2023年4月16日日曜日

北朝鮮ミサイル、奇襲能力高い固体燃料式か…韓国軍関係者「新型ICBMの可能性」―【私の論評】揺らぐ核の優位性で、精神が不安定化したか金正恩(゚д゚)!

北朝鮮ミサイル、奇襲能力高い固体燃料式か…韓国軍関係者「新型ICBMの可能性」

北朝鮮が発射に初成功したと発表した新型固体燃料使用ICBM火星18

 13日に北朝鮮から発射されたミサイルについて、米韓は奇襲能力が高い固体燃料式の新型ミサイルとの見方を強めている。北朝鮮は固体燃料式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発を進めており、ミサイル技術の向上を誇示した可能性がある。

 韓国軍関係者は「中距離以上の(射程を持つ)新型の弾道ミサイル」とみており、固体燃料式の新型ICBMの可能性もあるとの見方を示した。

 固体燃料式は液体燃料式よりも発射後の上昇速度が速い。液体燃料の場合、噴射される炎がろうそくのように細長いのに対し、固体燃料式はスカートのように広がる。聯合ニュースによると、米韓当局は今回、こうしたエンジンの特徴を捉えた。複数の韓国メディアは、固体燃料式の新型ICBMとの見方が有力と報じた。

 固体燃料式は、液体燃料のように発射直前に注入する手間が不要で、発射の兆候の早期探知が難しい。

 北朝鮮は、固体燃料式の短距離弾道ミサイルと潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験は実施したが、中長距離弾道ミサイルでは確認されていない。

 北朝鮮は2021年の朝鮮労働党大会で発表した「国防力発展5か年計画」に固体燃料式ICBMの開発を盛り込んだ。昨年12月には高出力の固体燃料エンジンの地上燃焼実験に初めて成功したと主張した。今年2月に行われた軍事パレードでは、固体燃料式のICBMとみられるミサイルを移動式発射台(TEL)に載せて登場させた。

【私の論評】揺らぐ核の優位性で、精神が不安定化したか金正恩(゚д゚)!

日本のメディアは、北朝鮮のミサイルなどについては、事細かく報道するのに、それに対する日米韓などの対応は、散発的に事実だけは報道するのですが、まとめて統合的に報道しないので、多くの人は実体が見えなくなるようです。そのため、本日は日米韓の北への主に軍事的対応に関することを掲載しようと思います。

このようなことを知れば、なぜ北朝鮮が特に最近矢継ぎ早にミサイルを発射するのか、西側諸国では確率された技術でありながら、北朝鮮としては目先の新しさを追求するのかご理解いただけるものと思います。

金正恩が最も神経を尖らせているのは、米韓によるNATO型の核の共有です。これについては、生前安倍元総理もこれを提唱していました。

韓国の核保有を求める韓国世論の高まりの中で、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、今月末の米国国賓訪問時にこの問題をバイデン大統領と協議しようとしています。もしも米国との間で合意に至れば、北朝鮮の韓国への核脅迫は通用しなくなります。

金与正は4月1日の談話で「ゼレンスキーが米国の核兵器搬入だの、独自核開発などと言い立てるのは、自国と国民の運命をもって賭博してでも、なんとかして自分らの余命を維持してみようとする極めて危険な政治的野望の表れである」などと非難しました。

さらに、「米国を神頼みにして主人の虚弱な約束を盲信する手先らは、核時限爆弾を背中に負う自滅的な核妄想から一日も早く覚める方が自分らの命を守る最上の選択になることをはっきり悟らなければならない」とゼレンスキー政権を激しく攻撃しました。


この談話での、ゼレンスキーを、尹錫悦と言い換えれば、そのまま韓国へのメッセージとなりまい。これは「米英中ロ仏だけが核兵器を保有できるのか」として、核保有の正当性を主張してきた北朝鮮のこれまでの立場とは完全に矛盾します。

こうした矛盾に満ちた混乱した主張は、現在米韓の間で検討が進められている「核共有」に対する脅威からきたものでしょう。ちなみに、米韓核共有の話がすすめば、日本も安倍元総理が提唱していた「核共有」の議論が進むことも予想されます。それも恐怖なのでしょう。

米韓で検討されている金正恩が恐れるもう一つの軍事対応は「ダークイーグル(Dark Eagle)ミサイル」(LRHW)の実戦配備でしょう。

このミサイルの発射が初公開されたのは一昨年でした。2021年10月77日、ワシントン州タコマ市郊外にある米陸軍のルイス=マコード統合基地に、開発中の新型中距離ミサイル「LRHW」の試作型発射機が送られ初公開されました。

「ダークイーグル」は、陸海空共通の極超音速滑空体(C-HGB)を弾頭に使う極超音速滑空ミサイルで、マッハ17、射程2775km以上の最新式の新型中距離ミサイルです。

ダークイーグルの発射想像図

今年3月29日の米軍報道資料によると、この「ダークイーグル」が、米軍の「第3野戦歩兵連隊第5大隊第1多領域任務部隊(MDTF)長距離射撃隊)」に実戦配置されたとされています。

この多領域任務部隊(MDTF)は、ダークイーグルと短距離射程(32-1000km)のハイマース(HIMARS Prsm)そして中距離射程(460ー1600km)のMRCと組み合わせて構成されているといいます。

「ダークイーグル」は、インド太平洋地域に3個部隊が配備されるとされていますが、今のところどの地域に配置するかは明らかにされていません。米国本土だけの配置では迅速対応ができないのは明らかなので、インド太平洋地域のどこかに前進配備するのは間違いないです。

