橋下バブルに踊る懲りない“シロアリ”たち
<あの竹中平蔵まで虎視眈々>
こりゃあ、橋下特需だ。表舞台から完全に消えていたメンメンが、「橋下ブレーン」を名乗るだけで、やたらとスポットライトを浴びている。その筆頭が、大阪市の特別顧問に就いた中田宏・前横浜市長(写真上)(47)と山田宏・前杉並区長(写真下)(54)だ。テレビの報道番組に出まくり、新聞や雑誌のインタビューを受けたりと引っ張りダコ。現職市長として地元・大阪で多忙の橋下に代わって、在京メディアで「船中八策」を解説して回り、「新しい政治基盤をつくるために働きたい」と鼻息が荒い。
だが、この2人には厳しい視線も向けられている。
「2人揃って首長職を任期途中で放り出した“無責任”政治家。日本創新党をつくって一昨年の参院選に出馬したけれど、ともに当選ラインから大きく外れて落選しました。橋下市長にくっついているのも知名度アップの売名行為にしか見えません」(永田町ベテラン秘書)
橋下特需で仕事が増えているのは「維新政治塾」で講師を務めるという東国原英夫・前宮崎県知事(写真下)(54)も同じ。ネット証券4社合同で3月に開催する講演会で「どげんかせんといかん」というお題で話をするが、講演会全体のテーマは「激動する世界を見すえた資産運用」。どげんして、この男が呼ばれたのか?
橋下に群がる“シロアリ”はゾロゾロ出てくる。小泉政権で閣僚も務めた竹中平蔵・慶大教授(60)と、経営コンサルタントの大前研一氏(69)も関係をアピールしている。
「竹中氏も大前氏も、以前から橋下市長が教えを請う間柄です。橋下さんはああ見えて、目上の人への対応は謙虚で丁寧。竹中氏は『大都市の競争力強化は国の経済力を高める』と言って応援していますし、大前氏は『独裁者・橋下徹を肯定する』という論文を書いた。2人とも政界では昔の名前になりつつありますが、橋下氏にくっついて再登板を狙っているのでしょう」(事情通)
橋下との仲を触れ回って、東京・大阪・名古屋の3都構想を訴える大村秀章・愛知県知事(51)もシロアリだ。一県知事が上京したって通常は全く注目されないのに、橋下との仲介役ぶっているから「石原都知事と会談した」とか「亀井静香に会った」とニュースになる。
だが、過去から這い出たシロアリたちが、どれほどのものなのか。国民はよーく凝視した方がいい。
(日刊ゲンダイ2012年2月25日掲載)
【私の論評】潰し屋に惑わされることなく、今は国家についての認識を高めて自分自身を信じるべき!!
私は、「過去から這い出たシロアリたちが、どれほどのものなのか。国民はよーく凝視した方がいい」という上記のサイトの一文の「国民」という単語を「橋下さん」と変えるべきであると思います。なぜ、このようなことを言うかといえば、良くも悪くも、現在橋下さんは、台風の目になりつつあります。しかし、私自身は、橋下さんは、まだまだ、国政に関してはかなり疎いと思いますので、まずは、今のところは、上記でいうシロアリ(その根拠は薄弱なものもありますが)と呼ばれる人や、他の人が、いずれ時がたてば、潰し屋さんになるかもしれないことを認識すべきです。これは、自民党の総裁や、民主党の代表がコロコロ変わったことでも理解できます。時がたてば、潰し屋さんになるかもしれない人たちに惑わされることなく、今はまずは、日本という国家に対する認識を高めていただきたいと思います。これについては、経済に関して、
以前このブログにも掲載したことがあります。
ただし、橋下さんは、今でも自分自身は、「国政はまだ」と語っているので、安心はしているのですが、国政にどうのということで動くのは、早くても、次の次の衆議院議員選挙のときくらいにすべきであって、それより早くすれば、おそらく、失敗するものと思います。
