2012年8月30日木曜日

増税と円高政策で「製造ニッポン」は壊滅寸前。1万9000社に迫る「為替デリバティブ倒産」の危機―【私の論評】まともな金融政策で、さっさと円高・デフレを終わらせろ!!

増税と円高政策で「製造ニッポン」は壊滅寸前。1万9000社に迫る「為替デリバティブ倒産」の危機:



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[ 伊藤博敏「ニュースの深層」 ]
増税と円高政策で「製造ニッポン」は壊滅寸前。1万9000社に迫る「為替デリバティブ倒産」の危機 
[伊藤 博敏]


絶体絶命のピンチを迎えたシャープは、なりふり構わぬリストラと台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業との資本・業務提携、及びそれを条件とした銀行支援で、なんとか乗り切ろうとしている。



【私の論評】まともな金融政策で、さっさと円高・デフレを終わらせろ!!


上の記事の結論を以下に掲載しておきます。
不況の処方箋は「財政政策」と「金融政策」 
 実は、この構造不況からの脱出には、処方箋がある。 
 米経済学者のポール・クルーグマンは、最近、上梓した『さっさと不況を終わらせろ』のなかで、「不況期には財政政策と金融政策の二つを大胆に発動せよ!」と、繰り返し述べている。話を金融政策に限れば、大胆に金融緩和、円の流通量を増やし、相対的な円安に持って行けばいい。 
 日銀批判の急先鋒の高橋洋一・嘉悦大学教授は、「5年前の1ドル=120円、せめて100円くらいの為替レートにすれば、国際市場で活動する日本企業は復活できる」(『夕刊フジ』8月24日付)と書く。
 相対的な円安に持っていくことができれば、シャープもソニーもパナソニックも海外メーカーと互角に戦え、しかも為替デリバティブに悩む中堅・中小企業も激減する。 
 処方箋は明らかだが、健全財政の財務省は野田佳彦首相を口説いて「不況下の増税」を達成、日銀は白川方明総裁のもと円高政策を継続する。 
 政局にしか興味のない政治家の体たらくもあって、このままでは日本は、奈落の底に落ちるしかない。

今日本がやらなければならないことは、はっきりしすぎています。あまりにも簡単すぎて、高校生にも理解できるくらいです。高校の政治経済の教科書には、不況の際の処方箋は、政府による積極財政政策と、中央銀行による金融緩和策です。クルーグマンの『さっさと不況を終わらせろ』に関しては、このブログにも掲載しましたが、クルーグマンも結局当たり前のことをせよと説いているだけです。
後に、50円札の肖像ともなった高橋是清
世界恐慌のときに、日本では、高橋是清が、リフレ政策=「積極財政」*「金融緩和」をやって、昭和恐慌からいちはやく立ち直りました。アメリカは、不況にあっても緊縮財政、金融引締めの罠にはまっており、戦争に参加するにおよび、大量の兵器の製造、大量の戦争遂行のための人員要請などのニーズから緊縮財政、金融引き締めをやめざるを得なくなり、その結果として恐慌から抜け出すことができました。

第二次世界大戦中のアメリカの戦意高揚ポスター
こんな先例もあるのに、なぜ、日本ではまともなことができないのでしょうか?簡単なことをいえば、普段より多く貨幣を増刷しただけで、円高傾向は是正されます。なのに、日銀は、何があっても、増刷拒否の姿勢を崩さず、円高・デフレ政策をどこまでも継続しています。

日本は、統計上では、平成10年より、完璧にデフレ状況になっています。デフレ傾向の期間も含めるとすでに20年デフレ傾向にあります。その間、政府が緊縮財政を行なってきましたが、日銀が、金融引締めばかりやってきたことも事実です。

日本では、特に日銀による金融引締めは、異常ともいえる状態です。爆走状態です。リーマン・ショックで、他国が大幅に増刷しても、日銀はしませんでした。他国が、増刷して、日本だけが増刷しなければなにが起こるかといえば、円高です。何も難しいことはありません。簡単な理屈です。



さらに、昨年の大震震災があって、復興需要が高まり、円の需要が高まっている最中でさえ、日銀は、増刷しませんでした。円需要が高まっている最中に、増刷しなければ何が起こるかといえば、円高です。これも、何も難しいことはありません。全く簡単な理屈です。小学生にも判る簡単明瞭な理屈です。

増刷すると、ハイパーインフレになると主張する愚かな、リフレ反対論者がいますが、デフレとは、貨幣流通量が減っているいるということです。そのときに、増刷して、貨幣の流通量を増やしたら、インフレ傾向になるのは当然ですが、それをもって、ハイパーインフレになるというのは、全くおかしな理屈です。実際、多くの国が、リーマン・ショックのときに、大増刷を行いましたが、これらの国々がハイパーインフレに見舞われたという事実はありません。

第一次世界大戦後のドイツでのハイパーインフレ(道路にお札が捨てられている)
それに、付加価値税を増税して、景気が落ち込んだイギリスで、イングランド銀行が大増刷を行い、しばらくの間、4%のインフレが続いていました。これが、反リフレ派の不況の時に増刷すれば、ハイパーインフレになるとの有力な根拠となってきました。これも、最大で4%台であり、しかも、最近では2%で落ち着くようになりました。

これだけ、日本国内の産業を痛めつけても、なお、増税、円高、デフレ政策にひた走る、政府、日銀を評して、経済評論家の上念氏は、大東亜戦争に突入したときの政府である政府にたとえ、「近衛政権末期症状」と揶揄しています。

私も、その通りだと思います。現在、米国も、EUも中国も、景気が下向き、当面よくなりそうもありません。まさに、世界同時不況目前という状況です。世界同時不況にみまわれて、それでも、日銀が、円高・デフレ金融政策にひた走るというのであれば、これは、外国に対して、日本の富の簒奪を幇助するということであり、もう国民に対する反逆行為と断定せざるをえません。

そう思うのは、私だけでしょうか?それから、増税に関しては、天の声があり、増税推進派に対する鉄槌がくだされた模様です。これは、何かといえば、あの最大の増税推進派の財務次官の勝栄二郎氏の9月退任が決まったことです。



最近の国会の動き、私は、こうした動きとは無関係ではないと思います。とにかく、来年の時点で再来年の増税阻止が時の政府によって、なされるべきです。勝氏退任は、これに連動した動きであると思います。勝氏が来年も財務次官を続けていれば、さらに、増税の正当性を強調することになるため、これを排除する動きがあったものと思います。

今後、世界同時不況に見舞われたときにも、日銀が、デフレ・円高政策を堅持すれば、大変なことになります。そんなことは、とうてい許容されるものではなく、勝財務次官にくだされたような、鉄槌が、日銀および、白川総裁にも下されることになると思います。

そうして、私たちは、次の選挙では、増税反対、日銀法改正を訴える政党や、政治家に対して票を投じるべきと思います。



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2012年8月29日水曜日

国歌不起立なら招待せず 大阪・泉佐野市―【私の論評】失礼どころじゃない、無礼千万だ!!

