2025年5月7日水曜日

中国ヘリ発艦で引き返す  尖閣周辺で飛行の民間機  機長、当時の状況証言—【私の論評】尖閣の危機:中国の領空侵犯と日本の防衛の限界を暴く

中国ヘリ発艦で引き返す  尖閣周辺で飛行の民間機  機長、当時の状況証言

まとめ
  • 尖閣上空飛行と退避:81歳のパイロット志摩弘章さんが自家用機で尖閣諸島上空に接近したが、中国船からヘリが飛び立ったため海保から「危険」と警告を受け、退避して引き返した。
  • 問題関心の背景:2010年の中国漁船と海保巡視船の衝突事件を機に尖閣問題に関心。2015年にはフライトプランを提出し、尖閣上空を飛行して島々の写真を撮影。
  • 飛行の目的:中国は「日本を脅せば屈する」と考えていると指摘。海保任せにせず、国民として問題提起するため今回の飛行を実行した。

81歳のパイロット志摩弘章さんが3日、自家用機で新石垣空港から尖閣諸島上空に向かい、島々まで10数キロに接近したが、中国船からヘリが飛び立ったため海上保安庁から「危険」との無線警告を受け、退避して引き返した。尖閣周辺では中国艦船が日本漁船の操業を妨害しており、民間人の上空接近も困難な現状が浮き彫りになった。

志摩さんは2010年の中国漁船と巡視船の衝突事件を機に尖閣問題に関心を持ち、民主党政権の対応に疑問を抱いた。2015年にはフライトプランを提出し、尖閣上空を飛行して島々の写真を撮影したが、当時は中国船は見られなかった。志摩さんは「中国は日本を脅せば屈すると考えているのではないか」と指摘し、海保に任せきりにせず、国民として問題提起するため今回の飛行を実行したと述べた。

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【私の論評】尖閣の危機:中国の領空侵犯と日本の防衛の限界を暴く

まとめ
  • 領海と領空のルールの違い:領海は無害通航権により外国船の通過が制限付きで認められるが、領空は許可なく飛行できず、主権は絶対。侵犯すれば撃墜もあり得る。
  • 尖閣での中国の挑発:中国公船が領海に侵入し、2025年5月3日には中国海警のヘリが尖閣領空を15分侵犯。海保が対応し、航空自衛隊が那覇基地からF-15でスクランブル発進。
  • 那覇基地の制約:那覇基地から尖閣(約400キロ)への到達に15分以上かかり、中国ヘリが退去後に到着した可能性が高い。地理的制約が防空の課題。
  • 石原慎太郎の尖閣購入計画:2012年、石原都知事が尖閣購入を計画したが、民主党政権が国有化で阻止。都の計画が実現していれば、実効支配が強化された可能性がある。
  • 日中の緊張:中国は尖閣を「釣魚島」と主張し、領海・領空での活動をエスカレート。日本は那覇基地のスクランブルや海保で対応するが、緊張は高まるばかりだ。

領海と領空は、国際法の下でまったく異なるルールに縛られている。領海は沿岸国の主権が及ぶ海域だ。海岸線から12海里、約22キロの範囲で、沿岸国は法を執行し、資源を管理する権限を持つ。外国の艦船には「無害通航権」がある。沿岸国の平和や安全を脅かさなければ、領海を通過できる。ただし、武器の使用やスパイ行為は厳禁だ。尖閣諸島周辺の領海では、中国公船がしばしば無害通航を主張して現れる。しかし、日本はこれを認めない。海上保安庁が毅然と退去を求めるのだ。

対して、領空は領土と領海の上空であり、沿岸国の主権は絶対である。外国の航空機は許可なく飛べない。無許可の領空侵犯は、主権への挑戦だ。警告を無視すれば、国際法上、撃墜もあり得る。領空は国家の核心なのだ。1944年のシカゴ条約は、領空の国家主権を明確に定める。過去、領空侵犯を理由に航空機が撃墜された例は少なくない。1983年、ソ連は大韓航空007便をスパイ機と誤認し、領空内で撃墜。269人全員が命を落とした。1969年には、北朝鮮が米海軍のEC-121偵察機を撃墜し、31人が死亡した。2015年、トルコがロシアのSu-24M攻撃機を17秒間の領空侵犯を理由に撃墜。2025年5月、ウクライナが黒海上でロシアのSu-30SM戦闘機2機を海上ドローンで撃墜。これは戦時中の防空戦だが、新たな技術の脅威を示した。民間機の場合、シカゴ条約の改正により、武力行使は最後の手段だ。警告や強制着陸が優先される。