それにしても、最近の動きに関しては、拙速さが目立つようになってきていると思います。そのさいたるものが、『維新八策』です。以下にその骨子のみ掲載しておきます。(無論全部読む必要などさらさら、ありません。ただ、項目がかなり多くというか、あまりにも多すぎであることを実感していただきたく、以下に掲載しました)
(1)統治機構の作り直し
・国の仕事を絞り込む=国の政治力強化
・内政は地方に任せる=地方・都市の自律的経営に任せる
・被災地復興は、被災地によるマネジメントで→復興担当大臣などは被災地首長
・国家の面的全体運営から点と点を結ぶネットワーク運営
・中央集権型から地方分権型へ
・国と地方の融合型から分離型へ
・地方交付税の廃止
・自治体破綻制度
・税源の再配置
・国の仕事は国の財布で、地方の仕事は地方の財布で=権限と責任の一致
・地方間財政調整制度=地方共有税制度の創設
・地方間で調整がつかない場合に国が裁定
・都市間競争に対応できる多様な大都市制度=大阪都構想
・道州制
・首相公選制
・参議院改革→最終的には廃止も視野
参議院議員と地方の首長の兼職=国と地方の協議の場の発展的昇華、衆議院の優越の強化
(2)財政・行政改革
・プライマリーバランス黒字化の目標設定
・国会議員の定数削減と歳費その他経費の削減
・国会改革=役人が普通のビジネス感覚で仕事ができる環境に
・首相が100日は海外へ行ける国会運営
・政党交付金の削減
・公務員人件費削減
・大阪方式の徹底した究極の行財政改革を断行
(3)公務員制度改革
・公務員を身分から職業へ
・価値観の転換
・安定を望むなら民間へ、厳しくとも公の仕事を望むなら公務員へ
・大阪式公務員制度改革を国に広げる
・外郭団体改革
・大阪職員基本条例をさらに発展、法制化
(4)教育改革
・格差を世代間で固定化させないために、最高の教育を限りなく無償で提供
・教育委員会制度の廃止論を含む抜本的改革
・首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視
・教育行政制度について自治体の選択制
・学校を、校長を長とする普通の組織にする
・大学も含めた教育バウチャー(クーポン)制度の導入
・生徒・保護者による学校選択の保障
・大阪教育基本条例(教育関連条例)をさらに発展、法制化
(5)社会保障制度
・受益と負担の明確化(世代間格差の是正)
・年度毎のフローでの所得再分配だけでなく、一生を通じてのストックによる所得再分配
・一生涯使い切り型人生モデル
・現行の年金制度は一旦清算=リセット
・年金の積立方式への移行(最低ライン)
・さらに、資産のある人は、まずはその資産で老後の生活を賄ってもらう→掛け捨て方式(ストックでの所得再分配)
・何歳まで努力をしてもらうのか、老後いくらを保障するのかを設定=事前告知→それに合わせた保険料を設定
・保険料は強制徴収(税化)
・リバースモーケージ(所有不動産を担保に年金のような融資を受ける仕組み)の制度化
・持続可能な医療保険制度の確立=混合診療解禁による市場原理メカニズムの導入
・持続可能な生活保護制度の確立=就労義務の徹底
・ベーシックインカム(最低生活保障)制度の検討
(6)経済政策・雇用政策・税制
・新エネルギー、環境、医療、介護などの特定分野に補助金を入れて伸ばそうとするこれまでの成長戦略と一線を画する「既得権と闘う」成長戦略~成長を阻害する要因を徹底して取り除く
・徹底した規制緩和による新規参入、イノペーション
・現在存在する社会インフラの徹底した選択と集中
・ストックの組み替え=高度成長時代に造られたストックを成熟した国家にふさわしい形へ
・経済活動コストを抑え、国際競争力を強化
・マーケットの拡大=自由貿易圏の拡大→TPP/FTA
・大きな流れ(円高、海外移転など)に沿った対策=大きな流れを人工的には変えられない
