2016年1月14日木曜日

「世界の工場・中国」は終わった リーマン以来の貿易前年割れ…トドメはTPP―【私の論評】世界の工場が消えるだけのはずが、10%増税なら日本経済回復は中国より遅れる(゚д゚)!

「世界の工場・中国」は終わった リーマン以来の貿易前年割れ…トドメはTPP

夕刊フジ

かつて世界の工場と呼ばれた中国だが・・・・
 中国が「世界の工場」と呼ばれた時代は完全に終わった。輸出と輸入を合わせた2015年の貿易総額が前年比8・0%減の3兆9586億ドル(約468兆円)とリーマン・ショック後の09年以来の前年割れ。16年以降もさらなる下振れが予想されている。

15年の輸出は2・8%減。原材料や部品を輸入して安価に組み立て大量輸出する加工貿易で急成長してきた中国だが、人件費高騰や労使紛争の頻発などで競争力が失われ、繊維や衣料品、機械・電子部品など外資系の工場が相次いで中国から撤退した。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効すれば有望な輸出拠点となるベトナムなどへのシフトが加速するとみられ、中国の輸出産業は地盤沈下が止まらない。

輸入に至っては14・1%減の1兆6820億ドルと落ち込んだ。不動産市況や株式市場の低迷で内需が低迷、人民元安で輸入価格も上昇した。

輸入の動きは国内総生産(GDP)と連動するといわれ、19日に発表される15年の中国のGDPでは統計数字の信憑(しんぴょう)性も問われている。

貿易失速を受けて、13日の上海株式市場で、総合指数の終値は2015年8月下旬以来、約4カ月半ぶりに終値が3000を下回った。

過去30年間で中国の貿易総額がマイナスとなるのは、アジア通貨危機のあった1998年とリーマン・ショックの影響を受けた2009年の2回しかない。

政府系の中国社会科学院も16年の輸出は前年比0・6%減、輸入は3・0%減と予想しており、中国経済はさらに沈みそうだ。

【私の論評】世界の工場が消えるだけのはずが、10%増税なら日本経済回復は中国より遅れる(゚д゚)!

昨年は、ホンダ が新型原付スクーター「ジョルノ」の生産を中国から日本の熊本製作所に移しました。ホンダのような大手に限らず、中小の日系工場でも、日本生産回帰や東南アジアへの進出など中国生産縮小の動きが進行しつつあります。特に人件費の安さを理由に進出した労働集約型や、中国国内での販売を考慮していない輸出専業型の場合は、撤退さえ選択肢に入れていることでしょう。


食料品、繊維製品など生活必需品の対日輸出に強い、山東省の最低賃金を見てみましょう。この数値が初めて発表されたのは1994年でした。このとき月例の賃金はわずか170元でした。それが2015年3月の改定では1600元となりました。20年で約10倍の上昇です。

しかし、実際にはこの最低賃金で労働者を雇うことは難しいです。外資系なら2000~3000元は必要でしょう。上海、深センでは最低賃金が2000元の大台を初めて超えました。この間、日本市場はデフレが続いており、店頭販売価格はむしろ下落していました。労働コスト的にはとっくに限界に達していたのですが、2012年まで続いていた日本の円高が延命治療の役割を果たしていました。

しかし、アベノミクスによる急速な円安がこのそれ以前の麻薬漬け状態を外した格好になり、東南アジアへの産地移動が急加速しました。続いて日本回帰の動きも始まりました。

この麻薬漬け状態の中国については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。この記事は、2012年11月4日のものです。まだ、民主党政権だった頃です。この直後に衆院選があり、安倍自民党政権が圧勝しました。
中国は世界で最もストレスの大きい国に―【私の論評】日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策を終わらせ、中国に新社会秩序を打ちたてよ!!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国の麻薬漬け状態に関する部分に関する部分のみ以下にコピペします。
中国を支えているのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものだ。からくりはこうだ。 
慢性的な円高に苦しむ日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入している。国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっているのだ。つまり日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けた」ことになる。 
これ以上、日本経済が中国に振り回されないで済むにはどうしたらいいか。答えは簡単だ。日銀にデフレ政策をいますぐやめさせることである。
・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・ 
日銀は、はからずも、中国を人間でいえば、麻薬漬けにしてしまったといえるかもしれません。しかし、先に述べたようにこのような麻薬漬け政策をつづけたとしても、日本を、デフレと円高で苦しめるし、中国は麻薬漬け体質からなかなか抜け出しにくくするだけです。日銀の白川総裁も、いい加減、中国麻薬漬け政策など、中国を駄目にしていずれ人民に恨まれるだけであろうことを認識していただきたいものです。 
やはり、日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策をおわらせ、中国に新社会秩序を早期に打ちたてるためにも、日銀のとんでもない金融政策は、一刻もはやく終わらせるべきだと思います。そう思うのは私だけでしようか?
日銀の中国麻薬漬け政策により、金融・経済が過度に蝕まれた中国は、麻薬が切れた今とんでもないことになっています。実体経済は悪化、株安、金融の空洞化と、とんでもない状況です。

そうして以前、中国への進出コンサルタントをしていた連中が、今や中国撤退コンサルタントをしているという有様です。

こんな状況では、もはや中国は世界の工場でいられるわけもありません。

中国の経済モデルはもともと非常に高い貯蓄と非常に低い消費の特徴を持っていました。中国のGDPに占める個人消費の割合は35%に過ぎません。日本をはじめとする先進国は、60%台が普通です。アメリカに至っては、70%台です。

これは中国が非都市部に不完全就業者労働力  の膨大な貯えをもっていた時には可能でした。しかしこの状況は最早一変していて、 中国はいま、 不況に陥ることなく相当大きく成長率を引き下げた体勢に移行するという綱渡りのような課題に直面しています。

合理的に考え得る戦略としては、金融緩和とインフラ支出で時間を稼ぎつつ、一般世帯の購買力を強化する方向に経済改革を進めて行くという方針があったはずでしたが、残念ながら中国が実行したのは同戦略の前半部分だけでした。その結果、一方では負債が急増し、 その多くを保有しているのは規制の杜撰な 『影の銀行』です。 他方で金融崩壊の恐れも出てきました。

そうするとやはり中国の状況は予断を許さぬもののようです。

しかし、中国が世界各国から購入する 「財やサービス」 は、毎年2兆ドルを超えています。とはいいながら、世界は広いです。各国国内総生産合計は、中国のそれを除いても、60兆ドルを超えています。中国の輸入が劇的な落ち込みをみせたとしても、世界全体の支出への衝撃はさほどのことはないと思います。

日本もその例外ではありません。日本の対中輸出はGDPの2.7%程度であり、これが劇的に低下したとしても、あまり大きな影響があるとは考えられません。以下に、各国の対中輸出・輸入がGDPに占める割合のグラフを掲載します。


この程度であれば、日本の内需が拡大したり、他国への輸出に振り向けることにより、たとえ中国の経済が停滞してもその影響は軽微だと考えられます。

金融関係については、どうかといえば、 中国は資本規制を敷いています。そのため株価が急落し、或いは中国内国債のデフォルトが生じた場合でも、直接的な波及効果は極めて小さいです。

