ラベル 武漢コロナウイルス の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 武漢コロナウイルス の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020年3月19日木曜日

米国家安全保障会議、中国が「武漢コロナウイルス」を食い止めていないと声明で非難―【私の論評】反グローバリズムで中国は衰退し、新たな秩序が形成される(゚д゚)!

米国家安全保障会議、中国が「武漢コロナウイルス」を食い止めていないと声明で非難

習近平

国家安全保障会議(NSC)は17日、中国共産党がジャーナリストを国外に追放し、中国が起源となったウイルスを止めることに集中するのではなくその起源に関する偽情報を広めていることを非難した。

「中国と香港からジャーナリストを追放するという中国共産党の決定は、中国国民と世界から同国に関する本当の情報へのアクセスを奪うことに向けてのまた新たな一歩である。米国は、中国の指導者がジャーナリストを追放することと、武漢コロナウイルスを食い止めようとする全ての国に対して偽情報を広めることから関心を向け直すことを求める」とNSCは声明で述べた。

NSCの声明は、中国がニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルの米国人ジャーナリストを追放すると発表したことを受けてのものだ。

「(中国共産党は)また、ボイス・オブ・アメリカ、タイム・マガジンを含めたそれらの報道機関が、中国政府に活動の詳細情報を提供するよう要求した。発表ではさらに、現在中国本土で活動する米国人ジャーナリストは、『香港とマカオ特別行政区を含む中華人民共和国でジャーナリストとして活動することを許可されなくなる』としていた。2つの地域は半自治区であり、理屈の上では本土よりも報道の自由が大きかった」とニューヨーク・タイムズは報じた

「世界が自由な報道活動を行う能力を中国が今日締め出すと決定した事を遺憾に思う。そうした活動があれば率直にいって中国国民にとっては本当に有益になるのだが。これは残念なことだ。彼らが再考することを願う」とマイク・ポンペオ国務長官は報道陣に語った。

ニューヨーク・タイムズのディーン・バケット編集長は中国の措置を非難し、「コロナウイルス・パンデミックに関する確かな情報が、自由で開かれた形で流通することを世界が必要としている時に、ことのほか無責任である」と述べた。

ワシントン・ポストのマーティン・バロン編集長は、「我々は、米国人記者を追放するための中国によるいかなる措置も明白に非難する。中国政府の決定がとりわけ遺憾であるのは、COVID-19に対する国際的な対応に関する明確で信頼できる情報が不可欠な、前代未聞の世界的危機の只中でのものであるためだ。その情報の流れを大幅に制限するという、現在中国が行おうとしていることは、状況を悪化させるだけだ」と述べた

ウォールストリート・ジャーナルのマット・マレー編集局長はツイートでこう述べた。「中国の報道の自由に対する前代未聞の攻撃は、前例のないほどの世界的危機の時に行われているものだ。中国から同国に関して信頼できる報道を行うことは、この上なく重要なものだった。我々は世界のどこであっても、政府が自由な報道に干渉することに反対する。中国について完全に深く報じることに対する我々の深い関与は不変だ」


ウォールストリート・ジャーナルのマット・マレー編集局長

中国はコロナウイルスの起源に関する偽情報を広めることを目指した必死のプロパガンダ活動を開始している。

外交問題評議会の上級研究員でアジア研究部長のエリザベス・C・エコノミーは、ニューヨーク・タイムズに、「習近平にとっての危機は、ウイルスが世界的に広がる中で、タイムリーな対応を遅らせることにおいて中国の統治制度が果たした役割が、国際社会からますます監視と批判を浴びることだ」と語り、プロパガンダは「責任を逸らし、何が本当に起きたかについての国際社社会からの誠実な釈明要求を避けるための、習による苦肉の策」であると述べた。

【私の論評】反グローバリズムで中国は衰退し、新たな秩序が形成される(゚д゚)!

