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2020年3月19日木曜日

米国家安全保障会議、中国が「武漢コロナウイルス」を食い止めていないと声明で非難―【私の論評】反グローバリズムで中国は衰退し、新たな秩序が形成される(゚д゚)!

米国家安全保障会議、中国が「武漢コロナウイルス」を食い止めていないと声明で非難

習近平

国家安全保障会議(NSC)は17日、中国共産党がジャーナリストを国外に追放し、中国が起源となったウイルスを止めることに集中するのではなくその起源に関する偽情報を広めていることを非難した。

「中国と香港からジャーナリストを追放するという中国共産党の決定は、中国国民と世界から同国に関する本当の情報へのアクセスを奪うことに向けてのまた新たな一歩である。米国は、中国の指導者がジャーナリストを追放することと、武漢コロナウイルスを食い止めようとする全ての国に対して偽情報を広めることから関心を向け直すことを求める」とNSCは声明で述べた。

NSCの声明は、中国がニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルの米国人ジャーナリストを追放すると発表したことを受けてのものだ。

「(中国共産党は)また、ボイス・オブ・アメリカ、タイム・マガジンを含めたそれらの報道機関が、中国政府に活動の詳細情報を提供するよう要求した。発表ではさらに、現在中国本土で活動する米国人ジャーナリストは、『香港とマカオ特別行政区を含む中華人民共和国でジャーナリストとして活動することを許可されなくなる』としていた。2つの地域は半自治区であり、理屈の上では本土よりも報道の自由が大きかった」とニューヨーク・タイムズは報じた

「世界が自由な報道活動を行う能力を中国が今日締め出すと決定した事を遺憾に思う。そうした活動があれば率直にいって中国国民にとっては本当に有益になるのだが。これは残念なことだ。彼らが再考することを願う」とマイク・ポンペオ国務長官は報道陣に語った。

ニューヨーク・タイムズのディーン・バケット編集長は中国の措置を非難し、「コロナウイルス・パンデミックに関する確かな情報が、自由で開かれた形で流通することを世界が必要としている時に、ことのほか無責任である」と述べた。

ワシントン・ポストのマーティン・バロン編集長は、「我々は、米国人記者を追放するための中国によるいかなる措置も明白に非難する。中国政府の決定がとりわけ遺憾であるのは、COVID-19に対する国際的な対応に関する明確で信頼できる情報が不可欠な、前代未聞の世界的危機の只中でのものであるためだ。その情報の流れを大幅に制限するという、現在中国が行おうとしていることは、状況を悪化させるだけだ」と述べた

ウォールストリート・ジャーナルのマット・マレー編集局長はツイートでこう述べた。「中国の報道の自由に対する前代未聞の攻撃は、前例のないほどの世界的危機の時に行われているものだ。中国から同国に関して信頼できる報道を行うことは、この上なく重要なものだった。我々は世界のどこであっても、政府が自由な報道に干渉することに反対する。中国について完全に深く報じることに対する我々の深い関与は不変だ」


ウォールストリート・ジャーナルのマット・マレー編集局長

中国はコロナウイルスの起源に関する偽情報を広めることを目指した必死のプロパガンダ活動を開始している。

外交問題評議会の上級研究員でアジア研究部長のエリザベス・C・エコノミーは、ニューヨーク・タイムズに、「習近平にとっての危機は、ウイルスが世界的に広がる中で、タイムリーな対応を遅らせることにおいて中国の統治制度が果たした役割が、国際社会からますます監視と批判を浴びることだ」と語り、プロパガンダは「責任を逸らし、何が本当に起きたかについての国際社社会からの誠実な釈明要求を避けるための、習による苦肉の策」であると述べた。

【私の論評】反グローバリズムで中国は衰退し、新たな秩序が形成される(゚д゚)!

