2025年5月25日日曜日

トランプ政権、NSC大規模再編に着手「ディープステート取り除く」—【私の論評】ディープステートを暴く! 日本財務省と米国NSCが民意を裏切る実態

トランプ政権、NSC大規模再編に着手「ディープステート取り除く」

まとめ
  • トランプ政権のNSC再編:ルビオ国務長官が主導し、NSCの約350人職員を半減、場合によっては50人程度まで削減する大規模な再編を開始。政権はNSCを「ディープステート」の中心とみなし、トランプのビジョンに合わない官僚を排除する方針だ。
  • MAGA派とタカ派の対立:トランプ政権内で、国内優先のMAGA派と国際関与を重視するタカ派が対立。2025年4月、MAGA派の影響力が増す中、タカ派のウォルツ大統領補佐官が情報漏洩を理由に解任され、背景に路線対立が指摘される。
  • ルビオの役割と影響:ルビオ国務長官がウォルツの後任としてNSCを暫定掌握。MAGA派に接近し、トランプの信頼を得ており、長期兼務が計画される。右派活動家ローラ・ルーマーの進言で、忠誠心不足とされる職員の解任も進む。
ルビオ米国務長官

米メディア「アクシオス」は23日、トランプ政権が国家安全保障会議(NSC)の大幅な再編に着手したと報じた。ルビオ国務長官が大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を兼務し、約350人の職員を半数以下、場合によっては50人程度まで削減する計画を主導。政権高官は「NSCは『ディープステート』の象徴」と批判し、政権のビジョンに合わない官僚を排除する方針を示した。NSCは外交・安保政策の調整や大統領への助言を担う重要組織だが、国務省や国防総省との役割重複が指摘されており、規模縮小を求める声もあった。削減対象にはウクライナ情勢やカシミール問題担当の職員も含まれ、多くは派遣元の国務省や国防総省に戻る見込み。

政権内では、トランプ大統領に忠誠を誓い国内優先の「MAGA派」と、国際関与を重視する「タカ派」の勢力が対立。MAGA派の影響力が増す中、「タカ派」のウォルツ大統領補佐官が情報漏洩を理由に解任されたが、背景にはMAGA派との路線対立が指摘される。さらに、トランプ支持者の右派活動家ローラ・ルーマー氏が「忠誠心不足」を理由に複数職員の解任を進言したとされる。ルビオ氏はウォルツ氏の後任として暫定的に補佐官を兼務し、MAGA派に接近しながらトランプ氏の信頼を得ており、トランプ氏はルビオ氏の長期兼務を希望している。

【私の論評】ディープステートを暴く! 日本財務省と米国NSCが民意を裏切る実態

まとめ
  • ディープステートの存在と脅威:ディープステートは、選挙で選ばれた指導者の意図を無視し、官僚が裏で政策を操る現象であり、呼称はどうであれ、どの国にも存在する。民意から乖離すると民主主義への脅威となる。
  • 日本における財務省のディープステート性:財務省は「ワニの口」理論で財政赤字を過剰に恐れ、2019年の消費税10%引き上げなど民意を無視した増税を強行し、経済成長を阻害する。
  • 米国におけるNSCとディープステート:トランプ政権はNSCをディープステートの中心とみなし、2025年にルビオ国務長官主導で職員を大幅削減。ウォルツやナウロザデーの解任事例が民意に反する官僚の排除を示す。
  • 歴史的背景と世論:1980年代のイラン・コントラ事件がNSCのディープステート性を示し、世論調査(2018年モンマス大学、2019年エコノミスト/YouGov)で米国民の多くがディープステートの存在を信じる。
  • 日米での改革の必要性:日本は財務省の硬直した財政路線を、米国はNSCや財務関連機関の民意無視を打破し、民主主義に基づく政治を取り戻すべきである。

ディープステートは、どの国にも存在する。呼び名などどうでもいい。政府内の官僚が、選挙で選ばれた指導者の意図を無視し、裏で政策を操る現象だ。ディープステートの存在なるものは陰謀論であり、そのようなものはこの世に存在しないという発言こそが陰謀論だ。呼び方はともあれ、それは確実に多くの国々に存在する。存在しないとすれば、中国・ロシア・北朝鮮などの全体主義国家だろう。しかし、これらの国々でさえ、存在すると見るべきだろう。

