2017年7月30日日曜日

北、深夜のICBM発射 米軍事攻撃の可能性高まる トランプ大統領「あらゆる必要な対策を講じる」―【私の論評】米軍の北朝鮮攻撃は二度ある(゚д゚)!

北、深夜のICBM発射 米軍事攻撃の可能性高まる トランプ大統領「あらゆる必要な対策を講じる」

ミサイル発射で挑発し続ける北朝鮮
 狂気の独裁者、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の“暴走”が新段階に達した。28日深夜、北朝鮮中部から弾道ミサイルを発射した。米軍は大陸間弾道ミサイル(ICBM)と断定し、米西海岸のロサンゼルス、さらに東海岸のワシントンを射程に収めるとの見方もある。危機感を強めるドナルド・トランプ米政権が軍事行動に踏み切る可能性はさらに高まったといえそうだ。

トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長
 日本政府の発表によると、弾道ミサイルは28日午後11時42分、北朝鮮中部慈江道(チャガンド)から日本海に向けて発射された。約45分間飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。航空機、船舶への被害は確認されていない。

 「北朝鮮に対し、厳重に抗議し、最も強い言葉で非難する」。安倍晋三首相は29日未明、記者団に対してこう述べ、危機感を表した。

 米国の緊張感を強まった。聯合ニュースは、29日午前5時45分(日本時間同)ごろ、米韓両軍が韓国東部の日本海側で弾道ミサイルの発射訓練を行ったと伝えた。

 また、米韓両軍の制服組トップが電話会談し、米国防総省によると、北朝鮮への軍事的な対抗措置の選択肢を協議した。

 トランプ米大統領は28日、声明を発表し、北朝鮮の行動は「無謀で危険だ」として非難し、「米本土の安全を確保し、地域の同盟諸国を守るため、あらゆる必要な対策を講じる」と強調した。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は、発射に立ち会った正恩氏が「米本土全域がわれわれの射程圏内にあるということがはっきりと立証された」と述べたと伝えた。

 正恩氏の言葉は、北朝鮮お得意の強がりではない。米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は28日、現時点で判明している発射データから計算して「通常軌道で飛行した場合の射程は9000~10000キロに達する可能性がある」との分析を明らかにした。事実であれば、北朝鮮のICBMはロサンゼルスを含む米西海岸を射程に収める。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「今回のICBMの性能を精査すると、地球の自転を加味すればワシントンに到達する。ニューヨーク、ボストンは十分に狙えるようになった」と話し、こう続けた。

 「4、5月は日本や韓国など周辺国や在日、在韓米軍への被害を考慮し、踏みとどまった。だが、すでに7月のICBM発射時点で、トランプ政権が言っていた『レッドライン』は越えていた。北朝鮮が投げてきたボールに対し、米も応えなければならない。その中には、当然、軍事オプションは含まれている」

国土安全保障長官に指名されたジョン・ケリー氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は、プリーバス大統領首席補佐官を解任し、後任にケリー国土安全保障長官を起用した人事について「軍人のケリー氏に代えたのは、北朝鮮をにらんだ人事シフトの面があるだろう」と指摘。今後の米国の動向について「軍事攻撃の可能性は確実に高まったと思われる。世論、議会の支持を得るため、北朝鮮の暴発を引き出すような工作を情報機関が進めていくのではないか」と語った。

 日本も覚悟を固めないといけない。

【私の論評】米軍の北朝鮮攻撃は二度ある(゚д゚)!

朝鮮半島有事は絶対にさけられなです。少なくとも、そのような認識にたって物事を考えるべきだったはずです。しかし、政治家、官僚、マスコミ界に関わる人々は、それを熟知しているにも関わらず、それにあまり触れなようにしています。

それは本当に戦争が始まれば想像を絶する悲劇的な状況が避けられないことを知っているからでしょう。今更その責任を云々した所で仕方がないのですが、それは戦後の政治に関与してきた、自民党から共産党も含む全ての既成政党の責任に他ならないです。

日本列島を超えて北朝鮮のミサイルが太平洋上に着弾した時に、国会では全ての政党が全会一致で北朝鮮に対する非難決議を行いました。しかし、非難しただけでその後何もしてきませんでした。

以下に、過去の北朝鮮のミサイルや、核について振り返る、表を掲載します。

表はブログ管理人挿入以下同じ
以上は昨年までの動きです。今年の動きを示す表を以下に掲載します。


そうして、今回の28日午後11時42分のICBMの発射です。

もう、北朝鮮がミサイルを打ち上げるようになったのは、何年前の話でしょうか。日本全域を射程に収めるミサイルということであれば、93年のことです。この時から今年はすでに、24年目です。日本の為政者は民主党政権時代も含めて、北朝鮮問題に真剣に取り組まないで、これを放置して祖国を今危機の真っ只中に放り込むことを許してしまいました。この間一体為政者は何をしていたのでしょうか。

経済に関しては、失われた20年ということがいわれてきましたが、それは安倍政権が成立してから、改善され、GDPは消費税増税もあってほとんど伸びていないものの、金融緩和に転じたことで、雇用は劇的に改善されました。

ところが、東西冷戦は崩れたものの、アジアには北朝鮮問題が残ったままで、残念ながら日本はこれに対して何もしてこなかったというのが実体です。

この間日本は、北朝鮮を攻撃する手段を全く講じてきませんでした。それどころか、地下シェルターなどの防空壕の建設を全く進めてきませんでした。さらには、国内における在日朝鮮組織に対する締め付けを全くしてきませんでした。

それどころか、28日の大阪地裁(西田隆裕裁判長)は、朝鮮学校を高校授業料無償化の対象外としたのは違法だとして、国に処分取り消しを命じるというような、信じがたい状況にあります。


北朝鮮の独裁体制を礼賛するような歴史教育が行われていても、本国による「不当な支配」(教育基本法16条1項)には当たらず、学校の「自主性」は保たれているとして、大阪朝鮮学園側の主張を追認しました。全く信じられない判決です。

さらに、野党やマスコミは、今年に入ってから北朝鮮情勢が悪化し切迫ているにもかかわらず、森友・加計・日報問題で、政府の足を引っ張るばかりです。

現在わが国は北朝鮮のミサイルによって攻撃されるか、北朝鮮に屈服して奴隷となるかの崖っぷちに追いやられていると言っても過言ではありません。

このまま座して奴隷になる道を選ぶしかないのでしょうか。違った選択が一つだけあります。

このブログの冒頭の記事にもあるように、米国トランプ大統領の北朝鮮攻撃の「決断」です。もう残された道はこれだけでしょう。現在までのように、国連安保理事会が、非難決議を出そうが、安倍晋三首相が非難しようが、北朝鮮は絶対にミサイルの発射実験をやめたり、核兵器の開発をやめることはありません。

そうして、米国が北朝鮮を攻撃する可能性は、今回のICBMの発射で、高まってきました。

しかし、私氏自身は、年内に「北朝鮮危機」が崩壊することはないであろうとは、思っています。

今回の北朝鮮危機について、米国はまずは、北朝鮮を限定空爆するのではないかと思います。

限定空爆、つまり全面戦争するのではなく、核施設などを限定的に空爆することで、被害を最小限に抑えながら「核」という脅威を取り除くのではないかと思います。


航空自衛隊が、2017年6月20日(火)、九州周辺の空域でアメリカ空軍と共同訓練を実施した時の動画

そうして、限定空爆なら、北朝鮮は崩壊することはないでしょう。

湾岸戦争のとき、イラクは多国籍軍を相手にしながら崩壊はしませんでした。その後のイラク戦争で、イラクのフセイン政権は崩壊しました。

おそらく、北朝鮮も、今年崩壊するのではなく、その後の2度目の有事で崩壊するのではないかと思います。

北朝鮮がもしも反撃してきたら、ソウルが火の海になる前に、平壌が更に大規模に火の海になることになります。そのため、北朝鮮がソウルを火の海にするとは思えないのです。

そもそも、北朝鮮の人民解放軍は、ミサイルや核兵器には力を入れていますが、通常兵器はかなり遅れていますし、とても米軍の敵ではありません。戦えば、完膚なきまでに負けることは最初からわかりきったことです。

そうして、金正恩は、クーデターを恐れて、軍に対して、ろくに弾薬も供給していないとも言われています。

そもそも、北朝鮮は今、開戦できる状態にないと考えられます。そもそも、全兵士に対して食料も十分に供給できない有様です。1990年代の飢饉で栄養の行き渡らない子どもたちが、兵士なる年代となり、身長が低く、何と最近北朝鮮人民具は採用基準を緩め、身長が140cm台でも兵士になれるようにしました。

潜水艦も、航空機も、陸上の兵士の装備も日米ならとっくに破棄したような、旧式なものばかりです。中国もかなり旧式のものも使っていますが最近は近代化しつつあります。しかし、北朝鮮は従来のままです。北朝鮮はこのような状態でまともに戦闘などできるとはとても思えません。本当に戦闘をすれば、大敗北するだけです。

北朝鮮のロシア製のSu-25
このような北朝鮮人民解放軍の近代化は、急速に成し遂げられるものではありません。だからこそ、北朝鮮は近年核兵器や、ミサイルに注力するようになったのです。しかし、これがさらに人民解放軍の近代化を遅らせる要因になっていることも確かです。

韓国や日本の被害が多すぎるから、北朝鮮を攻撃してはいけないし、出来ないなどというのは、北朝鮮の思うツボです。北朝鮮はそのプロパガンダで、戦争を回避しようとしているのです。度重なるミサイルの打ち上げも、プロパガンダの一種とみるべきです。だからこそ、北朝鮮の罠にハマるべきではないのです。

日本や韓国が「戦争はないから安心だ」と言ってしまうことは、北朝鮮をも安心させることになるので、圧力の効果が薄くなってしまいます。

そうして北朝鮮があくまでICBMの開発をやめなければ、「2度目の有事」は、ICBMの完成、すなわち核兵器の小型化それも水爆の小型化に成功し、「大陸間弾道ミサイル」が完成してしまう頃であると予想します。

その頃に、再びの北朝鮮危機があるのかもしれません。今年か来年に、北朝鮮の核施設への空爆が行われ、数年後に再び米国は北朝鮮を攻撃することになります。

その時は、陸上部隊も大量に投入して、完膚なきまでに北朝鮮を攻撃することになるでしょう。その時こそ、北朝鮮が崩壊するときです。その時には、金正恩は、亡命するか、亡命しなければ、斬首ということになるでしょう。

北朝鮮の消息筋によれば、金正恩の亡命先や、亡命方法などもう決まっているとも言われています。

いずれにせよ、今すぐにではないにしても、年内もしくは来年には間違いなく、米軍による限定爆撃は実行されるでしょう。

わが国も、そのつもりで今から準備しておくべきです。特に、米国に対してどの程度の支援をすべきか、そうして、二度目の攻撃のときには、拉致被害者を具体的にどう救出するのか、今から考えておくべきです。

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2017年7月29日土曜日

【日本の解き方】加計問題で「悪魔の証明」求めるメディア 筋違いの首相会食批判も懲りずに「1月20日問題」追及―【私の論評】学校でのイジメを助長する愚鈍な政治家とマスコミども(゚д゚)!


