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2019年7月1日月曜日

韓国への輸出管理見直し 半導体製造品目など ホワイト国から初の除外 徴用工問題で対抗措置―【私の論評】韓国に対する制裁は、日本にとって本格的なeconomic statecraft(経済的な国策)の魁(゚д゚)!




経済産業省は1日午前、軍事転用が容易とされる「リスト規制品」の韓国への輸出管理体制を見直し、テレビやスマートフォンの有機ELディスプレー部分に使われるフッ化ポリイミド、半導体の製造過程で不可欠なレジストとエッチングガス(高純度フッ化水素)の計3品目について、4日から個別の出荷ごとに国の許可申請を求める方針を正式発表した。

 韓国に対してはこれまで、安全保障上の友好国への優遇措置として手続きを免除していた。いわゆる徴用工問題で事態の進展が見通せないことから、事実上の対抗措置に踏み切った。

 同省の担当者は、この時期に運用を見直す理由について「貿易管理について韓国と一定期間対話がなされていない」と指摘。「政府全体で韓国に対ししっかりとした回答を求めてきたが、20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)までに何ら回答がなかったことも一つの要因だ」と述べた。材料を生産する日本企業への影響に関しては「注視していく」と説明した。

 リスト規制品以外の先端材料の輸出についても、輸出許可の申請が免除されている外為法の優遇制度「ホワイト国」から韓国を除外することも発表した。ホワイト国からの除外は韓国が初めて。1日から24日までパブリックコメントを実施した上で最終判断する。除外後は個別の出荷ごとに国の輸出許可の取得を義務づける。

【私の論評】韓国に対する制裁は、日本にとって本格的なeconomic statecraft(経済的な国策)の魁(゚д゚)!

ついに日本政府が経済制裁に踏み切り、半導体材料の対韓輸出を規制します。

日本政府は、韓国への輸出管理の運用を見直し、テレビやスマートフォンの有機ELディスプレー部分に使われるフッ化ポリイミドや、半導体の製造過程で不可欠なレジストとエッチングガス(高純度フッ化水素)の計3品目の輸出規制を7月4日から強化します。

これはいわゆる徴用工訴訟をめぐり、韓国側が関係改善に向けた具体的な対応を示さないことへの事実上の対抗措置です。

発動されれば、韓国経済に悪影響が生じる可能性があります。

半導体製造工場

政府は同時に、先端材料などの輸出について、輸出許可の申請が免除されている外為法の優遇制度「ホワイト国」から韓国を除外します。

7月1日から約1カ月間、パブリックコメントを実施し、8月1日をめどに運用を始めます。

除外後は個別の出荷ごとに国の輸出許可の取得を義務づけます。

ホワイト国は安全保障上日本が友好国と認める米国や英国など計27カ国あり、韓国は平成16年に指定されていました。

フッ化ポリイミドとレジストは世界の全生産量の約9割、エッチングガス(高純度フッ化水素:半導体の製造過程で洗浄に用いる) は約7割を日本が占めます。

世界の半導体企業は日本からの輸入が多く、急に代替先を確保するのは困難とされ、規制が厳しくなれば、半導体大手のサムスン電子や薄型で高精細なテレビで先行するLGエレクトロニクスなど韓国を代表する企業にも波及するとみられます。

現実には高純度フッ化水素は、製造自体は中国でもできるのですが韓国が中国から輸入するということなれば、高純度にするためには、わざわざ日本に運んで、加工してから再度韓国に輸出せざるをえないことになるそうです。であれば、それはできないのと同じです。

中国はフッ化水素の原料である蛍石を押さえいますが、岩谷産業株式会社は、2014年デジタルカメラ、フッ化カルシウム(蛍石)の合成技術を確立していしました。そのため、日本企業は製造拠点を中国に移す必要性もなくなりました。

いわゆる徴用工訴訟に関する韓国最高裁判決をめぐり、日本側は日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置を求めてきましたが、韓国は問題解決に向けた対応策を示さなかったため、日本政府が事実上の対抗措置に踏み切ったわけです。

経済産業省は一連の輸出規制について「日韓関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況で、信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっている」と説明しています。

