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2019年8月21日水曜日

台湾総統選に波及した習近平の二つの誤算―【私の論評】米国のF16V台湾売却でより確かものになった蔡英文総統の再選(゚д゚)!

台湾総統選に波及した習近平の二つの誤算

収束しない香港デモ

福田 円 (法政大学法学部教授)

台湾総統選への動向が注目される柯文哲・台北市長 

台湾では、2020年1月の総統選挙に向けて、二大政党である与党・民主進歩党と中国国民党がそれぞれ候補者を選出した。

 今年初めの時点では、現職の蔡英文の再選は絶望的だと見られた。逆に、18年11月の統一地方選挙で勢いを取り戻した国民党は、複数の有力者が候補に名乗りを上げ、政権交代をと息巻いた。ところが、この半年間で蔡英文はじわじわと支持を取り戻して、民進党候補者の座を勝ち取り、最近の世論調査では国民党候補者となった韓国瑜よりも優勢だという結果も出ている。

 このような状況は、蔡英文が自力で勝ち取ったものではない。中国の習近平政権は、独立志向の強い民進党から親中色の強い国民党への政権交代を望んでいたが、その戦略に二つの誤算が生じたことが大きいと言えよう。

 19年1月2日、習近平国家主席は対台湾政策に関する重要講話を行い、自身の政策方針となる5項目(以下、「習五点」)を打ち出した。第一の誤算は、これへの台湾民意の反発が、思いの外激しかったことである。

 習近平の重要講話は、胡錦濤前政権期の「独立阻止」から自身の「統一促進」へと、方針の転換を明確に示すものであった。具体的には、従来は「92年コンセンサス」について、国民党との間で「一つの中国」に関する解釈の相違があることをあえて曖昧にしたまま、互いがその「一つの中国」の前提に立つことをうたってきた。その「92年コンセンサス」に、「国家の統一を求めて共に努力する」との条件を付した。また、「一国二制度」や「武力の使用」など、胡錦濤前政権が台湾民意の反発を恐れて極力使用を避けてきた文言も盛り込んだ。

 習近平にとっての、第二の誤算は、香港で起きた逃亡犯条例改正に反対する運動に、台湾の市民社会が共鳴したことである。香港政府がこのタイミングで逃亡犯条例の修正案を提出した背景にも、不確かな点が多い。直接的には、台湾にて香港人が犯した殺人事件がきっかけであるとされているが、それだけではないだろう。

 習近平が逃亡犯条例改正案の提出をどの程度主導したのかは明らかでないが、「習五点」同様に対香港政策でも攻勢に出ようとした可能性のほか、香港に逃れる中国人資本家を取り締まり、米中貿易戦争の影響を受けた資金流出を防ぐのが真の目的だったという説もある。そして、その根底にはやはり、14年の「雨傘革命」以降に行った数々の取り締まりにより、香港における抵抗の勢いは相当程度が削(そ)がれたという現状認識があったように思える。

 ところが、香港では条例改正に反対する大規模なデモが起こり、その規模は03年の国家安全条例反対デモの規模を大きく上回った。その後も断続的に多様な形態のデモが継続しており、本稿執筆時点においても収束する見通しは立っていない。

 香港の情勢は、蔡英文政権にさらなる勢いを与えることとなった。香港で最初の大規模デモが勃発(ぼっぱつ)すると、蔡英文は直ちに、既に民主化を果たしている台湾は絶対に「一国二制度」を受け入れないと主張する声明を発表した。この「民主主義の守護」を前面に打ち出した姿勢が、「香港を支えよう」とする台湾市民社会の論調とも合致し、蔡英文の支持率をさらに引き上げた。

 こうした状況下で、今でも習近平政権が韓国瑜・国民党政権の誕生を望んでいるのかどうかは定かではない。習近平は、胡錦濤前政権の対台湾政策に批判的であるのと同様、そのカウンターパートであったにもかかわらず、台湾の民意をうまく誘導できず、ひまわり学生運動のような事態を招いてしまった国民党に対する評価も厳しい。

 また、習近平は、韓国瑜や国民党が今後どのような対中政策を採るのかも、さらに見極めようとするだろう。実際、韓国瑜・国民党は選挙戦を考慮すれば、「習五点」が示した「92年コンセンサス」の条件を受け入れるわけにはいかず、「一国二制度」にも否定的な発言を繰り返さざるを得ない。