航空自衛隊那覇基地を飛び立つF!5

尖閣上空での対応は特に厳しい。2025年5月3日、中国海警局のZ-9ヘリコプターが尖閣領空を約15分間侵犯した。海保がこれを検知し、航空自衛隊の那覇基地からF-15戦闘機2機がスクランブル発進した。しかし、那覇基地は尖閣から約400キロ離れている。F-15の最高速度(マッハ2.5、約3000キロ/時)でも、尖閣到達には約8~10分かかる。準備や離陸の時間を加えると、15分以上が必要だ。中国ヘリは低速(Z-9の最高速度は約315キロ/時)で短時間飛行し、侵犯後すぐに退去した可能性が高い。Xの投稿では、「那覇からのスクランブルでは間に合わない」「ヘリが退去してから到達した」との指摘がある。実際、戦闘機が到着した時点でヘリは領空を離れていた可能性は否定できない。この遅れは、尖閣の防空における那覇基地の地理的制約を浮き彫りにする。

那覇基地は南西諸島の防空の要だ。F-15やF-35が常時待機し、中国機の動向を監視する。2023年度、航空自衛隊は669回のスクランブルを実施し、7割以上が中国機対応だった。特に尖閣周辺では、中国の活動が活発化している。Xでは、尖閣に近い下地島や魚釣島への基地建設を求める声もあるが、現状、那覇基地が主力だ。


尖閣をめぐる状況は、2012年に転機を迎えた。石原慎太郎東京都知事が、尖閣の民有地を都が購入する計画を打ち出した。中国の挑発に対抗し、実効支配を強める狙いだった。石原氏は上陸や施設建設を構想し、14億円の寄付を集めた。だが、民主党政権はこれを阻止。

2012年9月11日、国が20億5000万円で尖閣を国有化した。もし都の計画が実現し、港や灯台が建設されていれば、中国公船の領海侵入は抑えられ、実効支配は盤石になったかもしれない。国有化後、中国公船の侵入は日常化し、日中関係は冷え込んだ。石原氏の構想が実行されていれば、日本はもっと強い立場で尖閣を守れたかもしれない。

領海と領空の違いは鮮明だ。領海では無害通航権により、外国船の通過が制限付きで認められる。だが、領空では自由な通過など存在しない。主権は鉄壁だ。領海での違反は海保や海軍が対処し、領空侵犯は空軍が即座に応じる。尖閣では、中国公船が領海に侵入し、無害通航を主張するが、日本は退去を求める。領空では、中国軍機やヘリの接近に対し、那覇基地からのスクランブルで対応する。志摩さんの事例では、中国船のヘリが飛び立ち、危険と判断した海保が退避を促した。領空の緊張と中国の動きが如実に表れている。

領海の外には接続水域や排他的経済水域があり、航行の自由はさらに広がる。だが、領空に緩衝地帯はない。尖閣問題は、領海と領空のルールが日中の対立を複雑にする。中国は尖閣を「釣魚島」と呼び、活動をエスカレートさせている。緊張は高まるばかりだ。日本は主権を守るため、揺るぎない姿勢を貫かなければならない。

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2025年5月6日火曜日

日米関税交渉、切り札は「日本の造船技術」か 米国が“造船大国”から転落の理由 海軍の艦艇にも影響が—【私の論評】日本の造船業が世界を圧倒!DVA85%の内製化力で米国・中国を凌駕する秘密