中国が恐れているのは、世界の中国を見る目が変わることです。現状では、未だ武漢コロナウイルスが蔓延しているため、各国政府も、個々の国民もこれに対応することで精一杯で、中共を非難するよりもまずは、病気を食い止めることに注力しています。

しかし、これが一旦小康状態になるか、終息すれば、多くの人々から中国共産党や習近平に対する怨嗟の声があがるでしょう。

以前のこのブログにも掲載したように、
親しい人、愛する人を失った人々、感染してひどい目にあった人たち及びこれらに惻隠の情を禁じえない人々は、この不条理を生涯忘れないでしょう。自分の過ちを認めない、上から目線の中国共産党に対しては、世界中の多くの人々がこれを認めないでしょう。米国の対中国冷戦は、世界中の多くの国民から支持されることになるでしょう。 
たとえ、自国の政府が親中的であったにしても、支持するでしょう。
このような事態に遭遇した人たちは、ウイグルやチベットの人々に対してもさらに深い理解を示すようになるでしょう。迫害されている他の中国人民の気持ちも理解できるでしょう。
そもそも、中国共産党や習近平は巧みに論点をすり替えています。そもそも、武漢コロナウイルスの発生源など主たる問題ではないからです。発生源がどこであろうと、中国共産党が、武漢コロナウィルスによる肺炎が発生しているにもかかわらず、それを中国国内や海外に対してさえも隠蔽したことが問題なのです。

この隠蔽さえなければ、国内では武漢市内、もしくはもっと極限された地域だけで、感染を食い止められたかもしれません。そこまでいかなくても、中国国内だけで感染が食い止められた可能性が大きいです。特に、世界各国の支援を受け入れ、早めに防疫体制を整えていれば、今日のような事態を招くことはなかったでしよう。

しかし、中共が隠蔽したため、多くの国々が武漢コロナウイルスの備えを固めることができないうちに、侵入を許してしまったという、事実があります。この事実は、変えようがありません。

この隠蔽の事実と、世界に武漢コロナウィルスが蔓延しつつある事実は、中共がいくら発生源で論点をすり替えようとしても変えようがありません。

先に述べたように、今後武漢コロナウイルスの世界への伝播が小康状態になったり、終息した場合には、世界は大きく変わるでしょう。

それは、過去の世界史をみてみれば、わかります。たとえば、 強大な軍事力を背景に北はスコットランドから南はシリアまでを領地に繁栄をつづけたローマ帝国の衰退の一因に「疫病」がありました。

皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(121~180)のお抱え医師、ガレノスが当時蔓延した疫病について詳細な記録を残していました。この疫病は165年から167年にかけてメソポタミアからローマに到達したとされています。

皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(121~180)の像

この疫病では、多くの患者が血を吐いたされています。病人の顔が黒くなれば葬式の準備を始めたほうがいいともいわれたそうです。もちろん治る患者もいました。「黒い発疹」が出れば生き延びる可能性があったそうです。この疫病は、今では天然痘だったのではないかと見られています。総死亡者数は1000万人を超えたのではないかと推定されています。ローマでは毎日2000人が死んだともされています。

ローマ軍の軍人たちも罹患し、軍がガタガタになりました。それに乗じて一時はゲルマン人がローマにまで攻め込んできました。最終的には押し返したのですが、ローマ帝国の最強神話がぐらつくきっかけになりました。

皇帝マルクス・アウレリウスもこの病気で死んだといわれています。『ローマ帝国衰亡史』で知られるギボンは、「古代世界はマルクス・アウレリウス統治時代に降りかかった疫病によって受けた打撃から二度と回復することはなかった」と書いています。

このように、大きな疫病は、昔から流行した後に、世界を変えています。今回の武漢コロナウイルスによっても、終息後には世界は大きくかわるでしょう。

まずは、中国自体の弱化です。

武漢市の全面閉鎖に象徴される社会機能の麻痺により当然、経済は落ち込むでしょう。その結果、軍事に投入される国家資源も相対的に減ることになります。なにしろ国民多数の国内での移動や就業自体が大幅に制限されたのですから、総合的な国力が削られるのは自明です。

