2022年10月5日水曜日

臨時国会は2次補正予算案が焦点 特定宗教の主体に限定した審議はテロリストの思う壺になる―【私の論評】今のままだと、岸田首相は来年5月の広島G7サミットを花道に勇退か(゚д゚)!

日本の解き方


 臨時国会が10月3日に召集された。会期は12月10日までの69日間の予定だ。

 この臨時国会では総合経済対策と補正予算の策定が見込まれるが、野党は旧統一教会問題で追及を強めるとみられる。会期中には20カ国・地域(G20)サミットなど外交日程もあるが、岸田文雄政権の課題は何か。

 岸田首相の所信表明演説では、(1)物価高・円安対応(2)構造的な賃上げ(3)成長のための投資と改革―の3つの重点目標を掲げた。(1)の物価高・円安対応では海外要因のコストプッシュをどうするかが問題だ。そのために、2次補正予算案が臨時国会に出される。

 岸田政権は、電気代の負担軽減に取り組むとしている。企業・世帯への現金給付案や電力会社への補助金で価格上昇を抑える案などで対応するのだろう。

 これはミクロ的には悪くないが、マクロの視点が欠けている。最終消費者への所得補助を行って有効需要を作り、価格転嫁を行いやすくして最終消費者も実質負担がないようにするのがベストな政策だ。

 そのためには、現在あるGDPギャップ(総需要と総供給の差)を埋めるような規模の経済対策がまず必要だ。GDPギャップが残ったままだと、余分な失業が残り、人手不足にならないので賃金の上昇も期待できなくなる。その結果、(2)の構造的な賃上げもできなくなる。

 最終消費者における負担軽減という観点からいえば、消費税減税や社会保険料減免が事務的に容易であり、効果が大きい。債務償還費のカットや外国為替資金特別会計(外為特会)における円安含み益の吐き出しなどでGDPギャップを埋めるほどの財源があるのだから、大型の補正予算案に手をこまねくこともないはずだ。

 しかし、財務省主導の岸田政権では、こうしたマクロ経済の理解が心もとない。この経済分野で野党は攻め所がいっぱいなので、ぜひ有意義な国会論戦を期待したい。

 今国会で提出される法案は多くない。次の感染症危機に向け個人や病院に対する行政権限を高める感染症法改正案や、1票の格差是正策として衆院小選挙区を「10増10減」する公職選挙法改正案など18本だ。その他原発再稼働や防衛費増額なども議論になるだろう。

 一方、野党からカルト被害防止法・救済法案を提出する動きがある。これは、安倍晋三元首相を暗殺したテロリストの〝思う壺〟だ。宗教法人の主体に着目する規制は邪道である。せめて現行の消費者契約法の改正など、行為に着目し、宗教法人に限定しない規制とすべきだ。

 筆者としては、特定宗教に限定した国会審議は避けてほしいと思っている。

 ニュージーランドのアーダーン首相は2019年3月のモスク襲撃事件後、議会で「(テロリストの)男には何も与えない。名前もだ」と述べた。今国会では、その意味でも暗殺者についての議論をしてほしくない。そんな話題はテレビのワイドショーにまかせておけばよく、国会にふさわしくない。国会は、国家の基本たる安全保障や経済を議論する場だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今のままだと、岸田首相は来年5月の広島G7サミットを花道に勇退か(゚д゚)!

このブロクでは、すでに掲載していますが、岸田政権の支持率は下がっています。理由無くして支持が減り、不支持が増えることはありません。最大の理由は、何をしようとしているのかが、まったく見えないことでしょう。

原発問題もその1つです。国民の間で原発の再稼働や新たな建設に強い懸念を示す声は多いです。岸田首相も先の通常国会では、「再稼働はしっかり進める」としつつ、新増設や建て替えは「現時点で想定していない」と明言していました。

ところが「この冬で言えば、最大9基の稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保する」。7月14日の会見での岸田総理の“原発9基稼働”発言と、その報道をめぐって論争が起きていました。


現在日本には、検査中も含めた稼働予定の原発と廃炉予定の原発を除いて、残りの16基の原発があり、トータル33基動かせる可能性がある原発があります。

岸田首相は、この残り16基の原発には触れずじまいで、新たな原発の建造等について語りました。現状では新原発建造にはかなりの年月を要します。既存の原発はすべて数十年を費やしています。

電気料金もそうです。9月29日、岸田首相は唐突に今後見込まれる電気料金の値上げに備え、激変緩和を目的とした新たな制度をつくると表明しました。首相によれば、来春以降2割から3割の値上げになる可能性があるといいます。

現在の国内の電力販売額(2021年度)は約14兆円です。2割なら2.8兆円、3割なら4.2兆円の値上げになります。1割を国が負担すれば1.4兆円の財政負担になります。

さらに、意味不明な「新しい資本主義」などとほざく前に、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、GDPギャップをどのように埋めていくのか、その展望を語ることこそ首相の責任ではないでしょうか。

高橋洋一氏の試算によれば、現在の日本経済には30兆円超のGDPギャップがあるそうです。内閣府の試算はそれよりも低めで20兆円超のGDPギャップがあるとされています。内閣府がこのような試算をしているのであれば、岸田内閣は少なくとも真水で20兆円超の補正予算を組むべきです。

それでも、来春にまた、需給ギャップ相当分の10兆円程度の予算を組めば、日本はデフレから完璧に脱却できるかもしれません。

しかし、岸田政権が、今回の第二次補正で真水で10兆円以下の補正予算を組めば、 今後需給ギャップを解消できず、デフレ傾向は続き、せっかくコロナ禍にありながらも、安倍・菅政権で合計で100兆円の補正予算で、維持してきた雇用や経済を毀損してしまいかねません。

そうして、財源は外為特会などをあてることも考えれば、潤沢に存在します。今更、財務省期限の国の借金一人あたり1000万円説などを言ったとしても、自民党内積極財政派を納得させることはできません。

すべてがこの調子で、行き当たりばったりで整合性もありません。説明も十分に首相自身ができないです。これでは不信がつのって当然です。

10月から多くの生活必需品の値上がりが始まりました。円安やロシアのウクライナ侵攻によって輸入商品が大きく値上がりしているからです。一方国内に目を転じてみれば、コアコアCPI前年同月比は1.6%の上昇にすぎず、日本経済にはGDPギャップが存在していることは明らかで、日本銀行が現行では、金融緩和を続けていくべきは明らかです。そうなると、しばらくは、円安は続いて行くことになります。

円安により、輸出企業は空前の好景気にわいており、これはGDPを押し上げることになりますが、円安の影響で輸入物価が高騰し、家計は、物価は上がるが、賃金は上がらず生活が苦しくなっています。企業も原価の高騰を販売価格に転嫁しにくい状況です。特に中小企業はそうです。

この状況を解決するためにも、政府は是が非でも、需給ギャップを埋める対策を実行すべきなのです。まずは、比較的中小企業の多い輸入企業に対する大型対策や、物価対策などを行い輸入価格高騰の軽減策を行うべきです。さらに、減勢や給付金などの大型対策を打つべきです。

アベノミクスのもとで続いてきた金融緩和を継続しつつ、いかにGDPギャップを埋めていくか、岸田首相の本気度が問われています。


岸田首相は、旧統一教会問題も意識してというか、それを利用して、安倍派排除のための内閣改造・党人事を前倒しで行いました。ところが、改造後の内閣の閣僚にも、統一教会との関係者がでる始末で、大ブーメランを受ける結果となってしまいました。

特定の宗教を排除することは憲法違反になるのは明らかであり、実施するなら、統一教会が重大犯罪をおかしているなら、この訴訟をすすめ、さらに多額の献金などが問題であれば、法の整備をすすめるべきでした。そのようなことをせず、いきなり統一教会の排除を進めてしまいました。

さらに、内閣改造中に、中国が日本のEEZ内にミサイルを発射したのですが、内閣改造で頭がパンパンだったとみえる岸田総理は国家安全保証会議(NSC)を開催しませんでした。北朝鮮のミサイル発射時には、すぐにこれを開催していました。中国のミサイルは安全で、と北のミサイルは安全だとでもいうのでしょうか。全く矛盾しています。

国葬儀に関しても、岸田首相は煮えきらない態度をとっています。国葬儀の根拠については、内閣設置法によるもので、これは明白すぎるくらい明白であるにもかかわらず、それを押し通そうとはせず、反対の声に迎合するような態度をとってしまいました。

統一教会でも、国葬儀でも、岸田総理は野党やマスコミの土俵の上に自ら乗った形となり、とんでもないことになってしまいました。

かつての中選挙区制時代の自民党なら、自民党内で侃々諤々の議論が巻き起こったはずです。自民党は派閥の集合体のようなもので、派閥が違えば同じ選挙区で激突していました。

「物言えば唇寒し」などということはありませんでした。これこそが自民党の活力の源泉でした。それが小選挙区制の導入によって、党の公認さえもらえれば地道な選挙活動を行わずとも当選できる仕組みになってしまいました。党執行部の顔色ばかり見ている議員が増えてしまったようです。小選挙区制の害悪にあらためて目を向ける必要がありそうです。

いまの岸田内閣の現状を見れば、本来なら野党は様々な問題で自民党を追求できるはずです。以前もこのブロクで「青木率」(青木幹雄、元官房長官・参院議員)を紹介したことがあります。

これは内閣支持率と与党第一党の支持率を合わせて50%を切ると内閣は倒れるというものです。毎日新聞と社会調査研究センターが9月17日と18日に行った調査結果では、内閣支持率はわずか29%、与党第一党の自民党の支持率は23%でした。合わせて52%なので、50%切りにひたすら近づいているということです。

しかしいまの野党の現状では、この「青木率」も残念ながら通用しないです。これもまた異常事態です。

先に紹介した朝日新聞の世論調査では、「成長と分配の好循環を目指す『新しい資本主義』を掲げている」岸田首相の経済政策に期待できるかを尋ねると「期待できる」は25%、「期待できない」は69%となっています。

物価対策では「評価しない」が71%にもなっています。ところが、野党への評価も厳しいです。野党に期待できるかという問いには、「期待できない」が81%にもなっているのです。

平成30年「桜を見る会」で演説する安倍首相

本当は野党に奮起してもらいたいところですが、それも無理なようです。結局過去の「もり・かけ・桜」の延長線上で、今度は「統一教会・国葬」等、元々問題でないものを問題として、エネルギーを費やし、与党もそれでエネルギーをとられることになるものの、野党はさらに大きなエネルギーを使いさらに党勢を衰えさせることになるでしょう。

このままの状態が続けば、岸田首相は、来年5月に広島市で開催する先進7カ国首脳会議(G7サミット)を花道として勇退することになるかもしれません。そうして、この動きには野党はまったく関与できないでしょう。ただ、統一教会、国葬で退陣に追い込んだと思い込み、悦に入るかもしれません。そうではないことが、その後の選挙で明白になると思います。

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2022年10月4日火曜日

北朝鮮、SLBM発射兆候も確認“核実験へ向け軍事的挑発の段階高める”との見方も―【私の論評】これから発射されるかもしれない北朝鮮のSLBMのほうが、日本にとってはるかに現実的な脅威に(゚д゚)!

北朝鮮、SLBM発射兆候も確認“核実験へ向け軍事的挑発の段階高める”との見方も


韓国軍は北朝鮮が発射したのは中距離弾道ミサイル1発で日本上空を通過し、約4500キロ飛行したとの分析を示しました。

尹錫悦大統領は北朝鮮の核・ミサイルに対応するため、日米韓の安保協力の水準を高める協議を行うよう指示しました。

韓国軍によりますと、北朝鮮は4日午前7時23分ごろ、北部の舞坪里一帯から東の方向に向け、中距離弾道ミサイル1発を発射し、日本上空を通過したと発表しました。高度は970キロ程度で、飛距離は約4500キロと分析しています。

北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過したのは、2017年9月に発射された中距離弾道ミサイル「火星12」以来で、韓国の専門家は今回も「火星12」の可能性が高いとの見方を示しています。北朝鮮によるミサイル発射は、この10日間で5回目と異例の頻度です。

先週、日本海で行われた米韓、日米韓による合同訓練への反発とみられますが、さらに、SLBM(=潜水艦発射弾道ミサイル)の発射兆候も確認されています。北朝鮮が7回目の核実験に向けて軍事的な挑発の段階を高めているとの見方もあります。

また、韓国政府は南北通信連絡線での4日朝の連絡に北朝鮮側が応じていないと明らかにしました。

【私の論評】これから発射されるかもしれないSLBMのほうが、日本にとってはるかに現実的な脅威に(゚д゚)!