国会で「悪魔の証明」を強要され答弁する安倍総理
加計学園問題をめぐっては、文科省の挙証責任が焦点になった。一方、一部メディアでは安倍晋三首相側について「疑惑を否定する証拠がみつからなかった」とも報じられている。

報道では「加計疑惑、証拠なき否定」という見出しもあったが、これはいわゆる「悪魔の証明」である。つまり、ないことの証明は困難であるので、法のことわざとして「否定する者には、挙証責任はない」がある。

加計学園問題では、一部メディアが、安倍首相と加計学園理事長との個人的な関係を根拠として「総理の意向」が働いたはずだと主張した。この場合、証拠を提示する挙証責任は、「意向」の存在を主張するメディア側にあり、否定する側に証拠を求めてはいけない。

本コラムでは再三、文科省内メモには証拠能力がないことや、文科省と内閣府で合意済みで証拠能力があり、公表もされている特区会議議事録からみれば、文科省メモや前川喜平・前文科事務次官の発言は誤りが多いことを指摘した。

その後、当事者である特区会議委員の記者会見や加戸守行・前愛媛県知事の国会証言、京都産業大学や京都府知事の記者会見、獣医師会会長の発言などで、筆者の言ってきたことがおおむね正しかったことが分かっていただけたと思う。

24日の国会閉会中審査における小野寺五典議員の質問は、これまでの事実の積み重ねを質問して、よく整理されたものだった。つまり、安倍首相が加計学園理事長と個人的な関係があっても、それで行政がゆがめられたことはないと証明しているといえる。



本来の議論であれば、こうした「ないこと」の証明を行うのは困難である。「否定する者には、挙証責任はない」のだから、追及する側が「行政がゆがめられた」ことを証明するのが本来の議論である。筆者は、国会においても、こうした議論を筋道立てて堂々と主張すればいいと思っている。

しかし、一部メディアは、安倍首相が加計学園理事長と何回食事したとかを指摘し、あとは依頼があったはずという推論だけで、「行政がゆがめられたはずだ」という論法だけである。そして、それに関する説明がなされていないと主張し、「行政がゆがめられていない」ことの挙証責任を、否定する者に求めてしまっている。

さらに、この食事について、利害関係者との会食などを規制している大臣規範との関係を問題視するメディアも出てきている。今回の特区では申請が可能になるだけで認可は別である。この程度のことで、大臣規範でいうところの関係者になるかどうか。

いずれにしても、閉会中審査では、挙証責任がひっくり返ってしまったが、政府側の説明は「ないこと」を証明した。だから冒頭の一部メディアの報道になった。

ただ、これで終わりではない。安倍首相の「(加計学園の獣医学部新設計画の申請を)今年1月20日まで知らなかった」という発言で、再び「ないこと」の証明を求められているからだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】学校でのイジメを助長する愚鈍な政治家とマスコミども(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏が主張するように、悪魔の証明は不可能です。あの「悪魔の証明」当たり前のことであるように受け取られているむきもありますが、知らない人も大勢いると思います。そのため、まず本日は「悪魔の証明」について掲載します。

まずは、下に簡単なチャートを掲載します。

「存在すること」の証明はできても「存在しないこと」の証明は大変難しいのです。

「悪魔が存在する」ことを証明したい場合は、悪魔を連れてくることで証明はできます。

もちろん、悪魔を連れてくることは、できないかもしれませんが、もし、悪魔を連れてくることができれば、存在の証明はできます。

「悪魔を連れてくる」この1点で証明することができます。

しかし、「悪魔が存在しないこと」を証明するということは、「私の部屋」に悪魔がいないだけでなく、「あなたの部屋」にも悪魔がいない、「日本全体」「世界全体」などなど・

全てにおいて、証明しなくてはいけません。そのようなことは、ほぼ不可能です。ですから「存在しないこと」「事象がないこと」を証明することは大変難しいのです。

そのため「ないことを証明して下さい」と、相手に言ってしまうことに注意しましょう。また「ないことを証明して下さい」と相手から言われた場合には、「悪魔の証明だな」と気付きましょう!

そして「ないことを証明できなかった」としても無論、相手側が正しいとは限らないということを覚えておきましょう。

加計問題で国会で質問を受け答える安倍総理
加計問題でいえば、総理が自分の権限を利用して、加計学園に獣医学部を設立することを働きかけたかどうかが争点になっています。

これに対して、総理は「働きかけなどなかったこと」を証明しなけばならないような立場に追い込まれているわけですが、これは不可能ということです。

しかし「働きかけがなかったことを」証明できないということは、無論のこと働きかけをしなかったことの証明にはならないわけです。

この問題に終止符を打つには、野党やマスコミが「働きかけがあった」ことを立証するか、いずれ追求をやめるしかないわけです。追求をやめてしまっては、疑いが晴れないなどとする人もいるかもしれませんが、それは仕方ないでしょう。

疑わしきは罰せずというのが、こういう場合の鉄則ですから。疑わしいだけで、人を罰していては、それこそ、北朝鮮や中国のようになってしまい、とても民主的とはいえません。

しかし、森友問題も加問題も、結局今までのところは、野党もマスコミ「安倍総理が働きかけをした」ということが信じるに足るような証拠を提出するには至っていません。

すべては、間接的なものにすぎません。どれ一つとっても、まともな証拠はありません。すべて「ひよっとしたら」という程度の状況証拠ばかりです。公文書かどうかも疑わしい資料に関しては、「ひよっとしたらあったかもしれない」という記載などの記録もあるようですが、このブログでも以前から掲載しているように、戦略特区にかかわる議事録や閣議決定の内容などのはっきりと公文書としてわかるものからは、首相が関与したと疑われるような内容はありません。

さらに、こうした議事録などから浮かびあがるのは、文科省は、挙証責任を果たさなかったどころか、果たせなかったことがはっきりわかるだけです。

これからも、マスコミや野党が、追求を続けてもなお、明確な証拠を提供できない場合はとんでもないことになるかもしれません。

これに関しては最近おもしろいことが私の身の回りにも起こっています。私は、近所の70歳以上の年寄り連中とも結構つきあいがあります。そうして、こうした年寄りのほとんどが、情報源はテレビや新聞です。私が時折「iPad」を見ていると、「何それテレビ?」と質問するような人がほとんどです。「いえテレビではありません。iPadです」と否定しても、良く理解しない人がほとんどです。携帯電話を持たない人もいますし、持っていたとしても、ガラケーがほとんどで、そのガラケーでインターネット検索する人もいないようです。

多くのお年寄りたちが、最初は加計・森友問題に関するテレビ報道を熱心に視聴していたのですが、最近では、ほとんど見なくなっています。

ペタンクを楽しむお年寄りと子どもたち
その理由を聴いてみると圧倒的に多いのは、「飽きた」という答えです。それはそうです。テレビもマスコミも、すぐにも安倍総理辞任にでも追い込めるような勢いで、国会で質問したり、報道していたのに、森友問題でも、加計問題でも、未だに総理どころか、誰も辞任に追い込めてなどいません。

国会での追求でも客観的な証拠など何も出てきません。これでは、それを客観的な資料に違いないと思った人たちでも、国会の答弁も、のらりくらりしたものに見えて、最初は興味を持ってもいいかげん飽きてくるのも無理はありません。

それに情報源がテレビや新聞だけのお年寄りで加計問題の「総理の関与」を信じ込んでいた人も、良心的な人は、そろそろ「悪魔の証明」に気づきつつあるかもしれません。

これは、良く考えみると、当然といえば当然です。たとえば、学校で子どもが、お金を盗んだと疑われたとします。この場合、その子が本当に盗んでいなければ、それを証明するのは困難です。にもかかわらず、これがイジメの原因になったりすることもあります。一方的な非難に対して、そのような不条理に誰も気づかないということはあり得ません。

日本では、摩訶不思議な風潮があって、学校と一般社会は、全く違うものという観念があります。それがイジメを助長しているところがあります。

これは、外国と比較すると良く理解できます。私は以前、試みに知り合いのドイツ人に英語で「ドイツの学校でもいじめ(Bullying)ってあるんですか?」と聞いてみたことがあります。するとそのドイツ人は、「いじめとは何ですか」と逆に質問してきました。型通り説明したあとで、具体例に入ったとき、ドイツの実体がよくわかりました。

具体例として、「たとえば、なぐったり…」と言うと、そのドイツ人は即座に、「それは犯罪です」と答えました。その後も、「ものをとったり隠したり…」「それは犯罪です」。「集団で圧力を…」「不当ならば犯罪です」というやり取りが続きました。このように、彼の口からは、即座に犯罪という言葉がでてきました。これは、他のドイツ人女性から聴いても同じような答えがかえってきました。

そうです。少なくともそのドイツ人らは、学校は一般社会とは異なる空間とは捉えていません。しかし、日本では何やら、学校を一般社会とは異なる特殊空間でもあるがごとくのように考えてしまうところがあります。

この違いに気づいて、ドイツの内情を調べてこのブログの記事にしたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ドイツの教師 校外で煙草吸う生徒目撃しても注意しない理由―【私の論評】何でも学校の管轄とするのはあまりにも無責任!!学校は治外法権ではなく、責任ある社会人の子供が行くところと心得よ!!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に要旨を簡単にまとめて掲載します。

ドイツでは、たとえば高校教師が、自分の教える生徒が校外で、タバコを吸っているのを目撃したとしても、注意する義務はありません。無論学校では、生徒がタバコを吸えば、教師がそれを見過ごせば問題になります。家庭での躾と、学校での躾や教育はしっかりと分離されているのです。

それと、これは、日本とのかなりの違いですが、ドイツで「問題行為」(授業中に騒ぐなどの行為。髪の毛を染めるような身だしなみや学校外で起こした問題ではない。はっきりいえば、犯罪行為につながりかねない行為)を起こした生徒には、まず「口頭」で注意されます。その「注意」が3回たまると、校長から生徒の家に「問題行動を起こしたことへの注意」が書面で送られます。そしてこの書面が3通たまったら自動的に退学になります。

ドイツでは、学校も一般社会の中の1機関に過ぎないという考えなのだと思います。いわゆる日本でいう酷いイジメ=犯罪という考えなのです。しかし、考えてみれば、これは当たり前です。学校だけが治外法権などということはあり得ません。