この「ダークイーグルミサイル」の韓国配備を金正恩は恐れているのでしょう。4月10日の党中央軍事委員会で、金正恩が韓国の地図を映し出し指さしている場面がありましたが、「ダークイーグル」対策を語ったかもしれないです。このミサイルが韓国の平沢(ピョンテク)市にある米軍基地(キャンプ・ハンフリーズ)に配備されれば、平壌へは1分、北京は3分で精密打撃できます。

そうなれば、今北朝鮮が見せびらかしている各種短距離ミサイルの原点遮断が可能となります。それは北朝鮮の各種短距離ミサイルで無力化状態に陥っていた韓国の「キルチェーン(策源地先制攻撃)」復活を意味します。金正恩が不眠症に陥るのは当然です。

金正恩は現在、韓国支配を実現するために「敵がいかなる手段と方式によっても対応が不可能な多様な軍事的行動方案をつくる」として「国防計画5カ年計画」の完成を急いでいますが、しかしそれが完成された頃には、米国によって、「ダークイーグル」をも上回る、とてつもない新兵器が開発されているかもしれないです。

現状の北朝鮮の通常兵器は、米国の数十年前の水準にすぎません。現在ウクライナ戦争においては、ロシア空軍が思ったよりも活躍していませんが、それはロシアの防空システムが米国と比較すれば、30年近くも遅れているからだとされています。

北朝鮮の防空システムは、ロシアよりも遅れており、冷戦期のものから進歩していないとされています。そうなると、北はミサイルや航空機の侵入を防ぐことはできません。

旧ソ連時代終わりに製造されたMiG-29など、北朝鮮では近代的な戦闘機も所有している空軍ですが、その軍事力の主翼は「性能の劣った」戦闘機や複葉機です。

米韓の航空機の侵入やミサイルを防ぐことはできません。爆弾やミサイルが金正恩の頭上に落ちてきても、それを防ぐ手立てはないのです。

海軍はどうかといえば、米国防総省によると水上艦艇は「数は多いが老朽化している小さな巡視艇」で構成されているといいます。これでは、米軍はおろか韓国軍にも太刀打ちできないでしょう。

ただし、高性能から程遠く老朽化も進む反面、北朝鮮の潜水艦の数だけは小さなものまで含めると世界最大規模といわれています。2010年には北朝鮮の小さな潜水艦が韓国船を沈め、46人の船員が亡くなっています。

ただし、ASW(対潜水艦戦)能力とくに、対潜哨戒能力はかなり劣っているので、実際の戦争になった場合、戦力になるとは考えられません。

北朝鮮は最近SLBMも発射するようになりました。旧式でありますが、北朝鮮には1隻だけ「ゴレ級」という潜水艦があり、これは1発だけ弾道ミサイルを搭載できます。このほかに新浦の造船所で潜水艦をつくっていて、これは3発くらいSLBM(潜水艦搭載型大陸間弾道弾)積めると言われています。

しかし、この両方を海に出しても4発しかありません。しかも通常動力型なのでそんなに長くは潜れないですし、遠くにも行けません。さらに、現状では日米の対潜哨戒機や潜水艦が北の潜水艦を監視しており、実際に戦争になり北の潜水艦が出撃すれば、日米に追尾され、核ミサイル発射の様子をみせれば、撃沈ということになります。

国防5カ年計画では、原子力潜水艦をつくろうとしていますが、できたとしても、北朝鮮軍のASW(対潜水艦戦争)能力が、日米に著しく劣るので、これもいざ実戦となれば、すぐに撃沈されてしまいます。

頼みの綱の陸軍ですが、これは旧式ではありながら、韓国のソウルは国境から近いので、かなりの砲弾やミサイルを打ち込めるのは事実です。

だだ、弾丸・ミサイルの備蓄はある程度はあるようなのですが、国内で餓死者が出る始末で、肝心要の食料が十分ではなく、長期にわたって戦闘を継続できるような状態ではありません。

通常兵力では劣る北朝鮮ですが、核の優位を保ち続けることで独立を維持し、金王朝を維持してきたのですが、先にあげたように、米韓に「核共有」され、「ダークイーグル」を配備されてしまうと、その優位性は完璧に崩れることになります。

これでは、金正恩が不眠症に陥るのは当然といえば当然です。核の優位性のない北には、安全保障的には何の優位性もありません、いつ斬首部隊が空から降りてきて、殺されるかわかりません。地下に潜っても、いつバンカー・バスターに攻撃されるかわかりません。

金正恩の立場に立ってみれば、ある日、数十機もの艦載機や、爆撃機が自分襲ってくるかわかりませんし、韓国から米韓合同軍が大挙して押し寄せてくるかもしれません。

最近金正恩は、自分の娘や妻などを伴い、ミサイルの発射を見学したり、公の場に姿を表すようになりました。これは、さまざまな憶測を生んでいますが、このようなこと、特にミサイルの発射の見学などは、プーチンですら娘や妻を同伴させるようなことはしていません。

普通なら誰でも、ミサイル発射など危険を伴うことが考えられますから、家族など同伴しないでしょう。予めスケジューリングされている場に、姿を表すことは、米韓から攻撃されたり、テロリスト等に狙われる可能性もあります。

プーチンの家族は、噂では中央アジアの安全な地下シェルター(宮殿ともいわれている)にいるともいわれています。家族の安全を願うなら、誰でも自分ができる範囲でこのようにすると思います。私としては、不眠症になるくらい不安な金正恩は、娘や妻を同伴して行動することによって、自らの安全を確保しているのではないかと疑っています。

ミサイル発射施設を娘を同伴して視察する金正恩

子どもや、妻を同伴し人間の盾にすれば、米韓軍もさすがにその目の前で、斬首作戦を実行したり、爆弾やミサイルで攻撃したりはしないだろとう見ているのかもしれません。だとすれば、金正恩の精神状態はかなり不安定化しているといえるかもしれません。

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2023年4月15日土曜日

警護計画を事前に警察庁が確認 首相演説会場で筒投げ爆発―【私の論評】左翼リベラル系メデイアや言論人は最低限、暗殺、大量殺人、自殺を政治利用するな(゚д゚)!

