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2016年8月22日月曜日

【宮家邦彦のWorld Watch】見るも無残な最近の中国外交 なぜこうも裏目ばかりが続くのか ―【私の論評】中国に騙されないために、世界を騙そうとする中国の最悪のテクニックを学ぼう(゚д゚)!


北京の人民大会堂で握手を交わすスーザン・ライス
米大統領補佐官(左)と中国の習近平国家主席。7月25日

最近の中国外交は見るも無残。やることなすこと、ことごとく裏目に出ている。原因は何なのか。まずは事実関係から始めよう。

【南シナ海問題】フィリピンが中国の人工島問題を仲裁裁判所に提訴したのは2013年。昨年10月、同裁判所は中国にも配慮してか、比側主張の一部にしか管轄権を認めなかった。にもかかわらず、中国は同裁判所に一切協力せず、無視を決め込んだ。案の定、本年7月の判断では中国側主張の多くが否定された。外交的にはあまりに稚拙なやり方だ。

【日中関係】14年11月の日中首脳会談以降も両国関係は進展していない。それどころか、最近尖閣諸島付近では中国公船・海軍艦船の活動がエスカレートしている。こうした動きは日米同盟を一層強化させるだけなのだが、解放軍など対外強硬派は国内の国際協調を求める声など意に介さない。

【米中関係】一連の首脳会議でオバマ大統領が習近平主席に求めたのは南シナ海の非軍事化と米私企業の知的財産権へのサイバー攻撃の中止だ。しかし解放軍が関わるためか、習氏はゼロ回答を繰り返す。米国はサイバー戦担当の現役中国軍人を起訴し中国が造った人工島沖にイージス艦を派遣した。

【北朝鮮】中朝間の軋轢(あつれき)が始まったのは80年代から。当時訪中した北朝鮮の金正日総書記は改革開放を始めた中国を「修正主義」と批判した。90年代以降、金総書記は先軍政治の下で核兵器開発を始める。中国は緩衝国家たる北朝鮮を見捨てることができない。金一族は中国外交の足元を見て生き延びたのだ。

【韓国】一時は蜜月に見えた朴槿恵(パククネ)韓国大統領との関係も悪化しつつある。中国が反対する中、韓国は最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備に踏み切った。中国は猛反発し、韓国批判キャンペーンと報復措置を打つも後の祭り。中国が韓国に投資してきた外交的資源は無駄になった。

【台湾】中国は馬英九前総統の台湾との関係を深めたが、今年1月の総統選で民進党・蔡英文氏の当選を阻止できなかった。ここでも中国外交は投入した資源に見合う成果を上げていない。

 最近の成功例といえば、歴史問題でロシアを対日批判に取り込み、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立で欧州を巻き込んだことぐらい。でも、筆者の関心は中国外交の失敗自体ではない。その裏にある理由は共産党中枢の国際法「音痴」だけではないだろう。筆者の仮説はこうだ。

 ●今の中国には一貫した戦略に基づく外交政策につきコンセンサスがなく、政治局常務委員7人の中にも外交的知見を持つ者がいない。

 ●この外交的真空状態をめぐり、自薦他薦の政治プレーヤーたちは敵対者を陥れるかのように競い合うから、外交政策は場当たり的に決まる。

 ●論争は恐らく重層的だ。政策面では、韜光養晦(とうこうようかい)型国際協調派と民族主義的対外強硬派が綱引きを行っている。

 ●一方、権力闘争の面では、習主席の周辺で彼の仲間と政敵たちが、政策とは別の次元で綱引きを続ける。この2つは相互に関連し合う。

 ●問題は現在国際協調派の力が弱いことだ。仮に、国際協調策が進んだとしても、不満を持つ対外強硬派には、そうした流れを潰せるだけの物理的パワーがあるからだ。

 最近の中国のちぐはぐな動きもこれで一応説明可能なのだが、これを具体的に検証することは非常に難しい。

 満州事変(昭和6年)を起こした85年前の日本にも政治の中枢に外交的真空があった。当時日本の政治指導者には現場の独断専行を制御するだけの外交的知見がなかったのだ。中国が似たような状況に陥ることはない、と誰が断言できるだろうか。

【プロフィル】宮家邦彦

【私の論評】中国に騙されないために、世界を騙そうとする中国の最悪のテクニックを学ぼう(゚д゚)!

