2025年7月14日月曜日

安倍構想から11年──佐賀オスプレイ配備、ついに始動

まとめ
  • 佐賀空港へのオスプレイ配備は、2014年に安倍政権が防衛省を通じて佐賀県に検討を要請しており、11年の調整を経て2025年7月に正式配備が開始。8月中旬までに全17機が順次移駐予定。
  • この配備は「南西シフト」戦略の中核をなすもので、佐賀空港は台湾・東シナ海・朝鮮半島への即応展開に最適な地理的位置を持ち、沖縄の基地負担軽減にも寄与する。
  • V-22オスプレイは約1,600kmの航続距離と高い機動力を備え、佐賀から台湾・与那国・尖閣・上海圏まで往復可能。邦人救出(NEO)や災害対応など非戦闘任務にも活用できる。
  • 米海兵隊の統計では、オスプレイの重大事故率(3.16件/10万飛行時間)は旧型ヘリより低く、安全性は証明されている。自衛隊も訓練・整備体制を整備し、地元理解も進んでいる。
  • 配備は地域振興策と一体で進められ、「国防と地域活性化の両立」を掲げる取り組みに。抑止力としての意義は大きく、主権と平和を守る現実的かつ不可欠な手段である。
佐賀配備が意味する日本防衛の変化

佐賀駐屯地に到着した陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイ

2025年7月9日、陸上自衛隊は佐賀空港にV-22オスプレイを正式配備し、本格運用を開始した。これは単なる装備の更新ではない。日本の安全保障の地図を塗り替える決定的な一手である。

この配備は、防衛省が進める「南西シフト」構想の一環である。中国の東シナ海・台湾海峡への軍事的圧力が高まる中で、自衛隊は従来の北方偏重から脱却し、南西方面への重点的な戦力再配置を進めてきた。与那国、宮古、石垣、奄美などに新部隊を創設し、それらを支える拠点として九州・本州各地でも再編が進む。佐賀空港はその“空の中継拠点”として、まさに要の位置にある。

この構想の起点は、安倍晋三政権下にまでさかのぼる。2014年7月、防衛省は新たに導入されるオスプレイの配備先として佐賀空港を選定し、佐賀県に対し移転に関する検討を要請した。当時からこの空港は、地理的優位性に加えて既存の民間空港施設を活用できる点でも適地とされていた。また防衛省は、将来的に米海兵隊が共同で使用する可能性についても言及しており、日米同盟の観点からも戦略的価値は高い。

2014年7月 安倍首相

そして要請から11年。2025年、ついにオスプレイの佐賀配備が現実となった。8月中旬までに全17機が順次、佐賀に移駐する予定である。これに先立ち、陸自のオスプレイは暫定配備先である木更津駐屯地(千葉県)から高遊原分屯地(熊本県)に移動し、うち1機がすでに佐賀駐屯地に飛来している。

佐賀空港は、台湾、朝鮮半島、東シナ海に対する初動展開に適しており、沖縄の基地負担軽減にも寄与する配置といえる。航空自衛隊と陸上自衛隊の連携強化にもつながり、日本全体の防衛バランスの再構築に不可欠な拠点なのだ。

 オスプレイの性能と台湾有事への即応力

配備されたV-22オスプレイは、固定翼機の速度とヘリの柔軟性を併せ持つ航空機である。巡航速度は約450km/h、航続距離は約1,600km。給油なしで佐賀から沖縄本島、与那国、尖閣諸島、台湾、上海近郊までを往復可能とする。

この行動範囲は、戦力投射だけでなく、台湾有事や災害時の邦人救出(NEO)といった非戦闘任務にも極めて有効である。台湾には現在、約2万人の日本人が居住しており(外務省「令和5年 海外在留邦人数調査」)、いざという時に自力で彼らを救出できる手段を持つことは、主権国家として当然の備えである。
VSS事故履歴 クリックすると拡大

一部では、「オスプレイは危険だ」「墜落が多い」といった声もある。しかし米海兵隊の公式データ(FY2022)によれば、MV-22オスプレイのクラスA(重大)事故率は10万飛行時間あたり3.16件。これはCH-53E(12.27件)、CH-46E(9.45件)などの従来型ヘリよりはるかに低い。むしろ、統計的には安全な航空機の部類に入る。

自衛隊は2019年から長崎・相浦駐屯地で飛行訓練を重ね、整備体制や操縦士養成を段階的に進めてきた。騒音測定や住民説明会も継続的に行われ、地域との信頼構築も進んでいる。

国防と地域振興は両立できる


2024年末、防衛省と佐賀県、地元自治体との協議は大きく前進した。地域振興策や空港整備とセットでの受け入れ協議が本格化し、地元経済界からも前向きな声が上がっている。「基地は地域を壊すのではなく、守る存在であり得る」。そんな現実的な声が広がり始めているのだ。

オスプレイは、災害派遣や離島支援、有事の即応展開、邦人救出といったあらゆる任務に対応可能な“万能輸送機”である。そして何より重要なのは、敵に「日本は本気だ」と思わせる抑止力そのものが、この機体の配備によって実現するという点だ。

戦争を望まぬならば、備えよ。これは古来から変わらぬ現実の鉄則である。

佐賀の空が、未来の日本を守る前線となる。その新たな役割を、私たちは誇りと責任をもって受け止めなければならない。

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中国の異常接近:日本の対潜水艦戦能力の圧倒的強さを封じようとする試みか 

2025年6月13日

対潜水艦戦に優れる日本は戦略的優位を保つ。緊張緩和は必要だが、それは中国が挑発をやめることから始まる。

2025年7月13日日曜日

【主権の危機】中国の静かな侵略に立ち向かう豪米、日本はなぜ対策を怠るのか

 まとめ

  • 中国は統一戦線工作部を通じ、政治・教育・メディアに合法的な形を装って浸透し、他国の世論や政策決定を内部から操ろうとしている。
  • オーストラリアとアメリカは、外国勢力の影響力を可視化・抑制するための法制度(外国干渉防止法、FARA)を整備し、実際に孔子学院の撤退や外国資本の監視を進めている。
  • 日本には中国の影響工作を監視・規制する法律が存在せず、政治家と中国団体の関係、孔子学院の活動も不透明なままで放置されている。
  • その背後には、経済依存、政治的忖度、メディアの自主規制、国民の無関心といった複合的な要因があり、主権が静かに侵食されている。
  • 日本も主権国家として、外国エージェント登録制度を導入し、透明性と防衛意識を高める必要がある。放置すれば国家の未来が他国に委ねられる危険がある。
    中国の影響工作に立ち向かう豪米と沈黙する日本