警護計画を事前に警察庁が確認 首相演説会場で筒投げ爆発

取り押さえられてもなおカメラ目線であるのが不思議で不気味な犯人

 衆院和歌山1区補欠選挙の応援で、和歌山市の雑賀崎漁港を訪れた岸田文雄首相の近くに爆発物のようなものが投げ込まれた事件で、警護計画を事前に警察庁が確認していたことが15日、和歌山県警への取材で分かった。

 昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を受け、警察庁は警護要則を全面的に改正。都道府県警が行う全ての警護計画を警察庁が事前審査し、必要があれば計画を修正する仕組みに改められた。

 県警によると、威力業務妨害容疑で逮捕された職業不詳、木村隆二容疑者(24)=兵庫県川西市=は調べに対して「弁護士が来てからお話しします」と供述。事件について黙秘しており、県警が動機や経緯を調べている。

 事件は15日午前11時25分ごろ発生。岸田首相が雑賀崎漁港でエビなどの地元海産物の試食を終え、聴衆の前に移動して演説を始めようとしたところ、銀色の筒状のものが投げ込まれ、爆発した。

 首相にけがはなかったが、現場にいた県警の男性警察官1人が軽傷を負った。木村容疑者はその場で取り押さえられた。首相は演説会場を車で離れ避難し、和歌山市内の県警本部へ移動。同日午後にJR和歌山駅前で街頭演説を再開した。

【私の論評】左翼リベラル系メデイアや言論人は最低限、暗殺、大量殺人、自殺を政治利用するな(゚д゚)!

まずは、岸田首相がご無事で良かったです。

安倍元総理、暗殺事件では、メディアや活動家がテロリストを擁護し、神格化し、その利益に資する主張を繰り返し、犠牲者をあたかも犯罪者のように罵り、一部野党とメディアが執拗に政府を悪魔化し続けていました。これでは、このようなテロリズムがいつ発生しても不思議ではありませんでした。

今回の事件は、まだ動機などの解明がされていないため、詳細はわかりませんが、模倣犯である可能性はかなり高いです。

模倣というと、「ウェルテル効果」と呼ばれている現象があります。社会学者のデヴィッド・フィリップスが1970年代に実証しました。

名称は1774年にゲーテが著した小説『若きウェルテルの悩み』に由来します。主人公の自殺という結末に誘発された当時の若者が、同様の方法で自殺を試みた例が多発したからでした。

日本での先駆けは1903年(明治36年)のエリート学生、藤村操の華厳滝への投身自殺に伴う自殺の連鎖です。「人生は不可解である」という謎めいた言葉を残した遺書「巌頭之感」などが大々的に報じられました。


藤村操と木に彫られた遺書『巌頭之感』

これは「模倣自殺(copycat suicide)」とも言われ、ソーシャルメディアが普及し有名人をより身近な存在として感じる現在では、急速に広範囲に作用することが懸念されています。

2021年12月17日に、大阪市北区の雑居ビルで25人が死亡した放火殺人事件が起きたことは覚えておられる方も多いでしょう。雑居ビルに入っていた心療内科クリニックに60代の男性が放火し、職員や患者らが犠牲になった事件です。大阪府警は、計画的な犯行との見方を強めていました。

恐るべきことにここでもウェルテル効果と似た「模倣」の疑いが影を落としています。36人の犠牲者を出した京都アニメーションの放火殺人事件に関する新聞記事などが男性の住居から見つかったからです。男性の死亡により動機の解明は困難になったものの、新聞記事は単に放火の手段の参考として使われただけではないことも考えられます。


米国頻発している銃乱射事件について、社会科学雑誌「ニュー・アトランティス」の編集者アリ・N・シュルマンは、大量殺人が模倣行為であり、犯人は模倣者であるとの見解がここ数年で確立したと述べました。

「アリゾナ州立大学の数学者シェリー・タワーズ氏の研究によると、銃乱射事件が発生する確率は、直前に別の銃乱射事件が起きた場合に大幅に高まることが判明。発生確率が高まる期間は平均で13日間であることも分かった」という。

また、「特定の銃撃犯がそれ以前の銃撃犯を称賛したり、そこから学習したりした具体的証拠」もあるとしました(銃乱射事件、連鎖のわけ 世間の注目が引き金に/2017年11月24日/WSJ)。要するに強く影響されることは、あり得るのです。

人類学者のエリオット・レイトンは、犯人は大量殺人が世間に大きな衝撃をもたらすことに意識的だと指摘しています。

「凶暴な文化的英雄というアイデンティティの抜け道は、殺人者に称賛や愛情はほとんどもたらさないだろうが、大衆の敬意とマスコミの注目は確実に約束されている。それによって称賛や愛情の欠如は十分に償われるだろう。この特殊な意味において、殺人の価値と行動は、主流文化と完全な調和を保っているのである」(「大量殺人者の誕生」中野真紀子訳、人文書院)。

レイトンは、同書で以下のようにも語っています。

「むしろ彼らは、殺人という社会的発言が一種の不滅性をもたらすのを承知した上で、一息に続く爆発的行動によって復讐を果たし、死にたいと願っているのである」。

殺人者は、社会に永久に消えない傷を残すことによって、自らの存在の報われなさを癒やすのです。しかし、社会とは概念上のものではありながらも、厳然と存在し、実体は強靭でしなやかであり、変幻自在に変わっていくものです。