つまり韓国はもはや日本にとっての「ホワイト国」(日本の友好国)とは認められないということです。

いままで韓国の横暴に「遺憾砲」ばかりで具体的な対抗策を示してこなかった日本政府にとって、この経済制裁は大きな一歩だと思います。

さて、文大統領は「米朝首脳の握手は歴史的場面になる…私もDMZに同行」と、まるで我が手柄のような発言であります。

本日発表されたこの日本の対韓国経済制裁措置が、韓国政府に日本政府の今回の本気度に気付きを与え、その行動を改めるきっかけになればと希望します。

それにしても経済優先の経産省もよく折れたものです。官庁をも動かすほど日本政府の覚悟が本物であったと考えます。

史上初めて日本政府が韓国に対して経済制裁措置を決定しました。日本政府のこの方針を強く支持します。

ただし、今回の韓国への制裁を期として、日本政府はeconomic statecraft(経済的な国策)に関して、そろそろ本気で取り組むべきです。

economic statecraft(経済的な国策)とは、これは「経済的な手段を用いて地政学的な国益を追求する政策」のことです。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
詳細は、この記事をご覧いただくものとて、economic statecraftに関わる部分を以下に引用します。
各国政府、特に中国やロシアなどは、このようなeconomic statecraftを多用し始めています。たとえば、他国が自国の意向に反する政策をとった場合に、見せしめとして輸入に制限をかけます。あるいは、経済的に脆弱な国に対して、ODAや国営企業の投資をテコに一方的な依存関係を作り出すことで援助受入国を「借金漬け」状態にし、自国の意向に沿わない政策を取らせにくくする、といった政策です。 
米国がこうした経済外交をeconomic statecraftと定義し、米国としてもこれに対抗するeconomic statecraft戦略を描くべきである、という議論がオバマ政権末期から安全保障政策専門家の間で高まっていることが、トランプ大統領のニュースに埋もれて日本では認識されてきませんでした。
economic statecraftの道具と目的は以下の表で示す通りです。
 
日本語に翻訳すると、貿易制限、金融制裁、投資制限、金銭的制裁です。 
年初には安全保障分野で著名な米国シンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)が、米国は「中国の挑戦」に対抗するにはより洗練されたeconomic statecraftを用いる必要性があると提案したのに加え、ほかのシンクタンクもこのような政策の具体案を構想し始めています。 
これらの分析において重要なポイントは、米国がeconomic statecraft戦略を展開するうえで同盟国や友好国との連携の重要性を強調していることで、世界の経済規模で第3位にある日本との連携が極めて重要になることは間違いないです。しかし、日本でeconomic statecraftの観点から米国と連携していかれる十分な構想と体制が整っているとは必ずしも言えません。 
就任から5年、安倍政権は日本の安全保障政策の本質的な変革を進めてきました。政府は国家安全保障会議(NSC)を設立することで安全保障政策の意思決定過程を再編成し、首相官邸に権限を集約しました。NSCは日本初の国家安全保障戦略を生み出し、その戦略を政策へと落とし込む「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を発表しました。 
また、「特定機密の保護に関する法律」を通過させ、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更をし、平和安全法制を作成しました。米国との同盟関係を強化したほか、オーストラリア、韓国、インド、英国といった友好国との安全保障関係を深め、他のインド太平洋地域の国家と防衛協力も強化。さらに、「防衛装備移転三原則」と「開発協力大綱」を閣議決定しました。そして政府は、宇宙とサイバー空間の側面を含む国家安全保障戦略を打ち出しました。 
このような目まぐるしい変化の中には、経済的な手段をもって戦略的に地政学的な国益を追及するeconomic statecraftの視点が抜け落ちています。近代化以来、国家権力の経済基盤を重要視してきた日本が、安全保障戦略の中で具体的な経済戦略を描き切れていないことは意外な事実であると言えるでしょう。
現実の世界では、核兵器などの従来では考えられなかったほどの、凄まじい破壊力のある兵器が目白押しです。しかし、これを抑止力とすることと、実際に使うことは全く別問題です。

いずれの国でも、核兵器のような大量破壊兵器を実際に使ってしまえば、報復を受けるのは必至です。そうなれば、第三次世界大戦が勃発するのは必至です。そうなると、自国も甚大な被害を受けます。だから、現実には核兵器などおいそれと使用することはできません。

しかし、economic statecraft(経済的な国策)であれば、日常的に用いることはできます。ただし、これはある程度経済が大きな米国、中国、日本、EUなどが用いてはじめて大きな成果を得ることができる政策です。

たとえば、ロシアがこれを用いようにも、現在のロシアのGDPは東京都を若干下回る程度です。無論ロシアはソ連の核兵器や軍事技術を継承している国なので、侮ることはできませんが、それでもかつてのように大きな脅威ではなくなりました。

軍事的には、単独ではNATOともまともに対峙できません。そもそも、NATOと互角に戦うことはできません。こうした国が、economic statecraft(経済的な国策)を用いたとしても、元々経済力が乏しいので、できることは限られています。

