2017年11月13日月曜日

加計学園報道、もうマスコミは「敗北」を認めた方がいい―【私の論評】現状のままでは野党もマスコミもかつてない程弱体化する(゚д゚)!

加計学園報道、もうマスコミは「敗北」を認めた方がいい

間違った指摘を繰り返すなら意味がない


経済学者 嘉悦大学教 高橋洋一


さすがに黙っていられない

文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)が、11月9日、加計学園の獣医学部新設計画に対し「可」とする答申を行った(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1398164.htm , http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/__icsFiles/afieldfile/2017/11/10/1398164_1.pdf)。

それに対して、マスコミがいろいろと報道をしているが、未だにお粗末であるから嘆かわしい。筆者は過去に何度も加計学園についての「疑惑報道」の問題点を指摘したが、本稿を改めて書いてみようと思ったのは、10日のNHKの報道(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171110/k10011219211000.html)があまりに酷かったからだ。

これを見ると、NHKは特区の役割と文科省設置審の役割がまったくわかっていないようだ。それであるのに、「文科省認可がおかしい」というトーンで報じている。

これらの報道を見ているときに思うことは、まず、マスコミは基本的なリテラシーがないということだ。役所から出す情報は、①法律・政省令・告示の公文書、②統計データ、③答申が基本である。ところがマスコミは、これらの基本情報すら読めない。これは筆者が官僚だった時代の実感でもある。

特に①と②については全滅、つまり理解できないのである。そこで、なんとか理解しようと官僚のレク(説明)を求めるのだが、こうなると官僚が記者を操作することが可能になる(いわゆる「役所ポチ」の誕生だ)。

さて、加計報道に関しては、まずメディアが①を読んでいないという致命的な欠陥が浮かんでくる。

本コラムの読者であれば、筆者が早い段階からこの問題について何度も書いてきたことをご承知だろう。その中で、一貫してマスコミは「加計学園獣医学部の設立に関しては、総理の意向があった」というが、各種の公表資料を見たうえで、「そんな意向はなかった」といってきた。

もちろん、マスコミが決定的な証拠を出せば、筆者の負けであるが、これまで週刊誌がこの問題を最初に報道してから9ヶ月程度がたっており、国会での関係者の証言などもあったが、総理の意向を証明するものはなかった。
マスコミにとっては、元文部科学省事務次官の前川喜平氏の証言だけが頼りであったが、結局前川氏も国会で明確にその「意向」を立証できず、その他の関係者は総理の意向を完全に否定していた。

筆者がなぜそうした結論に達したかは簡単だ。加計学園を特区で扱ったのは、大学学部認可の申請を行えるように告示改正をしたからだ。文科省設置審は、認可申請の後に認可審査を行うところであるのだが、NHK報道はこの点を無視しているのか、まったく言及していない。

大学学部認可というと大げさにみえるが、行政法では、「運転免許」と同じようなものである。行政の世界では、大学学部認可の申請といえば、大学が「自動車学校」に入学するような話であり、大学学部認可とは、大学に「運転免許」を与えることを意味する。その後、文科省の設置審が「可」の答申を出すことは、自動車学校において、学科・実地試験に合格することと同じである。

このたとえで、加計学園の問題の本質がわかるだろう。次ページでその本質を説明しよう。

文科省の開き直り

要するに、加計学園はもともと自動車学校へ入学する(新たな学部の申請を行う)という段階で、免許合格までは保障されたものではない。メディアはこの段階で「総理の意向があったはずだ」というのだが、そんな初期の段階で、偉い人の助けを借りるだろうか。筆者の役人の時の経験からいっても、入学の段階でわざわざ総理の意向なんて介在する余地などない。

しかも、大学学部認可は、50年以上も申請させていなかったという。これは本コラムで、認可制度の運用として、違法まがいであることを指摘してきた。たとえばある学生には自動車学校への入学をさせない、という規制であり、現実にそんなものがあれば問題になるだろう。

しかも、申請させないという規制は、法律ではなく告示という形でなされた、文科省だけの判断によるものである。

このたびの加計学園の問題では、50年以上も新学部の申請をさせないという「ゆがんだ行政」が、申請できるように「正された」だけである。

筆者がはじめて加計学園の問題を聞いたとき、認可の申請をさせるような規制緩和(告示改正)なら簡単にできると直感した。公表されている内閣府と文科省との間の議論をみれば内閣府の完勝である。だから、総理の意向なんてありえないと思ったところだ。

ところが、文科省は卑劣にも「総理の意向があった」と文科省内文書に書き、それをマスコミにリークした。それがほぼ半年前である。そのときは、安倍総理が改憲の意向を強めているという新聞記事が出た直後なので、改憲潰しに加計問題を利用するつもりかと思ったくらいだ。

そのとき、出てきたのが前川喜平氏である。筆者は、自らが手がけた天下り規制がようやく本格的に適用できた文科省の組織ぐるみの天下り斡旋問題で、その首謀者に前川氏がなっていたことを知っていた。

それが明るみに出たのが今年初めであり、前川氏は文科省天下りを組織ぐるみで行っていた責任をとって今年3月に辞任した。本来であれば懲戒免職ではないかと思い、官邸関係者に聞いたこともある。

しかも前川氏は、新国立競技場の建設をめぐっても、高額発注で問題を起こしたことがある人物だ。その段階で通常であれば役人を辞めるのだが、文科省ではなぜか生き残ってきたのは、役人の経験がある筆者から見れば不思議だった。文科省は一般に三流官庁と言われているため、人材が不足しているのだろう。

これ以上は、税金の無駄遣いでは…?

いずれにしても、マスコミが問題をみつけた当初の段階で「疑惑」と報道するのはいい。それは彼らの重要な役割でもある。しかし、最初の週刊誌報道から9か月も経っている。文科省文書のリークを朝日新聞が報じてからも半年経っている。その間、マスコミは疑惑を言い続けているが、何も新たな決定的な証拠を示していない。

もともと、これは「悪魔の証明」であり、「そんなものはない」という人に挙証責任を負わせるべきものではなく、疑惑を指摘する側のマスコミが決定的な証拠を示さないと話にならない。

疑惑と言い続けているのは、マスコミが仕事をできないことを白状しているようなものだ。普通の民間企業であれば、半年も進展のないプロジェクトであれば、もう終わりにすべきだろう。

また、これを延々追及する国会議員も情けない。もちろん、これもマスコミと同じで、決定的な証拠をつかめたのなら話は別だ。ただ、彼らもさんざん血税を使って調べたはずだろう。それでも答えを出せないものを追及するのは、税金の無駄使いでしかない。

去る10日には、毎日新聞が改めて前川氏の話を聞いて「(加計学園獣医学部)「認可すべきではない」前川氏が疑問呈す」と報じた(https://mainichi.jp/articles/20171111/k00/00m/040/101000c)が、これも酷かった。

認可すべきでない、というのなら、どうして現役の官僚の時に、そうした行動をとらなかったのか。不思議で仕方ない。前川氏については、本コラムで何度もその主張の問題点を書いてきたが、この記事の中でも致命的なものがある。

ネットでは、前川氏の「(加計学園には)博士課程もないのに先端研究ができるわけがない」という主張に対して、飯田泰之氏が「一期生が最終学年になるまで博士課程は設置できない」といったことが取り上げられていた(https://anonymous-post.com/archives/15671)。

しかし、これはやや勘違いだろう。大学院は、大学院大学と言うくらいで、学部とは独立した存在である。学部のない大学院大学もある。つまり、学部がなくても大学院は設置できるわけだ。

そうであるので、飯田氏のいう「一期生が最終学年になるまで博士課程は設置できない!」というのは、ちょっと勘違いだとは思う。大学院設置の関係文書をみても、そうした規制は筆者の見る限りない。

医学部が37年ぶりに新設され、加計学園と並んで話題になった国際医療福祉大は、昨年の17年度に学部を開設している(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1376289.htm http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/__icsFiles/afieldfile/2016/08/26/1376289_02_2.pdf)。

そして大学院は、今年の18年度大学院開設になっている(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1398164.htm http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/__icsFiles/afieldfile/2017/11/10/1398164_2.pdf)。

これを見れば、学部と大学院は同時に開設しなくてもよいことが分かる。常識的に考えても、大学は学部申請をするだけで忙しく、大学院も同時に申請することはできないだろう。しかも、昨年の国際医療福祉大医学部の時には、前川氏が事務次官であったときだ。そのとき、大学院はまだ認可していない。

それにもかかわらず、今回の加計学園で「加計学園には大学院がないから問題」ということは、自分が現役官僚時代にやったこと否定するもので、いかにも前川氏らしい、二枚舌・ダブルスタンダードであり、自分への大ブーメランとなっている。

こんな人のコメントを載せるぐらいしか「追及」の方法がないのなら、もう報道する価値はないはずである。いったいいつまでマスコミはこのことについて報道するのか、さすがにあきれてしまう。

最後に、マスコミ報道も「やり過ぎ」というレベルになれば、「根拠なく加計学園の名誉を毀損し、営業を妨害した」となりかねないのではないだろうか…という懸念を表明しておきたい。

【私の論評】現状のままでは野党もマスコミもかつてない程弱体化する(゚д゚)!

高橋洋一氏の以下の主張を私なりにもう少しわかりやすくしてみようと思います。
加計学園はもともと自動車学校へ入学する(新たな学部の申請を行う)という段階で、免許合格までは保障されたものではない。メディアはこの段階で「総理の意向があったはずだ」というのだが、そんな初期の段階で、偉い人の助けを借りるだろうか。
加計学園を受験生とします。これが、文部省大学という大学の入学試験を受けることになつたとします。この受験生は文部省大学に対して、受験の申請を行い、文部省大学が加計受験生に対して、受験票を交付しました。無論受験票を交付されたらといって、大学に即合格というわけではありません。

この受験生は、文部省大学が指定する、日付・日時に試験場におもむき、所定の試験を受けて、その後試験結果の判定を受けて合否が決定され、合格ということになれば、はじめて文部省大学に入学することができます。この段階では、文部省大学に入学できるかできないかは、受験生はもとより、文部省大学側もわかりません。(いわゆる加計問題で、大学学部認可の申請に相当する)

大学入試では受験票を交付されたからといって合格するわけではない。受験生は
大学等が指定する受験会場に所定の時間におもむき試験を受けなければならない
この段階で、この受験生は不正入試をしたと疑われ、学長と受験生は友達関係にあり、文部省大学は不正行為をしたとされ、マスコミがこれを報道し、国会議員は国会でこれを追求しました。こんなことは、あり得ないだろうと高橋洋一氏は主張しているわけです。

ただし、この段階でこの受験生が何やら不正をしていたことがはっきりとわかるような証拠があれば、にわかには信じられないとはしても、確かに不正があったとできるかもしれないですが、数ヶ月たっても何の証拠もあがってきていないのです。

そうして、その後文部省大学の、入試担当の教員(いわゆる加計問題での文部科学省の大学設置・学校法人審議会にあたる)が、11月9日、加計学園の獣医学部新設計画に対し「可」とする答申を行ったが所定の手続きにより、この受験生の合格を決定したということです。