ブログ冒頭の宮家氏の記事では、最近の中国外交は失敗続きであるとしています。実際、そうです。しかし、これはもともと中国外交がうまくて、最近は駄目になったということではないと思います。

中国外交の基本は、数十年前から変わらず、過去も現在も下手くそです。ただし、過去においては、まわりから発展途上の未熟な国ということで、周りの国々も、寛容であまり目立たなかっただけの話です。

最近では、中国自身が喧伝しまくったように、あたかも大国であるかのように周りの国々に信じこませたため、元々外交など稚拙だったのが目立つようになっただけの話です。真の中国は、人口が多いだけの中所得国であり、このブログでも掲載したように、中所得国の罠にどっぷりとはまり、そこから抜け出せそうにもありません。

先進国と、非先進国との間には、埋めがたい溝があります。それは、日本とアルゼンチンという二国の歴史を振り返ればわかります。先進国から非先進国に、非先進国から先進国になることは滅多にありません。

その例外が、日本とアルゼンチンです。日本は、発展途上国から、先進国に転換しました。それとは逆に、アルゼンチンは先進国から、発展途上国に没落しました。中国も、この壁を乗り越えることができずに、中進国のままであり続けるでしょう。

さて、日本では2010年あたりまでは、中国外交をしたたかと見る向きも多かったのは事実です。しかし、私は中国外交がしたたかとか、優れているなどと思ったことは一度もありません。

実際、2010年にはこのブログで、中国外交の稚拙さについて分析をしたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
騙されないために、人を騙そうとするテクニックを学ぼう―【私の論評】これは、国対国の外交にも通じるテクニックだ!!中国は外交の落第生?
人を騙して操ろうとする人がいる、国も同じく他の国を騙して操ろうとする
この記事の元記事は、ライフハッカーのもので、この記事のリンクは今でも生きています。以下にリンクを掲載しておきますので、興味のある方は是非ご覧になって下さい。

騙されないために、人を騙そうとするテクニックを学ぼう

ライフハッカーでは、人を騙すテクニックとして以下の事項をあげています。
■感情を操って論理的な決断をさせる 
■自分の感情をコントロールする 
■チャーミングで魅力的な人間だと思わせる 
■信用させ、疑いを晴らすそうとする 
■羊の皮をかぶった狼
このブログ記事の中で、私はこの5つのテクニックは、国と国でも相通じるテクニックであるとして、このテクニックを中国に当てはめて論評しました。