ドイツでは日本ではイジメとされるような事柄でも、学校内で明らかに犯罪が発生すれば、それを犯罪とみなし、すぐに一般社会と同じように警察が関与するのです。

一方、校外で生徒が犯罪を犯せば、それは学校の関与するところではなく、犯罪を犯した生徒は、一般社会で犯罪犯した未成年と同じ扱いを受けるのが当然という考え方なのです。

生徒の行動の責任に関して学校と、家庭とがはっきり分離されているので、校外で子どもが犯罪を犯したとすれば、それは学校とは無関係で、家庭の責任であるということです。だからこそ、イジメが発生する可能性が日本と比較して格段に低いのだと思います。

日本でいうイジメのほとんどは犯罪である
しかし、日本では何かといえば、生徒が犯罪を犯すと、学校外でも学校に責任があるような扱いをされます。これは、やはり、日本では、学校内は、治外法権であるとか、特別な空間であるとの意識が社会にあるからだと思います。このような風潮では、学校でのイジメの隠蔽を助長しているようなものです。

しかし、学校も社会の1組織であり、学校だけが治外法権などということはありません。イジメのほとんどは本当は犯罪なのです。犯罪は犯罪であり、これはそれが発生したのが、学校であろうがなかろうが、同じ手続きで処分されるべきなのです。それを、しないから、イジメが助長されているのです。

そうして、日本では、学校が特殊空間であるのと同じように、他にも摩訶不思議なことがまかり通っています。それは、与党政権に対しては、一般社会では許されないことを野党や、マスコミや、識者がしたとしても、当然であるというような風潮です。

今回の加計問題など、その典型です。「悪魔の証明」ができないからということで、野党・マスコミ・識者などが、一丸となって、未だに政府や、安倍総理個人を攻撃しています。このようなことが、政治の世界ではなく、民間企業や他の組織で起これば、明らかに「パワハラ」とか犯罪とみなされます。

この問題、このまま放置しておき、さしたる物証もないままに、攻撃が今後も継続するということでは、民主主義の崩壊にもつながりかねません。そうして、政治家、マスコミ、識者などがこのような「悪魔の証明を強いる」ような馬鹿真似をしているのですから、学校でイジメがなくならないわけです。

しかし、ここにきてこの問題に関して、動きが出てきました。それは、先にも述べように、この問題に関しての議論にお年寄りですら、「飽きてきた」という状況にあることと、もう一つは保守層の動きです。それに関しては、ケント・ギルバート氏の記事のリンクを以下に掲載します。
加計問題、一部メディア「大本営発表」の正体 嘘も100回繰り返されれば真実となる
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 以下に一部のみ引用します。
 加戸守行(かと・もりゆき)前愛媛県知事は25日、参院予算委員会の閉会中審査で、文科省の後輩である前川喜平前次官の主張について、「精神構造を疑う」「想像がすべて事実であるかのごとく発言をしている。それが国民をそういう方向に持っていくことになると危惧している。そのリスクを冒してまで作り話をしなければならない彼の心情が理解できない」と、痛烈に批判した。 
 自民党の青山繁晴参院議員は「『加計ありき』という言葉は、前川さんの胸の中で『加計ありき』だ。一般的には思い込みと言わざるを得ない」と断じた。 
 ここまで「意見が対立した問題」なのに、ニュースやワイドショーは多角的に報じない。私たち「放送法遵守を求める視聴者の会」は近く、「加計問題」報道の衝撃的な調査結果を発表する。
「加計問題」報道の衝撃的な調査結果とは、どの程度のものかわかりませんが、その衝撃の度合いによっては、野党やマスコミ、識者なども今のままではすまないかもしれません。

ドナルド・トランプ米大統領の上級顧問がロシア疑惑で連邦議会の調査を受けているという記事を米CNNが撤回した問題で、CNNは26日、関わった記者3人の辞職を発表しました。

CNNは社内調査の末、22日付の問題の記事を24日に撤回し、アンソニー・スカラムーチ上級顧問に謝罪しました。スカラムーチ氏は、ロシア人投資家との関係について議会の調査を受けているとの報道を否定し、CNNがトランプ大統領の交友関係を攻撃していると非難していました。

CNNを辞職したのは、記事を担当したトマス・フランク記者、調査報道部門編集者でピュリツァー賞受賞経験もあるエリック・リクトブラウ氏、調査報道部門の責任者のレックス・ハリス氏です。いずれも、幹部社員です。

今後時間が経過するにつれて、このような動きが他にも出て来ると思います。加計問題追求に関わった人々の発言や資料の中に、明らかにフエイクであると証明されるような、ものがみつかれば、野党やマスコミなどでクビが飛ぶ人もでてくるかもしれません。

民進党も、第二のメール事件のようなことにならないとも限りません。

とにかく今回の「悪魔の証明」を強いるようなやり方を放置しておけば、学校でのイジメをさらに、加速してしまうことになりかねません。このような社会を放置しておけば、日本も韓国や中国のような遅れた社会に成り下がってしまうかもしれません。

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2017年7月28日金曜日

【国防最前線】必要性が低い女性防衛相 圧倒的に男性が多い自衛隊、弱体化しかねない「客寄せパンダ」的施策―【私の論評】現状で、憲法9条だけが変わっても無意味(゚д゚)!


稲田防衛大臣 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
私はそもそも「女性を防衛相にする必要性は特にない」と思っている。非常時でも、すっぴんで髪ボサボサというわけにいかないだろうから、そういう意味で適さない。

 小池百合子防衛相時代も、演習場視察の前日から自衛官がひたすら散水を続けたり、動線に敷物をしたり、あれこれ心を配っていたことを思い出す。本人が知れば「そんなことは無用だ」と言うだろうが、やはり男性大臣よりも神経を使うことは確かだ(=ほとんど注意を払わせない、身だしなみなど気にしない女性ならいいかもしれないが)。

 もし、「女性活躍の象徴」として女性防衛相を選んだのだとしたら、何の意味もなさない。

 自衛隊には圧倒的に男性が多い。それは男性にしかできない任務が多いからだ。ただ、女性にできる分野もあり、これまで開放されなかった職種を希望する女性も出てきている。昨今は女性も活躍の場を広げつつあるが、それは人口減に伴う労働者不足を補わなければならない日本全体が抱える状況と同じ。つまり、人手不足が大きな要因だ。

 本来、戦場では女性は足手まといになる。女性防衛相が就任して応募が増えたというなら効果があるといえるが、おそらく、そのような成果は出ないだろう。まして、女性の魅力で(?)沖縄問題が進展したり、憲法改正に理解が広がるなどということもない。

 今後、本気で女性枠を拡大させるならば、女性防衛相を据えることなどではなく、インフラ投資のために防衛費のGDP枠2%以上へ増額など、相当の覚悟をすべきだ。スーパーマーケットとまでは言わなくても、基地や駐屯地に低料金か無料の託児所を完備するなりの徹底した措置を施した上で将来も女性を簡単に諦めさせない体制を構築すべきだろう。

今現在は「任務に全力をささげたい」と考えている女性隊員らが、ある時に価値観が変わり、家庭が優先順位のトップになることは大いにあり得る。その時に、引き留める要素が何もないのなら、それは組織の怠慢となる。

 しかし、問いたいのは、それだけの投資・支出を国民は許容できるのかだ。

 莫大(ばくだい)な経費を要するミサイル防衛、サイバー、宇宙など、日本の防衛に必要な金はまったく足りていない。それらを抑えてまでやるのか? あるいは別枠予算でも付けるか?

 マンパワー獲得という真の目的からかけ離れた、「客寄せパンダ」的な安易な施策では、自衛隊が弱体化しかねない。防衛省をめぐる一連の騒ぎは、自衛隊PKO(国連平和維持活動)のあり方、女性活用の今後を熟考する契機にすべきではないだろうか。 

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。テレビ番組制作などを経て著述業に。防衛・安全保障問題を研究・執筆。著書に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気-そのとき、彼らは何を思い、どう動いたか』(PHP研究所)など。

桜林美佐さん

【私の論評】現状で、憲法9条だけが変わっても無意味(゚д゚)!

ブログ冒頭の桜林美佐氏の、論評はやはり女性の軍事問題研究科だからできるというとろがあると思います。男性や、軍事の素人ではなかなか、ここまではっきりとは書けないです。このようなことを男性が書くと、女性差別主義者であるとみなされてしまうかもしれません。

それに、誰が正しいとか、誰が間違いなどというような、倒閣のために自衛隊を利用する輩共とは異なり、不毛な議論ではなく、何が正しい、何が間違いという観点から論じていて、理解しやすいですし、こういう論点なら、正しい意思決定のきっかけづくりにもなりえると感じました。

対戦車ヘリのパイロットの訓練を受ける女性自衛官
私も、女性の防衛大臣は必要ないと思います。これは、直接は関係ないのかもしれませんが、たとえば戦場で戦闘中に用を足すことを考えた場合、女性はなかなか難しいと思います。

昔聴いた話ですが、戦闘中に用を足したくなった場合は、無論我慢はするのですが、我慢しきれなくなった場合、米兵のほとんどは戦闘のその場で、銃をうちながら、大便でも小便でも、用を足すのが当たり前なのですが、日本兵は特に大便の場合など、人目をはばかり、人の見えないところまで行って用を足すものが多く、その間に敵から撃たれるものが結構いたという話をきいたことがあります。

これは、当然のことながら、米兵のやり方が正しいです。戦闘中には、その場で銃をそばにおきいつでも敵に対応できるようにして、用を足すべきです。

1945年3月 硫黄島 
このようなことは、確かに女性には難しいことだと思うのです。とはいいながら、女性のほうがが向いている役割も多いです。

しかし、そうはいっても、桜林さんが主張するように、「女性活躍の象徴」として女性防衛相を選ぶというのは、全く無意味だと思います。

そうして、桜林さんの語っているように"マンパワー獲得という真の目的からかけ離れた、「客寄せパンダ」的な安易な施策では、自衛隊が弱体化しかねない。防衛省をめぐる一連の騒ぎは、自衛隊PKO(国連平和維持活動)のあり方、女性活用の今後を熟考する契機にすべき"です。