国歌不起立なら招待せず 大阪・泉佐野市:

千代松大耕市長
大阪府泉佐野市の千代松大耕市長は28日の定例会見で、成人式など市が主催する式典で、国歌斉唱時に起立しない来賓がいた場合、翌年から招待状を送らない意向を示した。

市長は起立しない来賓を「失礼」と問題視。「教育委員会も含めて市として徹底していきたい」と述べた。

市長によると、市立学校の卒業式や入学式では、国歌斉唱時に一部来賓が起立しない状態が続いているという。

【私の論評】失礼どころじゃない、無礼千万だ!!



さて、この市長の経歴など以下に掲載しておきます。


2011年4月 経歴 大阪府泉佐野市長 1期目

2005年     経歴 和歌山大学大学院 経済学研究科 修士課程 修了

2003年     経歴 大阪府立大学大学院 経済学研究科 博士前期課程 修了

2000年     経歴 大阪府泉佐野市議会議員 4期

1999年     経歴 株式会社堀場製作所

1998年     経歴 Lincoln University MBA Program 修了

1996年     経歴 同志社大学 経済学部 卒業

1992年     経歴 同志社香里高等学校 卒業

1989年     経歴 泉佐野市立佐野中学校 卒業

千代松大耕市長は、泉佐野市議4期目に辞職して、4月の市長選に立候補し、37歳の若さで当選しました。学生時代から柔道、ラグビー、アメリカンフットボールとスポーツを続けてきました。

関西空港(奥)と大阪府泉佐野市を結ぶ連絡橋
大阪府、泉佐野市は、早期健全化団体に指定されています。これは、財政健全化団体(ざいせいけんぜんかだんたい)のことであり、これは地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づき財政健全化計画を策定した地方公共団体のことです。

泉佐野市は、世界とつながる関西空港が沖合に浮かぶ中堅都市で、和歌山県境近くの犬鳴山温泉は、数軒の宿からなる府内唯一の温泉郷です。


関西国際空港に関連した宅地造成事業の頓挫や、都市基盤整備のため発行した地方債が要因となり、平成20年度決算における連結実質赤字比率と将来負担比率が基準超過しました。人件費抑制と有休財産の処分を中心に総額536億円あまりを捻出し、平成39年度まで19年計画で実質赤字の解消など全ての財政指標の抜本的改善を目標としています。



最近では、市長は今年6月27日、放置された犬のふん害対策として、飼い主に課税する「犬税」の導入を検討していることを明らかにしました。早ければ2年後にも条例を制定する方針。総務省によると、現在、飼い犬に対する課税を行っている自治体はないといいます。

年齢が若いとか、財政健全化団体の長であること、「犬税」などて話題の市長ですが、私は、他のことはともかくとして、市が主催する式典で、国歌斉唱時に起立しない来賓がいた場合、翌年から招待状を送らない意向を示したことに関しては、大賛成です。

泉佐野市観光大使 麻生祐未さん
国歌だけではなく、国旗に敬意を示さない人も同様の措置をとると良いと思います。だいたい、アメリカで公に式典に出た場合など、外国人である私達ですら、歌は歌わないまでも、起立して敬意を示すのが普通です。それに、普通感覚だと、起立しなければ、非常に目立って、いたたまれない気持ちになります。

にもかかわらず、日本人やニッポン人(カタカナ表記は、日本の伝統文化を継承しない日本人の意味)が、日本の国歌を歌う際に、起立しないというのは、本当におかしなことです。国歌などは、近代文明の産物であり、国歌を歌うことは、国民国家などの国では当たり前のことであり、文明の証でもあると思います。そうして、いわゆる躾けの部類の事柄だと思います。

国歌を歌わない、起立もしない、国旗に敬意を評さない。こんなことは、文明人として許されることではありません。猿以下の、非文明人は、公の式典などに出席させるべきではありません。この市長のように、公の場などに出席できないようにし、いろいろな場所に顔を出せる機会を減らすというのも一つのやり方だと思います。

非文明を貫き通したいのなら、そのくらいの覚悟はしてもらいたいと思います。私が本当に腹立たしいは、そのような覚悟もなく、国民国家に属しながら、国歌を歌わない、国旗に敬意も評さないという無礼者がこの世に存在することです。そういう人間に対して、国でも、企業でも、自治体でも、多いに罰則を適応していくべきです。非文明人を貫くというのなら、それなりの覚悟が必要となる社会にすべきです。



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2012年8月28日火曜日

仕事での失敗、年代別の受け止め方−【私の論評】失敗に関する見方で組織でも個人でも淘汰されるされないが決まる!!

仕事での失敗、年代別の受け止め方:


 人生に失敗はつきものです。どんなに能力が高い人でも失敗することはありますし、挫折することもあります。

 問題はその失敗を、自分の糧にできるかどうか。人の成長や進歩はその一点にかかっているといっても過言ではないはずです。

 『失敗バンザイ!やずやの西野さんに学ぶ「逆転成功」 の法則』(橋本陽輔/著、マガジンハウス/ 刊)は「にんにく卵黄」や「香醋」でおなじみの通販大手「やずや」で長... 続きを読む


さて、これに関しては、上記の元記事を読んでいただくものとして、Amazonの商品説明から以下にこの書籍の商品説明を掲載しておきます。
現・やずやグループ・(株)未来館の代表取締役である西野博道(にしの・ひろみち)氏のこれまでの仕事を分析することで、生き残る会社&生き残るビジネスパーソンはどこが違うのかを検証する自己啓発書の決定版。
1億円もの借金を背負って前の会社を潰した西野さんは、どうやってその借金を返し、「やずや」の急成長を支えたのか。
「一人でも多くの顧客を満足させる」「売上はお客様を喜ばせたご褒美である」という持論を実践した彼のビジネス哲学は、「失敗を原動力として成功する方法」に導かれる。
つまり本書は「失敗バンザイ! 失敗を原動力として活用する本」なのである!