しかし、米国あたりが実行すれば、これはかなりのことができます。実際、米国は対中国冷戦で様々な経済的手段を講じて、中国を追い詰めています。

その中国も、一帯一路で、多くの国々に借金をさせ、借金が払えないとみると、港や土地を接収するなど、中国流のeconomic statecraft(経済的な国策)を実践しています。

一帯一路は中国流のeconomic statecraft(経済的な国策)

日本は、従来ほどは経済規模は大きくありませんが、それでも自由主義陣営では米国についで第二のパワーを誇っています。この日本がeconomic statecraft(経済的な国策)を実施すれば、かなりのことができます。

さらには、工作機械、新素材やハイテク部品等では、今でも独壇場のものが数多くあります。経済力やこれらをうまく活用すれば、日本は潜在的にeconomic statecraft(経済的な国策)を駆使して、他国に日本の要求つきつけ、実行させることができるはずです。

さらに、economic statecraft(経済的な国策)を駆使するには、軍事力もともなっていなければ、その力は半減されるのですが、現在の日本は自衛隊だけでも、たとえば海軍力はアジアで一番ともいわるほど、かなりの能力がありますし、それに米国の同盟国でもあります。

この日本は、平和憲法により、国際的な問題を解決する手段としては軍事力を用いることができませんが、economic statecraft(経済的な国策)であれば実施できます。

その最初の事例か韓国となるかもしれません。あれほど反日で凝り固まっていた韓国ですが、日本からeconomic statecraft(経済的な国策)をつきつけられ、経済がとてつもなく落ち込むようなことにでもなれば、態度を改めざるを得なくなるでしょう。改めなければ、長期にわたって実施するということになるでしょう。

韓国に対する制裁は、日本にとって本格的なeconomic statecraft(経済的な国策)の魁になるかもしれません。

それにしても、economic statecraft(経済的な国策)は、その重要性が日本では認識されてこなかっので、あまり良い日本語訳もないようです。もう少し多くの人々に認識されて、もっと熟れた日本語訳がでてくると良いと思います。

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2018年8月26日日曜日

中国通信機器2社を入札から除外 日本政府方針 安全保障で米豪などと足並み―【私の論評】中国は体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなった(゚д゚)!

中国通信機器2社を入札から除外 日本政府方針 安全保障で米豪などと足並み


 政府が、安全保障上の観点から米国やオーストラリアが問題視する中国通信機器大手2社について、情報システム導入時の入札から除外する方針を固めたことが25日、分かった。機密情報漏洩(ろうえい)やサイバー攻撃への対策に関し、各国と足並みをそろえる狙いがある。

 対象となるのは、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)。両社に対しては、米政府が全政府機関での製品使用を禁じているほか、オーストラリア政府が第5世代(5G)移動通信整備事業への参入を禁止するなど、除外する動きが広がっている。

華為技術(ファーウェイ=上)と中興通訊(ZTE)のロゴ
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 背景にあるのは安全保障上の根深い危機感だ。米下院情報特別委員会は2012年の報告書で、両社が中国共産党や人民解放軍と密接につながり、スパイ工作にもかかわると指摘した。

 実際、米国防総省は今年5月、両社の携帯電話などを米軍基地内で販売することを禁止すると発表している。中国当局が携帯電話を盗聴器として使ったり機器を通じて情報を盗み出したりすることを防ぐためだ。

 こうした状況を踏まえ、日本政府は、各国と共同歩調をとって対処すべきだと判断し、具体的な方策の検討に入った。情報セキュリティーを担当する政府関係者は「規制は絶対にやるべきだ。公的調達からの除外の方針は、民間部門の指針にもなる」と強調する。

 政府内では、入札参加資格に情報セキュリティーの厳格な基準を設け、条件を満たさない企業の参加を認めないようにする案などが検討されている。政府の統一基準にあるセキュリティー機能確保規定を適用するなどし、入札時に両社を除外する案も浮上している。

 一方で、10月に予定される安倍晋三首相の訪中に向け、日中関係の改善ムードに悪影響が及ぶことを危ぶむ声もある。除外の方針が、世界貿易機関(WTO)の内外無差別原則に抵触すると解釈される余地も否定できない。

 日本政府関係者は「統一基準の中に『中国』の国名や企業名を盛り込むところまでは踏み込めないだろう」と話した。

【私の論評】中国は体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなった(゚д゚)!



