南シナ海での主権主張を仲裁裁判所に否定された中国が強硬手段に出る事態を警戒し、ベトナムが防衛体制の強化に動いたと分析している。

 一方、インドからの報道では、モディ首相は9月に訪越し、南シナ海問題などを協議する見通し。インドは中国を牽制する思惑から、ベトナムに最新式の巡航ミサイルや対潜魚雷を供与する方向で協議を進めると予想されている。

【私の論評】日本の備えはベトナムよりはるかに強固、戦えば中国海軍は崩壊(゚д゚)!

日本では、未だ尖閣諸島そのものには人員も配置していないし、兵器も設置していません。

しかし、日本も手をこまねいているわけではありません。日本もすでに、海上自衛隊の護衛艦や、P3Cなどの対潜哨戒機や、それを護衛するための航空機、潜水艦など配置していると考えられます。実際に武力衝突ということになれば、ベトナム軍の比ではないほどに強力な備えはしています。

日本のP3C対潜哨戒機 日本の対潜哨戒能力は世界一の水準
ベトナム軍は、派遣しようにも、強力な軍艦も、潜水艦も対潜哨戒機も所有していないため、陸上に強力なロケット弾を配置したのでしょう。それにしても、かつては中越国境紛争で中国を撃退したベトナムです。海上でも意地を見せてほしいです。そのためには、日本は、協力を惜しむべきではないです。

ただし、日本の場合は、軍事秘密ということもあり、さらには中国を無用に刺激したくないということで、明らかにされていないことがいろいろあるようです。

特に、中国側を無用に刺激したくないという意識があることは、未だに尖閣水域に中国漁船が200隻以上も集結している写真が公表されていないことからもうかがい知ることができます。

これは、報道陣も同じことです。これなど、撮影するつもりがあれば、ドローンを飛ばして撮影すれば、さほど困難もなくできるはずです。これなら撃墜されたとしても、犠牲者は出ませんし、撃墜される直前の画像などかなり迫力のある画像が撮影できるはずです。

陸上自衛隊のヘリコプター型のドローン「UAV」

これをしないのは、中国側の報道規制を恐れてのことでしょう。もしそのような報道をすれば、中国側から取材を拒否されることを懸念してのことであると思われます。

軍事秘密ということでは、潜水艦の配置などは、全くスルーでしょう。これは、最新型潜水艦を所有している国では共通のことです。しかし、日本の最新鋭「そうりゅう型」潜水艦などのは尖閣水域のいずれかに複数潜伏しているのは間違いないです。

手前「はるしお」型、後方「そうりゅう」型潜水艦
日本の最新鋭の潜水艦は、工作技術が優れており、ほとんど無音に近いくらいに音を発することがないので、中国は全く探知できません。しかし、中国の潜水艦は、工作技術が低レベルなので、水中をドラム缶を「ドンドン」と叩いて進むような音を出すのと、東シナ海の海の推進は浅いので、日本側はすぐに探知できます。

日本の潜水艦は、逐一中国側の艦艇や、潜水艦の位置を知りながら航行できるのに対して、中国側は、日本の潜水艦の動きを知ることはできません。中国の漁船などはまさか、潜水艦に撃沈されることはないと思っているでしょうが、中国海警や、海監などの艦船や軍艦などは、本当はおっかなびっくりでこの水域に入っているはずです。

さて、こうした海上自衛隊の尖閣付近での動きなど、軍事機密にされている部分もありますが、中には報道されているものもあります。

たとえば、以下の報道がされています。
【防衛最前線(75)】尖閣接続水域で中国フリゲート艦と対峙した海自護衛艦「せとぎり」 対中任務の要として存在感高め…
海上護衛艦「せとぎり」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部のみ引用します。
 6月9日午前0時50分ごろ、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域で海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」の警戒監視網が、1隻の不審な船影を捉えた。中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦。尖閣諸島の久場島北東の接続水域に侵入しており、そのまま進めば領海に入る可能性もあった。 
 せとぎりは海自のP3C哨戒機とも連携しながら監視を続行。同時に、中国軍艦に無線で退去を呼びかけた。しかし、返ってくるのは「ここは中国固有の領海だ」という趣旨の国際法を無視した一方的な主張のみ。日本政府は中国の軍艦が尖閣諸島の領海に入れば、海自に海上警備行動を発令する方針を固めている。それだけに緊張が走る場面だった。

 中国のフリゲート艦と対峙(たいじ)した海自の「せとぎり」は、「あさぎり」型護衛艦の6番艦だ。全長137メートル、幅14・6メートル、基準排水量は3550トン、乗員約220人。平成2年に就役した。艦名は「瀬戸に立つ霧」に由来する。
 搭載する武器は高性能20ミリ機関砲、76ミリ速射砲、短SAM装置一式、アスロック装置一式、3連装短魚雷発射管など。哨戒ヘリ1機も搭載する。
上の記事で気になるのは、「中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦」です。フリゲート艦とは、フリゲート艦の定義は各国によってまちまちですが、駆逐艦や巡洋艦よりは、小型で軽装であることは共通です。日本でいえば、海上保安庁の巡視船の武力を強化したものくらいに捉えれば、良いくらいのものです。
これが、諸外国でいえば駆逐艦なみの護衛艦「せとぎり」と対峙したということです。フリゲート艦では、とても歯が立ちません。さらに、海中には日本の最新鋭潜水艦が潜伏している可能性が高いことも、中国側は承知していることでしょう。