そもそも、人間は社会的な生き物であり、どのような社会にも、それが緩いか、きついかは別にして、規範や序列があります。それがなくなれば、社会は崩壊します。それが嫌なら、無人島で一人で生活するしかありませんが、無人島であっても、複数の人間が生活することになれば、そこには自然と規範や序列ができあがり、小さいなが社会が構築されるのです。

そうして社会そのものを個人が破壊するのは至難の業です。よって、暗殺者や大量殺人者が、社会を傷つけようと企てても、実際に傷付けられるのは社会そのものではなく、たまたま居合わせた人や通りすがりの人ということになります。あるいは、安倍元首相など社会を代表するとみられる人ということになります。

アリ・N・シュルマンは、2017年、ジャーナリズム研究機関のポインター・インスティテュートが承認した伝播効果を避けることを目的とするベストプラクティス(最良慣行)指針を紹介しています。

「犯人の名前は必要な場合に限って伝える、イメージが美化される可能性を避ける、『史上最悪の』などの最上級表現を控える」といった内容です。

ニュージーランドでは、現地時間2019年3月15日13時40分にクライストチャーチにある2つのモスクで銃撃事件が発生しました。

当時のニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、銃撃犯の名前を一切口にしないと誓ったのですが、これはレイトンのいう「不滅性」を少しでも骨抜きにしようとする試みの一つといえます。

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン元首相

アーダーン首相は議会で、「男はこのテロ行為を通じて色々なことを手に入れようとした。そのひとつが、悪名だ。だからこそ、私は今後一切、この男の名前を口にしない」「皆さんは、大勢の命を奪った男の名前ではなく、命を失った大勢の人たちの名前を語ってください」と演説しました(ニュージーランド首相、銃撃犯の名前は今後一切口にしないと誓う/2019年3月19日/BBC)。

この言葉の後段の言葉は非常に重いです。

わたしたちは、メディア通じて多くの悲劇を目の当たりにし、またそこから模倣という恐るべき学びを得る事態もあり得るからです。

まさに、安倍元首相の暗殺犯に関して、憎むべきテロを讃えた左翼メディアや言論人たちは、これを助長したのです。それどころか、暗殺犯をモデルとした映画まで上映される始末です。

大量殺人と同じく、安倍元首相暗殺犯や今回の犯人も、社会の不滅性、メディアの不滅性を疑うどころか強く信じているのでしょう。それらを意義あるものと感じているからこそ、破壊に値するとの発想を呼び込んでしまうのでしょう。

しかし、彼らは勘違いしています。結局のところ社会とは概念であり、直接コミュニケーションできる具体的な対象ではないからです。しかし、概念であっても社会は厳然と存在しており、その社会はもともと永遠不滅なものではなく、時を経て変幻自在に姿を変えていきます。小さな社会は、他の社会と統合したり、大きな社会は分裂したりします。

米国においては、トランプ氏が社会を分断したなどと批判されていますが、そもそも社会は異なる価値観、規範、序列によって規定されるコミュニティーにより構成されており、米国社会も他の国々の社会も、もともと分断されているともいえます。それが、社会問題化するまでに分断されるか、されないかが問題であって、社会とはもともとそういうものです。

暗殺者や大量殺人犯等が思っている以上に、多くの社会は強靭であり、しなやかです。実際、日本社会は、第二次世界大戦の惨禍を経ても、立ち直り経済発展をやり遂げました。かなり大きな自然災害にあっても多くの人は、一時は悲しみに打ちひしがれていても、また立ち上がり悲しみを乗り越え、生活をしていきます。

私は、福島県の相馬町で、震災で子ども孫や親など多くの人がなくなってしまった人が、周りの人たちに支えられて相馬野馬追に参加する姿や様をテレビで視聴しましたが、感動を覚えるとともに、社会の強靭さや靭やかさについて改めて知ることができました。

こうした強靭でしなやかな社会を暴力によって自らが変えられるという妄想でしか、自らの心を奮い立たせることができなくなったことこそ、彼らの地獄です。

このような妄想を助長するメディアも、最近ではかなり弱体化してきしまた。

今後メディアは、暗殺や大量殺人があったときには、あるいは著名人の自殺などがあったときには、犠牲者や遺族とともに苦しみ、哀悼の意を表すプロセスの中に、他者との死別や、自身の死について、事件に巻き込まれた人と同じような感覚を呼び起こすような報道をすべきです。

また、人によっては今回のような極端な行為には至らないまでも、自他を傷付ける言動を取っていた可能性を思い返し、その危うい巡り合わせを他人事として片付けられず深く省みさせるような報道、世界の不条理についてどのような姿勢向き合うのか考えざるを得なくするような報道をすべきです。

そうでないと、今のままではメデイアは大量殺人や暗殺、自殺を助長する存在になってしまいかねません。私は、メディアは昔からその傾向があったと思うのですが、最近その傾向に拍車がかかってきたように思われてなりません。

それは、いつの頃なのかといえば、「保育園落ちた日本死ね!!!」の発言あたりからだと私は思うのです。

この発言は、2016年2月15日にはてな匿名ダイアリーに投稿された、待機児童問題を強烈に批判する内容の記事でした。それをそのまま以下に掲載します。

何なんだよ日本。

一億総活躍社会じゃねーのかよ。

昨日見事に保育園落ちたわ。

どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。

子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ?何が少子化だよクソ。
— 匿名(Twitterアカウント名:保育園落ちた人)、保育園落ちた日本死ね!!!

