2017年6月5日月曜日

「金正恩暗殺未遂事件」の全貌 ついに北の住民が反旗―【私の論評】クーデターも暗殺も困難な北朝鮮の現実(゚д゚)!

「金正恩暗殺未遂事件」の全貌 ついに北の住民が反旗

新型対空迎撃誘導武器システムの試験射撃を視察した金正恩 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 米中が圧力を強めようと、北朝鮮のミサイル実験に歯止めがきかない。何が、金正恩氏を狂気に駆り立てるのか。ジャーナリスト・城内康伸氏がスクープ入手した内部情報によると、圧政の続く北朝鮮国内に、異変が起こっているという。住民自らの手で、この独裁者を消そうという衝撃計画が報告されていたのだ。同氏がレポートする。

 * * *

 ちょうど一年前の昨年5月。北朝鮮の首都・平壌で6〜9日までの4日間、36年ぶりとなる朝鮮労働党大会の第7回大会が開催された。それまで党第1書記だった最高指導者の金正恩氏は、新設ポストの党委員長に就任、「金正恩時代」の到来を内外に宣言した。

 党大会と同じ時期、北朝鮮中西部・平安南道のある都市では、秘密警察に当たる国家安全保衛部(現国家保衛省)の地方組織が、思想教育を目的とする「講演会」と呼ばれる、秘密の集会を開いていた。

 北朝鮮では、数世帯ごとに相互監視させる、戦前の日本で運用されていた「隣組」に似た「人民班」という制度がある。講演会参加者の中心を占めたのは、地元人民班の班長たちだったとみられる。演壇に立った地元の保衛部幹部が切り出した。

「金正恩同志を党の首位に崇めて、党大会が行われている。しかし、“敵”の目的は、われわれとは違う。どうすれば党大会を破綻させることができるか、これこそ、“敵”の最大の目的だ」

 筆者は北朝鮮関係者を通じ、この秘密集会の詳細な記録を入手した。その衝撃的な内容を紹介しよう。

 ただし、情報源の身辺安全を考慮し、集会の具体的な日時、場所など内容の一部をあえて曖昧に記したことを、ご了解いただきたい。関係者によると、保衛部幹部は講演で、次のように言葉を繋いだ。

「党大会を狙う敵の策動が、陰に陽に極致に達している。大会を前後して敵の策動が起こりうる可能性があるだけに、注意喚起のため、道内で最近、保衛機関が摘発した事例について申し上げる」

 幹部がまず報告したのは「1号列車」と称する正恩氏が乗る専用列車の爆破未遂事件だった。つまり、敵とは、北朝鮮内外の反体制勢力を意味する。

 1号列車をめぐるテロの話としては2004年4月、北朝鮮北西部の平安北道竜川郡にある鉄道平義線竜川駅付近で、150人以上が死亡した列車爆発事故が発生した。当時、同駅を通った故金正日総書記が乗っていた専用列車を狙ったテロとの説が流れた。一方、北朝鮮当局は「事故」と発表していた。だが、今回の計画は国内で一切報じられていない。

 報告によると、大学進学に失敗した男が制度に不満を抱き、「体制を転覆させる。そのためにはまず、首脳部(正恩氏)を除去すべきだ」と考えた。男は、正恩氏が参加する行事の開催場へと繋がる鉄道線路に爆薬をしかけ、「1号列車を爆破させるか、転覆させることを狙った」とされる。

 この男の計画は、道内の炭鉱で働く労働者の品定めから始まった。炭鉱夫ならば、大量の爆薬を運び出せると踏んだのだった。街角で「自転車修理をするふりをして」(報告)、居合わせた6人に声をかけ、接近した。

「魚がたくさん獲れる場所を知っている。爆薬を持って来いよ。獲った魚を山分けしよう」。男はこう言って、炭鉱夫をそそのかした。爆薬を水中に投げ込めば、爆発の衝撃で大量の魚が浮かび上がる、という説明だ。

 食糧不足が深刻な北朝鮮では、住民は常に腹を空かせている。3人の炭鉱夫が男の話に乗り、「爆薬、雷管、導火線を秘密裏に(作業場から)持ち出し、男のところに持って来た」という。

 爆破計画はここまでは順調に進んだ。ところが、計画は保衛部の耳に入るところとなる。残る3人の炭鉱夫が不審に思い、「爆発物を人の手に渡すのは問題だ」として、地元の保衛機関に申告したのだった。

 これとは別に、男が平素から、「首領の偉業継承問題(権力世襲を指すとみられる)」に批判的な発言をするのを聞いていた、近隣住民も通報していた。

閲兵する金正恩
 その結果、爆破計画は未遂に終わり、「われわれの首脳部を狙ったこいつは捕まった」(保衛部幹部)という。

【PROFILE】しろうち・やすのぶ/北朝鮮事情に精通するジャーナリスト。主な著書に『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男』『昭和二十五年 最後の戦死者』『朝鮮半島で迎えた敗戦』など。

※SAPIO2017年7月号

【私の論評】クーデターも暗殺も困難な北朝鮮の現実(゚д゚)!

上の記事、結局暗殺は失敗だったということです。金正恩暗殺未遂のニュースはこれまでも、いくつか流れてきていますが、無論そのすべてが失敗しています。

北朝鮮では、金正恩体制に対する不満が高まっていることは間違いないないです。ただし、よく言われているように近いうちにクーデターが起きるとか、暗殺などがあるかと聞かれるとその答えは完璧にノーです。

それには、いくつかの背景がありますが、その筆頭としてあげられるのは、金正恩は、側近を次々に大量に粛清しているという事実があるということです。これでは、反旗を翻すものが出ようもありません。

そうして、二番目の背景としては、北朝鮮国内の5人に3人がインフォーマー(密告者)だからです。少しでも反体制的な動きがあればすぐに金正恩に密告され、抹殺されます。仮に本当に金正恩体制を転覆させようとするならば、誰にも相談せずたった1人で計画し、実行し、そして自らも命を捨てるそんな人物にしかできないはずです。

そうして、最後にあげられるのは、やはり北朝鮮の軍の組織でしょう。

「北朝鮮で軍事クーデターが起きて、金正恩政権が倒れるのでは」と予測する人もいるますが、その可能性はかなり低いです。実は、北朝鮮軍には党に逆らわないための安全装置が付いているのです。

北朝鮮人民軍の組織図
それが「政治委員」による二元指揮制度、2つの命令系統の存在です。一般の軍の将校のほかに、党から派遣された政治委員が各部隊に配置され、軍の将校のみならず、政治委員が命令書にサインしない限り、部隊を動かせないシステムになっているのです(上図参照)。

これは北朝鮮に限らず、旧ソ連や中国など革命で政権を奪取した国の軍隊にはよく見られるクーデター防止システムであり、北朝鮮では朝鮮戦争後に導入され、組織内で粛清を重ねるたびにその権力を増してきました。

たとえクーデターや暗殺で金政権が倒れたとしても、新たな政権が北朝鮮に誕生するだけで、北朝鮮という国家そのものが消滅することはなかなかありえないかもしれません。

そもそも国家は、戦争以外のどんな状況で“崩壊”するのでしょうか。

経済と国家の安定性の関係については、研究者の間でも明確な答えは出ていません。「産業化で急速に経済発展した国では、政権が倒れやすい傾向があった」ということぐらいです。あくまでも「傾向」です。

過去には、目ぼしい産業がなかった国で工業化が進むと、労働人口が農村から都市周辺に大量に移動し、人々の教育水準も上がる。それによって従来の統治体制がうまく機能しなくなり、デモやクーデターが発生して政権の崩壊に至るというパターンが多くみられました。しかし、インドや中国を見れば、経済発展が政権崩壊に直結するわけではないことは明らかです。

「経済が発展すると民主化が進む」と主張する者もいますが、これとて現実には双方が比例関係にあるわけでは決してありません。シンガポールやカタール、UAE、クウェートなど1人当たりGDPが日本より高い国でも、政治制度は必ずしも民主的ではないし、10年以降の「アラブの春」による動乱で民主化したといえる国は、チュニジアのみです。

このように、経済発展の程度と国家の安定性の間には、さしたる因果関係が見当たらないのです。
北朝鮮の少女
いずれにせよ、利害関係が伴う運動家ならばいざ知らず、政治学の研究者の中で「北朝鮮という国家が近い将来、崩壊する」と真剣に考えている者は、そう多くはいません。日本としては当分の間、現体制が継続するという前提で対北朝鮮政策を考えなければなりません。

それは米国とて同じことです。CIAなどが暗躍したとしても、今の北朝鮮の体制であれば、暗殺、クーデターなど容易にできるものではありません。かといって、ピンポイントで金正恩を暗殺したとしても、それで北朝鮮の体制が容易に瓦解することはありません。だから、金正恩斬首作戦にも二の足を踏んでしまうのです。

かといって、米国が武力で北朝鮮を先制攻撃をすれば、局地的な戦争ですむはずもなく、大規模な戦争になってしまうのは、必定です。それに、最近ルトワック氏が新著『戦争にチャンスをあたえよ』で主張しているように、実際に戦争をするなら、50年くらいは北朝鮮に軍隊を駐留させる必要があります。

そのくらい軍隊を駐留させて、民主的な政権ができあがるまで、辛抱強く待つくらいの覚悟がなければ、結局中途半端に終わってしまいます。それについては、米国はイラクでいやというほど学んだことでしょう。中途半端に軍隊をひきあげてしまえば、結局とんでもないことになるのです。北朝鮮を攻めるということになれば、このくらいの覚悟がなければなかなかできるものではありません。

そうして、一度戦争が起きれば、どんな結果になっても朝鮮半島は大混乱に陥ります。仮に統一されるとしても、約2500万人の北朝鮮の人々を、約5000万人の韓国で支えることなどできるわけもありません。多くが難民となって、日本にやってくる可能性もあります。我が国はその脅威をもっと真剣に考えるべきです。

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2017年6月4日日曜日

在日台湾独立派が連合組織―【私の論評】全台連は世界各国の支那反対派の華僑組織のモデルになる(゚д゚)!

在日台湾独立派が連合組織


 中国からの独立意識が強い在日台湾人組織17団体が4日夜、都内のホテルで「全日本台湾連合会」の創立大会を開いた。連合会の趙中正会長は声明で「台湾人としての主体性を強く主張していきたい」と創立の趣旨を語った。

 連合会によると、民進党政権になって以降、中国が台湾を国際社会から排除しようとする圧力を強める中、在日台湾人組織が団結して存在感をアピールする狙いもあるという。

 その後の祝賀会には、台北駐日経済文化代表処(大使館に相当)の謝長延代表や評論家の金美齢氏らが出席。蔡英文総統からも「(台日)両国の絆を深めるために貢献されることを期待している」と祝辞が寄せられた。

【私の論評】全台連は世界各国の支那反対派の華僑組織のモデルになる(゚д゚)!