自衛隊に関しては、憲法9条を変更する前に、できることは多くあります。また、憲法9条が変わったとしても、自衛隊がすぐに変わることを意味するわけでもありません。

それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
安倍内閣で防衛費が5年連続増額しているのを、評価する向きもあるでしょう。しかし、防衛費1%枠などという何の根拠もない霞が関の掟を頑なに守っている枠内での話に過ぎません。 
トランプ米大統領は、「同盟国は義務を果たすべきだ。せめて防衛費を文明国水準のGDP2%にまで引き上げよ」と訴えています。 
これは大きなチャンスです。増やせば良いのです。これだけ北朝鮮が暴れまわり、中国やロシアといった不安定要だらけの隣国に囲まれているのです。日本が防衛費をGDP2%に増やしたとて文句を言うのは敵国だけです。 
しかし、国内には防衛費増額を拒む勢力がいます。財政支出抑制を金科玉条とする財務省主計局、彼らに唯々諾々と従う防衛省自衛隊、そしてそれを是とする政治家。
ある自衛隊の駐屯地でのトイレットペーパーに関する注意書き。予算の問題はこんなところにも。
防衛費増額と憲法は何の関係もありません。それとも、自衛隊が、「米軍並のファーストエイドキット携行できるにようにするとか、軽武装をできるだけの人数を充足させる、アメリカ軍楽隊よりもマシな訓練を行えるようにする、トイレットペーパーの減り具合を気にしないで済むようになする」というような、これらの予算請求もすべて憲法改正をしなければできないのでしょうか。そんな馬鹿な話があるはずがありません。
平成27年度自衛隊音楽まつりに参加した米軍の軍楽隊
本気で戦争に備えているのであれば、防衛省は予算の拡大を要求するはずです。現状を見るに、自日本の本気で戦争する気は無いように思えます。このような現状は仮想敵国には見透かされているでしょう。であれば、自衛隊の抑止力はかなり低いと考えられます。 
憲法を改正する以前に、努力してより自衛隊を実戦的に変えることは可能なはずなのです。ところが威勢のいいことを言う「保守の論客」はこのような小さな問題をコツコツと掘り起こし、解決しようという地道な努力をしようとしません。 
世論を煽り、新しい玩具を買え、防衛費を増やせ、自衛隊の定員を増やせ、憲法を変えろと叫ぶだけです。まあ、その方が楽だし人気もでるのかもしれません。しかし、いくら喰うためとはいえ、そんなことで良いのでしょうか。 
できるかどうかもわからない、非常にハードルが高い憲法改正を叫び、それが出来れば世の中は変わると主張し、小さな努力はしない。それでは沖縄で反基地闘争をやっている連中と同じではありませんか。
私は、憲法9条を変えるという安倍総理の考えには、賛成ですが、 その前にできることはするべきです。

そうして、憲法9条を変えさせまいとする野党や、マスコミが、ここにきて一気に日報問題で、稲田防衛大臣を辞任に追い込みました。

稲田大臣は、確かに安倍内閣の中で最も評判が悪い閣僚になっていました。失言も多く、メディア出演・答弁・記者会見も頼りないものでした。記者懇談会に出ないこともあってメディア等からの視線も厳しく、連日連夜、稲田大臣と彼女を支えている統幕・内局に不利な一部の陸自幹部からと思しきリーク情報が報道されていました。

政治指導者の過ちをただし国民に直接説明するという姿勢は一見もっともらしいですが、極めて危険です。なぜならば「国民」とは実際にはひとかたまりではなく、多種多様だからです。

「国民のため」という発想は、「天皇陛下の御為」「国民の為」を掲げた226事件がそうであったように、「自分と同じ考えの国民」という独善に陥りやすいです。だからこそ、今回のリークはクーデターであり、重大なのです。

日本を震撼させた2.26事件
このことを野党やマスコミも指摘すべきであるにもかかわらず、普段は過去の軍部の暴走の危険を例に出し、文民統制の重要性を指摘しておきながら、今回は、目的があくまで倒閣なので、稲田防衛大臣個人や、安倍政権を攻撃するだけです。

とはいいながら、リークの全てを否定するものではありません。例えばパワハラ等への内部告発はもっと行われるべきです。しかし、それはあくまでも文民統制に反しない限り、つまり政治的活動に関与しない範囲であるべきなです。
しかし、それにしても、稲田大臣が辞職し、制服組がリークによって大臣を辞職させ、首相の政治生命すら危うくさせたという前例を作ってしまったということは非常に残念であるし、かなり危険なことでもあります。

なぜなら、今後の防衛大臣が陸自に対して“忖度”せざるを得なくなってしまう可能性があるからです。その結果、陸自の不祥事を追及できず、陸自も含めた防衛省改革が不可能になるおそれがあります。

要するに、今後、稲田大臣に変わって優秀かつ能力があり、熱意あふれる防衛大臣が誕生し、改革を断行しようとしても、真偽不明の内部リークで潰されてしまう、もしくはそうされることを恐れて断念してしまう可能性がでてきたのです。

こうした事態を避けるため、今回の日報問題を踏まえた文書管理のありの方針を決めるべきです。それこそが、本来稲田大臣がとるべき責任であったはずでし、それを稲田大臣にやらせるべきでした。辞任はその後でも良かったはずです。

南スーダン派遣自衛隊日報
部隊がどこいるか補給物資や弾がどれくらいあるかといった部隊の安全に関わる情報が満載された何十ページにも及ぶ日報が、その都度、情報公開請求されれば、部隊にとっては大きな負担になります。

今回のように、その都度情報公開の判断をさせれば、部隊の活動の政治問題化、部隊への政治介入が起こり、部隊にも隠蔽のインセンティブが働いてしまうことになります。このままでは現場の部隊は、上級部隊に何も意味のある報告できなくなり、現場と上級舞台は、分離されてしまうことになります。そんなことになれば、自衛隊は崩壊します。

これらの日報は自衛隊全体では、膨大なものになります。これを逐一、政治家などが日々全部読んで、様々な判断をするなどということは不可能です。無論、自衛隊の幹部などもそのようなことは不可能です。

現場の日報は、何のためにあるかといえば、当該部署の1年間の流れを把握するという意味もあると思います。はじめてその部署についた人でも、日報をみれば大体の流れをすぐに把握できます。だから、現場で日報をある期間保存するというのは当然といえば、当然です。3年間くらいは保存したいところでしょう。5年前のものだと、随分状況が変わっているので、現場でも破棄しても良いかもしれまん。

そこで今後は、このような現場の実情も踏まえて、文書管理の方法を設定すべきです。PKO部隊なら活動が終わった直後あるいは年一回を区切りとして、他の部署なら3年に一回として、活動終了後3年といった公開時期を設定し、あらかじめ公開すべき内容と公開すべき範囲、非公開にすべき内容を定め、特異な事象が発生した場合には即公開するといった基準を設けるべきです。

こういうと、すべてをのべつまくなくリアルタイムで公開すべきであるという愚かな人もでてくる可能性もありますが、この日報は、いわば軍隊のものであり、そもそも最初から公開すべきでないものもあります。たとえば、部隊の脆弱性に関するものなど、一般に公にすれば、仮想敵に対して有益な情報を与えるだけになります。あるいは、当初は重要でなかったものが、後で重要であることがわかるということもしばしばあるはずです。

このあたりも、他国の軍隊のやり方を見習い、慎重に定めるべきでしょう。それから、稲田大臣は辞任しましたが、今後の議論が稲田大臣個人の問題や、安倍総理個人の問題に矮小されることなく、文民統制や日報管理のあり方、そもそも一義的な文民とは国民なのか、政治指導者なのか、まともに議論されべきものと思います。

そうして、憲法9条を変えることも重要なのですが、その前に文書管理等を明確にし、予算も増やすべきです。そうして、文書管理をまともにするためには、他の事柄もかえなくてはないらないことがいろいろと出て来るはずです。それも逐次変えていくべきです。今の状況で、憲法9条だけが変わっても、無意味です。

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2017年7月27日木曜日

インフレ目標未達の真の問題 増税影響の説明と政治的配慮、追加緩和は補正と一体実施も―【私の論評】日銀は奇妙な景況感を捨て去り速やかに追加金融緩和せよ(゚д゚)!


グラフ、写真はブログ管理人挿入 以下同じ

日銀の金融緩和によって雇用環境は劇的に改善しているが、2%のインフレ目標達成時期は先送りが続いている。インフレ目標政策のセオリーから見て、目標達成の先送りをどのように考えたらいいのだろうか。

 本コラムでこれまで繰り返してきたことであるが、金融政策の究極的な目標は雇用の確保である。

 経済理論では、インフレ率と失業率には逆相関(インフレ率が高ければ失業率は低く、逆にインフレ率が低ければ失業率が高い)がある。失業率を低くしようとしても、これ以上は下がらない構造失業率があるのでそれ以下にはできず、その場合、インフレ率だけが高くなる。

 つまり、インフレ目標は過度に失業率を下げようとするのを歯止めをかけるために、失業率と逆相関になっているインフレ率の上限を設けていると考えてよい。つまり、失業率が低下していれば、インフレ目標に達していないのは、さらに金融緩和せよとのシグナルになり得ても、それまでの金融緩和が間違っていたということにはならない。

インフレ率と失業率の間の逆相関は「フィリップス曲線」として知られている
 その上で、インフレ目標に達していないことについて、中央銀行には説明責任が出てくる。

 日銀の金融政策による雇用のパフォーマンスをみれば、失業率の低下のほか、就業者数の増加、有効求人倍率の上昇が顕著であり、これまでの金融緩和を否定する材料はない。ただし、インフレ目標の達成の説明では、原油価格の動向の影響があるとしたものの、2014年4月からの消費増税の影響にはできるだけ触れないようにしており、不十分である。

 黒田東彦(はるひこ)総裁自らが、消費増税しても影響が軽微と言っていたことから、総裁自身の説得的な説明力に疑問が出てしまうのだ。


 今後の金融政策を考えると、2つの選択肢が出てくる。1つは、金融緩和を現状維持で継続すること。もう1つは追加緩和である。

 マネタリーベース(中央銀行が供給する資金)残高が増加していれば金融緩和とみていいが、限界的に見れば金融緩和のスピードは落ちている。これは、実際の失業率がそろそろ構造失業率(筆者の推計では2%半ば)に近づいており、本格的な賃金上昇が始まるかどうかというギリギリの段階まで来ているからだ。

 政治的に見ても、失業率が下限にぶち当たった後にくる賃金上昇は経営者サイドにはすこぶる不満な事態となる。本来の金融政策としては望ましいものの、政治的な配慮をすれば、追加緩和に踏み切れないという面もある。

 もっとも、現状維持でも失業率が下がらず、その一方で賃金やインフレ率が高まらなければ、追加緩和すべきだとなる。その手法としては、目先の影響度・注目度を考えれば外債購入であるが、そのハードルは高い。秋に開かれる見通しの臨時国会では補正予算が打ち出され、国債増発となるだろうから、それを見計らって国債買い入れを若干増加させるというのが現実的な財政金融一体の対応策だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀は奇妙な景況感を捨て去り速やかに追加金融緩和せよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏は「黒田東彦(はるひこ)総裁自らが、消費増税しても影響が軽微と言っていたことから、総裁自身の説得的な説明力に疑問が出てしまうのだ」としています。