    いま世界では、目に見えぬ戦争が進行中だ。銃も爆弾も不要。代わりに国家の内部に静かに入り込み、意志決定を操る──それが中国の“影響工作”である。

    オーストラリアやアメリカは、この静かな侵略にすでに対応を始めている。法制度を整備し、情報の透明化と影響力の遮断に乗り出した。しかし日本はどうか。相変わらず“丸腰”で、政治もメディアも沈黙を保ったまま、中国の浸透を許している。この国には、主権を守るという覚悟が決定的に欠けている。

    中国の“影響工作”とは何か

    中国は、相手国の主権と世論を内部から操ろうとする。中核を担うのが、中国共産党中央統一戦線工作部だ。政治家、研究者、メディア、教育機関、在外中国人組織を通じ、資金・人脈・宣伝活動を駆使して世論を中国寄りに傾けさせる。

    日本国内の孔子学院所在地マップ クリックすると拡大します

    具体的には、政治家への献金、大学や研究機関への寄付、孔子学院を使った教育界への影響、メディアへの広告出稿、さらにはSNSを使った世論誘導に至るまで、合法の皮を被った巧妙な工作が展開されている。これらが積み重なることで、気づかぬうちに国の意志決定そのものが歪められていく。

    “戦わずして勝つ”──それが中国の戦術であり、多くの国がその毒に晒されてきた。

    オーストラリアとアメリカは何をしたのか

    2017年、オーストラリアで中国による議員買収未遂事件が表面化。翌2018年には「外国干渉防止法」が制定された。外国勢力のために政治活動を行う者には登録義務が課され、違反すれば刑罰が科される。この法律によって、孔子学院の撤退が進み、不透明な資金の流れも次々と暴かれている。


    アメリカでは、1938年制定の「外国代理人登録法(FARA)」が再び注目を集めている。冷戦期にはソ連への対抗策として機能したが、いまや中国やロシアを見据えた制度として息を吹き返した。司法省のFARA登録部門では、外国のために活動する個人・団体の詳細が公開され、透明性が確保されている。

    2023年には、TikTokの親会社バイトダンスにもFARA適用の可能性が議論された。大学や研究機関に対しても、中国資本の関与が厳格に監視されている。アメリカには、「自由を守る」という強い覚悟がある。

    なぜ日本は“無防備”なのか

    日本には、外国の影響工作を規制・可視化する法律が存在しない。政治家と中国系団体との関係は不透明なままであり、孔子学院は今なお国内の大学に居座り続けている。メディアも“自己規制”という名の沈黙を貫いている。

    この背景には、経済依存、政治的忖度、メディアの左傾化、そして何より国民の無関心がある。中国は日本最大の貿易相手国。観光業、製造業、インフラなど、あらゆる分野が深く中国と結びついているため、政府も財界も波風を立てることを避けてきた。

    だが、その代償として、国家の根幹──主権──を売り渡してはいないか。

    中国の影響工作に対し、日本も今こそ“防衛線”を築くべき時だ。第一に導入すべきは、外国エージェント登録制度である。外国政府や外国の団体のために政治的・宣伝的な活動を行う個人や組織に対して、登録と情報公開を義務付ける制度である。特定外国勢力の影響下にある人物や団体を明示することで、国民が実態を把握できるようにする。孔子学院に関しても、資金の出所と活動実態を精査し、必要であれば閉鎖も辞さぬ覚悟が求められる。

    米国には「外国代理人登録義務違反(FARA)」が定められておりこれは、合衆国法典18篇951条の規定で、米国は外国政府の代理人として活動する者に対して、司法長官への届出を義務付けており、これに違反した場合は10年以下の拘禁刑又は罰金刑を科すというものだ。外国の工作員や協力者は外国の政府のために働く代理人だから、それさえ立証できれば、他に法律違反がなくても本条違反となる。

    マイケル・フリン

    マイケル・フリンは、トランプ政権の元国家安全保障補佐官であり、トルコ政府のためにロビー活動を行いながらFARA登録を怠っていた。また、ロシア政府関係者との接触についてFBIに虚偽の供述をしたため、2017年に起訴され有罪を認めた。FARA違反自体は起訴理由ではなかったが、捜査の一部として重視され、2020年にトランプ大統領から恩赦を受けた。彼の事件は、外国の影響と国家安全保障の問題を広く知らしめた象徴的な事例である。

    スパイ活動には、情報収集の他にも、偽情報を拡散して世論に影響を与える情報作戦、他国政府に働きかけて一定の政策を選択させようとする積極工作、他国国内での暗殺や実力行動、その他様々な活動形態がある。外国工作員・協力者の取締規定としては、「外国の代理人に登録義務を課し、その違反を罪に問う規定」は、合理的な規定と言える。

    国家の意志決定が、見えざる他国の意図によって操作されている──そんな現実を許してはならない。主権国家として当然の防衛措置を講じなければ、この国の未来は静かに奪われていく。

    【関連記事】

    中国の軍事挑発と日本の弱腰外交:日米同盟の危機を招く石破首相の矛盾 2025年7月11日
    対中の弱腰と対米の強硬の矛盾は、米国から「同盟を軽んじている」と受け取られかねない。日米同盟の基盤が揺らぐ危機は、決して小さくない。

    ハンター氏の司法取引「保留」 米地裁、異例の展開 バイデン氏次男―【私の論評】 ハンター・バイデン氏の裁判次第で、日本はバイデン政権とつきあい方を変えることになるか 2023年7月27日

    連邦議員が、ニューヨーク・タイムズ、ワシント・ポストで公開された中国プロパガンダに対する捜査を要求―【私の論評】我が国でもFARA(外国代理人登録法)を成立させよ 2020年2月10日


    【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに―【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け 2018年9月23日

    2025年7月12日土曜日

    日本の防衛費増額とNATOの新戦略:米国圧力下での未来の安全保障

    まとめ
    • 日本は米国からの防衛費増額の圧力に直面しているが、具体的な数字の要求は否定されているようだ。
    • 日本は2027年までにGDPの2%を防衛費に充てる計画を進めている。
    • NATOは2035年までに防衛費をGDPの5%に引き上げる目標を設定しており、その柔軟な枠組みが日本に参考になる可能性がある。
    • 日本はNATOの二層構造(軍事力と非軍事の安全保障投資)を学び、独自の防衛戦略を構築できるかもしれない。
    • 防衛費の増額と経済・社会福祉のバランスが課題であり、NATOの枠組みが参考になる可能性がある。
    日本は今、米国からの防衛費増額の圧力に直面している。だが、具体的な数字の要求はない。日本は自らの道を模索し、NATOの柔軟な枠組みから学びながら、防衛力強化と経済のバランスを追求している。この動きは、中国や北朝鮮の脅威、そして同盟国との協力を見据えたものだ