次に、中国をみる世界の目の変化です。

上でも述べたように、世界の多くの国は習近平政権が当初、ウイルスの拡大を隠し続けたことを非難しました。国際社会のそうした非難は当然、中国の孤立傾向を強めることになります。伝染病の流行までも隠蔽しなければならない独裁政権の異様な体質への国際的な忌避や嫌悪だともいえます。

そもそも中国はいま全世界を苦しめる武漢コロナウイルスの発生地であり、加害者です。日本も米国もそのウイルスから自国民を守るためには中国との絆を断つ動きをとらざるを得ないのです。

日本をはじめ多くの諸国が中国からの来訪者を入国制限をしました。これは、自国民保護のための自衛の防疫措置でしたた。しかし、その結果は中国との交流の縮小となり、中国は世界のなかで孤立に向けて押しやられることになりました。

三番目は、グローバリゼーションの変化です。

このウイルス拡散がグローバル化を阻み、縮小させる影響である。

グローバリゼーションとは、国家と国家の間で人、物、カネが国境を越えて、より自由に動く現象を指します。そのグローバル化は貿易の実例でも明らかなように世界全体、さらには人類全体に数えきれない利益をもたらしてきました。ところがそのグローバル化にも光と影がありました。

ウイルス感染症が中国から他の諸国へとすばやく拡大していったのも、グローバル化の産物でした。この危険なウイルスの国境を越えての拡散を防ぐためには、国境の壁を高く厳しくする措置が欠かせなくなります。国境を高くすることはグローバル化への逆行です。

米国のトランプ大統領は選挙公約にもはっきりとグローバル化への反対をうたっていました。トランプ大統領は、主権国家の重要性を強調した政治リーダーなのです。その米国で中国発生のウイルスへの対策として、中国との絆の縮小や遮断を説く声が起きるのも、自然な流れです。

このブログでも以前、トランプ政権のウイルバー・ロス商務長官は「このウイルスの拡散は雇用を北米へ戻すことを加速させる」と述べて、批判されました。

ウイルバー・ロス商務長官

仮にも中国の多数の国民を苦しめる感染症を米国の雇用を増すプラスの出来事として描写したことの不謹慎さを非難されたのです。ところが、今回のウイルス拡大がこれまで中国へ、中国へ、と流れていたアメリカ国内の生産活動の移動を元に戻す効果があることはまぎれもない事実です。

トランプ政権はウイルス拡散の以前から中国との経済関与を減らすことを政策目標にしていました。中国共産党政権の国際規範無視の膨張に反対するためでした。

ところが、このウイルス拡大はそのアメリカ主導の脱中国の動きを加速させ、中国に重点が移りかけていた全世界のサプライチェーンまでにも正面からブレーキをかけられることになったのです。まさにグローバリゼーションの大きな変化でした。

すでにコロナウイルスの感染者が多数出たイタリア、イラン、韓国などという諸国も多様な方法で中国との関与や接触を断つ方向への措置を取り始めました。グローバル化への逆行です。

ただし、このブログでも以前述べたように、中国の過剰貯蓄が世界の経済を変えてしまったところがあります。これが、グローバリゼーションの変化により是正される可能性があります。

1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えてしまいました。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰は、それまでとは異なるものです。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのです。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達することはありません。世界中で供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

この「長期需要不足」の世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくいのです。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができません。

ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからです。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのです。

中国の過剰生産は、凄まじいものがあります。先進国などでは、とうに倒産したようなゾンビ企業が、中国政府から補助金等の支援を受け製造を継続し、製品をつくりまくり、輸出をし続けたのですから、世界も供給過剰になるわけです。

しかし、今回の武漢コロナウイルスの蔓延をきっかけに、各国が中国から輸入を減らせば、世界の供給過剰はなくなるわけですから、世界経済は従来よりは良くなる可能性が高いです。

無論短期では、様々な問題が生じるでしょうが、それは決して克服ができないような問題ではありません。何しろ、中国が製造できるものは、先進国ではすべて製造できるものがほとんどだからです。ただ、自国で製造するよりも安いといういう理由で輸入してきただけです。