この認識は、奇妙といえば、奇妙でした。その奇妙な状態はその後も続き、現在も続いています。

昨年7月29日に日本銀行(以下、日銀)は金融政策決定会合で追加緩和を決定しまし
た。決定のポイントは (1)年間80兆円の国債購入ペースを維持、(2)日銀当座預金の超過準備(政策金利残高)に対するマイナス金利0.1%を維持、(3)ETF購入のペースを年間3.3兆円から6兆円に増額、(4) 次回の金融政策決定会合で2013年4月以降の量的・質的緩和(マイナス金利を含む)の検証を行うと要約できるものでした。いわゆる追加緩和は上記の(3)のみでした。

ETFとは証券取引所に上場されており、TOPIX(東証株価指数)等の指標に連動する投資信託を意味します。実は我が国におけるETFの市場はそれほど大きくはありません、野村資本市場研究所の推定によれば2016年2月末で14.5兆円程度です。


ETF市場14.5兆円のうち日銀が約6兆円を購入するという当事の追加緩和は一見すると大きな額のように見えました。しかし、実際にはそうでありせんでした。

日銀の使命は、日銀法に定められている通り「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展」に努めることです。言うまでもなくそのETF購入も国民経済の健全な発展のために行うのであって、ETF市場を活性化することにはありません。ETF購入は、日銀が株式市場全体に資金を供給することで、日本経済全体の活性化を図るものです。

しかし、東証一部上場企業の株だけでも時価総額は約500兆円前後(昨年7月末)あり、日銀が購入する6兆円はそれに比べて少額にすぎるといえます。つまり、当事の追加緩和は、2014年4月の消費増税以後、停滞が続く日本経済を回復させるにはまったく力不足であると言わざるをえないものでした。

さらに、政策決定会合後の記者会見で黒田東彦総裁は「英国のEU離脱問題や新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている。日本銀行は、こうした不確実性が企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止する」ことが必要と述べており、その認識は間違いではなかったと思います。

日銀黒田総裁
しかし、黒田総裁が「わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」と述べた部分、さらに「その後は、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、潜在成長率を上回る成長を続け、基調として緩やかに拡大していく」の部分には大きく首を傾げざるを得ませんでした。

現実には2014年4月の消費増税以後、日本経済は民間需要が低迷し、黒田総裁が述べるような「前向きの循環メカニズム」が機能しているようには到底見えませんでした、どうしてあのような認識だったのでしょうか。

2013年4月に現在の日銀執行部が量的・質的緩和を始めて、すでに4年以上が経過しました。しかし、消費者物価指数でみたインフレ率(前年同月比)はブログ冒頭のグラフをご覧いただいてもおわかりなる通り、2%にはほど遠いです。

昨年からすでに失業率が下がらず、その一方で賃金やインフレ率も高まらならい状況が続いています。日銀は、このような状況を、奇妙な景況感でごまかすことなく、国内の景気が低迷していることを直視すべきです。

そして、より思い切った量的追加緩和策を検討し、次回の政策決定会合で実行に移すべきです。

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2017年7月26日水曜日

民進党、崩壊前夜の様相 桜井充参院議員「離党を含め考える」 相次ぐ執行部批判、離党予備軍に動きも―【私の論評】民進党は、自らの仕事の本質は何かを再定義せよ(゚д゚)!



民進党の蓮舫代表は、野田佳彦幹事長が東京都議選の敗北の責任を取って辞任することを受け、党役員人事に着手した。人心一新で求心力を回復したい考えだが、党勢低迷への反省が足りないとして代表辞任を求める声は根強い。離党や解党を模索する議員もおり、党崩壊の危機さえ漂う。

 「仙台市長選は、党の執行部が頑張ったという結果と違う。すみませんが『応援に入りたい』といわれたのもお断りした」

 民進党の桜井充参院議員=宮城選挙区=は25日の両院議員懇談会で、与野党対決の構図となった23日の仙台市長選で支援した新人候補の勝利に謝意を示しながらも、蓮舫執行部の求心力のなさを痛烈に批判した。

 桜井氏は発言後に両院懇を中座し、「都議選の総括文書を読む限り、全然反省は見えない」と記者団に対しても執行部批判を繰り返した。「(離党を含めて)仲間とこれからいろいろ考えたい」とも語った。

 離党届を準備する横山博幸衆院議員も両院懇後、「(離党は)最終的には個人判断だから、1日、2日よく考える」と述べた。

 両院懇では「蓮舫執行部は『新世代の民進党』というイメージはなく、旧世代の民主党という形だ」(宮崎岳志衆院議員)など党運営への批判が相次いだ。

 蓮舫氏は両院懇の最後に「勝てる政党にして政権交代を実現したい」と結束を呼び掛けたが、最大の「後見役」である野田氏を失う痛手は大きい。原口一博元総務相はさっそく「野田氏だけが辞めて済む話なのか」と牽制した。

 国会で内閣支持率が急落する安倍晋三政権を学校法人「加計学園」問題などで厳しく追及したところで、党の内紛が続けば反転攻勢は遠のくばかり。党の再生どころか、組織が溶解する危機さえある。

【私の論評】民進党は、自らの仕事の本質は何かを再定義せよ(゚д゚)!

民進党では、4月に憲法改正問題で細野豪志氏が代表代行を辞任したのに続き、6月7日、役員室長の柿沢未途衆院議員が辞表を提出しました。理由は、柿沢氏の妻である現職都議の幸絵氏が離党表明したためです。

前回の代表選で蓮舫氏を担いだ主流派から、離反が相次いでいます。

民進党・蓮舫代表の側近である柿沢未途氏が、党の役員室長の辞表提出後、 相次ぐ党幹部の辞任に、テレビ東京の取材で、蓮舫代表が周囲にこう漏らしたといいます。「もう限界だ…代表の仕事はもう飽きたよ」。

「もう限界」と漏らしつつも「飽きた」という表現を使うところがいやらしいです。あくまで代表としての実力不足が離党者の続出を生んだのに、その責任を回避するかのように「飽きた」という言葉を使っています。

蓮舫代表については森友・加計、日報問題と安倍政権の揚げ足取りに全力を尽くし、国民のための提案ができていない点をこのブログでも批判してきました。さらに個人的な二重国籍問題も炎上し、解決が図られないまま有耶無耶にされたっきりです。

柿沢未途氏はただの民進党議員ではありませんでした。蓮舫代表の側近だった人です。


身近な人間が党を離れるということは代表を見限ったということです。これまで信頼して重要なポジションを任せてきたのに窮地に陥っている状態で辞められたのです。蓮舫代表の精神面が追い詰められるのも当然といえば当然でした。

柿沢未途氏は言葉少なくも謝罪の意を表していました。色々な関係者に対しての謝罪なのでしょう。

朝日新聞には、以下のような内容の記事もありました。
「どうせ民進党はなくなる」幹事長辞任…内部にも解党論
辞意を表明した野田幹事長
 民進党の野田佳彦幹事長が自らの辞任を表明した。党内の反対論を押し切って幹事長に起用した蓮舫代表にとって大きな痛手だ。野田氏周辺は「外からでも(蓮舫氏を)支えられる」と話すものの、党勢回復の道筋はなお見えず、解党論がくすぶる党内ではリスクを抱えた再出発となる。
 民進党本部であった25日の両院議員懇談会。野田氏は「多くの皆さんから党のガバナンスの問題を指摘された。ガバナンスは幹事長の責任だ」などと述べた。

 東京都議選直後の3日の記者会見では、早々と続投の意向を表明。心配する側近議員から「辞任したほうがいい」と促されても、「蓮舫体制を支えるにはここで辞めるわけにはいかない」と明言していた。

 一転したのは、11~18日の都議選総括の会議。執行部刷新を求める声が相次ぎ、蓮舫氏の「二重国籍」問題も再燃。解党論をぶち上げた議員に野田氏が反論すると、「幹事長失格だ」と面罵された。
民進党の支持率を低迷させまくった蓮舫代表は結局何の成果も出すことができませんでした。組織の崩壊は内部から始まります。最も内情を知る者が辞め始めた民進党の瓦解はもはや止められないようです。最近では、自民党の支持率の低下ばかりがクローズアップさますが、民進党の低下も著しいです。


それにしても、なぜこのようなことになったのでしょうか。それは、結局のところ民進党内では、誰が正しい、誰が間違いという不毛な議論ばかりが行われているからです。

それは、党内部の問題だけではなく、国会運営にも如実に現れています。民進党の国会ではの活動は、安倍政権や安倍総理個人を攻撃するものです。

まさに「安倍政権がー」「安倍総理がー」というものがほとんどです。何が正しい、何が間違いという観点はなおざりにされ、この論点ばかりで、国会で質問をするというか、糾弾ばかり繰り返しています。

彼らは、こうした体質が染み付いてしまい、習い性となり、党内でもそのような論議ばかりするようです。やれ、蓮舫代表が正しい、誰が間違い、誰が正しいという、不毛な論議の落とし穴に嵌っているのです。これでは、正しい意思決定などできるはずがありません。

意思決定においては何が正しいかを考えなければならないです。そうして、どのような意思決定にも、相手や制約があるからこそ、ある程度の妥協はやむを得ないです。しかし、やがては妥協が必要になるからこそ、最初から誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならないのです。

中途半端に頭の良い人、しかも責任感のある人は、せっかくの意思決定も実行されなければ意味がないと思います。そのため、最初から落としどころとしての妥協を考えます。

しかし、妥協には2つの種類があるということを知るべきなのです。1つは古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」、1つはソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」との認識に基づくものです。前者では半分は必要条件を満足させます。パンの目的は食用であり、半切れのパンは食用となります。半分の赤ん坊では妥協にもなりません。

半分のパンは食用になるが半分の赤ん坊では妥協にもならない
何が受け入れられやすいか、何が反対を招くから触れるべきでないかを心配することは無益であって、時間の無駄です。心配したことは起こらず、予想しなかった困難や反対が突然ほとんど対処しがたい障害となって現れることになります。

何が受け入れられやすいかからスタートしても得るところはありません。それどころか、妥協の過程において大切なことを犠牲にし、正しい答えはもちろん、成果に結びつく可能性のある答を得る望みさえ失うのです。そうして、八方塞がりになるのです。

政治の世界での意思決定のほとんどは妥協の産物です。しかし、この妥協が曲者です。妥協するにも正しい妥協と、間違った妥協があることは上ですでに述べました。民進党は、間違った妥協を繰り返し、結局多数の半分の赤ん坊を得るはめに至り、失敗を繰り返しているのです。この落とし穴から抜け出さない限り、民進党は立ち直ることはできません。

たとえば、蓮舫代表が辞任するというのも妥協です。しかし、たとえ蓮舫代表が辞任したとしても、それだけで民進党の党勢が回復するようなことはありません。民進党の体質の何かを変えなければならないはずです。そのこともせずに、蓮舫氏がただ辞任したとしても何も変わりありません。

そもそも、民進党はご存知のように、バラバラです。これをまず解消しなければならないです。あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠です。

無論、「事業=ビジネス」というと、民間企業のことであり、政党などの組織とは関係ないと思われてしまうかもしれません。しかし、それは違います。特に米国では、政治のせかいでもビジネスという言葉を使いますし、学校や、非営利企業などでも用いられます。

要するに、遊びではなく、仕事という意味と考えるべきです。民進党は、自分たちの仕事は何か。何であるべきなのか」を自問して定義すべきなのです。

これは、当たり前のように見えても、実際にやってみるとそうではないし、非常に困難だし、時間もかかることがわかると思います。

しかし、これを行わない限り、民進党はバラバラのまま瓦解するしかありません。今の民進党は、このような本質に取り組まず、不毛な論議を繰り返し、半分の赤ん坊という妥協にもならない妥協を繰り返しているだけです。今のままだと、社民党のような政党になるのは目に見えています。

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2017年7月25日火曜日

【書評】『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか? ──“カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター』―【私の論評】霊性の息づく国日本ならではのキティちゃん(゚д゚)!