韓国国防部は4日、国会国防委員会による国政監査に対し、北朝鮮が核実験を実施できる状態を維持しており、液体燃料の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験も準備していると報告しました。北朝鮮はこの日午前、中距離弾道ミサイル(IRBM)を発射しています。

国防部は「北は寧辺原子炉など主要な核施設の正常稼働と核実験が可能な状態の維持、核能力の高度化に向けた努力を続けている」と報告しました。

李鐘燮(イ・ジョンソプ)同部長官は国防委員会所属の野党議員から北朝鮮が核実験準備を完了した時期を問われ、「今年5月ごろ」と答えた。核実験の実施時期については予断を許さないとしました。

北朝鮮が核実験を実施すれば7回目となる。李氏は「(実際に)使用するための小型(核兵器)かもしれないし、(6回目核実験の時より)もっと威力が大きいかもしれない」との見解を示しました。

国防部は核の先制攻撃をちらつかせる北朝鮮を抑止する対策として、圧倒的なミサイル・特殊戦能力の向上をはじめとする韓国型3軸体系の強化計画を挙げました。3軸体系は、北朝鮮のミサイル発射の兆候を探知して先制攻撃するキルチェーン、発射されたミサイルを迎撃する韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)、北朝鮮から攻撃された場合に指導部などに報復攻撃を行う大量反撃報復(KMPR)からなります。


日本も、韓国と同等以上の備えをすべきです。

北朝鮮は5月7日午後、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルと推定される短距離弾道ミサイル1発を発射したと発表しました。3日後に、米国との同盟関係の強化を掲げる韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)政権が発足するのを前に、米韓をけん制するねらいがあるとみられました。

今回も、SLBM(submarine-launched ballistic missile=潜水艦発射弾道ミサイル)の発射兆候も確認されており、近日中に発射される可能性は高いです。

SLBMは敵から核先制攻撃を浴びた場合、自らもSLBM反撃で2次報復が出来る相互確証破壊(MAD)の戦略兵器です。冷戦時代から核戦争を防止する抑止力として「恐怖の均衡」を維持してきました。

簡単に言うと、仮に北朝鮮が核やその他の攻撃で壊滅的な打撃を被っても、潜水艦は生き残り、核弾頭を搭載したSLBMによる反撃ができるというものです。

北朝鮮というと、すぐに「ロフテッド軌道」の脅威がいわれますが、これに対しては、日米が新型の「SM-3ブロック2A」を共同開発しています。推進部のロケットモーターの径を増やして推進速度と到達高度を高め、キネティック弾頭の命中精度も向上させました。

ロケットモーター部分の開発は日本が担当しました。防衛省は、17(平成29)年度の概算要求で147億円分の取得経費を計上していました。複数の核弾頭にも対応済みです。

2015年3月、ヘイニ米戦略司令官(海軍大将)は“北朝鮮は核小型化に成功してSLBMを開発中だ”と指摘しました。北朝鮮はすべてが旧式ではあるものの、73隻の潜水艦・艇を保有して保有数だけは世界一です。
 
すでに、SLBMテスト発射を繰り返してSLBM搭載潜水艦を配備する見通しです。

1988年「イラン・イラク戦争」の時、イランがイラク首都バグダドに発射した88発のスカットミサイルは北朝鮮製でした。北は91~96年シリアにスカットミサイル150基を輸出して99年にはリビアに5基、2001~2002年はイェメンに45基を輸出しました。
 
1987~2009年、世界の弾道ミサイル輸出は1200基の内510基(40%)が北朝鮮製で1位でした(ロシア製2位:400基、中国製3位:270基)。輸入国はエジプト、シリア、イラン、リビア、イェメン、UAE、パキスタンでした(米モントレー大学国際問題研究所、2011年3月)。
 
因みに、国際平和研究所(SIPRI)集計によれば国際武器市場でスカット-Cミサイルはベストセラー武器になっているようです。更に「北朝鮮は2014年現在16個の核兵器を保有しており20年まで100個保有能力がある」と米ジョンス・ホプキンス大学、米韓研究所は指摘していました(16年2月)。
 
北は食糧難で貧しい片田舎国というイメージですが先端分野の「核開発」「弾道ミサイル技術」「サイバー戦」「特殊戦戦力」「潜水艦・艇戦力」は先進国に近いレベルである事が分かります。特に、米、中など強大国を振り回す瀬戸際外交戦略は国際政治学界の話題になって久しいです。彼らを過小評価すべきではありません。

SLBMの脅威は潜水艦の航続距離次第でどんどん高まります。北朝鮮が保有する「ロメオ級」は約7000キロの航続距離を持つとみられ、片道ならハワイ近くまで到達できます。

 2014年金正恩第1書記が、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)のロメオ級潜水艦を視察

このロメオ級は、北朝鮮では最大の潜水艦ではありますが、旧ソ連で作られその後中国でも100隻建造された主力潜水艦ですがいまではすべて退役している代物です。北朝鮮では、1973年に2隻を中国から取得し、1995年までに24隻を国内で建造したとされます。

ロメオ級のエンジンはディーゼル式で非常に音が大きいので、探知されやすいです。特に日米は旧ソ連の潜水艦に数十年も対処してきたという経験があり、対潜哨戒能力ではトップクラスにあることから、北朝鮮の潜水艦を探知するのはさほど難しいことではありません。

ただし、日米の哨戒機や、哨戒船が存在しない海域に予め水中に潜み、そこから急に、ミサイルを発射ということになれば、防ぐのは難しいです。さらに、エンジンをとめた状態で、潮流に乗って移動されると発見は難しいです。

ただ、どちらの場合も一度ミサイルを発射して、そこから離脱行動をとれば、かなり発見しやすくなります。

ただ、いずれの場合も、食料・水・燃料も片道分だけで、潜水艦の乗組員が自滅覚悟ということになれば、防ぐ手立てはありません。特に、すぐ近くから発射されれば、防御手段はありません。ロメオ級は、たしかにボロ船ですが、一度に数発核ミサイルを発射して、それで沈んでも本望と考えるなら、金正恩の野望を叶えることができるかもしれません。

このようなことは、先進国では考えられませんが、北朝鮮のような全体主義国家では十分可能です。このような作戦を敢行して、自滅した潜水艦の乗組員らは、英雄として称えられることになります。

北朝鮮がSLBMを完成させ、さらに実戦配備まですれば、世界の軍事バランスが崩れる可能性もあります。日本にとっては、これこそが大きな脅威になる可能性が高いです。ただ、この軍事バランスにおいては、認識しておかなければならないことがあります。

北朝鮮の核はSLBMも含めて、北京など中国も標的にしているということです。北朝鮮に核が存在することと、北朝鮮が朝鮮半島に存在するということ自体が、中国が朝鮮半島に浸透することを防いできたという面は否めません。金王朝は明らかに、朝鮮半島が中国に浸透されることを嫌がってきました。中国に近かった金正男氏の暗殺は如実にそれを示しています。

北朝鮮が存在しなければ、中国はずっと以前に、朝鮮半島を中国に併合し、中国の朝鮮省か、自治区にしたことでしょう。少なくとも半島全体に深く浸透していたことでしょう。朝鮮半島に中国傀儡政権が誕生していたかもしれません。

中国は常に北朝鮮の核を「暗黙の了解」で庇ってきました。しかし、庇ってきた背景には、北の核に対する脅威もあったものと考えられます。米国は北核放棄の条件付で韓国、日本、台湾の「核容認外交カード」を対中国外交カードとして交渉するのが望ましい選択肢ではないでしょうか。中国にとって一番怖いのは日本の核武装だからです。

ただ、北朝鮮は核を有し、中国の浸透を嫌うが故に、中国の思い通りにはならない可能性もあります。

日米は、北朝鮮を仲間にひきいれるということも考えられなくもないですが、それをすれば、日米は全体主義国家を仲間として認めることになります。それは、第二次世界大戦時に、米国が当時のソ連を仲間にひきいれたのと同じ失敗を繰り返すことになりかねません。

そもそも、米国はソ連と対峙していた日本をソ連と手を組むことによって、攻撃することにより、結果としてソ連の台頭をまねき、今日北の核ミサイルの脅威に脅かされることになってしまったのです。それどころか、中露が国連常任理事国であるという、信じがたい状況を招いてしまいました。ウクライナ戦争で、常軌を逸したプーチンは、再度米国を核ミサイルで恫喝するかもれしません。

日本としては、「核容認外交カード」を用いるにしても、中国と北朝鮮と同時に交渉を行うようにし、中国と北朝鮮を互いに競い合わせたり、中国と北が互いに離反する形にもっていくべきです。

さらに、核武装の前に、以前もこのブログに掲載したように、日本も潜水艦にSLBM を搭載できるようにすべきです。日本がこれを潜水艦に搭載できれば、かなり命中精度の高いものを搭載できるはずです。たとえ、核兵器を持たないにしても、敵基地は無論のこと、中国の三峡ダム、北朝鮮の豊水ダムを飽和攻撃で確実に破壊することができます。



中国の三峡ダムを破壊すると、中国全土の4割が洪水に見舞われることになるといわれています。北朝鮮の豊水ダムを破壊すれば、ただでさえ電力不足の北朝鮮の電力逼迫の状況をさらに、深刻にすることができます。

中国や、北朝鮮にはこのようなウィークポイントがいくつもあります。これらを攻撃できる体制を整えれば、日本にとってかなりの抑止力となることは確かです。ただ、核はあったほうが、心理的にも、実用的にも安全保障の面で、日本が有利になるのはいうまでもありません。

もし、日本が核武装すれば、中露北はパニックに陥ることでしょう。日本が核武装するということは、単に日本が核兵器を配備するにとどまらず、日本が他の先進国と同じく、軍事国家になることを意味するからです。

軍事国家という言葉は、日本では忌み嫌われるようですが、いかなる国でも、軍事国家的な側面がなければ、その国は消滅するか、真の独立を維持することはできません。まさに、今の日本がその状態です。そうして、今振り返ると2014年のウクライナがその状態でした。日本は、そろそろ目覚めるべきです。

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2022年10月3日月曜日

長期化するウクライナ戦争 露わになるプーチンの誤算―【私の論評】2024年プーチンが失脚しても、ロシアは時代遅れの帝国主義、経済を直さないと、ウクライナのような問題を何回も起こす(゚д゚)!