だから、中国経済の長期にわたる不振が続いたにしても、さらには、中国の金融がさらに空洞化したにしても、世界に及ぼす影響や、日本に対する影響も軽微で終わることでしょう。日本を含めた、世界の先進国などが、困ることは中国に変わる世界の工場を探すことくらいのものだと思います。

ただし、日本に関しては、一つだけ条件があります。それは、現在日本に厳然として存在する10兆円のデフレギャップを早期に解消するということです。

金融緩和をしたことにより、このギャップも縮まる傾向にはあるのですが、それにしても、このギャップを無視して、8%増税をしてしまった結果、このギャップは縮まることなく温存されたままです。

これを、早目に解消するには、10%増税などとんでもないです。まずは、10%増税は絶対にしないことが、中国の経済悪化を軽微にすることの最低条件です。

そうして、できうれば、3兆円などとチマチマしたことをせずに、10兆円規模の財政政策を早期に打てば、中国経済悪化の悪影響など、なきが如しの程度で済んでしまうことでしょう。

このあたりについて、以前このブログにも詳しく掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
衝撃!中国経済はすでに「マイナス成長」に入っている〜データが語る「第二のリーマン・ショック」―【私の論評】中国経済の悪化をだしに、日本の積極財政を推進せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、とにかく来年からの10%増税などという馬鹿なことは、絶対にやめるべぎてす。そうすれば、中国の経済悪化の影響など日本にとっては軽微なものになるはずです。

しかし、増税してしまい、さらに中国経済がさらに悪化すれば、またリーマン・ショックのように、日本が一人負けになることは必定です。リーマン・ショックのときは、日本だけが、緩和をしなかっのですが、他国は大規模な金融緩和を行ったため、本来ほんど影響がなかったはずの日本が、震源地のアメリカや、サブプラム・ローンの悪影響をかなり受けたEUなどよりも立ち直りが遅く、一番長くその影響を被ってしまいました。

今回の中国経済の悪化に対しても、他国はこの時期を狙ってわざわざ増税するなどという愚策は絶対しませんから、日本だけが実行するということにでもなれば、またまた、日本がひとり負けという状況になり、震源地の中国よりも回復が遅れる馬鹿げたことにもなりかねません。

私としては、安倍政権はそのような愚策を実行するとはとても思えませんので、先の私の中国経済の悪化が日本に及ぼす影響は軽微という予測が是非ともあたって欲しいものと思っています。




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2016年1月13日水曜日

尖閣防衛へ海自派遣も 激増する中国の領海侵入を“牽制” ―【私の論評】劇場型政治に限界が見えてきた八方塞がりのどん詰まり習近平(゚д゚)!

尖閣防衛へ海自派遣も激増する中国の領海侵入を“牽制”

尖閣周辺を航行する中国海警局の船。機関砲を搭載している

 安倍晋三政権が、沖縄県・尖閣諸島を断固として守る決意を示した。中国軍艦が周辺の領海に侵入した場合、自衛隊に海上警備行動を発令して対処する考えを示したのだ。ただ、十分な対応を可能にするには、武器使用基準の見直しなど、課題が残っているようだ。

 「警察や海上保安庁の対応が困難な場合は、自衛隊が対応するのが原則だ」

 中谷元(げん)防衛相は12日の記者会見で、こう語った。

 中国が、東シナ海海空域での活動を激化させている。民主党政権下での尖閣国有化(2012年9月)以来、中国公船の領海や接続水域への侵入は激増しており、15年の領海侵入は35日もあった。

 加えて、中国海警局の公船に機関砲が搭載されるなど、武装も強化されている。この公船は、中国海軍のフリゲート艦を改造したものとみられ、武力で尖閣を強奪する可能性も指摘されているのだ。

 こうしたなか、日本政府は昨年5月、安全保障法制を閣議決定した際、武装集団による離島への不法上陸や無害通航に該当しない外国軍艦の航行に関し、海上警備行動を迅速に発令すると決め、閣僚に電話で了解を取り付ける閣議決定の方式を導入した。

 海上警備行動は、「有事」の防衛出動とは異なり、武器使用に一定の制限があるが、警告射撃などが可能になる。過去には1999年の北朝鮮工作船事件や、2004年の中国原子力潜水艦による領海侵入、09年のソマリア沖の海賊対処の際に発令されている。

 冒頭の中谷氏の発言は、一連の対処方針に基づき、自衛隊が行動する意思を示すことで中国側を牽制する狙いがある。すでに、政府が中国側に方針を伝えたという報道もある。

 航空自衛隊南西航空混成団司令を務めた佐藤守・元空将(軍事評論家)は「自国への侵害には断固として立ち向かう-という、国際常識に照らして当たり前の姿勢を示した」といい、続けた。

 「南シナ海の現状でも分かるが、中国は弱みを見せたらどんどん出てくる。日本は専守防衛の実態を示さなければならない。これまで、憲法にとらわれて控えめすぎた。国民の生命と財産を守るためにも、武器使用基準の見直しなど、法整備も進めるべきだ」

【私の論評】劇場型政治に限界が見えてきた八方塞がりのどん詰まり習近平(゚д゚)!

中国の公船は、つい最近まで、武装はしていなかったのですが、昨年の暮れあたりから機関砲で武装した公船が、尖閣付近を航行するようになりました。

そうして、この動きはこれからさらにエスカレートすることはあっても静まることはありません。以下にこれを主張する証拠ともなると考えられる記事を掲載します。
中国、海軍艦改造し尖閣海域投入 機関砲を搭載
2014年1月に撮影された中国海軍のフリゲート艦「539安慶号」(上、共同)。
下は昨年12月22日に沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域を航行する中国海警局の
「海警31239」(第11管区海上保安本部提供)。
機関砲を搭載している 
沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で先月下旬に初めて航行が確認された機関砲のようなものを搭載した中国海警局の船が、中国海軍のフリゲート艦を改造した船だったことが5日分かった。 
中国の軍事情報を伝える香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターは、3隻のフリゲート艦が既に改造を終え、他に2隻の駆逐艦が改造中で、計5隻が尖閣海域に投入される可能性があると明らかにした。中国が領有権をさらに強硬に主張しようとする姿勢の表れと言え、緊張が高まりそうだ。
中国海軍の 053H2G 型ミサイル・フリゲート(江衛I型(江卫I级)、ジャンウェイI型)3隻と、051型ミサイル駆逐艦(旅大I型(旅大I级)、ルダI型)2隻が退役し、ミサイル発射装置を下ろすなどの改装を行い、中国海警局に移管されます。

フリゲート3隻はすでに海警船としての運用が確認されています。053H2G型。

「海警31239」、もと「539 安慶( 安庆)」艦。
「海警31241」、もと「541 淮北」艦。
「海警31240」、もと「540 淮南」艦。

改造中の051型ミサイル駆逐艦「131 南京」艦と「162 南寧(南宁)」艦かもしれません。

もしそうだとすれば、機関砲は、武装のうちの60口径37mm連装機関砲を4基全部あるいは前後2基だけを残すか、あるいは、辺防海警部隊の警備船にも装備されている新しい機関砲に載せかえることが考えられます。