    アメリカからの圧力と日本の対応

    一部マスコミでは米国が日本の防衛費を5%にすることを要求したとされるが・・・

    2025年6月、トランプ政権が日本に防衛費をGDPの3.5%や5%に引き上げるよう求めたと報じられたが、日本政府はこれを否定。内閣官房長官の林芳正は「そのような事実はない」と断言し、金額よりも防衛能力の向上が重要だと強調した(Bloomberg, 2025-06-23)。2025年3月、米国防次官補がGDPの3%を求めたと報じられたが、日本はこれも否定(Kyodo News, 2025-03-06)。

    日本は2027年までにGDPの2%を達成する計画を進めており、2024年度の防衛費は7.7兆円、2025年度は9.9兆円(GDPの1.8%)に達する(Kyodo News, 2025-04-15)。この増額は、中国や北朝鮮の脅威に対応し、攻撃能力やミサイル防衛の強化を目指すものだ(AP News, 2024-12-27Carnegie Endowment for International Peace, 2023-02-28)。

    NATOの新しい防衛費枠組み


    NATOは2025年6月のハーグサミットで、防衛費を2035年までにGDPの5%に引き上げる目標を掲げた(NATO, 2025-06-27)。この目標は、核心的防衛支出(少なくとも3.5%)と、インフラ保護、サイバーセキュリティ、民生防衛、革新、防衛産業強化などの広範な安全保障投資(最大1.5%)に分かれる。NATO事務総長のマーク・ルッテは、ロシアの脅威を背景にこの目標を強く推進。2025年5月、彼はトランプの5%要求に応えつつ、欧州とカナダにとって実行可能な枠組みを提案した(Reuters, 2025-05-02CNBC, 2025-06-25)。ルッテは、トランプがNATOへのコミットメントを維持しつつ、欧州の貢献増を期待していると語り、柔軟な投資が多様な脅威に対応する鍵だと強調した(Politico, 2025-05-27)。

    このNATOの枠組みは、各国が自国のニーズに合わせて投資を調整できる点で柔軟だ。南欧諸国は災害対応を、ドイツはインフラを、北欧諸国はサイバーセキュリティを優先する。この柔軟性は、ハイブリッド戦争や気候関連リスクに対応する強みだが、共通基準の設定が難しい。元事務総長イェンス・ストルテンベルグは2021年に「NATOは最も弱いリンクの強さだけ」と警告した。この課題は、ルッテも認識しており、加盟国間の調整を重視している。

    日本の防衛戦略と経済のバランス

    日本にとって、NATOのこのアプローチは大きなヒントだ。核心的防衛と広範な安全保障投資の二層構造は、軍事力だけでなく、サイバー攻撃や経済安全保障への対応を可能にする。日本は、港湾や鉄道の保護、サイバー防衛への投資を増やすことで、NATOのような戦略を構築できる。ルッテが強調する負担共有の原則は、米国との同盟を強化する上で重要だ。

    米国は日本にさらなる負担を求めており、2025年3月の報道では、米国防次官補がGDPの3%を求めたとされるが、日本はこれを否定している(Kyodo News, 2025-03-06)。日本の2%目標は、NATOの2%目標を参考にしたことが明らかだ(Mainichi, 2025-06-27)。しかし、日本はNATOのメンバーではなく、平和憲法や米国への核抑止力依存という制約がある。NATOのモデルをそのまま適用するのは難しいが、柔軟な枠組みは日本の防衛戦略にヒントを与える。

    ルッテNATO事務総長

    日本の防衛費増額は、経済や社会福祉とのバランスも求められる。2024年12月、軍事費と債務返済のコスト上昇が課題として報じられた(Army Recognition, 2024-12-26)。NATOの柔軟な枠組みは、このバランスを取る参考になる。ルッテの推進する二層構造は、軍事力強化と同時に、インフラやサイバー防衛への投資を可能にする。日本の防衛政策は、憲法の制約や米国との同盟を考慮し、独自の道を模索する必要がある。

    結論として、日本は米国からの圧力に直面しているが、GDPの3.5%や5%の具体的な目標は求められていない。2027年までにGDPの2%を達成する計画を進める日本にとって、ルッテの推進するNATOの柔軟な防衛費枠組みは、軍事力と新たな安全保障課題のバランスを示す。2029年のNATOの目標見直しは、日本にとっても同盟国との協力を見直す機会になるだろう。

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    今後、中国が日本に牽制や妨害を仕掛ければ、台湾海峡通過は単独や同盟国と、さまざまな規模で繰り返されるだろう。国際水域の自由を貫き、地域の安定を確保する戦略だ。

    2025年7月11日金曜日

    中国の軍事挑発と日本の弱腰外交:日米同盟の危機を招く石破首相の矛盾

     まとめ

    • 中国の挑発行為:2025年7月9日・10日、中国軍のJH7戦闘爆撃機が東シナ海上空で航空自衛隊のYS11情報収集機に最短30メートルまで異常接近。6月にも同様の接近があり、9日には空対空ミサイルとみられる物体が確認された。
    • ドイツのレーザー照射事件:2025年7月2日、紅海のEU「アスピデス」作戦で、ドイツの偵察機が中国海軍からレーザー照射を受けた。ドイツは大使を召喚し強く非難。
    • 日独の対応の違い:日本は外交ルートで懸念を伝えるにとどまり、大使召喚や公開非難を避けた。ドイツは断固とした抗議を行い、EU・NATOを背景に強硬姿勢を示す。
    • 石破首相の発言:2025年7月9日、石破首相は参院選演説でトランプの25%関税政策に「なめられてたまるか」と反発。選挙向けの強硬姿勢だが、中国への対応は穏便。
    • 日米同盟への影響:日本の対中弱腰と対米強硬の矛盾は、米国から「同盟を軽んじている」と受け取られるリスクがある。トランプは日米安保を「不公平」と批判し、同盟の基盤が揺らぐ懸念がある。
    2025年7月、中国の傍若無人な行動が日本とドイツを揺さぶった。東シナ海では航空自衛隊の機体が中国軍機に異常接近され、紅海ではドイツの偵察機がレーザー照射を受けた。日本の対応は穏便、ドイツは断固。一方、石破茂首相は米国への強硬姿勢を打ち出しながら、中国には及び腰だ。この矛盾は日米同盟を危うくする。事態の真相とその裏に潜む危機を追う。
    中国の挑発、日本とドイツの試練