この段階で、不正があったというのなら、まだ話は理解しやすいです。ただし、この段階ばすでに不正があったとするのも、不自然です。受験票の交付の段階で、不正ありとすでに疑われていたのですから、その後入試担当の教員らがわざわざ不正行為をすることは考えにくいです。教員らは所定の手続きにしたがって、合否を判定したと考えられます。そうて、その後不正行為をしたという証拠も無論あがっていません。

それに、この疑惑は、受験票の交付時点での疑惑が主なものであり、そもそも、マスコミも野党の政治家も最初から筋悪の追求をしていたとしか思えません。

高橋洋一氏は、さらに以下のような主張をしています。
マスコミは基本的なリテラシーがないということだ。役所から出す情報は、①法律・政省令・告示の公文書、②統計データ、③答申が基本である。ところがマスコミは、これらの基本情報すら読めない。これは筆者が官僚だった時代の実感でもある。 
特に①と②については全滅、つまり理解できないのである。そこで、なんとか理解しようと官僚のレク(説明)を求めるのだが、こうなると官僚が記者を操作することが可能になる(いわゆる「役所ポチ」の誕生だ)。
①については、特区のワーキング・グループの議事録なども、私はこのブログにも掲載し、不正行為があり得ないことを主張しましたが、 マスコミはそれすらもしていません。マスコミや野党も、②の統計もほとんど閲覧している様子は伺えませんでした。

やはり、マスコミも野党も、基本的なリテラシーに欠けているとしか思えません。これは、財務省や日銀関連の報道にも良くみられることです。マスコミは、役所の発表した資料や官僚が説明をした内容を咀嚼することもなく、そのまま報道していることがほとんでです。経済に関するまともな知見などないのでしょう。

このブログでは、マネジメントの原則から見た民進党消滅の要因を掲載したことがあります。これは、民進党に限らず、マスコミにもあてはまると思います。その記事のリンクを以下に掲載します。
リベラル勢力たちの自業自得 「反安倍なら何でもあり」では国民から見捨てられるだけ―【私の論評】マネジメントの原則から見る民進党消滅の要因(゚д゚)! 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に短くまとめます。
第1は、自分たちの使命は「政権や権力と戦うこと」と定義してしまうと、本来の使命を考えなくなってしまうことです。

これは、誰が考えてもわかります。「政権や権力と戦うこと」自体は、手段に過ぎません。「政権や権力」と戦って、相手を潰したり、あるいは弱めたりすれば、自分たちの主張が通りやすくなります。 
これは、あくまで自分たちの主張を通すための手段です。戦って、相手を潰したり、弱めた後には、自分たちは何をしたいのか、何をするのかはっきりしていなければ、全く意味がありません。 
経営学の大家であるドラッカー氏はリーダーシップと、使命について以下のように語っています。
真のリーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく、望ましいかを考え抜く。リーダーの仕事は、明快な音を出すトランペットになることである。(『プロフェッショナルの条件』)
ドラッカーは、リーダーシップとは、人を引きつける個性のことではないといいます。そのようなものは煽動的資質にすぎないとしています。まさに、「安倍政治を許さない」は、扇動的キャッチフレーズに過ぎないものです。
第2に、「アベ政治を許さない」では、まともな意思決定ができないということがあります。経営学の大家ドラッカー氏は、意思決定について以下のように述べています。
決定においては何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協が必要になるからこそ、最初から誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならない。(『経営者の条件』)
決定においては何が正しいかを考えなければならないというのは、別な方面からると、誰が正しいか、誰が間違いであるかを考えてはならないということです。

これは、誰でも理解できます。社会問題を解決したり議論するときに、「誰が正しい、誰が間違い」などと議論することは不毛な結果しか招きません。やはり、「何が正しい、何が間違い」という議論をすべきです。
第3に、民進党は、「アベ政治を許さない」という信念に凝り固まって、妥協の仕方が下手だということもあります。ドラッカーは次のようにも述べています。
頭のよい人、しかも責任感のある人は、せっかくの意思決定も実行されなければ意味がないと思う。そのため、最初から落としどころとしての妥協を考える。(『経営者の条件』)
安倍総理は、意思決定においては、最初から落とし所の妥協を考えているわけではありません。無論政治の世界には妥協はつきものなので、全く考えないということはないですが、少なくとも、野党と比較するとその度合いはかなり少ないです。

ドラッカーは、妥協について以下のように述べています。
妥協には2つの種類がある。1つは古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」、1つはソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」との認識に基づく。前者では半分は必要条件を満足させる。パンの目的は食用であり、半切れのパンは食用となる。半分の赤ん坊では妥協にもならない。(『経営者の条件』)
ソロモン王の裁きの故事に基づく絵画 「ジェームズ・ティソ作 19世紀」


この3つの要因は、そのままマスコミにも良くあてはまっていると思います。ただし、第3の項目は、さほど当てはまってはいないようにもみえます。政治の世界は、何を行うにしても妥協の産物にならざるをえないところがありますが、マスコミはビジネスであり、政治の世界ほどは妥協は少ないからです。

それにしても、ある程度は妥協は必要ですが、マスコミも妥協の仕方は下手なようです。おそらく、「加計問題」でも、正しい妥協ができないマスコミがでてくるのではないかと思います。

いくら自分たちの使命は「政権や権力と戦うこと」であり、「アベ政治を許さない」と言う揺るがない信念をもって報道にあたっても、今回の選挙でも野党はボロ負けしています。

希望の党と、立憲民主党をあわせて、130以上の議席でも獲得できれば、野党として政治にある程度大きく関与できたでしょうが、現実には105です。これでは、まともに立ち直るだけでも数年はかかるでしょう。

マスコミは良かれと思い、「加計問題」でも、野党を応援するような報道を行ったにもかかわらず、この有様です。

今後も筋悪の「加計問題」を追求し続ければ、野党にとっては良いようにもみえますが、最初から何の生産性もない問題に野党を拘泥させることになり、野党は政策も、政局も見失いますます衰退していくことになると思います。

野党がますます衰退することになれば、今のままではあれば、マスコミも衰退することになるでしょう。この場合、マスコミも妥協を行い、「加計問題」からは距離をおくなどの正しい妥協を行えばよいのでしょうが、妥協の仕方を誤れば大変なことになるでしょう。

今回は、加計問題を受験生にたとえてみましたが、この架空の受験生のようなことが本当に起こったとして、私や私の家族がこの受験生だったとしたら、マスコミが疑惑を報道しつづけるというのなら、私は確実にマスコミや野党の議員を訴えます。

これは、高橋洋一氏も指摘していますが、今までも酷かったですが、これからも酷いことをすれば、加計学園が訴訟を起こすことになりかねません。そうなれば、当然のことながら、野党の関与も調べられることになります。不正の証拠がないということになれば、有罪になる可能性は高いです。

そうなれば、野党もマスコミもかつてないほどに、弱体化することになると思います。そうして、今のところはその確率が非常に高いと思います。

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2017年11月12日日曜日

米WSJ紙、文大統領を激烈批判「信頼できる友人ではない」 韓国メディアは狂乱状態―【私の論評】「北朝鮮版ヤルタ会談」から締め出された韓国(゚д゚)!

米WSJ紙、文大統領を激烈批判「信頼できる友人ではない」 韓国メディアは狂乱状態

韓国文在寅大統領(右)との会談を終え、記者会見するトランプ米大統領
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対し、米有力紙の「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」が激烈な批判を見舞った。北朝鮮に融和的かつ、中国に擦り寄る文氏の行動について、「文氏が信頼できる友人だとは思えない」などと社説で指摘したのだ。同紙の記事を、韓国メディアは相次いで取り上げ、狂乱状態となっている。

 ドナルド・トランプ米大統領の訪韓(7~8日)について、韓国紙は社説で好意的な評価を示していた。

 《トランプ大統領初来韓、韓米同盟の新たな契機に》(朝鮮日報)

 《深い共感を得たトランプ訪韓…「力を通じて平和を守る」》(中央日報)

 だが、トランプ氏の訪韓成功との見方は、韓国側の一方的な思い込みに過ぎなかったようだ。米保守層に支持されるWSJは7日付の社説でこんな見出しを掲げた。

 《South Korea’s Bow to Beijing(韓国、中国にひざまずく)》

 米軍の最新鋭迎撃システム「THAAD(高高度防衛ミサイル)」をめぐり、中国から“報復”を受けていた韓国は最近、中国と、(1)米国のミサイル防衛システムに加入しない(2)日米韓の安全保障の協力は3カ国軍事同盟に発展しない(3)THAADを韓国に追加配備しない-ことで合意したとされる。

WSJは、こうした文氏の「媚中外交」と、北朝鮮に融和的な「従北」姿勢を徹底批判した。文氏の掲げる「バランス外交」を「中国の圧力に直面し、自国や同盟国の安全保障に関して譲歩もいとわない姿勢は、バランス外交とは程遠いものだ」とし、「文氏が取った一連の行動は、(北朝鮮の)金正恩(キム・ジョンウン)氏を包囲するための同盟関係を損なうものとなった」と指摘した。

 韓国紙は、米国側の真意を知り驚いたのか、相次いでWSJの記事を取り上げた。

 中央日報は「トランプ大統領が訪韓した際には『偉大な協力』『非常に大きな進展』などの発言が出てきたが、最近の(文氏や文政権の)行動を見ると望ましくないということだ」と分析。朝鮮日報は同紙に寄せられたネットユーザーの賛否両論を掲載した。

【私の論評】「北朝鮮版ヤルタ会談」から締め出された韓国(゚д゚)!