【書評】『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか? ──“カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター』


 本書は、ハワイ大学人類学部教授の日系女性人類学者が、ハローキティがいかにして世界に広がり、どのように受容されていったかを、足かけ12年にわたって、日米のサンリオ関係者、アメリカにおけるキティファン、批評家などへのインタビューと文献の調査によって解き明かそうとした大著。

著書のクリスチャン・ヤノ氏
 著者は〈「カワイイ」を体現した物品や図像が、日本から世界各地に国境を越えて広まっていく現象〉を〈ピンクのグローバリゼーション〉と名付け、キティをその先頭走者と位置付けている。
レディー・ガガの「キティちゃん」の誕生日の時の衣装
 レディー・ガガなどのセレブがキティを好んでいることはよく知られているが、その一方、アメリカでは、キティは「従順でおとなしい」というアジア系女性のステロタイプなイメージの権化と捉えられ、それゆえに他ならぬアジア系女性のフェミニストから憎しみの対象となっているという。そうかと思うと、非西洋世界から侵入してきたグローバリゼーションへの警戒感からか、一部のキリスト教右派からは「ジャップの悪魔的な狂信教」などと糾弾されている。

 逆に、パンク、アングラ、ゲイ、レズビアンなどのマイノリティにとって、反逆や解放の象徴になっている。本書にはキティを模ったプラカードを掲げてパレードをするアジア系ゲイ団体の写真も掲載されている。

Houston Gay Pride Parade 2009
 キティは、西洋が非西洋を支配するという権力構造に抗って西洋に浸透したキャラクターと捉えられ、反逆や解放のシンボルになったのだ。ちなみに、アメリカのシンボルであるミッキーマウスは決して反逆、解放のシンボルにはならないという。

 日本人の知らないさまざまなキティ現象が具体的に紹介されており、非常に興味深い。

【私の論評】霊性の息づく国日本ならではのキティちゃん(゚д゚)!

ご存じのように「KAWAii(カワイイ)」は今ではTSUNAMI(津波)同様、世界で通じる日本語の一つです。2012~13年頃から、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅ、BABYMETALなどのアーティストが海外進出したことも、日本発の「KAWAii文化」の広がりを後押しました。しかしその元祖的な存在はと言えば、70年代から世界進出を果たしていたサンリオの大人気キャラクター、ハローキティなのです。



ではいったい、なぜハローキティは世界で受け入れられたのか? そして、キティを軸とした「KAWAii文化」から見えてくる日本とは、どんな国なのか? そんな考察を外国人視点から学んでみたいという人にオススメしたいのが、この書籍です。

日系人のハワイ大学人類学部教授で人類学博士という著者のヤノ氏は、1998年から2010年までの12年をかけてキティの調査研究を行い、その成果を約500頁の大作にまとめたのが本書です。

そして著者は、キティと「KAWAii文化」を人類学というアカデミズムの見地から分析することで浮かび上がる日本のキャラクター文化が、日本国内のみならず、世界規模で担う経済的・精神的役割を解明しようと試みています。

そんな本書には、キティを取り囲む様々な人たちが登場する。本書冒頭には、日本のサンリオ本社から、キティの3代目デザイナーである山口裕子氏がインタビューに答えています。キティと言えば、口がないのが特徴ですが、その理由を皆さんはご存知でしょうか。

3代目デザイナーである山口裕子氏
山口 キティを眺める人が、そこに自分の感情を映して読み取れるようにするためです。(中略)皆さんが幸せならキティも幸せそうに見えるし、悲しいときはキティも悲しげです。こうした心理的メカニズムのことを踏まえて、キティにはあえてどんな感情も面に出さないようにしました。

本書ではこうしたサンリオの企業戦略も詳細に分析されますが、多くのページは主に米国在住の成人したキティファン(キティファンを公言するレディ・ガガのエピソードなども登場)およびアンチ派への取材で構成されています。

中でもユニークな現象だと感じたのは、米国では、LGBT(性的マイノリティ)団体やパンクロック・アーティストたちが、自分たちのステイタスを代弁するアイコンとして、キティを活用しているというレポートです。

こうしたキティに対する賛否両論の取材を通して、著者は自身の造語である「ピンクのグローバリゼーション」(ピンク色に象徴される日本発「KAWA ii文化」が世界に広がっている現象)の本質を浮き彫りにしていきます。

赤のキティちやんビキニでご満悦のヘイデン・パネッティーア1
そして最後の「キティが生まれた国」と題された第8章では、企業から警察、首相、政府機関まで、すべてがマスコットキャラクターを持つ日本のキャラクター文化の分析や、全国の土産物店で活躍するキティを通して見た日本の贈答文化などへも言及され、「KAWA ii文化」の背後にある日本人の精神などが考察されています。

そんなハローキティことキティ・ホワイト(ロンドン生まれ)は、2014年11月1日に40歳の誕生日を迎えました。これを祝して米国カリフォルニア州の全米日系人博物館では、世界最大規模のハローキティ展覧会「ハロー!キティのスーパーキュートな世界への体験」(2014年10月11日~2015年5月31日)が開催され、この展覧会を取りまとめた学芸員が本書著者のヤノ氏でした。

ヤノ氏はこの展覧会の準備中、サンリオ本社からのある訂正依頼に驚愕する。それは「キティは猫ではなく、人間の女の子です」というものだった。著者がこの事実を知らされたのは、本書執筆後のことです。そして、このことの顛末に関しては、本書あとがきで訳者が詳細に記しているので、興味のある方はぜひ、そちらもしっかりと読んでほしいです。

本書を読むと、キティのプロフィールがしっかりと調べあげられ、記されているにもかかわらず、それでも著者は「キティは猫」と信じて本書の執筆にあたっていたようです。もっとも、キティが「猫か人間か」ということは、世界中のファンにも、そして本書の分析にも大きな影響を与えていないことも事実です。「眺める人が自由に創造できるアイコン」それがキティであり、世界を魅了するその秘密なのですから。

赤のキティちやんビキニでご満悦のヘイデン・パネッティーア2

ハローキティのキャラクターとしての開発は1974年で、公式にはこの年が誕生年になっていますが、初号グッズの販売は1975年3月です。最初のグッズはビニール製のがま口「プチパース」でした(当時の定価は240円)。

ハローキティの最初のグッズは「プチパース」
ちなみに、絵画やイラストは「著作物」ですが小物にあしらう図案は「意匠」といいます。コンテンツとデザインの違いです。この違いは19世紀後半のホームズの時代までさかのぼります。国際条約でこれらに線が引かれたのです。

西洋人が自分たちの知財利権を整備するために恣意的にに線を引いたのです。これは、中東に勝手に国境線を引いて「ここからはイギリス、ここからはフランス、ここからはベルギーの領土」等と定めていって、あとで問題が複雑化したのと同じ時代精神によるものです。

西洋人が自分たちの勝手で引いた線を跳び越えていく。「デザイン」を出自としながら「コンテンツ」と読み替えられることで「キャラクター」に進化したのがキティでした。

ミッキーマウスが「コンテンツ」出自のキャラクターだったのに対し、キティは「デザイン」出自のキャラクターでした。前者はコンテンツから商品展開してキャラクターとなったのですが後者は商品展開からキャラクターになりました。

これは、まさに越境のシンボルです。アジア系でゲイであるマイノリティな人々が、自分たちの存在をアピールするためにキティを掲げ、あっという間にパレードの主役になってみせたのも「越境」によるものです。キティの越境パワーがこんなところで全開したのです。

ミッキーとのもうひとつの違いは先にも掲載したように、口がないことです。自己主張する部位がもとからないので、「キャラクター」でありつつも「デザイン」に留まり続けるのです。つまりどのような解釈も、どのような感情移入も許容してしまうのです。

この、どのような解釈もどのような感情移入も許してしまうというところが、いかにも人的であり、他国には真似出来ないところです。

私にはハローキティーは、何やら、日本人の八百万の神を受け入れる精神を具現しているような気がします。

日本人は、昔から人はもとより万物に霊がやどるものとして生きてきました。そうして、それらを神(deity)として、多くの霊を受け入れてきました。

ハローキティーは、現在でも、連綿として霊性が息づく日本でないと生まれなかったのではないかと思います。

日本が霊性の国であることは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事の、リンクを以下に掲載します。
「中韓」とは異質な日本人の「精神世界」…仏作家は「21世紀は霊性の時代。日本は神話が生きる唯一の国」と予言した―【私の論評】日本は特異な国だが、その特異さが本当に世界の人々に認められ理解されたとき世界は変る。いや、変わらざるをえない(゚д゚)!
式年遷宮「遷御の儀」で現正殿から新正殿に向かう渡御行列。
伊勢神宮は日本人と心のふるさと、未来への道しるべだ
=平成25年10月2日夜、三重県伊勢市の伊勢神宮

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、日本は霊性の国であることを掲載しました。以下に結論部分から一部を引用します。
このように、神話が現代なお生きているのが日本であり、日本それ自体が、神話そのものの国で、他国の影響を吸収し切って、連綿たる一個の超越性を保つ国が日本であり、霊性の根源に万世一系の天皇がある国が日本なのです。そうして、マルローが指摘したかどうかは、わかりませんが、日本では、過去が現在に現在が未来につながっているのです。そうなのです。霊的に時間を超越してつながっているのです。私たちの霊は、この悠久の流れにつながっているのです。こんなことは、当然であり、だからこそ、マルローも指摘しなかったのかもしれません。 
私たち日本人は、このような国日本に誇りを持ち、自信を持ち、世界に日本の素晴らしさを伝えていくべきです。日本のやり方が、世界伝わりそれが理解されれば、世界は変わります。
この結論に付け加えると、外国においてもかつてシャーマニズムやアニミズムという形式で、霊を重んじる気風があったにもかかわらず、宗教の成立とともに、これをほとんど捨て去ったにもかかわらず、日本ではこれを昇華し現代にまでそれを連綿と受け継いでいるという特異な点があります。