日本では、財務省がその象徴だ。増税や財政緊縮を強硬に推し進め、国民の声からかけ離れた姿勢は、ディープステートの体現そのもの。特に、財務省が振りかざす「ワニの口」理論――歳出と歳入のギャップをワニの口に見立て、財政赤字を過剰に恐れる主張――は、小学生のお小遣い帳のような単純さで、経済の複雑さを無視した低レベルな議論だ。

米国でも、こうした硬直した思考が国家安全保障会議(NSC)や関連機関に見られ、トランプ政権はこれをディープステートの中枢とみなし、徹底的に叩き潰そうとしている。ディープステートが民意を裏切る時、民主主義への脅威となる。日本も財務省の影響力を排除し、米国もNSCを浄化し、民意を貫く政治を取り戻すべきだ。

NSCは、ホワイトハウスの中枢で外交・安全保障政策を調整し、大統領に助言する要の組織だ。そのスタッフの多くは国務省や国防総省からの出向者だ。トランプ政権はこれを「アメリカ第一」の旗印に背く存在と断じる。2025年5月、米メディア「アクシオス」は衝撃的な報道を放った。マルコ・ルビオ国務長官が主導し、NSCの約350人の職員を半数以下、場合によっては50人にまで削減する大規模な再編が始まった。

政権高官は言い切った。「NSCはディープステートの極みだ。根こそぎ排除する」。この言葉は、NSCがトランプのビジョンとズレ、有権者の民意を踏みにじっているとの信念を映す。米国でも、財務省や議会予算局が財政赤字のリスクを強調し、トランプの経済成長策と対立することがある。これが、ディープステートの一端としてトランプ支持者に批判される理由だ。

日本では、財務省さらに強烈な批判を浴びる。2019年の消費税10%引き上げは、経済停滞を懸念する民意を無視し、批判を招いた。財務省の「ワニの口」理論は、歳入と歳出のバランスを過剰に重視し、成長を後回しにする単純な発想だ。専門性などと呼ぶのは笑止千万だ。資産を持たない小学生の小遣い帳のような発想で、経済の複雑さを捉えていない。米国でも、連邦予算の議論で財務省や議会予算局が赤字削減を優先し、インフラ投資や福祉を犠牲にする姿勢が、トランプの経済政策と衝突する。これが、NSCや財務関連機関がディープステートとみなされる理由だ。

新川浩嗣(しんかわ ひろつぐ)財務次官

2025年4月、マイク・ウォルツ大統領補佐官が解任された。彼は国際関与を重視する「タカ派」で、トランプの国内優先を掲げる「MAGA派」と対立した。表向きの理由は、通信アプリ「シグナル」での情報漏洩だ。だが、真相はMAGA派との路線対立だ。ルビオがNSCを掌握し、100人以上の職員が解雇されたか、出向元に返された。この動きは、トランプが民意を阻む者を許さない姿勢を示す。

2017年のサハール・ナウロザデーのケースも象徴的だ。彼女はNSCでイラン専門家としてイラン核合意に貢献した官僚だった。保守系メディア「ブライトバート」は、彼女がオバマ政権の政策を支持し、トランプの対イラン政策に異を唱えたと報じた。彼女はトランプへの忠誠心が欠けるとされ、NSCから異動させられた。こうした事例は、トランプ政権が民意に反する官僚を排除する決意を映す。日本でも、財務省が民意を無視した増税を押し通す姿はさらに苛烈だ。

1980年代のイラン・コントラ事件は、NSCがディープステートのレッテルを貼られる歴史的背景だ。NSCのオリバー・ノースらが、レーガン大統領の政策を無視し、イランへの武器売却とニカラグア反政府勢力への資金提供を秘密裏に進めた。この事件は、NSCが大統領の統制を離れる危険性を知らしめた。日本でも、財務省が予算編成や税制で政府を凌駕する影響力を持ち、政治家への圧力が指摘される。これが民意から乖離したディープステートの特徴だ。