「握手のため右手を出した文氏をトランプ氏が無視」
とささやかれるシーン=7日、ソウルの青瓦台
韓国内で衝撃的な映像が話題を集めています。7日に開催された米韓首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がドナルド・トランプ米大統領に握手をしようと右手を差し出したところ、トランプ氏が“無視”。そのまま別の場所に移動する瞬間が捉えられています。

これに敏感に反応したのが韓国のネットユーザーでした。同国の掲示板「イルベ」では「(握手を)意図的に無視した」に始まり、「トランプ、文在寅パッシング」「ついに文在寅にキレた」ときて、とどめに「どれだけ(文氏が)嫌われてるんだよ」とてんやわんや。

ミサイル、核実験と国際社会をおびやかす北朝鮮に対して、金融支援の検討を表明するなど空気を読めない自国のトップ。国民も「無視されてやむなし」の印象なのでしょうか。この点では、韓国マスコミより、韓国民のほうが正しく状況を把握していたといえると思います。

この日の早朝文氏は、トランプ氏の最初の訪問先の米軍基地で待ち受けるサプライズを演出していました。様子を携帯電話で動画撮影していた韓国側報道官が米側にトランプ氏を撮るなと制止されました。本来、前線の将兵らと分かち合うべき時間に割り込んだ文氏一行への不信感とも読み取れます。

その場で、トランプ氏は「文氏と貿易について会談する。米国に多くの雇用が創出されること。それが私が来た一番の理由の一つだ」とぶち上げました。会談後の記者会見では「韓国は数十億ドル(数千億円)に達する米国製兵器を発注する」と成果を強調しました。

トランプ米大統領は訪韓中、盛んに韓国を持ち上げ、韓国の頭越しに日中首脳とだけ北朝鮮問題を論議する「コリア・パッシング」は「ない」と明言しました。しかし、2者会談は26分間で終了しました。通訳を除くと実質的な協議は十数分間にすぎず、初日のゴルフだけで2時間半以上を費やした安倍氏とは比ぶべくもありませんでした。

トランプ大統領は、ビジネスライクな姿勢を隠しもしませんでした。安倍晋三首相との“蜜月”との格差を図らずも浮き彫りにしました。

この傾向は前からありました。韓国政府は、北朝鮮問題で韓国だけ疎外されるという、いわゆる「コリアパッシング」の懸念は決してないと強調していました。

北朝鮮が発射した弾道ミサイルが今年日本領空を最初に通過した後、トランプ米大統領と安倍首相は二日連続通話し緊密な対応策を議論しました。

しかし、北朝鮮問題の最大の当事者ある韓国首脳の話し合いは後回しでした。今年7月に、北朝鮮がICBM発射訓練をした時も、韓米首脳間の即時通話はありませんでした。

これに対して、多くの韓国人は「コリア・パッシングではなく、文在寅・パッシングだ」と受け取ったようですが、本当にそうなのでしょうか。1950年の朝鮮戦争当時から、停戦協定には米中北は、含まれていますが、韓国は含まれていないという事実があります(実際署名はこの三国による)。

北は、当時のソ連の傀儡とみて間違いないですから、実際には米中露によってなされたものとみるべきでしょう。いずれにせよ、韓国は含まれていないとみるべきでしょう。

それにしても、その後韓国が日米韓の関係を緊密にして、北朝鮮への対峙姿勢を露わにして、旗幟を鮮明にしていれば、少なくとも今回の「北朝鮮版ヤルタ会談」に関与できたかもしれません。

トランプ大統領が8日の国会演説で「世界4大女子ゴルフ選手は皆、韓国出身だ」と韓国女子プロゴルファーの活躍を称賛すると、議場は拍手に沸きました。「奇跡」の経済発展など韓国をたたえるのに言葉を惜しまず、拍手は20回を超えました。

トランプ大統領の韓国国会での演説
演説前には、前大統領、朴槿恵被告の釈放を訴えるプラカードを持ち込もうとした議員が警備員につまみ出される一幕もありました。

国会前では、トランプ氏の訪韓に反対する団体が「韓国から出ていけ!」と叫びました。反対派はトランプ氏の行く先々でデモを計画しましたが、2万人近い警察を動員し、トランプ氏の目にとまらないよう力で押し込めたのが現実でした。これは、日本ではほとんどみられない光景でした。

韓国国会前ではトランプ大統領訪韓反対デモが開催さた
文政権を悩ませたのは親米・反米に二分した国論だけではありません。拉致被害者家族との面会を実現させ、対北圧力で一枚岩を見せつけた訪日と比べ、1泊だけの訪韓に不満を抱く韓国世論の突き上げを受けていました。

文氏の提案で、トランプ氏は8日早朝、南北軍事境界線がある板門店の非武装地帯(DMZ)のサプライズ視察を試みたのですが、トランプ大統領は悪天候で断念。先回りしていた文氏が待ちぼうけを食いました。

文氏と対北観で大きな違いを見せてきたトランプ氏は「韓国は単なる長年の同盟国以上」とのリップサービスで表向き韓国世論を安心させ、先端兵器の売りつけという実益を手に、北朝鮮問題で最大の協議相手である中国に向かったのです。

これでは、どうみてもドナルド・トランプ米大統領の訪韓(7~8日)について、韓国紙は社説で好意的な評価を示したのは間違いです。最初から、最後まで失敗であったとみるべきです。

そうして、このような報道ぶりからみれば、何に失敗したのかも理解していないようです。最大の失敗は、もう韓国は北朝鮮有事の後の新たな東アジアの秩序づくり、いわば「北朝鮮版ヤルタ会談」には実質的に参加できないということです。

「北朝鮮版ヤルタ会談」については、このブログでも紹介したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮危機「アメリカには安倍晋三が必要だ」―【私の論評】北朝鮮版「ヤルタ会談」のキーマンは安倍総理(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、「北朝鮮版ヤルタ会談」に関係している部分のみを以下に引用します。
北朝鮮問題に関しては、今年の末から、来年の前半あたりには必ず何らかの動きがあります。最悪の場合は、米国による爆撃などの武力行使があることでしょう。この場合、中国の参戦もあるかもしれません。あるいは、制裁に北朝鮮が折れて何らかの進展があるかもしれません。 
いずれになるにしても、間違いなく、来年前半あたりには必ず動きがあります。
安倍総理とトランプ大統領
その前に、11月に日米首脳会談、米中首脳会談があります。また、APECでの各国首脳会談には、ロシアも出てくるでしょう。それらの国際会議では、北朝鮮問題が話し合われるのは間違いありません。これらは、北朝鮮版「ヤルタ会談」ともいうべきものです。 
「ヤルタ会談」とは無論のこと、第二次世界大戦終了直前の当時のアメリカ合衆国イギリスソビエト連邦による首脳会談です。ソ連対日参戦国際連合の設立について協議されたほか、ドイツおよび中部・東部ヨーロッパならびに極東における米ソの利害を調整することで、大戦後の国際レジームを規定したものです。これが、後に東西冷戦の端緒ともなりました。 
こうした北朝鮮版ヤルタ会談ともいえる、会議において、安倍首相は大きな役割を果たす可能性が高まってきました。これらの会議では、北朝鮮が最終的に戦争に突入した場合と、制裁に屈した場合の両方について、協議が行われることでしょう。
「北朝鮮ヤルタ会談」では、ポスト北朝鮮有事(北朝鮮の危機が去ったあとの体制)が話し合われれることになります。

というより、日本にトランプ氏が訪問し、もうすでにその一部は話されているはずです。そうして、韓国ではトランプ氏はこの話はほとんどしなかったでしょう。だからこそ、首脳会談の時間が異常に短かったのです。

米中会談でも当然その話をしたことでしょう。さらにその後のAPECでもその話は継続されたとみて間違いありません。

このAPECでは番狂わせもありました。

ベトナム中部ダナンで開催されたアジア太平洋経済協力会議(SPEC)首脳会議に出席したプーチン露大統領とトランプ米大統領による正式な米露首脳会談が11日、見送られました。インタファクス通信によるとプーチン氏は同日、会談見送りは米露が外交文書の内容で一致しなかったことなどが背景にあったと会見で明かし、関係者を「処分する」とまで述べて強い不満を示しました。

両首脳は当初、正式会談の実施に前向きな姿勢を見せていました。会談見送りについては双方とも日程の問題などを挙げていますが、米国でロシアの米大統領選介入疑惑をめぐる捜査が進展する中、世論の反発が必至のプーチン氏との会談をトランプ氏が避けた格好です。ラブロフ露外相も10日、会談見送りの見通しを受け、米側を激しく批判していました。

一方、露大統領府によると両首脳は11日、共同声明を発表しシリア情勢での協力継続を表明しました。両首脳は、APEC首脳会議での記念撮影前に短時間協議したとみられ、その際合意したもようです。プーチン氏は必要なことは話せたとも語り、会談見送りの影響は少なかったと強調しました。

この会談でも、当然のことならが、北朝鮮情勢についても話されたと考えるのが妥当でしょう。とはいいながら、プーチン大統領としては、この重要な会談にあまり時間がさけなかったことに対して不満を表明したと考えられます。

トランプ、プーチン両大統領、歓迎夕食会で握手 APEC首脳会議
今回のトランプ大統領のアジア歴訪により「北朝鮮版ヤルタ会談」はかなり進んだものと思います。さらに、必要があれば、この会談は継続されるかもしれません。この話し合いに、北朝鮮と国境を接している中国とロシアが入るのは当然のことです。

さらに、この話し合いに朝鮮半島に海峡を挟んで接している日本と、その同盟国である米国が参加するのも当然のことです。

しかし、本来ならば韓国がこの会談において、大きな働きをすべきでした。しかし、THHADの配備では中国から不信感をいだかれ、米国側からは「媚中外交」と、北朝鮮に融和的な「従北」姿勢で不信感を抱かれ、日本に対する反日的な行動から、日本にも不信感をいだかれてしまった韓国は、当然のことながら、ロシアからも不信感を抱かれていることと思います。

最早、日米露中は、韓国を信頼していません。となると、韓国は「北朝鮮版ヤルタ会談」では完璧に排除されたとみなすべきです。そうして、もしこれからも会談があったとしても、実質的に排除されることでしょう。

結局、ポスト北朝鮮有事は、韓国にとって死活的に重要でありながらも、「北朝鮮版ヤルタ会談」から事実上締め出されたのです。

韓国は、最早自らの運命を大きく左右するかもしれない、会談に参加できないのです。しかし、これは韓国自身が招いてしまったことであり、欠局これからの新しいアジアの新秩序に全く関与することはできず、日米中露で定めた新秩序の中で生きていくしかなくなってしまったのです。

このことを文在寅も、韓国政府、国民もほとんど理解していないようです。

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2017年11月11日土曜日

中国、正恩氏排除を決断か 人民解放軍が対北参戦の可能性も…軍事ジャーナリスト「黙ってみているはずがない」―【私の論評】中国の北朝鮮への侵攻は新たな火種を生むことに(゚д゚)!