プーチンの傲慢さは、日露戦争の「悲惨なロシア」と酷似している

1904年2月、日本軍が満州でロシア艦隊を攻撃する様子

ウクライナ侵攻で苦戦するプーチンは、もはや後に引けなくなっている。その裏には、彼の過剰な自信と油断がうかがえる。かつて日露戦争で小国ニッポンを過小評価して敗北したニコライ二世のように、プーチンも同じ道を辿るのだろうか──。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、自らを歴代のロシア皇帝になぞらえ、過去の輝かしい戦勝の記憶を国民に思い出させようとしている。6月、プーチンは18世紀の大北方戦争でバルト海沿岸地域の領土を「奪還し、強化した」ピョートル大帝(ピョートル一世)を讃えた。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻が長引くなか、歴史家からはプーチンを初代ロシア皇帝よりも、むしろ日露戦争(1904~05年)で莫大な被害を出したニコライ二世に重ねる声が上がりはじめている。

この2つの戦争に共通点があることは否定できない。ニコライ二世が日本を過小評価していたように、プーチンもウクライナはすぐに降伏すると思い込んでいた。

ニコライ二世がロシア海軍の敗北によって面目を失ったように、プーチンも想定外の苦戦を強いられている。特にロシア軍の黒海艦隊の旗艦がウクライナの攻撃を受けて沈没したことは象徴的な敗北となった。それだけではない。日露戦争でロシア軍が繰り広げた残虐行為がニコライ二世の統治に影を落とし、ロシアの国際的地位を傷つけたように、ウクライナでの戦争はロシアとプーチンの評判に深刻な打撃を与えている。

「日本に勇気があるはずがない」という思い込み

もちろん、この2つの戦争には違いもある。最大の違いは、日露戦争はロシアではなく日本が仕掛けた戦争だったことだ。

また、ニコライ二世の傲慢さの背景には、人種差別的な側面があった。「大国ロシアにとってアジアの国など恐れるに足らず、日本にロシアの軍隊を攻撃する勇気などあるはずがない」という考えだ。しかし1904年2月4日の夜、この思い込みは粉々に打ち砕かれた。日本の駆逐艦隊が満州の旅順港に停泊していたロシア艦隊に奇襲をかけたのだ。

日露戦争の背景には、満州の支配権をめぐるロシアと日本の思惑があった。第一次世界大戦に先立つ日露戦争は「第ゼロ次世界大戦」とも呼ばれる。日露戦争の開戦前に行われた交渉で、日本は満州をロシアの勢力圏と認める代わりに、大韓帝国を日本の軍事・政治的勢力圏と認めるようロシアに提案した。

ニコライ二世は日本の提案に応じず、ロシアと韓国の間に中立的な緩衝地帯を設けることを要求した。この頑なな態度の背景には、盟友であるドイツのヴィルヘルム二世の存在があった。ヴィルヘルム二世はニコライ二世に対し、君は「白色人種の救世主」であり、日本人を恐れる理由などないと言い聞かせた。

日本軍の旅順攻撃は、この妄想を見事なまでに打ち砕いた。旅順攻撃は物的な被害こそ小さかったが、ロシア人のプライドに与えたダメージは計り知れない。ロシア海軍が旅順港で停泊している間に日本の攻撃を受け、主導権を握られたという事実がロシア国民に与えた衝撃は大きい。

日本軍は旅順港を包囲するために高地の要所を占拠し、長距離砲を使ってロシアの封鎖艦隊の艦船を砲撃した。これはウクライナ侵攻の初期にロシア軍がキーウを断続的に攻撃した際に、ウクライナ人がロシアの不運な戦車を破壊するために用いた戦法でもある。

結局、ニコライ二世が派遣した6隻の艦船はすべて沈没、ロシア兵は凍てつく旅順港に取り残された。補給線を断たれ、戦う大義もないまま包囲された兵士たちの士気は急速に低下した。

初の大規模な陸上戦となった鴨緑江の戦いでは、日本軍がロシア軍の東部兵団を突破した。この段階でようやくロシア、そして世界は日本の軍事力を真剣に捉えるようになる。

ロシアにとって衝撃的な敗北ではあったが、日本側の被害も大きく、ロシア軍は皇帝の信頼に恥じない働きをしたと見なされた。しかし、その名誉もロシア兵が満州の中国人を強姦し、殺害していることが報じられると失われた。この点もウクライナでの戦争と重なる。

ロシア艦隊は自らの愚行と、不運と、日本軍の巧みな操船術に翻弄され、敗走を重ねた。世界海戦史上、最も長距離で行われた砲撃戦と言われる1904年8月の黄海海戦でも、日本の連合艦隊はロシア艦隊に勝利した。

約5000人のロシア兵を失う

それでもなお勝利を確信していたニコライ二世は、ロシアが誇る強大なバルチック艦隊をヨーロッパからはるばる極東へと向かわせた。しかし、この援護作戦は大失敗に終わる。バルチック艦隊は途中、北海で数隻の英国の民間漁船を日本軍の襲撃船と誤認して砲撃するという失態を犯し、ニコライ二世の海軍は世界中から嘲笑を浴びた。

7ヵ月後の1905年5月、バルチック艦隊は長い航海の果てにようやく極東に到着するが、疲労の色は濃く、ものの数時間で壊滅した。ロシアは戦艦8隻をすべて失い、約5000人のロシア兵が命を落とした。

その後、日本の陸海軍の連合作戦によって樺太が占領されると、ニコライ二世は講和を進めざるを得なくなった。日本とロシアは、セオドア・ルーズベルト米大統領の仲介の申し出を受け入れ、米ニューハンプシャー州ポーツマスで講話交渉の席に着いた。

ロシアは韓国が日本の勢力圏であることを認め、満州から撤兵することに同意した。ニコライ二世は戦争賠償金の要求を退けることには成功したが、失墜したロシアの威信を取り戻すことはできなかった。ロシア国民の怒りはロシア革命へと発展し、ニコライ二世は退位を余儀なくされ、後に処刑された。

プーチン率いるロシアは、世界ののけ者に

あくまで、ウクライナでの戦争は日露戦争と酷似しているわけではない。しかしプーチンがウクライナ人を著しく過小評価していたことと、侵攻がもたらす戦略的影響を軽視していたことは間違いない。

かくしてフィンランドとスウェーデンは北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請し、プーチン率いるロシアは世界ののけ者となった。この戦いがどのような結末を迎え、プーチン政権にどのような影響を与えるのかはまだわからない。

米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所の軍事専門家で、まもなく『Military History for the Modern Strategist(現代の戦略家のための軍事史)』を上梓するマイケル・オハンロンは「交戦国の顔ぶれ、戦闘の性質、地理、帝国主義的な野心、戦闘の随所に見られた人種差別的な側面など、細部を見れば日露戦争とウクライナでの戦争には相違点も多い」と語る。しかし、こう続ける。

「ロシアの大規模な軍事行動に散見される過剰な自信と油断──この点に注目すれば、この2つの戦いにぞっとするような類似性が認められることは確かです」

【私の論評】2024年プーチンが失脚しても、ロシアは時代遅れの帝国主義、経済を直さないと、ウクライナのような問題を何回も起こす(゚д゚)!

フィナンシャル・タイムズ紙は、「プーチンの諸々の誤算(Vladimir Putin’s catalogue of miscalculations)」と題する社説を9月17日付で掲載している。社説の主要点は次の通りです。

・ハルキウ地方でのロシア軍の敗走は、ロシアの大きさと軍事力が、より小さなウクライナを簡単に制圧でき、ウクライナ人はロシアを「解放者」として歓迎するとのクレムリンの間違った期待を再度際立たせた。

・同地方での敗走は、それまで投入した兵力をキーウ周辺と北部から同地に振り向ければ、総動員なしでも東部ウクライナ全域を占拠、保持できると考えたモスクワの過ちを明らかにした。

・西側諸国が彼ら自身の経済をも傷つける対ロシア制裁に対し意欲を欠き、西側の団結は早く壊れ、キーウに戦争をやめるように圧力をかけるという前提も誤りだった。プーチンは欧州への天然ガス供給を急激に減らしたが、欧州連合(EU)各国間に相違は残るものの、共同の準備と衝撃緩和のための大きな前進が見られた。

・西側の協調した反対姿勢は、非西側諸国、特に中国が米国中心の国際秩序に挑戦するという共通の利益のために味方になるとの、プーチンのもう一つの前提についても、後退を余儀なくさせた。

・上海協力機構会議で、習近平はウクライナ戦争への「疑問や懸念」をロシアに伝えるとともに、カザフスタンに対し「いかなる勢力の干渉」(注:ロシアの干渉が最もあり得る)に対してもカザフスタンの主権と一体性を守ると述べた。

・同じくインドのモディ首相は、今は「戦争の時期ではない」と述べ、公にウクライナ侵攻を批判した。

・プーチンの誤算は西側民主主義国には朗報であり懸念材料でもある。これまでの多くの誤算は、プーチンがウクライナでより広い敗走に直面した場合、今後の彼の決定も賢明であるとは信頼できないことを示すからだ。

プーチン大統領がウクライナ4州のロシアへの編入を強行し、この地方の奪回を「ロシアに対する攻撃」と核兵器で反撃する口実を与えることになったが、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)諸国は、その場合ロシアの黒海艦隊の殲滅など壊滅的な打撃を与えると警告しているようだ。

米国を訪問していたポーランドのズビグニェフ・ラウ外相は27日NBCテレビの報道番組「ミートザプレス」に出演し、ロシアのプーチン大統領が核兵器使用も辞さないという態度を示していることについて次のように語りました。

ポーランドのズビグニェフ・ラウ外相

「我々の知る限りプーチンは戦術核兵器をウクライナ国内で使用すると脅しており、NATOを攻撃するとは言っていないのでNATO諸国は通常兵器で反撃することになるだろう」

ラウ外相はこうも続けました。

「しかしその反撃は壊滅的なものでなければならない。そして、これはNATOの明確なメッセージとしてロシアに伝達している」

これに先立ち、ホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障問題担当補佐官は25日の「ミートザプレス」に出演し、ロシアが核兵器を使用した場合は「ロシアに破滅的な結果を与える」と言い、これはロシアの当局者との個人的なやりとりを通じてロシア側にはっきりと伝えてあると言明しました。

その「壊滅的反撃」や「破滅的な結果」をもたらすものが具体的にどんな作戦なのかは不明ですが、それを示唆するような記事が英紙「デイリー・メイル」電子版21日にありました。

「独自取材:プーチンがウクライナで核兵器使用に踏み切った場合、米国はロシアの黒海艦隊やクリミア半島の艦隊司令部に対して壊滅的な報復をするだろう、元米陸軍欧州司令官が警告」

2018年まで米陸軍欧州司令官をしていて、今はシンクタンク欧州政策分析センターの戦略研究の責任者をしているベン・ホッジス退役中将がその人で、「デイリー・メイル」紙のインタビューに次のように語っています。

「プーチンがウクライナで核攻撃を命令する可能性は非常に低いと思う。しかし、もし戦術的な大量破壊兵器が使われたならば、ジョー・バイデン大統領の素早く激しい反撃に見舞われることになるだろう」

その具体的な作戦についてホッジス中将は以下のように語りました。

「米国の反撃は核兵器ではないかもしれない。しかしそうであっても極めて破壊的な攻撃になるだろう。例えばロシアの黒海艦隊を殲滅させるとか、クリミア半島のロシアの基地を破壊するようなことだ。だからプーチンや彼の取り巻きたちは米国をこの紛争に巻き込むようなことは避けたいと思うはずだ」

ホッジス中将が米国の作戦を承知していたとは思わないが、米軍の元司令官と現在の作戦立案者が考えることはそうは違わないはずです。ロシア国内に被害を及ぼさない限りでロシア軍に壊滅的な打撃を与えるためには黒海艦隊を攻撃することは効果的です。

それを米国がロシア側に警告したかどうかも定かではないですが、英国防省は20日のウクライナの戦況報告で、ロシア黒海艦隊が複数の潜水艦を、同国が併合したウクライナ南部クリミア半島のセバストポリから、ロシア本土の黒海沿岸にあるノボロシスクに移動させたとの分析を示しました。ウクライナ軍の長距離砲撃能力の向上を受け、警戒のための措置とみられるといいます。

移動したのは「キロ級潜水艦」で、黒海での船舶の安全な航行の妨げとなってきました。英国防省は、セバストポリにある黒海艦隊の司令部などが過去2カ月の間に、攻撃を受けていたと指摘しました。黒海艦隊の「虎の子」をまず逃したようにも見えます。

ソヴィエト/ロシア海軍の通常動力型潜水艦である「キロ級潜水艦}

プーチン大統領「これはハッタリではない」と豪語していましたが、米国やNATOの警告は核兵器使用に二の足を踏ませることができるでしょうか。

このブログでは、ロシア海軍の海戦能力は、日米英などに比較して、かなり低いことを掲載してきました。

特に、中露は日米に対して対潜哨戒能力(潜水艦を発見する能力)がかなり劣っているため、ロシアには日本のステル性(静寂性)に優れた潜水艦を発見することは難しいです。一方日本の対潜初回能力は米軍と並び世界トップクラスであるため、ロシアの潜水艦を日本が探知するのは比較的容易です。しかも、太平洋等ではなく黒海という限られた海域に潜む、ロシアの潜水艦を発見するのは、さほど難しいことではありません。

ASW(Anti Submarine Warfare:対潜水艦戦闘力)に劣ったロシア海軍は、海戦においては日米の敵ではありません。現在のロシア海軍は単独で日本の海自と戦っても、勝つことはできません。一方的に敗北するだけです。

こういうと、ロシアが核原潜を持っていることを根拠に、ロシアが負けるはずがないと主張する人もいるでしょうが、破壊と海戦は別物です。海戦には目的があり、その目的を成就したほうが、勝利となります。