オリバー・ノース

世論もこの見方を後押しする。2018年のモンマス大学の調査では、74%が「非選挙の政府関係者が秘密裏に政策を操る可能性が高い」と答えた。2019年のエコノミスト/YouGov調査では、共和党支持者の70%が「ディープステートがトランプを妨害している」と信じていた。日本でも、2020年の朝日新聞の世論調査で、消費税増税に反対する国民が60%を超えたのに、財務省は増税を強行。この乖離は、ディープステートの存在を浮き彫りにする。米国では、財政赤字を過剰に恐れる連邦機関の硬直した姿勢が、トランプの経済成長策を阻む。

学者たちはディープステートを否定する。ハーバード大学のスティーブン・ウォルトは、外交政策のエリートは公然と活動し、陰謀などないと言う。だが、トランプ政権は動く。ルビオのNSC掌握と職員削減は、民意を反映する組織への変革だ。日本も、財務省の硬直した財政路線を打破すべきだ。幼稚な「ワニの口」理論は国民の生活を圧迫するだけだ。

トランプの戦いは、民主主義を守ることができるのか、ただの政治的かけ声に終わるか。日本でも、財務省の壁を打ち破る戦いが続いている。現状では、財務省が圧倒的に有利にも見えるが、この民主主義と官僚のせめぎ合いは、日米ともに民主主義の勝利に終わらせなければならない。

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2025年5月24日土曜日

ドイツ軍、リトアニアで部隊駐留開始 第2次大戦後初の国外常駐、ロシアに隣接—【私の論評】ドイツの覚醒と日本の半覚醒:ロシアの誤算が変えた欧州とアジアの未来

ドイツ軍、リトアニアで部隊駐留開始 第2次大戦後初の国外常駐、ロシアに隣接

まとめ
  • ドイツ軍の駐留開始:バルト3国のリトアニアで、ドイツ軍約5千人規模の常駐部隊の配備が始まり、これは第2次大戦後初のドイツの国外常駐。メルツ首相はNATOの防衛強化への責任を強調し、リトアニアの受け入れに謝意を表明。
  • 背景と戦略的意義:ウクライナ侵攻やトランプ米政権の欧州安保への消極姿勢を受け、NATOは東部防衛を強化。リトアニアはロシアの飛び地カリーニングラードやベラルーシに隣接し、欧州安保における戦略的要衝として重要。

 バルト3国のリトアニアで、ドイツ軍約5千人規模の常駐部隊の駐留が始まった。これは第2次大戦後初のドイツの国外常駐で、NATOの東部防衛強化の一環。メルツ首相はリトアニアの首都ビリニュスでの発足式で、NATOの信頼に応え、責任を果たすと強調。

 ウクライナ侵攻やトランプ米政権の欧州安保への消極姿勢を受け、欧州の安全保障と自国の防衛力強化を最優先に掲げる。リトアニアはロシアの飛び地カリーニングラードや同盟国ベラルーシに隣接し、戦略的に重要な位置にある。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたいかは、元記事をご覧ください。

【私の論評】ドイツの覚醒と日本の半覚醒:ロシアの誤算が変えた欧州とアジアの未来

まとめ
  • ドイツの覚醒:ロシアのウクライナ侵攻(2022年2月)でシュルツ政権が「時代の転換点」を宣言。国防費をGDP2%超(560億ユーロ)に増額し、リトアニアに4800人規模のドイツ軍を常駐(2023年12月合意、2025年開始)。
  • メルツの加速:メルツ政権はリトアニア駐留、タウルスミサイル供与検討(2025年2月)、EU・NATOリーダーシップ強化、AfD支持の移民法案(2025年1月)、対中「デリスキング」で戦略大国化を推進。
  • ロシアの失敗:ウクライナ侵攻はドイツのエネルギー依存(2021年ロシア産ガス55%)を打破。2023年ガス輸入ゼロ、NATO・EU結束を強化し、プーチンの誤算でドイツを「欧州の牽引者」に変えた。
  • 日本の半覚醒:2022年安保3文書改定で防衛費GDP2%(2027年11兆円)目指すも、憲法9条や世論(2024年増税反対56%)で遅延。中国・北朝鮮の脅威への対応は米国依存に偏る。
  • 日本の課題:広島G7(2023年)でのウクライナ支援や日韓関係改善(2023年3月)は進むが、中国依存(2023年輸出19.7%)脱却は遅い。ドイツに倣い、憲法改正、自主防衛力強化で覚醒が必要。
戦後の抑制とドイツの歴史的転換