米ホワイトハウスは23日、米国で22日から行っていた事務レベルの米中貿易協議が終了したと明らかにしました。

米側は2日間の協議で「公正で均衡が取れた互恵的な経済関係の実現方法について意見を交換した」と説明しました。中国による米先端企業の技術移転強要といった「構造的な問題」も含まれたといい、米中間の隔たりは依然大きいです。

米国による制裁関税の対象額は第2弾発動で計500億ドル(約5兆5000億円)となり、第3弾も合わせれば中国からのモノの輸入額のほぼ半分となる2500億ドル(約27兆5000億円)となります。

米国が第3弾制裁を発動しても、中国の対抗措置は600億ドル分の米製品への報復関税にとどまるなど弾切れ状態です。さらにトランプ大統領は全輸入品への制裁も辞さない構えをみせています。

攻勢の手を緩めないトランプ大統領に、習近平主席((写真)、AP)はなすすべもないのか
トランプ大統領としては、米国製品の購入を拡大させるなど、雇用増につながる譲歩を中国側から引き出すことができれば、11月の中間選挙に向けた支持層へのアピールになるのは事実です。

一方で、米国が中国を敵視する背景には、ハイテク技術や知的財産、安全保障も絡む覇権争いが存在しています。

米中貿易戦争は、このブログでも掲載してきたように、ビジネスだけの問題ではありません。米国は腰をすえて中国を追い詰め、経済の骨抜きを図ろうとしています。

中国封じ込めの動きも具体化してきました。ブログ冒頭の記事にもあるように、米豪英が問題視する中国通信機器大手2社について、日本も情報システム導入時の入札から除外する方針を固めました。

世界最大の市場を抱える中国ではありますが、見切りを付けようとする企業も出てきました。自動車大手のスズキは、中国での自動車生産について、撤退も視野に現地の合弁相手と協議を進めていることが分かりました。中国企業との合弁解消で合意し、中国事業から撤退するとの報道もあります。


スズキの子会社、マルチ・スズキはインドの乗用車市場で約50%と圧倒的なシェアを握っています。中国を追う巨大市場に成長しつつあるインド市場を軸に海外展開を拡大することになりそうです。

ロイター通信は、米国の医療機器や農業用具などのメーカーが、中国から米国への生産移転比率を高めたり、中国以外の国からの調達に切り替えたり、雇用を米国に再移転するなどの動きを検討していると報じました。

このような動きは企業レベルにとどまるものではありません。マレーシアのマハティール首相は21日、訪問中の北京で記者団に、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関連する鉄道建設などの大型事業を中止すると述べました。

マハティール氏は20日に中国の習近平(シージンピン)国家主席、李克強(リークォーチャン)首相とそれぞれ会談した際にも中止の意思を伝え、中国側も「理解し受け入れた」といいます。

マハティール氏は将来的な事業再開の可能性は否定しなかったものの、「マレーシアの現在の焦点は債務削減にある」と述べました。中止により補償金が発生すれば支払う意思も示しました。

中国外務省の陸慷(ルーカン)報道局長は21日の定例記者会見で、「どんな2国間でも協力を進める上であれこれ問題が出るのは避けられない。友好的な話し合いで適切に解決すべきだ」と交渉を続ける考えを示しました。

中国の習近平国家主席(右側手前)と会談する
マハティール・マレーシア首相(左側手前から2人目)=20日

中国では人件費が上昇し、電気代や土地代が米国を上回っているうえ、外資系企業に共産党組織の設置を義務付けられるという問題もあります。外資系企業が中国を捨てる時期は、今回の米中貿易戦争によって早まることになるでしょう。

追い詰められつつある中国。米中貿易協議での展望が開けないどころか、中国が人民元を割安に保っている為替操作問題が指摘される恐れもあり、かえってヤブ蛇になりかねないです。

米国向け輸出品の関税が引き上げられるうえ、人民元高が進めば、輸出品の競争力はダブルで打撃を受けることなってしまうでしょう。

この貿易戦争は、米中間の覇権争いの次元になっています。この覇権争いは、19世紀末からのドイツの台頭を大英帝国が退けた覇権争いや17世紀に英国がオランダの経済的繁栄に嫉妬して英蘭戦争でオランダを蹴落とした際に見られた典型的な覇権国と挑戦国との間の争いの場合と本質は同じです。

ドイツと大英帝国の覇権争いは、別の複雑な要因も絡みあい第一次世界大戦になってしまいました。

第一次世界大戦の発端は、ドイツと大英帝国の覇権争いだった

ただし、米中間の覇権争いは基本的に地域経済的なもので、軍事的なものに至る可能性は当面は極めて低いです。

英国は、ロシアと仏と手を結ぶことによりドイツの挑戦を退けました。なぜもともと英国の一番のライバルだったフランスと思想的に相いれないロシアが対ドイツ戦で英国に協力したかといえば、仏ロ含め周囲の国はドイツの急激な台頭に警戒心を募らせていたからです。