ロシアはいざとなれば、核ミサイルを発射して、日本の水上艦隊を壊滅させるかもしれませんが、それでも潜水艦隊を壊滅させることはできません。潜水艦隊の大部分は生き残り、反撃のチャンスをうかがい、実行することになります。

ロシアはミサイルで、ウクライナの都市を攻撃して、破壊しましたが、それでもウクライナ軍を打ち負かすことはできませんでした。それと同じことです。

海戦能力が日本よりも高い米海軍が、黒海艦隊を殲滅するのはさほど難しいことではありません。米国としては、日露戦争に破れたロシアのことは当然歴史的事実として知っていて、黒海艦隊殲滅はかなり有効な打撃であると見ているのは間違いないでしょう。

ロシアでは2024年、大統領選挙があります。西側の制裁で、その時ロシアのインフレ率は、数十%になり、輸入に依存していた消費財は店から消えてなくなっているでしょう。プーチンは当選できません。


彼を支えるシロビキ(主として旧KGB=ソ連国家保安委員会。ソ連共産党亡き今、全国津々浦々に要員を置く唯一の組織)は、自分たちの権力と利権を守るため、かつぐ神輿をすげ代えようとするでしょう。

ロシア国内では様々な思惑は入り乱れることになるでしょう。その中で国内の暴力勢力を引き込んで、ライバルを暗殺しようとする動きも出てくるでしょう。そうしてモスクワの中央権力が空洞化すると、91年ソ連崩壊の直前起きた、地方が中央に税収を送らない、勝手なことを始めるという、「主権のオン・パレード」が始まるでしょう。ロシアの中の少数民族だけでなく、主だった州も分離傾向を強めることになります。

今は21世紀なので、そんなことが起こるはずがない、と考えるのは間違いかもしれません。わずか30年前、超大国ソ連はそうやって自壊しましたし、今回は起きるはずのない文明国への武力侵略をロシアは実行してしまったのです。しかも、上で述べたように、日露戦争のときのように、愚かな方法で実行したのです。

プーチンは「ウクライナの右派過激勢力(ロシアは「ナチ」と呼んでいる)がロシアに歯向かうからいけないのだ」と言うかもしれません。しかし、そういう勢力を台頭させたのは、ロシアが14年クリミア、東ウクライナを制圧したからです。

そうて今回は武力で侵入したものですから、今やウクライナ人はほぼ全員、ロシアを憎んでいるでしょう。ロシアはロシア系の人々を守るのだ、とも言っているのですが、他ならぬロシア系ウクライナ人も、ロシア軍をこわがってポーランドに避難しています。

2024年にはプーチンは失脚するかもしれません。しかし、それでもロシアは、時代遅れの帝国主義、そして近代化に乗り遅れた経済を直さないと、ウクライナのような問題を、これから何回も起こすことになるでしょう。



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2022年10月2日日曜日

東部要衝リマン奪還 併合宣言直後、露に打撃―【私の論評】ロシア軍、ウクライナ軍ともに鉄道の要衝がなぜ軍事上の要衝になるのか(゚д゚)!

東部要衝リマン奪還 併合宣言直後、露に打撃


 ウクライナメディアは1日、ロシア軍が陣取ってきた東部ドネツク州の要衝リマンをウクライナ軍が奪還したと伝えた。ロシア国防省も1日、包囲を逃れるためリマンから部隊が撤退したと発表。前日にドネツク州を含む東南部4州の併合を一方的に宣言したばかりのロシアにとって、打撃となる。

 リマンはドネツク州北部の交通の拠点。リマン攻略で、東部ルガンスク州西部の人口約9万人のリシチャンスクを奪還できる可能性が高まった。

 ウクライナのティモシェンコ大統領府副長官は1日、軍兵士がリマン中心部で奪還を宣言する動画を通信アプリに投稿。動画で兵士らはロシア国旗を行政庁舎の屋上から投げ捨て、ウクライナ国旗を掲げた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は1日の動画声明で、ドネツク、ルガンスク両州で構成する東部ドンバス地域に、ウクライナ国旗を「1週間のうちに」さらに立てると述べ、攻勢を続ける考えを示した。

【私の論評】ロシア軍、ウクライナ軍ともに鉄道の要衝がなぜ軍事上の要衝になるのか(゚д゚)!

報道では、東部要衝リマンとされていますが、なせリマンが要衝なのかはほとんど語られていません。

なぜ、リマンが要衝なのかを理解するには、まずはロシア、ウクライナともに輸送のかなり大きな部分を鉄道に頼っていることを理解しなければならないです。

以下のグラフは、ロシア・ウクライナの輸送モード別貨物輸送量の推移です。比較対象として、ポーランドおよび英独仏伊の合計も掲載してあります。

クリックすると拡大します

上のグラフでは、ロシア、ウクライナの輸送モード別のトンキロ・ベース輸送量の推移を掲げ、ソ連解体と各国独立国化の後に、どう変化してきたのかを示しました。同時にポーランドや西欧の動きとも比較しました。

ロシア、ウクライナともに、1991年のソ連解体とその後の経済瓦解、社会の大混乱によって、物流量は大きく落ち込んだことがデータから明らかです。

1990年代のボトム輸送量は、ロシアの場合、ソ連時代のピークと比較して、鉄道、道路では約4割、パイプラインでは5割弱にまでに落ち込んでいます。今以上に鉄道輸送への依存度が高かったウクライナでは鉄道貨物の輸送量が対1990年対比で3割近くにまで落ち込んでいます。

これは、かなり激しい経済の崩壊状態に見舞われたことを示しています。

しかし最悪の状態はそう長くは続かなかった。その後、だんだんとロシアの物流量は回復し、2009年のリーマンショック後の世界的な経済低迷の時期の一時的な落ち込みを経て、現在は、少なくとも鉄道とパイプラインに関しては、ソ連時代のピークにまで回復して来ています。

ところが道路に関しては、なおピーク時の86%に止まっています。つまり、鉄道とパイプラインに過度に依存し、道路輸送のシェアが極端に低いという物流構造の特徴がさらに強まっているのです。

ウクライナでは、パイプラインが減り、道路による輸送は、若干増えていますが、鉄道輸送はピークのときと比較すると回復しておらず、現状でも経済的に厳しい状況に置かれていたことがわかります。ウクライナの場合も、まだ道路輸送のシェアが極端に低くと鉄道に頼る物流構造であることがわかります。

同時期に西欧(英独仏伊の計)やポーランドでは鉄道は横ばいか低下傾向をたどっているのに対して、道路輸送が大きく伸長しており、ロシア、ウクライナの動きをそれ以外の地域の動きと比較すると余りに対照的です。ちなみに、日本も西欧と同様、鉄道は低下傾向をたどっています。

ロシア経済は回復してきているとはいえ、石油や天然ガスといった資源の輸出への依存体質からの脱却が難しいことがこうした状況を生んでいると言えます。

ロシアもウクライナも物資郵送は、未だに鉄道にかなりを依存しているのです。

そのうえで、以下にリマンを含むウクライナの地図を掲載します。


この地図から、イジュームからリマン、シヴェリスクまで鉄道が伸びていて、スラビャンスクとも接続できることがわかります。リマン奪還により、ポーランドからキーウ経由でクピャンスク、リマンまで鉄道の補給線がつながり、東部でウクライナは圧倒的に有利になったと思います。 逆にロシアは補給線を3/4失いました。

ロシア鉄道のゲージ(線路幅)はいわゆる標準軌(1435mm)よりも幅の広い広軌(1520mmまたは1524mm)で、ヨーロッパではウクライナを含む旧ソビエト連邦内とフィンランドでしか使われていません。スペインも広軌ですが、ゲージのサイズがロシアとは違います。

このゲージの違いが、ロシア軍の作戦行動に大きく影響します。バルト三国、ウクライナを含む旧ソビエト連邦内なら広軌で統一されており、鉄道でスムーズな兵站線が引けます。一方ポーランドには、ロシアからウクライナのキエフを経由して南部のスワフクフまで、1本だけ広軌の鉄道が通っていますが、ほかは国境のごく一部を除き標準軌であり兵站線を連続できません。

ゲージが違えば鉄道を使った兵站線はそのまま連続することができず、積み替えかゲージの変更(いわゆる改軌)工事を行わなければなりません。台車交換や軌間を変更できるフリーゲージ方式もありますが、しかし結節点には設備が必要でスムーズな物流を妨げますし、ロシアの貨物列車はほとんど対応していません。

積替えすれば良いという話しなるかもしれませんが、莫大な物資を全部積み替えるのはとてつもない労力を必要とします。トラックを使えば良いという話しにもなるかもしれませんか、ロシア、ウクライナとももともと鉄道に頼っているということから、道路網も西側諸国などから比較すれば、発達しておらず、トラックも十分とはいえません。

原油パイプラインについては、欧州向けパイプラインはウクライナ東部を通らず、ベラルーシからウクライナ西部を抜けて、スロヴァキア及びハンガリーにぬけるものがメインとなっています。ロシア側としては、パイプラインを軍事転用することもできません。やはり物資、燃料ともに鉄道に頼るしかないのです。

この兵站線の特徴からロシア軍は、ウクライナ等の旧ソビエト連邦領域内で「積極的作戦」は行えますが、領域外で持続的な作戦行動を行う能力は限定的です。鉄道による兵站線が引けるかどうかのゲージの違いが、ポーランドとウクライナの安全保障上のリスクに違いを生んでいるといえます。しかしロシアがウクライナを抑えればまた状況は変わります。キエフ経由の広軌が利用でき、ポーランドのリスクは格段に高まります。 

国境付近に集結した兵力を数えるだけではなく、軍用列車を観察することでロシア軍がどう動くつもりなのか占うことができます。SNSに投稿される鉄道で運ばれる戦車の動画は「ミリ鉄」「撮り鉄」趣味どころではありません。中欧の人たちにとっては死活問題なのです。

ロシアも、ウクライナも兵站を鉄道に頼っているせいでしょうか、鉄道を破壊するようなことはほとんどしていません。例外的に、ロシア軍は5月4日に首都キーウや西部リビウなど8地域に向けて発射し、ウクライナが迎撃できなかった一部は着弾し、駅舎や電力施設が被害を受け、輸送インフラの破壊を狙った攻撃とみらました。

ただ、キーウなどは、すでにロシアは侵攻をあきらめていると考えられます。リビウには、当初から侵攻するつもりなどなかったでしょう。そうして、これ以降はロシアによる目立った大規模な鉄道の要衝に対する攻撃はみられません。

東部・南部の鉄道はロシア軍も使っているでしょうから、これを破壊することはしないでしょうが、民間人を巻き込むような都市部へのミサイル攻撃ではなく、今後ロシアが使う見込みのない西部等では鉄道網を徹底的に破壊する物流を阻害する効果的なミサイル攻撃をするべきだったと思うのですが、ロシアはそうしませんでした。

一方は、ウクライナは今回鉄道の要衝である、リマンを奪還しました。この奪還は、リマン市がロシア連邦に所属したとされてから、24時間以下で行われました。これは、史上最短の「併合」かもしれません。ギネスブックに登録されるかもしれません。

リマン駅は、鉄道の要所ということで、駅付近の路線図。さすがに複雑で、駅の前後にループ線が2か所あります。(下地図)


リマンは、ロシア軍がドネツク州北部への軍事作戦や物流の拠点としていました。ウクライナ軍報道官は1日、リマンの解放は、ロシアが大部分を支配する東部ルガンスク州への進軍を可能とし、「心理的にもとても重要だ」と述べました。

ウクライナ軍は9月上旬に北東部ハリコフ州の広域でロシア軍を撤収させることに成功しました。更に隣接するドネツク州でも要衝リマンを奪還し、東部で反転攻勢を続けている形になりました。

以上のような状況を考えれば、ロシア軍にとってもウクライナ軍にとっても、いかにリマンが鉄道の要衝、すなわち軍事上の要衝であるのか理解できます。

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2022年10月1日土曜日

中国海軍 新型潜水艦の訓練映像公開―【私の論評】我が国は、今年も昨年と同様に核で日本を恫喝し続ける中国への対抗手段を持つべき(゚д゚)!