人民大会堂で開かれた歓迎式典に臨んだトランプ大統領(右)と習主席=9日、北京
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 ドナルド・トランプ米大統領は9日、就任後初めて訪問した中国・北京で、習近平国家主席と首脳会談を開いた。「貿易不均衡の解消」を迫るとともに、国際社会の警告を無視して「核・ミサイル開発」を強行する金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮への対応を協議した。朝鮮半島情勢が緊迫するなか、公式発表されない水面下交渉では「半島有事の対応」と「ポスト金正恩」が話し合われたとされる。東アジアや朝鮮半島の主導権をめぐり、中国が、米国の武力行使を黙認するだけでなく、「北朝鮮攻撃に参戦する可能性もある」と分析する識者もいる。

 世界が注視する米中首脳会談に先立ち、習氏は9日、北京の人民大会堂でトランプ氏の歓迎式典を開いた。両首脳の表情は険しかった。

 トランプ氏は前日午後、大統領専用機「エアフォースワン」で北京に入った。到着前、自身のツイッターに「習主席と会うのが、とても楽しみだ!」と書き込んだ。習氏との「交渉開始」への決意表明にも思えた。

 習氏は、トランプ夫妻をもてなすため、世界文化遺産の故宮を貸し切り、夕食会や京劇鑑賞を催すなど、異例の厚遇ぶりをみせた。ぎくしゃくする米中関係を踏まえて、両首脳の神経戦は始まっているようだった。

 首脳会談ではまず、「貿易不均衡の解消」が焦点だ。

 トランプ氏は1日、ホワイトハウスでの閣議で「中国に対する貿易赤字は巨額でひどい。金額を言うのも恥ずかしい」「米国は貿易で食い物にされているが、すぐに変わるだろう」と語った。

 中国の貿易統計によると、10月の対米黒字は266億2000万ドル(約3兆261億円)で、9月は280億8000万ドル(約3兆1920億円)。米国としては毎月、莫大(ばくだい)な貿易赤字が積み上がっている。

ロイター通信によると、トランプ氏の訪中に合わせて8日、米中間で90億ドル(約1兆円)の商談がまとまったというが、すずめの涙だ。

 タフ・ネゴシエーターであるトランプ氏は、さらに習氏に対して「貿易不均衡の解消」を迫ることになる。

 そして、最大の懸案が「北朝鮮問題への対応」だ。

 トランプ氏は8日午前、韓国国会での演説で、北朝鮮について、「カルトに支配された国だ。(正恩氏の祖父)金日成(キム・イルソン)主席が思い描いたような楽園ではなく地獄だ」「国際社会は、ならず者国家の核の脅威を容認できない」と断言した。

 そのうえで、対北石油供給の制限を柱とする国連安全保障理事会決議の全面履行を中国に要求し、「言い訳をするときは終わった」「脅威に立ち向かうのは責任であり、義務だ」と語った。これから乗り込む中国への「警告」にも聞こえた。

 これに対し、中国外務省の華春瑩副報道局長は8日の記者会見で「中国は真剣に国際的な義務を履行している」と反論するなど、米中両国は「圧力か、対話か」で対立しているように思えるが、違う見方もある。

 日米情報当局関係者は「トランプ氏は4月の米中首脳会談で、北朝鮮の『核・ミサイル』完全放棄について、習氏に100日間の猶予を与えた。ところが、習氏は“宿題”をこなせなかった。米中両国は8月、事実上の往復書簡で『暗黙の了解』をしている」と語った。

 往復書簡はまず、中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」が8月10日の社説で、「北朝鮮が先に攻撃し米国が報復した場合、中国は中立を保つ」「ただし、米国が、北朝鮮の体制転換や朝鮮半島の政治情勢変更を狙うなら、中国は阻止する」と書いた。

 これは、朝鮮半島有事の中国参戦を定めた「中朝友好協力相互援助条約の無効」を示唆したものと受け止められた。

米国はすぐ反応した。4日後の同月14日、レックス・ティラーソン国務長官とジェームズ・マティス国防長官が連名で、米紙「ウォールストリート・ジャーナル」に寄稿し、「米国は、北朝鮮に米軍を駐留させる意図はない」と表明したのだ。

 前出の日米情報当局関係者は「これは、米中両国が『北朝鮮という国家は残す』『正恩氏は排除し、核・ミサイルを完全放棄させる』『米中戦争にはさせない』という“暗黙の了解”をしたと受け止められている。トランプ氏と習氏は今回、『朝鮮有事の対応』と『ポスト金正恩』について、極秘交渉で話し合うはずだ」と語った。

 北朝鮮は来年にも、米本土や首都ワシントンへの攻撃が可能なICBM(大陸間弾道ミサイル)を手にする可能性が高い。年末以降の、半島有事が現実味を帯びている。この際、中国の動きが注目されるのだ。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「中国が、北朝鮮を軍事攻撃する可能性がある」といい、解説した。

 「これまで地上作戦は、韓国軍が遂行する想定だったが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の『反日・反米・従北・親中』姿勢への不信感がトランプ政権に広がっている。代わりに、中国人民解放軍が担当する可能性がある。米軍がB-1B戦略爆撃機などで航空攻撃を、人民解放軍が地上での掃討作戦を担うものだ。地上戦で犠牲者を出すリスクを避けたい米国にとっても、中国の参戦は渡りに船だろう。今回の首脳会談で、互いの出方について腹を探り合うのではないか」

 一方、中国が攻撃に踏み切る要因は何か。

 東・南シナ海への進出を強める中国にとって、米国が南北の軍事境界線を越えて侵攻、駐留する事態は、都合が悪い。正恩体制後も、北朝鮮という「緩衝地帯」を確保しておきたい中国が「黙って米軍の攻撃をみているはずがない」(潮氏)というわけだ。

 トランプ氏は、習氏との会談後、ベトナムで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、北朝鮮への対応をめぐり、ロシアのプーチン大統領と話し合う方向で調整中とも伝えられる。

 「ポスト金正恩」体制に関する米中露3カ国の思惑が一致したとき、日本もまた重大な決断を迫られることになる。

【私の論評】中国の北朝鮮への侵攻は新たな火種を生むことに(゚д゚)!

中国・北京の人民大会堂で行われたビジネス会議に出席した、米国の
ドナルド・トランプ大統領(左)と、中国の習近平・国家主席(2017年11月9日撮影)
「トランプ氏の訪中に合わせて8日、米中間で90億ドル(約1兆円)の商談がまとまったというが、すずめの涙だ」とありますが、これはその後の進展があり、北京の人民大会堂で9日、トランプ大統領と習近平国家主席が見守る中、エネルギーや航空機など米中の巨額商談が続々調印され、会場は大きな拍手に包まれました。

8日調印分と合わせて総額2535億ドル(約28兆8千億円)にのぼった契約規模について中国の鍾山商務相は、「世界の経済貿易協力で史上最高の新記録を作った」と自賛しました。

調印されたのは、アラスカでの液化天然ガス(LNG)開発への中国からの投資430億ドルや、中国によるボーイングからの航空機300機調達で370億ドルなど、かねて交渉中の案件の“総まとめ”でした。

中国側は数字を1カ所に積み上げることで、対中強硬姿勢を公約に掲げて1年前の大統領選で当選したトランプ氏に、貿易不均衡の解消や雇用増大など米国の世論に向けて大きな“お土産”を持たせました。ロシア疑惑や政策停滞で、支持率が落ち込んだトランプ政権には“恵みの雨”になります。

その背景として、「2期目に入った習指導部は、政治も含む幅広い分野での対米取引で、ビジネスマン気質が濃厚なトランプ大統領に札束外交のカードを切った」(日中関係筋)との分析があります。

これで、習近平は何を目論んでいるのでしょうか。習氏は9日の共同記者会見で、新たな米中経済協力計画を策定し、貿易不均衡の緩和、投資環境の改善などを継続協議する、と強調しました。「札束外交」は、今後の習指導部による対外戦略の柱にもなりそうです。

私としては、これは習近平が、北に対して大規模な制裁や直接の軍師攻撃をしないことに対するトランプ大統領の攻撃の矛先をかわすためのものように見えます。

そもそも、中国は北朝鮮と本気で戦争などするでしょうか。中国が軍事的に成功しているのは、元々の国内や元々は外国だったチベット、ウイグルのみです。第二次世界大戦でも、現在の大陸中国は日本とは戦争をしておらず、実際に日本が戦った相手は、現台湾に退いた蒋介石率いる中華民国です。

これ以外に戦ったのは、ベトナムとだけでした。 1979年大量虐殺を行ったカンボジアのポル・ポト政権はベトナムの侵攻で崩壊しました。カンボジアを支援していた中華人民共和国は、これに対して「ベトナムへの懲罰行為」と称した軍事侵攻を開始しました。

ところが、中越戦争は中国は一方的に惨敗しました。無論当時とは異なり、中国の経済力はこの当時とは比べ物になりません。しかし、当時のベトナムは、無論核兵器やミサイルなど持っていませんでした。

しかし、現在の北朝鮮は違います。おそらく、北朝鮮の実践的な通常兵力では当時ベトナムよりは劣るかもしれませんが、現在の北朝鮮は核兵器やミサイルを持っています。

国内で不満分子を鎮圧したり、チベット、ウイグルなどとは根本的に異なります。

それに近年、中国軍高官が相次いで腐敗問題で失脚したことで、中国国内外に軍内部の深刻な贈賄や収賄が知れ渡ることとなりました。中国問題専門家はこのほど、高官は武器密輸などの方法で、贈賄のために横領していると指摘しました。

最近、収賄などで無期懲役を言い渡された元軍トップ郭伯雄氏らが莫大な金額の賄賂を受け取ってきたのは紛れもない事実です。軍内部では官職売り、または官職買いにつき、明確な相場があるるそうです。では贈賄した人たちはその後、どのように資金回収をしているのでしょうか。

元軍トップ郭伯雄氏
これに関して、中国軍に在籍経験のある中国共産党の歴史に詳しい高文謙氏は「中国共産党政権がいわゆる改革開放政策を打ち出した以降、軍は武器密輸、軍馬場(軍用の馬を飼育し海外に輸出する。また馬の飼育牧場をキャンプ地や観光地として民間人に開放する)の運営、様々な業種の大型国有企業との連携でビジネスを行って、金を集めてきた」と回答しています。

「贈賄を受けた人がどのように資金回収したのか。つまり軍内部では昇進と出世のため、一番下の兵士から排長(小隊長)幹部へ、その上の連長(中隊長)、営長(大隊長)、団長(連隊長)、旅長、師長クラスへと、下から上の各階級で贈賄を行っている」と高氏は説明しました。

より高い階級に昇進できれば、その権力と地位を利用して金儲けできて、また下の階級からも貢がれるため、兵士から将校まで皆贈賄や腐敗に奮走するというのです。

これは、昨日もこのブログで指摘したように、中国の人民解放軍の実体は、共産党の私兵であり、武装した商社ともいえるような特殊な存在であることを理解しなければ、到底理解不能だと思います。米国や日本の自衛隊などであれば、腐敗といっても、中国のような壮大なスケールにはなり得ません。新兵器導入などの際に便宜をはかり、賄賂を受けるぐらいのもので、とうてい中国人民解放軍のスケールには及びません。

中国政治評論家の陳破空氏は「兵士召集から腐敗が始まっている。男子が軍に入隊したいなら2万~5万元(約34万~85万円)、女子は5~10万元(85万~170万円)との相場で、軍幹部に賄賂を渡さなければならない」「軍内部の腐敗は至る所でみられる。国境防衛部隊なら、武器を密輸する。なかでは一部の武器を東トルキスタン解放組織(ETLO)まで渡っていた。また森林や鉱山など資源を守る部隊も、その森林や鉱山資源を勝手に他人や企業に売ることで金を儲けてきた」と示しました。

「軍内ではこのような噂が流れている。(収賄の罪で失脚し病死した元軍ナンバー2の)徐才厚が亡くなる前に、太子党の劉亜洲氏(現空軍上将)と劉源氏(元総後勤部政治委員、上将。15年に軍を退役)を除いたほとんどの将校から賄賂を受け取ったと話したようだ」「つまり、中国共産党内で昇進や出世したければ、賄賂を行わなければならない。軍内の腐敗は非常に深刻だ」と陳氏が話しました。