「全日本台湾連合会」の趙中正会長
日本の経済界などに大きな影響力を持つ「華僑組織」は本日「全日本台湾連合会」が設立されたことをもって、大きく分裂しました。複数の在日組織に属してきた台湾系の人々のうち少なくとも数千人で新組織「全日本台湾連合会」(略称、全台連)を結成した参加者は「中国人」と呼ばれることに抵抗を感じる「台湾本土意識」の強い人々がほとんどです。中国当局は新組織の結成を「台湾独立につながる動き」と警戒を強めています。

関係者によると、全台連は日台関係の促進を図ることを主な目的にしています。全台連の創立大会には、日本台湾医師連合、美麗島交流会、栃木台湾総会、九州台日文化交流会など、日本各地の約20の台湾人団体の代表のほか、台湾を応援する日本の保守系政治家、財界関係者も出席しました。

祝賀会には謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表や呉新興・僑務委員会委員長、ジャーナリストの櫻井よしこ氏、JET日本語学校名誉理事長の金美齢氏、日華議員懇談会幹事の山口泰明・衆議院議員、渡辺利夫・日本李登輝友の会会長、元在沖縄米軍海兵隊外交政策部次長で政治学者のロバート・D・エルドリッヂ氏なども参加しました。

また、台湾正名運動発案者の林建良氏(台湾の声編集長)が蔡英文政権より、その功により「二等華光専業奨章」を受章されることとなり、創立大会と祝賀会の間に「林建良先生『二等華光専業奨章』叙勲式典」も執り行いました。

林建良氏
結成大会を6月4日にしたのは、1989年のこの日に、中国当局が民主化運動を武力弾圧した天安門事件が発生したことを意識したものです。民主化を応援し、中華独裁政権と決別する決意が込められています。

中台すべて合わせた在日華人は約80万人とも100万人とも言われています。そのうち、台湾にルーツを持つ人は1割以上とみられます。今後、その多くは全台連に合流するとみられ、海外における最大級の台湾人団体になる可能性があります。

中国当局は台湾人団体が「華僑組織」から離れる動きが世界各国に広がることを警戒し、情報収集を急いでいるといいます。

第二次大戦後、日本に在住する台湾人たちの「国籍」は「中華民国」に変更され、在日中国人が主導する組織に参加した人も多くいました。1949年に新中国成立後、日本の華僑組織は、「中華人民共和国系(北京)」と、「中華民国系(台北)」に大きく別れましたが、台湾系住民のほとんどは、「中華連合総会」など、台北系に加盟しました。今回、全台連に参加するメンバーの中に、各地の台北系華僑団体の幹部もおり、離脱は既存団体にダメージとなると指摘されています。

全台連が結成される背景には、昨年5月、台湾独立志向の民進党の蔡英文・政権が発足したことに伴い、在日台湾人のアイデンティティーが強くなったこともありますが、中国政府の台湾に対する嫌がらせが最近、ますます顕著化したことも原因だといわれています。

蔡英文総統
例えば、台湾の民進党の元職員の李明哲氏が今春、中国で治安当局に拘束されたのですが、その容疑に関する説明はほとんどなく、面会を求めた李氏の妻の訪中を拒否したことが台湾人の中国に対する印象を悪化させました。また、世界保健機関(WHO)の総会から台湾の参加を中国が阻む圧力を加えたことも、在日台湾人の不満を高めました。

習近平政権が今後、高圧的な対外姿勢を取り続けるなら、全台連結成のように、世界各地でさまざまな形で中国離れはさらに進むとみられます。

台湾の独立、反中国をはっきり打ち出した華僑の組織は全台連がおそらく世界ではじめでです。これは、おそらく世界各国の支那反対派の華僑組織のモデルになるとみられます。

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2017年6月3日土曜日

日本の“海軍力”はアジア最強 海外メディアが評価する海自の実力とは―【私の論評】日本は独力で尖閣の中国を撃退できる(゚д゚)!


画像出典 海上自衛隊HP
昨今の日本の“海軍力”の強化が海外メディアの注目を集めている。その象徴の一つが「事実上の空母」との呼び声が高い、ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」だ。5月中旬から戦後最大規模の外洋遠征中 で、26、27日には中国の進出が著しい南シナ海で「航行の自由作戦」を実施した米海軍ミサイル駆逐艦「デューイ」と共同訓練を行った。3月には、この「いずも」と同型の「かが」が就役。これで一回り小さいヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」「いせ」と合わせ、“空母4隻体制”になり、「日本海軍はアジア最強」(米ナショナル・インタレスト誌)といった論調や分析記事が目立ってきている。

 反対に、国内メディアは、改憲論議とも大きく絡むデリケートな問題なだけに、「いずも」の動きなどにしても、まるで腫れ物に触るかようなあっさりとした報道がほとんどだ。日本ではあまり公に語られることのない海上自衛隊の実力と、ライバル・中国とのパワーバランスはどうなっているのか? 海外メディアの見方を紹介する。

◆最新鋭空母4隻を保有?

 英BBCは、英国国際戦略研究所(IISS)のアレクサンダー・ニール氏の分析を紹介。同氏は、6月2日から開催されるアジア太平洋地域の防衛問題を話し合う国際会議、「IISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)」に参加予定の有力な研究員だ。「いずも」は、5月15日に同じシンガポールで開催された国際観艦式に参加しており、その姿を目にしたニール氏は、「日本が第二次大戦後に建造した軍艦で最も大きく、(護衛艦というよりは)むしろ空母に見える」と表現する。

ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 インドのビジネス・スタンダード紙は、「いずも」と同型の新造艦「かが」が、ミッドウェー海戦で米海軍に撃沈された旧帝国海軍の空母「加賀」と同じ艦名を戴くことに着目。中国はそれに反応して「悪名高き軍艦」という表現を使って「かが」の就役を非難したが、同紙は「加賀がヘリコプター搭載艦として復活したことにより、日本はアジアで唯一、2隻の航空母艦サイズの軍艦を持つ海軍大国になった」と書く。「いずも」「かが」よりも小型の「ひゅうが」「いせ」についても、垂直離着陸戦闘機「ハリアー」を搭載するイタリア、スペイン、タイの小型空母に匹敵する戦力だとしている。

 もちろん、日本側の公式なアナウンスは、上記の4隻はあくまでヘリコプターの搭載を前提とした「護衛艦」である。ニール氏も、憲法上の制約のある日本が「いずも」や「かが」の運用において慎重な姿勢を崩さないことは十分に承知している。しかし、同氏自身を含む大半の海外の識者やメディアの見方は、共通して「垂直離着陸機を用いれば十分に空母として運用可能」=「空母としての能力を十分に持っている」というものだ。たとえば、航空自衛隊はF-4の後継機としてステルス戦闘機F-35Aの導入を決めたが、F-35の短距離離陸・垂直着陸(STOVL)タイプのF-35Bを艦載機として運用すればその時点で最新鋭の「空母」になる、とニール氏やナショナル・インタレスト誌は見ている。

◆海上自衛隊は「アジア最強の海軍」

 対中国の視点では、純粋な戦力としては、海上自衛隊が中国海軍を上回っているという見方が主流のようだ。ナショナル・インタレスト誌は、海上自衛隊の艦艇と人員の数、装備の性能、組織力のどれをとっても「アジア最強」だと指摘する。主要装備の性能や役割を詳しく説明したうえで、東日本大震災発生時の災害救助活動の実績を紹介し、海上自衛隊の展開力の高さも折り紙つきだとしている。ビジネス・スタンダード紙は、「そうりゅう」型8隻と「おやしお」型11隻を擁し、2021年までに23隻に拡大する予定の潜水艦戦力も、中国に脅威を与えるとしている。

「そうりゅう」
 また、南シナ海を経てシンガポール入りし、その後さらに南シナ海で「デューイ」との共同訓練を行った「いずも」の動きを、ニール氏は尖閣諸島など日本周辺海域での「中国の執拗な動き」への対抗策だと断言する。そして、「『いずも』は安倍政権下で進む日本の軍拡の象徴だ。それは、第二次大戦中の日本の強力な空母艦隊によってもたらされた痛みを強烈に思い出させるものだ」と、中国側の見方を代弁する。

 ビジネス・スタンダード紙は豊富な防衛予算も海上自衛隊の強みだと見る。「防衛費の上限が全体の1%という制約がありながらも、日本の2017年の防衛予算は436億ドルで、インドの535億ドルよりも少し少ないだけだ。そして、インドや中国と違い、日本は陸軍よりも海軍と空軍に多くの予算を回している」と、予算面でも決して自国や中国に負けていないと指摘する。

◆防衛装備の海外移転で強化される防衛力

 我々日本人の多くは、自衛隊の装備はかつての「武器輸出三原則」の制約などにより割高だという認識を持っている。しかし、ビジネス・スタンダード紙は、自国との比較において逆の見方をする。「川崎重工、三菱重工といった巨大企業を擁する日本の洗練された造船産業は、軍艦を迅速に安く作ることができる。そうりゅう型潜水艦は6億8500万ドルだが、これは半分以下のサイズのインドのスコルペヌ型潜水艦とほぼ同コストだ。排水量690トンのあわじ型掃海艦もたった1億6000万ドルで作っている」などと書く。

 日米の連携強化も、中国にじわりとプレッシャーを与えていると各メディアは分析する。「いずも」と「デューイ」の共同訓練は、デューイが中国の南シナ海での動きを牽制する「航行の自由作戦」に従事している艦なだけに、中国のみならずアメリカや周辺諸国の注目も集めた。日本側は「いずも」は航行の自由作戦には参加しておらず、あくまで一般的な編隊・通信の確認だったと説明しているが、ニール氏は、こうした日米の動きを中国は「アメリカによる地域支配の準備をカモフラージュするものだと見ている」と指摘する。また、ニール氏らアナリストは、武器輸出三原則の緩和により、インド、オーストラリアといったアジア太平洋地域の同盟国に高性能な日本製装備が行き渡ることも、広く日本の防衛力強化に貢献すると見ている。

 こうした論調を俯瞰すると、アジア太平洋地域の覇権をアメリカから奪おうと目論む中国にとって、日本の“海軍力”が目の上のたんこぶになりつつあるのだと思えてくる。それが地域の安定にどのように影響していくのか、気になるところだ。