中国海軍 新型潜水艦の訓練映像公開



 来月16日に開幕を控える中国共産党の重要会議を前に、中国海軍が新型潜水艦の訓練の映像を公開しました。

  中国海軍は29日、去年就役したばかりの新型潜水艦「長征18号」が南シナ海で訓練を行う様子を公開しました。

  中国メディアによりますと、「長征18号」は機動性だけでなく、レーダーなどから探知されにくくする「ステルス」性能が大きく向上し、長距離の核弾道ミサイルを搭載することができるとしています。 

 映像を公開した背景には台湾問題などで米中関係が悪化するなか、10月の共産党大会を前に、習近平政権が海軍の強化をアピールする狙いがあります。

【私の論評】我が国は、今年も昨年と同様に核で日本を恫喝し続ける中国への対抗手段を持つべき(゚д゚)!

以上のような記事だと、一体何を意味しているのか、理解できない人も多いのではないかと思います。

まずは、「長征18号」は、094型原潜(SSBN)の7番艦です。094型原潜(SSBN)は以下の表でもわかるように、現在までに7隻建造されています。


中国人民解放軍海軍が運用する原子力弾道ミサイル潜水艦。NATOコードネームは晋王朝に因んで晋級(Jin Class)です。

ワシントンの民間の有力研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」は昨年8月4日、中国南部の海南島の人民解放軍海軍の楡林基地に094型原潜(SSBN)1隻が帰投する光景を人工衛星の偵察で映した映像(下写真)を公表しました。


CSISの発表によると、この帰投の映像は7月8日の撮影で、さらに7月15日にはこの原潜が同型のもう1隻の094型とともに楡林基地の埠頭に停泊している光景が撮影されました。

同基地には4つの埠頭があり、094型がそれぞれ1つの埠頭に、さらに他の二つの埠頭には093型(SSN中国名称・商級)攻撃型原潜が1隻ずつ停泊していたといいます。

CSISでは中国海軍のこの094型原潜について米国側ではとくに警戒の必要があるとして、国防総省の情報などを基礎に以下の諸点を強調していました。
  • 094型原潜は現在は中国人民解放軍でも海洋からの核ミサイル発射が可能の唯一の艦艇であり、中国側は今後その増強を図ろうとしている。
  • 中国の核戦力はこれまで陸海空からのそれぞれ発射可能なアメリカやロシアとは異なり、地上発射だけに依存してきたが、今後は海洋発射をも目指している。
  • 中国海軍は2000年ごろから合計094型4隻、改造された094A型2隻を建造してきた。最新の094型推進式は2021年4月で、習近平主席もその式に出席した。
  • 094型はそれぞれ核ミサイル発射基JL2(巨浪Ⅱ)12を装備し、核弾頭を最大射程9000キロまで発射できる。
  • 南シナ海からだと巨浪ミサイルはアメリカ本土に届かないが、グアム島やハワイやアラスカは射程に入る。
  • 中国軍は094型に次ぐ096型潜水艦をいま開発中で、数年後に完成すれば、核ミサイルの射程は1万キロを越え、アメリカ本土を直撃できる。
  • ただし現在の094型はアメリカの原潜にくらべれば、潜水での航行時のエンジン音などがずっと大きく、容易に探知されるという弱点がある。
上の記事で、ステルス性能が向上としていますが、このステルス性が何を意味しているのか、よくわかりません。

潜行中の潜水艦はレーダーには映りません。ですので、この意味ではステルスと言っても良いと思います。

アクティブソーナーに対しては音響吸収用のゴムタイルが、パッシブソーナーに対しては船体を気泡で包み込んで船体から音を漏らさないための「プレーリーマスカー」と呼ばれる装置があります。MAD(磁気探知機)対策としては、船体をコイルでくるんで磁気の乱れを打ち消す対策などが取られています。

ただ、これらによっても、大きな騒音を消すことはできません。日本の通常型潜水艦の最新型は、無音に近いので、水中でのステルス性は高いです。一方、原潜の場合は構造上どうしても騒音がでることは避けられないですから、何かを根本的に変えないと、水中でのステルス性を得ることはできません。

上に挙げたように、対潜戦闘用のセンサを欺瞞する為の装備は、すでに数世代前の潜水艦から実用化されていますので、潜水艦はステルス性を持っていると言ってよいでしょう。ただ、上でも示したように、現在の094型はアメリカの原潜にくらべれば、潜水での巡航時のエンジン音などがずっと大きく、容易に探知されるという弱点があるとされています。

よって、上の記事でいうところのステルス性とは何を示しているのかよくわかりません。おそらく、中国なりに創意工夫して、従来よりは、ある程度騒音を低減することに成功したということかもれしません。

バイデン政権の国務省報道官は昨年7月の定例記者会見で「米国政府は中国の急速な核戦力の増強に懸念を抱いており、中国政府が不安定な軍拡競争のリスクを減らすために実利的な交渉にのぞむことを期待する」と語ったばかりでした。

また米国の民間では前述のCSISが昨年6月に「2021年の中国の戦略と軍事部隊」という研究報告書を発表して、中国軍の核戦力全般に及ぶ増強への警告を出していました。

そのうえに同年7月中旬には中国の軍事評論集団が日本への核攻撃を描く動画を公表し、米国の専門家筋でも話題を集め、非難をも浴びました。この約6分の動画は明らかに中国政府の黙認を得て作成、公表されたものとみられます。

その内容は日本がもし中国軍の台湾武力攻撃による台湾有事が起きて、参戦した場合には中国側は即時に日本の核攻撃を加えるという趣旨でした。

この動画は米側での反応が広がり始めると中国当局が一般向けのサイトからは削除したですが、戦略核ミサイル部隊が駐屯する陝西省の共産党委員会のサイトにはそのまま掲載されました。これは、事実上中国政府の日本への核攻撃の恫喝でした。

この動きに対して、米側では中国当局が長年、掲げてきた「核先制不使用」政策(核兵器は戦争でも相手が使った場合にしか使用せず、非核国にも使用しないという政策)への不信感が表明されるようにもなりました。

そんな状況での中国の潜水艦による核ミサイル発射能力を誇示するような動きに米側の警鐘が改めて鳴らされたことには、それなりの理由があったといえます。

日本では今年も、8月上旬は広島、長崎への原爆被害を記念する式典が催され、核兵器自体への反対が繰り返し表明されます。この世界からすべての核兵器をなくせ、という声があがります。こうした反核の声はまず日本への敵意を示す中国や北朝鮮の核兵器に対してこそ向けられるべきです。

さらに、今年は、日中国交正常化50年直前ののタイミングで「長征18号」が南シナ海で訓練を行う様子を動画で公開しました。このような核の恫喝に日本は、どのように対抗すべきでしょうか。

日本も、潜水艦に長距離ミサイルを搭載して、発射できるようにして、核は用いないものの、要所、要所に正確にピンポイントで攻撃できる体制を整えるべきです。

核でなくても、いざとなれば、三峡ダムなど中国の弱い部分を攻撃できるようにしておくべきです。ちなみに、三峡ダムが破壊されれば、中国の国土の40%は洪水に見舞われるとされています。台湾は、すでに長距離ミサイルを配備し、いざとなれば三峡ダムを破壊できる体制を整えたとされています。

それ以外にも、レーダー基地、監視衛星の地上施設、ミサイル発射基地、原子力発電所、データセンターなどにも攻撃ができます。

ただ、台湾は、新型のミサイルを発射できる潜水艦は、現在は持っておらず、現在開発中です。日本が長距離ミサイルを持ち潜水艦から発射できるようにすれば、これは中国にとってもかなりの脅威になります。

このブログでは、以前から日本の潜水艦22隻配備体制によって、日本の専守防衛力はかなり高まった旨を掲載しています。

なぜ、そういうことになるかといえば、中国の対潜水艦戦闘力(Anti Submarine Warfare)は、日本と比較すると劣っているからです。特に、対潜哨戒能力に劣っているからです。

そうなると、中国の艦船が、尖閣諸島に近づけば、日本はこれを簡単に撃沈することができるからです。そのため、尖閣などに上陸したとしても、日本側が潜水艦でこれを包囲すれば、中国がはこれを発見するのが難しいため、尖閣諸島に輸送船を派遣すれば、撃沈されることを覚悟しなくてはならなくなるからです。

そうなると、尖閣諸島への補給はできなくなり、上陸した兵もお手上げになってしまいます。これは、尖閣だけではなく、日本の他の領土でも同じことです。だから、日本は専守防衛はできるでしょう。

しかし、中国はこうした膠着状況を打開するため、あるいは国内世論に配慮して、日本にミサイルを発射することは十分に考えられます。それでも、日本の潜水艦は、中国の潜水艦や艦艇を撃沈し続けるでしょうから、日本の独立は保たれるとは思います。

しかし、中国がミサイルを発射すれば、日本の国土は破壊され、国民の命や財産も危険にさらされることになります。日本は、これに対抗する手段をもたなければなりません。そのためには、潜水艦に長距離ミサイルを搭載できるようにすべきです。

そうなると、これは中国に対するかなりの抑止力になります。岸田政権は、あまり中国を刺激しないようにと配慮しているようですが、刺激しているのは中国のほうです、昨年は7月中旬には中国の軍事評論集団が日本への核攻撃を描く動画を公表し、今年は南シナ海で核ミサイル搭載原子力潜水艦が訓練を行う様子を公開したわけですから、日本がこれに対抗するため何らかの手段を講じるのは当然であり、そうしたとしても、世界中のほとんどの国はこれを非難することはありません。

避難するのは、中国、ロシア、北朝鮮等の極少数の国だけでしょう。


政府は、昨年から海上自衛隊の潜水艦に、地上の目標も攻撃可能な国産の長射程巡航ミサイルを搭載する方向で検討に入ったとされています。ミサイルは海中発射型とし、自衛目的で敵のミサイル発射基地などを破壊する「敵基地攻撃能力」を具体化する装備に位置づけられる見込みだとされていました。

是非これを実現して欲しいものです。中国に対して、もし日本を攻撃すれば、自分たちも大きな傷みを伴う、報復を受けることを周知徹底すべきです。

それ以前に、日本は潜水艦22隻体制によって、専守防衛体制が整っていることも周知徹底すべきです。このブロクでは、台湾有事となるとなぜか日米のシミレーションでは潜水艦が一隻も登場せず、不利な戦いを強いられるシナリオになります。

米国には強力な攻撃型原潜があり、それを3 隻くらいも台湾近海に配置すれば、対潜水艦戦闘力に劣る中国海軍は太刀打ちできないのは明らかであるにもかかわらず、米国のシミレーションでは潜水艦は登場しません。

これは、おそらく、米海軍などが、海軍に対して耳目をひきつけ、予算獲得などを有利にしようとしている節があることを、このブログでは掲載してきました。それが、本音ではないかと思います。

日本もそうではないかとは思ったのですが、どうもそうではないような気がしてきました。中国は、昨年も今年も核で日本を恫喝し続けているのに、ひたすら日本の潜水艦隊の実力を隠し続けるのは、一重にいわゆる「中国配慮」なのではないかと思えてきました。

もう、そんなことをしている場合ではないと思います。日本は、尖閣諸島で潜水艦で尖閣諸島を潜水艦で包囲して、尖閣に近づく艦船を撃沈する訓練をしても良いと思います。それも、中国の監視船の鼻先で実施して、恐怖心を煽るようなこともありだと思います。

その後に間髪をいれず、潜水艦に、地上の目標も攻撃可能な国産の長射程巡航ミサイルを搭載する旨を公表すべきです。そうすれば、中国はパニックに陥り、烈火のごとく怒り、日本を批判するでしょうが、それは中国が自ら日本を核で恫喝したことの帰結がこうしたことを招いたのだとしっかりと認識させるべきでしょう。

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2022年9月30日金曜日

高市氏が〝捨て身〟の告発!岸田内閣「中国スパイ」を野放しか 「セキュリティー・クリアランス」提出に圧力、政府内の親中派と暗闘を示唆―【私の論評】危機管理能力があまりに低い岸田政権は、短期で終わらせないと、自民党はおろか、日本国、日本国民が毀損されかねない(゚д゚)!