陳氏は、兵士や将校らは出世、賄賂、金儲けばかり考えているのだから、「中国人民解放軍の戦闘力は全くゼロに等しい」と指摘しました。

軍内では、徐才厚は総政治部と総後勤部を掌握し、郭伯雄氏は総参謀部と総装備部を掌握していました。二人とも江沢民の腹心で、郭伯雄は2002年~13年まで中国共産党中央軍事委員会副主席を務め、徐才厚は04年から13年まで、同じく党中央軍事委員会副主席だった。二人は江沢民の権力を後ろ盾に、軍内で大いに腐敗を行ってきました。


中国国内メディアの報道によると、14年3月15日に徐才厚が当局に身柄を拘束された後、家宅調査に当たった政府関係者らは北京市内にある徐の豪邸の地下室から、膨大な量の現金、金延べ棒、豪華な宝石装飾品、骨董書画などを見つけ、十数台の軍用トラックを使ってやっと全部運び出したといいます。

一方、15年に失脚した郭伯雄は軍内の将校に対して官職売りを行っていました。少将に昇進したいなら500万~1000万元(約8500万~1億7000万円)。中将に1000万~3000万元(1億7000万~5億1000万円)などの相場を付けたと言われています。

また香港メディアは、郭とその家族、また徐とその家族が不正蓄財した規模はそれぞれ200億元(約3400億円)以上と報じました。

無論、こうした軍の腐敗に対して、習近平も手を入れるには入れていますが、習近平自身がファミリービジネスでしこたま儲けているわけですから、すぐに人民解放軍の腐敗が是正されるとは考えられません。

それに、人民解放軍にはさらなる弱点もあります。中国政府が1970年代から進めた一人っ子政策で誕生した「一人っ子軍人」です。兄弟姉妹のいない環境で過保護に育てられた別名「小皇帝」が軍内部で増加。有事でまともに戦えそうにない“本性”を、災害派遣などの場面でさらしているといわれています。巨大な軍は、実は内部崩壊を招きかねない深刻な事態に直面しているのです。

両親から甘やかされて育った一人っ子たちが軍の中でかなり増え、わがままぶりを発揮しているそうです。2008年にあった四川大地震でも、救援活動の派遣を『危険だから』と渋った若手軍人がいたといわれています。いざ実戦となったら兵士として役に立たない可能性もあり、幹部らは彼らの扱いに苦慮していいます。

このような軍とは呼べないような武装組織である、人民解放軍がまともに戦えるとは思えませんが、まかり間違って北朝鮮に攻め込み、北朝鮮に進駐することにでもなれば、それこそ目もあてられない状況になります。北朝鮮は人民解放軍の不正の温床になるだけです。それどころか、金目のものといえば、武器、核兵器、核関連施設だけの北朝鮮と言っても良いくらいなので、これらを海外に売却するということもやりかねません。

かえって、治安を悪化させ、次の戦争の火種を生み出すことになりかねません。米国であろうが、中国であろうが、特に地上戦で北朝鮮を打ち負かした後に、少なくと50年くらい軍隊を進駐させて、民主的な政権を樹立して、自分たちで国を収めることができるように監視を続ける覚悟がなければなりません。

中国の人民解放軍にはそのような覚悟は最初からありませんし、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家化もされていない中国の人民解放軍にはそれはできません。それこそ、腐敗の温床になるだけです。

やはり、米国が主体となり、国連軍を米軍を含む、先進国のいくつかの軍隊を進駐させ、監視をするという体制が望ましいでしょう。

レックス・ティラーソン国務長官とジェームズ・マティス国防長官が連名で、米紙「ウォールストリート・ジャーナル」に寄稿し、「米国は、北朝鮮に米軍を駐留させる意図はない」と表明したことは、全くの間違いです。これは、中国に対して勘違いをさせたかもしれません。中国はあいまいな態度をとると、誤解するという過ちを犯してきました。

2プラス2会議前に握手する(左から)小野寺五典防衛相、河野太郎外相、レックス・ティラーソン
国務長官、ジェームズ・マティス国防長官=8月11日、米ワシントン
過去においては、米国が南シナ海で、日本が尖閣において、曖昧な態度をとったことが、中国の誤解を招き、この地域での両国の中国への対応を困難なものにしてきました。このままでは、米国はまた中国に誤解を与えてしまうかもしれません。

一度の武力行使で、北朝鮮全土を掌握するのが無理というのなら、最初は爆撃などにより、北の核兵器、核施設を破壊し、一二年ほどして、次の段階で北朝鮮に進行するというような二段階で制圧するという方法もあると思います。

もし、北朝鮮と事を構えた場合、戦後処理を米軍だけで行うにはあまりに負担が大きいというのなら、国連軍としていくつかの国が分担して、北朝鮮に進駐して、完璧な核やミサイルの排除、民主的な政府の樹立に50年単位で取り組むべきです。その中に一部、中国の人民解放軍やロシア軍などが混じっているというのならまだ許容できますが、人民解放軍や、ロシア軍だけというのであれば、戦争の火種を残すことになります。

それこそ、中東やバルカン半島のように戦争が絶えない地域になってしまいかねません。中国の人民解放軍だけの侵入を許せば、戦後処理が曖昧となり、当の北朝鮮の人民にとっても中国にとっても、最悪の結果を招くことでしょう。

日本も、こうした事態に備えるのは当然のことです。先日もこのブログに掲載したように、日本は不測の事態に備えて、北朝鮮等に対して先制攻撃できる体制を整えるべきです。中国が単体で、北朝鮮に攻め込むような事態になれば、これは絶対にしなければならないでしょう。

なぜなら、中国が仮に北朝鮮を制圧することができれば、中国は尖閣諸島はもとより、南シナ海な他の地域への侵攻に自信を深めることになるからです。それほど、中国の北朝鮮への侵攻は危険なことです。米国はまだその危険性に気づいていないようです。

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2017年11月10日金曜日

中国政治は人民解放軍抜きに語れない―【私の論評】中国の体制崩壊はいずれ必ずやってくる(゚д゚)!

中国政治は人民解放軍抜きに語れない
2つのディレンマを抑え込む「共産党の軍隊」がカギを握る

 第19回党大会を終え、いよいよ「習近平1強体制」が固まってきた中国。「中華民族の偉大な復興」を掲げて大国化が進みつつあるものの、一方で、日本をはじめ周辺国との軋轢(あつれき)や不協和音も大きくなっている。単純に「友好」という言葉では御しきれなくなったこの国との関係を、今後どうしていけばいいのか。そのためには、中国をどんな国だと認識すればいいのか――。
 そんな問いに対し、「中国人民解放軍」に焦点を当てたヒントを提示しているのが、阿南友亮氏の近著『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(新潮選書)である。
 著者の阿南氏は1972年生まれ。慶應義塾大学法学部、同大学院博士課程を経て、現在は東北大学大学院法学研究科教授を務める、中国現代政治史の専門家。
 阿南氏に、習近平「1強」時代に入った中国を考えるための視座について話を聞いた。

中国社会の不安定要因は格差

 中国とはどんな国なのか。歴史的に見れば、それは「国が社会の面倒を見ない」国、というものでした。人々は国に頼らず、自分たちの面倒を自分たちで見ていた。自然災害などが続いてそうした営みが行き詰まった時、彼らは国家に牙を剥き、王朝を倒しました。それが2000年にわたって続いたのです。
 そのサイクルに終止符を打とうとしたのが、中国革命だったと言えます。1911年に革命が勃発した際、その指導者の孫文は、民が国の主人となり、国は民の福利厚生のために存在するという近代国家を作ろうとしました。ところが、それから100年以上経ちましたが、いまだにその課題は充分達成されたとはいえません。今でも国家権力と民間社会の関係は、近代国家という基準からみれば、歪な形になっています。
 現在の中華人民共和国は、1970年末以降の「改革・開放」政策のおかげで、だいぶ豊かになり、世界的に注目されるようになりました。富裕層が大挙して日本を訪れ、「爆買い」する様子はずいぶんと報道されたものでした。
 ところが、こうした報道では、中国が抱える矛盾や歪みに関する言及はあまりありません。実は、日本にやってきて「爆買い」できるのは、14億人に迫ると言われている全人口のうちのほんのわずかでしかありません。中国政府の公式発表でも1人当たりのGDPはまだ8000ドルであり、人口の大半は日本円にして年収50万円以下で暮らしています。
「改革・開放」は、中国における「官」と「民」の間の矛盾を解決するために打ち出されたのですが、実は矛盾がむしろ深刻化するという事態になっています。

深刻な農村の貧困問題

 日本人は、近代国家ならば基本的に制度的な平等が担保され、国民を網羅した社会保障制度も整っているものと考えがちです。ましてや、中国は社会主義の看板を掲げているので、福利厚生が充実しているだろうとお考えの人もいるかもしれません。
 しかし、実はそうではないのです。中国では、都市部出身者と農村部出身者の間で、戸籍による制度的差別と巨大な格差が厳然として存在します。そして、8億人以上いる後者に関して言えば、21世紀に入るまで共産党が提供していた社会保障は粗末なものでした。共産党は2003年に農民を広範に網羅した医療保険制度の整備に着手しましたが、中国における医療費の高騰に対応できていないなど、いまだ課題山積の状態です。農民の自己負担が依然として非常に高くて家計を圧迫している、あるいは農民が出稼ぎ先の都市部の病院を利用できないといったことが中国国内でも問題視されています。
 また、2007年にようやく農村に導入された生活保護制度を見ても、毎月の支給額は、最大でも日本円にして4000~5000円程度に留まっています。2007年までは0円だったので、これを大きな進歩と評価する意見もありますが、年収が10万円しかない農民の場合、日本だったら間違いなく生活保護の対象となる一方で、中国では生活保護の対象とはみなされないため、全般的に言えば、農村の貧困問題は依然として極めて深刻です。
 要するに、中華人民共和国では、人口の半分以上を占める農民への公共サービスに回す資源が非常に低く抑えられてきたと言えます。
 もし日本のように、国家予算の半分以上を社会保障に使っていれば、オリンピックだ、万博だ、軍拡だ、対外投資だというところに派手にお金を使うのは困難です。これまで数億の農民の社会保障にあまりお金を使ってこなかったからこそ、そうしたことができたのですが、その点が日本ではあまり正確に理解されていないようです。

解放軍は「国家の軍隊」ではない

 そんな国家・社会関係を作ったのは誰なのか。もちろん、一党独裁を続ける中国共産党であり、人民解放軍(解放軍)だと言えます。
 これも重要なことなのですが、解放軍は「共産党の軍隊」であって「国家の軍隊」ではありません。これは1927年の解放軍の設立以来90年間変わりません。また、中華人民共和国は、内戦に勝利した解放軍によって作られたという経緯があり、軍人は中央・地方の統治ネットワークに深く関与してきました。
 1970年代の終わりから、中国は「改革・開放」政策に舵を切りました。当時から懸念されていたのは、共産党の一党独裁下でどうやって自由な市場経済を進めるのか、ということでした。そもそも、土地や工場といった生産手段をすべて共産党が握っているわけですから、よほどしっかりしたルールと監視体制によって党とビジネスの間に境界を設けないと、共産党の幹部ばかりが金持ちになってしまいます。そして、現実にそうなった。 こうした軍の存在を抜きにして現代中国政治は語れないというのが、私が今回の著書をつうじて特に強調したかったことです。
阿南友亮・東北大学大学院教授
 解放軍は、一貫して共産党の一党支配体制の重要な後ろ盾となってきました。「改革・開放」の旗振り役は、鄧小平でしたが、彼は長らく党中央軍事員会主席を務め、軍の統帥権を一手に握っておりました。
 鄧小平は、腹心の胡耀邦や趙紫陽を党と政府のトップに据えて「改革・解放」と呼ばれる規制緩和を大々的に進めました。ところが、共産党の独裁に対して異議申し立てをすること、つまり「民主化」要求には断固反対しました。それが1989年の天安門事件という悲劇を招いたのです。
 この事件において、鄧小平は解放軍を駆使して「民主化」運動を粉砕し、それによって中国国内は安定を取り戻したかに見えました。しかし、実際には、これにより国家権力と民間社会の間の矛盾は解消されないまま、蓄積されていくことになりました。