米中関係が緊張するほど
台湾に圧力を強める習政権

 そこで、今後、総統選の鍵を握るのは、柯文哲・台北市長の動向と、それに対する習近平政権のアプローチである。柯文哲は8月に入り新党「台湾民衆党」の結成を表明した。9月に入るまで総統選に出馬するか否かを表明しないとしているが、柯の出馬や、国民党予備選挙で破れた郭台銘(テリー・ゴウ)との協力によって、選挙戦の構図は変わる可能性がある。

 目下、柯文哲は「両岸一家親(中国と台湾は一つの家族)」という習近平の発言に同調することで、台北市長として中国との交流を保持している。現時点で習近平政権が柯文哲にそれ以上の立場を問わないのは、その利用価値を見極めるためであろう。

 世論調査結果によれば、柯文哲はこれまで対中政策上の立場を国民党寄りにシフトさせてきているのにもかかわらず、参戦すれば蔡英文への支持票をより多く奪うとみられている。つまり、習近平政権は韓国瑜と柯文哲の陣営を天秤にかけつつ、双方と交渉の余地を残し、蔡英文以外の政権下で台湾民衆が享受できる経済的利益を示すことで、蔡英文の再選を阻むことができる。

 そして、習近平政権にとって、そのような駆け引きが持つ重要性は、米中関係の行方に大きく左右されよう。そもそも、米中関係が安定していれば、中国の指導者は台湾問題については米政府と駆け引きをすれば良いので、台湾の選挙にそこまで気を揉む必要はない。しかし、米中関係が緊張や不確実性を抱えれば抱えるほど、台湾の選挙戦は習近平政権にとって大きな意味を持ち、その展開によっては武力行使などに踏み切る可能性も排除できない。

 米中貿易協議が進展を見せぬ中、中国政府は8月1日付で中国から台湾への個人の観光旅行を全面的に停止すると発表した。蔡英文政権への圧力を強める狙いがあるとみられる。今後の台湾総統選挙の行方と、習近平政権の動向に注目が集まる。

 これに対して、蔡英文は「一国二制度」は受け入れられないと主張する演説を直ちに発表し、その断固たる姿勢は蔡英文の支持率を引き上げる出発点となった。他方で、国民党の主要政治家は、「一国二制度」などに対する立場を問われ、説明に窮した。

 習近平がこのタイミングで蔡英文政権・民進党に塩を送り、国民党に冷や水を浴びせるような演説を行ったのはなぜか。二つの説明が可能であろう。

 一つは、17年に開催された第十九回党大会以降自信を深めた習近平は、もはや台湾の政局に配慮する必要はないと考えており、自身が促進すべき「統一」へと向けた対台湾政策を表明したのだという見方である。もう一つは、国民党が政権を奪還した後を見越して、「一つの中国」に関してより高いハードルを設定したという見方である。いずれにしても、習近平は蔡英文がこれほど勢いを取り戻すとは考えていなかったのではないかと思われる。

【私の論評】米国のF16V台湾売却でより確かものになった蔡英文総統の再選(゚д゚)!

上の記事にもあるように、1月2日、中国の習近平国家主席は、台湾政策について包括的な演説を行い、その中で、台湾統一は「一国二制度」によるという方式を打ち出しましたた。「一国二制度」は、香港が中国に返還された際に中国が50年間の香港統治のための方式として約束したものです。

蔡英文総統は、同発言に対し、直ちに「台湾の大多数の民意が『一国二制度』を受け入れることは絶対にない」と断言しました。

さらに、野党国民党支持者などで受け入れる人の多い「92年コンセンサス」(「一つの中国」の内容は中台それぞれが解釈する。台湾にとっては「一つの中国」は「中華民国」を意味する)に関しては、北京当局によって「一国二制度」と実質的に同じものと定義されたため、これまで期待されていた同床異夢の曖昧さがなくなったとして、もうこれを口にするはやめるべきだと訴えました。

蔡英文総統

「一国二制度」は、かつて鄧小平によって台湾統治の方式として検討されたことはありましたが、実際には香港統治に利用されました。今日の民主化した台湾の人たちが受け入れる余地のほとんどない方式であり、今日の状況下でこのような方式を打ち出したこと自体、中国がいかに台湾の現状を知らないかの証左と見られても不思議ではないです。