■著者データ
新刊JP
ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/



【私の論評】失敗に関する見方で組織でも個人でも淘汰されるされないが決まる!!

科学実験につきものの失敗
上の記事の内容は、失敗に関しての個々人の考え方、対応法を掲載しています。そうして、失敗を原動力として、活用する方法が掲載されているようです。確かに、それは、それで重要であり、意義深いものなのですが、そもそも、失敗に関する個々人などを超えた考え方、さらに、組織論的な考え方も必要不可欠であると思いますので、本日はそれに関することを掲載します。


ドラッカーは、著書「マネジメント」で以下のように述べています。

「決して間違いや、へまや、失敗をしない人だけは信用できない。そのような人は、食わせ物か、それとも無難なこと、絶対確実なこと、とるにたらないことしか手をつけない人である」
まさに、この通りだと思います。上の記事では、失敗への対処の仕方など掲載していますが、根本的にこの精神がなければ、組織は腐ってしまいます。実際、電力会社などには、このような精神がなく、組織論的に腐っているところがあります。

これに関して昔あった本当の話を思い出してしまいます。北海道電力会に勤めていた30歳台の人が、会社からアメリカに留学を命じられ、アメリカで最新鋭の知識を身につけて、もどってきてから、それをいかして改革をしようと意気込んでいたら、「そんなことは、しなくても良い、君はエリートなんだから、大過なく過ごせば、必ずときがくれば、偉くなれるから、余計なことはしなくても良い」といわれて、失望して会社を辞めてしまったということがありました。その当時には、北海道庁でも似たような事例があり、結構話題になりました。

北海道電力に限らず、電力会社は、一般に「役所よりも役所らしい組織」といわれるほど、保守的です。きっと、上の例でも、上司は、「部下が余計なことをして、失敗されては困る。今のままの状態を続けていれば、失敗することもなく、大過なくすごせて安泰だ」とでも考えていたのだと思います。まさに、失敗に対する考え方により、その企業の本質が見えるという格好の事例だと思います。こういう組織風土のあるような企業は、いまの世の中では、そのままでは長続きしないことでしょう。


また、「イノベーションと起業家精神」という著書では以下のように述べています。
「経営陣は、判断力に対して報酬を支払われているのであって、無過誤に対してではない。逆に、自らの過誤を認識しうる能力に対して、報酬を支払われているとさえいえるのである」
これも、まさしくその通りであり、会社全体が、新しいことに向かってチャレンジしていれば、経営者も全く失敗しないということはないはずで、経営者が全くの無過誤であったり、そうあらねばならないと思っているとしたら、非常に危険だということです。

そういわれてみれば、あの先進的なIT企業である、Googleも失敗していることはいくらでもあります。この失敗を駄目だと見る人はGoogleが常に新しいことに挑戦し続けていることを忘れているのかもしれません。

ドラッカーといえば、氏が提唱していた「組織の精神」も忘れるわけにはいきません。これについて、ドラッカーは以下のように述べています。
「組織の目的=凡人をして非凡なことをさせるこ=天才をあてにしない」
組織の役割は、凡人から強みを引き出し、凡人の弱みを消すことにあります。それは、結果として成果を中心に据えることになります。

「成果を中心に考える」
組織は常に事なかれ主義からの誘惑にさらされています。だから、高い基準を保ち続けることが必須なのです。成果をあげることは、百発百中はありません。あくまで打率で考えるべきなのです。なぜなら、優れているものほど、間違いを犯すが、新しいことを試みるからです。失敗しないこと組織の中心に据えれば、とんでもないことになってしまうことは皆さん容易に理解できると思います。

長々と書いてきましたが、結論は、個人でも、組織でも、「失敗しないことだけに血道をあげれば、いずれ淘汰される」ということです。

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2012年8月27日月曜日

脱原発に必須の天然ガス調達で中部電と大ガスがあけた風穴 - Close Up―【私の論評】東電・国グループは、中部電力・大阪ガスグループに太刀打ちできるか?

脱原発に必須の天然ガス調達で中部電と大ガスがあけた風穴 - Close Up:



原子力発電所の停止でフル稼働が続く火力発電所の主燃料となるLNG(液化天然ガス)。そのコストは電気料金の値上げ、電力各社の赤字の原因になっているが、中部電力と大阪ガスがLNGの調達で風穴をあけた。天然ガスの大量産出で、ガス価格が大幅に低下している米国での契約にこぎ着けたのだ。

中部電力
LNGは原子力発電所の停止でフル稼働している火力発電所の主燃料で、その価格は電気料金に直接跳ね返る。では、何がサプライズなのか──。

まず1点目は、天然ガス価格が現状、圧倒的に安い米国から調達するということだ。

大阪ガス本社
米国では近年、従来の天然ガスとは別の地層から産出される「シェールガス」が大量生産され、ガス価格が大幅に低下。これまで天然ガス価格は原油価格に連動するのが一般的だったが、米国だけ全く違う値動きをする「シェールガス革命」が起こっている。

一方、日本は原油価格連動で購入している上に、福島第1原発の事故以降、調達に走り回った結果、売り主に足元を見られて、LNGの高値掴みを余儀なくされた。日本の輸入価格は、米国の天然ガス価格の約6倍にも達し、「ジャパンプレミアム」と呼ばれるほどだ。

中部電力カーリング部
この構造を打ち破るべく動いたのが、中部電と大ガスだった。現在の価格で見ると、米国の天然ガスを輸入すると液化加工や輸送費を含めても通常の輸入価格より4割は安くなる計算。「既存の枠組みでの価格交渉には閉塞感もあり、突破口が欲しかった」と大ガス資源・海外事業部の揚鋼一郎ゼネラルマネジャーは動機を話す。

ただ、こうした動きは特に電力業界では珍しかった。「数年前まで米国のほうが価格は高かった」(電力会社幹部)と過去を振り返るだけで、中部電を除くと動きは皆無。資源エネルギー庁は「そもそも電力業界には1円でも安く調達しようという気合がない。中部電は異端だ」と指摘する。