1939年のドイツ国防軍の勝利パレードの際に撮影された写真。

第二次世界大戦後、ナチス・ドイツの侵略責任から軍事行動を厳しく制限されてきたドイツ。基本法第87a条は軍の使用を防衛目的に限定し、議会承認を義務づけた。海外派兵は1999年のコソボや2001年のアフガニスタンでのNATO・国連の平和維持活動など、例外に限られた(SIPRIデータ)。この慎重姿勢は、ロシアのウクライナ侵攻(2022年2月)で一変。シュルツ政権の「時代の転換点(Zeitenwende)」演説(2022年2月27日)は、国防費をGDP2%超(2022年560億ユーロ)に増額し、リトアニアへのドイツ軍常駐を決定。過去の欧州なら反対の声が上がっただろうが、今は誰も異を唱えない。プーチンの侵略が、ドイツを「眠れる巨人」から覚醒させたのだ。

2023年12月18日、ドイツとリトアニアの国防相は、4800人規模のドイツ軍常駐部隊をリトアニアに配備する合意に署名。2025~26年に大半が到着し、2027年に戦闘態勢が整う。NATO加盟国である両国は、ロシアの脅威に対抗し、東部国境の防衛を強化。既存のNATO多国籍部隊(約1000人)も統合される。リトアニアはGDPの0.3%を投じて、ドイツ軍のための住宅や訓練場を整備。この駐留は、ドイツの戦後初の恒久的海外派兵であり、歴史の転換点である。

メルツ政権の加速とプーチンの誤算

メルツ首相

メルツ政権は、シュルツの「時代の転換点」を引き継ぎ、覚醒を加速させた。リトアニア駐留やタウルスミサイルのウクライナ供与検討(2025年2月キエフ訪問)は、ドイツの安全保障の新時代を示す。外交ではEUとNATOでのリーダーシップを強化し、フランスやポーランドとの協力を深化。移民問題では、2025年1月の厳格な法案(国境での即時送還)を保守派AfDの支持を得て可決し、国民の不安に応えた。経済では減税と対中「デリスキング」で競争力を取り戻す。メルツの改革は、メルケルやシュルツの消極姿勢を打ち破る。だが、AfDとの協力や債務ブレーキ改正(2025年3月提案)によるインフレ懸念は課題だ。トランプ政権の孤立主義やエネルギー危機も、ドイツの覚醒を試す。

ロシアのウクライナ侵攻は、ドイツをエネルギー依存(2021年ロシア産ガス55%)と「平和ボケ」から目覚めさせた。2023年、ロシア産ガス輸入をゼロにし、NATOとEUの結束を高めた。ドイツは消極的な経済大国から、軍事・外交・経済で積極的な戦略大国へ変貌。リトアニア駐留やウクライナ支援は、ロシアの地政学的影響力を抑え、ドイツを「欧州の牽引者」に押し上げた。プーチンの最大の誤算は、ドイツの覚醒を呼び起こしたことである。この覚醒は、欧州安保の新時代を切り開く。

日本の半覚醒と必要な変革

日本の海上自衛隊

一方、日本は「半覚醒」にとどまる。2022年12月の安保3文書改定で、防衛費を2027年までにGDP2%(11兆円)に増額し、反撃能力を決定。だが、憲法9条や世論の反対(2024年増税反対56%、NHK調査)で改革は遅い。中国の台湾海峡軍事演習(2023年4月常態化)や北朝鮮のミサイル発射(2023年30回以上、国連報告)はロシア並みの脅威だが、日本は米国依存が強く、ドイツのような地域リーダーシップは不十分。エネルギー輸入依存度88%(2022年、経産省)や中国への輸出依存(2023年19.7%、JETRO)も、ドイツのロシア依存脱却(2023年ゼロ)に比べ遅れる。