この霊性を重んじるという気風があるからこそ、八百万の神を受け入れ、日本では大きな宗教対立もなく現在に至っているのです。

この精神の宿る日本だからこそ、キティちゃんのようなキャラクターができたと私は考えているのです。

そうして、私はこのブログの記事でも述べたように、日本は特異な国ですが、その特異さが本当に世界の人々に認められ理解されたとき世界は変ると思っています。

世界が日本のやり方を見習えば、宗教紛争はかなり減ると思います。そうして、私は、世界にこれを理解してもらうことは、かなり困難なことであると思ったのですが、良く考えてみると、キティちゃんの「どのような解釈も、どのような感情移入も許容してしまう」というところが、まさに霊性の世界に入るきっかけともなるのではないかと思うのです。

だからこそ、マイノリティーの人々も「眺める人が自由に創造できるアイコン」としてのキティちゃんを自分たちのステイタスを代弁するアイコンとして活用しているのでしょう。

そうして、ブログ冒頭の記事では、このアイコンを反逆や解放の象徴としているとしているようですが、私はこの解釈は違うと思います。彼らがアイコンとしてキティちゃんを用いるのは、やはり日本のようにすべてを受け入れるという包容のシンボルとしているのだと思います。自分たちも、一般社会から受け入れられたいし、一般の人たちのことも自分たちの中に受け入れたいということを表象しているのだと思います。

そうして、西欧ではシャーマニズムやアニムズムは宗教と対立する概念であり、宗教はより優れて高尚なものであり、シャーマニズムやアニミズムは、野蛮で未熟なものであるという考えがあります。

だからこそ、西欧の一部のキリスト教右派からは「ジャップの悪魔的な狂信教」などと糾弾されているのです。

しかし、キティちゃんのことが理解されれば、本当に世界は変わっていくかもしれません。キティちゃんだけでは、それは無理なのかもしれませんが、キティちゃんを含めた、様々な方面でキティちゃん的なものが、日本から海外に越境すれば、いずれ日本の霊性の気風が息づく社会の本質も理解され、世界も変わっていくのではないかと思います。

そうして、それを実行するのは、そうです私達全員です。特に、若い世代の人々です。

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2017年7月24日月曜日

稲田問題のリーク源から、安倍内閣「倒閣運動」の深刻度が見えてくる―【私の論評】森・加計・日報問題の背後に財務省(゚д゚)!

稲田問題のリーク源から、安倍内閣「倒閣運動」の深刻度が見えてくる

稲田防衛大臣
   面白い資料が出てきた

森友学園問題、加計学園問題については、本コラムでそれぞれの問題の本質を明らかにしてきた。

森友学園問題では、当初の段階で公開入札手続きをとらなかったという近畿財務局のチョンボ(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51362)であり、加計学園問題では、50年以上獣医学部の新設を拒否してきた文科省告示の存在とそれを巡る既得権派と規制緩和派の争いである(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52245)、というものだ。

その問題本質の理解を妨げたのが、役所における公文書管理である。筆者にとっては、各種資料から、森友学園問題、加計学園問題について結論を出しているが、一般からみてそれらが分かりにくいのは事実だ。

森友学園問題では、「森友学園側の不正補助金授受」という形で事件化されて、ことが終わろうとしている。もちろん、この問題についてももろもろ論点はあるのだが、なにしろ「財務省の文書は破棄した」という言い方に終始したのは、政府への信頼を大きく損ねただろう。

実際、筆者は森友学園問題の構図を探るためにいろいろと資料をさがしたのだが、結局、鴻池議員の事務所のメモ(これは、各種資料と照らし合わせても信憑性が高いものである)に頼らざるを得なかった。本来であれば、財務省に管理されているしかるべき公文書をみれば直ぐわかることなのに、それがないゆえに解明に難渋した。

一方、加計学園問題では、その点かなり楽だった、当事者である文科省と内閣府双方の合意済みの特区諮問会議、ワーキンググループの議事録が残されており、それらと前川氏の記者会見や文科省からリークされたメモが齟齬していたからだ。筆者が本コラムで書いてきた問題の本質は、10日の閉会中審査での加戸守行前愛媛県知事の国会証言、14日に行われた京都産業大の記者会見で、結局明らかになった。

その後、週刊誌が、昨年11月17日、山本幸三行革大臣は蔵内勇夫日本獣医師会会長らと面談した際、「新設校は加計学園で決定した」という、抵抗勢力であった獣医師会側からのリークメモを報じた(ただし、これについて、蔵内氏自身が、その面談の際には、京都産業大学の名前も出ていたと、山本大臣に軍配を上げ、週刊誌報道を否定した→https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170720-00000004-tncv-l40)。

いずれにしても、加計学園問題は、森友学園問題に比べて公開されている議事録や資料が多いので、その解明は難しくなかった。

筆者は、加計問題でのいわゆる「石破4条件」について、文科省の挙証責任を指摘してきた(5月29日付け本コラム http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51868)。しかし、「石破4条件の挙証責任は文科省にはない」という。実際、前川喜平・前文科事務次官ほか、文科省関係者はそう主張してきた。

規制官庁側に挙証責任があるというのは、本コラムで書いたように役所の常識であるし、閣議決定された特区基本方針にも書かれている、にもかかわらずだ。

それについて面白い資料が見つかった。2005年7月12日の規制改革会議の議事録だ(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/old/minutes/wg/2005/0712/summary050712_01.pdf)。そこには、課長時代の前川氏が登場している。ご一読いただければ分かるが、その当時から前川氏は「挙証責任」が理解できておらず、草刈隆郎規制改革会議議長から、規制改革会議への出入りを禁止されていたのだ。このような非常識な役人が次官になるというのが、文科省の最大の問題点だろう。

さて、前置きが長くなったが、今回は稲田防衛大臣の諸々の問題について解説を加えたい。

   支持率低下の理由は「女性」にアリ

まずは各種報道から時系列を整理しておこう。

昨年7月、国連平和維持活動(PKO)をしている南スーダンで政府軍と反政府軍の間で「戦闘」があった。

9月30日、フリージャーナリストが防衛省に、PKO派遣されている部隊の「日報」開示を請求

12月2日、「日報」の情報開示請求に対して、防衛省は「日報はすでに廃棄し存在しない」とし不開示を決定

12月16日、稲田防衛大臣が再調査を指示

12月26日、電子データが統合幕僚監部に存在

今年1月27日、稲田防衛大臣に対し電子データが統合幕僚監部存在していたことを報告

2月7日、日報公開

2月15日、《省内会議 陸上幕僚監部で電子データとして保管、保管データは公表しない方針》(?)

3月16日、衆院安全保障委員会において、陸上幕僚監部で日報が保管されていた疑惑に対して、稲田防衛大臣が「報告はされなかった」と答弁

3月17日、防衛省防衛監察本部による特別防衛監察が設置され、解明が進められることに

まず、国民との関係でみれば、日報自体は2月7日に公開されているので、大きな実害はない。どこの部署で保管されていたかどうかが議論になっており、これは部内では問題であるが、国民との関係では些細な問題である。しかも、その後、南スーダンからPKO部隊は撤収されているので、この点でも、安全保障政策上の問題はまずない。

もっとも、防衛省の部内問題であるとはいえ、稲田防衛大臣が国会で「虚偽答弁」をしていたのであれば、それは問題である。それが今クローズアップされているのは、森友学園問題で、弁護士時代の活動についての国会発言が訂正されたり、先の都議選での自衛隊に関する不適切な失言があったからだ。

特に、都議選での失言(「防衛省、自衛隊としても(自民党候補の応援を)お願いしたい」と発言したもの)は弁解の余地はないくらい酷いものだ。筆者はたまたま失言が行われた選挙区の住民であったが、この失言と隣接地区選出の豊田真由子議員の暴言によって、自民党への大きな批判が起こるのを身近に感じた。

なお、2カ月前までの安倍政権の高い支持率には、小泉純一郎政権以降と比べて、いくつかの特徴があった。

年代別でみると、他の政権では、一般的に高齢世代ほど支持率が高い傾向があったが、安倍政権は逆に若い世代ほど支持率が高かった。男女別でみると、他の政権では男女で支持率の差は少ないが、安倍政権は男性の支持率が高かった。第2次、第3次安倍政権は、10年前の第1次安倍政権と比べても、世代別政権支持率と男女別政権支持率は異なっている。

最近になって支持率が急落した要因は、女性の支持率がさらに下がったことが大きい。強引な国会運営に加えて、豊田真由子議員の暴言、稲田朋美防衛大臣の失言も背景にあると筆者はみている。

豊田氏の暴言は本当にひどいものだった。これで高齢世代の男性の支持も大きく失ったはずだ。筆者もあの発言がテレビで流れるたびに腹が立ったものだ。

また、稲田防衛大臣の失言もひどかった。ある女性芸能関係者は、ワイドショーのなかで「神妙になるべき会見で、稲田防衛大臣のつけまつげはその場にふさわしくない」と指摘していた。こうした点に女性は敏感である。

   一種の「クーデター」だったのか

話を稲田防衛大臣の国会における虚偽答弁に戻すと、国民への開示や安全保障政策上の問題というより、議員本人の信頼の問題だろう。ただし、これを文書管理の観点から白黒つけるのは難しい。公文書があったとしても、開示するのは難しいからだ。

もしかすると、稲田防衛大臣のいうとおり、大臣は日報問題について防衛省から報告を受けていなかった可能性もある。たしかに、2月7日には日報が公開されていることから、稲田防衛大臣には隠蔽するインセンティブはない。しかしながら、これほどまで防衛省からのリークがあること自体が、シビリアンコントロールの観点から考えても異常なことだと言わざるを得ない。

筆者の役人時代の感覚からいえば、「軍隊組織」に近いほど上から下までの統率が取れているものだ。その代表格は防衛省、警察である。その意味からいえば、森友学園では財務省から一切情報が出ないで、加計学園問題では文科省からのリークが出たのは、想定内の話だ(文科省の方が、より軍隊組織からは遠いという意味だ)。

もちろん、防衛省からも自己組織に有利なリークが行われることはあるが、今回のような防衛大臣を貶めるリークは聞いたことがない。これまで、防衛省は、どのような人が防衛大臣になったとしても、組織として必死に支えてきたはずだ。