日米関税交渉、切り札は「日本の造船技術」か 米国が“造船大国”から転落の理由 海軍の艦艇にも影響が

まとめ
  • 米国造船業の衰退:米国はかつて世界一の造船能力を誇ったが、「ジョーンズ法」による競争力低下とレーガン政権の補助金撤廃により造船所が激減(300カ所閉鎖、残4カ所)。現在、船舶製造量は中国の230分の1で、コストは国際価格の4~5倍に上昇。
  • 海軍への影響:造船業の衰退は部品供給網や熟練工の不足を引き起こし、海軍艦艇の70%が2010年以前の老朽船(中国は70%が2010年以降)。「共食い整備」も増加。
  • 日米協力の可能性:日米関税交渉で日本の造船技術提供が交渉カードとなり、米国海軍は造船大国である日本(世界3位)と韓国(2位)に技術協力を求める。

日米関税交渉において、日本の造船技術の提供が日本側の重要な交渉カードである。

トランプ政権は、商業および軍事用の米国造船業の衰退に強い危機感を示し、復活を目指す。米国はかつて造船能力で世界一であったが、国連貿易開発会議によると、現在は中国が船舶製造量で大きくリードする。CSISの報告では、米国の造船能力は中国の230分の1に低迷している。

衰退の主因は、1920年に制定された「ジョーンズ法」である。この法律は、米国の港湾間輸送に使用する船舶を米国製に限定するもので、外国との競争を減らす一方、造船業の競争力を徐々に低下させた。

さらに、1981年のレーガン政権による補助金撤廃により、1983年から2013年に約300の造船所が閉鎖された。大型商業船舶を建造できる造船所はわずか4カ所となり、米国製タンカーやコンテナ船のコストは国際価格の4~5倍に跳ね上がった。

造船業の衰退は海軍艦艇にも影響を及ぼす。中国の軍艦の70%が2010年以降に進水した新しい船であるのに対し、米国は25%にとどまる。部品供給網の不足、老朽設備、熟練工不足が問題化し、部品不足による「共食い整備」も増加している。

こうした状況の中、米国海軍のフェラン長官は、造船大国である韓国(世界2位)および日本(世界3位)を訪問し、造船技術の協力や支援を求めている。

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【私の論評】日本の造船業が世界を圧倒!DVA85%の内製化力で米中を凌駕する秘密

まとめ
  • 日本の造船業のDVA優位性日本の造船業はDVA85%で、米国(70%)、中国(75%)、EU(80%)を圧倒。特に中国は技術依存により内製化が日本より低い。
  • 日米造船業の比較日本は海事クラスターと技術力で国内調達を強化(輸入比率10~15%)、米国はジョーンズ法の保護下で競争力低下、造船所激減(300カ所閉鎖、残4カ所)、輸入依存(30~35%)がDVAを下げる。
  • 米国の造船課題商業造船壊滅(シェア0.13%)、海軍艦艇の老朽化(2010年以降進水25%)、部品不足による「共食い整備」が戦略的劣位を露呈。
  • 日本の内製化の強さ製造業全体のDVA80%は、造船以外の自動車(82%)、機械(78%)、鉄鋼(80%)、化学(77%)、電子部品(70%)でも他国をリードし、経済(輸出GDP比14~15%)と安全保障を支える。
  • 世界情勢での有利性と未来日本の内製化は米中対立やサプライチェーン危機下で安定性を発揮。長年の努力で築いたDVAの高さは容易に覆せず、様々な分野で未来を切り開く。
国内付加価値比率(DVA)は、輸出品に占める国内で生み出された価値の割合を示す。国の製造業がどれだけ自国で作り上げているかを測る、骨太の指標だ。日本の造船業はDVA85%と圧倒的な高さを誇り、米国(70%)、中国(75%)、EU(80%)をぶっちぎる。特に中国は日本より10ポイント低く、内製化の弱さが露呈する。この数字を手に、日本と米国の造船業を徹底比較し、日本の製造業が世界の荒波でどう輝くかを明らかにする。2025年、混迷する世界情勢下、日本の内製化の強さは経済と安全保障の切り札だ。データはOECDのTiVA(2020年、2023年推定値)や信頼できる資料に基づく。