【私の論評】日本は独力で尖閣の中国を撃退できる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、日本の海軍力はアジア最強と結論づけています。これは、私もそう思います。このブログでも以前、日本の海軍力は世界第二位から五位であり、アジアでは最強であると掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国紙が社説で「尖閣に自衛隊派遣なら軍艦出動」「数、日本の比ではない」―【私の論評】中国が一番恐れるのは、日本の武力によって尖閣付近から中国の勢力が排除されること(゚д゚)!
2012年10月4日午後6時から7時にかけ、沖縄県の宮古島の北東海域で中国艦艇7隻が通過。写真は
そのうちの三隻。上より、ルージョウ級ミサイル駆逐艦(116)、ジャンカイⅡ級フリゲート艦(546)、
ダーラオ級潜水艦救難艇(864)
この記事は、昨年4月のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に日本の海軍力が中国よりはるかにまさっていることを記載した部分を引用します。
そもそも、海外からの評価では、日本の海軍力は世界第二位とも、世界第五位ともいわれていますし、中国海軍よりは数段上とされています。海軍力は見方によって、いろいろ変わりますが、それにしても日本二位から五位であり、中国海軍よりははるかに優っています。 
日中海軍を対比すると、最大の違いは、対潜哨戒能力と潜水艦の攻撃力です。これらが、中国は日本に比較すると全く劣っています。日本の潜水艦が、中国側に知られることなく、隠密行動ができるのですが、中国の潜水艦はすぐに日本の潜水艦や哨戒機に発見されてしまいます。 
そうなると、最初から中国側にはほとんど勝ち目がありません。航空兵力もそうです。中には、いやそうではない、中国の最新鋭の、殲31はステルス機であり、どの日本の航空機より強力であると信じてる人もいるようですが、現実にはそうではありません。米国の軍事専門家の中には、殲31 は実質第三世代戦闘機の域を出ていないと酷評する人もいます。いずれにせよ、まだまだ実験段階で実用にはほど遠いという代物です。 
中国の現状の航空機など、まだまだ技術的に劣っています。特にレーダーなどの電子機器はかなり遅れていて、日本の航空自衛隊と実際の戦闘になった場合、かなり非力です。 
「空母遼寧」も、海上自衛隊の哨戒機P3Cがいとも簡単に捕捉して、出港した途端に魚雷かハープーンの餌食になってしまいます。他の中国の艦艇や潜水艦も同じことです。

このことは、中国の人民解放軍の幹部は誰でも知っていることで、軍事的にまともに戦ったのでは全く勝ち目がないため、これを牽制するために、ブログ冒頭のように、環球時報で吠えて見せたのでしょう。日本の艦船や潜水艦などと比較するとはるかに旧式のものを多数尖閣付近に派遣してきたとしても、日本の海上自衛隊に勝ち目はありません。 
唯一中国が、日本より上回っているとすれば、核兵器を用いることができることでしょうが、現実問題としてこれを使えば、米国による反撃も予想されし、核兵器を用いた後は、あの天安門広場事件の後の世界のほとんどの国からの制裁を受けたことと同じようなことが起こることも予想され、中国としてはこれは避けたいので、これを使用することはほぼ不可能です。
 中国の軍事力、特に軍事技術は日本と比較すると、まだかなり劣っているので、もし日本と中国が戦争になったにしても、日本が中国大陸に攻め入るなどのことをすれば、負けるかもしれませんが、尖閣付近で海戦、航空戦などをする限りにおいては、中国には全く勝ち目はありません。

だからこそ、中国は尖閣付近で度重なる示威行動をしても、未だ尖閣を奪取するには至らないのです。結局、尖閣で軍事行動に出ても全く勝ち目がないですし、仮に海上民兵を上陸させるようなことをしたとしても、結局排除されるだけに終わります。

それに、現状以上の挑発をすると、日本の国民が激高して、世論が急速に沸騰し、中国の挑発阻止に傾き、日本が尖閣付近に海上自衛隊を派遣して本格的に中国と対峙することにでもなれば、二度と尖閣付近での挑発行為ですらできなくなる可能性もあるからです。それだけは、絶対に避けたいのです。

さて、現状はそうなのですが、そうはいっても未来永劫にわたった、絶対に中国が尖閣諸島を奪取しないなどということは、保証の限りではありません。

しかし、軍事力が非力な国であれば、島嶼を他国に奪取されても何もできませんが、日本の海軍力は中国を大幅に上回っているわけですから、やりようは十分あるし、やらなければ、世界中から腰抜けぶりを揶揄されることになります。また、うまくやれば、今後中国のさらなる海洋進出を阻止する貴重なケーススタディーとなるかもしれません。

それについては、私は軍事専門家ではないので、私の見解を述べてもあまり意味はないので、ここはやはり米国の戦略家である、ルトワック氏の「中国4.0」からその対処法を引用します。

エドワード・ルトワック氏
ルトワック氏は、「中国の戦略は15年間で3回も変わった」と言います。
中国1.0(2000~09年)=「平和的台頭」
これは、ルトワック氏も大絶賛のすばらしい戦略でした。中国は、誰にも警戒されることなく、世界第2の大国になることができたのです。
中国2.0(09~14年)= 「対外強硬路線」
08年から始まった「100年に一度の大不況」で、中国はアメリカの没落を確信しました。「もう邪魔するものはない!」とばかりに、「平和的台頭」戦略を捨て去り、「強硬路線」に転じます。日本、ベトナム、フィリピン、その他東南アジア諸国、インドなどなど、あちこちで問題を起こすようになりました。
中国3.0(14年~)=「選択的攻撃」
ところが「強硬路線」による反発が強まったのです。結果として、中国は孤立して追い詰められていきました。そこで14年、「選択的攻撃」戦略に転じたのです。その本質は、
彼らは抵抗の無いところには攻撃的に出て、抵抗があれば止めるという行動に出た。(p58)
この「抵抗があれば止める」というのが大事です。中国を挑発しつづけるべきではないのです。しかし、中国が日本の主権を侵害するような行為をしたら、「抵抗」しなければならないのです。抵抗しなければ、彼らは「どこまでいいのか」と探りをいれつつ、どんどん浸食してきます。しかし、ベトナムのように抵抗すれば、「ああ、これは駄目か」と引っ込むのです。ベトナムにできて日本にできないはずがありません。

尖閣は自分で守れと主張するルトワック氏

「尖閣有事の際、アメリカは日本を守ってくれるのか?」

これは、日本国内で大きな論争になっていました。ルトワック氏の見解は以下のようなものです。
率直に言って、アメリカは、現状では日本の島の防衛までは面倒を見切れないのである。(p148)

端的に言って、これらを守るのは、完全に日本側の責任だ。(同上)

日本が自ら対処すべき問題なのである。(同上)
誤解のないように掲載しますが、ルトワック氏は、「日米安保は機能していない」とか、「アメリカには日本を守る気がない」とか言っているわけではありません。
たしかにアメリカという同盟国は、日本を「守る」能力と意志を持っている。しかし、この「守る」とは、「日本の根幹としての統治機構システムを守る」という意味である。

中国軍が日本の本州に上陸しようとしても、アメリカはそれを阻止できる(同上)
尖閣に関して言えば、日本は「自分で守る!」という決意を固める必要があるようです。

ルトワック氏は、日本が中国の脅威に対抗するために、「三つのこと」が必要だと言っています。
1.物理的手段(船、飛行機など) 
2.法制上の整備 
3.政治的コンセンサス
要するに、日本は「中国軍が尖閣に上陸したことを想定し、それに備えよ!」と言っているのです。

尖閣防衛に必要な武器を確保し即座に尖閣奪回に動けるような法整備をし「中国軍が尖閣に上陸したら、即日奪回する!」という政治的コンセンサスを今からつくっておく。

そうして、もっと具体的に書いています。より具体的に言えば、
(A)「領土を守る」という国民的コンセンサスと、
(B)それを実現するためのメカニズム、

つまり電話をとって自衛隊に尖閣奪回を指示できる仕組みの両方が必要になる。(p150)
人民解放軍がある日、尖閣に上陸した。それを知った安倍総理は、自衛隊トップに電話をし、「尖閣を今すぐ奪回してきてください!」という。自衛隊トップは、「わかりました。行ってきます」といい、尖閣を奪回してきた。

こういう迅速さが必要だというのです。なぜ? ぐずぐずしていたら、「手遅れ」になるからです。ここで肝に銘じておくべきなのは、
「ああ、危機が発生してしまった。まずアメリカや国連に相談しよう」
などと言っていたら、島はもう戻ってこないということだ。ウクライナがそのようにしてクリミア半島を失ったことは記憶に新しい。(p152)
安倍総理は、「人民解放軍が尖閣に上陸した」と報告を受けたとします。「どうしよう…」と悩んだ総理は、いつもの癖で、アメリカに相談することにしました。そして、「国連安保理で話し合ってもらおう」と決めました。そうこうしているうちに3日過ぎてしまいました。尖閣周辺は中国の軍艦で埋め尽くされ、誰も手出しできません。

米軍は、「ソーリー、トゥーレイトゥ」といって、動きません。国連は、常任理事国中国が拒否権を使うので、制裁もできません。かくして日本は、尖閣を失いました。習近平の人気は頂点に達し、「次は日本が不法占拠している沖縄を取り戻す!」と宣言するなどという悪夢のようなことにもなりかねません。こんなことにならないよう、政府はしっかり準備しておくべきです。

政府は人民解放軍が尖閣に上陸したら、何をすべきか、
決めておくことが必要と主張するルトワック氏
ルトワック氏は、さらに詳細を述べています。今の段階から、「人民解放軍が尖閣に上陸した」ことを想定し、
1.海上保安庁に任務を与える
2.海上自衛隊に任務を与える
3. 陸上自衛隊に任務を与える
4.航空自衛隊にも任務を与える(制空権を掌握し、島を隔離する)
これは軍事面です。

次にルトワック氏は、「外交面」についても述べています。「尖閣有事」の際、外務省はどう動くべきなのか? 今から「準備をしておくことが大事」だそうです。
外務省も、中国を尖閣から追い出すための独自の計画をもたなければならない。中国が占拠した場合を想定して、アメリカ、インドネシア、ベトナム、そしてEUなどへの外交的対応策を予め用意しておくのだ。(p171)
では、外務省は具体的に何をするべきなのでしょうか?ルトワックさんは例として、こんな提案をしています。
たとえば中国からの貨物を行政的手段で止める方策なども有効であろう。EUに依頼して、軍事的な手段によらずに、中国からの貨物処理の手続きのスピードを遅らせるよう手配するのだ。

(中略)

こうすれば、中国は、グローバルな規模で実質的に「貿易取引禁止状態」に直面することになる。

(中略)

全体としては、かなり深刻な状況に追い込まれるはずだ。(p171)
結論を言えば、「日本政府は今から、人民解放軍が尖閣に上陸したら、何をすべきか、決めておくことが必要」ということです。

このようにすれば、たとえ人民解放軍や海上民兵が尖閣に上陸したとしても、必ず撃退することができます。

ルトワック氏は、意味のない戦略や実現可能性のない戦略を提示はしません。やはり、ブログ冒頭の記事にあるように、日本の軍事力特に海軍力が中国に勝っているからこそこのような提案をしているのです。そうでなければ、軍事的に米軍がすべきこと、日本が具体的に他国に頼るべき点なども付加したはずです。日本は、独力で尖閣の中国を撃退できるのです。

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2017年6月2日金曜日

民進党正気か…特区廃止案提出へ 規制改革に反対鮮明、次は天下りあっせん禁止廃止か―【私の論評】安倍総理への憎悪だけが党を纏める唯一の手段になった民進党(゚д゚)!