その内容を以下に引用します。


"
■感情を操って論理的な決断をさせる
中国にとって得な方の選択肢を、日本に「これが正しい選択なんだ」と、感覚的にでも信じさせることができれば、日本は自分で考えて選択したのだ、と思い込みます。だから、漁船を追突させたり、反日デモをしかけたりして、いかにも何か問題があるように感情に訴えかけます。さらに、レアアースの実質的な禁輸、その他日本観光の中止や、様々な手段を講じて、怒りや、憤りの感情、恐怖心を煽っています。感情を操る方法というのは、多かれ少なかれこのようなロジックに基づいています。
■自分の感情をコントロールする
相手に共感させたり、恐怖心を抱かせたり、必要に応じて相手の感情を自由自在に操るためには、自分の感情をコントロールすることが重要になります。自分の感情がコントロールできる中国は、日本の国民感情をもコントロールできる能力を持とうとしている可能性が高いです。
■チャーミングで魅力的な人間だと思わせる
いつもニコニコしてみんなに好かれている人が、突然感情的な一面を見せると、絶大な効果があります。相手の感情をコントロールする人は、ただ演技をするだけでなく、演技が効果的に使えるよう、常日頃から布石を打っているのです。怖いですね...。
中国も同じことです。このブログでは、中国は、第二の経済大国になっている可能性はかなり低いし、実体はボロボロであることを掲載しましたが、 世界各国に対して、魅力をアピールするために、出鱈目の経済報告などを平気で出しています。
さらに、オリンピックや、万博などを国威発揚に利用し、さらに魅力を演出しています。さらに、将来の発展性などさかんにアピールています。この点では、中国は十分成功しているようにみえます。
しかしながら、このような手は、マスコミには通じるものの、アメリカをはじめとする、各国の情報機関までは騙し通すことはできません。なにせ、日本に住んで、中国になどほとんど行ったこともないような私でも、中国の内情をかなり知ることができます。 
■信用させ、疑いを晴らすそうとする
このへんの配慮は中国には欠けているようです。強硬策ばかりとっていては、日本側は疑いぶかくなるばかりです。この点からすると、中国は落第です。このあたりは、やはり、ドイツやイギリス、フランスのほうがはるかに優っています。これに関しては、アメリカも下手ですね。
■羊の皮をかぶった狼
最初、これを見たときは、文字通りのことを頭に思い浮かべ、民主化もされておらず、法治国家化もされていない、チベットやウィグルを平気で弾圧する中国、建国以来、暴動が絶えず、最近でも、小さなものまで入れると、年間で2万件もの暴動(ブログ管理人注:最近では10万件と言われています)がおこる中国の姿にびったり当てはまると思いました。しかし、この意味するところ、良く読み込むとこれとは、全く異なるようです。
このテクニックの趣旨は、自分を善人だと信じさせるためには、ひたすらネガティブな感情を表に出さないということです。相手の行動を批判したり、例え誰かが間違いを犯したとしても、その人のことを批難したりはしません。徹底的に思いやりのある利他主義者を演じるのです。
利己的な中国は、こうした利他主義を演じることができず、この点からは全く外交になっていません。 中国側としては、日本側が「尖閣の領土問題に関して棚上げ」に賛同すれば、ころりと態度を変えて、「羊の皮をかぶった狼」を演じる腹積もりだと思います。しかし、その前の段階で、かなりネガティブな感情を演出し、日本の行動を批判しています。
 この内容、今でもそのまま通じるようです。中国の外交はこの頃と少しも変わっていません。それにしても、なぜこのようなことになってしまうのか、そのヒントはアメリカの戦略家であるルトワック氏が提供しています。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事を以下に掲載します。
【湯浅博の世界読解】「自滅する中国」という予言と漢民族独特の思い込み―【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!
孫子の兵法書
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にルトワック氏の見解からまとめてみます。

まず第一に、中国が巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っているということがあります。中国では、国内が最優先である、外国は二の次です。実際、中国の外相の地位は、他国のそれと比較すると低いです。

現在の中国の外省王毅は200人以上いる党中央委員の一人にすぎません。日本の場合、外相は重要閣僚で、中国で例えるなら「チャイナ・セブン」といわれる党政治局常務委員クラスです。米国でも外交を担う国務長官の地位は極めて高いです。記憶にある範囲で、中国の外交畑から副首相、党政治局委員にまで昇進したのは1990年代の銭其●(たまへんに探のつくり)の例くらいです。

エドワード・ルトワック氏
第二に、中国人(漢民族)は自分たちを"孫氏の兵法"で有名な戦略家孫氏の末裔であり、無意識に自分たちの戦略は優れていると思い込んでいます。しかし、現実にはルトワック氏が「過去千年間に漢民族が中国を支配できていたのはそのうちの3分の1である」と指摘するように、漢民族が戦略的に長けているとはといも言えない状況です。彼らは、自らの権謀術数に自惚れているだけです。

にもかかわらず、彼らは、古代からの漢民族の「戦略の知恵」をかなり優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによって信頼を失っています。

戦車も、空母も、人工衛星も、潜水艦や核兵器やインターネツトさえなかった、古代の戦略を過度に信頼しても、現代に通用しません。それでも、今でも参考になることはあります。しかし、現代の中国と、古代の中国は歴史的にも完璧に分断した別ものです。にもかかわらず、彼らは、その知恵の継承者は自分たちであると信じて疑っていません。

「内向き」で自分たちの「古代の戦略の知恵」を「他文化」にまで適用するような国の、外交が優れたものになるなどということはあり得ません。

ルトワック氏のこの見解は、『自滅する中国』という書籍の中で展開しています。ルトワック氏が指摘するように、いずれ中国は自滅して、現体制は崩れ去ることでしょう。

私は、中国の崩壊は、外交上の大失敗から始まるものと思っています。ルトワック氏が指摘する中国の自滅の端緒となるのは、外交の崩壊です。

ブログ冒頭の記事で、宮家氏が指摘する中国外交の最近の失敗続きは、その前兆とみるべきです。

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2016年7月18日月曜日

「子供じみたやり方だ」 宮家邦彦氏が日中首脳会談での中国の“演出”を批判―【私の論評】このままだと、習近平は失脚し中国は過去の帝国と同じく崩壊する(゚д゚)!