以下にDVAの算式を掲載する。

 DVA(国内付加価値比率) = 国内付加価値額 ÷ 売上高 × 100 (%)
    国内付加価値額は、以下の要素で構成される。
  • 人件費:従業員に支払われる賃金や給料など
  • 原材料費:製品の製造に必要な原材料の費用
  • その他費用:燃料費、水道光熱費、減価償却費など
日米中欧のDVA比較:日本の圧倒的強さ
 日本 |██████████████████████████████████████ 85%
 米国 |████████████████████████████ 70%
 中国 |██████████████████████████████ 75%
 EU   |████████████████████████████████ 80%
 (縦軸:DVA%、横軸:国、█=2.5%) 造船業DVA、2020年
日本の製造業全体のDVAは80%だ。米国75%、EU78%、中国70%を軽く超える。造船業に絞れば、日本のDVAは85%で、EU80%、中国75%、米国70%を大きく引き離す。中国は世界シェア46%で造船のトップだが、DVAは日本に遠く及ばない。高級エンジンや電子機器の25%を欧米や日本から輸入(中国税関総署、2023年)し、技術の壁にぶち当たる。EUはクルーズ船やエコシップで域内生産を固めるが、部品の20%はアジア頼み。米国は商業造船が壊滅状態で、シェアはわずか0.13%。部品の30~35%を中国や韓国に依存(U.S. Census Bureau、2023年)し、DVAは低迷する。日本の造船業は、国内でほぼ全てを賄う強靭な力で他国を圧倒する。中国の内製化の低さは、技術力の未熟さを物語り、日本の先進性を際立たせる。
日本と米国の造船業:DVAの真実
日本の造船業はDVA85%で、米国の70%を15ポイント突き放す。世界シェア17%、堂々の3位だ。川崎重工業や今治造船は、鋼材、エンジン、電子機器を国内で調達し、LNG運搬船やバルクキャリアを生み出す。部品の輸入は10~15%(財務省、2023年)に抑え、JFEスチールや三菱重工が材料と機器をガッチリ支える。経済産業省(2021年)によると、輸送機械の国内生産比率は53%で、造船はほぼ国内完結だ。海事クラスター――造船、鋼材、機器、研究機関の鉄壁の連携――がDVAを押し上げる。政府の支援、1956年から1990年代まで世界一だった技術の蓄積が、今日の強さを築いた。今治造船のバルクキャリアは部品の90%が国産(企業報告、2023年)。中国との領有権問題で、造船は安全保障の要だ。

今治造船

米国は対照的だ。商業造船は壊滅、シェア0.13%。海軍艦艇とジョーンズ法(米港湾間輸送は米国製船舶限定)で細々と生き残るが、部品の30~35%は中国や韓国からの輸入だ。1920年のジョーンズ法は国内市場を守るが、競争を避けた結果、技術は錆び、コストは国際価格の4~5倍(ハンギョレ、2023年)。1981年のレーガン政権が補助金をバッサリ切り、造船所は300カ所が消滅し、今は4カ所のみ(CSIS、2024年)。海軍艦艇は部品不足、戦前のボロボロの設備、職人の不足で苦しむ。2010年以降に進水した艦艇は25%にすぎず、中国の70%に遠く及ばない。ニューポートニューズ造船所の艦艇は部品の60%が国産(推定)だが、電子機器や特殊鋼は海外頼みだ。米国は戦略的劣位に喘ぐ。
日米の差を決めるもの
日本のDVAの高さは、産業の底力が支える。海事クラスターは造船所とJFEスチール、三菱重工を結び、輸入を極力排除する。LNGや水素燃料のエコシップ、高効率設計は日本の技術の結晶だ。最新設備と熟練工が生産を加速し、政府の融資や補助が後押しする。商船と海上自衛隊の需要は揺るぎない。米国は商業造船の市場が消滅し、グローバル依存がDVAを下げる。ジョーンズ法は守りの鎧だが、効率の悪さと設計ミス(リットラル戦闘艦の失態)が足を引っ張る。海軍艦艇の遅延や「共食い整備」(部品不足で他艦から流用)は、米国の弱さを象徴する。

コスト高で製造中止となった米海軍の沿海域戦闘艦(Littoral Combat Ship:LCS)