その意図に関わらず、ある国が急激に経済的、軍事的に台頭してくれば、その「事実」が周辺国の警戒心を招くものです。ジャパン・アズ・ナンバーワンなどと言われていた時の日本(同盟国なのに!)がいかに米国の警戒感を呼んだか思い出してみればわかることです。

中国の経済的、軍事的台頭は、これらの過去の歴史の例の比にならないぐらい急激で大きく、単に、GDPで2030年までに米国を凌駕するかもしれないといわれただけでなく、米国からの知財盗用も踏み台にしてAI、ビッグデータ時代のテクノロジーにおいて米国を凌駕しかねないところまで来ました。

しかも、胡錦涛政権以前までは、上手く強大化しながらも国際社会の警戒心を呼び起こさないように韜光養晦(とうこうようかい)で上手くやってきたのに何と、習近平国家主席は昨年の共産党大会において、中国型統治モデルは(欧米型民主主義より)優れているとした上で、科学技術テクノロジーに精力を傾注しつつ、2049年までに米国を凌駕する世界覇権国になるという意図を宣言してしまいました。

だから、中国とのテクノロジー競争において米国が負けない状況を作り出すまで中国をやり込めなければならないという1点については、トランプ大統領は、米国の支配層に相当のコンセンサスがあります。

だからそう簡単に収束しないのです。そして、過去の歴史でもそうだったように、自分も損をするが相手の方がより大きなダメージを被るならそれで構わないのです。目的は相手を倒すことであり、自分が利益を得ることではないのです。

習近平が共産党大会で強国化宣言をしたのは、もはや、米国が中国の意図に気づいたとしても中国の優勢を変えることはできないぐらい中国は強大になったと過信したからなのでしょうか。

あるいは、国内ばかり見ていてChina2049宣言が国際社会にどういう反応を引き起こすか無関心だったのでしようか、両方でしょうが、おそらく国内ばかりみていたというほうが大きいでしょう。

そもそも、中国は巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによってかなり信頼を失っています。

そうして、その後の展開を見れば、この宣言は中国にとっては得策ではなかったことは明らかです。

現状では、まだ米国の方がはるかに強いです。習近平は明らかに、やりすぎました。米国との間で平穏な状況を続けることができれば、時間は中国に味方したかもしれないのに、自ら、最大のライバルからの攻撃を招き、中国の天下への道を険しく困難にしてしまいました。習近平は、軌道修正を図ってはいるようですが、今更、どの程度修正できるのか、疑問です。

そうして、トランプ大統領はブログ冒頭の記事にもあるように、米英豪で協調して、中国に対抗しようとしています。

そうして、この動きはさらに大きなものになりそうです。以前このブログでは、最近トランプ大統領はロシアのプーチン大統領と首脳会談を開催したりして、ロシアと接近し、いずれは、日米英露と他の国々が協調して中国に対抗しようという動きを見せています。

これに関しては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプ氏、ハイテク分野から中国を締め出し…国防権限法で中国製品の政府機関での使用禁止 島田教授「日本でも対応が必要」―【私の論評】世界は日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあり(゚д゚)!
国防権限法に署名したトランプ大統領
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
今年の7月を皮切りに、国際関係において明らかに構造的変化が起こりました。7月6日米国は支那(中国のこと、以下同じ)に対して貿易戦争を発動しました。これにより、本格的な米中対立の時代が幕開けしました。 
ブログ冒頭の記事の国防権限法関連による支那への対応もその一環です。 
日本の政財界人のほとんどはこのことをほとんど理解していないようですが、米トランプ政権は、世界の経済ルールを公然と破ってきた支那を徹底的に叩く腹です。
今後は、支那に対して味方をするような経済活動は、米国から反米行動とみなされることになります。 
そうして、7月に起きたもう一つの大きな出来事は、米露協調時代が始まったことです。7月16日にはフィランドの首都ヘルシンキで米露首脳会談が開催され、その路線が確定しました。
フィランドの首都ヘルシンキで米露首脳会談で握手するトランプとプーチン

トランプ氏もプーチン氏も、公式にそのような発言はしていませんが、ロシアは米国に協調して世界秩序を再構築する方向に大きく舵をきったものとみられます。

7月には、この大きな2つの出来事が起こったのです。この2つの出来事が、今後の世界情勢を大きく方向づけることになるのです。
・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・
いずれにせよ、今後日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあるとみるべきです。日米の経済力、米露の軍事力、それに加えて英国など有力な他国の協力があれば、支那を叩きのめすことは十分可能です。