この習近平発言の結果、昨年11月の統一地方選挙において大敗を喫した蔡英文への支持率が逆に増えました。蔡英文の支持率は、蔡の慎重な対中態度やいくつかの国内問題への対応ぶりから低迷していました(19%といった数字も見られる)が、習近平発言後の世論調査によると、支持率急上昇、61%に上昇したとの調査もありました。これは、主として蔡が「一国二制度」を拒絶し、民主主義下の「台湾の主権」に言及したことによるものです。

「一国二制度」の台湾への適用については、民進党、国民党の支持者の区別なく台湾人の大多数がこれに反対していますが、他方、「92年コンセンサス」については、国民党のなかに依然としてこの方式によって中台関係を規定したいとの考え方が見られます。

特に馬英九政権下では中国と交流する際には、「一つの中国」の内容は中台それぞれが解釈し、台湾にとっては「一つの中国」は「中華民国」を意味する「一中各表」が前提となっていました。ところが、今回の習近平発言の結果、中国の台湾政策の核心が「一国二制度」であることが極めて明白となったことにより、「一中各表」を掲げる国民党としても新たに複雑な課題に直面することになりました。

呉敦義・国民党主席、朱立倫・元国民党主席、そして、蒋経国元総統の孫で蒋介石の曾孫である蒋萬安・立法委員らも習近平の「一国二制度」による台湾統一の提案には反対を唱えているといいます。

1月15日付けの台北タイムズ社説‘Tsai must back words with actions’は、蔡英文に対して、こういう稀有な挙国一致的反対を好機として捉え、中国に対する強硬な主張を如何に実行に移すかが次の重要な課題である、と述べました。

蔡英文は、最近日本側関係者に対し、台湾としてはTPPに参加したいので日本の支持を得たい、と述べました。また、習近平が「中国としては台湾に対する武力行使の可能性を排除しない」旨の発言をしたことに関連して、台湾の防衛のために、米国のほか日本を含む各国との協力に期待すると述べ、安全保障の面において中国への警戒感を一段と強めています。

こうした動きは、台北タイムズ社説がいうところの「強硬な主張を如何に実行に移す」行動の一環と見てよいでしょう。蔡英文政権の中国への対応が、今後、より強硬かつ対立的になることが十分に予想されます。

そうして、この蔡英文の主張は、米国を動かし、今日台湾にとって長年の悲願であった米国のF16売却が、実現に結びつきそうです。米トランプ政権は、米議会に対して、F16の売却を認めるとの方針を通知したと米主要メディアが伝えたのです。

この通知は非公式の段階ですが、すでに各方面で広く報じられており、議会にも反対の声はないとみられ、66機計80億ドルという近年にない台湾への巨額武器売却が、この台湾総選挙まで残り5カ月を切った敏感な時期で実現に向かうことの意味は大きいです。

この売却を報じた米メディアは、加熱する米中貿易戦争と緊迫する香港情勢において、中国の牽制を目的としたものだという見方を伝えています。それは必ずしも間違いではないかもしれないですが、これは米トランプ政権が来たる台湾総統選において、現職の民進党・蔡英文総統を支持するというサインをこのF16売却承認を通して明確に伝えたとみるべきと思います。
中国による香港への軍介入については、まだその時期には至っていないですが、暴力が続けば状況は変わるかもしれません。しかし、軍の直接介入は中国にとってコストが高過ぎます。あらゆる手段が尽きた場合に初めて発動されるでしょう。

「コスト」の内容としては、米中冷戦が長期化する中、香港の金融センターとしての地位は中国にとり重みを増しており、米国が香港に与えている優遇措置が止められた場合中国経済への打撃が大きいということがいえます。そのため、習近平は香港への軍事介入は慎重にならざるを得ないのです。

F16の売却については、台湾の蔡英文政権はトランプ政権にかねてから打診をしており、前向きな感触を得ていました。蔡英文総統は、この7月に外遊するなかでニューヨークでのトランジット滞在を米側に認められるなど「破格の好待遇を米国から受けた」だと評価されました。

F16の売却が実現すれば、7月に同様に米議会に通知された米戦車の売却以上の「快挙」となります。一方、中国外務省の耿爽副報道局長は19日の記者会見で、早速、売却取り消しを米国求める考えを明らかにしました。

台湾の戦闘機は、米国のレーガン政権時代に承認され、1990年代に売却されたF16の初期型A/Bの144機のほか、フランスから購入したミラージュ、自主開発した経国号(IDF)が配備されていますが、いずれも老朽化しており、あと10年以内に大型改修をしなければ退役という年代物ばかりです。