日本のDVAは経済と安全保障に直結する。造船業はGDPの1%、50万人の雇用を生み、輸出競争力を支える。米日同盟では、横須賀での米海軍艦艇の整備(MRO)が日本の戦略的価値を高める。米国はDVAの低さゆえに海軍戦力が弱体化し、中国の艦艇370隻(米287隻、2024年)に追いつけない。デルトロ海軍長官が2024年に日本と韓国に協力を求めたのは、米国の焦りの証だ。
世界情勢での日本の有利性
日本の製造業の内製化の高さは、2025年の世界で輝く。米中対立、ウクライナ危機、コロナ禍のサプライチェーン寸断――混沌の時代に、DVA85%の造船業は商船と海上自衛隊を確実に支える。中国の海洋進出を牽制し、安全保障の基盤を固める。経済では、造船業の1兆円の輸出(2023年)と50万人の雇用が地域を潤す。米国のDVA70%は部品不足と高コストで競争力を失い、EUの80%は域内依存に頼る。中国の75%は技術の未熟さが足枷だ。日本の内製化は、供給途絶のリスクを跳ね除け、経済の安定を約束する。

結論
日本の造船業はDVA85%で、米国70%、中国75%、EU80%を圧倒する。中国の内製化は日本より低く、技術依存が弱点だ。日本の海事クラスター、技術力、政策がDVAを高め、米国はジョーンズ法の呪縛と造船所の消滅で苦しむ。製造業全体の内製化の高さは、混迷する世界で日本の経済と安全保障を鉄壁に守る。

造船以外の分野――自動車(DVA82%)、機械製造(78%)、鉄鋼(80%)、化学(77%)、電子部品(70%)――もDVAで他国をリードする。トヨタの自動車、ファナックの機械、村田製作所の電子部品は、製造業輸出(GDPの約14~15%)と雇用(1000万人)を支える。半導体(TSMC熊本工場、2024年稼働)やエコ技術の内製化は、未来の成長を切り開く。

自動車は電動化、機械はAI、ロボット化、電子部品は5GやIoTで世界を牽引する可能性を秘める。日本のDVAの高さは、一夜にして築かれたものではない。戦後の復興から数十年にわたる技術開発、産業連携、職人の汗と努力の積み重ねだ。この優位性は、容易に覆せるものではない。2025年、日本のDVAは技術立国の誇りを示し、造船を超えた無限の未来を約束する。

出典
  • OECD TiVAデータベース(2020年)
  • 経済産業省「海外事業活動基本調査」(2021年)
  • 財務省「貿易統計」(2023年)
  • 内閣府「国民経済計算」(2023年)
  • U.S. Census Bureau「貿易データ」(2023年)
  • 中国税関総署「貿易統計」(2023年)
  • CSIS「Navigating the Competitive Seas」(2024年)
  • USNI「United States Must Improve Its Shipbuilding Capacity」(2024年)
  • Visual Capitalist「Global Shipbuilding Industry」(2024年)
  • VOA「US Navy Looking to S. Korean, Japanese Shipbuilders」(2024年)
  • Statista「Japan: Leading Ship Manufacturers」(2024年)
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2025年5月5日月曜日

自衛隊以下かよ! 米軍の「空飛ぶレーダーサイト」数が過去最低に いつになったら新型とどく?—【私の論評】米軍の危機と日本のAWACS優位性:グローバル化の代償とトランプの逆襲

自衛隊以下かよ! 米軍の「空飛ぶレーダーサイト」数が過去最低に いつになったら新型とどく?

まとめ

  • E-3の役割E-3「セントリー」はボーイング707基盤のAWACSで、360度レーダーによる索敵・指揮・情報共有を担い、米空軍の空中指揮中枢。
  • E-3の老朽化湾岸戦争などで活躍も、50年経過で16機に減。部品難や疲労により、2025年現在指揮統制に空白の危機。
  • E-7導入後継E-7「ウェッジテイル」はボーイング737基盤。高性能レーダー搭載、2027年から導入、26機配備まで約10年。
  • E-7の利点と課題オーストラリアなどで実績。整備性優れるが、移行期はE-3酷使と同盟国連携が課題。
  • 航空自衛隊E-767とE-2C/Dで18機運用。規模小さいがAWACS数で米超え。米はE-7移行で空の覇権維持が課題。