こうした動きは、安倍総理が全方位外交で、その動きをトランプ大統領に先んじてみせていました。安倍総理は、その意図をトランプ大統領に伝えたでしょうし、政治家としての外交権の乏しいトランプ大統領も、これをかなり参考にしたと思います。

ブログ冒頭の、米英豪の動き、さらには米露の動きなどもあわせて、いずれ世界は多くの国々が中国の覇権に協調して対抗する時代に入るでしょう。

世界の先進国のほとんどは、中国の「内向き」思考、漢民族の「戦略の知恵」を「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することにも耐えられなくなっています。

現在の中国は、体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなりました。

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2016年11月27日日曜日

日米中国経済包囲網 日本、関税「特恵」から除外 米は「市場経済国」認めず―【私の論評】中国の現体制を完膚なきまでに崩壊させ、ルーズベルト以前の世界にもどせ(゚д゚)!

日米中国経済包囲網 日本、関税「特恵」から除外 米は「市場経済国」認めず

中国経済への強硬策で足並みをそろえる安倍首相(左)とトランプ氏
 中国の習近平国家主席による経済覇権戦略が破綻寸前だ。財務省は新興国への「特恵関税制度」の基準を見直し、中国などを対象から除外する方針で、中国製品1000~2000品目の関税が上がりそうだ。トランプ次期米国大統領も中国製品への関税大幅引き上げを打ち出しているほか、オバマ現政権も中国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」としての認定を見送る。

 トランプ氏がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)からの脱退を宣言し、中国包囲網が崩れるかに思われたが、習政権にとってはぬか喜びに終わりそうだ。

 財務省は関税・外国為替等審議会で、特恵関税制度の対象国の要件を見直し、2019年度までに実施する方針を示した。対象国の1人当たり国民総所得(GNI)の基準に加え、輸出の世界シェアなどの基準も設けた新規定では、中国とメキシコ、ブラジル、タイ、マレーシアの5カ国が適用対象外となる。

 日本では、15年度に優遇税率が適用された輸入品のうち6割は中国からのものだった。政府関係者は「経済が発展しているのに、関税をまける必要があるのか」と指摘する。

 中国製品をめぐってトランプ氏は選挙期間中、「関税を45%に引き上げる」と明言しているほか、「大統領就任初日に為替操作国に認定する」としており、過剰生産した製品を通貨安を武器に世界に大量輸出するという中国経済に大打撃となりそうだ。

 さらにプリツカー米商務長官は中国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」の認定を見送る考えを示した。欧州連合(EU)や日本も足並みをそろえるとみられる。

 WTO協定では、為替や企業の生産を政府が統制しているとみなされた国は「非市場経済国」として、貿易相手国は反ダンピング関税などの措置を取りやすくなる。貿易後進国の烙印(らくいん)を押されるようなものだ。

 中国商務省の張向晨・国際貿易交渉副代表は、米国が中国に高関税をかけた場合、世界貿易機関(WTO)への提訴を辞さないと警告。中国外務省の耿爽副報道局長は「中国はずっと市場経済を目指し、改革に努力してきた」と必死に反論するが、世界の目はごまかせない。

 ■特恵関税制度 途上国の輸出振興や経済支援のため、輸入品にかかる関税を下げたり、免除したりする制度。多くの先進国が導入しており、日本も143カ国・地域からの輸入品に適用している。ただ、欧州連合(EU)やカナダは特恵関税制度を縮小している。

【私の論評】中国の現体制を完膚なきまでに崩壊させ、ルーズベルト以前の世界に戻せ(゚д゚)!

日米による経済制裁は、上に掲載されているもののほかに、以下のようなことが期待されることをこのブログでは昨日も主張しました。

RCEP概念図

それは、RCEPに関するものです。2012年11月20日にカンボジアで開催された東アジアサミットで、アジアを束ねた地域包括経済連携(RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership)の交渉開始が宣言されました。しかし、この出来事は日本の成長戦略に大きなインパクトを与えるにも関わらず、日本の政治家やメディアの議論は専ら環太平洋連携協定(TPP: Trans-Pacific Partnership)に集中していて、RCEPについてはほとんど話題になりませんでした。

RCEPについて、もっともらしく語る識者などいますが、これを簡単に一言でいえば、中国のリーダーの下での国際ブラック分業体制に過ぎないものです。これは、中国を利するだけで、日本や米国にとっても、アジアにとっても何一つ良いことはなく、無論日本はさんかすべきでもないです。民進党などは、TPPに反対していますが、RCEPに関しては、ほとんど何もいいません。