2点目は、燃料調達の“プロ”である商社を頼らずに、新たな契約を実現したことだ。

国内ではガス権益だけでなく、LNGも商社を通して購入するケースが大半を占める。米国からの調達は三菱商事や三井物産などが交渉を主導している。だが、「商社は価格下落へのエンジンにはならない」(橘川武郎・一橋大学教授)のが実情だ。商社は、高く販売できたほうがよいからだ。関係者の1人は「もちろん商社は今も必要だが、今回は商社がいたら成功しなかっただろう」と指摘する。

3点目は、天然ガスの「生産者」としての権利を手にしたことだ。

これまでの調達契約は、生産基地から一定量のLNGを購入し、日本に運ぶだけというのが一般的だった。だが、今回の契約では米国内の好きな場所で天然ガスを購入した後、生産量を調整して転売などトレーディングの材料として活用することもできる。


今年初め、韓国のガス公社が米国で別の調達契約を決め、日本では「また韓国に先にやられた」との批判が上がったが、中部電燃料部の佐藤裕紀部長は「あの件はただの調達契約。最初から契約の幅が広いフリーポートに狙いを絞っていた」と打ち明ける。

今後は上流のガス田との関係構築やパイプライン輸送を直接手がけることもできる。佐藤部長は「これまで一部のメジャー企業だけがやっていた未知の領域が自分たちでできるようになり、日本にとっての調達のあり方が抜本的に変わる」とその意義を強調する。

最後のサプライズは、電力会社とガス会社が共同で動いたことだ。共同調達は「そう簡単にはできない」と敬遠する声ばかりだったが、条件がそろえば短期間で実現可能なことを、両社は証明した。

「市場を変えていくんだという意気込みのある人と巡り合えた」と成功の秘訣を語る佐藤部長。両社があけた風穴が業界全体に広がれば、今後日本のエネルギー価格は適正に低下していくかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

【私の論評】東電・国グループは、中部電力・大阪ガスグループに太刀打ちできるか?

シェール・ガス・オイルに関しては、このブログにも過去に記事としてとりあげたこ とがあります。そうして、そのときには掲載しませんでしたが、当然日本でもこれを活用するところもあるのだろうと、思っていましたが、まさに、それを行ったのが、中部電力と大阪ガスということです。 本日は、中部電力カーリング部の画像とともに掲載させていただきます!!

この柔軟な動き、政府や他の役所よりも役所といわれている、電力会社やガス会社ではできなかったということです。特に東京電力には無理だったようです。

以下に、最近の東電の状況をまとめておきます。

政府は31日、原子力損害賠償支援機構を通じて東京電力に1兆円の公的資金を投入し、50.11%の議決権を取得して実質国有化を完了しました。東電の経営破綻を回避し、福島第1原発事故の賠償や、電力安定供給に支障がないようにすることが目的です。政府はリストラなどで黒字転換させた後、1兆円の公的資本を回収する方針ですが、再建が暗礁に乗り上げた場合、機構が立て替えている1兆円余りの賠償資金すら回収できず、2兆円規模の国民負担が生じる懸念もあります。
東京電力本社
「いずれは純粋な民間企業の形に戻ってもらう」。枝野幸男経済産業相は31日の会見で公的管理は「一時的」と強調。しかし、公的資本の回収は「相当長期にわたる」と述べ、具体的な言及を避けました。

『超整理手帳』でも有名な野口悠紀雄氏
経済学者の野口悠紀雄氏は、戦時経済が確立した「1940年体制」が日本経済を蝕んでいると主張してきましたが、競争を否定する思想が根強い電力業界こそその象徴だとみなしています。これに関して、このブログでも以前掲載したことがあります。

国有化を通じて東電に民間活力を取り戻させるという逆説的な取り組みは、日本経済が市場重視の体質への転換が進むかどうかの試金石になるのでしょうか?
老朽火力更新で改革へ布石
約100ページに及ぶ総合計画の中には今後の電力市場改革の起爆剤になる可能性がある項目が含まれています。原発の再稼働が容易に見込めない中で、東電が安定供給を果たすには火力発電の高効率化に注力する必要があります。ただ、1兆円の公的資本注入を受ける東電には、従来通り電力事業のための高水準の設備投資を続ける資金的な余力はありません。 
このため、総合計画では東電が老朽火力設備を他社に売却したり、設備更新を他企業と共同で取り組み、パートナー企業にその主導権を握らせるプランが盛り込まれました。東京湾岸だけで、更新投資が必要な古い火力設備は1000万キロワット程度と中国電力(9504.T: 株価, ニュース, レポート)全体の発電規模に迫ります。「都市ガス、商社、石油、鉄鋼などがパートナーとして参加することに関心を示してる」(関係者)といいます。 
これらの発電設備が最新鋭の高効率火力に生まれ変わるには7年程度の期間を要しますが、いずれ東電以外の資本に主導権が移り、 新電力(特定規模電気事業者)や卸電力取引所に供給することも想定されます。枝野幸男経済産業相は、総合計画の認定を表明した後の記者会見で、火力関連の項目について、「関東エリアにおける電力事業の改革が、(日本)全体のシステムに先行する行動として大きなインパクトを持つと期待している」と語りました。 
競争と統制の歴史
明治期に始まった日本の電力産業は、時代の変遷とともに大きく姿を変えてきました。大正(1912―1925年)末期には、東京電灯、関西地盤の宇治川電気、東海と九州北部が地盤だった東邦電力など「5大電力」が激しい顧客争奪戦を繰り広げました。
戦時色が深まった1939年(昭和14年)には電力国家管理体制のもと全国の発電から送電まで手掛ける日本発送電が設立され、1942年(同17年)には配電統制令に基づき全国に9配電会社が発足しました。9社の地域ブロックは「現在の電力9社の供給エリアと基本的には変わっていません。戦後から現在に至る電力体制は、戦前に東邦電力を率い、「電力の鬼」といわれた松永安左エ門が再編を主導し、1951年に確立しました。 