空中警戒管制機(AWACS)のE-3「セントリー」

空中警戒管制機(AWACS)のE-3「セントリー」は、1970年代の冷戦期に登場し、アメリカ空軍の空中指揮統制の中枢として湾岸戦争やアフガニスタンなど主要作戦で活躍。ボーイング707を基に、360度監視可能な回転式レーダードームを搭載し、索敵、戦術指揮、データリンクによる情報共有、陸海軍との連携を担う「空の中枢神経系」だ。しかし、製造から約50年が経ち、構造的疲労や部品供給難、メンテナンス負担増により、2025年現在は16機にまで減少。冷戦期の30機以上から大幅に縮小し、指揮統制に空白が生じる危機にある。

これを受け、アメリカ空軍は次世代AWACSとしてE-7「ウェッジテイル」の導入を決定。ボーイング737-700を基盤に、高性能な固定式フェーズドアレイ・レーダー「MESA」を備え、高リフレッシュレートの監視能力や柔軟な通信ネットワークを誇る。すでにオーストラリア、韓国、トルコで運用され、NATOやイギリスも採用。整備性とコスト面でも優れるが、2027年から本格導入予定で、最大26機の配備完了には約10年を要する見込み。移行期は既存E-3の酷使が続く厳しい状況だ。

一方、航空自衛隊はE-767を4機、E-2C/Dを14機、計18機のAWACS・AEW機を運用。国土規模や任務範囲がアメリカより小さいにもかかわらず、AWACS保有数で上回る充実ぶりを誇る。アメリカ空軍はE-3からE-7への移行期に、整備体制の刷新、海軍やNATO・同盟国との統合作戦による機能補完など、喫緊の課題に直面している。空の情報掌握が戦局を決める現代、空の覇権を維持するため、E-3の遺産からE-7の新時代への転換は、アメリカ空軍の将来を左右する重大な挑戦である。

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【私の論評】米軍の危機と日本のAWACS優位性:グローバル化の代償とトランプの逆襲

まとめ
  • 米軍の装備危機:潜水艦とAWACSは老朽化と製造能力低下に直面。ロサンゼルス級原潜は2028年頃に49隻から46隻に減少し、E-3「セントリー」は16機に激減。グローバル化による製造業の海外依存が原因。
  • 潜水艦の課題:ロサンゼルス級の退役で戦力低下。オハイオ級は戦略任務に特化し、通常海戦では限定的。寿命延長やバージニア級の強化で対応するが、建造遅延が問題。ディーゼル潜水艦技術は失われた。
  • AWACSの状況:E-3の老朽化で戦力空白。E-7導入は2027年から。部品供給難とメンテナンス負担が戦力維持を阻む。
  • 日本のAWACS優位性:航空自衛隊はE-767(4機)とE-2C/D(14機)の18機で世界最高水準。アメリカや他国を上回り、高性能レーダーと日米連携で島国防衛を確保。
  • トランプ政権の対応:グローバル化の代償で生産基盤が弱体化したため、経済合理性を犠牲にしてでも製造業の国内回帰を推進。関税や補助金でサプライチェーンを再編し、軍事産業の復活を目指す。


米海軍機主力のロサンゼルス級攻撃型原潜

米軍の装備は、老朽化と製造能力の低下という危機に瀕している。AWACSと潜水艦戦力は、その象徴だ。その背後には、グローバル化がもたらした製造業の空洞化が横たわる。一方、日本の航空自衛隊はAWACSで世界最高水準の戦力を誇り、対照的な姿を見せる。この現実を前に、トランプ政権がなぜ製造業の国内回帰にこだわるのか、その理由が浮かび上がる。

アメリカ海軍の潜水艦は、主力のロサンゼルス級攻撃型原潜の老朽化が進む。2020年代後半から2030年代にかけて退役が集中し、2028年頃には現在の49隻が46隻程度にまで落ち込む。この「谷間」は、中国の対艦ミサイルや潜水艦増強が脅威となるインド太平洋での抑止力を危うくする。オハイオ級弾道ミサイル原潜や巡航ミサイル原潜は戦略任務に特化し、通常の海戦では役に立たない。特に巡航ミサイル原潜の2028年退役は、火力の大幅な低下を意味する。