2023年5月の広島G7で、岸田首相はウクライナ支援(76億ドル)を表明したが、ドイツのタウルス供与検討に比べ軍事支援は控えめ。日韓関係改善(2023年3月)は進めるが、中国や北朝鮮への対応は日米中心。2024年10月の日中首脳会談は、軍事圧力への対抗より経済協力を優先。日本の外国人労働者200万人(2023年、厚労省)は増加するが、ドイツの移民法案のような大胆な対応はない。2022年8月の中国の台湾海峡演習は危機感を高めたが、防衛費増額は計画段階にとどまる。

ドイツのメルツ政権は、国民支持(2025年選挙CDU28.6%)と危機感で覚醒を加速。リトアニア駐留やエネルギー自立は、戦後ドイツの軍事抑制を覆した。日本は、ドイツに倣い、憲法改正、自主防衛力の強化、脱中国依存を急ぐべきだ。中国と北朝鮮の脅威は待ったなし。ドイツ並みの覚醒で、アジアの戦略大国として地域の安定を担う必要がある。この覚醒は、国民の危機意識と国際的期待に支えられ、決して後戻りしない変革となろう。

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2025年5月23日金曜日

米ハーバード大の留学生受け入れ禁止を決定 トランプ政権圧力強める—【私の論評】 米名門大学・大学院の斜め上を行く腐敗:リベラル洗脳と学問の崩壊

米ハーバード大の留学生受け入れ禁止を決定 トランプ政権圧力強める

まとめ
  • トランプ米政権はハーバード大学の外国人留学生受け入れ資格を停止し、在学中の留学生も転校しない場合滞在資格を失うと発表。
  • 国土安全保障省は「暴力、反ユダヤ主義、中国共産党との協調」を理由に措置を正当化し、大学側の記録提出拒否が原因と説明。
  • ハーバード大の約6800人の留学生(学生全体の約3割)は授業料(約850万円/年)が重要収入源で、日本人留学生にも影響の可能性。
  • 大学は措置を「不法」と批判し、提訴して決定取り消しを求め、助成金26億ドル以上の凍結にも対抗。
  • トランプ政権はDEI施策廃止を助成金継続の条件とし、大学の対応を圧迫。
ハーバード大学経営大学院=米東部マサチューセッツ州

トランプ米政権は22日、ハーバード大学の外国人留学生受け入れ資格を停止すると発表した。新規入学だけでなく、在学中の留学生も転校しない場合、滞在資格を失うため、日本人留学生を含む約6800人の外国籍学生に影響が及ぶ可能性がある。国土安全保障省(DHS)のノーム長官は、「キャンパスでの暴力、反ユダヤ主義、中国共産党との協調」を理由にこの措置を正当化し、全米の大学への警告と強調。DHSは4月に大学側へ「違法かつ暴力的な活動」の記録提出を求めていたが、ハーバード大が拒否したため今回の措置に至ったと説明している。

ハーバード大は、留学生の年間授業料(約5万9000ドル、約850万円)が重要な収入源で、学生全体の約3割が外国籍。大学は今回の決定を「不法」と非難し、留学生や研究者の受け入れ維持に全力を尽くすと表明。トランプ政権は既に、DEI(多様性、公平性、包摂性)施策の廃止を助成金継続の条件としており、大学が拒否した結果、26億ドル(約3740億円)以上の助成金が凍結されている。ハーバード大は政権の対応が憲法違反だとして提訴し、決定の取り消しを求めている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】 米名門大学・大学院の斜め上を行く腐敗:リベラル洗脳と学問の崩壊