機関砲を載せた退役軍艦の海警船というと、数年前に 053H型フリゲート(江滬I型、ジャンフーI型)「509 常德」と「510 紹興(绍兴)」の2隻が、公安部辺防海警部隊に移管され「海警1002」「海警1003」となっている。その後、中国海警局の正式成立によって「海警44102」(広東省)「海警46103」(海南省)と改名された。

いずれにせよ、中国側がこのような行動をするのですから、日本としてもこれに備えなければならないのは当然の措置でしょう。

それにしても、中国がこのような行動に出るにはそれ相当の理由があります。それに関しては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国海軍、尖閣接近のウラ 米爆撃機の威嚇に習政権“苦肉の策”か ―【私の論評】日本と戦争になれば、自意識過剰中国海軍は半日で壊滅!東シナ海で傍若無人ぶりを働けば撃沈せよ(゚д゚)!
B52を空母に搭載するとこんな感じです 合成写真
これは、去年11月16日の記事です。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、中国海軍のドンディアオ級情報収集艦が、尖閣付近を単なる通過ではなく、1日で東西に反復航行したのは特異な航行な航行をしたことを掲載しました。

そうして、この記事では、中国艦船が尖閣付近でこのような異常な行動をした背景も掲載しました。その部分についてのみ以下に掲載します。
中国といえば、南シナ海の岩礁を国際法を無視して軍事基地化したことをめぐって、米国と緊張関係にある。
米軍は「航行の自由」と「法の支配」を守るため、先月27日、イージス駆逐艦「ラッセン」を派遣したうえ、米原子力空母「セオドア・ルーズベルト」をマレーシア沖で航行させて中国をけん制した。 
今月8~9日(ブログ管理人注:昨年11月)には、グアムから飛び立った、核爆弾搭載可能なB52戦略爆撃機2機が、南シナ海の人工島近くを飛行するなど、圧力を強めている。中国軍は、こうした米軍の攻勢に目立った動きをみせていない。 
こうしたなか、少し離れた東シナ海で特異な航行をしたのはなぜなのか。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「情報収集艦の航行は、南シナ海での動きと連動しているとみて間違いない」といい、続けた。 
「中国は、米国が艦船だけでなく、戦略爆撃機まで投入するとは思っていなかったはずだ。対抗措置を取らなければ、中国のメンツが立たないうえ、国内世論の反発を食らう。といって、緊迫する南シナ海で下手に動けば、軍事力で歴然の差がある米軍と衝突する事態になりかねない 
「苦肉の策として導き出したのが、東シナ海への艦艇派遣だったのだろう。『自衛隊が相手ならば、大きな事態にならない』と考えたのではないか。それだけ、米軍の『フリーダム・オブ・ナビゲーション(航行の自由)作戦』で追い詰められているということだ」
そうして、昨年12月には、米軍のB52戦略爆撃機が、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で、中国が「領海」と主張する人工島周辺12カイリ(約22キロ)内上空を誤って飛行したことを明らかにしました。中国側から「2カイリ内」だったと抗議を受けたとしています。これは、無論誤って飛行したということは、あり得ないと思います。

怒り心頭に達した米国が、意図して意識してB52を飛行させたのだと思います。もし中国側が主張する「2カイリ内」というのであれば、これは真上を通過したと言ってもいいくらいです。その後12月22日に、機関砲4丁を装備し、しかもそれをむき出しにした公船を尖閣付近に航行させています。

この図式は、もうはっきりしました。南シナ海で米国が中国に対して、報復措置とると、中国としては、もともと手も足もでない、恐ろしい米国に対しては直接行動が取れないので、尖閣付近で何かをやらかして、牽制するという動きに出ているということです。

この動きは、ますます加速するものと思います。一連の中国の行動は、習近平の劇場型政治手法によるものです。超大国妄想を国民に対して演じてみせたわけですが、ご存知のようにそれは失敗に終わりつつあります。

今のままでは習近平は八方塞がりの閉塞感に苛まされることになります。米国に本気で対峙すれば、程なく米中の軍事力や経済力の差異は明々白々となり、対国内的にも非常にまずいことになります。

だから、憲法や法律の縛りのある、日本なら、何とか与することができると考え、ある程度武装した元フリゲート艦を尖閣付近に派遣して、中国の優位を見せつけようと考えのです。しかし、フリゲート艦や潜水艦を本格的に派遣するつりはないようです。

こんなことをしてまえば、それこそ、安倍内閣を憤慨させ、自衛隊が尖閣付近に出てくるようになれば、中国海軍は太刀打ちできません。惨敗するのは目に見えています。

しかし、それに対して、安倍総理はブログ冒頭の記事のように、沖縄県・尖閣諸島を断固として守る決意を示しました。中国軍艦が周辺の領海に侵入した場合、自衛隊に海上警備行動を発令して対処する考えを示したのです。これは、習近平の大きな誤算だったことでしょう。

そもそも、習近平にとって最も恐れていたことは、安倍政権が自衛隊を用いて、尖閣付近から中国の勢力を一掃することでした。もし、そんなことをされれば、脆弱な中国海軍は、日本の自衛隊にも全く太刀打ちできず、脆弱な本質を白日のもとにさらすことになります。

これを考がえると、習近平は劇場型政治で何とか乗り切ろうとしていたのですが、米国には牙を向かれ、日本だけはと考えたいたにもかかわらず、日本にさえ、牙を向かれ完全に八方塞がりになりました。

70周年抗日記念軍事パレードで、左手で敬礼をした習近平
日本が、尖閣付近に海上自衛隊など派遣して、中国と対峙することにでもなれば、中国海軍になすすべはありません。早々に中国の港に逃げざるをえなくなることでしょう。

日本では、なぜか中国の力を過大に評価をする人も多いですが、このブログにも何度か掲載したように、純粋に軍事的には中国海軍、空軍などは未だ自衛隊の敵ではありません。

そうして、自衛隊が尖閣付近で中国と対峙して、攻撃などすれば、戦争になるなどと思い込む人も多いようです。しかし、明らかな領海侵犯をして、艦船が撃沈されたからといって、すぐにそれで戦争になるなどということはありません。あるいは、明らかに領空侵犯をしたからといって、すぐそれで戦争になるということもありません。

世界の常識では、ある国が領空侵犯、領海侵犯されたから、これを攻撃して墜落させたり、撃沈したとしても、それは侵犯した側が悪いということで、何ら非難の対象にもなりません。侵犯が明らかなら、侵犯した側が悪いとされるだけです。

日本も例外ではありません。日本の領空、領海に侵犯があれば、これに対処して、呼びかけや、警告を行い、それでも退去しない場合は、当然、撃墜、撃沈するだけのことです。

過去の中国の行動をみていれば、中国艦船を撃沈しても戦争にならないでしょうが、日本側が、いかなる場合も撃沈というなら、どんどん増長して、いずれ尖閣に上陸、沖縄に上陸ということになると思います。

実体経済もダメ、金融も空洞化、株安、軍事的には南シナ海での米国の報告、さらに尖閣付近では、安倍総理の報復にあいそうです。

今頃習近平は八方塞がりのどん詰まりに苦しんでいることでしょう。根拠のない超大国妄想を演じて見せてきた、いままでつけが回ってきたようです。近いうちに習近平体制は崩れることでしょう。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2016年1月12日火曜日

焦点:中国製おもちゃ調達もドル建て、人民元取引の実態―【私の論評】爆裂中国の元国際通貨化の妄想は潰えたとみるべき(゚д゚)!