    YS-11EB 電波情報収集機

    2025年7月9日と10日、東シナ海上空で航空自衛隊のYS11情報収集機が中国軍のJH7戦闘爆撃機に追い詰められた。9日、15分間にわたり最短30メートルまで接近。10日も10分間、最短60メートルまで迫られた。YS11は電波情報を集める特殊機体だ。9日にはJH7の翼下に空対空ミサイルらしき物体が確認された。6月7日・8日にも海上自衛隊の哨戒機が同様の接近を受けている。被害はなかったが、衝突の危険は明らか。日本政府は中国に懸念を伝え、再発防止を求めたが、強い非難はなかった(出典:Nippon.com)。

    EUの新たな紅海での作戦「アスパイド作戦」

    一方、7月2日、紅海でEUの「アスピデス」作戦に参加中のドイツ偵察機(MSP)が中国海軍の軍艦からレーザー照射を受けた。「アスピデス」は紅海の商船をフーシ派の攻撃から守り、航行の自由を確保する任務だ。ドイツ国防省は「乗員と任務が危険にさらされた」と断じ、外務省は中国大使を召喚。「許しがたい」と声を上げた。任務は中断、機体はジブチに着陸したが、EUの安全保障に暗雲が垂れ込めた。中国は「事実無根」と否定したが、ドイツの対応は揺るぎなかった(出典:Reuters)。

    日独の対応、明暗を分ける

    佐藤正久参議院議員

    日本の対応は慎重すぎる。外務省は電話で懸念を伝え、再発防止を求めたが、大使召喚や公開非難は控えた(出典:India Today)。ドイツは対照的だ。中国大使を呼び出し、公式声明で非難の声を響かせた(出典:The Guardian)。佐藤正久参議院議員は「日本の曖昧さは安全保障を弱める。ドイツの明確な姿勢を見習うべきだ」と喝破する(@SatoMasahisa, 2025年7月10日)。日本の遠慮は中国との経済・外交関係への配慮か。ドイツはEUとNATOの後ろ盾で強気に出る。この差は国の立ち位置を映し出す。

    石破首相の矛盾、同盟の危機

    石破茂首相は7月9日の参院選演説で、トランプ米政権の25%関税政策に噛みついた。「国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか」と吠えた(出典:India Today)。選挙向けの強気な言葉だが、米国との交渉を意識したものだ。しかし、中国の領海侵犯や軍機接近には穏便な対応に終始。佐藤正久は「中国には弱腰、米国には強気。この矛盾は日本の安全保障を危うくする」と断じる(@SatoMasahisa, 2025年7月10日)。


    トランプは日米安保条約を「不公平」と切り捨て、貿易と安全保障を絡める(出典:Bloomberg, 2025年3月7日)。日本の対米強硬姿勢は同盟に亀裂を生む。Reutersは「日本の発言は緊張を高める」と警告する(Reuters, 2025年7月7日)。対中の弱腰と対米の強硬の矛盾は、米国から「同盟を軽んじている」と受け取られかねない。日米同盟の基盤が揺らぐ危機は、決して小さくない。

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    参政党・神谷宗幣の安全保障論:在日米軍依存の減少は現実的か?暴かれるドローンの落とし穴  2025年7月9日
    神谷のビジョンは情熱的だが、情熱だけでは足りない。私が気づくようなドローンの落とし穴を放置し、専門家からも批判されるようでは、参政党の未来は危うい。

    トランプの関税圧力と日本の参院選:日米貿易交渉の行方を握る自民党内の攻防 2025年7月8日
    日本の未来は、参院選の結果と自民党内の力のせめぎ合いに懸かっている。トランプの強硬策にどう立ち向かうか。日本は今、試されている。

    トランプの「公平」に挑む英国の勝利と日本の危機:石破退陣でTPPを世界ルールに! 2025年7月2日 
    日本は関税の危機を跳ね返し、自由貿易の旗手として世界に立つ。トランプ氏の「公平」を逆手に取れ。日本にその力はある。

    参政党の急躍進と日本保守党の台頭:2025年参院選で保守層の選択肢が激変 2025年7月6日
    保守派も含めた有権者の政治への熱が、今回の選挙戦をさらに激化させるだろう。

    2025年東京都議選の衝撃結果と参院選への影響 2025年6月23日
    東京都議選の結果は、来るべき参院選への重要な示唆を与える。国会での与野党の力関係が拮抗すれば、より活発な政策議論が期待され、国民にとってより良い政治環境が整うだろう。

    2025年7月10日木曜日

    米国原潜アイスランドへ歴史的初寄港:北極海の新時代と日本の安全保障への波及

    まとめ
    • 歴史的寄港:2025年7月9日、米海軍の原潜「USS Newport News」がアイスランドのグンダルタンギに初停泊し、米国とNATOの北極海での安全保障強化を示した。
    • 戦略的背景:ロシアと中国の北極海活動増加に対抗し、GIUK海峡の監視を強化。アイスランドはNATO加盟国として戦略的要衝の役割を担う。
    • 日本の安全保障との関連:直接的影響はないが、米国のグローバル戦略が日本の安全保障環境を安定させ、北極海の経済・安全保障的関心とつながる。
    • 環境と地元反応:地元住民や環境団体は海洋生態系や放射能リスクを懸念。米国は核兵器非搭載を明言し、安全対策を強調する。
    • 今後の展望:日本は北極海航路やケーブルプロジェクトを活用し、米国との同盟を強化。環境問題と安全保障のバランスが課題となる。
    アイスランドのグンダルタンギに寄港した米海軍のロサンゼルス型攻撃原潜(USS Newport News)

    2025年7月9日、米海軍のロサンゼルス型攻撃原潜(USS Newport News)がアイスランドのグンダルタンギに寄港した。これはアイスランドの岸壁に米国の原潜が初めて停泊した歴史的な出来事であり、北極海の安全保障を強化し、米国とNATOの結束を示す動きだ。潜水艦は乗員約143名で、トマホークミサイルやMK-48魚雷を装備するが、核兵器は搭載していない。この寄港は、ロシアや中国の北極海での活動増加に対抗する米国とアイスランドの戦略的協力の象徴であり、日本の安全保障にも間接的に影響を与える可能性がある。以下、この出来事の背景、意義、そして日本との関連を詳しく解説する。