いずれ遠くない時期には、世代交代を急スピードで進めている中国の戦闘機に追い抜かれ、台湾海峡軍事バランスの最後の砦である制空権でも完全に太刀打ちできない状況に追い込まれることが目に見えていました。

台湾も決して手をこまねいていたわけではなく、前々政権の陳水扁時代の2006-2007年にかけて、当時の新鋭型であるF16 C/D型を新たに購入したいという要望を米国に提案しようとしていましたが、門前払いを食っていました。

当時は米中関係も安定しており、中国との対立を煽るような独立色の強い発言を繰り返していた陳水扁総統に米国が不信感を抱いていたことが響いていました。

その後、国民党の馬英九政権になると、中台関係も安定していたため、台湾は再び、F16の売却実現を期待したのですが、米国は中国への配慮から、A/Bのアップグレードに応じるという中途半端な決定を下しました。

それでも総額58・5億ドルという巨額なものとなったのですが、当時の米オバマ政権がやはり中国を過度に刺激しないことを優先させた決定だと見られていました。

台湾中部の彰化県で行われた軍事演習「漢光35号」に参加した米国製のF16V戦闘機(2019年5月28日)

今回売却されるのはF16 Vと呼ばれるF16シリーズのなかでも第四世代の最も先進的な機種で、航続距離や耐久性、レーダーなどに優れており、米軍とのデータリンクもより柔軟に対応できます。

現在保有するF16A/BもV型に改修中で、この売却により、台湾の航空戦力の対中均衡は当分、維持され得ると見られます。

肝心のトランプ大統領が台湾問題をどう見ているのかについては相変わらず決め手となるような情報はないですが、今回のF16売却決定には、ボルトン大統領補佐官や、シュライバー米国防次官補など、政権内の対中強硬派であり、親台派でもあるグループが大きな役割を演じたと言われています。

シュライバー米国防次官補

彼らは基本的に対中接近を掲げる国民党に対して近年、厳しい見方をしており、国民党の総統選候補に決まった高雄市長の韓国瑜氏とも距離を置いているようです。

現在、蔡英文総統は、昨年までの支持率低迷から回復を続けており、これまで先行していた国民党の韓国瑜氏と接戦、あるいは追い抜くところまで持ち直しています。最新の世論調査では、蔡英文氏と韓国瑜氏の一対一の対決となった場合、台湾のテレビ局TVBSの調査では、蔡英文氏が5ポイントリードし、美麗島電子報の調査では、蔡英文氏が14ポイントという大きなリードを見せています。

中国という大きな脅威を抱える台湾の社会は、防衛上の後ろ盾である米国の姿勢に敏感で、民進党・国民党支持者を問わず、米国のお墨付きを得ているかどうかを気にします。

もし、この売却が実際に実現すれば、民進党は台湾の世論に対して、「米国支持」を強く印象付ける宣伝戦を展開することができ、蔡英文総統は、香港問題に続いて有力な「武器」を手にすることになります。

総統選まで半年を控えたこのタイミングで武器売却を決めれば、台湾への武器売却に神経質になっている中国の反発が必至であることは誰でも想像がつきます。今後、米中の軍事交流などが中断するなどの影響は避けられないでしょう。もちろん米国も中国の反発は織り込み済みで今回の行動に出ています。

もちろん米国はこうした事情をすべて織り込んでF16を売却するべきだと判断しており、中国が当選を望んでいない蔡英文総統の再選を、米国は支持するという強いサインと見るべきです。

緊迫する香港情勢において中国は、米国がデモ隊を背後で操っていると疑っており、米中対立の煽りもうけて、香港問題が米中関係の焦点になりつつあります。

台湾への武器売却が実現すれば、米中関係のさらに新しい火種となることは間違いないです。そのうえ解放軍や武装警察による香港への介入をにおわせる中国を牽制する効果もあり、このF16の売却決定が、今後の香港、台湾などを含んだ東アジア情勢に与えるインパクトを小さく見積もるべきではないです。

そうして、日本も台湾に対してTPP加入の促進などで協力すべきです。

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2019年3月27日水曜日

トランプ大統領「再選」の目に韓国&北朝鮮が震撼! 日本は拉致問題解決の追い風に―【私の論評】トランプ再選の可能性はかなり高い(゚д゚)!安倍四選も?