格差社会の要因は鄧小平の判断ミス

「改革・開放」は、もともと経済の自由化に向けた規制緩和をしつつも、党とビジネスをきちんと切り離すという指針に基づいて進められていました。しかし、鄧小平が「民主化」運動に寛容だった胡耀邦と趙紫陽を相次いで失脚に追い込んだため、党とビジネスの間に境界線を引く試みにブレーキがかかることとなったのです。
 そして、その後、鄧小平から江沢民に政権運営のバトンが渡されると、江沢民の地盤だった上海市などを中心に、「権力と資本の癒着」、すなわち共産党幹部が権力を駆使して金儲けに興じる現象が顕在化することになりました。このため、新たに台頭した富裕層には、共産党幹部とその縁者や取り巻き連中が多く含まれることになりました。では、共産党がそうした富裕層、すなわち金持ち共産党員に課税ができるかというと、なかなかできない。
 こうして、党幹部とその縁者がどんどん富を蓄えていく一方で、富の再分配(社会保障)の充実が遅々として進まないという構図が出現し、先進諸国でも類がない凄まじい格差社会が誕生することになりました。
 こうした事態は、不用意に胡耀邦と趙紫陽を失脚に追い込んだ鄧小平の判断ミスによって生じたと私は考えております。

結果として招いた2つのディレンマ

この重大なミスによって、中国は「2つのディレンマ」を抱えることになりました。第1のディレンマは、華々しい経済発展の裏側で、格差拡大に起因する社会内部の不満が、膨大な数の農民も巻き込む形で拡大の一途をたどっているということ。これは共産党の一党独裁を揺るがしかねない国内問題です。

 これに対して共産党指導部は、国内のディレンマの中和剤として排外的なナショナリズムを煽りました。しかし、これによって、中国自身の経済発展にとって不可欠なパートナーである各国との関係を不安定にさせてしまった。

 特に日本との関係は、誰の目にも明らかなように、どんどんおかしくなっていきました。今では、米国、フィリピン、ヴェトナム、インド、そして韓国との関係も不安定化しております。これが第2のディレンマです。

 現在の中国共産党は、これら「2つのディレンマ」を抱えており、その統治は決して安定しているとはいえません。そんな共産党の「安全保障」装置として、解放軍がいる。つまり軍の存在が、深刻な矛盾を内包する独裁体制の動揺を防いでいるのです。天安門事件は、その象徴的事例といえるでしょう。

 中国共産党の統治は、解放軍に大きく依存している。だからこそ、毎年多額の資金を解放軍に提供せねばならない。中国で進行している軍拡は、そうした背景を持っているのです。

共産党と民間社会を同一視してはいけない

 中国をめぐる議論をみると、共産党と民間社会を区別しないまま、中国をあたかも一つのまとまった集合体として見る傾向が目立ちます。しかし、これまで述べたように、中国は経済発展しているといっても、その恩恵は社会の隅々まで行き渡っているわけではありません。「爆買い」する中国人観光客を見て、これが中国の標準だと思ったら、大間違いです。
 中国では江沢民政権以降、国内の不満を党からそらすために排外主義的要素を多分に含んだ愛国主義教育を行ってきました。その結果、国内の言論空間では強硬な外交を求める声が充満するようになりました。その声に応えないと、国内の不満は共産党に向かうため、共産党は他国との対話で譲歩するのが難しくなりました。特に島嶼(とうしょ)や海洋権益をめぐる問題では、その傾向が顕著です。そこで、共産党は、解放軍を用いて他国に対してさかんに威嚇を行うようになりました。すなわち、圧力によって他国に一方的な譲歩を迫るようになったのです。その結果、中国外交は、今日のように、複数の国と同時に摩擦をかかえるという泥沼にはまってしまいました。
 したがって、日中関係を改善するには、中国共産党の抱える2つのディレンマの問題を緩和ないし解消することが重要な課題となりますが、これは決して容易なことではない。一方、日中間の民間交流は、今後も拡大していくと予想されます。
 そこで重要になってくるのが、中国共産党と中国の民間社会とを区別する視座です。今後も長引く可能性が高い日中の政府レベルでの摩擦に違和感やフラストレーションを覚えることは自然なことですが、共産党の独裁に起因する諸問題を確たる根拠もなく「民族性」に起因するものと主張し、「中国人はみんなこうなのだ」といったレッテル貼りを行うことは、中国の民間社会との共生さえも難しくするものです。
 逆に、このような外交面での対立が続いている間も、民間が地に足の着いた多面的な交流を今後も続けていければ、やがてそれが関係再建の土台となっていくはずです。

台湾問題には無関係ではいられない

 最後にもう一つ。この本では、解放軍の実力についても分析しており、日米と比べると装備全般が遅れた軍隊であるという評価を示しました。しかし、それをもって解放軍に起因するリスクを過小評価することがあってはなりません。
 それは台湾問題があるからです。中国は今でも、台湾を取り戻すことを大きな目標にしています。「台湾が独立を宣言したら、それは戦争を意味する」という思考回路は、中国社会にひろく浸透しております。
 そして、そのことは、日本にとって無縁の話ではありません。なぜなら、周辺事態法や平和安全法制によって、日本は米国の台湾防衛戦略に組み込まれているからです。しかし、日本社会では、そのような当事者意識は、決して高いとはいえないでしょう。
 日本人は、自国の外の人々の生命や権利が脅かされた時にどのような行動を取るべきなのか。中国の軍拡は、日本社会にこのような問題も突きつけているのです。
阿南友亮
1972年、東京生まれ。東北大学大学院法学研究科教授。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学(法学博士)。大学院在籍中に北京大学国際関係学院に留学。東京成徳大学講師、東北大学准教授を経て、2014年より現職。また2017年、東北大学公共政策大学院院長に就任。著書に『中国革命と軍隊』(慶應義塾大学出版会)、『シリーズ日本の安全保障5 チャイナ・リスク』(共著、岩波書店)など。
【私の論評】中国の体制崩壊はいずれ必ずやってくる(゚д゚)!
ブログ冒頭の記事では、人民解放軍は「国家の軍隊」ではなく、共産党の私兵であることが掲載されていました。そもそも、中国には普通の国でいう、軍隊は存在しないのです。これは、よく知られていることですが、上の記事でさらに人民解放軍が特異というか異常な組織であることが述べられていません。

中国人民解放軍女性兵士?彼女らは、総合商社の一員でもある\(◎o◎)/!
それは何かといえば、人民解放軍は日本でいえば、商社のような存在であり、実際中国国内外で様々なビジネスを展開しているという事実です。そのような存在でありながら、武装もしており、いわば武装商社のような存在です。そうして中には核武装もしているという異常な状況です。

そうした中にあって、この中国共産党の私兵は、上記で述べられた2つのジレンマにより、中国自体が崩壊してもおかしくないようような状況において、治安を暴力によって維持し、中国が崩壊しないように、人民を弾圧し続けきました。

そのため、この2つのジレンマは根本的に解決されないまま今でも、温存されています。第1のディレンマは、華々しい経済発展の裏側で、格差拡大に起因する社会内部の不満が、膨大な数の農民も巻き込む形で拡大の一途をたどっているというものです。第2のディレンマは、周囲の国々との関係がどんどん悪くなっていき、収拾がつかなくなっているというものです。

このようなジレンマの存在は、従来から知られていました。そうして、中国といえば民主化、政治と経済の分離、法治国家も遅れており、このまま中国が経済発展し続けていくことはあり得ません。

様々な中国崩壊本
ただし、08年の北京オリンピックの前後から、「反中国本」「中国崩壊本」はまるで雨後のたけのこのように日本で出版されてきました。しかし、未だに中国はの崩壊していません。そのため、これらの「中国崩壊本」に対しては批判も強まっています。

しかし、未だ中共が崩壊しないでいられるのは、中共(共産党)は胡錦濤(フー・チンタオ)政権末期の危機的状況に際し、成功体験である毛沢東時代を再現すべく習近平(シー・チンピン)に権力を集中させたからです。

テレビで報道された習近平一強体制の強化
この対応によって、何とか体制を保っていられるとみるべきです。しかし、それでも抜本的な問題を先送りしているだけで構造的問題の解消にはなっていません。おそらく、中共の現体制を10年間だけ延命しただけに終わるでしょう。

しかし、これらジレンマを抱えたまま、消費拡大を伴わず、公共事業と輸出に依存した、いびつな経済成長は到底持続不可能です。いずれ崩壊すると考えるのが妥当です。
バブル経済崩壊で日本も崩壊しましたが、日本人全員が路頭に迷ったわけではありません。同様に中国経済もいきなりゼロになることはあり得ないです。
ただし、中国共産党の体制は国防費と治安維持費の拡大、出稼ぎ労働者のための雇用創出など経済成長を前提としているため、成長がストップまたは鈍化すれば現体制を維持できなくなります。これが中国の崩壊です。その日は必ずやってきます。

私としては、中国のやり方などをみていると、ソ連が崩壊したような崩壊の仕方をするのではなく、いずれどう頑張ってみても、経済成長できなくなり、いわゆる中所得国の罠(中進国の罠とも言う)にどつぷりとはまっていることに気づくことになるのではと思っています。

中所得国の罠については、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国は「中所得国の罠」を抜けられない 今後の経済成長は線香花火に―【私の論評】中国の分析でも、中国は罠にどっぷりとはまり込むことになる(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみを掲載します。
現在の中国の経済をたてなおすためには、楼継偉財政相が指摘するように、1・農業改革、2・戸籍改革、3・労働・雇用改革、4・土地改革、5・社会保険改革―の5点を何とかしなければならなのです。

そのためには、まずはこのブロクでも何度も主張しているように、ある程度以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめなければならないのです。現在の先進国は、これをいずれかの時期に達成し、経済的中間層を多数輩出し、それらが、自由で活発な社会経済活動がすることにより、社会・経済が発展し、中進国の罠にはまることなく、経済的にも軍事的にも強国になったのです。

今のままでは、中国は中進国の罠にどっぷりと嵌り込むしかなくなります。その果てには、図体の大きなだけの、アジアの凡庸な独裁国に成り果てるしかなくなります。見込みがあるとすれば、いくつかに分裂して、沿海部の大都市部を含む国もしくは、国々が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をなしとげ急速に発展することです。
結局、 楼継偉財政相が指摘する改革は、先に上げた第1のジレンマから抜け出すための手立てです。中国は、この他にも第2のジレンマから抜け出さなければ、結局中所得国の罠から抜け出すことができなくなることでしょう。

そうして、そこから本格的な崩壊が緩やかに始まり、その直後から世界の誰もが、中国が今後も発展して、米国の経済を追い越すようなときは永遠に来ないどころか、中進国のままで終わり、中国の夢がすべて夢で終わるという事態がやってくると思います。

そのときがいわゆる中国の崩壊です。その時、中国は現在のロシアのような存在になるかもしれません。おそらく、チベット、東トルキスタン、内蒙古や満州なども独立するかもしれません。

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2017年11月9日木曜日

未来がなくなった亡国への光景 韓国の若者、楽して暮らせる公務員「最低職位」試験に殺到―【私の論評】ポスト安倍は日本も韓国並に八方塞がりに(゚д゚)!