とはいいながら、世界は、グローバル化の恩恵を完璧に捨て去ることはできず、自由貿易のルールを守れない中国とその他の少数の例外的な国々が貿易圏をつくりその中で貿易を行い、他方では、自由貿易ができる先進国等の国々が貿易圏をつくり、その中で自由貿易を行うというように、変わっていくと思います。

ただし、自由貿易のルールが守れない、中国や他の国々など、徐々に衰退していき、いずれ消滅するのではないでしょうか。ただし、それらの国々も国民がいるわけですから、それらの国民が新たな国を設立して、自由貿易ができる国を目指すことになると思います。その時は、また世界はグローバル化の時代を迎えることになるでしょう。

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2018年3月9日金曜日

統一コリアムード高まれば金正恩大統領が誕生する可能性も―【私の論評】半島に新たな秩序を作り出すか、南北統一を許してしまうか、世界は選択を迫られている(゚д゚)!


文在寅大統領が差し出した手は何をもたらすか(写真右が金与正氏)

南北朝鮮の接近が急加速している。韓国の文在寅大統領は平壌での首脳会談に乗り気で、事態は想像を超えて急展開する可能性がある。先に見えるのは、核保有国・統一コリアの姿だ。拓殖大学特任教授の武貞秀士氏が警告する。

 * * *

 「我々はひとつだ!」

 平昌五輪中、私は韓国を訪れて情報収集につとめた。テレビでは連日、専門家の討論番組を放送していた。そして、耳に残ったのがこのフレーズだった。

 韓国政府は、北朝鮮代表団や管弦楽団、美女応援団を熱烈に歓迎した。日米両政府は核・ミサイル問題の解決の遅れを心配したが、文在寅政権は「五輪はスポーツ大会」とかわした。

 韓国社会の反応は意外と冷めていた。美女応援団が「同胞への呼びかけ」に徹したのには違和感もあったようだ。

 そんな世論と裏腹に文在寅大統領は、米国のペンス副大統領が欠席した歓迎レセプションで「女子アイスホッケーチームの選手の心には休戦ラインはない」と挨拶をした。休戦ラインを守っているのは在韓米軍と韓国軍なのだが……。

 金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正氏らを招いた昼食会では、金大中、盧武鉉政権時代に北朝鮮を訪れた幹部を同席させ、対話への意欲を示した。すでに南北は今年1月、南北閣僚級協議で軍事協議を再開することに合意している。

 五輪期間中、「心を合わせて難関を突破しよう」「南北関係を当事者同士で解決すべきだ」と訴えた文大統領は、五輪を機に北朝鮮との対話を進めるつもりだろう。金委員長の右腕である与正氏が親書を手渡した席で南北交流の具体的な方策を話し合ったにちがいない。

 これから先、何が起こるのだろうか。米・トランプ大統領は南北対話のあいだは、軍事行動をしないと約束している。北朝鮮は、米国が軍事行動を選びにくい状況を創出するため、南北のスポーツ・文化交流計画を韓国に提案するだろう。

 開催を延期している米韓軍事演習が試金石となる。北朝鮮は、「軍事演習をしたら南北対話は進まない」と文大統領に揺さぶりをかける。そのとき、朝鮮半島問題の主人公は韓国と北朝鮮だと考える文在寅政権は、米韓軍事演習の規模縮小を米国に訴えるにちがいない。

 ここで日本が一連の動きに反対すると逆効果になる。平昌五輪開幕式前日の日韓首脳会談で米韓軍事演習を実施すべきと述べた安倍首相に対して文大統領は「内政の問題だ」と不快感を示した。日本が南北交流を警戒し、米韓同盟強化を助言すれば、北朝鮮ブームが起きていない韓国社会だが、日本への反発から親北に傾斜してしまう。

 北朝鮮は今年9月9日の建国70周年を「民族の慶事」の大イベントであると宣伝しており、この時期までに首脳会談を実現したいはずだ。金大中と金正日の両氏が初めて南北首脳会談を開いた2000年6月の記念日に合わせて、今年6月開催を目指している。