有本香の以読制毒

高市経済安全保障相は「闘う政治家」としての覚悟を決めたようだ

 高市早苗経済安全保障担当相が28日、「捨て身の告発」に打って出た。先端技術の流出を防ぐため、重要情報を取り扱う研究者らの身分の信頼性を確認する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」をめぐり、政府内の〝抵抗勢力の存在〟や〝親中派との闘争〟を示唆したのだ。「国葬(国葬儀)」で27日に見送られた安倍晋三元首相は生前、日本の国力を維持・発展させるため、欧米諸国では常識である「スパイ防止法」の制定にも意欲を持っていた。日本と中国は29日、国交正常化から50年を迎えた。岸田文雄政権の、国民と国家を守る気概が問われている。ジャーナリスト、有本香氏による緊急リポート。

 現役閣僚による爆弾発言が飛び出した。

 「大臣に就任した日に言われたのは、『中国』という言葉を出さないでくれというのと、来年の通常国会にセキュリティー・クリアランスを入れた経済安全保障推進法を提出するとは口が裂けても言わないでくれと言われました」

岸田首相

 高市氏が28日夜、「BSフジLIVE プライムニュース」に出演した際の発言である。これに岸田首相がどう対処するか〝見もの〟だ。

 経済安全保障については今年5月、経済安全保障推進法が成立したが、同法には最も重要な要素が欠落している。それがセキュリティー・クリアランス、「人の適格性の審査」だ。あえて簡単に言えば、外国のスパイを取り締まるルールである。

 同法成立の前から、筆者はこの欠落を厳しく批判していた。「仏作って魂入れず」のような経済安保法にどれほどの意味があるのか、ということである。国会提出前の今年2月には、自民党の政調会長だった高市氏と『月刊Hanada』で対談し、次のようなやり取りをした。

 高市氏「今年の大きな柱はやはり経済安全保障政策です。どのような事態になっても必要な物資を国内で調達できる環境、サイバー攻撃から国民の生命や財産を守り抜くこと、機微技術の国外流出を防ぐことなどを柱とする『経済安全保障推進法』の第1弾を今国会で必ず成立させたい」

 筆者「かねてより高市さんがおっしゃっていた外国人研究者などのスクリーニング(選別)は、その第1弾には含まれるんですか?」

 高市氏「外国人研究者のスクリーニングは第2弾でやります。これを入れると今国会では通りませんから」

正直に言うと、7カ月前、高市氏のこの答えにひどく失望したものだ。

 対談での高市氏は、「岸田政権をサポートする」「7月の参院選に勝利することが大事」という表明に終始した印象だった。それは政調会長という立場からすると当然ではあるが、あまりにも型通り、多くの読者の失望を誘うものでもあった。

 実は、筆者はこのときの失望を、安倍氏にもぶつけた。「人のスクリーニングを盛り込まないなら、意味のない法律です」と。

 筆者の怒りに対し、安倍氏は「人のスクリーニングを盛り込んだ法律は必ずやるから。こちらもプッシュしていく。ただ、容易でないことは理解してほしい」と答えていた。

 しかしいま、昨晩の高市氏の「告発」を聞き、生前の安倍氏の言葉を思い返すと、経済安保をめぐる自民党内の「闘争」、とりわけ「親中派との闘争」が実感を伴ってみえてくる。2月に筆者が抱いた強い失望は、こうした暗闘への筆者の不理解も少々手伝ったかと反省する。

 今般、高市氏が「捨て身の告発」に打って出たのには、安倍氏の国葬儀が無事終わったことも関係しているかもしれない。国葬儀には筆者も参列したが、かけがえのないリーダーを喪った悲しみ、反省を改めて深くする一方で、国難のいまこそ、「闘う政治家」だった安倍氏の遺志を、皆で継ぐべきという思いにもさせられた。

 高市氏は同じ28日、BS日テレの「深層NEWS」にも出演し、政府による国葬実施の決定過程について次のような苦言を呈している。

 「決定する少し前に国会の議院運営委員会の理事会とか、衆参両院の議長とか、そういったところに話がちゃんとあってもよかったのではないか」

 一連の高市発言を「岸田おろし」や「閣内不一致」というレベルの話題にして済ますべきではない。

 「中国のスパイ」一つ取り締まれない日本に明日はない。安倍氏の志を真に継ぐのは誰なのか―。はっきりさせるときである。

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】危機管理能力があまりに低い岸田政権は、短期で終わらせないと、自民党はおろか、日本企業、日本国、日本国民が毀損されかねない(゚д゚)!

上の記事にある、高市氏が28日夜、「BSフジLIVE プライムニュース」に出演した際の発言については、昨日このブログに掲載したばかりです。高橋洋一氏のツイートに掲載された動画という形で掲載しました。昨日の記事のリンクを以下に掲載します。
短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”―【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!
昨日の記事から一部を引用します。
安倍元総理が暗殺された後の、内閣改造は、酷いものでした。露骨な安倍派の排除でした。この内閣改造は、論評にも値しない酷いものでした。

しかも、内閣改造の前には、「統一教会に関係があった人は閣僚から外す」として、旧統一教会と比較的関係が強いとみられていた、安倍派を外す旨を公表しての人事でした。

安倍派という多数派をないがしろにする岸田総理の人事をみて、他派閥も反発を強めたことでしょう。

しかも、内閣改造で頭がパンパンだったとみられる、岸田首相は、中国にミサイルを発射されても、国家安全保障会議 (NSC)を開催しませんでした。

旧統一教会に関しては、厳密な法律の適用や、新たな法律の検討などを飛び越して、憲法や法律に抵触するおそれさえある統一教会排除を宣言し、それこそ、魔女狩りに等しいような批判をした、野党やマスコミの土俵にみずから乗ってしまうようなことをやらかしてしまいました。

この2つのことによって、岸田総理には「危機管理能力」が欠如していることが明らかになりました。これは、歴代内閣の中でも最悪かもしれまません。

以上でもおわかりのように、この記事は、次の自民党内の政局を中心に述べたものです。その文脈で高橋洋一氏のツイートに掲載された高市氏の発言をの動画を掲載したものです。高橋洋一のツイートを以下に再掲します。

昨日の記事には、この動画に続けて以下のように述べました。
このようなことを、外部に漏らしてしまうということは、自民党内で相当不満が鬱積していることを示しているものと考えられます。そうでなければ、このような発言はできないと思います。

安倍元総理の「国葬儀」までは、こらえてきたのでしょうが、こらえきれなくなって高市氏は、このような発言をしたのでしょう。そうして、これは無論高市氏一人ということではないでしょう。
ただ、この発言は上の、有本香氏が語っているように、一連の高市発言を「岸田おろし」や「閣内不一致」というレベルの話題にして済ますべきではないです。

スパイに関しては、最近米国でもショッキングなことがありました。たとえば世界中の人々が利用する巨大SNS(交流サイト)で浮上した〝スパイ疑惑〟が波紋を呼んでいます。米国のSNS「ツイッター」の元セキュリティー責任者が、米議会上院の司法委員会で「ツイッターの従業員の中に中国の工作員がいた」と証言したのです。

不特定多数のユーザーの個人情報が筒抜けになり、工作活動に悪用される可能性があります。日本でも、企業や大学、研究所などにスパイが浸透して、非合法的手段による情報収集や、さまざまな工作活動を行う危険性が指摘されてきました。

これは決して対岸の火事ではありません。日本は最先端の科学技術を誇り、世界中の情報が集中していますが、「スパイ防止法」が存在しません。万が一、逮捕されてもスパイ行為自体については、犯罪ににならず、スパイ行為を実行する際に何らかの違法行為を行っていれば、はじめて犯罪が成立し、それを司法でさばくことができます。スパイ行為自体は、重罪になりません。まさに『スパイ天国』というしかないです。

もともと著名な「ハッカー」として知られたツイッターの元セキュリティー責任者、ピーター・ザトコ氏は米議会の公聴会で13日、重大なスパイ疑惑の存在を証言し、ツイッターが抱える問題点を指摘しました。


ロイター通信によると、ザトコ氏は公聴会で「FBI(連邦捜査局)がツイッターに対し、中国国家安全部(MSS)の工作員が従業員名簿に載っていると通知した」と説明。インド政府の意向を受けた人物も在籍していたと主張し、「(ツイッターは)外国情報機関を探し出し、追放する能力がない」などと批判したといいます。

ザトコ氏は今年1月、指導力の欠如と期待を下回る仕事ぶりを理由に同社を解雇されました。その後、米議会や米証券取引委員会(SEC)、司法省、連邦取引委員会(FTC)などに文書を送付し、告発に踏み切りました。

これに対し、ツイッターは「当社のプライバシーとデータセキュリティーに関する誤った主張で、矛盾点や不正確な点だらけだ。セキュリティーとプライバシーは当社の最優先事項だ」などと反論しました。

世界的企業を直撃したスパイ疑惑だが、日本でも機微に触れる情報や先端技術をターゲットに、海外の工作員が企業に近づく事件が起きています。

2020年には、大手通信会社「ソフトバンク」の元社員が、在日ロシア大使館幹部の男にそそのかされ、通信設備関連の機密情報を持ち出し、不正競争防止法違反容疑で逮捕されました。男の正体はロシア対外情報庁(SVR)のスパイで、他国の科学技術を狙うグループ「ラインX」の要員だったとみられますがが、警視庁公安部の出頭要請に応じず出国しました。

逮捕された合場邦章容疑者(45)

大手化学メーカー「積水化学工業」でも同年、スマートフォン関連技術を中国企業に漏らした元社員が書類送検される事件が発覚しました。中国企業側はSNSを通じ元社員に接触し、巧みに情報を漏洩するよう誘っていました。

日本企業を狙うスパイ事件ではこれまで、外国情報機関の要員らが日本人社員に接近し、漏洩をそそのかすケースが多かったそうですが、グローバル化で社員が多国籍となれば、スパイ本人が社員として浸透するケースも出てくることになるでしょう。

警察当局は、重要な情報が相手方にわたる「後手」を防ぎ、国益を守る観点から、不審な動向を把握した時点で、所属する企業側へ通報する方針にシフトしているそうです。

高市早苗経済安全保障担当相は先月、先端技術流出を防ぐため重要情報を取り扱う研究者らの身分の信頼性を確認する、「セキュリティークリアランス(適格性評価)」制度の検討を急ぐ意向を示しました。

高市氏は「機微情報や重要な技術に接する方々の信頼性を確保しなければ、日本で民生技術として研究してきたものが他国の先進的な兵器に使われる可能性もある」と懸念を示しました。

ただ、日本では工作員の存在や疑いを確認しても諜報活動そのものを取り締まる法律がありません。窃盗や背任、外為法、旅券法違反など、具体的な犯罪がなければ摘発は困難で、「スパイ天国」とも揶揄されています。

高市氏は今年5月、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」で、セキュリティー・クリアランスに言及したうえで、「これをしっかりやらないと日本が欧米のサプライチェーンから外される可能性もある」「スパイ防止法に近いものを入れ込んでいくことが大事だ」と強調していました。

日本は平和と安全、国民の生命と財産を守るため、スパイの浸透を阻止しなければならないはずです。

にもかかわらず、高市早苗経済安全保障担当大臣は、「大臣に就任した日に言われたのが『中国って言う言葉を出すな。来年の通常国会にセキュリティ・クリアランスを入れた経済安保法を提案すると口が裂けても言うな』と言われた」というのですから、これは一体どうなっているのでしょうか。

誰が高市氏対してそのような発言をしたのでしょうか。岸田総理なのでしょうか。

いずれにしても、岸田政権にはあまりに問題が多すぎです。特に、危機管理能力があまりに低レベルです。短期政権で終わらせないと、自民党はおろか、日本企業、日本国、日本国民が毀損されかねません。

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2022年9月29日木曜日

短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”―【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!