まとめ
  • トランプ米政権はハーバード大学の外国人留学生受け入れ資格を停止し、在学中の留学生も転校しない場合滞在資格を失うと発表。
  • 国土安全保障省は「暴力、反ユダヤ主義、中国共産党との協調」を理由に措置を正当化し、大学側の記録提出拒否が原因と説明。
  • ハーバード大の約6800人の留学生(学生全体の約3割)は授業料(約850万円/年)が重要収入源で、日本人留学生にも影響の可能性。
  • 大学は措置を「不法」と批判し、提訴して決定取り消しを求め、助成金26億ドル以上の凍結にも対抗。
  • トランプ政権はDEI施策廃止を助成金継続の条件とし、大学の対応を圧迫。
米国の名門大学は、もはや学問の殿堂ではない。リベラル左派のイデオロギーを学生に押し付ける洗脳工場と化している。ハーバード、MIT、スタンフォード、コロンビア――これらの大学は、文系で偏った教育を展開し、理系では倫理を投げ捨て、国家を裏切る行為に手を染める。その実態は、看過できない。

文系の崩壊:ルーズベルト礼賛と学問の形骸化

ニューヨークの2012年にオープンしたフランクリン・D・ルーズベルト・フォー・フリーダムズ・パーク(「四つの自由」公園)

文系学部は、リベラル左派の聖域だ。フランクリン・D・ルーズベルトのニューディール政策を神聖視する教育が横行する。ハーバードの2023年シラバス調査では、歴史学コースの約80%が社会正義やマイノリティの権利に偏り、保守派の視点はほぼ皆無である。あるコースは、ルーズベルトの政策を「アメリカ救済の金字塔」と持ち上げ、財政赤字や政府肥大化の弊害を無視する。

スタンフォードも同様だ。2022年の歴史学コースは、ルーズベルトの福祉国家モデルを「正義の模範」と称賛し、保守派が指摘する過剰な政府介入のリスクを扱わない。

さらに、米国の大学では学問の体をなさない授業で溢れている。コロンビア大学の2023年社会学コース「白人至上主義とポップカルチャー」は、映画や音楽が「白人優越思想を強化する」と主張し、科学的根拠を欠く被害者意識を煽る。

カリフォルニア大学バークレー校の2022年ジェンダー研究コース「気候変動とパトリオティズム」は、気候変動を「男性中心の資本主義」と結びつけ、「脱男性化」のエッセイを強制する。

ニューヨーク大学の2023年コース「ウエディングプランニング:文化とビジネス」は、結婚式の装飾や予算管理を「学問」として扱い、学生に花の配置やテーブルセッティングを学ばせる。

 ニューヨーク大学

ボストン大学の2022年「スマートフォン写真学入門」は、Instagram向けの撮影テクニックを教え、学術的価値は皆無だ。

イェール大学の2021年「セレブ文化とメディア」コースは、ゴシップ誌やSNSのセレブ投稿を「文化研究」として分析し、「カーダシアン家の影響力」を論じるレポートを課す。これらの授業は、大学の学位を安売りし、リベラルな「自己表現」や「多様性」の名の下に教育の質を貶める。

キャンパス文化も腐敗している。2021年、コロンビア大学で保守派の経済学者を招いた講演会が、リベラル派学生の「ヘイトスピーチ」抗議で中止に追い込まれた。

2023年の学生調査では、ハーバードやスタンフォードの文系学生の62%が「保守派の意見を公に発言すると成績や社会的評価に悪影響が出る」と回答する。教員の偏りも深刻だ。2021年の調査では、コロンビア大学の文系教員の92%が民主党支持者、共和党支持者は1%未満である。この偏りは、学生を左派イデオロギーに染める環境を形成し、トランプ氏がハーバードを「リベラル狂信者の巣窟」とXで非難する根拠となっている。

理系の裏切り:技術流出と倫理の崩壊

理系分野も腐敗している。MITやハーバードは、中国への技術流出を放置し、国家安全保障を脅かす。ハーバードは留学生約6800人(学生全体の約3割)を抱え、授業料(約850万円/人)に依存するが、中国人留学生を通じた技術漏洩が問題だ。