 文大統領は米朝対話再開が必要だと答えた。首脳会談が実現すれば、南北の関係改善は加速する。すでに文大統領は北朝鮮に800万ドルの人道支援を行うと決めている。現在停止中の南北経済交流事業が再開され、開城工業団地の操業や金剛山観光再開を検討している。朝鮮半島縦断鉄道からシベリア鉄道に乗り入れる列車ダイヤの運行を具体化する話も浮上することだろう。すべて北朝鮮の外貨獲得源である。

 南北交流が進んで、「分断された民族を統一する」というムードが高まると、1980年の労働党大会で金日成主席が提案したように、まずは南北同数の代議員で民族連邦会議を作り、大統領を選出するシナリオが浮上するだろう。この時、韓国側の代議員に一人でも従北勢力がいれば、多数決で金正恩大統領が誕生する可能性もゼロではない。

 「なだらかな南北統一」の最大の脅威は、統一コリアが核保有国となることだ。北朝鮮が核・ミサイルを開発するのは、多くの識者が指摘するような体制維持のためではなく、米軍介入を阻止して統一するためだ。だから彼らは統一まで核を放棄しないし、統一後も日米両国からの防衛を根拠に核は捨てないだろう。

 ●武貞秀士(たけさだ・ひでし)/1949年兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院修了後、防衛省防衛研究所に教官として36年間勤務。その間、米スタンフォード大学、ジョージワシントン大学客員研究員、韓国中央大学客員教授等を歴任。2011年、防衛省を退職後、韓国延世大学教授等を経て現職。著書に『東アジア動乱』(角川oneテーマ21)、『なぜ韓国外交は日本に敗れたのか』(PHP新書)などがある。

【私の論評】半島に新たな秩序を作り出すか、南北統一を許してしまうか、世界は選択を迫られている(゚д゚)!

実は韓国は、数年前からすでに北朝鮮に乗っ取られていたとみるべきです。北のスパイが約12万人、韓国内に入り込んでいるとされています。

核とミサイルとスパイしか武器を持っていないような国が全力を傾注して、スパイを浸透されたとされてますから、これは十分あり得る数字です。

1998年から2008年まで行われた"圧力より融和で南北統一を目指す政策"である「太陽政策」の間に、北朝鮮は韓国の政治の世界は官邸にむけて、軍部は情報部にむけて、次々に北朝鮮のスパイを浸透させていったとされます。軍自体は良識派の集まりなので、浸透は無理とみて情報部に浸透をはかったとされています。

韓国の政治家のうち、最も始末に負えないのは文在寅をはじめといする「親北・反日」の人々で、大きな勢力を占めています。韓国では「反日」が大前提で、「反日」など争点にすらなりません。

そんな韓国での本当の争点はこのまま北に乗っ取られるのが良いのか、支那に媚びて助けてもらったほうが良いのかということであり、これが最大の争点です。

昨年失脚した朴槿恵大統領は「親中・反日」でしたから、実は当初の大統領選挙の候補者の内、一番まともな政治家でした。

朴槿恵は、韓国は、支那の一の子分になったほうが、北より下になるよりは良いというわけで、彼女はこの10年で、最も良識的な大統領だったといえるかもしれません。

少し前までの、韓国は中国・北朝鮮代理戦争の真っ只中でしたが、朴槿恵が失脚して、文在寅が大統領になった時点で、韓国内では北が圧倒的に優位にたちました。

文在寅大統領は、北朝鮮が韓国を核攻撃するとは考えていません。「北の核はアメリカからの防衛のための核であり、攻撃のための核ではない、平和のための核だ」(盧武鉉元大統領の発言)というのが、盧武鉉の最側近だった文在寅をはじめとする韓国左派系勢力が信じるところです。ですから北朝鮮が「国家核戦力の完成」を表明した段階で南北融和姿勢へ転換するのは、文在寅には当初から「想定内」のことだったのです。