このように投稿したくなる気持ちはわからないでもないです。それにしても、匿名の「保育園落ちた日本死ね!!!」は酷いと思います。

これだけなら、さほど問題にはならなかったと思うのですが、民進党の山尾志桜里衆議院議員(当時)は、2016年2月29日にこの記事を国会で取り上げ、安倍晋三首相(当時)は、匿名であり「本当か確かめようがない」と答弁したとの報道があったあたりからおかしくなってきました。

この記事と安倍の国会答弁に触発される形で、国会周辺で待機児童問題への抗議運動が行われました。さらに、「保育園落ちた日本死ね」が2016年の新語・流行語大賞のトップテンに入ったのです。

選考委員会は「このフレーズが先導するようにして大きな社会問題を現出させた」と評価し、受賞者は、記事の投稿者が匿名のために、国会でこの言葉を初めて取り上げた山尾が選ばれたのです。

これに対して、左翼リベラル系の人々は称賛する人が多かったです。

一方、タレントで5人の子を持つつるの剛士氏は、「こんな汚い言葉に国会議員が満面の笑みで登壇、授与って。なんだか日本人としても親としても僕はとても悲しい気持ちになりました。きっともっと選ばれるべき言葉や、神ってる流行あったよね。。」などとTwitterに投稿。

この投稿には賛否の声が上がり、その後「『綺麗な言葉を使おうね』なんて一言も言ってないです」、「ただ、死ねが流行語?? と。そんな声に国会議員が満面の笑みで登壇に違和感を覚えたというイチ視聴者の感想ツイートでした。。すいませんでした」などと投稿しました。

石平氏は、Twitterに「普通の日本人の間では、『日本死ね』のような言葉が流行った気配はないし、流行るはずもないのであろう。むしろ、それをわざと流行らせたい人がいる」と批判ツイートを投稿しました。

2ちゃんねる元幹部の山本一郎氏は、朝日新聞系のネットメディアであるハフポストが特定の野党と協力して広めた運動と主張していました。

いずれにせよ「死ね」という言葉がどのような形であれ使われることになったことには非常に違和感と危機感を覚えました。それは当時のブログ記事にも書いています。

私としては、「日本死ね」あたりから、メデイアなどが変遷していったように思えます。その後、ネットなどでは「アベ死ね」などの言葉がみられるようになりましたし、「アベ政治を許さない」というポスターを見かけるようになり、さらには私自身も、ご高齢の御婦人がスーパーで「アベ政治を許さない」というストラップを財布につけているのを見かけました。

このあたりから、「アベや政権などに対しては何を言っても構わない」という風潮が一気に一部の人にではありますが、広まったように思います。最近のコニタン騒動もその傍系かもしれません。

それが安倍元総理の暗殺や今回の暗殺未遂に繋がったかは、わかりませんが、メディアや左翼リベラル系言論人は、その可能性は全く否定はできないことを認識し、大量殺人や暗殺や自殺に対する報道や言論の姿勢を変えるべきです。

少なくとも、暗殺、大量殺人、自殺などを政治利用するのだけはやめていただきたいです。

変える気がないというのなら、いずれ自ら消えていくしかなくなるでしょう。実際、高橋洋一氏は新聞の発行部数の減り具合から、昨年10年後新聞は消えるだとろうと予測しています。

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2023年4月14日金曜日

黒田日銀10年の正当な評価 雇用確保は歴代最高の実績、海外紙は評価するも残念な日本のマスコミ報道―【私の論評】黒田日銀をまともに評価できないマスコミは、すでにオワコンか(゚д゚)!

日本の解き方

職員から贈られた花束を手に退任する日銀の黒田東彦総裁=7日午後、日本銀行本店

 黒田東彦(はるひこ)氏は4月8日、日銀総裁を任期満了で退任した。歴代最長となった10年の在任期間だ。退任前の7日の記者会見では、大規模な金融緩和策は適切だったとし、デフレでない状況をつくり、効果を上げたと述べた。

 黒田氏は、金融緩和で名目金利を下げるとともにインフレ予想を高めることにより、実質金利(名目金利からインフレ予想を引いたもの)を下げることで、実体経済に影響を与えることを繰り返し説明していた。

 これに加えると、失業率がNAIRU(インフレを加速させない最低水準の失業率)まで下げるのがマクロ経済政策の目標である。

 さて、黒田日銀の10年間で、どこまでできたか。

 財務省出身で消費税増税賛成というスタンスの黒田氏は、自らの口から言わなかったが、2014年4月と19年10月の2度の消費増税がなければ、2%のインフレ目標はかなり早期に達成できただろう。記者会見ではそうした質問をすべきだった。

 14年4月の消費増税があっても、強力な金融緩和のおかげで19年にはその環境が整っていた。もっとも、この期待は19年10月の消費増税と20年からのコロナ禍で吹っ飛んでしまった。

 それでも、雇用の確保という金融政策の主目的からみると、歴代最高のパフォーマンスだ。金融政策は「dual mandate(2つの責務)」といい、物価の安定と雇用の確保を目的とする。

 NAIRUを達成したいがために、過度の金融緩和を戒めるのが、インフレ目標だ。これは『安倍晋三回顧録』にも書かれている。日本のマスコミにはこうした常識がない人が多すぎる。

 消費増税やコロナ禍でも雇用を確保できているのは、金融政策のたまものだ。先進国でコロナ禍でも日本は最も雇用を確保した国だ。

 黒田日銀による大規模金融緩和で失業率が下がったことについては、「これは民主党政権時代の流れだ」という無理解もある。

 15~64歳人口は一貫して減少している。民主党時代には、就業者数が減少し、それを上回るペースで労働力人口も減少したために、見かけ上、失業率が低下した。しかし、安倍政権では、就業者数が猛烈に増加し労働力人口を上回ったので失業率が低下した。それぞれの中身はまったく異なるものだ。

 黒田日銀の業績について、雇用に着目するマスコミを探したが、残念ながらあまりなかった。ただし、海外紙は黒田日銀を評価しているものばかりだ。

 雇用が確保されると、その後に賃金が上がり始め、インフレ率も上がる。マスコミの論調は、黒田氏が「インフレ目標を達成できずに残念だ」と言ったところだけを切り取り、雇用を400万人作ったということは無視している。

 そもそもインフレ目標を達成していないではないか、というのは、金融政策の2つの責務をしっかり理解していないために出てくる批判だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】黒田日銀をまともに評価できないマスコミは、すでにオワコンか(゚д゚)!