・労働集約型製造業の海外移転は止められない
・貿易収支から所得収支、サービス収支の黒字を狙う
・円高による輸入業の儲けを輸出業の損失へ=円高による為替差損益の調整制度(ソブリンデリバティブ)
・高付加価値製造業の国内拠点化
・サービス産業の拡大=ボリュームゾーンの雇用創出→IR型リゾートなど
・医療・介護・保育の分野では一方的な税投入による雇用創出をしない=ユーザーの選択に晒す
・産業の淘汰を邪魔しない=産業の過度な保護は禁物
・人は保護する=徹底した就労支援
・労働市場の流動化、自由化→衰退産業から成長産業へ、外国人人材の活用
・教育機関による人材養成=グローバル人材の養成
・女性労働力の徹底活用
・フローを制約しない税制=民間でお金を回す(使わせる)税制
・一生涯使い切り型人生モデル
・資産課税=固定資産税は現金化、死亡時に精算(フローを制約しない)
・使った分(設備投資、給料、消費)は消費税以外は非課税
・国民総背番号制によるフロー・ストックの完全把握
・(全商取引の把握=非課税となる要件)
・国民総確定申告制
・超簡素な税制=フラットタックス
・減免、特措法などは原則廃止
・夫婦、障害者、事業承継が課題(方策の一例~一定規模の事業で雇用創出をしている場合のみ、事業承継を認める?それとも原則通り一代限り?資産の売却?)
・脱原発依存、新しいエネルギー供給革命
(7)外交・防衛
・自主独立の軍事力を持たない限り日米同盟を基軸
・加えてオーストラリアとの関係強化
・日米豪で太平洋を守る=日米豪での戦略的軍事再配置
・2006年在日米軍再編ロードマップの履行
・同時に日本全体で沖縄負担の軽減を図る更なるロードマップの作成着手
・日米地位協定の改定=対等
・国際標準の国際貢献の推進
・国際貢献する際の必要最低限の防衛措置
(8)憲法改正
・憲法改正要件(96条)を3分の2から2分の1に緩和する
・首相公選制
・参議院の廃止をも視野に入れた抜本的改革
・衆議院の優越性の強化
以上は、船中八策(せんちゅうはっさく)という幕末維新期、土佐藩脱藩志士の坂本龍馬が、慶応3年(1867年)に起草した新国家体制の基本方針、とされるものを意識して作成されたのは、いうまでもないことですが、これをもともと、の船中八策と比較してみると、あまりにもチマチマしすぎているようにみえます。
ちなみに、下にもともとの、船中八策を掲載しておきます。
一、天下ノ政権ヲ朝廷ニ奉還セシメ、政令宜シク朝廷ヨリ出ヅベキ事。
一、上下議政局ヲ設ケ、議員ヲ置キテ万機ヲ参賛セシメ、万機宜シク公議ニ決スベキ事。
一、有材ノ公卿諸侯及ビ天下ノ人材ヲ顧問ニ備ヘ官爵ヲ賜ヒ、宜シク従来有名無実ノ官ヲ除クベキ事。
一、外国ノ交際広ク公議ヲ採リ、新ニ至当ノ規約ヲ立ツベキ事。
一、古来ノ律令ヲ折衷シ、新ニ無窮ノ大典ヲ撰定スベキ事。
一、海軍宜シク拡張スベキ事。
一、御親兵ヲ置キ、帝都ヲ守衛セシムベキ事。
一、金銀物貨宜シク外国ト平均ノ法ヲ設クベキ事。
以上八策ハ方今天下ノ形勢ヲ察シ、之ヲ宇内万国ニ徴スルニ、之ヲ捨テ他ニ済時ノ急務アルナシ。苟モ此数策ヲ断行セバ、皇運ヲ挽回シ、国勢ヲ拡張シ、万国ト並行スルモ、亦敢テ難シトセズ。伏テ願クハ公明正大ノ道理ニ基キ、一大英断ヲ以テ天下ト更始一新セン。
公議政体論のもと、
憲法制定
上下両院の設置による議会政治
不平等条約の改定
海軍力の増強
御親兵の設置
金銀の交換レートの変更
など、当時としては画期的な条文が平素な文章として記されています。福井藩の政治顧問であり、龍馬との親交もあった横井小楠の思想からの影響も指摘されています。
8番目の経済政策は、海援隊を組織して貿易を行なっていた龍馬らしい着眼点といえます(金銀の交換レートが国内と国外で異なっていると、二国間で金銀の交換を行なうだけで利益を上げられるので、貿易や物価安定に好ましくない)。