    寄港の背景と北極海の戦略的意味


    アイスランドはNATO加盟国であり、北大西洋の戦略的要衝として冷戦時代から重要な役割を担ってきた。近年、気候変動による海氷の減少で北極海の商業航路や資源開発が活発化し、ロシアが軍事基地を拡張し、中国が「極地シルクロード」構想を進める中、GIUK(グリーンランド、アイスランド、英国)海峡の監視が一層重要になっている。2023年初頭、アイスランドは米国の核動力潜水艦の訪問を許可し、今回の寄港はその7回目にあたる。米国海軍のムンス提督は、この寄港が「同盟国へのコミットメントと対抗勢力への抑止力」を示すと強調した。アイスランド政府も、監視能力の強化や水中インフラの保護に寄与すると評価している。

    しかし、地元では議論も起きている。一部の住民や環境団体は、原潜の寄港が海洋生態系や放射能リスクを高めると懸念し、アイスランドの核兵器非保有方針にも注目が集まる。米国は核兵器非搭載を明言し、安全対策を強調するが、北極の軍事化に対する不安は根強い。過去には2023年4月にUSS San Juanがアイスランド沖で補給を行ったが、岸壁での停泊は今回が初であり、米国とアイスランドの協力が新たな段階に入ったことを示している。

    日本の安全保障とのつながり

    日本の安全保障は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事拡張への対応に重点を置いており、2022年に策定された国家安全保障戦略(NSS)は、ミサイル防衛、サイバーセキュリティ、国際協力を強化している。アイスランドへの原潜寄港は直接的に日本に影響しないが、米国のグローバルな安全保障戦略を通じて間接的な関連がある。まず、米国が北極海でロシアの活動を牽制することで、グローバルな安全保障環境が安定し、日本を含む同盟国に利益をもたらす。特に、北朝鮮や中国の脅威に対抗する米国のプレゼンスは、日本にとって重要な後ろ盾だ。

    ロシア太平洋艦隊旗艦 ミサイル巡洋艦「ワリャグ」

    さらに、日本は北極海に戦略的関心を持つ。2015年の「日本の北極圏政策」では、気候変動、航路活用、資源開発、安全保障を重視し、北極海経由の海底ケーブルプロジェクトも進行中だ。このケーブルはアイスランドと日本を結ぶもので、経済的・安全保障上の協力を強化する可能性がある。たとえば、2022年に報じられたプロジェクトは、データ通信の高速化とサイバーセキュリティの向上を目指している(出典: Reykjavik Grapevine, 2022年7月13日)。

    また、冷戦期に日本は北太平洋で対ソ連の潜水艦監視に協力した経験があり、現在の米国の行動はこれと類似の戦略的枠組みと見なせる。NATOとの関係も重要だ。日本はNATOのパートナー国であり、アイスランドでの米国とNATOの活動は、日本の安全保障に間接的に寄与する。たとえば、2025年8月の大阪万博でのNATO参加は、日米同盟とNATOの連携強化を示す(出典: NATO公式サイト, 2025年7月)。米国のアイスランドでの行動は、こうしたグローバルな協力網を強化し、日本の安全保障環境を安定させる一助となる。

    今後の展望と日本の対応

    この寄港は、北極海の地政学的競争が激化する中、米国とNATOのプレゼンス強化を示す。ロシアはこれをNATOの拡張と批判し、中国も対抗措置を取る可能性がある。一方、日本は北極海の安全保障や経済的機会を注視し、米国との同盟を基盤に戦略を進める必要がある。たとえば、北極海航路の活用は日本のエネルギー安全保障や貿易に影響し、米国の活動はこれを支える基盤となる。しかし、環境や地元住民の懸念も無視できない。日本も海洋環境保護に取り組んでおり、アイスランドでの議論は日本の政策に教訓を与える。米国との協力深化は、日本の安全保障を強化するが、同時に北極海の軍事化や環境問題へのバランスが求められる。日本は、サイバーセキュリティやミサイル防衛の強化に加え、北極海での国際協力を通じて、グローバルな安全保障に積極的に関与すべきだ。

    オホーツク海上を飛行する日本のP3C哨戒機

    2025年7月9日のUSS Newport Newsのアイスランド寄港は、北極海の安全保障を強化し、米国とNATOの結束を示す歴史的な出来事だ。日本には直接的影響はないが、米国のグローバル戦略や北極海の経済・安全保障的関心を通じて、日本の安全保障に間接的に寄与する。ロシアや中国の動向、環境問題への対応を注視しつつ、日本は米国との同盟を強化し、北極海での協力を深めるべきだ。この寄港は、変わりゆく世界の安全保障環境の中で、日本が新たな役割を模索するきっかけとなるだろう。

    参照
  • Reykjavik Grapevine: Submarine Cable Will Give Iceland Direct Telecommunications Access to Japan, 2022年7月13日
    https://grapevine.is/news/2022/07/13/submarine-cable-will-give-iceland-direct-telecommunications-access-to-japan/
  • Reykjavik Grapevine: US Nuclear Submarine Docks In Hvalfjörður, 2025年7月9日
    https://grapevine.is/news/2025/07/09/us-nuclear-submarine-docks-in-hvalfjordur/
  • Submarine Cable Map, 2025年
    https://www.submarinecablemap.com/
  • The Diplomat: Taiwan’s Subsea Cable Security and China’s Growing Regional Influence, 2023年3月
    https://thediplomat.com/2023/03/taiwans-subsea-cable-security-and-chinas-growing-regional-influence/
  • The Arctic Institute: Japan Steps Up Its Arctic Engagement, 2025年
    https://www.thearcticinstitute.org/japan-steps-up-arctic-engagement/
  • Stimson Center: Back to the Future? The Implications of Growing Strategic Competition in the Arctic for the US-Japan Alliance, 2025年
    https://www.stimson.org/2025/implications-strategic-competition-arctic-us-japan-alliance/
  • NATO: NATO to participate at World Expo 2025 in Osaka, Japan, 2025年7月
    https://www.nato.int/cps/en/natohq/news_236850.htm
  • 【関連記事】