未来がなくなった亡国への光景 韓国の若者、楽して暮らせる公務員「最低職位」試験に殺到

韓国の若者に「公務員志望」が高まっているという(写真と本文は関係ありません)
 韓国で「公務員志望」の熱気がますます高まっている。といって、国を牽引(けんいん)するような大志を抱いて上級職試験を受けるのではない。「一生楽して暮らせるから」と、若者が9級職(=最低職位)の試験合格を懸命に目指す。これは「亡国への光景」だ。

 韓国に「労働者と北朝鮮のための政権」が誕生して半年余。「北朝鮮のため」は、安保主権を中国に委ねるようなコウモリ外交に象徴されるとおり着々と進んでいるが、「労働者のため」は、有効求人倍率が8月の0・68から9月には0・62に落ちるなど思うに任せない。

 最低賃金は2018年から16%アップするが、玉突き型に賃金レベル全体に上がるのは必至だ。それで民間部門からは「人員削減不可避」の声が聞こえてくる。

 そうした中で、韓国の公務員は恵まれすぎている。

 官庁系シンクタンクの分析によると、9級職でいいから公務員になれば、退職までに15億ウォン(約1億5300万円)を超える収入を得られるが、小企業(従業員49人以下)に入ったら生涯賃金は8億ウォン(約8200万円)に届かない。

 中企業よりはしっかりした中堅企業(同300~999人)に入ったところで、生涯賃金は9級合格者より4億8756万ウォン(約4990万円)少ない。

 大企業(同1000人以上)なら、9級職合格者を6875万ウォン(約700万円)上回るが、大手財閥系に入社できる新卒者は2%に届かない。いまをときめく大手財閥とて「財閥キラー政権」が続けば、どうなるか分かったものではない。上級職公務員試験は難し過ぎる。
それで、国立ソウル大学の卒業者まで、最低職位の公務員試験に殺到するわけだ。2009年の法律改正により、公務員試験の年齢制限が撤廃されてからは、“晩年受験者”も増えている。財閥系に就職したものの「45停」(サオジョン)とも「名誉退職」とも呼ばれる「早期肩たたき」に遭った人々も、9級職公務員を目指す。

 だから、このところの9級職試験の倍率は50倍以上。地方で1人か2人の補充募集があると倍率1000倍といったこともある。

 9級職は、少数の例外はあれ、普通は定年まで勤めても7級までしか出世しない。日本で言えば「主事」だ。

 一昔前の韓国は、会う大学生のほとんどが、李王朝で言えば「両班」(ヤンバン)を目指していた。つまり上級職公務員か大手財閥の社員だ。

 それに比べると、今や韓国の大学生は「そうだ! 中人(チュンイン)を目指そう」に変わった。中人とは両班の下にいた宮廷の吏員だ。中人だって、両班ほどではないにしても、常民(サンミン)、奴婢(ノビ)に対しては威張り散らしていた。アァ、7~9級職公務員とは、官尊民卑が続く現代韓国で、李王朝の中人に値するのだ。

 日本には「どうして1番でなくてはダメなのですか」とわめき散らした政治家がいた。1番を目指したところで1番になれるものではないのに…。若者が初めから「中人」を目指す国に、未来があろうはずはない。

 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。

【私の論評】ポスト安倍は日本も韓国並に八方塞がりに(゚д゚)!

韓国統計庁発表によると、韓国の8月の若年層の失業率は9・4%と、アジア通貨危機後の1999年8月の10・7%に次ぎ、8月の数字としては最悪になりました。ちなみに、韓国の若年層の失業率は「15歳から29歳」の労働市場参加者が対象で、ILO(国際労働機関)やOECDの15歳から24歳よりも定義が広くなっている(=というわけで、若年層失業率ではなく『青年失業率』と呼ぶ)。

25歳から29歳の若者は、24歳未満よりも働いている可能性が高いです。韓国の若年層の失業率ならぬ青年失業率は、実態よりも低く見えてしまいます。

OECDの統計によると、2016年の韓国の若年層失業率は10・7%と、2ケタに達していました。ILOやOECDの定義(15-24歳)で見ると、韓国の直近の若年層失業率は12%を上回っている可能性が極めて濃厚です。

現在の韓国では、失業者の4割を若年層が占めます。しかも、就業経験が全くない若年層が増え続けているわけですから、事態は深刻です。同国では、就業経験を一切持たない失業者の8割超を、若年層が占めています。

韓国銀行
なぜ、韓国の若者の雇用機会が減少しているのか。最大の理由は、韓国銀行(韓国の中央銀行、日本の日銀にあたる)が雇用情勢がこれだけ悪化しているにもかかわらず、量的緩和をしないからです。

実際、本日も以下のようなニュースがありました。
成長率とインフレ上昇見通しが金融政策の調整を支援=韓国中銀 
韓国銀行(中央銀行)は9日、半期に一度の金融政策報告を発表し、国内経済が潜在成長率に近づいており、インフレ率も上昇が見込まれることから、金融緩和政策の調整が可能になってきたとの見解を示した。 
中銀は「経済成長率は潜在成長率に向かって好転している一方、インフレ率は目標水準を目指して上昇すると予想されており、低成長と低インフレに取り組むため緩和的に維持されてきた金融政策の調整が徐々に可能になってきている」と分析している。 
第3・四半期の韓国国内総生産(GDP)速報値が過去7年余りで最も大幅な伸びを記録したことを受け、市場関係者は中銀が11月30日の金融通貨委員会で6年超ぶりの利上げを実施するとの予想で一致している。 
中銀は2012年から8回の利下げを実施し、10月19日の委員会では政策金利を過去最低水準の1.25%に据え置いた。 
金融政策報告はまた、現在の成長モメンタムが持続的かどうかを判断するため、中銀が経済動向を注意深く見守っていくとしている。
このニュースからうかがえるのは、韓国銀行がまともに機能していないことです。まず第一に「国内経済が潜在成長率に近づいており、インフレ率も上昇が見込まれることから、金融緩和政策の調整が可能になってきた」という韓国銀行の発言です。これは、全くおかしいです。インフレ率の上昇が見込まれるから金融緩和政策の調整が可能になってきたのではなく、そもそも中央銀行の金融緩和策によって、インフレ率が決まるはずです。

さらに、これだけ雇用が悪化しているにもかかわらず、直近で実施する金融緩和策は、量的緩和ではなく、質的緩和である利上げです。

これでは、雇用情勢を改善することはできません。どうも韓国の金融政策はおかしいです。

韓国中央銀行は、国の中央銀行としては珍しく、2004年から4年間、世界唯一の赤字中央銀行となっていました(なお、2015年にはスイス国立銀行が赤字決算となっている)。これは、市場に流通されている通貨量を調節する目的で発行される通貨安定証券の過多発行と、それにもとづく利子負担によるもので、この時期の通貨安定証券の過多発行は、為替の値下がりを防ぐため行われたものとされています。しかし、これも良くわかりません。

また、1997年のアジア通貨危機当時、韓国銀行は、外貨を国内の市中銀行に貸し出すなどして、公表されていた外貨準備高を確保していなかったことが、アメリカ合衆国・連邦準備理事会のアラン・グリーンスパン議長(当時)の回顧録で明らかとなっています。

韓国銀行は中央銀行としてどうもまともに機能していないようです。日本でも、日銀が現在の黒田体制になる前の白川体制以前では、日銀はまともに機能していませんでした。

金融通貨委員会を取りまとめる李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行総裁=11日、ソウル
特に、日本国の金融政策を決定す審議会のメンバーが、とても金融政策を理解しているとも思えないようなメンバーがほとんどでした。これらのメンバーのほとんどが、なにかといえば金融引締め策を実施したため、本来金融緩和をすべきときにも引き締め策を堅持しました。

そのため、日本は円高傾向となり、デフレスパイラルのどん底に沈み込み、雇用もかなり悪化しました。韓国では、金融通貨委員会が韓国の金融政策を決定するようですが、この委員会もかつての日銀の審議会のようにまともに機能していないのだと思います。

韓国では、金融政策を疎かにしているようでは、かつての日本のように雇用が改善されることはありません。一刻もはやく金融緩和すべきです。韓国は、金融緩和すべきといういうと、緩和すればキャピタル・フライトがおこるということを主張する人もいますが、韓国の場合はその心配はないと思います。

これに関しては以前もこのブログに掲載したことがあります。結論らかいうと、韓国は金融緩和してもキャピタル・フライトは、おきません。かつてキャピタルフライトの起きた国としてアイスランドは有名です。

その頃アイスランドはGDP比で700%もの外貨建ての借金をしていました。しかし、当時のアイスランドの政府債務対GDP比は29%しかありませんでした。この700%もの債務は一体誰が負っていたのでしょうか。

アイスランド政府の借金でないのであれば、あとは民間しかありません。この膨大な対外の外貨建て債務は国内の金融機関が負っていた負債でした。

このような国であれば、当然のことながらキャピタルフライとは起こりえます。そうして、実際アイスランドではそれが起こったのです。

韓国銀行は2月22日、韓国の対外債権が前年比638億ドル増の7843億ドルとなったのに対し、対外債務は151億ドル減の3809億ドルだったと発表しました。

対外債務では長期対外債務が160億ドル減少し、短期対外債務は8億ドル増えました。外貨準備高(3711億ドル)に占める短期対外債務(1052億ドル)の割合は28.3%で前年と同じでした。同割合は2013年の32.3%、14年の32.0%、15年の28.3%と年々低下してきました。1997年の通貨危機当時(283.1%)、2008年の金融危機当時(79.3%)に比べるとはるかに低い水準です。

この程度の対外債務であれば、どう考えても金融緩和したからといって、キャピタルフライトを起こすことはありません。

にもかかわらず、量的金融緩和をしないのは、やはり、韓国では日本のように、金融政策と雇用が密接に結びついているということを理解しない人が、政治家やマスコミにも多いということだと思います。


日本では、幸いなことにこれを理解している安倍総理や菅官房長官など政府中枢に存在するので、最近は未だ十分とはいえないまでも、日銀の金融政策はまともになってきました。