だからこそ、接続水域を航行する以外のことはせずに、離脱したのでしょう。「せとぎり」側の警告を無視すれば、簡単に撃沈されてしまいます。中国側の、フリゲート艦の艦長や乗組員からすれば、命がけの冒険だったことでしょう。

日本では、中国が軍艦を派遣したという報道されていますが、その実は軽装のフリゲート艦です。中国が本気で日本と対峙しようとするなら、フリゲート艦ではなく、駆逐艦クラスを数隻派遣すべきだと思います。

しかし、そのようなことはしません。つい最近では、漁船が300隻、公船が十数隻尖閣付近の水域に入りました。しかし、これもなぜか本日姿を消しました。

これは、私の推測ですが、やはり、中国にとっては、日本の海上自衛隊は手強いのだと思います。日本の海上自衛隊が本気で中国海軍と対峙すれば、中国の空母や、駆逐艦などは、ことごとく海の藻屑と消えることははっきりしています。

航空戦力も便りになりません。中国は合計で1450機程度の戦闘機と攻撃機を保有しています。航空自衛隊は350機未満であり圧倒的な大差があります。

テレビや新聞はこの数字を根拠に「中国空軍は日本より圧倒的に強大で、今やアメリカより強い」などとしています。

だが中国空軍の内訳を見ると朝鮮戦争後のミグ21(ソ連)を国産化したJ-7戦闘機が700機を占めています。

中国空軍の大部分を占めるJ-7戦闘機

ベトナム戦争で北ベトナム軍が使用していたソ連機です。いくら何でもこれは論外で、戦力に含める事はできません。

次に多いのがミグ21を改良したJ-8Ⅱの300機で、双発エンジンにしたり、電子機器を大型化したりしています。しかし、所詮ミグ21であり、これも戦力外通告しましょう。

これで残り450機になり航空自衛隊に近づいてきました。さらに戦力外を引いていきます。

J-10という中国の国産戦闘機が現在も生産されていて、200機以上を保有している。

設計はイスラエルのラビという試作機が元になっていて、中国とイスラエルの軍事交流が盛んだった頃の遺物です。

電子機器や装備もイスラエルの協力を受け、当時の西側に近い機能を持たせてあります。ミグ21より遥かに優れているのですが、外観・機能ともに北欧やフランスの軽戦闘機に類似しています。

初飛行は1998年で、当時の中国の航空技術を考慮すると、どう考えても「それなり」の性能でしかありません。西側のF15やF16に通用するとは考えられず、これも戦力外とします。

Su-27は設計が旧ソ連製で西側のF15やF16に対抗して開発した最後の戦闘機です。Su-27の中国版がJ-11で170機を保有しています。

さらにSu-27の攻撃機型のSu-30系をロシアから76機輸入しています。つまり中国の現有航空「戦力」は全部で246機となります。

J-11
航空自衛隊の350機よりかなり少なくなりました。これに日本と中国の稼働率を掛けてみます。

保有していても稼動しないのは飛べないので、存在しないのと同じです。航空自衛隊の稼働率90%、従って実数は315機です。中国空軍の稼働率推定20%、従って実数は50機です。

日本と中国が尖閣諸島で戦う時には、日本の315機が中国の50機の戦闘機と戦う事になるのです。これも、中国が本格的に尖閣に攻めて来ない理由なのです。

しかしながら、日本は中国機のスクランブルできりきり舞いさせられているということも報道されています。あれは、いつどこに来るか前もってわからないことと、中国は戦力外といいながらも多数の戦闘機を持っているからです。

先日は、北朝鮮の弾道ミサイルが予告なしで発射され、秋田沖のEEZ(排他的経済水域)に落下し、日本は前もって察知できなかったという出来事もありました。日本の安全保障のために、中国空軍の不穏な動きや、北朝鮮の弾道ミサイルへの迅速な対応ができるように、日本の航空自衛隊の質的転換が迫られていると思います。

これに対応するには、一日24時間、軍事偵察ドローンを日本の上空を飛ばせることで対応できます。技術的には、日本なら十分可能です。

中国としては、日本と本気で対峙して、本当に戦争になれば、中国海軍が崩壊してしまうことを懸念しているのだと思います。今失ってしまえば、またもう一度ゼロから構築しなおさなければならなくなります。

航空支援もあまり期待できない中国の海軍は、まだまだであり、日米英露などの海軍には勝てないことは、重々承知しているのだと思います。日本との本格的な対峙は、避けて、海軍力を温存して、いずれ捲土重来を期すると考えているのだと思います。

しかし、国内に対して、東シナ海での示威行動をアピールするため、民兵を積載した中国漁船と公船などを大量にこの海域に派遣して見せたのでしょう。これが、現在の中国がとり得る最大の示威行動なのでしょう。

しかし、日本が少しでも、弱みを見せれば、中国は再び尖閣奪取を成し遂げようと虎視眈々と機会を狙っています。さらに、中国は日々軍備を近代化していることも忘れるべきではありません。

日本としては、さらに尖閣の備えをより強固にすべきです。

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