競争を否定する思想
戦後の9社体制への再編、70年代以降の国策民営による原子力の推進と、体制や業容を変化させながら、電力業界は民間セクター最大の設備投資の発注者として産業界と地域経済に絶大な影響力を行使してきました。地域独占に加え、事業コストに一定の利益率を加えた総原価に基づく電気料金の設定が許されてきた電力会社の経営は従来、赤字とはほぼ無縁で、市場競争を仕掛けるインセンティブもありませんでした。2000年の電力小売りの一部自由化の導入で電力会社が営業区域を越えて顧客に電気の供給が可能になっても実例はほとんどなく、競争を忌避する体質が染みついていました。 
戦時体制を確立した1940年体制を「市場経済を否定する考えが基本にある」と、長年にわたり問題視してきた野口悠紀雄氏(早稲田大学ファイナンス大学院総合研究所顧問)は、昨年10月、ロイターの取材に対し、「私がずっと言ってきたことだが、東電は1940年体制の権化だ。さらにいうと、経団連と経済産業省。この3つはワンセットで40年体制の権化だ」と語り、メスを入れる必要性を強調しました。 

中部電力の動向が電力改革のカギ握るか
これまでは原発推進で一枚岩だった電力業界ですが、福島第1原発の事故を契機に結束が弱まる可能性もあります。「国策民営の罠 原子力政策に秘められた戦い」(日本経済新聞出版社)を著した竹森俊平・慶応大学経済学部教授は、中部電力(9502.T: 株価, ニュース, レポート)の動向に注目しています。竹森教授はロイターの取材で、「浜岡原発の再開はどうみても無理だ。中部電は原発の依存度も低くて、経営の方向性がはっきりする」と話しました。 
中部電は昨年5月、大規模な東海地震の発生が予測される浜岡原発について、菅直人前首相の停止要請を受け入れました。現在、津波対策の強化工事を行い再稼働を目指しています。ただ、同原発が立地する静岡県の川勝平太知事は、ロイターのアンケート調査(2月下旬から3月上旬実施)に対し「当面、再稼働を認めない」と答えており、ハードルは高そうです。 
原子力発電のスタンスは「電力会社によって違う」(業界関係者)とされています。竹森氏は「原子力発電は事業として市場経済に合わない。国が原子力発電の運営をやるのでないと、東電だけではなく電力事業そのものが成り立たない」と指摘しています。同氏に限らず「原子力の国有化論」を唱える有識者は多いですが、ある政府関係者は「経済産業省も財務省もそこまで責任を取る気はない」とみています。
市川美余(カーリング)・中部電力主将として、日本カーリング選手権連覇
こうした最中にあっての、上記の風穴である、中部電力と大阪ガスグループによる、天然ガスの「生産者」としての権利の取得です。今回東電は、直接原発の大被害を受けさらに、地域に対する賠償もしなければならなてということで、中部電力などとは根本的に異なるところがありますが、このスタンスやはり、政府主導ではなかなか出てこないものと思います。

このブログでも、以前、政府主導で日本再生戦略を実行することなど不可能であることを掲載したことがあります。これに関しては、一見無関係に見える、NASAによる国際宇宙ステーションの無残な経済性追求の失敗についても事例をあげました。

政府や官僚が、経済性を追求するには、かなり無理があると思います。そもそも、自由経済においては、誰が成功を収めるのかなど、その時々では誰にもわからず、様々な民間企業が、その時々でいろいろなことをやっていて、その中で、うまく適応・適合した企業が次の市場を大きく開拓していくというのが普通です。これに関しては、民間企業も難しいというのに、政府や官僚がこれができると思いこむことに関しては、かなり無理があります。

これができるというのであれば、共産主義、社会主義下の計画経済もうまくいったはずです。私自身は、上の二つの事例をみていて、やはり、中部電力、大ガスグルーブのほうは、なんとかうまくいきそうですが、東電、政府の組み合せは、無理だと思います。

国有化することは、ある程度無理もないところもあると思いますが、やはり、東電・大ガスのようにより柔軟な発想も可能にするようにするため、NASAが、米国議会において、経済性追求の任を解かれ、NGOが担当するようになったように、国が直接関与するよりも、有力NGOや、民間企業などもいれて、新たな市場を開拓することと、ユーザーにとっても最も良い体制を模索すべきと思うのは私だけでしょうか?


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2012年8月26日日曜日

「尖閣は日本領かも」と疑問視した中国人企業幹部のツイートが全削除 どうやら金盾がサボっていただけ―【私の論評】金盾のサボりは真実か?

「尖閣は日本領かも」と疑問視した中国人企業幹部のツイートが全削除 どうやら金盾がサボっていただけ:


中国版ツイッター“微博”で24日、「人民日報が過去に『尖閣は日本領』と認める記事を書いていた」と発言した中国の民間企業幹部のツイートが、25日17時頃までにすべて削除され跡形もなくなってしまいました。

該当のツイートは、広東捷盈電子科技・取締役副主席の林凡氏が24日11時過ぎに発したもの。1953年1月8日付けの人民日報で「琉球群島は尖閣諸島などの島嶼からなる」と記述していた記事を当時発行さ... 続きを読む

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【私の論評】金盾のサボりは真実か?

昨日このブログでも、この話題についてとりあげたばかりです。そうして、このようなことがおこる背景として、中国は、けっして一枚岩ではないことを背景の一つにあげました。そうして、たとえば、日本なども主流派、反主流派、与党、野党などけっして、日本だかといって一つにまとまっているわけではないですが、中国の分裂ぶりは、日本の常識にはあてはまらないことを掲載しました。


上の記事では、微博の当該記事が消去されたことと、ウオールストリート・ジャーナルの中国の検閲に関するグラフから、週末には検閲の頻度が減ることを前提とし、今回の微博騒ぎは、中国検閲官の怠慢、要するに金盾の怠慢としてかたずけています。しかし、これは、本当でしょうか。この二つをもって、上のような結論に達して良いものなのでしょうか?私には、とてもそうは思えません。本日は、その理由を掲載します。本日は、各国サーバー軍などの写真も掲載させていただきます。


私には、そこまで単純には受け取ることができません。まずは、金盾について、以下にこのブログにも過去に掲載した動画を掲載させていただきます。



金盾システムの詳細は関係者以外は、誰も知りはしないとは思いますが、人工知能も用いたような、情報遮断システムのようです。そうして、もともとは、中国国内だけではなく、世界中の情報を統制しようとして作成されたもののようです。そうして、Google、Yahoo、Microsoft、YouTubeの情報も統制しようとという目的をもって設立されています。


しかし、そんなことは、上記にあげられた、世界有数の私企業でも、そんなことはされては、たまったものではないので、当然対抗措置を打ち出しました。Googleは、結局中国から撤退しました。それに、アメリカや他の先進国もそのようなことはさぜし、とサイバー軍を組織し、その対策にあたってきました。だから、金盾といえども、中国外では、情報統制はほとんどできなくなっています。