民進党正気か…特区廃止案提出へ 規制改革に反対鮮明、次は天下りあっせん禁止廃止か

写真はブログ管理人挿入 以下同じ
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐり、民進党は5月31日、国家戦略特区を廃止する法案を提出する方針を固めた。特区の適用を停止し、政府に施行後2年以内に特区廃止を含めて検討するように義務づけるという。来週にも参院に提出するというが、識者からは「規制改革に反対するのか」などの指摘も出ている。

 民進党の桜井充参院議員が同31日、「加計学園疑惑調査チーム」の会合で明らかにした。民進党は最近、加計学園をめぐる「文書」や、文部科学省の前川喜平前事務次官の爆弾発言などを取り上げ、一部メディアと歩調を合わせて安倍政権を追及中で、さらに対決姿勢を強める方針のようだ。

 そもそも、国家戦略特区は「岩盤規制」を打破し、産業の国際競争力を高めるため、2013年12月に整備された。地方の活性化も狙う。

 これに対し、民進党の玉木雄一郎幹事長代理は「極めて恣意(しい)的な規制緩和」と断じた。廃止法案という対案を出すことで、「批判に明け暮れている」というイメージを払拭したいとの思いも見え隠れする。

 ちなみに、玉木氏は獣医学部新設に反対していた「日本獣医師会」の政治団体「日本獣医師政治連盟」から100万円の政治献金を受けていた。

 民進党綱領には「既得権や癒着の構造と闘う、国民とともに進む改革政党」とあるが、法案提出は、この“立派な綱領”に反するのではないか。

 嘉悦大教授の高橋洋一教授は「特区廃止法案を出すのが事実であれば、『民進党=規制改革に反対』というスタンスが明確になる。特区廃止は、規制緩和による新規参入を認めないということであり、官庁の許認可が重要になってくる。つまり、『天下り容認』と表裏一体だ。旧民主党政権では、天下りあっせん禁止の運用を骨抜きにしたこともある。論理的に考えると、次に天下りあっせん禁止を廃止する法案を出してもおかしくない」と話している。

【私の論評】安倍総理への憎悪だけが党を纏める唯一の手段になった民進党(゚д゚)!

平成13年には、海江田民主党(現民進党)が賛成し、本会議場での賛成討議で安倍総理にエールを送っていた国家戦略特区を廃止しようとは、民進党もとうとう切羽詰まってきたようです。

このブログでは、海江田氏が代表だった頃の民主党にも批判をしましたが、それにしても、現在の民進党から比較すれば、随分まともだったように思います。

当時の民主党(現民進党)代表 海江田万里氏
国家戦略特区に関しては、このブログでも以前とりあげたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ねじれ解消後の今国会は与党内の「産業政策」派vs.「規制緩和」派を反映する産業競争力強化法案と国家戦略特区法案の行方に注目せよ―【私の論評】官僚主導の産業政策で成功したためしは、一度もない成功したのは引き伸ばし戦略のみ\(◎o◎)/!
アベノミクス効果!? 2%目標パッドつき トリンプ「“ブラノミクス”
ブラ」 三本の矢で女性の自信浮揚 (2013/05/09) の記事画像
この記事は、2013年10月23日のものです。結局この年に国家戦略法案が決まったわけですが、これは良かったと思います。この記事にもあるように官僚による「産業政策」は過去にほとんど成功したためしはありません。

官僚による「産業政策」が成功したのは、日本ではいわゆる「ひきのばし戦術」だけであり、官僚が積極的に関与したものは全部失敗です。この記事からそれについて掲載した部分を以下に引用します。
日本の官僚は、自ら積極的に主導して産業政策を実施した場合は、必ず失敗してきたか、やってもやらなくても同じという結果でしたが、ドラッカー氏の語るように、先送り戦略では二度も大成功しています。
明治初期の農民
その一つが、全近代的な農業人口の都市部への流入です。これに関しては、これへの対応が重要であることが叫ばれたにも関わらず、官僚は何もせず、結局何もせずにおいたことが大成功を収めました。 
その次が、前近代的な流通システムの改革です。これに関しては、流通業界は全容は誰も知らず、暗黒大陸といわれていた時期もあり改革が叫ばれましたが、官僚は結局ここでも何もせず、ダイエーやイトーヨーカドーのような流通の革新者が現れ、それらが、次々と革新を起きない、改革が進みました。現在の日本の流通業界は、革新され、諸外国と比較しても遜色のない程度になっています。これは、最近のコンビニの活躍を見ても、皆さんにも良くご理解いただけるものと思います。
戦前の米商人
そもそも、官僚が産業政策を主導するなどという考えは、高橋洋一氏も上で述べられているように、欧米にはその概念はありません。もともと、産業とは政府が直接関わって、実施すべきものではなく、あくまで、インフラの整備に徹し、その上で実際に動いて、産業を振興していくのは、民間企業の役割であるという考え方です。
インフラの整備は政府の重要な仕事、しかしその上で実際に活動するのは民間企業
インフラといった場合、道路、空港、港湾、ライフラインなどがありますが、その他にも、たとえば、法律の制定、それこそ、規制の撤廃、逆に規制の強化なども含まれます。また、このようなことは、民間企業がなかなかできるものではなく、政府が実施すべきものです。しかし政府がそのインフラの上で展開される事業に直接関わってしまっては、共産主義と同じで失敗するだけてす。 
このような観点からしても、上で述べている高橋洋一氏の主張は正しいです。政府が産業政策の主導権を握るようであれば、大失敗するだけです。規制緩和などのインフラ整備に徹するなら、成功する可能性は高まります。 
この記事にも述べているように、官僚が「産業政策」を立案して実行して成功したことは日本は無論のこと、古今東西ありません。それが成功するというのなら、共産主義も成功したはずです。しかし、皆さんご存知のように共産主義はことごとく失敗しました。

その意味では、官僚による産業政策ではなく、規制緩和の一環である、国家戦略特区法案がこの時点で成立したことは良かったことだと思います。

国家戦略特区は簡単に言うと、「これまで変えたくても変えられなかった、時代遅れだったり陳腐化してしまっている制度を、一部の地域で実験的に変えてみようよ」というものです。



そうして、「国家戦略特区」の最高責任者は総理大臣です。特区による規制緩和は、いろんな省庁の持っている、既得権益や制度に穴を開けていくことになるので、総理の権限が必要になってくるのです。

その総理の「無意味な規制に穴を開ける」という意志をくんで、省庁に対して「頑張って規制を緩和しよう」というのは、職務範囲から逸脱することではないですし、むしろ頑張ってやらないとできないことです。

「国家戦略特区」は、この国に溢れる意味のない規制を改革する、唯一と言って良い武器です。にもかかわららず、意味不明な加計学園問題によって抑制されて、改革の武器を失ってしまうのは、国益を失うことと同義です。

我が国には無意味で陳腐化した制度が溢れています。その制度も、当初は意味がありましたし、善意にもとづいて制定され、それを制定する際の熱い想いがありました。

しかし、時をたつにつれて意味は失われ、新しいものが生まれることを阻む岩盤のような障壁になってしまいました。

特区制度は、「そもそもこの規制は何のために存在するのか」と改めて問える道具なのです。そして、「もう意味ない。じゃあ、こうしてみようよ」と実験ができる道筋なのです。さらに、 「この地域でうまくいったのだから、全国に広げようよ」と言うことが可能になる制度なのです。

特区は東京圏を中心に、愛知県や関西圏など、全国約10カ所が指定されています。以下に特区にしてされている地域を示す地図を掲載します。



この特区で認定されている事業は240にも及びます。例えば沖縄県の国家戦略特区は、高度医療提供事業の推進となっています。当然、これに基づいた施設(豊見城中央病院に新規の病床18床を整備)がある訳ですが、これに伴う医療ツーリズムが企画されており、特区廃止ということになれば、患者に「でていけ」と言うことになりかねません。

確かに、特区制度がその地域で機能しなくなった時にこれを廃止する手順が定められていない点には疑問を感じる。それに、特区がやたらと増えてしまうと、法規制そのもの実効性が問われる事になりかねず、慎重な運用が求められるのは事実です。外資誘致を積極的に行うという考えにも、危機感を覚えるところもありますが、かといって、こうした実験的な運用はスピード感が重要であるので、手続に5年も10年もかかっていては話にならないです。

こうした事を考え合わせると、民進党の法案の中身が未だ明瞭ではないので、議論できない状況ではあるものの、改正ということではなく、特区案廃止案ということなので、今の段階でも、常軌を逸しているとしかいいようがありません。

それにしても、この民進党の特区廃止案提出のきつかけにもなった、前川前文部次官の会見ですが、この会見を含めて、マスコミの報道も異様です。

前川氏は、文科省の天下り調査報告に59回も名前を連ねています。それを「正義の味方」であるかのように、報道すること自体が異様です。あの会見には、当然のことながら、前川氏自身の私憤、私怨が含まれていると解釈すべきであり、マスコミもそれを報道すべきでした。この報告書は、以下のリンクからご覧いただくことができます。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/04/19/1382987_04.pdf …

普段は、官僚の天下りに厳しいマスコミであるにもかかわらず、天下り帝王ともいうべき前川氏には異様な優しさです。本当なら、天下り斡旋を組織ぐるみでしていた事務次官は懲戒解雇・退職金8000万円なしでも不思議でありません。格別の温情で、依願退職扱いにした政府側も、前川氏に激怒するのは当然だと思います。

私憤、私怨を制御できなかった前川前文科次官?
形式的には、依願退職であったとしても、少なくとも退職金は自主返納させるべきと本来ならマスコミはこれを批判すべきです。本当に、マスコミは節操がないです。

それと、国家戦略特区などの規制緩和と天下りの関係についてもマスコミは一切報道しません。特に、規制緩和派は天下りに厳しく、規制擁護派は天下り容認ということを報道しません。前川氏は後者の典型例です。今週週刊誌が前川氏は勇気ある告白者と報道しましたが、前川氏はコテコテの天下り推進論者です。これは、従来の週刊誌主張と真逆です。メディアは本当に節操がないです。

そうして、民進党は、まるで韓国の反日活動が日本への憎悪だけが、国を纏める唯一の手段であるかのように、安倍総理への憎悪だけが党を纏める唯一の手段になってしまったようです。過去との矛盾がある事に疑問を持たず、誰も反対せず、戦略特区に指定され喜んでいる地方自治体や地域住民、地道に努力に努力を重ねている事業家など、その全てを敵に回す覚悟があるのでしょうか。次の選挙が楽しみです。

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2017年6月1日木曜日

加計問題「前川発言」は規制緩和に抵抗して負けた文科省の遠吠えだ―【私の論評】加計問題で首相を辞任させられるなら、一般企業の取締役、従業員全員をすぐクビにできる(゚д゚)!