安倍元総理が、総理時代に日銀が金融緩和すべきことを語り、それに日銀黒田総裁が異次元の包括的緩和を実行し、その後はイールド・カーブコントロールをしたものの、それでも緩和を継続したことにより、日本の雇用は間違いなく、改善しました。それは、多くの人が実感しているところです。

これは大学・大学院、高校などの就職担当の先生と話をすれば、それは誰もが実感していますし、他ならぬ若者たちも、雇用面で恩恵を受けたことは実感しています。だからこそ、安倍政権の支持率は特若者では高かったといえます。

私は会社で、人事を担当していた時期があり、民主党政権の時代には採用がかなりやりやすかったのをしっかり覚えています。安倍政権になってから以降は、難しくなったことをしっかりと記憶しています。これは、多くの会社の人事担当車はそう感じているでしょう。

直接人事等に関わったことがなくて、このような記憶のない人もいるでしょう。それにしても、テレビなどで就職難も伝えられていたので、安倍政権になってから、雇用がかなり良くなったことは、普通に生活していれば、誰もが実感できたはずです。

それが、実感できない人は、よほど鈍感なのか、高齢者で社会の変化と自分の生活にほとんど関係のない人、あるいは安倍元総理に反感を持っているなどの特殊な事情がある人たちだけでしょう。

この特殊な事情のある人達、結構存在します。私自身、twitterに安倍政権時の失業率の低下や雇用の創出について、一目でわかるようなグラフをいくつか掲載し、その偉業を称えたところ、普段はそのような人はいないのですが、結構の人数の人が、これに対する反論をしてきたので驚いたことがあります。こういう反論には全く論拠が薄弱であり屁理屈に近いものなので、まともに話をしていても仕方ないと思い、徹底的にブロックしました。

安倍元総理や黒田総裁の業績を認めたくない人たちが多いようです。マスコミもそうなのでしょう。しかし、これは以下のグラフなどみれば、どう考えても彼らの業績を否定することはできません。


このグラフをみれば、いかに安倍政権が、そうして直接的には黒田総裁が、失業率を低下させ、就業者数を増したかが、一目瞭然です。

下の表は、安倍・菅政権における、失業率の変化です。他国がかなり失業率が増えているのに、日本はさほど増えていないことがわかります。


なぜこのようなことができたかとえば、安倍・菅政権で合わせて100兆円ものコロナ対策補正予算を組み、さまざまな経済対策を打ったことによります。

この100兆円の財源は、政府が大量の国債発行をし、日銀がそれを買い取ることにより賄われました。日本では、日本独自の雇用調整助成金制度も活用したため、 このようなことが可能になったのです。

それにしても、日銀が金融緩和を継続しつつ、大量の国債を政府が買い取らなければ、このような偉業は達成できなかったはすです。

さらに、下のグラフをご覧になれば、いかに黒田日銀が雇用に貢献したかが理解できます。


このグラフをみれば、上の記事にもあるように、15~64歳人口は一貫して減少しています。民主党時代には、就業者数が減少し、それを上回るペースで労働力人口も減少したために、見かけ失業率が低下しました。しかし、安倍政権では、就業者数が猛烈に増加し労働力人口を上回ったので失業率が低下したのです。同じ低下であっても、中身はまったく異なるものなのです。

下のグラフをごらんいただければ、どのようなとにどのような財政や金融政策をすれば良いのかすぐに理解できます。


上の記事で、金融政策の2つの責務とは何を意味するかといえば、インフレ目標は、最低の失業率を目指すときに、金融緩和しすぎてインフレ率が高くならないように、ギリギリ許容できる最低のインフレ率です。

アベノミクスで完全雇用を達成したとき、インフレ率が2%になっていないなら、それを悪いことと考える必要ありません。むしろそれは良いことです。まだ、緩和の余地があるということです。

インフレ目標とはそのようにみるべきものであり、達成していなけば、失敗ということではありません。重要なのは雇用です。

インフレ目標の意味もわからず経済記事を書くのが、日本の経済記者です。情けないです。

上の記事にもあるように、黒田総裁は海外メデイアでは評価されています。

黒田総裁の決断が海外メディアで好意的に取り上げられた例として、2021年3月、一部の国内政治家から金融緩和の縮小を求める声が高まる中、日本銀行が超低金利政策を維持することを決定したことがあげられます。

黒田総裁の決断は、COVID-19パンデミックからの日本経済の回復を支援することへのコミットメントと、インフレへの懸念よりも経済成長を優先する意思の表れだと見なされました。

多くの海外メディアは黒田総裁の決断を賞賛し、フィナンシャル・タイムズは「日本経済の継続的な復活を確実にする賢い行動」と評し、ブルームバーグは黒田総裁を政治的圧力に直面した「堅実な手」と称賛しました。

安倍元総理や、黒田元日銀総裁の業績をまともに、認識できないメデイアはもうオワコンと言って良いでしょう。あと10年も持たないと思います。昨年高橋洋一氏が、大手新聞の発行部数の減少傾向を示し、このままだと10年で消滅と語っていました。おカネを払って、質の悪い経済情報などを受ける意味などありません。

日銀総裁を退任した黒田東彦氏は、政策研究大学院大学(GRIPS)の政策研究院(訂正)シニアフェローに11日付で就任しました。同大学大学運営局長の岡本任弘氏が12日明らかにしました。秋からは学生向けの講義も予定しているそうです。黒田氏の講義や公演なら、聴く機会があれば、聴いてみたいです。

一方、元日銀総裁の白川方明氏は、青山学院大学国際政治経済学部特任教授に就任したそうですが、一体何を教えているのでしょうが、教えられる学生も気の毒だと思います。



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2023年4月13日木曜日

統一地方選前半で〝維新が躍進〟 国政への影響力も強まる勢い 大阪の「クアッド」勝利で政権の枠組み変わる可能性も―【私の論評】今回の維新の躍進は、将来自民のレクイエムになるか(゚д゚)!