中国が恐れているのは、世界の中国を見る目が変わることです。現状では、未だ武漢コロナウイルスが蔓延しているため、各国政府も、個々の国民もこれに対応することで精一杯で、中共を非難するよりもまずは、病気を食い止めることに注力しています。

しかし、これが一旦小康状態になるか、終息すれば、多くの人々から中国共産党や習近平に対する怨嗟の声があがるでしょう。

以前のこのブログにも掲載したように、
親しい人、愛する人を失った人々、感染してひどい目にあった人たち及びこれらに惻隠の情を禁じえない人々は、この不条理を生涯忘れないでしょう。自分の過ちを認めない、上から目線の中国共産党に対しては、世界中の多くの人々がこれを認めないでしょう。米国の対中国冷戦は、世界中の多くの国民から支持されることになるでしょう。 
たとえ、自国の政府が親中的であったにしても、支持するでしょう。
このような事態に遭遇した人たちは、ウイグルやチベットの人々に対してもさらに深い理解を示すようになるでしょう。迫害されている他の中国人民の気持ちも理解できるでしょう。
そもそも、中国共産党や習近平は巧みに論点をすり替えています。そもそも、武漢コロナウイルスの発生源など主たる問題ではないからです。発生源がどこであろうと、中国共産党が、武漢コロナウィルスによる肺炎が発生しているにもかかわらず、それを中国国内や海外に対してさえも隠蔽したことが問題なのです。

この隠蔽さえなければ、国内では武漢市内、もしくはもっと極限された地域だけで、感染を食い止められたかもしれません。そこまでいかなくても、中国国内だけで感染が食い止められた可能性が大きいです。特に、世界各国の支援を受け入れ、早めに防疫体制を整えていれば、今日のような事態を招くことはなかったでしよう。

しかし、中共が隠蔽したため、多くの国々が武漢コロナウイルスの備えを固めることができないうちに、侵入を許してしまったという、事実があります。この事実は、変えようがありません。

この隠蔽の事実と、世界に武漢コロナウィルスが蔓延しつつある事実は、中共がいくら発生源で論点をすり替えようとしても変えようがありません。

先に述べたように、今後武漢コロナウイルスの世界への伝播が小康状態になったり、終息した場合には、世界は大きく変わるでしょう。

それは、過去の世界史をみてみれば、わかります。たとえば、 強大な軍事力を背景に北はスコットランドから南はシリアまでを領地に繁栄をつづけたローマ帝国の衰退の一因に「疫病」がありました。

皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(121~180)のお抱え医師、ガレノスが当時蔓延した疫病について詳細な記録を残していました。この疫病は165年から167年にかけてメソポタミアからローマに到達したとされています。

皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(121~180)の像

この疫病では、多くの患者が血を吐いたされています。病人の顔が黒くなれば葬式の準備を始めたほうがいいともいわれたそうです。もちろん治る患者もいました。「黒い発疹」が出れば生き延びる可能性があったそうです。この疫病は、今では天然痘だったのではないかと見られています。総死亡者数は1000万人を超えたのではないかと推定されています。ローマでは毎日2000人が死んだともされています。

ローマ軍の軍人たちも罹患し、軍がガタガタになりました。それに乗じて一時はゲルマン人がローマにまで攻め込んできました。最終的には押し返したのですが、ローマ帝国の最強神話がぐらつくきっかけになりました。

皇帝マルクス・アウレリウスもこの病気で死んだといわれています。『ローマ帝国衰亡史』で知られるギボンは、「古代世界はマルクス・アウレリウス統治時代に降りかかった疫病によって受けた打撃から二度と回復することはなかった」と書いています。

このように、大きな疫病は、昔から流行した後に、世界を変えています。今回の武漢コロナウイルスによっても、終息後には世界は大きくかわるでしょう。

まずは、中国自体の弱化です。

武漢市の全面閉鎖に象徴される社会機能の麻痺により当然、経済は落ち込むでしょう。その結果、軍事に投入される国家資源も相対的に減ることになります。なにしろ国民多数の国内での移動や就業自体が大幅に制限されたのですから、総合的な国力が削られるのは自明です。

次に、中国をみる世界の目の変化です。

上でも述べたように、世界の多くの国は習近平政権が当初、ウイルスの拡大を隠し続けたことを非難しました。国際社会のそうした非難は当然、中国の孤立傾向を強めることになります。伝染病の流行までも隠蔽しなければならない独裁政権の異様な体質への国際的な忌避や嫌悪だともいえます。

そもそも中国はいま全世界を苦しめる武漢コロナウイルスの発生地であり、加害者です。日本も米国もそのウイルスから自国民を守るためには中国との絆を断つ動きをとらざるを得ないのです。

日本をはじめ多くの諸国が中国からの来訪者を入国制限をしました。これは、自国民保護のための自衛の防疫措置でしたた。しかし、その結果は中国との交流の縮小となり、中国は世界のなかで孤立に向けて押しやられることになりました。