ただし、RCEPはAIIBと同じく、最初から開店休業状況になる可能性が高いです。それは、昨日のブログでも述べたように、トランプ氏は、中国製品に対して45%程度の関税をかけるとしています。そのトランプ氏がRCEPに対して、何もせずに見過ごすことなど、考えられません。おそらく、トランプ氏は同一経済圏であるRCEPにも45%程度の関税をかけるからです。

そうなれば、日本も含めた主だった国々は、RCEPから離脱することになるでしょう。日米が参加しなかったことにより、AIIBは事実上開店休業状態です。中国に対して及び腰であったオバマ氏ですら、AIIBに参加せず、中国を牽制したわけですから、トランプ氏なら、当然のことながら、RCEPに対して45%の関税をかけるくらいのことは当然のこととして実行するでしょう。

米国による、関税45%、日本による中国の特恵関税の停止、AIIB日米不参加、RCEP参加国に対するトランプ新大統領による、45%の関税実施の宣言により、中国は苦しい立場に追い込まれます。

経済面でもこのような動きがありますが、その他にも以下のような動きがあります。

カストロ氏が亡くなったことを伝える本日の多維新聞サイトの画面
今年の5月には、米国内での中国人によるスパイ事件が大幅に増えていることが分かっています。米連邦捜査局(FBI)の調べによると、昨年のスパイ事件は20件以上と前年より50%以上も増加しており、とくに米国在住の中国人による犯行が多く、知らないうちに軍事技術が盗まれるなど手口も巧妙になっているという。米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「多維新聞網」が報じていました。

今年4月下旬、米国在住でフロリダ州の大学教員を務める中国人の女性研究者がフロリダ州の海軍基地に半年間の研究目的で滞在し、この間、原子力潜水艦の航行制御用のコンピュータープログラムを盗んだ疑いで逮捕されました。

この女性研究者はもともと中国人民解放軍傘下にあるハルビン工科学院で研究生活を続けていましたが、1998年に米国の居住権を取得し、フロリダ州の大学で教員として働いていました。

この女性研究者はハルビン工科大学の元上司から米軍の潜水艦に関する技術を盗むよう指示されており、米国の居住権取得も、米国でスパイ活動を前提したものだったとの疑いが濃いといいます。

米航空宇宙局(NASA)でも2013年に、中国から米国に移住してきた女性研究者による技術の盗難が明らかになっています。とくに、ここ数年では女性研究者によるスパイ事件の摘発件数も多くなっており、米国国家気象局やNASA、軍などで技術などの盗難事件が起こっているといいます。

また珍しい例では、現役の米海軍将校が犯行に手を染めた事件も発生しています。この将校は台湾出身で、米国籍を取得して海軍に入り、数々の勲章の受章歴を持つ米海軍士官で、中国や台湾に防衛機密を渡した容疑でスパイ罪などに問われています。

このほか、中国の大手国有企業がスパイ事件にかかわったとして起訴される事件も発生。米大陪審は4月中旬、中国国有原発大手「中国広核集団」の中国生まれの技術者がスパイ活動を行っていたとの認定したうえで、同集団も米政府が指定する核燃料物質を許可なく米国外で開発・生産した罪で起訴されています。

起訴された技術者は同集団の幹部から多額の謝礼を条件に、核燃料物質に関する資料を盗むように指示されたといいます。

このような中国スパイ摘発は、オバマ政権がレームダック化する以前は少なかったのに、今年になってから活発化しました。議会では、共和党が多数派になっていたため、共和党保守派がFBIの保守派などに訴え、オバマ政権末期でレームダック化しているため、スパイ事件の摘発が活発化したため、中国人によるスパイ事件が大幅に増えているようにみえたのでしょう。

そうして、トランプ氏が大統領になることに決まった現在、中国スパイ摘発はさらに活溌化することでしょう。特に、オバマ政権の中枢にも捜査の手が及ぶかもしれません。

大統領選のときに、トランプ氏がクリントン氏に向かって、「刑務所に入れてやる」と言ったは、単なる脅しではありません。クリントン夫妻には、このブログで何度か掲載したように、中華マネーにまみれています。ただし、この中華マネーにより、クリントン元大統領や、ヒラリー・クリントンにより、対中国政策に何らかの影響を与えたかどうかを立証できないかが証明されないので、クリントン夫妻は刑務所に入らないですんでいただけです。