日本の解き方


 統一地方選の前半の投開票が9日に行われた。

 全国で唯一、与野党の全面対決となった北海道知事選挙では、与党などが推薦した現職の鈴木直道氏が当選した。大阪は、府知事選挙で現職の吉村洋文氏、大阪市長選挙で新人の横山英幸氏が当選し、前回に引き続き、大阪維新の会がダブル選挙を制した。

 保守分裂となった奈良県知事選挙は、日本維新の会の新人、山下真氏が当選し、大阪府以外で初めて維新公認の知事が誕生した。

 大阪府議会・市議会で維新が過半数の議席を獲得した。維新は府知事選、大阪市長選、府議会選、大阪市議会選の「クアッド(4つの)勝利」だ。維新は、今回、投票が行われた41道府県議会議員選挙でも選挙前の議席を大幅増加させる躍進となった。ただし、奈良県知事選は、自民の内部分裂による漁夫の利だった。

 維新の馬場伸幸代表は記者会見で「大阪府と大阪市の首長と、議会の過半数を預かることになれば『大阪都構想』に代わる次の大きなテーマを考えていく必要がある」と述べた。

 その上で、公明党の衆院の現職議員がいる大阪と兵庫の合わせて6つの小選挙区にこれまで候補者の擁立を見送ってきたことについて「公明党との関係は一度リセットさせていただく」とし、次の衆院選では擁立する可能性に言及した。これは、国政レベルでの自民・公明の連立にも影響があるかもしれない。

 大阪知事再選の吉村洋文氏は、大阪へのIR(統合型リゾート)誘致は民意を得たとした。過去に2度、住民投票で否決された大阪都構想については、現時点での予定はないが今後の任期4年間で何が起きるかわからないとした。はたして「三度目の正直」なのか、「二度あることは三度ある」のか。

 自民党は奈良県知事選でヘマをやってしまった。ただし、道府県議選では、議席を減らしたがまずまずの戦いをした。

 立憲民主党は、道府県議選で微増だった。大串博志選対委員長は、小西洋之参院議員の「サル発言」について、直接の影響を大きく受けている感じはなかったとしている。

 公明党と国民民主党は、道府県議選でほぼ同数だったが、共産党は党員除名騒動の影響もあってか、減少した。

 これからの国政選挙補選、後半戦の統一地方選で、維新の勢いがどうなるのだろうか。前半戦を見る限り、維新は地方選で着実に力をつけており、国政選挙では地方での底力が基盤になるので、国政への影響も出てくるだろう。

 大阪では、自民と共産が組んでも維新の勢いが止められなかった。

 大阪の「クアッド」勝利で公明の牙城が揺らぎ、自公連立に影響があると、政権の枠組み変更にもなりかねない。

【私の論評】今回の維新の躍進は、将来自民のレクイエムになるか(゚д゚)!

維新は、大阪府議会では過半数を占めていましたが、市議会では達していませんでした。それが、今回の選挙で、市議会で46議席を獲得。初めて過半数になりました。


一方自民党は府議団と市議団の幹事長が落選するなど、惨敗。両議会で大幅に議席を減らすことになりました。 

維新のこの躍進に危機感を覚えているのは、自民党ではなく公明党でしょう。大阪府の衆院選挙区は、19区あります。2021年の選挙では維新が15議席、公明党が4議席を獲得しました。

公明党が獲得した選挙区には、維新は候補を立てなかったのです。それは、市議会で公明党の協力が必要だったからです。しかし今回、市議選で維新が過半数を取りました。公明党に頼らなくても市議会運営ができるようになったのです。

たとえば維新が3回めになる『大阪都構想』を示して、公明党に『全面協力をするなら候補者を立てませんよ』ということだってありうるかもしれません。 どうやら、切り札は維新の手中にあるようです。

維新の馬場代表は、先の参院選をホップ、今回の統一地方選挙をステップ、来たるべき衆院選をジャンプと表現しています。果たして悲願の全国政党になることは可能でしょうか。 

今回兵庫県では、神戸市内の全選挙区で議席を獲得。京都府でも選挙前を3議席上回りましたが、強いのはやはり関西圏です。

北海道、群馬、栃木、香川、埼玉、福岡、熊本などの議会選挙で初議席を獲得したものの、神奈川で取りこぼすなど、関西圏以外では弱さも見受けられます。しかし、各党とも無視できない存在になっていることだけは間違いないです。

10年近く続いた保守的な安倍晋三・菅義偉政権が終わり、比較的リベラルと言われる岸田文雄政権で、もし「保守派の離反」が進むなら、自民党にとって怖いのは、立憲民主党などのリベラル野党でなく、維新などの保守野党です。岸田首相は少し心配した方が良いでしょう。

月曜(10日)朝、統一地方選の結果が新聞報道されるなか、気になるニユースがありました。朝日新聞の世論調査で、岸田政権の少子化対策や防衛増税に国民が冷淡だったのです。

調査によると、少子化対策の取り組みへの評価は拮抗していますが、「少子化が改善するか」との問いには、「期待できない」の61%が、「できる」の33%に対し倍もありました。