欧米輸出向けの中国製ミニオンのぬいぐるみ

英国ビジネスマンのトニー・ブラウン氏は、中国の工場から可愛らしい玩具や遊園地の景品を仕入れる際、人民元で支払おうとしたが、受け取ってもらえないという。

ブラウン氏は、毎月数百万ポンドに達する調達の決済に現地通貨を用いれば、アジアの取引相手にアピールできるだろうと考えていた。誠意を示すことになり、先方としても多分その方が楽だろう、と。

ところが、相手が望むのはドルでの支払いなのだ。

中国の工場や企業と取引するイギリスの中小企業数百社にとって、これはよくある話だ。しかし「人民元が主要通貨として台頭し、ロンドンが元の国際取引において主要なハブになる」という昨年喧伝された説とは矛盾する。

「元建てで払おうとしたが、向こうはその気にならなかった」と、中国系サプライヤーと密接な取引関係を19年にわたって続けるブラウン氏は言う。

人民元は、一部の主要銀行や投機的な金融投資家の間では取引量が急増しており、アジアでの貿易通貨としてもますます盛んに使われるようになっている。しかし、欧米の日常的な経済においては、その存在感はほぼゼロに等しい。

その理由として、定着した慣行を変える困難さや、中国企業が債務返済や国際的な支払いのためにドルを必要としていること、昨年8月以来2度目の大幅な切り下げに苦しむ人民元の現在価値に対する不信感といった点を指摘する声が、中国と定期取引を行う英国経営者の一部から聞こえてくる。

「これまでずっと中国企業はドルを切望しており、それが今でも続いている。現地通貨である人民元での支払いについて協議はした。しかし彼らが持つ人民元のエクスポージャーは限られており、ドルを選好している」とブラウン氏は言う。

ここ数年、英国のイベント会場や遊園地でのアトラクションを楽しんだ経験がある人なら、そこでもらった景品は恐らくブラウン氏の会社、つまりロンドン近郊バジルトンにあるホワイトハウス・レジャーが輸入したものだ。

過去1年で最も売れたのは、フワフワした「ミニオン」の人形だ。子供向け映画「怪盗グルーの月泥棒」で有名になり、テーマパーク「レゴランド」から、英国で開催される小規模な移動型遊園地に至るまで、あらゆる場所で流通していた。



事業は好調で、ホワイトハウス・レジャーは、為替ブローカーAFEXの主要顧客でもある。ロンドンには、銀行がトップ企業に提供する優遇レートやサービスを受けられるほどニーズが大口ではない企業に特化したブローカーが多数あるが、AFEXはそのなかでも最大級だ。

AFEXの営業担当ディレクターであるジェームス・コリンズ氏によれば、彼が担当している企業顧客150社のうち、人民元建てで本格的な取引を行っている企業は1社もないという。中国側の消極姿勢が原因だ。「サービスとしては提供しているし、注目してくれる顧客も多いのだが、相手方が応じてくれる例が1つもない」と同氏は語る。

<利用は急増したが>

中国は昨年、今後のグローバル経済・金融ヒエラルキーのなかで自国の地位を固めるには人民元の国際通貨化が不可欠の要素になると考え、そのための取り組みを強力に推し進めた。

国際銀行間通信協会(SWIFT)のデータによれば、人民元は現在、国際決済において5番目に多く用いられている通貨だ。銀行間大口取引プラットフォームでの人民元利用が急増したことにより、最も取引量の多いひと握りの通貨の1つとなることが多いという。

だが、この10年間に中国企業が膨大なドルを稼いだことが、2008年以来の米国の超低金利とも重なり、投資・貿易分野ではこれまで以上にドルが日常的に利用されるようになっている。

国際通貨基金(IMF)が昨年、ベンチマークとなる通貨バスケットの構成通貨に元を追加することを承認したため、近い将来、元は世界全体の中央銀行準備金のうち10%近くを占めるようになるはずだ。

だが、この2年間で大幅に増大しているとはいえ、国際決済全体のなかでの利用率は、ドルが52%であるのに対して、元はわずか2%だ。財・サービスの貿易においては0.5%にも満たない。

中国企業は依然として約1兆ドル相当のドル建て債務を抱えており、毎月数十億ドル単位で返済・利払いを行っている。その資金の大半はオフショア口座に入り、中国には流入しない。

AFEXの別の顧客であるボブ・レイサム氏は、中国の工場から強化複合材料と艶出し材を購入し欧米の顧客に販売しており、その代金約10万ドルを毎月支払っている。

人民元で支払うと工場側には提案してみた。できるだけ彼らが製品を販売しやすいようにしてあげることは、こちらの利益にもなる。そうすれば、我々が先方にとっていちばん使いやすい販路になるからだ」とレイサム氏は言う。

「ところが、かなりおかしなことになっていたようだ。彼らは外国の銀行に口座を持っており、対外輸出はすべてその口座で処理している。だから我々が人民元で支払おうとすると、彼らはそれを米ドルに替えてから、その米ドルを送金して、また人民元に替える。どんな理屈やメリットがあるのか理解できなかった」と同氏は語る。

<金利のアヤ>

こうした状況とは矛盾するが、HSBCやスタンダード・チャータード、シティなどの銀行を中心として、企業は人民元の採用を盛んに宣伝している。トレーディング業務や利益が減少しているなかで、銀行各行にとっては、人民元取引は貴重な成長市場なのである。

SWIFTのデータは、アジアとそれ以外の地域の不均衡を示している。例えば、グローバル規模での人民元の採用率が2%であるのに対して、日本・中国間の決済では約7%となっている。

それでも、人民元取引はドルよりも高い利益をもたらしており、売買レートのスプレッドの大きさによる両替コスト高を相殺している。

銀行関係者によれば、ロンドンにおける元建て取引はこの6カ月で急増しており、大手の企業顧客は1年以上にわたり元建て決済を行っていたという。

ロンドンのウェスタンユニオンで大手企業向けにヘッジやオプション商品を販売しているトビアス・デイビス氏は「元建ての取引はたくさんやっている」と話す。

「特に、フォワードやオプション取引では、直接人民元で決済することのメリットは大きい。金利は4%以上だから、ポジションを維持したままで、金利キャリーが得られる。ドルに比べて人民元のスプレッドがわずかに大きくても、それで相殺できる」

だがデイビス氏も、中国の顧客は依然としてドルで受け取ることに執着していることを認めている。「昨年来、元はさらに切り下げられるだろうという想定があった。だから少なくとも当面、それが続いている間は、中国企業は元を持ちたがらない。ドルをもらう方がはるかにありがたいだろう」と指摘する。

【私の論評】爆裂中国の元国際通貨化の妄想は潰えたとみるべき(゚д゚)!