加計問題「前川発言」は規制緩和に抵抗して負けた文科省の遠吠えだ

加計学園の学部新設計画で首相官邸が文部科学省に圧力を掛けたされる文書
 加計学園問題について、筆者はメディアで各種の発言をしているが、本コラムでもまとめておこう。そして野党の批判やマスコミ報道のあり方も考えてみたい。

 この問題の大きな構図は、安倍政権が掲げた国家戦略特区をめぐる「規制緩和推進」と「反対」の争いであると、筆者は考えている。そこに、前川・前文科事務次官の“告発”の記者会見があったので、俄然、世の中の関心も盛り上がってきた。この時の発言で、規制緩和推進と反対の構図はよりよく見えただろう。ただし、この会見を伝えたマスコミ報道を見ている限り、マスコミは、加計問題の全体構図はおろか、前川氏の記者会見での致命的なミスすらわからないようだ

 そして、加計学園の獣医学部新設が認可されるまでを時系列で整理すれば、野党やマスコミが意気込む「総理の意向」が働いたことをことさらに疑ってかかることは、まったく無関係であることがわかる。

 文科省は獣医師の需要見通しを
 出せなかったから負けた


 前川氏が、「行政が歪められた」として言及している閣議決定は、2015年6月30日に「日本再興戦略」(改訂)や規制改革実施計画などが決まった時のものだ。

 ここに書いたのは、文科省関係だけであるが、他省庁分もあるので、全体では膨大な分量であることがわかるだろう。このうち、獣医学部のところは、以下のとおりだ。


 この閣議決定では、獣医学部新設の条件として、獣医師の需要見通しなど4条件をあげている。

 当時、規制緩和を進めようとした内閣府に対し、文科省が抵抗したわけだが、この閣議決定にある需要見通しを文科省が出せなかった段階で、内閣府の勝ちである。新設が不要というなら、それを裏づける獣医師の需要見通しを示す「挙証責任」は許認可権のある文科省にあるからだ。

 許認可というのは、自由が原則であるのに、一定の条件を課して許認可をかけるわけだ。それなのに、前川氏は、「条件に合致しているかを判断すべき内閣府は十分な根拠のある形でその判断をしていない」と、他人事のように記者会見でしゃべってしまった。

 マスコミもこのことを指摘したところは皆無だった。許認可権のことがわからなくても、仮に、内閣府がすべての規制緩和で挙証責任を持ったら、閣議決定の膨大な量を見ても、事務的にできるはずないと考えられないのだろうか。この程度の質問ができないとすれば、記者会見の存在意義も問われるのではないか。

 なお、文科省には、需要見通しを作成できる人員がいるとは思えないので、2015年6月に閣議決定がされた段階で、文科省の負けは予想できた。

 加計学園、「1校認可」は
 不自然だとは思わない


 もともと獣医学部は52年間も新設がなかったので、いろんなところで歪みが出ていた。一部地域で産業関係の獣医師不足も指摘されていたので、文科省で人員をそろえても、需要見通しでは分が悪かっただろう。

 そうした中、規制緩和に反対する省庁などの後ろにいる獣医師会も新設反対だけではもたないと考えたのだろう。1校であれば容認というスタンスになったという。

 これは、ちょっと取材すればわかるはずで、「総理の意向」が働いたことばかりを疑うマスコミはこうした地道な取材をしないことがわかってしまう。

 本当に獣医師会が抵抗するなら、関係の深い国会議員に働きかけて阻止しようとするので、動きはわかるはずだ。そうした動きがない以上、1校容認ということだったのだと、推測できる。

 そうなると、獣医師の需給をつかさどる農水省も無駄な作業はしたくないだろうから、需要見通しを文科省に示さない。このあたりも、前川氏は記者会見で話している。

 いずれにしても、こうした行政のプロセスを追っておけば、なぜ獣医学部新設が認められたのか、加計学園1校になったのかもわかる。まず、獣医師会の1校容認の意向が大きく、加計学園がかなり前から要望していたこともあるだろう。筆者が霞が関で働いていた時の記憶でも、加計学園は小泉政権時代から要望していたように思う。それに、地理的な需給の配慮もあるかもしれない。

 役人の思考プロセスは単純なので、おそらく複雑な背景や理由はないだろうし、外部の者として見ても、加計学園1校となったのは筆者には不自然ではない。

 規制緩和、新規参入の立場から、1校に限定する必要はないので、獣医師会さえ納得すれば何校でもOKのはずで、その場合、前からの要望があって、今でも要望しているところが優先されるだろう。

 しばしば加計学園問題に批判的なマスコミは、安倍政権になってから認可などのスピードが速まったという。だがそれ自体は問題ない。仮に問題があるとすれば、ウェイティング・リストの順番を変えることだ。まあ、病院での診察順番待ちでも時々順番が前後するが、前後した場合に合理的な説明が必要になってくる。

 この点についても、野党やマスコミが、一方の当事者だけから示された「文書」や「会見発言」に過ぎないものを金科玉条のように取り上げるから、真相につながる質問がされず、解明にほど遠くなるのだろう。

 「総理の意向」ありき
 野党やマスコミは学んでいない


 なぜ、真相に行き着かないのか。これはマスコミが、目の前の現象のみに注目するからだ。加計学園の前には、森友学園問題があった。両者は似ていて、確かに加計学園問題は「第二の森友遠学園問題」の様相を呈しているが、森友学園問題が空振りになった教訓を、野党やマスコミはまったく学んでいない。

 ともに共通するのは、思い込みとベンチマークの欠如だ。

 その思い込みとは、森友学園問題では「総理の関与」で、今回の加計学園問題では「総理の意向」である。それがあるはずという前提で、目の前の現象を追い続けるというのが、野党やマスコミである。

 こういうときには、別の事象の「ベンチマーク」を探すといい。これは、プロの数学者がしばしば使う方法だ。

 これまで誰も解いたことのない難問の場合、似たような構造を持った別の事象で問題を置き換える。そうすると、まったく別の事象であれば簡単に解けることがある。詳しくは省くが、300年以上、誰も解けなかった「フェルマー最終定理」も、別のところで問題を解いて、その結果、フェルマー最終定理が解けている。

 社会問題の真相の解明でも、同時並行的に起こっている事件がしばしば役にたつ。

 森友学園問題では、森友学園の土地ではなく、同じ一筆の東側の土地である。これは、森友学園に先行して豊中市に売却されている。そこでは、土中のゴミが発見されている。それにもかかわらず、この事実を知り得るうる立場のはずの財務局は、森友学園への売却では当初、その事実を相手方に伝えていない。ここが問題の本質だ

  行政のプロセスを
  検証すれば真相はわかる


 加計学園問題の場合は、同じ国家戦略特区に認められた成田市の医学部新設での国際医療福祉大のケースだ。医学部新設も38年ぶりである。もし、「総理の意向」が働いていれば、両者のプロセスに差があるはずだ。

 ところが、国際医療福祉大の方が先行事例で、加計学園の方が後になっている。これを加計学園が追い越したというのであれば問題であるが、そうしたことはなく、筆者の見るところ、両者のプロセスに顕著な差はない。ということは、「総理の意向」は外部から認められないということになる。

 こういうと、「忖度」があったのではないかと、野党やマスコミはいうだろう。「忖度」は内面の話であるので、外からはよくわからない。問題があるとすれば、行政プロセスが歪められ、プロセスに変化があることだ。それがなければ、内心の「忖度」はどうでもいい。

 繰り返すが、筆者の見る限りでは、加計学園と国際医療福祉大では差があるように見えない。そこで、筆者には、規制緩和推進と反対の争いで負けた文科省側の前川氏が吠えているだけと見える。閣議決定にある需要見通しを文科省が出せない段階で、内閣府の勝ちで、内閣府が「総理の意向」を持ち出すだすことなく、ゲームオーバーになっている。文科省があまりに惨めな負け方なので、前川氏から「総理の意向」を言い出した可能性すらあるのではないか。

 野党やマスコミは「総理の意向」と主張したいのであれば、両者のプロセスの差を指摘すればいいと筆者は思うが、どうであろうか。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)

【私の論評】加計問題で首相を辞任させられるなら、一般企業の取締役、従業員全員をすぐクビにできる(゚д゚)!

ブログ冒頭の高橋洋一氏の主張は、さすがにもと官僚ということもあり、正しいもと思います。今後、加計問題も野党の追求は何の効果もないでしょう。ただ、時間を無駄にするだけです。

それにしても、今回のいわゆる加計学園問題の発端となった文書がありますが、そもそもあの文書が明るみに時点で、今回のこの問題は全く無意味であることが最初からはっきりしていました。ただし、このあまりにもはっきりしていることを、なぜか野党やマスコミが気づいていないのか、気づいていても、気づかないふりをしているのか、わからないので、再度このブログで扱います。

この問題については、一部このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
出会い系バー通いを注意され「逆恨み」か…和田政宗議員、加計学園「怪文書」犯人を告発―【私の論評】加計問題を最大の攻撃材料にする野党は、犯罪者を応援することになる(゚д゚)!
文科省の前川喜平前事務次官を告発した和田政宗参院議員

詳細は、この記事を読んでいただくものとして、この記事では、いわゆる加計学園問題の発端となった、文書について、以下のように論評しました。
ところで、あの怪文書ですが、最初に公開されたもの(2頁のもの)と後から公開されたもの(8頁のもの)とがありますが、両方とも公文書としては、書式も内容かなりお粗末なものでした。これは、レク資料というものであると、前川氏が説明しています。ということは、公文書ではないということです。 
特に、最初に公開されたものは、宛先も発信者の部署名や、所属も、発信日時すら明記されておらず、とても官公庁内の公式の文書であるとは考えられませんでした。これでは、まともな会社の公文書であるとも主張できないです。これについては、ネット上に添削した内容を掲載していましたので、その添削をした内容の画像を以下に掲載します。
この後に公開された8頁のものは、一部だけ公開されています。それを以下に掲載します。

さて、この記事では指摘しませんでしたが、これらの文書には、文書番号すらありません。

一般の企業では、企業内の文書では、宛先、発信部署、発信者名、発信日時、文書番号を掲載します。 回覧する場合には、閲覧者の押印欄もあります。このような正式な公文書の体裁は、当然文部省の文書でもあります。

以下に一般企業内の文書の事例を掲載します。


企業でもある程度規模が大きくなると、文書管理規程、文書管理マニュアルなどが存在して、企業内外へ文書のやりとりを厳しく制限、規制しています。

たとえば、ある企業では、「通達」は営業時間を変えるとか、基本方針を変えるなどのときに発信するものとしています。これは、年間でも最大で4〜5通しか発信されないのが普通です。さらに、紙の色も赤色にして、他の文書と明確に区別できるようにしたりしています。

本社から支社や支店に対して発信する文書もいろいろと制限を受けます。支社や支店で、報告や調査を必要とするものは、原則として調査開始日の2週間以上前に発信するなどの規則があったりします。この場合は、紙の色を黄色にしています。その他、文書の発信頻度なども縛りがあります。さらに、ファイルなどへの入れ方や、その後の処分までの期間などにも決まりがあります。

無論、企業で正式に定められたこのような取り決めがないと、社内が大混乱してしまいます。たとえば、本部の各部署から支店や店舗などに、文書が何の制御もなく発信され、文書の洪水になってしまい、発信した文書がほとんど読まれなくなったりします。だから、発信者は無論文書を発信するときには、企業で定められた通りに体裁を整えて発信するのが普通です。