「子供じみたやり方だ」 宮家邦彦氏が日中首脳会談での中国の“演出”を批判

宮家邦彦氏
「子供じみたやり方だ。中国は焦っている」。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏は17日のフジテレビ系「新報道2001」で、15日にモンゴルで行われた日中首脳会談直前の中国側の対応を批判した。

会談は、南シナ海問題で仲裁裁判所が中国の主権を否定する裁定を出したことを受けて開催。番組によると、会場に着いた安倍晋三首相は中国の要求で部屋の外で待たされた。後から来た中国の李克強首相が先に入り、安倍首相を出迎える演出をした。

宮家氏は「(裁定で)中国は相当ダメージを受け、メンツも潰れた。取り繕っているが、このようなやり方をやる限り、孤立するだけだ」と指摘した。

【私の論評】このままだと、習近平は失脚し中国は過去の帝国と同じく崩壊する(゚д゚)!

上の記事に掲載されている「新報道2001」の動画(音声のみ)を以下に掲載します。


この動画、消去されることもありえるので、以下に番組内容を掲載しておきます。
モンゴル・ウランバートルで開かれたASEM(アジア欧州会議)首脳会議で、「安倍晋三」首相が中国の「李克強」首相と会談、フィリッピンが南シナ海における主権の主張は国連海洋法条約に違反するなどとして提訴した仲裁裁判で、九段線には歴史的権利も法的根拠もないと南シナ海における中国の主権を全面的に否定した裁決が出たことに、安倍総理が「法の下で紛争を平和的に解決することが述べたのに対し、李首相が「日本は騒ぎ立てたり干渉したりしてはいけない」と不満を表明したことに、 
「平井文夫」氏は、安倍総理が先に着いたのに外で待たされ、「李強克」氏が後から来て入った後に安倍総理を迎えた演出に、中国がこれでないと受け入れないと言ったのか日本が取り繕ったのか、怒って帰ってしまえは良いと語った。 
「宮家邦彦」氏は、子供じみたやり方で非常に焦っていると思うと、仲裁裁判所の判断は最終的なもので拘束力もあり、九段線は否定されたが中国にとっては否定できないもので相当ダメージを受け、面子も潰れ取りつくろってはいるものの相当焦っているが、今の中国のやり方を続ける限り利益を守れないということに気がつかないとどんどん孤立するだけだと、南シナ海も東シナ海も日本の周りを同じ一つの海で、海のルールを守らない人たちに我々が何をするべきかは明らかで、G7でやっていかなければならないと語った。 
アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏がもし大統領になれば、寧ろ中国は歓迎するのではないかと、最近は少しまともになっているが過去の発言のままであれば、アメリカの政策は内向きになり海外的に干渉しなくなりロシアにしても中国にしても歓迎するのではないかと語った。 
引用:新報道2001(2016年7月17日)
須田哲夫(フジテレビキャスター、大島由香里(フジテレビアナウンサー)、 平井文夫(フジテレビ上席解説委員)、片山善博(慶應義塾大学教授、元鳥取県知事)、猪瀬直樹(元東京都知事)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)、下重暁子(作家) 
確かに、これはあまりに子供じみたやり口です。 そうして、この子じみた対応等の原因としては、私は以前アメリカの戦略家であるルトワック氏が語っていたことを思い出してしまいました。