しかし、中国内は別です。中国内の情報統制まで、私企業や、他国がくちばしを挟むわけにはいきません。だから、どうしても、中国内でも、情報統制されたくなければ、Googleのように完全撤退するしかありません。そういった面で、私はGoogleを高く評価しています。Googleは、中国での事業よりも、情報統制されないことを選んだわけですから、素晴らしい決断だったと思います。


それにしても、各国のサイバー軍は、今でも、中国国内の金盾の状況を今でも、監視していると思います。そうして、自国にとって、非常にまずい、情報統制や漏洩などがおきたり、おきそうになれば、何らかの形で、一般にはわからない形で攻撃を加えていると思います。

いってみれば、金盾は、サイバー戦争の最前線でもあるわけです。金盾の担当者は、上の記事では、なにやら、検閲官などとしていますが、検閲官程度のものではなく、最前線のサイバー戦士であり、当然、最前線基地のパイロットが夜昼なく、不測の事態に備えて、待機しているのと同じように、不測の事態に備えているはずです。

そうして、何か、不測の事態があれば、それにすぐさま対応できる体制を整えているはずであり、実際対応しているはずです。


にもかかわらず、微博でツイートのような事態が起こってしまったのは、金盾が見逃したというより、意図して意識して、そうしたとしか考えられません。そうして、意図してそうした背景として、微博のツイートの主(あるじ)、本人もしくは、その背後に、主流派、反主流派、あるいは、主流派、反主流派の中のどの派閥かまでは判別できませんが、金盾といえども、すぐに、情報を削除すべきか、判断できかねる誰かが控えていたと考えるべきです。

そうして、25日に、完璧に削除したのは、その控えている人間がわかって、削除できると判断したか、主流派と反主流派もしくは、これらの中のさらのいずれかの派閥と他の派閥の間で削除の合意が成立したからであるとみなすべきです。 また、当局そのものが、反日デモの加熱さらには、反政府デモへの拡大を恐れて、噂程度で日本の正当性も訴えておくことが妥当と考えたのかもしれません。

金盾のサイバー戦士もしくは、その上司が単純に見逃したというなら、それが、人為的によるものなのか、それとも、金盾のITに脆弱性があるのかは、未だ判断がつきませんが、金盾にも、脆弱なところがあるということで、今頃、世界中サイバー軍が、その脆弱性をチェックし終わっていることでしょう。


いずれにしても、今回の出来事は、中国が一枚岩でないことを世界に向かって示したか、あるいは、金盾あるいは、中国のサイバー軍の脆弱性を世界中に向かって示したことになるということです。

真相をつかむことは、なかなか難しいですが、いずれ、人事異動とか、懲罰などがあれば、わかるかもしれません。あるいは、闇に葬られるかもしれません。
しかし、今のところは、金盾の検閲官のサボりである結論づけるほどの情報は、ないと思うのは、私はだけでしょうか?


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2012年8月25日土曜日

「尖閣諸島は日本領土」広東の企業幹部が人民日報記事など証拠挙げ、賛同広がる―【私の論評】中国は、一枚岩ではないことと、反日デモは、反共産党デモの裏返しでもあることを認識すべき!!

「尖閣諸島は日本領土」広東の企業幹部が人民日報記事など証拠挙げ、賛同広がる:

微博の画面
【上海=河崎真澄】中国広東省の民間企業幹部が24日、中国版ツイッター「微博」で「1949年から71年まで中国政府は釣魚島(尖閣諸島)を日本の領土と認めていた」と異例の発言をした。日本領有を示す53年1月の中国共産党機関紙、人民日報の記事や、複数の公式地図など根拠を挙げている。微博では中国国内からの感情的な反論に加え、「知識のない大衆が中国共産党に踊らされたことが分かった」などと賛同する見方も広がっている。

発言をしたのは同省広州の電子サービス企業、広東捷盈電子科技の取締役会副主席との肩書を持つ女性の林凡氏。林氏は微博の運営会社、新浪微博から「実名」の認証を受けており、10万人以上の読者をもつ。

林氏の資料によると、人民日報は53年1月8日付の紙面(下の画像)に掲載した記事で「琉球群島(沖縄)は台湾の東北に点在し、尖閣諸島や先島諸島、沖縄諸島など7組の島嶼からなる」と表記していた。中国当局が監修した53年、58年、60年、67年に発行した地図の画像も示したが、その多くが「尖閣群島」「魚釣島」などと表記。日中境界線も明らかに日本領土を示している。


林氏は冷静に証拠を積み重ねた上で「中国政府はこれでも釣魚島はわれわれの領土だといえるのか」と疑問を投げかけた。中国国内からの反応には、「資料をみて(尖閣諸島が)日本領だったことが明白に分かった」「(当局に)タダで使われて反日デモを行う連中には困る」などと、林氏支持の発言が出ている。

一方、25、26の両日も、尖閣諸島の問題を巡る反日デモが、四川省南充や浙江省諸曁、広東省東莞、海南省海口など、地方都市で呼びかけられており、混乱は今後も続きそうだ。

この記事の詳細はこちらから!!

【私の論評】中国は、一枚岩ではないことと、反日デモは、反共産党デモの裏返しでもあることを認識すべき!!

先日は、尖閣に中国人が上陸して、物議を醸しました。そうして、中国各地で反日デモが行われました。このデモでは、日本製の警察車両や個人車両が破壊されたり、経営者、従業員ともに中国人の日本料理店舗が破壊されたりと、なにやら、おかしげな動きもありました。

尖閣諸島は、そもそも、日本の固有の領土であり、領有権を主張して、尖閣に上陸すること自体が、日本人の感覚からすれば、理解に苦しむことです。そうして、さらに、反日デモとなれば、大方の日本人からすれば、理解不能どころか、理不尽であるとさえ思われます。

反日デモに参加して駐車場に戻ってみたら、
自分の日産車が打ち壊しにあっていた女性
これに対して、微博で上記のようなツイートがされているというわけです。それにしても、上記のようなツイートを封鎖しない中国当局は一体どうなっているのか、皆さんも理解に苦しむところがあると思います。