人民元に関しては、昨日は以下のようなニュースがありました。

中国人民銀、対通貨バスケットで元の安定維持へ
中国人民銀行
中国人民銀行(中央銀行)は、通貨バスケットに対して、人民元を基本的に安定するよう維持する方針だ。ただ、人民元の対ドル相場の変動は増大すると見通した。 
人民銀の首席エコノミスト、馬駿氏が11日、人民銀ウェブサイト( www.pbc.gov.cn )に掲載した声明で見解を示した。 
馬氏は「バスケット制度の下で、人民元はドルに対し一方的な動きとはならない」との見方を示し、「比較的透明で、信頼できる通貨バスケット制度を確立することが市場見通しの安定化に寄与する」と述べた。 
一方で、人民元は通貨バスケットに厳格にペッグされない見通しとも述べた。それ以上の詳細については明らかにしていない。
上の記事にでてくるペッグとは、固定相場制の一つで、米ドルなど特定の通貨と自国の通貨の為替レートを一定に保つことをいいます。また、ペッグ(peg)とは、「釘止めし、安定させる」という意味で、固定相場制とは、為替相場の変動を固定もしくは極小幅に限定する制度をいいます。通常、ペッグ制では、自国の通貨と特定の通貨との為替レートは一定に保たれますが、その他の通貨との為替レートは変動します。

要するに、この記事で馬駿氏は、米ドルと元の為替レートを厳格に一定に保つことはないと宣言したということです。はっきりいえば、中国の都合で出鱈目にしますということです。

要は、元はマネーゲームには使われたものの、実際の貿易通貨には使えないということです。それについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】人民元のSDR採用後の中国 一党独裁と社会主義体制で困難抱えて行き詰まる―【私の論評】中間層を創出しない中国の、人民元国際通貨化は絶望的(゚д゚)!
中国人民元のSDR構成通貨入りを発表するIMFの
ラガルド専務理事=昨年11月30日、ワシントン
この記事では、IMFが昨年11月30日の理事会で、中国の人民元を特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用することを正式に決めたことを掲載しました。しかし、この記事では、中国元が国際通貨として用いられるのは未だ困難であることを掲載しました。その部分を以下に引用します。
中国通貨・人民元の国際化を目指す中国政府にとって、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通貨に人民元が採用されるのは今年の主要政策目標の一つになっていました。 
SDRバスケットに人民元が採用されることは、人民元が準備通貨として容易に取引ができ、資産の優れた保存手段となるものとしてIMFからお墨付きを得ることを意味します。 
だからといって、すぐにも人民元がドルのライバルとなるわけではありません。SDRの発行残高は3000億ドル(約37兆円)をやや上回るに程度に過ぎません。これは、世界の外貨準備高の2.5%を占めるにすぎません。人民元の構成比率はごく小さいうえ、通常、対外支払いをSDRで行なう国は稀です。 
金本位制の採用を取りやめた現在において、SDRは実利的な意味を殆ど有しておらず、象徴的な存在と化しています。あくまでもIMFと各国中央銀行との間でのみ使用される準備資産であり、民間の投資家などにとっては直接的には保有することも売買することもできない資産になっています。
元が国際通貨として本当に認められるには、人民元相場の柔軟性拡大に加えて、中国金融市場に対するアクセス制限の緩和、取引の自由化推進などが要求されますが、株価急落で金融市場に異例な介入を続ける中国政府は、一段と厳しい局面に立たされることになることでしょう。 
中国が資本勘定を完全に自由化し、変動相場制に移行しない限り、投資家は人民元を国際通貨として使用することに引き続き慎重になることでしょう。
まさしく、この実体をブログ冒頭の記事は示してるようです。そもそも、元がなぜ国際的にも多少とも流通するようになったのは、中国の外貨準備高が膨大なものだったからです。この準備高の高さによって元はいつでもドルとの交換が可能であるという、安心感から元の信用力が高まりました。

しかし、つい先日にもこのブログにも示したように、現在の中国の外貨準備高の状況はとんでもないことになっています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国当局が銀行のドル買い制限、一部取引拠点で=関係筋―【私の論評】さらに資本流失が加速した中国!今年はデット・デフレ元年になる(゚д゚)!
関係筋によると中国の国家外為管理局は今月、一部の取引拠点の銀行に対しドル買いの制限を指示
この記事では、中国の国家外為管理局は今月、一部の輸出入拠点の銀行に対し、ドル買いの制限を指示したというとんでもない暴挙を行ったことを掲載しました。

消息筋によれば、これを行った狙いは、無論資本流出に歯止めをかけることが狙いだとしています。この記事では、中国の資本流出ぶりの激しさを示すグラフも掲載しました。そのグラフを以下に掲載します。



昨年の12月にはすでに、資金流出入額は大幅なマイナスになっています。外貨準備高は3月時点でマイナスになっています。この状況では、以前のように元はいつでもドルとの交換が可能であるという、安心感による元の信用力はもうないとみなすべきです。

このような元が国際通貨として使われることはないです。だからこそ、ブログ冒頭の記事のように、中国の玩具工場ですら、決済として元ではなく、ドルを使いたがるのです。

もうすでに、中国の元国際通貨化の野望というか、妄想は潰えたとみるべきです。未だ元で大儲けをしようという連中は、引き際を間違えれば、大損することになります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2016年1月11日月曜日

露の国家基金「2019年初めに底つく」 資源頼み、欧米制裁…プーチン政権さらに窮地―【私の論評】小国ロシアの底が見え始めた最近のプーチンが、軍事的存在感の増加に注力するわけ?


ロシア プーチン大統領

2008年のリーマン・ショック時にロシア経済を下支えた、石油や天然ガスの税収を基盤とする露政府の基金が19年にも枯渇する見通しであることが明らかになった。財政赤字を補填(ほてん)するための基金からの支出に歯止めがかからないことが原因だが、資源収入頼みの経済政策の行き詰まりが背景にある。欧米の制裁で基金に要請が急増している企業支援も困難になる可能性があり、プーチン政権にも痛手となりそうだ。

露政府は石油・ガスの採掘・輸出税収が潤沢な際にその一部を積み立てており、赤字補填に使う「予備基金」と、景気刺激策に利用する「国民福祉基金」の2つの国家基金を抱えている。ロシアはリーマン・ショックの直撃で09年には経済成長率がマイナス7.9%に落ち込んだが、その後政府が実施した巨額の景気対策の原資となったのが、これらの基金だ。

しかし露中央銀行がこのほど発表したリポートによると、政府は15年1~10月に赤字の埋め合わせに予備基金から1兆5600億ルーブル(約2兆4400億円)を使い、16年にはさらに2兆1370億ルーブルを使うと予測。このペースで支出を続ければ、17年には国民福祉基金も赤字補填が必要となり、「19年初めには両者が底をつく」と指摘した。

露政府の見通しの甘さも事態の悪化に拍車をかけた。政府が昨年10月に承認した予算原案は原油価格を1バレル=50ドルに設定。現在は同30ドル台で推移し、この水準が維持されれば、石油・ガス関連の税収が想定を大幅に下回るのは確実だ。

さらに基金には欧米の経済制裁で資金調達が困難になった企業から「次々に支援要請が来ている」(日露貿易筋)状況とされる。制裁発動後、国営石油最大手ロスネフチや独立系天然ガス企業ノバテクなどが相次ぎ露政府に支援を要請。ドボルコビッチ副首相は「石油や輸送、農業分野の企業まで支援の原資として基金に言及しているが、すべてに足りる訳がない」と警告したが、企業や金融機関向けの複数の支援が承認されたもようだ。経営危機にある政府系の開発対外経済銀行(VEB)も、基金からの支援が見込まれている。

融資は返済を前提としているが、金額が増大すれば基金の運用が圧迫されるのは必至。基金の存続が困難になれば国家による企業支援も難しくなり、露経済には大きな痛手となる。

【私の論評】小国ロシアの底が見え始めた最近のプーチンが、軍事的存在感の増加に注力するわけ?