北朝鮮の路線転換とそれを受け入れた韓国が、ともにその先に描いているのが、統一朝鮮実現へ向けた「南北連合国家」(2政府連邦制国家)の形成です。「北朝鮮の国家核戦力の完成」が南北統一への道を開き、しかもそこでは北の独裁体制と核が温存されたままという、まことに理不尽な歴史が始まろうとしているのです。

金正恩が文在寅の訪朝を要請したことで、南北首脳会談が現実味を帯びてきました。実現するとしたら、南北間でどのような話し合いがもたれるのでしょうか。文在寅は果たして、北朝鮮に核放棄を迫るでしょうか。

これまでに南北首脳会談は2回行われています。1回目は2000年6月15日(金大中と金正日)。この会談では、北核問題に触れることなく、「南と北は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした」「南と北は国の統一のため、南側の連合制案と北側のゆるやかな段階での連邦制案が、互いに共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向していくことにした」と、南北統一問題に終始しました。

金大中と金正日の首脳会談を特集した
TIMEのdigitalの表紙

ところが、この2年前の1998年5月30日、北朝鮮は自国製のプルトニウムを用いた代理核実験をパキスタンに挙行させたとされ、8月31日には初の準ICBM(テポドン1号)を、日本上空を通過する形で太平洋に向け発射しています。

2回目の首脳会談は2007年10月4日(盧武鉉と金正日)。そこでも北の核問題には触れず、「南と北はわが民族同士の精神によって、統一問題を自主的に解決し、民族の尊厳と利益を重視して、あらゆるものをこれに志向させていくことにした」と、やはり統一問題に終始しています。

この会談の前年の2006年7月5日には、北朝鮮は初のICBM(テポドン2)、ノドンとスカッドC(火星6)6発を日本海に向けて発射し、10月6日には初の核実験を強行。国連安全保障理事会は即刻、全会一致で北朝鮮制裁を決議しました。

この2例のように、今後の南北首脳会談でも、核問題は抜きで「統一問題の自主的な解決」が話し合われることになるでしょう。これまでアメリカは「北核問題と南北和平問題は別問題」としてきましたから、「核問題抜きの南北首脳会談」に強固な反対をすることはないと思われます。

盧武鉉政権下の三つの「親北政策」

文在寅が心酔する盧武鉉元大統領が最大の政治テーマとしたのは、金大中の対北融和政策である「太陽政策」を引き継いでいっそう推し進め、南北統一へ向けて南北連合国家を形成していくことでした。

そこで盧武鉉がとった政策の一つは、過去の「韓国独裁政権」が侵した人権侵害を断罪することです。しかしその一方で、北の核開発や多数の人権侵害については、批判も抗議もまったく行うことがありませんでした。

盧泰愚

二つ目は、韓国史の「北朝鮮式書き替え」でした。北朝鮮史を肯定的に評価する「親北史観」が台頭していったのです。2003年から多数の高校で採用されていった「韓国近現代史」教科書では、戦後韓国の歴史を「米政府および独裁政府」対「韓国民衆」という構図で否定的に記述し、北朝鮮体制を「民族自尊を守りながら絶え間ない変化を追求する合理的体制」と、肯定的な観点で記述しています。

韓国の中学校の国史教科書

三つ目の政策が「国内親日派」の断罪です。北朝鮮では「日本統治時代に親日行為(日本統治への協力)をした者」は、悪逆な犯罪者・売国奴として粛清されました。これを評価する盧武鉉は、これまでの韓国は「国内親日派」を温存してきたと批判し、北朝鮮と同じく「日本統治時代に親日行為をした者」を断罪すべきだとしたのです。

そのために特別法を制定して「親日反民族行為者」(故人を含む)のリストを作成・公表し、彼らを公式の「売国奴」としました。また、多数の「親日反民族行為者とその子孫」の財産が、国家の手によって没収されています。