ドナルド・トランプ氏はライバルであるヒラリー・クリントン氏が刑務所に行くべきだと述べた
今後、トランプ大統領が登場した場合、当然のことながら、こういうことも調査しやすくなるでしょう。クリントン夫妻に限らず、中国スパイへの摘発が厳しくなるかもしれません。トランプ氏が大統領になってから、あっと驚くような逮捕劇が繰り返されることになるかもしれません。

そうして、特定秘密保護法が成立した日本でも、同じことがおこるかもしれません。ただし、日本ではなかなか実行しにくい面があるかもしれませんが、トランプ氏が大統領になれば、米国での調査が進めば、当然のことながら、米国からの情報なども期待できます。

米国による確たる証拠があれば、日本でも問題なく特定秘密保護法により、政治家、マスコミ、公務員などの中国スパイも捕らえやすくなることでしょう。

日米は、これから、対中国経済包囲網での協力とともに、中国スパイの摘発にも協力しあい、中国の現体制を叩き潰すまで協調し、ともに闘うべきです。

米国の保守派は、ニューディール連合がアメリカをのっとって以来アメリカは変質してしまったとしています。ニューディール連合(ニューディールれんごう、New Deal coalition)とは、1932年から1960年代末のアメリカ合衆国において、ニューディール政策および民主党大統領候補を支持した利益集団や選挙母体の連合体を指します。1952年と1956年の各大統領選挙でドワイト・アイゼンハワーに敗北を喫するも、この時代に民主党は主要政党にまで上り詰めてゆきました。

フランクリン・ルーズベルトが党組織やマシーン、労働組合、ブルーカラー労働者、マイノリティ、農場経営者、南部出身者の他知識人から成る連合体を構築。1968年の大統領選挙の時期に崩壊しましたが、党活動家が復権を目指し枠組みを維持することになり、現在に至っています。そうして、これがアメリカのリベラル・左派の基盤をなし、今でもアメリカの政界、メディア界、学界、司法界でも大きな勢力となっています。

ソ連スパイに浸透され判断を誤ったフランクリン・ルーズベルト
特に、メディア界においては、メディアの90%がリベラル・左派であり、保守は10%程度に過ぎず、保守派が何かを主張しても、かき消されてしまいます。そうして、このようなアメリカの実体を知らず、米国のリベラル・左派の報道をそのまま垂れ流す日本のメデイアによって、日本人の多くが、アメリカの半分を全く知らない状態にあることは、このブロクでも何度か掲載してきました。

しかし、このような実体は、今回の大統領選により、トランプ氏の当選を予測できないどころか、全く見込みなしで、ヒラリー・クリントンが優勢と報道し続けたことにより、暴露されました。

米国の真性保守は、ソ連スパイに浸透されルーズベルトがソ連と手を組んだことが間違いであり、また反共の砦であった当時の日本と戦争をしたのは全くの間違いだった、この間違いから米国は間違った方向に行ってしまったのであり、米国はこの時点から遡って方向転換しなければならないと主張しています。

あのマッカーサも同じような主張をしています。米国が朝鮮戦争を実施して、実際にマッカーサーが朝鮮に赴き、現地をつぶさに調査し、なぜ日本が朝鮮を併合したり、満州国を設置したりしたのが良く理解できた、結局日本はソ連の浸透に対峙していたのが理解でき、彼らの戦争は防衛戦争だと、後に公聴会で証言しています。

ダグラス・マッカーサー
しかし、その日本も、近衛内閣のときにソ連スパイに浸透され、ソ連スパイに操られ、対米英強硬論が主張され、米英と戦争をするという愚かな決断をしてしまいました。無論、その決断の背後には、ルーズベルトによる画策もあり、戦争せざるを得ない状況に追い込まれたのも事実です。

そうして、現在はソ連は崩壊しロシアは軍事的にも経済的にもとるに足りない存在となりましたが、かわつて中国が世界の安定と繁栄にとって邪魔な存在になっています。

トランプ氏も保守派のこのような考えは、当然のことながら理解していると思います。そうして、これは安倍総理の主張する戦後レジームからの脱却という考え方とも相通じるところがあります。

トランプ大統領の米国と、安倍総理の日本とは、互いに歩み寄れるところが多くあります。

この両者が緊密に協力しあって、中国が旧ソ連のように自壊するのを待つのではなく、旧ソ連にかわって、世界の秩序をの半分を担おうとする妄想中国の現体制を完膚なきまでに崩壊させ、世界をルーズベルト以前の秩序にもどすべきです。無論、その頃とは世界は全く異なっているので、完全に戻すことはできないでしょうが、特に日米関係はその頃にもどすべきです。

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