三番目は、グローバリゼーションの変化です。

このウイルス拡散がグローバル化を阻み、縮小させる影響である。

グローバリゼーションとは、国家と国家の間で人、物、カネが国境を越えて、より自由に動く現象を指します。そのグローバル化は貿易の実例でも明らかなように世界全体、さらには人類全体に数えきれない利益をもたらしてきました。ところがそのグローバル化にも光と影がありました。

ウイルス感染症が中国から他の諸国へとすばやく拡大していったのも、グローバル化の産物でした。この危険なウイルスの国境を越えての拡散を防ぐためには、国境の壁を高く厳しくする措置が欠かせなくなります。国境を高くすることはグローバル化への逆行です。

米国のトランプ大統領は選挙公約にもはっきりとグローバル化への反対をうたっていました。トランプ大統領は、主権国家の重要性を強調した政治リーダーなのです。その米国で中国発生のウイルスへの対策として、中国との絆の縮小や遮断を説く声が起きるのも、自然な流れです。

このブログでも以前、トランプ政権のウイルバー・ロス商務長官は「このウイルスの拡散は雇用を北米へ戻すことを加速させる」と述べて、批判されました。

ウイルバー・ロス商務長官

仮にも中国の多数の国民を苦しめる感染症を米国の雇用を増すプラスの出来事として描写したことの不謹慎さを非難されたのです。ところが、今回のウイルス拡大がこれまで中国へ、中国へ、と流れていたアメリカ国内の生産活動の移動を元に戻す効果があることはまぎれもない事実です。

トランプ政権はウイルス拡散の以前から中国との経済関与を減らすことを政策目標にしていました。中国共産党政権の国際規範無視の膨張に反対するためでした。

ところが、このウイルス拡大はそのアメリカ主導の脱中国の動きを加速させ、中国に重点が移りかけていた全世界のサプライチェーンまでにも正面からブレーキをかけられることになったのです。まさにグローバリゼーションの大きな変化でした。

すでにコロナウイルスの感染者が多数出たイタリア、イラン、韓国などという諸国も多様な方法で中国との関与や接触を断つ方向への措置を取り始めました。グローバル化への逆行です。

ただし、このブログでも以前述べたように、中国の過剰貯蓄が世界の経済を変えてしまったところがあります。これが、グローバリゼーションの変化により是正される可能性があります。

1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えてしまいました。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰は、それまでとは異なるものです。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのです。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達することはありません。世界中で供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

この「長期需要不足」の世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくいのです。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができません。

ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからです。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのです。

中国の過剰生産は、凄まじいものがあります。先進国などでは、とうに倒産したようなゾンビ企業が、中国政府から補助金等の支援を受け製造を継続し、製品をつくりまくり、輸出をし続けたのですから、世界も供給過剰になるわけです。

しかし、今回の武漢コロナウイルスの蔓延をきっかけに、各国が中国から輸入を減らせば、世界の供給過剰はなくなるわけですから、世界経済は従来よりは良くなる可能性が高いです。

無論短期では、様々な問題が生じるでしょうが、それは決して克服ができないような問題ではありません。何しろ、中国が製造できるものは、先進国ではすべて製造できるものがほとんどだからです。ただ、自国で製造するよりも安いといういう理由で輸入してきただけです。

とはいいながら、世界は、グローバル化の恩恵を完璧に捨て去ることはできず、自由貿易のルールを守れない中国とその他の少数の例外的な国々が貿易圏をつくりその中で貿易を行い、他方では、自由貿易ができる先進国等の国々が貿易圏をつくり、その中で自由貿易を行うというように、変わっていくと思います。

ただし、自由貿易のルールが守れない、中国や他の国々など、徐々に衰退していき、いずれ消滅するのではないでしょうか。ただし、それらの国々も国民がいるわけですから、それらの国民が新たな国を設立して、自由貿易ができる国を目指すことになると思います。その時は、また世界はグローバル化の時代を迎えることになるでしょう。

【関連記事】

財政審「コスト重視」の噴飯 高橋洋一氏が能登復興遅れ激白 補正予算編成せず 過疎地の財政支出「ムダと認識」で邪推も―【私の論評】災害対策の予算措置は補正予算が最適!予備費では遅れる

高橋洋一「日本の解き方」 財政審「コスト重視」の噴飯 高橋洋一氏が能登復興遅れ激白 補正予算編成せず 過疎地の財政支出「ムダと認識」で邪推も 高橋洋一 能登半島地震の復興が、従来の復興に比較して遅れている。 野口健氏が「東京と現地の温度差」を指摘し、被災者に「見捨てられた」感があ...