ロシア疑惑を乗り切ったトランプ氏

 ドナルド・トランプ米大統領に「再選」の目が出てきた。2016年の大統領選をめぐるロシア疑惑をめぐり、特別検察官が提出した捜査報告書で、トランプ陣営とロシアの共謀は認定できないと指摘されたのだ。来年の大統領選に向けた「最大の障害」がなくなり、トランプ氏は続投に意欲を見せる。一方、韓国と北朝鮮には震撼(しんかん)が走りそうだ。トランプ氏は韓国への不信感を強め、北朝鮮にも制裁を緩める気配がない。日本にとっては、悲願の拉致被害者奪還に追い風となりそうだ。

 「2年間もかけて、証拠が1つも出なかった。米民主党としては、ロシア疑惑しか、トランプ氏の再選を阻む手段はない。経済政策はうまくいっているし、外交でも米中新冷戦でポイントを挙げている。民主党の大統領候補は極左ばかりで、トランプ氏の再選の可能性がさらに強まった」

 国際政治学者の藤井厳喜氏はこう語った。

 ウィリアム・バー司法長官は24日、ロバート・モラー特別検察官の捜査報告書について議会に概要を報告した。そのなかで、「特別検察官の捜査は、トランプ陣営や関係者らが、大統領選に影響を及ぼすためロシア側と共謀したり協力したりしたということを見いださなかった」と指摘した。

 司法妨害についても、バー氏は「特別検察官の捜査による証拠は、大統領の司法妨害への関与を立証するには不十分」と結論づけたとする意見を記したという。

 こうした動きを受け、トランプ氏は同日、ツイッターに「共謀も(捜査)妨害もない。完全かつ全面的に疑いが晴れた。米国を偉大にし続けよう!」と投稿した。「偉大にし続ける」という部分から、続投への強い意欲が感じられる。

 米議会下院を握る民主党は報告書全文の公開を要求したが、トランプ氏にとっては「再選への追い風」となったのは事実のようだ。

 これらは、韓国と北朝鮮には「最悪の事態」を意味する。トランプ氏と両国との関係悪化が顕在化しているからだ。

 米国の同盟国である韓国だが、文在寅(ムン・ジェイン)政権の誕生後、米韓関係は悪化の一途をたどっている。

 北朝鮮の「核・ミサイル」問題をめぐり、文政権が「仲介者」となって始まった米朝交渉だが、北朝鮮の「見せかけの非核化」が明らかになり、2月末の米朝首脳会談は決裂した。世界各国で、対北制裁緩和を主張し続けた文大統領に対し、トランプ政権は「北朝鮮の代弁者」とみなして不信感を強めている。

 韓国の保守系メディアは最近、「米韓関係の悪化」を懸念する記事を掲載している。

 米朝首脳会談から1カ月近くがたった25日にも、中央日報(日本語版)は《「文大統領の仲裁論に米国務長官が不快感、韓米外相会談はないと…」》と伝えた。記事では、ワシントンの情報筋の話として、マイク・ポンペオ国務長官と、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の会談が、今月中にはないとの見方を紹介している。

韓国海軍駆逐艦による、海上自衛隊哨戒機への危険な火器管制用レーダー照射事件についても、米国側は「韓国側の暴挙」について、日本側から詳細な情報を得ているという。

 北朝鮮にとっても、トランプ政権の継続は歓迎すべき話ではない。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は昨年6月と今年2月、トランプ氏との首脳会談に臨んだが、何の成果も得られなかった。列車で3日近くかけて大宣伝しながらベトナムに乗り込んだものの、経済制裁も緩和されず、最高指導者の権威に傷がつくだけの結果に終わった。

 先週、正恩氏のロシア訪問を示唆する動きがあったが、米朝首脳会談の決裂を受けて、米国の譲歩を引き出そうとした可能性がある。

 前出の藤井氏は「トランプ氏が強くなるということは、『親北』の文政権にはマイナスだ。北朝鮮としても、『もう少し柔らかい民主党の大統領になれば、くみしやすい』とみているだろう。トランプ政権が続けば『核・ミサイル』問題で妥協せざるを得なくなるはずだ」と解説する。

 逆に日本にとって、トランプ氏の続投は追い風といえる。



 安倍晋三首相とトランプ氏との信頼関係が強固で、先月の米朝首脳会談でも、安倍首相が最重要課題と位置づける拉致問題を、会談冒頭を含めて2回も提起したのだ。

 藤井氏は「北朝鮮は首脳会談で、米国が経済制裁を解除してくれると甘く踏んでいたようだが、そうはならなかった。『(拉致問題を解決して)日本から金を引き出さないと厳しい』という考えになっているようで、水面下で日本に接近してきたと聞く。トランプ政権は対北強硬路線を取っており、日本にとって、トランプ氏の再選は良い事態だ」と語っている。

【私の論評】トランプ再選の可能性はかなり高い(゚д゚)!安倍四選も?