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    2025年7月9日水曜日

    参政党・神谷宗幣の安全保障論:在日米軍依存の減少は現実的か?暴かれるドローンの落とし穴

    まとめ

    • 神谷宗幣の発言と参政党の政策は、在日米軍依存の減少を目指す点で一致。
    • 私が指摘する神谷の盲点は、ドローンやAIに偏重し、索敵能力や情報統合能力を見落としていること。
    • ウクライナの「蜘蛛の巣」作戦やイスラエルの対イラン攻撃は、索敵と情報統合が現代戦の鍵であることを示す。
    • 高橋洋一は神谷の安全保障理解を「幼稚園レベル」と批判し、党首の資質に疑問を投げかける。
    • 神谷の専門性欠如は、参政党の信頼性と選挙での支持に影響を与える可能性がある。

    参政党の神谷宗幣代表

    参政党の神谷宗幣代表が打ち出す安全保障論は、日本の自主防衛を掲げ、在日米軍への依存を減らす大胆なビジョンだ。しかし、その主張には私のような一般人でも気づく致命的な穴がある。2025年参院選を前に、この問題は党の信頼性や神谷の指導力を揺さぶっている。以下で、その核心を明らかにする。

    神谷の主張と参政党の政策:米軍依存からの脱却

    2025年7月6日、ニコニコ動画の「ネット党首討論 参院選2025」で、神谷は日本の国防が在日米軍に頼りすぎていると問題視した。段階的な米軍撤退と日米地位協定の見直しを訴え、軍事費増強には慎重な姿勢を示した。高額な外国製武器購入を批判し、サイバー戦争対策、スパイ防止法、AIやドローンの活用を優先すべきだと力説した。特に、プロゲーマーを起用したドローン部隊の創設や国産兵器の開発を提案し、専守防衛を前提に内需拡大につながる軍拡なら支持すると述べた。

    ヘグセス米国防長官(右)と中谷防衛相(3月30日)

    この発言は、日米集団防衛体制を揺さぶるものと受け止められる可能性がある。参政党の改定憲法草案に「外国軍の駐留や基地設置を禁止する方針が明記されている」という情報は、2025年初頭の情報源(例:Wikipedia, 2025-07-03)やX上の投稿(例@kogurenob, 2025-07-07)で確認されていた。しかし、最新の調査(2025年7月9日時点)では、参政党の公式サイト(参政党公式サイト)や最新の政策カタログ(参政党政策カタログ)にこの記述は見当たらない。Xの投稿(例:@tohgafujita, 2025-07-07)によると、この方針が選挙戦での批判や外交上の現実的配慮により削除された可能性が指摘されている。ただし、削除の公式発表や理由は不明であり、党の公式見解を確認する必要がある。神谷の発言は引き続き米軍依存の脱却を訴えており、過去の草案と一致していた時期があったことは事実と見なせる。これは、日本の安全保障はもとより、アジア太平洋地域、いや世界の安全保障から言ってもあり得ない認識と言わざるを得ない。

    神谷の盲点:ドローン偏重の落とし穴

    神谷はドローンやAIの軍事活用を声高に叫ぶが、現代戦の核心である索敵能力(人的・電波など・公式資料からの情報収集能力)や情報統合能力には一切触れていない。私のような一般人でも、この見落としは明らかだ。ウクライナの「蜘蛛の巣」作戦は、ドローン攻撃の成功例だが、ウクライナ軍と米軍の高度な索敵能力と情報統合能力が支えた。

    イスラエルによる対イラン攻撃も、精密な索敵と情報統合が鍵だった。敵を見つけられなければ、どんなドローンや兵器も無力だ。索敵能力があっても、情報が統合されなければ軍事力は機能しない。神谷がこの基本を見落としているのは、彼の安全保障論が表面的である証拠だ。ドローンは軍事的には、道具にすぎない。

    専門家の批判と選挙への影響:信頼性の危機

    高橋洋一チャンネル

    経済学者で安全保障に詳しい高橋洋一氏は、YouTube動画(高橋洋一チャンネル)で、神谷の主張を「幼稚園レベル」「安全保障0点」「国際舞台に立てない」 「政党の代表どころか、議員としても相応しくない」と一刀両断した。高橋氏の批判は、私が感じた神谷の知識不足を裏付ける。安全保障は国家の命運を握る。党代表が基本を見誤るのは、党の信頼を揺さぶる。神谷のビジョンは情熱的だが、情熱だけでは足りない。私が気づくようなドローンの落とし穴を放置し、専門家からもその安全保障感を批判されるようでは、参政党の未来は危うい。日本は米国との同盟を基盤に安全保障を構築している。米軍撤退は地域の安定を崩しかねない。選挙戦で有権者がどう判断するか、注目が集まる。 【関連記事】

    トランプの関税圧力と日本の参院選:日米貿易交渉の行方を握る自民党内の攻防 2025年7月8日
    日本の未来は、参院選の結果と自民党内の力のせめぎ合いに懸かっている。トランプの強硬策にどう立ち向かうか。日本は今、試されている。

    トランプ関税30~35%の衝撃:日本経済と参院選で自民党を襲う危機 2025年7月3日
    日本の防衛費増への消極姿勢や中国寄りの経済協力が、トランプの不満を煽り、交渉を複雑化させる。歴史的傾向、現在の政治的脆弱性、選挙直前のタイミングを考えれば、支持率低下は確実だ。

    トランプの「公平」に挑む英国の勝利と日本の危機:石破退陣でTPPを世界ルールに! 2025年7月2日
    日本は関税の危機を跳ね返し、自由貿易の旗手として世界に立つ。トランプ氏の「公平」を逆手に取れ。日本にその力はある。

    保守派も含めた有権者の政治への熱が、今回の選挙戦をさらに激化させるだろう。

    2025年東京都議選の衝撃結果と参院選への影響 2025年6月23日
    東京都議選の結果は、来るべき参院選への重要な示唆を与える。国会での与野党の力関係が拮抗すれば、より活発な政策議論が期待され、国民にとってより良い政治環境が整うだろう。

    2025年7月8日火曜日

    トランプの関税圧力と日本の参院選:日米貿易交渉の行方を握る自民党内の攻防

    まとめ
    • トランプ大統領は2025年7月7日、日本に25%の関税を課す書簡を石破総理大臣に送り、貿易赤字是正と米国内製造促進を狙う。
    • 日本の参院選(7月20日)は交渉に影響を与え、米国財務長官が選挙を「日本の制約」と指摘。
    • 自民党内の農業保護派は農産物譲歩に反対し、参院選敗北で主導権を握れば交渉が難航する。
    • 「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」が主導すれば、自由貿易を推進し、米国に外交的対抗を試みる。
    • 参院選結果と自民党内の力学が交渉の行方を左右し、日本は日米同盟と国内バランスの間で試される。
    トランプの関税通知と日本の動向