薩土盟約や土佐藩の大政奉還建白書、五箇条の御誓文にまで連なる内容を持っています。 明治政府が憲法の制定と議会開設まで、政府機構を何度も変更し迷走したことを考えると、時代を先取りしていたと言えます。(下の写真は、宮内庁が公開する坂本龍馬自筆の薩長同盟裏書=宮内庁提供)
坂本龍馬の文章はいずれも、非常に、わかりやすい簡潔なものだと思います。それに比較すると、維新八策は、本当にチマチマしていて、まるで、役人が書いたような文章で、なぜこのように下位の部分まで書いてしまうのか理解に苦しみます。こんな細かいことを書き連ねてしまえば、実際に活動していく上で、かなりの制約になると思います。これでは、何かどこかの企業の長期経営戦略か何かのようにみえてしまいます。維新の会は、まだまだ、出来上がったばかりです。まだ、国政に参加しているわけでもありません。それに、トップの橋下さんは、未だ大阪市長です。
維新八策は、企業であれば、設立趣意書のようなものだと思います。設立趣意書が、長期経営戦略のようであっては良いはずがありません。であれば、あんなに書き連ねるのは間違いだと思います。本来はどんな会派なのかはっきりさせ、さらに、結局何をやりたいのかはっきりさせるだけで良いのであり、そのやり方まで細かく書き連ねることは間違いです。こんなことからも、橋下さんには、今は良いブレーンがついていないことをうかがわせます。
そうして、なぜ、上のように細かなことまで書いてしまうのかといえば、いわゆる、シロアリさんたちなのだとおもいます。このシロアリさんたちの思ったことで、あまり、咀嚼されていないことでも、拙速に入れてしまったのだと思います。ここでは、わざわざ書きませんが、これが、多分このシロアリさん、あれは、多分このシロアリさんと特定できそうな部分さえあります。まずは、大括りで、どのような国にしたいのかを前面に打ち出すだけで良いのであって、そのやり方は、それこそ議論百出で、つめていくというのが正しいやり方だと思います。
それから、こういうものの失敗例があります。それは、ご存知民主党の政権交代のときのマニフェストです。あれだけ、詰めの甘い段階で、いろいろと具体的に書いてしまい、結局はなに一つ実行できず、実行できる見込みもありません。結局、あまり細かな方法論まで書いてしまって、後から収拾がつかなくなるなることの典型例だったと思います。これを反面教師にすべきだったと思います。
橋下さん、今は、大阪市長なのですから、あくまで、市政に専念すべきです。橋下さんは、特に国政レベルではまだまだ、経験不足です。特に経済に関しては、まだまだ、国レベルのマクロ経済など理解していません。その他も疎いところがあります。だからこそ、府知事時代にそうであったように、市政専念していく中で、どうしても、国がやってもらわなければ困る部分、国政を変えなければならない部分がでてきたら、まずは、それを中心に国政に働きかける、それと同時に国政のことも、民主党の歴代の総理大臣がやってきたように、シロアリのいうことのつまみぐいせず、自分の頭で考えて学んでいくという姿勢を当面崩すべきではありません。
そうでなければ、せっかく獲得したスターの座から引き摺り下ろされることになりかねません。そうなれば、今のところ良い悪いかは断定はできませんが、とにかく日本の政治改革の運動の一つともなりえる、灯火が消えかねません。この動きがどうなるかは、
このブログにも最近掲載したように、何よりも橋下さんが、自らを本当に信じられるか信じなれないかが分水嶺になると思います。橋下さんの動向については、今後も追跡し、何か変化があればまた掲載します。
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