米海軍はロサンゼルス級の一部に核燃料交換とオーバーホールで寿命を延ばし、バージニア級新造艦にバージニア・ペイロード・モジュールを追加して艦体を延長、トマホークミサイル40発を搭載することで戦力の穴埋めを図る。しかし、建造の遅れが足を引っ張る。

AWACSも同様だ。アメリカ空軍のE-3「セントリー」は老朽化で2025年時点で16機に激減。次世代のE-7「ウェッジテイル」は2027年から導入予定だが、移行期の戦力空白は避けられない。部品供給の途絶やメンテナンスの負担が、戦力維持を困難にしている。

アメリカは1990年にディーゼル電気潜水艦を全廃し、すべての潜水艦を核動力原潜に統一した。バージニア級、オハイオ級、開発中のコロンビア級は長期間の潜航と高速性を誇るが、静粛性や沿岸作戦に優れるディーゼル潜水艦の技術は失われた。遠洋作戦に特化した原潜は強力だが、沿岸での柔軟性を欠き、技術の再構築は不可能に近い。

造船能力の低下も深刻だ。冷戦終結後、造船所は50以上から20未満に激減。原潜建造は2社に限られ、コロンビア級とバージニア級の同時建造で生産は限界に達する。核認証を受けた労働者の不足、低賃金による若手の離職、部品供給の途絶が追い打ちをかける。バージニア級の建造ペースは目標の年2隻に対し1.2~1.3隻にとどまり、2025年度予算では調達がさらに削減された。AUKUS協定でのオーストラリアへの潜水艦売却も、生産能力の不足で暗礁に乗り上げる。

サンフランシスコ海軍造船所

これらの問題の根底には、グローバル化による製造業の変容がある。アメリカはコスト削減を優先し、製造業の生産部門を中国や東南アジアにアウトソーシングした。デザインや研究開発は国内に残したが、部品製造は海外依存となり、国内のサプライチェーンは脆弱化した。造船所の労働力や専門技術も失われ、潜水艦の建造遅延やAWACSのメンテナンス難を招いた。

対照的に、日本の航空自衛隊はE-767(4機)とE-2C/D(14機)の計18機のAWACS・AEW機を運用し、世界最高水準の戦力を誇る。2025年現在、機数はアメリカのE-3(16機)、NATOのE-3(約14機)、ロシアのA-50(約10機)、中国のKJシリーズ(10~15機)を上回る。E-767はE-3並みの高性能レーダーとリンク16で広域監視を、E-2Dは精密監視とミサイル防衛で相互補完性を発揮。日本の狭い領空に最適化され、高度な訓練と日米連携が強みだ。

アメリカのE-3は老朽化し、E-7は未配備。ロシアのA-50は電子機器が時代遅れで、中国のKJ-500は実戦経験が乏しい。日本は機数と質のバランスで他国を圧倒し、島国防衛の情報掌握を確実にしている。中国の新型機やロシアのA-100の性能が未知数でも、日本のトップクラスの地位は揺るがない。


日本の優位性は頼もしいが、アメリカの状況は気がかりだ。潜水艦とAWACSの危機は、グローバル化の代償そのものだ。だからこそ、トランプ政権は製造業の国内回帰を強力に推し進める。経済合理性を多少犠牲にしても、製造業をアメリカに取り戻す戦略だ。グローバル化のコスト競争が、潜水艦やAWACSの生産基盤を弱体化させ、戦略的戦力の維持を危うくしたとの認識が根底にある。関税引き上げ、補助金による産業保護、労働力育成の強化を通じて、サプライチェーンを自国中心に再編し、軍事産業の持続可能性を確保しようとしている。

米潜水艦とAWACS戦力は、老朽化、戦力減少、造船・製造能力の低下に直面する。中国の海軍・航空戦力の急拡大を前に、産業基盤の再構築は待ったなしだ。米海軍と空軍は労働力育成やサプライチェーン投資を進めるが、2028年までの生産回復は厳しい。インド太平洋の抑止力維持は、この戦略的危機を乗り越えられるかにかかっている。アメリカの再起は、製造業の復活にかかっているのだ。

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