書類の色といえば、租税関係の催告状なども最終のものは赤のものを使用しています。以下にその写真を掲載します。これは、ネットにあったものです。


いわゆる加計学園問題の発端となった文書に関しては、当然一般企業にもみらるし、当然のことながら文部省にもみられるであろう体裁が整っていません。これはどうみても、公式なものではありません。

しかし、前川氏はこれを文部省内で存在した文書であると、記者会見で主張しました。しかし、その存在というのが問題です。しかし文部省は調査した結果、そのような文書は存在しなかったとしています。

ただし、文書の体裁からみて、公式のものではないことははっきりしています。にもかかわらず、前川氏は存在していたというこの認識のズレはどこからきているのでしょうか。

それは、文部省側はあくまで、文部省内で流通していた正式な文書の範囲の中にはなかったということを言っているのです。これに対して、前川氏は、正式ではないのですが、文部省内に過去に流通していたということを言っているのだと考えられます。

衆院予算委員会で挙手する参考人の前川喜平前文部
科学省事務次官、左は文科省人事課OBの嶋貫和男氏
企業の中でも、いわゆる正式な体裁を整えない文書もあるにはあります。それは、たとえば、上司が部下に命じて、たとえば新たな技術に関する内容を短くわかりやすくまとめた資料などの類です。上司としては、その内容をどこにも発信するつもりはないので、この場合は、体裁を整える必要はありません。だから、企業内でも体裁を整えていない文書は存在するといえば、存在するものと思います。

しかし、ここでただしというところがあります。この文書を企業内の誰かに発信することになった場合には、文書番号、発信部署、発信者名新たな文書を作成して、先の文書を添付する形式にして発信します。だから、企業内ではよほど出ない限り、いわゆる公式でない文書などあまり存在しないのです。あったにしても、それはあくまで、単なる資料に過ぎず、その資料をもって社内で何らの効力も持たないのです。

仮に、企業内で何か不正行為などの問題がおこったとします。その場合、総務などが内偵を行い、ある常務取締役が怪しいということになったとします。

総務が、不正行為が「常務のご意向」であるとの文書を発見したとして、その文書が正式の体裁をしていなければ、それだけを取締役会などに提出することはできません。正式なものであれば、無論提出できます。そうして、取締役会で諮られ、その常務は辞任させられることになるかもしれません。

ある企業の取締役会
しかし、正式なものでなければ、当然のことながら、提出することはできません。もしどうしても提出するというのなら、その文書とともに、それが明白に犯罪に関係しているという内容のものも提出しなければなりません。

これは、何も一般企業だけではなく、文部省も同じことです。正式な文書ならともかく、正式ではない文書の場合は、その文書に書かれていることが、正しいと判断できる証拠がなけば、何の意味もありません。

これは、一般社会常識の範囲だと思います。一般企業で、正式な文書でもない文書だけをもとに、不正行為があったなかったなどと、取締役会や会議などで判断などできるわけがありません。そのようなことをすれば、犯罪行為にもなりかねません。

だから、もし加計学園問題で、首相を辞任させることができるというのなら、一般企業でも取締役や従業員を全員すぐにクビにできるということになってしまいます。

これは、どう考えても辻褄があいません。しかし、野党やマスコミがやっていることはこれに等しいのです。

特にマスコミは、大きな企業組織であることがほとんどです。大きな企業組織であれば、文書管理規程や、文書管理マニュアルが存在して、その枠組みの中で文書を発信したり、受信しているはずです。

であれば、文書管理はどのようなものなのか、身をもって知っているはずです。にもかかわらず、上記のような観点も報道しないというのであるとすれば、知りながら悪意で、加計学園問題を報道しているとしか思えません。

悪意があってもなくても、これは非常に問題です。それに、野党の議員の中には、企業に勤めた経験のない人もいるかもしれませんが、上記で掲載した企業の文書管理の実態など知っておくべきです。そうでなければ、政治家はつとまりません。

いずれにしても、文書の面からも、ブログ冒頭の高橋洋一氏の主張からも、どう考えても加計学園問題における「前川発言」は規制緩和に抵抗して負けた文科省の遠吠えとしかいえない代物であることは間違いないようです。

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2017年5月31日水曜日

憲法論議では米国の動向を無視してはならない理由―【私の論評】まず日本国憲法を自国憲法として、認めるか否か国民投票をすべき(゚д゚)!

憲法論議では米国の動向を無視してはならない理由

米国で強く表明されるようになってきた憲法9条への批判

 日本の憲法第9条が日米同盟を侵食する――。

 こんな批判が米国で陰に陽に述べられるようになって久しい。最近はこの種の批判が、さらに鋭い非難となって、米国の公式の場や国政の舞台において表明されるようになってきた。

 日本での憲法論議も、こうした米国での日本憲法観を真剣に考慮すべき時期がきたようだ。

   米国の意向を考慮せざるをえない理由

 日本で憲法改正の是非がいよいよ国政上の現実的な主要課題となってきた。契機となったのは、やはり安倍晋三首相による改憲の具体的な試みである。現行の日本国憲法を改正すべきか否かは長年議論されてきたが、いまほど国民にとって目前の大きな課題となったことはないと言ってよい。

 改憲論議の核心はなんといっても第9条をどうするかである。“日本の国家や国民の安全をどう守るかについての原則”、つまり“国家安全保障のあり方”が日本にとって最重要な議題であることは論を待たない。

 日本の国家安全保障を議論する際は、世界の動向、日本と外部との関係の把握が基本となる。とくに優先して視野に入れるべきなのは、米国の動きだろう。日本の憲法は日本が独自に決めるべきであるという大原則は言うまでもない。だが、日本の憲法のあり方に米国が関わってくる特別な理由が少なくとも2つある。

 第1は、日本国憲法の草案が米国によって書かれたという歴史的な事実である。

 第2は、日本の防衛は憲法によって制約されており、代わりに日米同盟に基づいて米国によって補われてきたという事実である。

国立国会図書館の憲政資料室に所蔵されているマイクロフィルム化された、幣原喜重郎資料中の constitution of japan (幣原総理大臣に配布されたと考えられる)
 とくに第2の事実の重みは今日でもきわめて大きいと言える。日本が、自国防衛に関する憲法の規定を再考するときは、どうしても米国の意向を考えざるをえない。日本防衛の主要な部分は米国に委ねられているという現実があるからだ。

   「憲法9条は日本にとって危険」とWSJ

 さて、その米国側での動きである。

 米国で聞かれるようになった憲法9条への批判のなかで特に論調が厳しかったのが、5月上旬の大手紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の社説である(参考:本コラム「『9条は危険』米国大手紙が日本に憲法改正を促す 日米同盟の片務性が改めて俎上に」)。

 同社説は以下のように主張していた。

「日本にとって憲法9条は同盟国の米国との集団防衛を阻止するため、危険となりつつある」

 北朝鮮や中国の軍事的脅威がこれまでになく高まっている現在、日米両国は共同で防衛や抑止に対処すべきなのに、集団防衛を阻む憲法9条は日本の安全保障にとって危険である、というのだ。

 さらに同社説は、日本国憲法が終戦直後、占領米軍当局によって作成され、その最大の目的は日本を非武装にして軍国主義復活を防ぐことだったが、民主主義の同盟国となった日本にそのような規制はもはや必要なくなったことなど、歴史上の要因も強調していた。
超党派で広がってきた日本国憲法への批判

 実は米国で日本国憲法へのこの種の批判的な認識が現われたのは、決して最近のことではない。長い年月を重ねて超党派の広がりをみせてきた。

 政府の中で最も中立性の高い議会調査局が、上下両院議員向けの資料となる日米関係報告書で以下のように記述したのは2010年7月だった。もう7年も前のことである

「米国が起草した日本の憲法は、日本が集団的自衛に関わることを禁止するという第9条の解釈のために、日米両国間の緊密な防衛協力の障害となっている」

 上記の議会調査局の指摘とウォール・ストリート・ジャーナルの警告とを合わせると、トランプ大統領が選挙キャンペーン中で何回か述べた日米同盟への批判がほぼ自動的に導き出される。それはこんな言葉だった。

「米国は、もし日本が攻撃された場合、日本を防衛することを義務づけられている。しかし日米安保条約の規定では、日本は米国を防衛支援する必要はない。日本国民は家でソニーのテレビでも観ていればよいのだ」

 このような批判は、トランプ氏が所属する共和党だけではなく、民主党でも同様に聞かれる。代表例が、民主党ベテランのブラッド・シャーマン下院議員が今年2月に発した「日本は米国が攻撃されても憲法を口実に助けようとはしないから、米国は尖閣諸島を守る必要はない」という議会証言だった(前掲のコラムを参照)。

 日本は自国の防衛を米国に頼り切っているが、米国では「日本の憲法上の制約」を批判し改憲を促す声が巨大な山のように堆積してきた。だが日本の憲法論議では、こうした米側の不満や要求は不思議なほど取り上げられない。

【私の論評】まず日本国憲法を自国憲法として、認めるか否か国民投票をすべき(゚д゚)!

 端的に述べると民主・共和両党の政治家と政府高官は日本の憲法改正に賛成です。しかも9条改正に前向き、それどころか「早く改正してください」という立場です。それはブログ冒頭の記事にもあるように今に始まったことではありません。

それは文書においても、すでに2004年『アーミテージリポート』にみられています。これは、21世紀の日本の安全保障のあり方を記した報告書です。このリポートでも日米同盟や国際社会の安定のために軍事力を用いる際、憲法9条は「障害」になっているということが示されています。ちなみに、リチャード・リー・アーミテージ (Richard Lee Armitage, 1945年4月26日 - ) は、アメリカ合衆国の軍人、政治家。知日派として日米外交に大きな役割を果たしてきた。

アーミテージ氏
アーミテージ氏は、国防省情報部員としてサイゴンやテヘランなどで勤務。上院議員であったボブ・ドール(後に大統領候補になる)の秘書などを経て、1981年からはロナルド・レーガン政権の国防次官補代理、1983年から1989年までは国防次官補を務めました。その後は政策コンサルティング会社「アーミテージ・アソシエイツ」の代表。2001年に発足したジョージ・W・ブッシュ政権下では2005年1月まで国務副長官を務め、ブッシュ大統領の政策顧問団バルカンズのメンバーでもありました。