衰退するロシアのGDP

ロシアの国旗柄の水着
上の記事を見ていて、気になるのかGDPです。どのような状況にあるのか、以下に掲載します。まずは、以下にロシアの最近のGDPの推移などについて掲載します。

ロシア政府は昨年11月15日までに、昨年7~9月期(第3四半期)の国内総生産(GDP)は前年同期比で4.1%減少したと報告していました。3四半期連続のマイナス成長で、同国経済が深刻な後退局面にあることを改めて示していました。

ただ、今年第2四半期の4.6%減と比べ、下げ幅は改善しており、最悪の不況期は脱したとの見方もエコノミストの間に出ていました。第3四半期の改善は製造業の盛り返しが要因とも見ていました。

ロシア経済は2014年以来、ウクライナ危機などに伴う欧米諸国の経済制裁発動や原油価格の低下に伴って悪化していました。ロシアのメドベージェフ首相は昨年4月、経済制裁の影響で同国は1000億米ドルを超える損失を被るとの推定数字も明らかにしていました。

ロシアが主要な歳入減としている原油価格は昨年半ば以降、60%も急落。自国通貨ルーブルもドルに対し暴落しており、同年初期以降、半値の水準となっています。インフレ率も急騰していました。

国際通貨基金(IMF)はロシアのGDPは昨年通年で3.8%のマイナス成長になると予測。今年は0.6%縮小するとも予想していました。インフレ率については今年が15%増、来年は平均で8.6%増とし、国民の家計に打撃を与えると見ていました。

今年も引き続き、厳しい状況に見舞われるのは確実のようです。

一方世界比較ではどのような状況なのか、以下に掲載します。このデータは、2014年年末のものです。

2014年度のGDPランキングには例年と比較して2つの特徴がありました。1つは、それまで著しくGDPを伸ばしてきて、それがブーチン人気にもつながっていたロシアが、ウクライナ問題により、西側諸国による経済制裁の挟み撃ちを受け、世界第8のエコノミーとしての 座から後退し、世界トップ8から転落する兆しを見せたことです。もう1つは、日本と中国のGDP差が拡大し、日本のGDPが中国の半分に満たなく なっていることでした。

ロシアのGDPのランクには、国際原油価格の下落と西側諸国による制裁が主に影響していいました。さらに、ロシア国内の消費需要にも落ち込みが見られました。

この時期日本と中国のGDP差が広がっていた主な要因としては、日本円の対ドルレートがそれまでの2年で大きく下がったことによるものです。 アベノミクス実施の2年で日本のGDPは1兆2000億ドル(約140兆9000億円)縮小しました。さらにご存知のように、8%増税の悪影響もありました。
▽2014年GDPランキングトップ10(単位は兆ドル)

(1)米国 17.4
(2)中国 10.4
(3)日本 4.8
(4)ドイツ 3.8
(5)フランス 2.9
(6)英国 2.8
(7)ブラジル 2.2
(8)イタリア 2.13
(9)ロシア 2.06
(10)インド 2.05
日本のGDPが下がったことには、残念に思う人も多いと思います。中国の半分以下ということにショックを受けた人もいたかもしれません。

しかし、金融緩和政策を継続しつつ、8%増税をしたということで、円安になり、経済はマイナス成長をしたということが響いていると思います。本来、増税をしなけはれマイナス成長ということはなかったはずです。

しかし、日本の場合は輸出がGDPに占める割合は、15%程度ですし、円安ということになれば、輸出産業にとっては黙っていても、価格競争力がつくということで、良いことです。

さらに、円安ということになれば、日本は過去20年以上も対外金融資産(外国に貸し付けているお金)が世界一でしたが、円安ということで、これらの資産が日本国内に投資されるようになります。

さらに、従来輸入していたものも、国内から調達したほうが安上がりということで、国内産業が盛んになり、景気も良くなります。

日本の場合は、あまりにも長い間デフレだったので、それを治すための調整過程にあるということです。だから、これをもって日本の実力とするのはまだ時期尚早です。ましてや、これをもってアベノミクス大失敗などというのは大きな間違いです。

それと、中国の経済統計はかなりでたらめなので、実際の中国のGDPはかなり低く、現実にはドイツ以下の可能性すらあると指摘する経済学者もいるほどです。

話が横道にそれてしまいましたが、14年度においても、ロシアのGDPをみると、日本の半分以下です。2010年には、ロシアのGDPは世界10位にも入っておらず、インド以下でした。それが、最近の経済成長で、インドを追い越しました。しかし、2014年には伯仲しています。

2015年の統計はまだですが、おそらくインドに追い抜かれているどころか、世界10位の座からも落ちている可能性が濃厚です。

さらに、ロシアの経済は、日本のようにこれから良くなるという兆しも全く見られません。

ロシアは領土が広大なので、なぜか今でも大国と見られがちですが、その見方は間違いです。日露戦争の頃のロシアは確かに超大国でした。当時のロシアのGDPは日本の8倍でした。

しかし、そのロシアも今では、GDPは日本の半分以下です。円安の影響を勘案すると、実際には半分どころか、1/4程度とみなすのが、妥当だと思います。

日本より深刻なロシアの人口問題




そのロシアですが、人口は1億4千万人ほどです。日本の人口が約1億2千万人ですから、日本より2千万人ほど多い程度です。あの広大な領土と比較すると、本当に少ないです。

さらに、ロシアには大きな人口問題があります。日本の人口問題も深刻ですが、ロシアのそれは、日本のそれに輪をかけて深刻なものです。

2005年、日本の人口は1899年以来初めて減少し、人口減少社会が現実のものとなりました。今後は人口減少の問題が少しずつ深刻化してくると予想されます。

人口の減少は、日本をはじめとする一部の先進国に限られた問題ではありません。実はBRICsの一角を構成するロシアも同じ問題に直面しています。つい最近までのロシアは原油など資源価格が高騰していたので、資源供給国のロシアは高成長を謳歌していましたが、資源価格が下落したこれからは、人口減少の問題がロシア経済を直撃する恐れがあります。