しかし、ポスト安倍ではこの二人も政権では中枢に居続けることはできないでしょう。そうなると、日本も韓国なみに金融政策が機能しなくなり、また雇用がかなり悪化する恐れがあります。雇用の悪化だけではなく、またデフレスパイラルのどん底に沈み、円高に逆戻りです。

そうなる可能性はかなり高いと思います。ブログ冒頭の記事で、室谷克実(むろたに・かつみ)氏は、韓国の雇用情勢の劣悪さについては詳細に語っていますが、その原因や韓国がすべきことについては何も語っていません。というより、金融政策と雇用政策について室谷氏の頭の中では何の連関性もないのでしょう。

日本でも、室谷氏のような人のほうが一般的です。雇用の悪さと、中央銀行を結びつけて考える人は多くないです。そうして、無論韓国内でも、そのような人は皆無に近く、何かといえば、構造改革ばかり叫ぶ人が多いです。

韓国では、金融緩和策が実施されていないことが、様々な歪みを生んでいるのは間違いないです。まずは、雇用の極度の悪化、家計の借金の悪化、ウォン高、その他諸々です。

私は、韓国政府による反日活動も、これに関係していると思います。そもそも、金融緩和策がまともになされていれば、国民の不満もさほどではないですが、現状ではそうではなく、多くの国民が八方塞がりになっていて、憤怒のマグマがいつ吹き出してもおかしくない状況です。その憤怒のマグマを自分たちに向かせることなく、日本を悪者にしたてて、日本に向けるようにしたのが、韓国の反日でもあります。

まともな金融緩和策を実行すれば、国民にも余裕でき、政府も極端な反日などしなくてもすむようになります。国民と政府との関係も余裕ができ、今よりはかなり良くなります。現状では、国民の不満が増すばかりで、その不満に乗じて、北の勢力が浸透しやすくなっています。

しかし、今日の韓国は金融緩和はせず、そうして国民から政府まで皆が八方塞がりに陥っているのです。

ポスト安倍は今のままでは、金融引締めを繰り返すようになり、現在の韓国のように八方塞がりになる可能性が高いです。

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2017年11月8日水曜日

首相頼みの金融緩和路線 次の政権では風前のともしび、日銀法に雇用目標の明文化を―【私の論評】放置すれば地獄の釜を開く政治家どもに任せて良いのか(゚д゚)!

首相頼みの金融緩和路線 次の政権では風前のともしび、日銀法に雇用目標の明文化を

政権中枢にいる安倍首相と菅官房長官が金融政策を理解していることが幸いしているのだが・・・・
先の衆院選の結果は悲喜こもごもだったが、金融緩和政策の効果を理解する政治家が、政界全体で、かなり少なくなったのは残念だ。

もともと、金融緩和によって雇用が増えることについて、欧米では一般常識になっているが、日本で理解している学者やマスコミは少ない。

ここ10年ほどで、金融政策を正しく理解していると筆者が思い当たる政治家は、安倍晋三、菅義偉、中川秀直、山本幸三、竹中平蔵、渡辺喜美、舛添要一、馬淵澄夫、小沢鋭仁、松原仁、金子洋一の各氏らだった。

ところが、ここ数回の国政選挙などを経て、いまや風前のともしびになっている。ある意味で奇跡的に安倍首相と菅官房長官が政権中枢にいるので、一連の日銀人事では間違いがなく、金融政策はおおむね正しく行われてきた。

その結果、雇用状況は民主党政権と比べて格段に向上した。有効求人倍率や大学新卒者の就職率のまれに見る成果によって如実に表れている。

大学関係者と話をすると、いわゆる一流大学では新卒者の就職率の向上が実感できないらしい。いつでも就職率が高いからだという。一方、筆者の所属大学のレベルになると、民主党政権下での就職率は実質的に現状の3分の2程度だった。安倍政権になってから就職率が高くなって、今ではほぼ全員が就職できるようになった。
正直なところ学生の学力が劇的に向上したとは思えないので、異次元金融緩和の恩恵による部分が大きい。これは、筆者が事前に予測したとおりの結果であり、標準的なマクロ経済分析からの帰結でもある。

雇用が良くなると、自殺率、強盗率、生活保護不正受給率なども減少し、社会の安定にも好都合となる。しかも、雇用を作ったというのは対野党としても格好の材料だ。

つまり、金融政策を上手に使ったことが安倍政権が長期化している裏にある。安倍首相は、日本の政治史で初めて金融政策の効用を正しく理解し、それを活用した首相だといえる。

その安倍政権もいつかは終わる。今の政治家を見渡すと、次の首相候補と目される人の中で、誰が金融政策を理解しているのかと思うと、空恐ろしくなる。

ここは、日銀法を改正して、雇用の確保を金融政策の目標に加えるべきだろう。安倍政権では、その意味を理解している人が日銀の正副総裁や審議委員に起用されているが、金融政策に無理解な政権となったら、人事もひどいものになる恐れがあるためだ。

ニュージーランド準備銀行(中央銀行)が約30年前、世界に先駆けて掲げたインフレ目標は世界中に広がった。そのニュージーランドでは、雇用目標を中央銀行に課すという新たな動きがある。先進国の中央銀行では雇用も事実上の目標になっているが、ニュージーランドではそれを明文化するのだ。

日本は先進国では最も遅くインフレ目標を導入したが、雇用目標ではそうした遅れは許されない。一刻も早く明文化してもらいたいものだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】放置すれば地獄の釜を開く政治家どもに任せて良いのか(゚д゚)!

東大や早稲田、慶応などの有名大学ならいざしらず、他の比較的有名大学では、男子学生はそうでもないでしょうが、女子学生は大変だったようです。また、有名大学であっても、博士課程まで行った人は、ポスドク問題があり大変でした。

高学歴女子の貧困も話題となった
1999年の大学生の就職内定率は男子の66.4%に対し、女子は57.7%と過去最低を記録していました(文部省・労働省調査、 10月1日時点)。「説明会の受付で女子だけ『全国転勤可能か?』ときかれ、中に入れてもらえなかった」など女子学生差別は後を絶ちません。「胸元が開いている服とかも女性の武器ですよ」といったセクハラ面接もひきつづきおきていました。

就職難の背景は、多くの人々、企業経営者や就活生や政治家なども含めて、この時には、大企業の大規模なリストラ・人員削減がおこなわれ、雇用危機が進行していることであると考えていました。長期にわたる金融引締めそのものががその原因と考える人は、政治家の中でもブログ冒頭の記事で高橋洋一氏があげている例外的な人たちくらいのものでした。

日本共産党は、雇用危機の解決のために緊急提案をだしました(1999年11月8日)。(1)異常なリストラ・解雇の横行をおさえ、雇用を守るルールを確立する(2)サービス残業の根絶、労働時間の短縮により雇用を拡大(3)国や自治体が介護、防災、教育など国民の暮らしと安全に不可欠な分野で新たな雇用を創出することなどを提案していました。

これは、今日考えると、そもそも雇用状況がかなり悪くなっているのに、このようなことを実施しても全く意味がありませんでした。しかし、この頃には、共産党に限らず、他の政党の政治家も含めて、雇用というと金融緩和など思いも浮かばず、似たり寄ったりの提案しかしていませんでした。

日本では、残業をなくせば260万人、労働時間をドイツなみの1500時間にすれば約600万人の雇用拡大効果があるといわれました。確かに、残業などの問題は、雇用にも関係はありますが、これはあくまで労働環境に属するものです。

こんなことをしても、結局当時は景気も悪いので、残業を減らしても新人を雇用するという企業は滅多にありませんでした。

また、男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法にもとづいて、女子学生の就職差別にみられる大企業の女性差別の体質を変えていくことなども主張されたりしましたが、これとてほとんど効果は期待できませんでした。

本当に実施すべきは、やはり大規模な金融緩和でした。これを行えば、慢性的な人手不足となり、女子の雇用を控えていた企業も、女子を雇用するようになります。いくら共産党あたりが、大企業の女性差別の体質を変えるようにと、提言したり、叫んだりしても、実際に雇用枠そのものが増えなければ全く意味はありませんでした。

以下は2011年の動画ですが、共産党の小池氏が就職難について語っています。



そうして、就職対策とはいっても金融緩和については全く述べるでもなく、ほとんど無意味なことを語っています。しかし、この小池氏だけが、雇用と金融政策との間に、密接な相関関係があることを知らないというわけではありません。むしろ、小池氏のような政治家のほうが日本では平均的です。ただし、世界水準では、金融緩和政策は雇用環境を良くするということで世界中の共産党が支持する政策です。なぜか、日本では共産党ですら、金融緩和には無関心です。

米国などでは、無論この頃より相当前から、FRB(米国中央銀行、日本の日銀にあたる)は雇用に責任があるとの考えれていました。米国では、雇用状況が悪くなれば、まずはFRBがやり玉にあげられるというのが一般的です。最近のFRBの金融緩和の目標は雇用状況の指標が用いられていました。

しかし、日本ではなぜか、まるで日米の経済構造が根本的に異なるかのように、雇用と金融政策は全く関係ないとみなされてきました。日本がデフレ・スパイラルの底に沈んでいたときに、厚生労働書の雇用に関係する部署とされる部署に勤めていた女性が、自分の上司が「自分には雇用がわからない」という旨のことを語っていたのでは、驚愕したという話がサイトを賑わしていたことがあります。

日本では、なぜか雇用というと、関係省庁は厚生労働省とされますが、これは全くの間違いです。だから、この女性の上司が「自分は雇用がわからない」というのは当然のことなのです。

実際に、雇用枠を拡大することができるのは、日本銀行です。実際、日銀やFRDが金融緩和をして、物価を数%あげることに成功すれば、それだけで他は何もしなくても、日米のような国々では一夜にして数百万の雇用が生まれます。これは、昔から経験則で知られていましたし、近年では理論的にも完璧に裏付けられています。

わずか数年前まで年越し派遣村が毎年年末に設営されていたが、金融緩和策のため最近はなくなった
厚生労働省は、雇用には直接関係ありません。関係あるのは、労務に関係することです。労働統計や、労働環境、雇用のミスマッチの解消などには関与できますが、雇用そのものには全くタッチできません。そもそも、金融緩和を実行できません。

現在でも、多くの政治家や、民間企業の人事担当者に聴いてみてみても雇用と金融政策が密接に結びつていると考えている人は少数派です。皆さんのまわりにも、この関係を知らない人は大勢いると思います。

こういう心もとない状況を考えると、今のままであれば、ポスト安倍は、また金融政策に無関心・無知な人が政権の中枢を占め、とんでないことになるのは必定です。

であれば、やはり高橋洋一氏が主張するように、雇用の確保を金融政策の目標に加えるべきです。そうしないと、ポスト安倍はとんでもないことになってしまうでしょう。

今の政治家は放置しておけば、地獄の釜を開きかねない・・・・・
金融政策に無関心であれば、地獄の釜を開くことになることを知らない政治家どもに日本の将来を預けるわけにはいきません。明文化し、馬鹿にでもできるように、義務としてしなければならなくなるようにすべきです。

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