さて、この2004年の『アーミテージリポート』の要約を以下に掲載しておきます。
1.レポートの主旨は日米関係を米英関係にまで高める提案である。(日米連合軍創設) 
2.レポートの総論は米外交の軸足は欧州からアジアにシフトしつつある。(アジア大乱) 
3.アジアには核戦争を含む大規模な軍事衝突の危険性がある。(米中・新冷戦構造) 
4.日米同盟こそアジアにおける安定と繁栄の基礎である。(日米連合軍創設) 
5.日本の政治家は国家主権の尊厳に覚醒しつつあり同盟強化の好機である。(危機感) 
6.日本は集団的自衛権の行使を認めるべきである。(自衛隊を国軍化し米軍の指揮下へ) 
7.日米は情報共有化を進める。日本独自の情報衛星を容認する。(盗聴網エシュロン) 
8.日本は規制緩和・市場開放によって経済の持続的回復を果たすべきである。(収奪) 
9.日本は小切手外交から脱却し独自外交を追求すべきである。(米外交・補完勢力) 
新ブッシュ政権の政策基本骨格は、ペンタゴンの戦略家A.マーシャルが作成した非公式文書「アジア2025」がその出発点となっている。 
これはアジアの近未来に関する集団思考実験をあえて希望的観測を排除して纏めた衝撃的なレポートである。 
この「アジア2025」を起点として、新ブッシュ政権は大統領選挙期間中の2000年秋に、相次いで安全保障と経済の政策を世界に表明した。 
それがアーミテージ・レポート(安全保証政策)とリンゼー・スキーム(経済政策)です。 
以下は、そのアーミテージレポートの全文(ほぼ直訳)へのリンクです。
http://www.asyura2.com/0311/hasan32/msg/922.html
さて、この「障害」という考え方はこれ以前から米政府内にありました。しかし、この「障害」はこのレポートによりに明確に表面化しました。実際に9条があることで、自衛隊と米軍の行動に支障が出る状況が4類型で想定されています。

たとえば、公海上での自衛隊艦船による米艦船防護や、米国に向かう弾道ミサイルの撃破などは、当時の憲法の解釈では大きな制約がありました。護憲派の中には改憲によって集団的自衛権が「集団的軍事介入」につながると危惧する者もいました。

そうした状況だからこそ、米政府内には「いつ憲法改正ができるんだ」という苛立ちがありました。アーミテージ氏は2004年の時点ですでにしびれをきらしていました。そのスピードを「まるで氷河が動くがごとくだ」と形容したほどです。

そうしてオバマ大統領はどう考えていたかといえば、2013年2月、ホワイトハウスで安倍首相と会談した際、両首脳は日本の憲法改正問題も話し合っていました。記者会見でオバマ大統領が憲法改正には触れなかったことで、日本のメディアは安倍首相がオバマ氏に軽くあしらわれたとのニュアンスを伝えたいましたが、実はオバマ大統領は安倍首相の憲法改正の動きに賛同していました。もちろん9条の存在は百も承知でした。その上で、限定的にせよ、憲法改正によって東アジアの安全保障に日本が寄与してほしいとの思いを抱いていました。

 2013年 安倍・オバマ会談
しかし、日本の憲法を制定・改正するのは議員ではありません。最終的な判断はあくまで国民サイドにあります。国会議員の2分の1の賛同になっても、それは国民投票で「意見を仰ぐ機会が増える」ということに過ぎません。たとえ9条を改正するとしても、日本国民は戦争放棄という条項だけはほぼ間違いなく支持すると思われますし、主権在民による制定権力は依然として強いはずです。それに戦争放棄とはいっても、自衛のための戦争はゆるされるものと解釈することは可能です。世界には、憲法で戦争放棄を謳っていながら、軍隊を保有している国も珍しくはありません。

これまでワシントンからのプレッシャーによって日本政府が動くと長年思われてきました。安倍首相も「米国の圧力」によって改憲に動いていると考える人が今でもいるようです。確かに「米国好みのジャパン」が作られるという側面が過去なかったわけではありません。それでも、改正か否かを決めるのは日本国民です。その事実は変わりません。

憲法改正については国民が最終的な選択権を持つのです。この点だけは、米国政府や知日派がどうあがいても手も足もでません。前出のアーミテージ氏も、「日本の憲法改正は米国の指示によってではなく、あくまで日本人が主体的に決めるべきことです。憲法9条の改正についても、米国が口を差し挟める立場にはありません」と語っていました。

それでもいまだに改憲に憂慮を抱く人たちは多いです。それは憲法が改正された後、米軍が他国へ侵略した場合(2003年のイラク戦争など)、日本が戦争に巻き込まれる可能性が高いことを危惧しているからです。

しかしね日本が北朝鮮から攻撃を受けたら、それは米国が攻撃を受けたと見なされます。この方針は同盟国として米国の立場です。これが米国の一貫した極東政策です。他方、米軍が関与する他国との戦争に日本が反対する場合があります。例えば、イラク戦争などですが、米軍はそうした状況下でも、軍事的に日本を援助しないということはありえません。その点は十分に理解すべきです。

とはいえ憲法改正が一気に進み、日本の軍備拡張という流れになることについては、米国は歓迎しないようです。国内の大多数も同じ意見だろうし、近隣諸国の憂慮もそこにあります。ただオバマ政権が憲法改正に好意的であったことは間違いないです。それでも実際に改憲するのは日本国民であって、この点でオバマ大統領は手も足も出ませんでした。

ただし、現在のトランプ大統領は、日本が核を保有することも容認する可能性があることを大統領選挙のときから示唆していました。

大統領選挙中に日本の核武装を容認する発言をしていたトランプ氏
事実上現在の日本国憲法を制定した、米国でも日本が改憲すべきだという声が随分前から上がっているのです。

そうして、憲法改正については国民が最終的な選択権を持つことを述べましたが、実は現行の日本国憲法は、国民投票などの手続きは経ずに、一方的に米国により制定、施行されています。

これは、非常におかしなことです。憲法改正については国民が最終的な選択権を持つとされている日本国憲法がそのような手続きを全く経ていないのです。

私自身は、いずれ様々な議論の果に、現行の日本国憲法を国民が、自国の憲法として選択するかどうかを、国民投票で決めるべきものと思います。

そうして、当面は日本国憲法典の字面を変えるだけにしても、いずれは帝国憲法のように、日本の国柄を反映した憲法を日本人の手によってつくりあげるべきものと思います。そのための論議には、少なくとも10年は必要です。

そうして、残念ながら現状の憲法学者などはこのような論議に耐えられるものは一人も存在せず、憲法学者以外にもこれを議論できるような専門家がかなり不足しています。

まずは、このような専門家を多数作り出すことが先です。真の憲法論議は、マスコミが報道する内容のごとく単純な軽佻浮薄なものではありません。日本と、日本人の存在意義そのものを問うものでなければなりません。

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2017年5月30日火曜日

超異例!米空母3隻臨戦 米祝日狙いミサイル発射、正恩氏“宣戦布告”か 「朝鮮戦争休戦以来、最大の危機」―【私の論評】北朝鮮危機は6月以降から本格的になる(゚д゚)!

超異例!米空母3隻臨戦 米祝日狙いミサイル発射、正恩氏“宣戦布告”か 「朝鮮戦争休戦以来、最大の危機」

米軍は6月以降、世界最強の3つの空母打撃群を北朝鮮近海に集結させる
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 朝鮮半島の緊張が「異次元」の領域に達しつつある。北朝鮮は29日早朝、今年12発目となる弾道ミサイル1発を発射し、新潟県・佐渡島から約500キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に撃ち込んだ。一歩間違えば、日本の船舶や航空機に被害が出ていた。ドナルド・トランプ大統領率いる米軍は6月以降、世界最強の3つの空母打撃群を北朝鮮近海に集結させる。「1953年に朝鮮戦争が休戦して以来、最大の危機」と断言する識者もいる。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の狂気の挑発に対し、米国は軍事行動を決断するのか。

 「北朝鮮が、国際社会の度重なる警告を無視して挑発を続けていることは断じて許すことができない。北朝鮮に厳重に抗議した」「国際社会と連携しながら高度な警戒態勢を維持し、国民の安全確保に万全を期していく」「北朝鮮を抑止するため、米国とともに具体的な行動を取る」

 安倍晋三首相は29日早朝、官邸で記者団にこう語った。政府は、国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合を開き、対応を協議した。

 北朝鮮は日本時間同日午前5時40分ごろ、同国東部・元山(ウォンサン)付近から弾道ミサイル1発を発射し、新潟県・佐渡島から約500キロ、島根県・隠岐諸島から約300キロにある日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下させた。船舶や航空機の被害の情報はない。

 米太平洋軍や韓国軍合同参謀本部によると、短距離弾道ミサイル「スカッド」か、中距離弾道ミサイル「スカッドER」とみられ、約6分間、約450キロ飛行した。

 イタリア南部シチリア島のタオルミナで先週末、先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が開かれた。安倍首相は「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮を強く非難し、トランプ氏と連携して、首脳宣言に「北朝鮮は新たな段階の脅威」との文言を明記させた。

主要7カ国(G7)首脳会議のため訪れていたイタリア
南部シチリア島タオルミナで記者会見 をする安倍首相
 その直後、加えて米国の祝日「メモリアルデー」(戦没者追悼記念日)に合わせた弾道ミサイル発射は、「パラノイア」(偏執狂)とも指摘される正恩氏による、国際社会への“宣戦布告”に近いのではないか。

 米ホワイトハウスは28日、北朝鮮の弾道ミサイル発射について、トランプ氏が説明を受けたことを明らかにした。だが、米軍はそれ以前に「北朝鮮包囲網」強化に着手していた。

 米太平洋艦隊は26日、原子力空母「ニミッツ」を太平洋の北西部に派遣すると発表した。米西海岸ワシントン州の海軍基地を6月1日に出港する。朝鮮半島周辺には現在、原子力空母「カール・ビンソン」と「ロナルド・レーガン」が展開中のため、西太平洋に3隻の空母が集結することになる。

 いずれも、米空母航空団の主力、戦闘攻撃機FA18「スーパーホーネット」や、早期警戒機「ホークアイ」などを多数搭載し、ミサイル駆逐艦やミサイル巡洋艦、原子力潜水艦を伴っている。

 この3隻集結の特殊性について、評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「米国の本気モードの表れだ」といい、続けた。

 「今月半ばまで、朝鮮半島周辺にいた米空母は1隻だった。1隻だけなら『単なる威嚇』と説明できるが、3隻は現時点で米軍が投入できる最大値に近い。NHKは2隻の時点で『異例』と報じていた。台湾海峡危機の際も2隻だった。3隻展開を簡単に考えるべきではない。『戦力の集中』『過去の実例』から見て、開戦の可能性が高まってきた」

 空母3隻の展開海域も注目される。潮氏が続ける。

 「3隻のうち、1隻が日本海ではなく、(中国大陸と朝鮮半島の間にある)黄海に展開すれば、北朝鮮を東西から攻撃できる。(黄海は中国の目の前のため)米国と中国がディール(取引)して、中国も事実上(北朝鮮攻撃を)認めたとも受け取れる。朝鮮戦争が休戦(1953年)して以来、最大の危機といっていい」

 米軍だけでない。中央情報局(CIA)の動きも気になる。

CIAのマイク・ポンペオ長官
米政治サイト「ワシントン・フリービーコン」は18日、CIAのマイク・ポンペオ長官が極秘訪韓中の今月初旬、昨年亡命した北朝鮮の太永浩(テ・ヨンホ)元駐英公使と会ったことを伝えた。北朝鮮国内で正恩体制への反乱を扇動することの可否などについて話し合ったという。