さらに理解に苦しむような動きがあります。


上の画像は、中国のサイトで流されていた動画のキャプチャ画像です。この中国国旗を焼いている人間に見覚えはないでしょうか?そうです。この人物、実際は、先日尖閣列島に上陸した中国人のうちの一人です。

これに関しては、詳細は、以下のURLをご覧いただければ、よく解ると思います。

尖閣諸島上陸の中国人活動家が中国国旗を燃やしていたことが判明 / 中国人「えっ?」

以下に、要約を掲載しておきます。
8月15日に香港と台湾の活動家が尖閣諸島に上陸、中華人民共和国と中華民国(台湾)の旗を立てた。すでに全員強制送還済みだが、日本では「現地では英雄視されている」と報じられている。 
その「英雄」の一人が中国の国旗を燃やしていたことが判明したそうだ。中国ネットユーザーに少なくない驚きを与えている。 
「英雄」のまさかの行動。活動家が国旗を燃やしている画像は、香港のネットユーザーから投稿されたものだという。 
まさかの行動をとったのは、島に上陸・逮捕された色黒、白ひげが印象的な初老の男性。彼は日本のテレビにも何度も映っており、見覚えがある人もいるのではないだろうか。その人物が、2011年の9月には別の活動で中華人民共和国の国旗を燃やしていたのだ。 
この活動家の名は古思堯(66才)である。香港では「社会活動家」として有名な人物だそうだ。若い頃は熱心な中国共産党支持者であったが、1989年の天安門事件をきっかけに反中国共産党に転じ、以後、家族を中国大陸に残し、香港を拠点に様々な抗議運動をしている。 
昨年、中国国旗を燃やしたというのもその一環だったようだ。なお、香港での活動では数度の逮捕歴を持つ。 
「愛国の英雄」のために「都合が悪い」と考えられる国旗を燃やしている画像は一部の掲示板ではすでに削除済だ。しかし、全てをネット上から消すのは困難だろう。
国旗を焼いた人物が、今度は国旗を立てる。ネット上ではどこかからか資金を得てパフォーマンスとして上陸したのではという憶測まで飛び交っている。黒幕がいたのかどうか真相のほどは定かではない。
さて、こうした、理解に苦しむ中国の現状から浮かび上がってくるものがあります。それは、以前にもこのブログに掲載したように、中国は決して一枚岩ではないということです。無論どこの国だって、体制派、反体制派の違いはあります。日本だって与党と野党があります。同じ国の中で、利害が異なる複数の集団があるのは、当たり前のことです。



しかし、たとえば、尖閣の問題で、日本国内で、はっきりとあれは中国の領土であるなど述べる人はいないでしょう。竹島だって同じことです。日本育ちの日本国籍の生粋の日本人であれば、どんなイデオロギーや、信条をもっていようとも、この点はブレないと思います。そんな主張をする人がいたとしても、それは、ごく少数であり、たとえ主張したとしても誰にも受け入れられないでしょう。そういう観点からすれば、少なくとも日本は、まだ、国民国家として一枚岩の国といえると思います。

しかし、中国は、そうではないということです。このことについて、以前のこのブログの記事にも掲載しています。

強硬な中国と友好的な中国=2つの中国が存在する理由とは?―米誌―【私の論評】中国はもともと一枚岩の国家ではない!!

詳細は、上の記事をごらんいただくものとして、以下に少し長めになってしまいましたが、要約だけ掲載しておきます。
中国は長期一党独裁の国家です。しかし、党内における権力争いは、熾烈を極めています。代表なのは、共産主義(毛沢東忠実派)と、改革開放派の争いです。そのほかにも、利権をあさる長老・二世らと、汚職の撤廃を考える者の対立です。
また、「軍事・経済ともに大国」になったように見えるあるいは、見せかけている、中国、2つの考えに分裂しています。 
一つは、アメリカのように、国際的義務を果たし、一人前の先進国の誇りを得ようとする勢力。 
もう一つは、アメリカのように、国際社会に我を通し、覇権主義に走ろうとする勢力があります。 
「竹のカーテン」から漏れ聞く政局は掴みどころがないですが、あらゆる面において、中国政治が一枚岩でないことが窺えます。 
加えて、増長する軍部もあり、権力・利権の争いはまるで、バトル・ロワイアルの様相です。それに、増長する軍部ではありますが、実は正式に中国には存在しません。そうなのです、中国の人民解放軍は、そもそも、中国以外の他の国との軍隊とは全く異なります。 
そもそも、人民解放軍は、共産党の私兵であり、共産党が直轄している組織です。 
中国人民解放軍の軍区
人民解放軍の組織としては、中華人民共和国軍事委員会の下に総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部の四総部があり、その下に海軍、空軍、第二砲兵(戦略ミサイル部隊)および七大軍区が置かれています。 また国防科学技術工業委員会、軍事科学院、国防大学なども軍区級組織です。国務院の国防部は外国との軍事交流などを担当しているだけで、人民解放軍に対する指揮権を持っていません。国務院の管轄下にない解放軍はあくまで党の軍隊であり、国家の軍隊ではありません。 
党と軍の関係については、憲法で中央軍事委員会の指導下にあると規定されているが党主席とは記載されていない。そのため、毛沢東など歴代の最高指導者は中央軍事委員会主席を兼任している。 
それに、この七大軍区というのが曲者で、法律はともかく、現実には、この軍区の上に、地方の共産党があり、これらの軍は、地方共産党の私兵というのが実体です。こうして、地方の共産党の直下にある、人民解放軍が、独自に私兵軍団をもっており、そのなかには、核兵器を持つ軍区が複数あったり、海軍を持つ軍区が複数あるという具合です。全く普通の国の軍隊とは、根本からして異なるのです。 
このような、かなり多くの価値観が存在して、分裂していて、統一国家としてのまとまりのない中国、それは、当然中国の「外交のブレ」にもつながっています。 
あの尖閣問題で、中国が傍若無人とも受け取れる対応をしたのは、私の類推では、おそらく、2012年の人民代表大会における、代表者の選挙、すなわち、次の主席選びに標準をあわせた、保守派の揺さぶりと見ています。これは、以前のブログにも書いたことですが、たとえ、この類推が外れていたとしても、似たような構図の中でおこったものと思われます。 
ただ、どこのどの派閥であれ、いったん起こってしまったものに関して、あそこで日本政府にたいして軟弱な姿勢をみせれば、反対派につけいる隙を与えることになってしまうことを恐れて威圧的な態度をとったというのが真相だと思います。その背景には、何等の深謀遠慮もなく、ただただ、日本を含む他国のことなど考える余裕もなく、即物的に反応していたというところだと思います。 
尖閣問題を冷静に振り返ってみてほしいと思います。この問題で中国が得たものは、国際的な批判だけです。オリンピックや、万博で、一定の国家の威信を高めることに成功したにもかかわらず、ふたたび異質な中国の実態が暴かれてしまいました。世界を相手にして、中国が勝ち取れたものは、何もありません。それに、最近では、中国が対外的に外交で成功した試しなどほとんどありません。長年の中ソ国境紛争の火種となっていた、領土問題に関しても、結局は中国はロシアに対して、ほとんど一方的といえるほど、譲歩して解決したばかりです。このことは、日本でもほとんど報道されませんが、中国国内では、皆無といって良いほど、報道されていないようです。これを知ったら、多くの中国人民は憤激することでしょう。 
日本とのイザコザでも、結果として、尖閣列島を奪ったわけでもなく、何かしらの既成事実を得たわけでもありません。民主党のミスジャッジで行った「船長の解放」は、それ自体が日本の主権を譲ったことにはなりません。それが国内外にどう取られたかはともかく、少なくとも中国は、日本および他国に警戒されるようになり、逆に目立った強硬策を取れないようになっています。特に、アメリカの態度を硬化させ、終戦後日本の自衛隊も含んだ、演習では最大規模の演習であった「キーン・ソード」を実行させる結果となりました。この戦後最大級の演習にたいして、中国の軍区レベルや、一部のマスコミからは抗議の声明が一部からはあったようですが、上層部からは目立った抗議はありませんでした。 
現実には、分裂した中国が、「右往左往」したあげくに、強硬措置を取らざるをえなくなってしまったことを、日本政府がそうとも知らずに、勝手に、翻弄されていたというのが真相です。 
このような背景を知って対処していれば、日本政府としても、翻弄されず、冷静に受け止めるなり受け流すなりしていたと思います。そんなところで、慌てるから、多くの国民が、本来外交ベタの中国に対して、「中国のほうが日本よりも外交が数段上手」などと見られる結果を招いてしまったのだと思います。全く、民主党困ったものです。自力でできないというのなら、外務官僚の優秀な人間にでも任せておけば、これほどの醜態を晒さずにすんだことだと思います。この問題実際には、政府(というより、仙谷氏など)が懸念したような、戦争になるとか、日本国民が憤激するとか、中国との関係が悪化するなどの心配など杞憂といっても良かったと思います。
この記事には書きませんでしたが、中国が一枚岩ではないことは、中国の地理や、歴史など考えれば、最初からわかりきったことです。もともと、少数民族まで含めると、50以上もの民族からなる国家であり、言葉も複数があります。共産党ですら、一枚岩ではなく、有力な上海派閥と、北京派閥とその他の派閥があります。歴史的にいっても、中国など最初から存在せず、もともと、その時々の国々の集合体であり、その集合も、いっときは、統一されたかと思えば、また分裂するというように、集合離散を交互に繰り返してきました。