    記者会見で、トランプ米大統領から石破茂首相への関税に関する書簡を示すレビット報道官

    2025年7月7日、トランプ米大統領は日本の石破茂首相に書簡を送り、8月1日から日本製品に25%の関税を課すと宣言した。この書簡は、米国が抱える対日貿易赤字を叩き潰し、米国内の製造業を復活させるための強烈な一撃だ。書簡はTruth Socialで公開され、韓国の李在明大統領にもほぼ同じ内容が送られた。以下はその全文だ。(日本語訳はこの記事一番最後「続きを読む」に掲載します)

    Letter to Prime Minister Shigeru Ishiba of Japan
    Dear Prime Minister Ishiba, 
    For many years, the United States has experienced a long-term, and very persistent, Trade Deficit with Japan. Starting on August 1, 2025, we will charge Japan a Tariff of only 25% on any and all Japanese products sent into the United States, separate from all Sectoral Tariffs. Goods transshipped to evade a higher Tariff will be subject to that higher Tariff. If for any reason you decide to raise your Tariffs, then, whatever the number you choose to raise them by, will be added onto the 25% that we charge. There will be no Tariff if Japan, or companies within your Country, decide to build or manufacture product within the United States and, in fact, we will do everything possible to get approvals quickly, professionally, and routinely – In other words, in a matter of weeks.
    We look forward to working with you as a Trading Partner for many years to come. If you wish to open your heretofore closed Trading Markets to the United States, and eliminate your Tariff, and Non Tariff, Policies and Trade Barriers, we will, perhaps, consider an adjustment to this letter. Please understand this 25% number is far less than what is needed to eliminate the Trade Deficit disparity we have with your Country. These Tariffs may be modified, upward or downward, depending on our relationship with your Country. You will never be disappointed with The United States of America.
    Sincerely, Donald J. Trump President of the United States

    この書簡は、米国の2024年対日貿易赤字(約685億ドル)を背景にしている。トランプは「America First」を掲げ、米国内の雇用と産業を守るため、関税を武器に日本に圧力をかける。書簡の言葉は直接的で、まるでビジネスの取引を持ちかけるような調子だ。「25%は控えめだ」と言いながら、報復関税にはさらに上乗せすると警告し、日本に市場開放や米国での工場建設を迫る。「数週間で承認する」と約束する一方、日本の市場を「閉鎖的」と批判する強烈な言葉も飛び出す。最後の「アメリカに失望することはない」という一文は、米国の力を誇示し、国内の支持者を鼓舞するパフォーマンスだ。

    経済的には、この関税は日本の対米輸出(2024年で約1,480億ドル)に大打撃を与える。自動車や電子機器の価格が上がり、企業は利益を失うだろう。米国での工場建設を促す狙いはあるが、そんなものは一朝一夕にできるものではない。米国側でも、物価上昇や日本の報復関税(例えば米国の農産物に対する関税)のリスクがちらつく。政治的には、日米同盟にひびが入る危険があり、日本は交渉、報復、WTO提訴の三択を迫られる。だが、同盟の重みを考えると、慎重な対応を選ぶだろう。書簡の前提である「貿易赤字は悪」「関税で解決できる」という論理には、経済学者から疑問の声が上がる。サプライチェーンの混乱や国際貿易の停滞を招くリスクも見逃せない。

    参院選と日本の交渉姿勢


    2025年7月20日、日本の参院選が迫る。この選挙は日米貿易交渉に影を落とす。米国財務長官スコット・ベッセントは「選挙が日本の交渉を縛っている」と語り、トランプ政権が日本の国内政治を交渉の障害と見ていることを示した(出典:NHK WORLD-JAPAN News)。自民党の支持率は低下し、東京都議選での敗北が響く。農業界は自民党の強力な支持基盤だ。米国との交渉で農産物の市場を開けば、有権者の反発は避けられない。石破首相は板挟みだ。

    自民党内部では、農業保護を主張する勢力が強い。森山裕委員長の「食料安全保障強化本部」は、米国からの米の輸入拡大に反対する決議を出し、小野寺五典政策調査会長も国内産業を守る必要性を訴える(出典:The Japan NewsThe Japan News)。もし参院選で自民党が敗れ、石破政権が弱体化すれば、農業保護派が交渉の主導権を握る可能性がある。そうなれば、農産物に関する譲歩はさらに難しくなる。

    食料安全保障強化本部で挨拶する森山裕自民幹事長

    一方で、「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」(FOIP本部)が別の道を提示する。麻生太郎最高顧問が本部長を務め、高市早苗や茂木敏充ら約60人の議員が参加するこの本部は、2025年5月14日に再始動し、自由貿易と地域の安定を掲げる(出典:自民党NHK)。FOIP本部が主導権を握れば、自由貿易を推し進め、トランプの関税に外交的な反撃を試みるだろう。

    CPTPPやRCEPといった多国間貿易枠組みを強調し、米国に自由貿易の価値を訴える可能性がある。だが、国内の農業保護派との対立は避けられない。麻生はトランプとの過去の対話経験を生かし、強気な交渉を展開するかもしれないが、農業界の反発を抑えるため、農業分野の譲歩は最小限にとどめる巧みなバランスを取るだろう。

    自民党内の力学と交渉の行方

    自民党の派閥は政治資金スキャンダルで解散したが、影響力は消えていない。安倍派、森山派、岸田派、二階派が名目上解散しても、非公式なネットワークは生きている(出典:The Mainichi)。農業保護派の森山や小野寺は、農業界の声を背に強硬な姿勢を崩さない。対して、FOIP本部は自由貿易と国際協力を重視し、日米同盟を地域戦略の基盤と見る。参院選の結果がこの力学を左右する。自民党が敗北し、農業保護派が勢いづいた場合、交渉は硬直する。一方、FOIP本部が主導権を握れば、自由貿易を軸にした柔軟な交渉が期待できる。

    自民「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」の初会合で挨拶する麻生最高顧問(5月14日、党本部)

    FOIP本部が主導した場合、日本は単なる受け身の姿勢を脱し、積極的に日本のビジョンを打ち出すだろう。麻生の外交手腕、高市の経済安全保障の知見、茂木の貿易交渉の経験が活かされ、米国に自由貿易の重要性を訴える。だが、国内の農業保護派との衝突は避けられず、譲歩の範囲を巡る綱引きが続く。