昨年亡命した北朝鮮の太永浩(テ・ヨンホ)元駐英公使
元公安調査庁第2部長の菅沼光弘氏は「ポンペオ氏は、北朝鮮の軍や治安当局、政府高官が金体制に反旗を翻す機が熟しているかどうか議論を提起した-とされるが、もう1つある」といい、分析した。

 「米国が北朝鮮を攻撃した場合、正恩氏が本気で反撃してくるのか、戦争をやりきる胆力があるかどうか、彼の人間性を知ろうとしたのではないか。1994年の『第1次核危機』の際、当時のCIA長官は来日して、金日成(キム・イルソン)主席の人間性、心の中を知ろうとした。こうした動きは、米国が本格的に北朝鮮攻撃に踏み切る前兆ともいえる」

 韓国メディアによると、在韓米軍が6月、韓国に滞在する米国人の避難訓練を実施するという。そのまま韓国から退避させる可能性もある。

 前出の潮匡人氏は次のように呼びかける。

 「日本人は真剣に警戒すべきだ。韓国旅行はしばらく控えるべきだ。韓国に進出している企業も家族や社員の引き上げを検討すべきだろう。ある日突然、危機が表面化したら、パニック状態になりかねない。4月に危機感が高まって報道が過熱したが、一時沈静化した。ただ、静かになったときの方が危ない。米国のシリア攻撃も、日本の真珠湾攻撃も突然だった。『開戦前夜』はこうかもしれない」

【私の論評】北朝鮮危機は6月以降から本格的になる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、米空母3隻が配置されることで、まさに臨戦体制になっていることを強調しています。米軍が持つ11隻の原子力空母のうち、3隻が北朝鮮近海に集結するという「異次元」の事態が来月現実のものとなります。これに関しては中国問題には定評のある宮崎正弘氏が気になるメルマガを配信していましたので、それを以下に引用します。

宮崎正弘氏

引用元

http://melma.com/backnumber_45206_6525117/
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◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成29年(2017)5月7日(日曜日)
       通算第5281号  <前日発行> 
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 米軍の北朝鮮攻撃、「もし」があるとしても早くて六月、あるいは七月
   空母攻撃群は三隻以上なければ戦争にならない
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 シリアの空軍基地へのミサイル攻撃(4月7日)は、地中海洋上の米海軍駆逐艦からで、象徴的に打ち込んだだけだった。 
戦線の拡大も継続もトランプ大統領は意図していなかった。ロシアの軍事施設は巧妙に攻撃目標から外された。左翼メディアからこっぴどく叩かれるトランプだが、不動産ビジネスで鍛え、幾多の裁判闘争を闘ってきただけに大胆にみえて細心である。 
 セルビアへの空爆は、かのクリントン政権下で行われたが、「5000メートル上空からの介入」といわれ、地上軍の派遣はなかった。バルカン半島はつねに世界大戦の火薬庫であり、セルビアに泥沼の介入は最初から回避されていた。 
 そればかりか、NATOのイタリア空軍基地には最新鋭の英国ハリアー、米国のA10が配備されていたにも拘わらず「安全が確保されない限り出撃できない」として、使用されなかった。 
 デモクラシー国家では、目の前のアルバニア人が大量に虐殺されそうな状況でもパイロット一人の命が尊重された。リアルポリティックスの現場で現実に起きたことである。 
 湾岸戦争では空母攻撃群が六隻態勢だった。四日連続の空爆が行われ、イラク前線の基地、防空壕、兵站線はこなごなに粉砕された。もとよりイラクに制空権がなかった。 
 「大量破壊兵器がある」としての予防的先制攻撃とされたイラク戦争では、兵站を含め15万人の兵力が投入された。 
 その前のアフガニスタン侵攻では、パキスタンばかりか、タジキスタン、キルギスに米軍の兵站が置かれ、モスクワも上空通過を認めた。欧州にあった兵器システムまでが移送された。 
 兵站の準備状況から言えば、米軍の北朝鮮攻撃は少なくとも、空母攻撃群が二隻日本海に入り、もう一隻が佐世保か、横須賀入りする時だろう。 
 三隻目の空母が朝鮮半島を目指している気配はいまのところない。ということは間近の北朝鮮攻撃は考えにくい。
 
 北朝鮮は核実験を延期して、韓国の大統領選挙の様子を見ている(というより工作員が文在寅政権の誕生を画策している)。 
 文政権誕生となれば、南北統一を北が有利な条件で進められ、べつに軍事攻勢に打って出る必要性も稀薄になるからである。

▼アメリカは朝鮮半島に介入する気がない
 すでにアメリカには韓国を守るためにアメリカ人の若い血を犠牲にする必要性を感じていない。 
 第一に韓国は反米国家であり、韓国主導の南北統一は想定しにくくなった。
第二に韓国軍はモラルが低迷し、戦争に打って出る気力が薄弱である。 
 となれば、アメリカの利益は武力威嚇で北朝鮮と交渉し、アメリカ本土に届くICBMの開発を凍結させ、核兵器の小型化開発を凍結することである。 
 この目的が達成されれば、日本に届く核ミサイルは容認しかねないだろう。
エドワード・ルトワックは新著のなかで次のように言う。 
「日本にとってほぼ利益のない朝鮮半島において、北朝鮮が、暴力的な独裁制でありながら、使用可能な核兵力まで獲得しつつある一方で、韓国は、約5000万人の人口規模で世界第11位の経済規模を誇りながら、小国としての努めさえ果たしていない。 
 国家の「権力」というのは、結局のところ、集団としての結束力をかけ算したものであるが、韓国はこれを欠いている。アメリカが長年にわたって軍の指揮権の譲渡を提案しているのに、韓国が継続的に拒否しているのも、その証しだ。  
 それとは対照的に、日本は、新たな独立状態を獲得しつつある。これは、日米の対ロ施策の違いからも、新たな責務を担おうとする日本の現政権の姿勢からも明らかだ」(『戦争にチャンスを与えよ』、奥山真司訳。文春新書) 
 つまるところ、北朝鮮はアメリカとの核凍結、もしくは1000キロ以遠を飛ぶミサイルの凍結という条件で取引に応じるのではないか。 
 しかし、そうなったときに、日本は1000キロの射程に入るから、独自の外交と交渉努力が新たに必要であることを戦略家のルトワックは同時に示唆している。
さて、宮崎氏もやはり、メルマガの太字(ブログ管理人が施したもの)の部分に記載しているように、やはり三隻の空母が朝鮮半島付近に配置されることが、ひとつの目安であると考えているようです。

さらにブログ冒頭の記事では、在韓米軍が6月、韓国に滞在する米国人の避難訓練を実施することも掲載されています。

この他にも、在韓米軍のオサン(烏山)空軍基地所属のU2偵察機4機と空軍兵約180人が6月1日から、一時的に米空軍嘉手納基地に配備されることも報道されています。

表向きは、オサン基地の滑走路修復工事に伴うものとされていますが、配備期間は不明です。

U2偵察機
一時配備されるのは第5偵察中隊。U2は高高度を飛行しながら、地上を撮影して偵察する任務を負っています。通常は韓国から北朝鮮の核施設などを監視するために飛行しています。

オサン基地は、ソウルの南方、約40kmのところの平沢市近郊に所在します。ということは、韓国と北朝鮮の国境から近いということです。もし朝鮮半島有事ということにでもなれば、非常に危険ですし、しかもU2は偵察機であり武装はしていません。

であれば、朝鮮有事のときには、韓国のしかも国境付近に配置すべきではありません。であれば、オサン基地の滑走路修復工事によるものであろうとなかろうと、当面は日本に配置しておいたほうが無難です。これも、朝鮮半島有事の1つの兆候とみて間違いないでしょう。

北朝鮮は29日早朝、今年12発目となる弾道ミサイル1発を発射しており、中国はまたメンツを潰されたことになります。

また、これによって、アメリカが単独で北朝鮮に対応することが正当化されたともいえます。これで、米国が北朝鮮を先制攻撃したとしても、中国・ロシアはもとより、いずれの国も米国を批難することはないでしょう。

しかし、アメリカの目的は北朝鮮を黙らせることではなく、核とミサイルの開発を破棄させ、国際的な監視体制を受け入れさせることにあります。そのため、一時的に核実験やミサイル発射を取りやめたとしても、圧力をかけ続けることになると思われます。

問題は、その圧力がどのような種類のものになるかですが、仮にアメリカが先制攻撃を行うとしたら、北朝鮮の反撃を許さないように核開発の拠点とミサイルの発射基地や保管庫を徹底的に破壊するでしょう。そのため、対シリアのような空軍基地に限定された攻撃ではなく、一斉に全土を攻撃する可能性が非常に高いです。

アメリカ空母の移動により米・北朝鮮間の緊張が高まっています。戦争となれば全面戦争き免れない為、米側が自粛するとの見方が強いのですが、それでも過去に無いほどの緊張状態にあることは間違いないです。

外務省は、4月11日夜、韓国に渡航したり滞在したりする人を対象に注意などを呼びかける海外安全情報を発表しました。それによると「韓国では直ちに日本人の安全に影響がある状況ではない」としながらも、隣接する北朝鮮が核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返していることから、朝鮮半島情勢に関する情報に注意するよう呼びかけています。

この警告を過小評価することは危険です。戦争開始前にこれが危険情報に切り替わることは無いからです。韓国旅行を考えている人は少なくないでしょうが、中止した方が無難だでしょう。

アメリカ軍が日本に北朝鮮攻撃を伝達するにしても直前であり、日本政府もそれを知ったとしても攻撃前に国民に警告することはできないです。北朝鮮に攻撃開始を知られれば奇襲効果が無くなるからです。

いまは何時米国と北朝鮮の間で戦闘が開始されてもおかしくない状況にあります。こんな危険な時に韓国観光に行くのはあまりにもリスクを軽視しています。

もし本当に戦争が始まれば、韓国ソウルや釜山といった大都市は攻撃対象になります。残念ながら戦争が始まれば、日本から韓国に避難の為の飛行機を派遣することは不可能であり、命を失くす危険は決して低くないです。

以上述べてきたように、6月以降に戦争が始まるリスクは否定できません。不要不急の観光旅行はしばらく行わないようにすべきです。そうして、今後も戦争がおこりそうな兆候が出た場合には、このブログに掲載していきます。

また、日本国内でも様々な危機がありえます。それについての備えは、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事を以下の【関連記事】のところに再掲載します。北朝鮮の危機に対して、できることは少ないですが、それでもできることはやっておくべきです。

いずれにせよ、これからたとえ米朝が、1000キロ以遠を飛ぶミサイルの凍結という条件で取引をしてもそれが成立したとしても、日本は攻撃される可能性はあるわけです。

さらに、北朝鮮が核凍結をすることを表明したとしても、過去の経緯からいつまた再開するか、わかったものではないですし、それに中国の核ミサイルは日本を狙っています。

これを忘れるべきではありません。

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