一部には、特別防衛監察の結果があまりに酷く、稲田防衛大臣にまったく責任が及んでいない点から、防衛省内での一種の「クーデター」だったのではないかという意見もある。

また、一部のテレビ局が報じたが、日報問題の「監察結果の概要」が画像付きでスクープされたり、防衛大臣室でのやりとりで稲田防衛大臣が「けしからん」といった、という報道も気にかかる。

テレビのスクープ報道のキャプチャ
監察結果の画像付きスクープは、「監察結果の概要」が外部に漏れていることを示唆するし、「けしからん」が防衛大臣の口癖であることは、知っている人は知っている話だ。これは、ひょっとしたら、安倍政権の倒閣運動が、各省庁の段階ではなく、かなりの広範囲で行われている可能性も示唆しているのだ。

    もろもろぶっ飛ぶ

いずれにしても、稲田防衛大臣の下では、防衛省の組織統率が取れていないの事実であるので、仮に稲田防衛大臣が虚偽答弁をしていなくても、大臣失格であるのは間違いない。8月上旬の内閣改造を待たずに辞任する可能性もあるだろう。短期間であれば、首相が兼務するという方法もある。

さて、安倍政権の倒閣が行われた場合、経済政策にかなりの変化が起こることは、7月10日付け本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52245)で書いた。もちろん、教育の無償化を憲法改正で行うという議論もぶっ飛ぶだろう。

教育の無償化は、憲法改正なしでも立法政策として可能だという意見もあるが、その問題点は18日付け本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52319)で書いてある。

安倍首相は、教育を投資とみて教育国債を発行する考え方にも理解をしている。これは、23日に行われた日本青年会議所(JC)との会合でも明らかになっている(日経新聞「首相、教育国債「次代にツケ残さず」 無償化財源めぐり 可能性排除せず」 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK23H0B_T20C17A7000000/)。この点は、ポスト安倍といわれる政治家とは異なっていることに留意すべきである。倒閣というなら、もろもろのデメリットも考慮したうえでいうべきだろう。

こうした点も含めて、24日(月)と25日(火)の国会閉会中審査が安倍政権の支持率反転につながるのかどうか、注目したい。

【私の論評】森・加計・日報問題の背後に財務省(゚д゚)!

高橋洋一氏は、ブログ冒頭の記事で、「これは、ひょっとしたら、安倍政権の倒閣運動が、各省庁の段階ではなく、かなりの広範囲で行われている可能性も示唆しているのだ」と指摘しています。

これは、おおいにありそうなことです。何やら、今回の森友に始まり、加計で国会閉会中審査が開催され、さらに日報問題と立て続けに起こる、倒閣運動は従来にはみないスケールです。

これに対して、高橋洋一氏はこの倒閣運動が広範囲となっているその背景については掲載していません。しかし、ヒントは掲載しています。

最後のほうで、高橋洋一氏は、安倍政権の倒閣が行われた場合、経済政策にかなりの変化がおこることを指摘しています。さらには、教育無償化を憲法改正で行うという議論もぶっ飛ぶとしています。

さて、これらに関与する官庁はどこかといえば、それは無論財務省です。財務省はとにかく何が何でも、増税をしたいという立場です。

福田淳一 次期財務事務次官
ところが、今までのところ複数回にわたって、10%増税を安倍総理に阻止されてきました。そうして、このままだと永久に阻止されてしないかねないという危機感を持っていることでしょう。

そこで、財務省はこの危機を打開するために、当然のことながら安倍政権の倒閣運動に向かうという筋書きはかなり自然な成り行きです。

そうして、文科省や防衛省など単独では、とてもこのような動きはできません。しかし、財務省なら、政府の金を管理しているということで、他省庁にもにらみを利かすことができるし、他省庁が何かをしようとしても、結局予算がなければ、何もできないということで、予算を司る財務省にはなかなか頭が上がらないという現実もあります。

財務省と他の省庁との違い、特に文科省との違いについては、一昨日のこのブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
「石破4条件」の真相はこれだ!学部新設認めない「告示」の正当性示せなかった文科省―【私の論評】財務省のような粘りのない文科省の腰砕けを露呈したのが加計問題の本質(゚д゚)!
石破茂氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に文科省と財務省の違いを指摘する部分のみ引用します。
ところが、ここから文科省は猛烈なサボタージュを始めました。八田は内閣府を通じて文科省に検討状況を何度も尋ねたのですが、期限である「28年3月末」が過ぎても明確な回答はありませんでした。結局、WG会合が開催されたのは、期限の半年近く後の同年9月16日でした。 
ちなみに「需要見通し」は、「複数の微分方程式体系からなる数理モデル」です。獣医師は足りているということを文科省は微分方程式を書いて証明すれば良かったのです。しかし、これは、文系事務官僚の手に負える代物ではないです。 
しかし、何も自分たちでやらなくても、省外の誰か数学の得意な人に顧問にでもなってもらいその人にやってもらえば、それで良かったはずです。そうして、その結果を他の複数の人に検証してもらえばそれで良かったはずです。でも、彼らにはそれをしませんでした。 
本当は誰かに頼んで、やってもらったのかもしれません。しかし、いくら数理モデルにあてはめたにしても、本当に足りなければ足りないなりの結果しかでません。外部に頼んだにしても、外部の数理研究者なども嘘をつくわけにはいきません。 
そこで、文科省は諦めてしまったのでしょう。文科省はこの点においては、財務省には負けてしまうようです。財務省の場合は、このような場合でも無理をしてでも、何とか自分たちの都合の良い資料を作り上げます。 
たとえば、デフレなど景気の悪い時には、マクロ経済学的には、減税、給付金、公共工事などの積極財政をせよと教えていますが、財務省はこの教えに背いて、デフレ気味味の現状でも増税をするための根拠を何とかでっちあげています。 
そうして、増税の根拠をご説明資料にまとめて、政治家やマスコミなどに足繁くかよい説明をして、その根拠をまわりに信じ込ませ、とうとう8%増税を安倍政権に実行させてしまいました。しかし、この根拠はでっちあげだったことは、増税後の大失敗ですぐに暴露されました。 
この手口は、詳しく分析してみると、数理モデルを駆使するような高度なものではありません。良く分析するといくつもの錯誤の上に成り立っていることは確かです。たとえば、財政と税制の一体改革なるものを打ち出し、まともな医療や社会保障を受けたいのであれば、増税に甘んじなければならないなどと、多くの人の情感に訴えるものであったり、明らかな錯誤の上に成り立つものです。
財務省の嘘を暴く高橋洋一氏の番組
その手口の中心は、政府の負債だけに注目させて、資産を無視して、国の借金1000兆円であり、政府は借金塗れであるようにみせかけるというものです。また、統合政府という、日銀と政府を含めた尺度見た統合政府の財政状況なども無視です。これなど、民間企業では連結決算ということで当たり前になっていることですが、それが明るみに出れば、政府の借金など幻想に過ぎないということが国民知れてしまうで、財務省はおくびにも出しません。
財務省は、自分たちの省益を守り抜くには、ここまでやり抜くのですが、文科省にはこうした根気や、覚悟がなかったようです。さすがに、一流官庁といわれる財務省と最低といわれる文科省の違いです。(無論これでは、財務省も国民にとって良くはないのですが、目標に向かって執着心を持って、努力するという意味では財務省のほうが優れているという意味です)
この文科省に比較して、はるかに粘り腰の強い、財務省が、従来のように財務省単独で、安倍政権を手玉にとったり、場合によっては弱体化させ事実上の倒閣にもっていくことができれば、財務省の最大目標である「増税」を心おきなく実行できます。

菅官房長官と安倍総理
とにかく、安倍政権がなくなれば、その後は自民党政権であろうが、民主党政権であろうが、その他の政党や連立政権であろうとも、安倍総理とその側近以外はほとんどが増税派ですから、増税は簡単にできます。

彼らにしてみれば、10%増税など序の口で、最終的には25%増税を目指していることでしょう。しかし、このような財務省の試みに対して、安倍政権一度は8%増税で負けたものの、 増税延期を公約とした選挙で大勝して、増税を阻止したり、その後は選挙に頼ることもなく延長を一方的に決めてしまいまいました。

これでは、省是である「増税」を完璧に阻まれると認識した財務省は、最後の賭けにでたのでしょう。とにかく、安倍政権と刺し違えてでも、増税を成就させるという腹なのでしょう。

そのため、従来は主に財務省がコーディネートして、政治家や民進党などの野党、マスコミやいわゆる識者を動かし、増税キャンペーンに巻き込んていた状況から、やり方を変え、多くの省庁を巻き込むさらに広範な形で、安倍政権倒閣運動にのめり込んでいる状況なのでしょう。

高橋洋一氏としては、これを言いたかったのでしょうが、現状のところでは、確たる証拠もないので、ブログ冒頭のような記事のような書き方になったのでしょう。しかし、経済に少し詳しい人や、政局に詳しい人が読めば、おそらく私と同じ解釈になるに違いないです。

死に物狂いの財務省は、たとえ現役次官など複数の高級官僚のクビが飛んだとしても、各省庁を巻き込んで、安倍政権に挑み、何とか安倍政権をなきものにしようともくろんでいるのでしょう。

そうなると、今後も森友・加計、日報問題と同じようなことが続くものと考えられます。さて、次は何なのか、思いもかけないところから、また問題が発生するかもしれません。

現在の安倍政権は従来とは異なる「2つの武器」を手にしています。官邸(内閣官房)に「内閣人事局」を設置して各省幹部の人事権を掌握したことと、特定秘密保護法の制定です。今のところ、これを十分に使うには至っていませんが、今後は駆使することでしょう。これによって、官邸は官僚から政治力を奪い、政治主導に徹しようと考えています。

これに対して、霞が関全体が財務省をリーダーに、支配権を取り戻そうとスクラムを組んだか、組もうとしているのが現状です。

しかし、このような財務省の活動は本来許されるものではありません。そもも、財務省などの各省庁は、政府の下部機関にすぎません。会社でいえば、官邸は本部や本社のような存在です。各省庁は、財務部や総務部、あるいは小会社のような存在です。

それに、官僚は国民の信託を受けているわけではないですが、政治家は選挙によって国民の信託を受けて、政府を構成しているのです。

本部や本社が、下部組織であるはずの部や、小会社に支配されるようなことがあっはならないはずです。それでは、会社全体を統治することできません。

安倍総理も座して死を待つつもりは全くないでしょう。今後、官邸と財務省の間にはかつてなかった壮大な大バトルが始まります。この戦いに官邸が負ければ、10%増税が行われ、その他の緊縮財政が導入され、日本はまた失われた20年に突入し選挙など有名無実になり官僚支配が完璧に定着することでしょう。

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