短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”

“最悪の自民党政権”と呼ばれた政権

 岸田文雄政権の支持率が急落している。岸田政権の前の菅義偉内閣は1年1か月で崩壊した。岸田政権はまもなく1年を迎える。岸田政権は大丈夫なのだろうか。永田町では「政権の存続の指標」と言われる“青木方程式”で分析した。なお、内閣支持率、政党支持率はすべてNHK世論調査による。

 “青木の法則”とも呼ばれる「青木方程式」は、自民党の青木幹雄元参院議員会長が経験に基づき提唱したもので、「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を下回ると政権は倒れる」という法則だ。

 確かに、近年の政権が倒れた時の状況を見ると、青木方程式が当てはまるケースは多い。(表1)


 第1次安倍政権以降、8人の首相が誕生しているが、このうち5人の政権は青木方程式が50%を下回り倒れている点を考えれば、青木方程式はある程度は信頼に値すると考えられる。

 ただ、福田康夫政権は青木方程式が50%を下回ってから4か月間生き延びたし、麻生太郎政権は月1度の世論調査で4回も青木方程式が50%を下回り、“最悪の自民党政権”と言われた。

 菅直人政権は4か月連続で50%を下回った後で倒れ、野田佳彦政権は1年4か月の政権期間のうち、12か月も50%を下回っていたことから、青木方程式は50%を下回ったからと言って、すぐに政権が倒れるというものではない。

 一方で、第1次安倍晋三政権以降で青木方程式が50%を下回らなかったのは、安倍政権(第1次から第4次まで)と菅政権だけだが、それでも政権は倒れる。青木方程式が50%を下回っていないから“安泰”というものでもない。

 安倍元首相の長期政権を引き継いだ菅政権は、不十分な新型コロナウイルス対策とワクチン接種対応への遅れに加え、衛星放送関連会社「東北新社」に勤務していた長男と総務省幹部らとの接待会食が明らかになったことが“引き金”となり、支持率の低下を招いた。

 菅政権を引き継いだ岸田政権は、新型コロナ対策以外の政策に対して不満や批判が多く、加えて、旧統一教会と自民党議員の関係に対する説明不足や対応不足を指摘する声、安倍元首相の「国葬実施」に対する反対意見が支持率低下の原因となっている。

 では、岸田政権の支持率と自民党支持率、青木方程式はどのように推移しているのだろうか。

 内閣支持率がもっとも高かったのは、22年5月と6月の59%。自民党支持率がもっとも高かったのは、22年2月の41.5%だった。内閣支持率と政党支持率の合計である青木方程式がもっとも高かったのは、22年6月の99.1%だ。(表2)


青木方程式が急落

 安倍元首相が銃撃によってお亡くなりになったのは7月8日。その後、7月16日から18日にかけて行われたNHKの7月世論調査では、内閣支持率は59%、自民党支持率は38.1%、青木方程式は97.4%だった。

 調査時点ではすでに、安倍元首相を襲撃した犯人と旧統一教会との関連が報道され、さらに、複数の自民党議員と旧統一教会の関連も報道され始めていたことで、自民党支持率は6月世論調査の40.1%から38.4%へ1.7ポイント低下した。

 だが、8月調査では自民党議員と関係が大きく広がり、岸田首相や自民党の対応に対する批判が強まった。加えて、安倍元首相の国葬が決まったことへの批判もあり、内閣支持率は7月の59%から一気に46%へ13ポイントも低下し、自民党支持率も38.4%から36.1%に2.3ポイント低下したことで、青木方程式は97.4%から82.1%へと15.3ポイントと大幅低下した。

 青木方程式が1か月で15ポイントを超えて低下することは“非常に稀”で、菅政権では一度もなかった。ただ、麻生政権では31.0ポイント低下したケースがある。

 そして、直近の9月世論調査では、内閣支持率は46%から40%に6ポイント低下、自民党支持率は36.1%から36.2%に0.1ポイント上昇し、青木方程式は82.1%から76.2%に5.9ポイント低下した。

麻生・菅政権はどうだったか

 安倍元首相襲撃事件が引き金となって、自民党議員と旧統一教会との関係、安倍元首相の国葬が内閣支持率、自民党支持率の低下に結び付いたことは明白だ。

 とは言え、岸田政権の9月世論調査での青木方程式は76.2%と危機ラインの50%を上回っている。それでも、政権が “安泰”ではないことは前述した。加えて、筆者には何点か気にかかる点がある。

 第1次安倍晋三内閣以降、ほとんどの政権が1年程度、長くても約1年半で政権が崩壊している。福田康夫政権は365日、麻生太郎政権は358日、鳩山由紀夫政権は266日、菅直人政権は452日、野田佳彦政権は482日、菅義偉政権は384日といった具合だ。そして、岸田政権は21年10月4日発足なので、まもなく1年を迎える。

 そこで、過去の政権の青木方程式を見ると、青木方程式が当てはまった典型例の麻生政権は、青木方程式がもっとも高かったのが発足時の08年9月の85.3%で、この時の内閣支持率は48%で自民党支持率は37.3%だった。

 その後、内閣支持率、自民党支持率とも急激に低下し、政権発足の4か月後の09年1月に青木方程式は危機ラインの50%を割り込み、48.4%に低下した。麻生政権の1年1か月の間に青木方程式の50%割れは6か月もあった。(表3)


 一方、青木方程式が50%を割り込むことなく倒れた菅政権の青木方程式は20年9月の発足時の102.8%がもっとも高い。この時、内閣支持率は62%。自民党支持率は40.8%で、共にもっとも高かった。

 その後、菅政権は支持率を下げ続け、21年9月には内閣支持率が29%と発足時から33ポイントも低下、自民党支持率も33.4%と発足時から7.4ポイント低下し、青木方程式も62.4%と発足時から40.4ポイント低下して最低となった。(表4)


3つの政権の共通

 この麻生、菅、岸田の3つの政権の青木方程式には、何の共通項もないように見える。そこで、3つの政権の発足後の青木方程式の動きを1つのグラフにまとめてみた。(表5)


 各内閣の青木方程式の水準は違うものの、1つの共通する動きは政権発足から9か月、10か月で青木方程式の数値が低下し始めることだ。この共通項は安倍政権を除く、多くの政権でも見られている。

 そして、麻生、菅の両政権では、内閣支持率が自民党支持率を下回ると、青木方程式が大きく低下を始めている。前述のように、岸田内閣の直近9月の内閣支持率は40%、自民党支持率は36.2%と両者はかなり接近している。

 さらに、麻生、菅政権とも、政権期間中に青木方程式が前月よりも“7回低下”した後に倒れている。他の政権でも同様の傾向が見られ、どうやら青木方程式の7回の低下というのは、政権にとっては一つの“鬼門”のようだ。現在、岸田政権の青木方程式は“6回低下”している。

 このように、岸田政権は(1)10月に発足1年を迎える、(2)政権発足10か月目から青木方程式が低下している、(3)内閣支持率と自民党支持率が接近している、(4)青木方程式が6回低下している―という状況にある。

 従って、10月の世論調査で内閣支持率、自民党支持率、そして青木方程式がどのように変化するのかは、岸田政権の存続を占う上で大きな意味を持ちそうだ。

鷲尾 香一(ジャーナリスト)

【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!

上の記事、青木率の部分は非常に参考になります。その他の部分では、あまり参考にはならないです。ただ、青木率については詳しく分析し、グラフにしていたため、ブログに掲載することになしました。

まず、麻生政権のときの状況はどうだったかといえば、この頃からすでに日銀は金融引締を継続し、政府は緊縮財政を繰り返し、日本はいわゆる「失われた30年」に突入していました。


日本経済はデフレあったにも関わらず、日銀は金融引き締めを行い、政府は緊縮財政を継続していました。そのため、日本経済は低迷するばかりで、これでは自民党の誰が総理大臣になって新たな政権をつくっても、短期で終わったことでしょう。麻生政権崩壊の原因は、これが第一の原因ですし、他の原因もあるかもしれまんせんが、それは大勢に影響はなかったと思います。

これは、その後民主党政権になっても、日銀の金融政策、政府の財政政策は変わりなく、結局民主党政権も崩壊し、安倍政権に変わりました。民主党政権の崩壊も、失われた30年を終わらせるために、金融政策や財政政策を変更しなかったことが原因でしょう。

このことは、十年くらい前までは、なぜかマクロ経済的な考え方が日本では普及していなかったので、このようなことを語ってもほとんど顧みられなかったのですが、多くの心ある経済学者らが、日本でもマクロ経済的な見方を普及してきたので、最近ようやっと理解されるようになってきました。ただ、いまなお政治家の中には、昭和の頭で、経済対策=公共工事だと思いこんでいる古いタイプの政治家も多いようです。

その後、安倍政権になってから、日銀は、黒田総裁により異次元の包括的金融緩和に取り組みました。政府も、積極財政に転じました。そのため、雇用も改善し、経済も良くなりつつありました。これも、以前には理解されなかったのですが、マクロ経済学上では、当たり前すぎる雇用=日銀の金融政策という考え方も随分普及してきたようです。

ただ、さすがの安倍政権でも三党合意を崩すことはできず、2度の消費税増税を実施することになりました。そのため、デフレから完全脱却するには至りませんでしたが、安倍政権は二度にわたり消費税増税を延期したことと、日銀による金融緩和は継続されたので、雇用は劇的に改善されました。

この雇用の劇的な改善は、安倍長期政権の原動力になったことはいうまでもありません。他にも、安倍政権が長期となった原因もあるでしょうが、もし雇用の劇的な改善がなければ、安倍政権は長期政権にはなり得なかったことでしょう。ただ、この考えは、今でも理解されいないようで、特に民主党の議員らは全くこれに対して理解を示してないようです。

二度の増税によってデフレから完全脱却をしていなかった日本は、その後コロナ禍に襲われました。これに対して安倍・菅政権は、両政権において合計で100兆円の真水の経済対策を実施し、他国にはない日本独自の雇用調整助成金も活用して、大型の経済対策を実施して、他国ではコロナ禍によって、失業率が大幅に上昇したにも関わらず、日本では失業率を現在に至るまで、2%台で推移させるという大偉業を達成しました。

これは、大偉業なのであるにもかかわらず、マクロ経済に疎い、野党やマスコミはほとんど評価しませんが、実際に就職などで、雇用の劇的改善したことを身を以て体感した、若い人たちや、就職に関わった学校の先生や、企業の人事に関わった人たちは、これを高く評価しています。無論、市場関係者もこれを好感し、株価なども上がりました。

評価していないのは、野党とマスコミ関係者、リベラル派、左翼などだけだと思います。

菅政権に関しては、このブログでも指摘した通り、ワクチン接種は公約通りに実現し、日本に巣食う、鉄のトライアングル医療版である、尾身会長ですら抗えない医療村の大抵抗にあったために、病床確保には失敗したものの、医療崩壊も起こすことなく、大勢では大成功したと思います。

それに先程指摘したとおりに、失業率も上昇させることはなく、そのため失業が深刻な社会問題にもなることはありませんでした。実際、皆さん、思い返してください、 2008年あたりから見られた、派遣村のような、コロナ派遣村のようなものが設営されたといことは、聴いたことがないです。

無論、相談の受付とか、食料などの援助というものはありましたが、大規模な年越し村のようなものは設営されませんでした。

菅政権が崩壊した理由など後付でいろいろいう人がいますが、私はこれはほとんどが間違いだと思っています。一番の理由は、自民党内で、菅政権の支持率が下がっているので、菅政権では次の選挙では、戦えないという声が巻き起こり、菅総理はもともと一年の短期政権と決まっていたので、総裁選に出ずに自ら政権を終わらせたというのが主な原因だと考えられます。

そもそも、菅政権を続けようという意思があれば、続けられた余地は十分あったと思います。私としては、続けたほうが、岸田政権になるよりは、はるかにまともだったと思いました。そうして、テレビの印象操作などで漠然と菅総理では駄目だなどと考えていた人たちの多くも、今「どうして菅氏に反対したのか」と問われれば、満足に答えられない人も多いのではないかと思います。実際、少し前から、菅前総理の見直しの動きがあるそうです。何を今更という気がします。

ただ菅氏が政権を自ら終わらせることができた背景としては、安倍元総理という、実績もあり最大派閥のトップという強力な政治家が存在していたということが大きいでしょう。誰が次の総理大臣になっても、派閥の均衡が大きく崩れることはないし、政策の大きな変更もないだろうという安心感からか、結局総裁選で岸田氏が勝ち、総理大臣になりました。