ロシアの人口は、1950年代から80年代までは増加を続けていましたが、92年に1億4870万人近くでピークに達し、その後は減少傾向で推移しています。直近の2005年は1億4320万人(前年比マイナス0.46%)となっています。


今後は人口減少のスピードがさらに加速するとみられ、2050年には1億1180万人と90年時点の4分の3程度まで人口規模が縮小する見込みです。2005年時点でロシアの人口は日本の1.1倍となっていますが、今後人口減少が日本よりも各段に速いスピードで進むため、2050年には人口が日本(1億1120万人)と同程度の水準になります(図表)。

では、なぜロシアで人口の減少が進んでいるのでしょうか。その理由として、出生率の低下と死亡率の上昇が同時に進行、自然減少に歯止めがかからないことが挙げられます。

まず、出生率の低下ですが、これは1955年に妊娠中絶が合法化され、また70年代に子供を1夫婦につき2人までに制限することを推奨する政策がとられて以降顕著となりました。当時の政府は、人口爆発が発生して飢饉になることを恐れていたのです。

80年代には政府が出産を奨励する政策へと方向転換したため、出生率にやや改善の動きがみられましたが、90年代に入ると、旧ソ連崩壊後の混乱もあって経済的理由により出産を自主的に抑制する夫婦が増え、再び出生率の低下に直面しています。

また、平均寿命の短縮化も人口減少に拍車をかけています。もともとロシアは広大な国土に恵まれていながらも人間が生活していくにあたっての自然環境が厳しく、平均寿命はそれほど長くはなかったのですが、近年ではそれがさらに短くなってきています。

ロシアでは1965~66年平均の69.5歳をピークに寿命の低下が進行しており、90年に69.2歳、2000年に65.36歳、そして2002年には64.8歳となりました。平均寿命が今でも伸び続けている日本とは対照的です。

2002年では、日本人男性の平均寿命が78.4歳、米国人男性の平均寿命が74.6歳ですから、ロシア人男性は日本人男性に比べて20歳、米国人男性に比べて16.2歳も寿命が短いことになります。このまま平均寿命の短縮化傾向が続けば、ロシア人男性の寿命は、「人生50年」とのたまっていた織田信長の時代まで遡ってしまう恐れがあります。

男性の平均寿命の短縮化は、成人男性の死亡率上昇によるところが大きいと考えられます。背景には、健康に害を及ぼすアルコール濃度の高いウォッカの摂取量が増加していることがあります。実際、アルコール中毒による男性の死亡者は毎年相当数に上っており、夫婦の離婚の原因についても、最多の理由は夫のアルコール中毒です。

さらに、自殺率の上昇も男性の平均寿命を縮めています。世界保健機関(WHO)の調査によると、ロシアの自殺率は、90年の10万人あたり26.5人から95年に同41.5人と急上昇した後、2000年が同39.4人、2002年が同38.7人と高原状態にあります。2002年の年間自殺者数は5万5330人にも及びました。とくに男性の自殺率が高く、95年が10万人あたり72.9人、2000年が同70.6人、2002年が同69.3人となりました。2002年の国際比較をすると、ロシアはリトアニア(自殺率は44.7)に次いで世界で2番目に自殺率が高くなっています。

以上は少し古い資料ですが、今でも趨勢に変化はありません。

プーチンが、軍事プレゼンスに注力するわけ?


モスクワの独立空挺団に所属する24歳の女性兵士、Yulia Kharlamovaさん
経済でも、人口でも陰りの見えるロシアが今でも持てる力としては、軍事力が最大のものです。特に軍事技術に関しては今でもトップ水準にあります。

だからこそ、プーチンは、これを最大限に活かして、ロシアの優位を保とうと躍起になっているのだと思います。だからこそ、ウクライナや最近では中東で軍事的な行動に出て、ロシアの存在感を高めようとしているのだと思います。

とはいいながら、今のロシアは仮に経済が落ち込まなくても、すでにEUと軍事的にまともに対峙することはできません。無論、アメリカとは問題外です。

そうして、ご存知のように隣には、人口13億人の中国が控えており、中ロの国境は世界で最も長い国境線で接しています。

これらを守備するだけでも、とてつもない経済力と努力を必要とします。今や大国ではなくなった、ロシアには問題が山積しています。

日本は、今や小国と成り果てたロシアを等身大に見て、北方領土問題の返還など、強力に推し進めていくべきです。今後、5年くらいが、最大の山場かもしれません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2016年1月10日日曜日

海自哨戒機、南シナ海飛行拡大へ…中国をけん制―【私の論評】これは中国にとってはかなりの脅威、南シナ海の中国の艦船と潜水艦の動きが丸裸に(゚д゚)!

海自哨戒機、南シナ海飛行拡大へ…中国をけん制



防衛省・自衛隊は、アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動に参加したP3C哨戒機が日本に帰還する際の飛行ルートを見直し、フィリピンやベトナムなど南シナ海に面する国の基地を優先的に経由させる方針を固めた。

高度な監視能力を持つP3Cの飛行範囲が、中国が「領海」と主張する南シナ海で拡大する見通しだ。「上空飛行の自由」の保護にもつながり、米軍が中国の人工島周辺で実施している巡視活動を日本が独自に支援する活動といえる。

海上自衛隊のP3Cは、アフリカ・ソマリア沖での多国間の海賊対処活動に参加し、約3か月ごとに日本とアフリカを往復している。これまではシンガポールやタイなど南シナ海から比較的離れた基地を給油地に利用してきた。これを、往路は従来通りだが、復路についてベトナムやフィリピン、マレーシアなど南シナ海周辺の基地を優先的に利用するようにする。訪問先では防衛交流も進める予定だ。

【私の論評】これは中国にとってはかなりの脅威、南シナ海の中国の艦船と潜水艦の動きが丸裸に(゚д゚)!

このニュースあまり大きく日本ではあまり大きく報道されませんが、これは、いずれ日本の海上自衛隊が、南シナ海の中国の動き、特に艦船や潜水艦の監視を定期的に行うための前触れではないかと思います。中国にとっては大きな脅威だと思います。

これを予感させる出来事として、昨年は、海自のP3Cは、南シナ海でフイリピンと共同訓練を行っています。それに関連する記事を以下に掲載します。
海自P3C機、南シナ海上空を飛行 フィリピン軍と共同訓練 連携の強さ誇示
流氷観測に向かう海上自衛隊第2航空群の哨戒機P3C=青森県八戸市
 フィリピン軍との共同訓練のため同国西部パラワン島入りしている海上自衛隊のP3C哨戒機が23日、南シナ海上空での飛行を開始した。中国が岩礁埋め立てを進めるスプラトリー(中国名・南沙)諸島にも近い同島で自衛隊部隊が活動するのは初めてで、南シナ海の実効支配を強める中国に対し、存在感とフィリピンとの連携の強さを誇示する機会となった。 
 海自隊員14人とフィリピン軍の3人が乗り込んだP3Cは23日午前6時(日本時間同7時)すぎ、パラワン島を離陸。同島西80~180キロの南シナ海で実施される本番の訓練は24日の予定で、この日は周辺をフィリピン空軍機と一緒に飛行した。 
 海自鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)の第1航空群所属のP3Cと隊員約20人は、21日に現地入り。27日に帰国の途に就く。
この記事は、昨年6月23日のものです。