それに関して、掲載したこのブログの記事を以下に掲載します。
【湯浅博の世界読解】「自滅する中国」という予言と漢民族独特の思い込み―【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!
尊師の兵法書
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、漢民族の思い込みに関する部分を以下に掲載します。
漢民族は自らを「偉大なる戦略家である」と思い込んでいる。孫子の兵法を生んだ民族の末裔(まつえい)であるとの自負が誤解の原因かもしれない。米国の戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問、E・ルトワク氏は、戦略家であるどころか「古いものをやたらとありがたがる懐古的な趣味にすぎない」と酷評する。実際には、中核部分の「兵は詭道(きどう)なり」というだましのテクニックだけが生きている。 
その詐術も足元が乱れることがある。米メディアが南シナ海のパラセル諸島への地対空ミサイル配備を報じた直後、王毅外相が「ニュースの捏造(ねつぞう)はやめてもらいたい」といった。すると、中国国防省がただちに「島嶼(とうしょ)の防衛体制は昔からだ」と反対の見解を表明して外相発言を打ち消していた。 
国家の外交が、ひそかに動く共産党の軍に振り回されている。軍優位の国にあっては、当然ながら国際協調などは二の次になる。 
中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)を含む札束外交で歓心を買おうとしても、従属を強要する意図が見えれば中国への警戒心はむしろ高まろう。ASEAN首脳が米西海岸サニーランズでオバマ大統領との会談に応じたのも、対中ヘッジ(備え)になってくれると考えるからだ。
今回の、 安倍総理が先に着いたのに外で待たされ、「李強克」氏が後から来て入った後に安倍総理を迎えた、宮家氏にいわせると「こどもじみた演出」も実は、孫氏の兵法書なども書かれてある戦略なのかもしれません。
E・ルトワック氏
しかし、これも結局のところ、E・ルトワク氏が言うように、戦略であるどころか、古いものをやたらとありがたがる懐古的な趣味にすぎず、実際には、中核部分の「兵は詭道(きどう)なり」というだましのテクニックの一つに過ぎないのです。

結局いくら、演出をしてみたところで、仲裁裁判所の裁定が変わるわけでも、安倍総理の考えを翻すことや、南シナ海の周辺のASEAN諸国などの考えを翻すこともできないのです。

結局、この子供じみた行為は、内向きの中国の本性を表したものといえます。現在の中国は、習近平が主導する「腐敗撲滅運動」という名の、激烈な権力闘争の最中にあります。この子供じみた行為は、権力闘争の道具の一つなのでしょう。権力闘争に勝つためには、習近平派であろうが、反習近平派であろうが、とにかく自らの統治の正当性を強力に訴える必要があります。

李克強が安倍総理を待たせるという行為は、中国内部で李克強が統治の正当性があることをアピールする狙いがあったのだと思います。安倍総理が待っているところに、李克強が入っていくということでは駄目だったのだと思います。李克強は、安倍総理の面子を立てた姿をアピールしたかったのでしょう。

これをアピールしているから、会談がうまくいけば、それは李克強の手柄になるし、会談がうまくいかなくても、面子を立ててもらっても李克強に楯突く日本国安倍首相ということを強調したかったのでしょう。こんなことにも気をもむ、李克強です。

確かに、宮家氏が語るように「仲裁裁判所の裁定により中国は相当ダメージを受け、メンツも潰れた」のでしょう。李克強はこれ以上、メンツが潰れないように、最大限の努力をしたつもりなのでしょう。

会談を前に、握手する安倍首相(左)と中国の李克強首相=15日、ウランバートル
しかし、このようなことをして、仮に国内にアピールできたとしても、国際関係には何の影響も及ぼすことはありません。

中国は、国内での統治の正当性の主張の仕方が、中国以外の他国に対しても、効くものと勘違いしているようです。

お世辞にも、優秀とはいえない、軍事力をちらつかせたにしても、それは国内の人民に対しては効き目があるかもしれませんが、他国に対してはかえって、敵愾心を強化させるだけになります。国際関係では、そんなことをするよりは、国際法を遵守し、その範囲の中で自己主張をしていくというやり方でなければ、通用しません。

そのことを忘れて、対外関係も中国国内と同じように進めようとする中国に明日はありません。外交でも、国際関係でも、失敗続きの習近平は、近いうち国内でも、統治の正当性を疑われ、権力闘争に負けて、退くことになるでしょう。

それでも、中国は南シナ海での暴虐を繰り返すことでしょう。そうなれば、国際社会から完璧に孤立することになります。

国際社会から孤立した中国は、この地域に過去に栄えて、衰亡した多くの大帝国の二の轍を踏むことになります。現在の中国は、過去の孫子の兵法などを学ぶのではなく、過去にいくどとなく、この地域に設立された大帝国がその後、消滅し、その後前の帝国などとは全く関係なく、分断された次の帝国をつくりだすということを繰り返してきた過去の中国の歴史を反省すべぎてす。

なぜ、大帝国は崩壊したのか、中国人は真摯に反省すべきです。その反省がない限り、いずれ現在の中国も、過去の大帝国と同じように滅ぶだけです。

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