ただ、安倍元総理が暗殺された、後の内閣改造は、酷いものでした。露骨な安倍派の排除でした。この内閣改造は、論評にも値しない酷いものでした。

しかも、内閣改造の前には、「統一教会に関係があった人は閣僚から外す」として、旧統一教会と比較的関係が強いとみられていた、安倍派を外す旨を公表しての人事でした。

安倍派という多数派をないがしろにする岸田総理の人事をみて、他派閥も反発を強めたことでしょう。

しかも、内閣改造で頭がパンパンだったとみられる、岸田首相は、中国にミサイルを発射されても、国家安全保障会議 (NSC)を開催しませんでした。

旧統一教会に関しては、厳密な法律の適用や、新たな法律の検討などを飛び越して、憲法や法律に抵触するおそれさえある統一教会排除を宣言し、それこそ、魔女狩りに等しいような批判をした、野党やマスコミの土俵にみずから乗ってしまうようなことをやらかしてしまいました。

この2つのことによって、岸田総理には「危機管理能力」が欠如していることが明らかになりました。これは、歴代内閣の中でも最悪かもしれまません。

そうして、無派閥の議員や、各派閥にも多く存在する保守派の議員は、財務省に近く、親中派でもある宏池会に対して、安倍元首相が亡くなった現在では、何をやらかすかわからないと疑心暗鬼になり反発していることでしょう。

実際、無派閥で保守派の高市早苗経済安保担当相は「FNNプライムライン」で不満を公表しています。
このようなことを、外部に漏らしてしまうということは、自民党内で相当不満が鬱積していることを示しているものと考えられます。そうでなければ、このような発言はできないと思います。

安倍元総理の「国葬儀」までは、こらえてきたのでしょうが、こらえきれなくなって高市氏は、このような発言をしたのでしょう。そうして、これは無論高市氏一人ということではないでしょう。

自民党の大勢は、統一教会関連のことが今後どのように推移していくのかを見守った上で、自民党を毀損しないようにしたうえで、どのように岸田政権を短期政権にするかという方向で政局が動いていくものと思います。

このような動きを理解したうえで、青木率の推移をみていけば、次の政局の動きがみえてくると思います。

ただ、安倍元総理が亡き現在、安倍元総理の政策を継承できる有力政治家は限られています。高市氏や安倍派の幹部たちも残念ながら、今はまだ非力です。

岸田総理は、「国葬儀」で安倍路線を引き継ぐことを約束しましたが、残念ながら先に述べたように、党内政治においても、党外政治や、外交・安全保証に関しても、危機管理能力が欠如していることがはっきりしました。このような人が、総理大臣を長く続けていれば、日本はいつ、どのような危機に見舞われるかわかったものではありません。

自民党には、危機管理を適切に行い、安倍路線引き継ぎつつ、若手を育ている政治家が必要です。ただ、これは一人の政治家では無理だと思います。複数の政治家が協力して、このようなことを実行していくべきです。改めて、安倍元総理の偉大さが理解できます。

そうして、数の力を知る自民党は、今回は、慎重に自民党を毀損しない形で政局をすすめていくでしょう。そのため、現在は自民党内には目立つた岸田おろしの動きはみえていません。

ただ、自民党保守派には相当不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力になるのは、間違いないようです。

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2022年9月28日水曜日

安倍氏死去/安倍氏国葬、「台湾」読み上げ献花 「非常に深い思い感じた」対日機関会長―【私の論評】岸田総理は、国内外から安倍路線を引き継ぐことを期待されていることを忘れるな(゚д゚)!

安倍氏死去/安倍氏国葬、「台湾」読み上げ献花 「非常に深い思い感じた」対日機関会長

安倍晋三元首相の国葬に参列した(左から)蘇嘉全・台湾日本関係協会会長、謝長廷駐日代表、王金平元立法院長

安倍晋三元首相の国葬が27日、東京・日本武道館で行われ、台湾は献花の際、国名や国際機関名などを読み上げる「指名献花」の対象とされた。これについて、台湾からの代表団のメンバーとして参列した対日窓口機関、台湾日本関係協会の蘇嘉全(そかぜん)会長は、「日本各界の台湾に対する思いが非常に深いと感じた」と語った。

台湾からは蘇氏の他、謝長廷(しゃちょうてい)駐日代表(大使に相当)、王金平(おうきんぺい)元立法院長(国会議長)の3氏が蔡英文(さいえいぶん)総統に指名され出席した。

謝氏は、台湾の代表団として参列したメンバーはいずれも安倍氏と親交があったとし、中国から「とやかく言われる筋合いはない」との考えを示した。

蘇氏は今回の訪日について、日本側から手厚くもてなされ、尊重を感じたとも話した。

中国は、日本が台湾を指名献花の対象に加えたことに反発している。

▽李登輝氏次女、安倍氏の生涯に「父の姿重なった」

安倍氏の国葬には、李登輝(りとうき)元総統の次女、安妮(あんじ)さんも参列した。

安妮さんは27日、都内のホテルで開かれた記者会見に出席。国葬で上映された安倍氏の歩みを振り返る映像について、安倍氏は日本人として自信を持つよう国民を鼓舞し、日本に貢献したと言及。李登輝氏も過去20~30年にわたり、台湾人を励まし、自信を取り戻させたことを思い出したと語った。

国葬を通じ、「父と安倍氏の関係がありありと目に浮かんだ」という安妮さん。国葬の前、両氏の交流について「師弟であり友人であり、父子のようでもあった」と話していた。
安倍晋三元首相の国葬が27日、東京・日本武道館で行われ、台湾は献花の際、国名や国際機関名などを読み上げる「指名献花」の対象とされた。これについて、台湾からの代表団のメンバーとして参列した対日窓口機関、台湾日本関係協会の蘇嘉全(そかぜん)会長は、「日本各界の台湾に対する思いが非常に深いと感じた」と語った。

台湾からは蘇氏の他、謝長廷(しゃちょうてい)駐日代表(大使に相当)、王金平(おうきんぺい)元立法院長(国会議長)の3氏が蔡英文(さいえいぶん)総統に指名され出席した。

謝氏は、台湾の代表団として参列したメンバーはいずれも安倍氏と親交があったとし、中国から「とやかく言われる筋合いはない」との考えを示した。

蘇氏は今回の訪日について、日本側から手厚くもてなされ、尊重を感じたとも話した。

中国は、日本が台湾を指名献花の対象に加えたことに反発している。

▽李登輝氏次女、安倍氏の生涯に「父の姿重なった」

安倍氏の国葬には、李登輝(りとうき)元総統の次女、安妮(あんじ)さんも参列した。

安妮さんは27日、都内のホテルで開かれた記者会見に出席。国葬で上映された安倍氏の歩みを振り返る映像について、安倍氏は日本人として自信を持つよう国民を鼓舞し、日本に貢献したと言及。李登輝氏も過去20~30年にわたり、台湾人を励まし、自信を取り戻させたことを思い出したと語った。

国葬を通じ、「父と安倍氏の関係がありありと目に浮かんだ」という安妮さん。国葬の前、両氏の交流について「師弟であり友人であり、父子のようでもあった」と話していた。

記者会見に臨む(左から)李安妮氏、王金平氏、蘇嘉全氏、謝長廷氏

【私の論評】岸田総理は、国内外から安倍路線を引き継ぐことを期待されていることを忘れるな(゚д゚)!

安倍元総理の国葬を巡って中国は日本に対し、「一つの中国」の原則に基づき、台湾からの代表団の招へいを控えるよう牽制(けんせい)していましたが、台湾外交部は「日本から正式に招待をされた」と発表していました。

代表団の派遣にあたり蔡英文総統は「安倍元総理の台湾に対する貢献に心から感謝を表す」とコメントを発表しています。

安倍元総理の国葬を受けた「弔問外交」はきょうも続いていますが、国葬への参列をめぐって、中国と台湾が複雑な“駆け引き”を繰り広げていました。

中国が政府代表として派遣したのは、国政の助言機関・全国政治協商会議の万鋼副主席でした。閣僚経験者とはいえ、エリザベス英女王の国葬に出席した国家副主席と比べるといわゆる“格下”です。

ちなみに、台湾外交部は、エリザベス女王の国葬においては、英国における台湾の事実上の大使館「台北代表処」の謝武樵代表が、18日に女王の公式弔問名簿に記帳したと発表しています。英国は台湾と外交関係はないですが、他国と同様の待遇が得られるように「特別に招待した」といいます。

実は、7月、台湾の副総統という、日本が台湾と断交して以降、最高位の政府関係者が安倍元総理の自宅を弔問に訪れ、中国は反発しました。

中国は国葬に台湾から誰が訪れるのか、出方を見極めていたといいます。

結局、台湾側が派遣を決めたのは高官ではない台湾日本関係協会会長らでした。

台湾の判断も受け、中国は国葬の4日前というタイミングで万鋼氏の派遣を決定しました。一方で、きのうの国葬では、はっきりと「台湾」とアナウンスされ、台灣の「指名献花」が行われたのです。これは、国として承認していない台湾に対して日本政府が初めて行ったものです。

磯崎官房副長官は、きょうの会見で「全ての代表団が指名献花を行った」としたうえで、「日本政府の立場に変更はない」と政府の見解を強調しました。

一方、中国外務省は「台湾独立分子に、政治利用の場や機会を与えてはならない」と日本の対応を強く批判しました。

岸田首相は、周囲に以下のように語ったとされています。

「中国からEEZにミサイルが撃ち込まれているわけで、それでこちらから“日中”というわけにもいかない。中国も(10月の)党大会が終わるまでは身動き取れないんじゃないか」

まさにこのとおりだと思います。

防衛省統合幕僚監部によると、中国とロシア両海軍のミサイル駆逐艦やフリゲート艦など計7隻が26日から27日にかけて、伊豆諸島付近など太平洋側を航行しました。ロシアが実施を公表している両国による太平洋での合同パトロールの一環とみられます。うち6隻は今月初め、北海道沖の日本海で機関銃射撃を実施し、オホーツク海に移動していました。

中国は国葬自体にも難癖を付けてきた。台湾が「指名献花」の対象に加えられたことに反発し、中国外務省の報道官は27日、「台湾独立分子に対し、政治的なもてあそびの舞台や機会を提供してはならない」と批判しました。

さらに、中国海警局の船3隻が28日午前3時15分ごろから、沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に相次いで侵入した。第11管区海上保安本部が確認しました。 国葬が終わると29日に「日中国交正常化50年」を迎えます。 岸田政権には、毅然とした外交姿勢が期待されますが、岸田外交を担当するのは「政界屈指の親中派」である林芳正外相です。

米首都ワシントンで開かれた日米「経済版2+2」会合に出席した林芳正外相(2022年7月29日)

林氏は「建設的で安定的な日中関係を双方の努力で構築する」「こうしたときこそ意思疎通が重要。対話は常にオープンだ」などと繰り返し、日中の首脳クラスの会談実現に前のめりでした。 

「安倍さん、安倍総理。お疲れさまでした。そして本当にありがとうございました。どうか安らかにおやすみください」 岸田首相は追悼の辞をこう締めくくりましたが、安倍路線をを継承できるのでしょうか。 岸田首相の国葬での哀悼の辞「言葉」は良かったのですが、行動がともなうかどうかが問題です。台湾問題を中心とする対中外交は、クアッドの連携がカギです。

インドのナレンドラ・モディ首相が日帰りの強行日程でも国葬に出席したのは、安倍氏との関係だけでなく、中国の台頭を見据えて岸田首相との連携を表明する意思があったのだとみられます。生前の安倍氏の発言にもあったように「台湾有事は日本有事」です。岸田総理は、現実を直視して、抑止力強化に取り組むべきです。

会談を前にインドのモディ首相(左)と握手する岸田首相(27日午前、東京・元赤坂の迎賓館で)

岸田首相は東京・元赤坂の迎賓館での日印首脳会談で、安倍氏とモディ氏が「日印関係の新たな地平を切り開いた」と伝えました。その上で「外交的な業績をさらに発展させ、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、緊密に連携していきたい」と強調。モディ氏は「安倍氏は初めて『インド太平洋』を語り、クアッドを作った」と応じました。

同席者によると、モディ氏は安倍氏の思い出を語る際、感極まって泣きそうになる場面もあったとされています。

岸田総理は、国内外から安倍路線を引き継ぐことを期待されていることを忘れるべきではないです。間違っても、親中路線を歩むべきではありません。

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