    結論:日本の選択と未来

    トランプの関税は、日本に厳しい選択を迫る。経済的には輸出産業が苦しみ、政治的には日米同盟に亀裂が入る危険がある。参院選は日本の交渉姿勢を大きく左右する。ただ、現状では自民党が参院選で大敗しようがしまいが、米国との貿易交渉は当面自公政権が担うことになるだろう。自民党内の農業保護派が主導すれば、農産物の市場開放は進まず、交涉は難航する。一方、FOIP本部が主導すれば、自由貿易を掲げ、米国に堂々と対峙するだろう。だが、国内のバランスを無視すれば、政権はさらなる危機に瀕する。日本の未来は、参院選の結果と自民党内の力のせめぎ合いに懸かっている。トランプの強硬策にどう立ち向かうか。日本は今、試されている。

    【関連記事】

    トランプ関税30~35%の衝撃:日本経済と参院選で自民党を襲う危機 2025年7月3日

    トランプの「公平」に挑む英国の勝利と日本の危機:石破退陣でTPPを世界ルールに! 2025年7月2日

    中国フェンタニル問題:米国を襲う危機と日本の脅威 2025年7月1日

    〈提言〉トランプ関税にどう対応すべきか?日本として必要な2つの分野にもっと支出を!—【私の論評】トランプ関税ショックの危機をチャンスに!日本の柔軟な対応策と米日協力の未来 2025年4月21日

    高橋洋一氏 中国がわなにハマった 米相互関税90日間停止 日本は「高みの見物」がいい―【私の論評】トランプの関税戦略は天才か大胆不敵か? 中国との経済戦を読み解く 2025年4月15日


    2025年7月7日月曜日

    石破首相のNATO欠席が招く日本の危機:中国脅威と国際的孤立の代償

     まとめ

    • 石破首相のNATO欠席: 2025年6月、NATO首脳会議を石破茂首相が欠席。自衛隊幹部は失望。理由は米国のイラン攻撃、トランプ不参加、防衛費圧力回避か。党内やXで「外交音痴」と批判。
    • 中国脅威の機会喪失: 中国空母「遼寧」「山東」が太平洋で挑発、尖閣領空侵犯も。NATOで脅威共有できず、首脳宣言に中国言及なし。
    • 核問題と曖昧な態度: 北朝鮮の核脅威がある中、石破氏はイラン攻撃でイスラエル非難、米国には曖昧。NATOでの核議論を逸した。
    • 国際社会の懸念: トランプの防衛費増額要求(GDP比5%)承認。日本の不在は貢献不足と映る。EUは日本中国接近を懸念。
    • 過去と矛盾: 2003年イラク駐留人道支援自衛隊部隊の視察拒否。「アジア版NATO」提唱者なのに欠席は矛盾。日本の地位を揺るがす。
    中国の脅威と逸した機会


    石破茂首相が2025年6月のNATO首脳会議を欠席。自衛隊幹部は失望と怒りを隠さない。理由は曖昧で、米国のイラン核施設攻撃、トランプ大統領の不参加、防衛費増額の圧力回避、国内政治の配慮が推測されるが、明確な説明はない。

    自民党内では「外交音痴」、Xでは「国難」との声(産経新聞)。日本は2022年からNATO首脳会議に参加し、「ウクライナは明日の東アジア」と訴え、インド太平洋の安全保障を強調してきた。


    今回は中国の脅威を共有する機会を失った。2025年5月、中国海警船のヘリが尖閣諸島の領空を侵犯。6月には空母「遼寧」「山東」が太平洋で挑発行動。「遼寧」は南鳥島周辺で500回超の艦載機発着、「山東」の戦闘機は海自P3C哨戒機に45メートルまで異常接近(防衛省)。

    中国の米中二分割戦略が露骨だ。NATO首脳宣言に中国への言及はなく、日本の主張は届かなかった。

    核問題と曖昧な態度の代償


    北朝鮮の核脅威が続く中、石破氏はイラン核施設攻撃でイスラエルを非難する一方、米国の攻撃には「法的評価は困難」と曖昧。ダブルスタンダードとの批判が上がる(産経新聞)。

    NATO会議は核拡散防止を議論する場だった。1993~94年の北朝鮮核危機で米国の融和策が失敗し、北朝鮮は核兵器とミサイルを開発。日本は今もその脅威に苦しむ。
    石破氏の欠席は、核の脅威を訴える機会を自ら放棄。国際社会の目は冷たい。トランプ政権はNATOにGDP比5%の防衛費増額を求め、2025年会議で承認(NATO公式)。
    日本の不在は同盟強化への貢献不足と映り、NATO事務総長マーク・ルッテは欧州の防衛費増額を「トランプの勝利」と称賛。EUは日本の欠席を民主主義陣営の離脱とみなし、中国接近を懸念(EU対外行動庁)。

    過去の失望と「アジア版NATO」の矛盾

    サマワで人道支援にあった自衛隊

    石破氏への失望は繰り返される。2003年、防衛庁長官としてイラク復興支援に自衛隊5500人を派遣。サマワで人道支援に従事したが、テロリスクや「違憲」批判を理由に現地視察を拒否。

    米英高官が自国軍を激励する中、この回避は自衛隊に失望を刻んだ(防衛省)。後任の大野功統氏、額賀福志郎氏は即座にイラク訪問。

    2025年6月30日の自衛隊幹部会同で、石破氏はイラク派遣を「終生忘れない」と語るが、視察拒否の矛盾が不信を深める。「アジア版NATO」を提唱し、日米豪印やASEANとの安全保障枠組みを唱える石破氏が、NATO欠席でその基盤を自ら弱めた。

    中国の太平洋進出と米中対立が激化する今、国内政治に縛られた石破政権の及び腰は、日本の安全保障と国際的地位を大きく揺るがす。

    【関連記事】

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    石破氏、自民党内でこれだけ嫌われるワケ 「後ろから鉄砲を撃つ」「裏切り者」「言行不一致」―【私の論評】石破氏だけは、絶対に日本の総理大臣にしてはいけないその理由 
    2020年9月1日

    米露会談の裏に潜む『力の空白』—インド太平洋を揺るがす静かな地政学リスク

      まとめ トランプ・プーチン会談は、米露関係改善の可能性を示す一方で、背後には米国がロシアを対中戦略の一部に取り込もうとする思惑がある。 ロシアは経済制裁や戦線維持の負担から、完全に中国に依存し続けたとしても余裕がなく、交渉に応じざるを得ない可能性が高い。 中露関係は表面的には...