トランプはおそらく再選されることでしょう。それには以下のような理由があります。

第一に米国の現職大統領は再選される可能性が高いことがあります。第二次大戦後米国では11人の現職大統領が再選選挙に臨みましたが、8人が再選を果たしました。

再選できなかった3人は、フォード、カーター、父ブッシュですが、この内フォード大統領は任期途中で辞任したニクソン大統領に代わって副大統領から繰り上がって就任し選挙を経ていないので除外すると、現職大統領の再選の可能性は80%以上ということになるります。

それもイラン問題でしくじったカーター大統領や、景気不振を招いた父ブッシュ大統領の場合と違い、トランプ大統領には今のところ政策的に大きな間違いは犯してていません。

第二に相手候補のことがあります。民主党側では2ダース以上の候補者の名前があがっていて乱立気味です。

2020年のアメリカ大統領選挙は、まだ1年以上先なのですが、すでに公式に出馬を表明したのは、ジュリアン・カストロ(元住宅都市開発省長官)、リチャード・オジェダ(ウエストバージニア州上院議員)、ジョン・デレイニー(メリーランド州選出下院議員)等3人だですが、この他にコーリー・ブーカー(ニュージャージー州選出上院議員)、カマラ・ハリス(カリフォルニア選出上院議員)などですが、彼らは実は米国内でも知名度は低いのです。

ジュリアン・カストロ

そこで、バイデン元副大統領やヒラリー・クリントン前大統領候補の出馬が取りざたされているが「新味がない」との声も高いです。

民主党の場合、党内の候補者の最初の討論会が今年6月に開催され、党内の候補者選びがスタートするが、今年は全ての日程が早まり有力州の予備選は12月に始まります。つまり、6月までには一年半の選挙戦を戦い抜く組織と資金を確保しておく必要があるわけですが、今のところそこまで準備できそうな候補は見当たらないです。

ちなみに、前回の大統領選でヒラリー・クリントンは2015年4月までに組織と資金の準備を終えて正式な出馬表明をしていました。

一方のトランプ大統領は、昨年2月の大統領就任時にすでに2020年への出馬を連邦選挙委員会に届け出て公式に選挙運動を始め、昨年(2018年)2月には選挙参謀を指名しました。資金的にもすでに3500万ドル(約40億円)を集めたとされています。

最後に、トランプ大統領に有利にはたらく要素があるとすれば、意外と思われるかもしれないが下院での弾劾の動きです。

中間選挙で過半数を獲得した民主党は、新議会でトランプ大統領への弾劾を目指していわゆる「ロシア疑惑」について厳しく追求してきました。

しかし、1998年にクリントン大統領のインターンとの不倫問題で共和党が弾劾に向けて激しく追求した時に行われた中間選挙では、その共和党が議席を失うということになりました。有権者は議会が弾劾にばかり熱をあげることには反対するのです。

さらに、モラー報告書によって過去2年間も調査を実行したのに「ロシア疑惑」なるものには、何の実体もないことが明らかになったわけですから、これは当然トランプ大統領に有利に働くのは当然のことです。これ以上弾劾の動きがあれば、さらにトランプ大統領に有利となるでしょう。



日本では、安倍総理四選の噂もでています。そうして、それはあながち否定できないところがあります。これは、自民党の党則を変えれば実現できるものだからです。

こういった噂が出る背景には、安倍氏の後継候補がなかなか見えてこないという事情がああります。石破氏は先の総裁選の地方票で健闘して「ポスト安倍」レースで一歩抜けた印象がありますが、肝心の国会議員票では2割にも達していませんでした。

その他は岸田氏、加藤氏、茂木敏充経済再生担当相らの名が上がりますが、政治的力量、知名度、人望ともに心もとないです。特にこれら候補すべてが、増税派であるということも気になります。

さらに石破氏も含めて4人は、いずれも60歳代。64歳の安倍氏とほぼ同世代です。これでは、対外的に世代交代したというアピールができません。

自民党の若手が、経験を積むまでの間、安倍氏に続けてもらったらどうか。そういう考えを抱く議員も多いようです。

安倍・トランプ続投で日米にとって朝鮮半島問題、中国への対処などかなりやりやすい状況になるのは間違いないと思います。

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