教科書も憲法も「北朝鮮化」を狙う文在寅

こうした盧武鉉政権の「対北融和・南北連合国家形成」の政治方針を文在寅政権は継承し、「韓国の北朝鮮化」を推し進める政策をいま、次々に打ち出しています。

例えば、2020年から中学・高校で使用される歴史教科書について、「北朝鮮による6・25(朝鮮戦争)南侵」「北朝鮮の世襲体制」「北朝鮮の人権」などの用語をすべて用いないとする執筆基準試案を提示しています。これは盧武鉉政権すら行わなかったことです。


さらに、文在寅政権を支える与党「共に民主党」は、大韓民国憲法にある「自由民主的基本秩序」の文言から「自由」を削除する憲法改正案を議員総会に提出しました。野党の大反対にあっていくらか引っ込めてはいますが、これまでの韓国では「自由民主的基本秩序」とは、北朝鮮のような「一党独裁体制」の否定を意味するとしてきたのです。

この憲法改正案では、自由市場経済に反して国家的な経済統制を強化する条項など、国家社会主義的な思想が露骨に示されています。文在寅政権は、南北連合国家の形成へ向けて、韓国をできるかぎり北朝鮮に近い体制へ変えようとしているのです。

日米中ロは朝鮮半島の統一を望んでいない

このような状況が続けばいずれ「南北連合国家」が形成されてしまうことになります。しかし、これを支持する周辺国が存在するでしょうか。

中国は、半島に北朝鮮優位で、南北が統一されて大きな朝鮮ができることに脅威を感じるでしょう。韓国の朴槿恵は「親中」でしたが、文は「親北」で、金正恩はあからさまな「反中」ではないにしても、「反中」的です。

そのような南北統一朝鮮ができれば、北の核に、南の経済力、工業力と、様々な外国との結びつきが最大限に活用され、アジアにかなり大きな独裁軍事国家ができあがることになります。そのような国と国境を接することは、中国には許容できないでしょう。

ロシアも同じようなものでしょう。元々、北朝鮮はソ連がつくった国です。それが、ロシアと同等以上のGDPである、韓国と統一されれば、隣国が核を持ちしかも、その経済力がロシアより上ということになります。

南北統一朝鮮は、当然のことながら、軍拡に走るでしょう。そうなると、いずれロシアと同等かそれ以上の軍事国家が半島に生まれる可能性もあるのです。

現在のロシアは、中国には経済力ではかなわない存在になってしまいました。かろうじて、軍事力に関しては、ソ連から継承した、軍事技術やノウハウがあるので、圧倒的に優位ですが、それでも台頭する中国は脅威です。

ロシアは、世界で一番長く中国と国境を接している国です。中国の脅威に加えて、核武装した経済力が自分よりも上の、しかも国境を接した新たな大国南北統一朝鮮が誕生することをロシアは望まないでしょう。

その他の国々も、シリアのような国は別にして、北優位ですすめられる南北統一朝鮮は脅威でしょう。

いずれにしても、この問題は放置しておけば、悪化するだけです。以前このブログにも掲載したように、いずれ半島から北朝鮮も、韓国もなくなり全く新たな秩序が形成されるか、南北統一を許してしまうのか、いずれか一方しかないということだけは確かです。

新たな秩序を作り出すというのであれば、国連軍という形をとるかどうかは別にして、日米中ロはもとより、世界の多く国々が、半島に軍隊を送り込み、少なくとも50年くらいは進駐させて、今後世界を脅かすことがなくなる新たな秩序を作り出すまで、分割統治するくらいの覚悟が必要です。

なお、この時に過去の米国による日本統治のようなやり方は許されません。あくまで、国際法にのっとった形で、実行すべきです。北の人民や、韓国の国民の主権を尊重した形で、民主的なやり方をすべきです。ただし、すぐに世界にとって望ましい体制などできあがるわけもありません。どのようなやり方が良いのか、十分考慮した上で、段階的に数十年かけて実行していくべきです。

一歩間違えて、中途半端にすれば、朝鮮半島が中東のように新たな混乱と緊張と脅威を生み出すだけになります。これは、米国だけではいかんともし難いです。やはり、日本も大きな力を発揮すべきですし、他国の力も大いに活用しなければ、できることではありません。

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