2021年7月4日日曜日

SLBM水中発射成功…世界で8番目の技術保有国に=韓国軍―【私の論評】韓国SLBMが破壊するのは、韓国自身の国防や経済(゚д゚)!

SLBM水中発射成功…世界で8番目の技術保有国に=韓国軍


SLBM水中発射成功…世界で8番目の技術保有国に=韓国


韓国軍が国内独自の技術で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射に成功したことが伝えられた。これにより、韓国は世界で8番目の技術保有国になる。 

 YTNは4日、軍関係者を引用して、昨年末にSLBMの地上発射の成功に続き、最近は水中発射に成功したと報じた。SLBMは一定の深さで水圧を受けながらも正確に目標物を打撃する制御技術が必要なだけに、地上発射よりもはるかに難しい。 今回成功した韓国産SLBMは玄武2B弾道ミサイルを改造したもので、最大射程距離は500kmほどであることが分かった。

【私の論評】韓国SLBMが破壊するのは、韓国自身の国防や経済(゚д゚)!

米国の戦略家ルトワック氏も語っていたように、日米にとって「韓国は無視すべき国」という発言もあったので、ここ最近は私も、韓国についてこのブログで取り上げることはありませんでしたが、本日は久しぶりに取り上げてみることにしました。

昨年8月に韓国軍当局が公表した「2021~2025国防中期計画」の中では、4,000トン級原子力潜水艦3隻の建造計画が明らかにされています。SLBMを搭載した原子力潜水艦は、戦略原潜(SSBN)に分類されます。SSBNを保有する米ロ中英仏及びインドの6か国は、SSBNを核抑止戦略として位置付けていますが、韓国のSSBNの戦略的役割は何であり、何を狙っているのでしょうか。

SSBNは、大陸間弾道弾、戦略爆撃機とともに国家の核抑止戦略の三本柱の一つです。潜水艦は一旦洋上に出てしまえば、大部分の期間を海中で行動することから、その位置を把握することは容易ではありません。

原子力機関を装備すれば、長期間の潜没航行が可能です。そのため、大陸間弾道弾や戦略爆撃機が相手の先制攻撃で無力化されても、SSBNによる第2撃能力を保有することで、先制攻撃を抑止するというのが大枠の構図です。

従って、核弾頭を装備しないSLBMに戦略的意味合いはありません。韓国が開発しているSLBMには核を搭載する計画はありません。そもそも米国は朝鮮半島の非核化に躍起となっています。韓国のSLBMに核を搭載することは米国が許容することはあり得ませんし、韓国がSLBMと核を配備すれば、当然北京を含む中国も標的になることから、中国もこれを許容しないでしょう。

ただ、一方では海中から弾道ミサイルを発射できる体制をとることにより、北朝鮮に対し戦術的柔軟性が増すとの主張があります。確かに原子力潜水艦の高速かつ長大な航続距離、さらには長期間潜没航行できる能力は無視できないです。

しかしながら、韓国最大脅威である北朝鮮に対する兵器としては疑問があります。韓国SLBMの元とされている弾道ミサイル「玄武-2B」の射程は最大で500kmであり、しかも移動式装輪車に搭載されています。


相手の先制攻撃から逃れること目的として、発射位置を自由に変えることができます。北朝鮮の偵察能力を考慮すると、これを完全に無力化するためには、核攻撃により韓国全体を焦土化しなければ不可能でしょう。「玄武-2B」を、わざわざ海中から発射する軍事的合理性はかなり低いです。

次に指摘できることは、費用の問題です。韓国国防省が昨年発表した「2021~2025国防中期計画」で示されている予算は、300兆7千億ウォン(約30兆円)です。日本の令和元年度(2019年度)から5年間の防衛力整備計画(01中期防衛力整備計画)の総額は「概ね27兆円」とされています。これは、国家予算が日本のほぼ半分程度である韓国が、日本を超える国防予算を充当するという極めて野心的な計画です。

韓国の中期計画には、韓国型防空迎撃システム、軍事用偵察衛星等に加え、軽空母の導入も想定されています。米海軍の次期戦略原子力潜水艦コロンビア級1隻の建造費は94億7千万ドル(約1兆円)です。韓国がSLBM搭載3隻の原子力潜水艦を建造するとすれば、その研究開発費を加えると、空母建造を含む他の計画に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

潜水艦内を視察する文大統領 青瓦台facebookページより

更に問題なのはは、韓国が原子力機関の燃料となる「濃縮ウラン」を保有していないことです。韓国文大統領は大統領候補であった2017年4月の討論会において原子力潜水艦保有の必要性を強調し、核燃料購入に必要な原子力協定の改正を米国と議論すると語っています。

朝鮮半島の非核化を推進したい米国が、韓国に「濃縮ウラン」を提供する可能性はほとんどありません。韓国が原子力潜水艦の建造を推進し、中国やロシアから購入の決断を下した途端に、米韓同盟は終焉するでしょう。

北朝鮮は1月行われた第8回労働党大会において、米国を最大の敵とし、引き続き核戦力の強化を図るとしています。1月14日に行われた軍事パレードで目を引いたのは「北極星5号」と記載されたSLBMと思われるミサイルでした。

更に金正恩総書記は原子力潜水艦を保有することにも強い意志を示しています。実際に建造できるかどうかという問題はありますが、対米核抑止を目的とする、北朝鮮のSLBM搭載原子力潜水艦の狙っている目標は米本土や日韓の米軍基地であることは明白です。

翻って、韓国のSLBM搭載原子力潜水艦については、核抑止力にもならず、戦術的にも保有する軍事的合理性は低いです。しかも高額な調達費は他の国防関連予算を圧迫することは確実であすし、相対的に対北抑止力が低下することになるでしょう。さらに、米韓同盟を危機に陥らせる可能性も高いです。

軍事境界線に近い首都ソウル

このようなことをするくらいなら、米国が韓国に要求しはじめてから、40年以上たっても実現されていない、38度線に近い首都ソウルの移転などをしたほうが、余程合理的です。現在だと、首都ソウルに北朝鮮国内から長距離砲を用いれば、ソウルを砲撃できます。なぜいつまでも、ここを首都にしているのか意味不明です。

韓国SLBMが破壊するのは、韓国自身の国防や経済という韓国国家そのものと言えそうです。

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