この対潜哨戒機あまりここ北海道とは関係のないものと思っていましたが、そんなこともはありません。昨日は以下のような記事が掲載されていました。
海上自衛隊P3C哨戒機、今冬初の流氷観測 
オホーツク海の流氷を観測する海自のP3C
 海上自衛隊第2航空群(青森県八戸市)は警戒中のP3C哨戒機が9日、オホーツク海上で、この冬初めて流氷を観測したと発表した。 
 流氷は北海道網走市から北へ約280キロの海上をゆっくり南下。大きさは幅約5キロの帯状で、薄く南北方向に広がっているという。 
 昨冬の初観測は12月31日だったが例年、1月上旬に観測され、今年も平年並みという。 
 札幌気象台によると、オホーツク海沿岸から肉眼で見える「流氷初日」は平年並みの今月中旬になりそうだという。
このオホーツク海の海自PC3の流氷観測は、おそらく冷戦時代の旧ソ連に対する対潜哨戒活動の名残であると思われます。

もちろん、P3Cの役割は流氷観測や海賊の監視だけではない。「対潜哨戒」つまり、日本周辺海域を航行する潜水艦の警戒・監視が主要な任務です。

これに関しては、昨年5月8日に産経ニュースが以下のような記事を掲載しています。
【メガプレミアム】哨戒機P3C 職人芸で敵潜水艦を追い詰める「世界一いやらしい部隊」
海上自衛隊第2航空群所属の哨戒機P3Cの機窓
から見える別のP3C=3月4日、青森県八戸市
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、実際にP3Cがどのようなことをしているのか、海自の対潜哨戒活動の凄さを示す部分を以下に掲載します。

捜索用レーダー、熱源を探知する赤外線暗視装置、鉄の塊である潜水艦が航行することで生じる磁場の乱れをつかむ磁気探知機(MAD)、敵が発する電波を手がかりに位置を特定する電波探知装置(ESM)、そして海中に投下し潜水艦のスクリュー音をとらえる音響探知機(ソノブイ)。ハイテク機器を駆使して敵潜水艦を追い詰めるP3Cだが、海自関係者は「最後は人間の目がものを言う」と口をそろえる。
訓練では海自の潜水艦が“敵”としてP3C部隊と攻防戦を繰り広げる。ある海自の潜水艦乗組員は「日本のP3C部隊は世界一いやらしい部隊だ。米国の部隊と比べても、逃げるのが難しい」と明かす。P3Cパイロットは「一度発見した潜水艦を見失うなんてことがあれば、恥ずかしくて基地に帰れなくなる」と語り、こう続ける。 
「レーダーや音響のデータを分析して敵潜水艦を見分ける技術は職人芸のように徒弟制度で伝えられる。こういう分野は日本人が得意とするところだ」 
P3C部隊は2人のパイロットのほか、警戒・監視に必要な情報を集約して指示を出す戦術航空士(TACCO)、音響やレーダーなどを分析する対潜員ら11人で構成される。このチームワークで敵潜水艦を捜索し、追い詰め、有事となれば攻撃するのだ。 
流氷観測を行う第2航空群の担当地域は日本海北部や北海道周辺海域。冷戦時代は旧ソ連海軍の動向を探る最前線と位置付けられていた。近年になって再びロシア海軍の動きが活発になっているとはいえ、冷戦後の焦点は中国が海洋進出を進める南西方面に移っている。
東シナ海南部をカバーする第5航空群(那覇航空基地)には全国各地のP3C部隊がローテーションで応援に駆け付けている。第2航空群も例外ではない。ある隊員は「しょっちゅう沖縄に行っているので、沖縄土産を買って帰っても家族があまり喜ばなくなった」と苦笑する。 
“出張先”は沖縄だけではない。P3C部隊はアフリカ東部ソマリア沖・アデン湾で海賊対処活動も行っており、これも各航空群が順番で派遣される。北方海域の警戒・監視、流氷観測、沖縄派遣、海賊対処活動。これに遭難船舶の救助活動も加わる。 
海自はP3Cの後継機として最新鋭国産哨戒機P1の導入を進めているが、約70機の入れ替えが完了するまでは四方の海に目を光らせ、耳を澄まして敵の動向を探ることになる。
昨年の観艦式に初参加した最新鋭の国産哨戒機「P1」。
「IRフレア」と呼ばれる防御装置を発射。昨年10月18日
旧ソ連に対する対潜哨戒活動は、当時アメリカからの依頼で始められたものです。この哨戒活動に関しては、当時日本への依頼を担当した当事者の人が、数年前にテレビでこのときのことを振り返って「日本には憲法9条もあることだし、安全保障に関して他国と比較すれば、制限があることから、依頼はしてみたものの、まさか本当に実現するとは思っていなかった」と述懐していました。

アメリカ側も、日本がこの哨戒活動を本当に実行し、しかもかなり大規模に実行し、その活動も世界トップレベルにまで上達させるとは思っていなかったようです。

しかし、日本の対潜哨戒能力は冷戦の間にかなり上達し、事実上世界のトップレベルになりました。

ソ連の原潜等に対する日本の海自の長期にわたる対潜哨戒活動は、様々なノウハウを海自にもたらし、今日に至っています。このようなトップの世界一の能力を持つ日本の海自にとって、ソマリアの海賊の監視など本当に朝飯前というところでしょう。

確かに、数年前までは、ソマリア沖の海賊に関してはかなり危険であるとされていましたが、最近はほとんど耳にしなくなりました。実際、ほとんど海自に事前に察知されるので、海賊活動などなかなかできなくなっているのだと思います。

この海自が南シナ海の対潜哨戒活動に参加するということになれば、中国にとってはかなりの脅威です。南シナ海における、戦闘艦、輸送艦、潜水艦、航空機その他の動きが詳細まで丸裸にされ、海自によって把握され、米国や周辺国に逐一知らされることになります。

中国の原潜も、海自の対潜哨戒活動で丸裸にされる
特に中国の潜水艦は、工作技術がかなり劣っているので、その水中での推進は、まるでドラム缶を目一杯ハンマーか何かを叩きながら、すすむような音がするので、日本の海自の対潜哨戒能力からすれば、簡単に把握することができます。

中国が何か不穏な動きを見せれば、今度は間髪を入れずにすぐに妨害されることになります。日本としても、せっかく情報を提供しても、米国あたりが何も行動をしなければ、厳しく詰め寄るべきです。

そうして、このようなことは、冷戦時代の日本が過去旧ソ連に対して実行したように、確実に南シナ海や、東シナ海でも実行できることでしょう。

戦争や武装などにアレルギーの強い日本ですが、なぜか、このような監視活動に関しては、過去の冷戦においては日本でもあまり多くの国民違和感なく受け入れられました。南シナ海や東シナ海の監視活動もそうなることでしょう。

これによって、日本は日本のライフ・ラインを自らの手で守ることも可能です。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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