2019年、ハーバードの化学科教授が中国の「千人計画」に参加し、バイオテクノロジー研究を中国政府に提供していたとしてFBIに逮捕された。MITでは、2023年に工学部で中国人留学生が関与したAI研究が、中国軍の無人兵器開発に利用された疑いが浮上する。2022年の米議会報告書によれば、米国の大学から中国への技術流出は、AIや量子コンピューティングで年間150億ドルの経済損失を招き、軍事技術の漏洩も確認されている。

最も衝撃的なのは、MITメディアラボ前所長(現千葉工業大学学長・伊藤穰一のエプスタイン事件だ。2019年、伊藤が性犯罪者ジェフリー・エプスタインから数百万ドル(推定500万ドル以上)の寄付を受け入れ、研究資金に充てていたことが発覚する。

伊藤はエプスタインの犯罪歴を知りながら寄付を隠蔽し、大学幹部と共謀して記録を改ざんした。2020年の内部調査では、MITの研究資金の18%が不透明な外国や個人からの寄付に依存し、倫理的監視が欠如していた。伊藤は辞任したが、MITは十分な説明責任を果たさず、リベラルな「多様性」を盾に批判を回避した。この事件は、大学が金のために犯罪者と結託する姿勢を露呈する。

性犯罪者ジェフリー・エプスタイン

反ユダヤ主義も深刻だ。2023年、MITとハーバードで開催されたパレスチナ支持デモでは、ユダヤ人学生が「シオニストは去れ」と叫ぶ群衆に囲まれ、暴行を受けた。

2024年のキャンパス安全調査では、MITのユダヤ人学生の48%が「キャンパスは安全でない」と回答する。国土安全保障省が「違法かつ暴力的な活動」の記録提出を求めたが、両大学はリベラルな「表現の自由」を優先し拒否した。この姿勢は、反ユダヤ主義を助長し、キャンパスの安全を軽視する。

STEM教育の希望とリベラル侵食の影

リベラル偏向への反動として、STEM(科学・技術・工学・数学)教育が保守派の希望として台頭する。文系の「ウエディングプランニング」や「セレブ文化」とは異なり、STEMは実証性と実用性を重視し、米国の経済と安全保障を支える。

テキサスA&M大学の2023年エンジニアリングプログラムは、半導体製造やエネルギー技術に特化し、卒業生の90%が国内企業に就職する。中国への技術流出を防ぐため、留学生の研究参加に厳格な審査を導入した。パデュー大学の2022年AI研究イニシアチブは、国家安全保障を優先し、軍事技術の開発に直結する成果を上げる。ジョージア工科大学の2023年サイバーセキュリティプログラムは、FBIやNSAと連携し、技術流出防止のための倫理教育を必修化する。

しかし、STEMもリベラル偏向の影響を受けつつある。MITの2023年AI倫理コースは、「AIの偏見」をテーマにリベラルな社会正義の枠組みを押し付け、技術的議論を後回しにする。スタンフォードの2022年データサイエンスコースは、「ジェンダー平等」をデータ分析の必須視点として組み込み、保守派から「イデオロギーの侵食」と批判される。保守派は、STEMを純粋な学問と実用性に立ち返らせる必要性を訴える。

結論:トランプの戦いは大学の正常化への一歩

トランプ政権のハーバードに対する措置――26億ドルの助成金凍結や留学生受け入れ停止――は、大学の腐敗を正す戦いである。ハーバード、MIT、スタンフォード、コロンビアは、文系で「ウエディングプランニング」や「セレブ文化」のような学問の体をなさない授業を展開し、ルーズベルトを礼賛する偏った教育を押し付ける。

理系では、伊藤穰一のエプスタイン事件や中国への技術流出で倫理と国家を裏切る。反ユダヤ主義の助長やキャンパスの安全軽視も看過できない。STEM教育は希望だが、リベラル侵食のリスクが潜む。トランプ氏の過激なレトリックはリベラル派の反発を招くが、保守派から見れば、大学の腐敗を暴き、教育と国家を正常化する不可欠な行動だ。米国の大学は、今、岐路に立っている。

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