中国の少数民族
日本の場合は、確かに、豊臣秀吉が日本を平定し、徳川家康が、それを安定したものにするまでは、分散していましたが、それにしても、かなり昔から、日本という概念はあり、朝廷を頂点として国が別れていても、日本という全体いのまとまりのなかの一つという概念がありました。そうして、言葉も、生活習慣、宗教にいたるまで、同じような慣習が根付いていました。中国は、これとは、全く異なります。

日本車を壊す反日デモ参加者
こうした背景および、中国は、いまだ、民主化はもとより、法治国家、政治と経済が分離されておらず、そのため、人民の不満は建国以来鬱積しており、実際毎年平均2万件の暴動があり、いつ憤怒のマグマが大爆発してもおかしくない状況にあることを理解していれば、中国の不可解な行動も理解できます。

中国国内の、反日デモは、実は中国共産党中央政府にも向けられたものであり、現状では反日デモではあるのですが、それが、加熱すればいつ反政府デモになるかわからない状態にあるということです。特に最近では、反日デモは、許容されていますが、反政府デモだと許可がおりない状況になっています。反日デモは、人民の憂さ晴らしをする唯一の合法的な方途であると考えるべきです。
キャノンのカメラを首にぶらさげ、日本製品を買うなーーー
せんかくは中国のものだーと叫ぶ反日デモ主導者
それに、もともと、反日感情など、中国人民の中にはなかったということを認識すべきです。なぜ、反日活動が盛んになったかといえば、江沢民が、反日教育を組織的体型的にはじめたからです。なぜ、そのようなことをしたかといえば、上記のように、中国は一枚岩でないこと、さらには、人民の憤怒のマグマが大爆発するかもしれないので、人民の怒りの矛先を政府にむけさせることなく、矛先を外に向け、共通の敵をつくりだし一枚岩にしようとするためです。

このような動きなかなかうまくはいかないようです。実際以前尖閣で中国漁船が海上保安庁の船に体当たりしたときに、中国国内で、反日サイトがかなりできましてたが、これらは、中国政府によって、ほとんどが閉鎖されています。なぜなら、反日の書き込みいつのまにやら、反政府の書き込みにかわっていて、それも、かわるだけではなく、大炎上するということがくりかえされていたからです。

だから、先日、尖閣に上陸して、中国の旗をたてたその同じ人物が、過去においては、中国の国旗を焼いていて、反政府デモをやっていたなどということは十分あり得ることなのです。そうして、その時々で、サイトに尖閣が日本固有の領土と書き込めば、ある場合には、逮捕され、またある場合は、今回のように許容されてしまうということもあるのです。いずれにせよ、反日デモが過激化すれば、それがいつの間にか反政府デモにまで発展するので、中国中央政府は、反日デモも取り締まらざるを得ないようになり、反日デモも下火になっていくことでしょう。

中国は、海の魚でいえば、カタクチイワシ等が巨大な塊となって巨大魚に擬態しているようなものです。本来日本の政府や外務省など、このような一枚岩ではない中国を手玉にとる方法はいくらでもあると思うのですが、虚構の一枚岩の中国に翻弄されているというのが実態のようです。

中国の問題を語るには、このような実情を踏まえて論ずるべきだし、対策を考えるべきと思うのは、私だけでしょうか?

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