さらに負担が今より「増えるのはよくない」は60%で、「よい」は36%。こちらも、ほぼダブルスコアなのだ。国民は政権の少子化対策を「評価しているふりはしているが、効果に期待せず、従って負担増もイヤ」だと考えているのではないでしょうか。





防衛増税に関しては、68%が反対でした。こちらも、最近の日本の安全保障環境が変化したので、防衛費増自体には賛成もしくはある程度は賛成だか、負担増はイヤだということを示していると考えられます。防衛費増自体についてのアンケート結果を出さないのは、朝日新聞の防衛費増自体に反対したいという、願望の現れで、さすが「朝日クオリティー」といわざるをえません。

ネットで「少子化対策で年10万円の負担増」というニュースが流れてきたので、他のソースで調べてみたところ、立憲民主党の山井和則衆院議員が国会の質問で、「8兆円とも言われる少子化対策の予算を(全額)保険料で賄うとすれば、1年間で10万円の負担」と指摘していました。

8兆円全額を保険料で賄うということは現実にはあり得ず、政府側は「負担増ばかりを前面に出した印象操作」と言いたいでしょう。しかし、そもそも政府が国民負担の議論から逃げて財源をあいまいにしているのですから、こういう質問が出てくるのが当然です。

3月31日に出された少子化対策のたたき台では、児童手当や給食費など所得制限をつけずに気前よく配るとしていますが、それで子供が増えるのかどうかはなはだ疑問です。「社会で子供を育てる」と言えば聞こえは良いですが、効果がよく分からない政策のために、自分の負担が増えることに国民は納得しないでしょう。

それに、以前このブログでも示したように、少子化対策の財源を保険料にするというのは、実質増税と同じであり、財務省は「保険領の増額で賄うのはおかしい」という世論を盛り上げ、結局諸費税増税に持っていく思惑があるとみられます。財務省は、防衛増税も同時に成し遂げたいとの思惑があるとみられます。

防衛費は、現行と比べ4兆円増えるので、岸田首相は27年度以降の防衛費は、1兆円強を増税で賄う方針を示しています。無論、これは財務省の意向を反映したものでしょう。

国民としては、少子化対策、防衛費の両方とも消費税増税などで賄えば、負担がかなり増えることを危惧しているのでしょう。これは、当然のことだと思います。

岸田首相は早めに少子化対策や防衛費倍増の、財源をはっきり示すべきです。無論、両方とも増税ではなく、政府が国債を発行して、日銀がそれを買い取るという方式で実施すべきです。

これは、安倍・菅両政権のコロナ対策で行われた方式であり、安倍元首相の言葉を借りれば、「政府日銀連合軍」による資金の調達です。調達総額は両政権合計で100兆円にのぼります。このような対策を行ったので、日本経済はコロナ禍を経ても現在他国のように酷くは落ち込んではいません。

それどころか、コロナ禍期間中であっても、日本では他国のように大きく失業率が上がることもありませんでした。菅政権は、病床確保には医療村の強烈な反対にあって失敗しましたが、それでも脅威のワクチン接種のスピードで、結局医療崩壊を起こすこともなく、コロナ禍を収束させることに成功しました。

これで、国債の大量発行が、将来世代へのつけにならないこともはっきりしました。もし、この100兆円の調達で何かの不具合がでてくれば、財務省は得たりとばかりに、さまざまな不都合をあげつらい今頃コロナ復興税をすすめているはずです。そうならないのは、現状でも将来的にもそのような危機は訪れることはないからです。

このあたり、財務省は見かけは優秀であるようにみえて、実は 抜けています。財務省の省益に立脚すれば、財務省は過去にそうだったように、まず先にさまざまな屁理屈をつけてコロナ復興税を実施するべきです。そうでないと、結局多くの国民が、100兆円の国債を発行しても何も問題がないことに気づいてしまいます。

もう、多くの国民は気づきつつあるようです。だから朝日新聞のアンケート調査でさえも、負担が増えることに対して圧倒的に反対する人が多いのでしょう。ただ、財務省としては、多くの人を巻き込むことができる、もっともらしい屁理屈が思いつかないくらいに、現状の日本経済はあまり問題がないのでしょう。

現状で増税するのは、少子化対策や防衛費増は、将来世代にも利益をもたらすにもかかわらず、現世代に大きな負担を負わせることになります。そうして、日本ではなぜが減税はほとんど行われないので、現代世代が大きな負担を負うだけではなく、将来世代も負うことになるのです。そのことに、国民は反発しているのです。

しかし、財務省は岸田政権を潰してでも、何が何でも消費税増税をやり遂げようとしているのです。岸田首相はそのことにはやく気づくべきです。そうして、少子化対策や防衛費増には、安倍・菅政権が行ったように、増税なしで、政府日銀連合軍で調達することを政治決断すべきです。

そうでないと、国民の反発はつのり、維新の会が国政においても、躍進するのを許すことになります。連立政権という手もありますが、岸田政権が増税を決めれば、自民党の勢力は衰え、維新の会を参考にして、多くの保守政党ができあがり、自民党はその中に埋没するかもしれません。まだ、統一地方選後半戦や、次の国政選挙の結果をみてみないとわかりませんかが、自民党の保守岩盤増がそれでも良いと思うようになれば、自民党の終わりが始まります。

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2023年4月12日水曜日

マクロン大統領の〝台湾発言〟や米軍の機密情報の流出…自由主義陣営に乱れ 島田洋一氏「日本は『経済』でリーダーシップを」―【私の論評】日本が破竹の経済発展を遂げ、G7諸国の経済を牽引することが安保につながる(゚д゚)!

マクロン大統領の〝台湾発言〟や米軍の機密情報の流出…自由主義陣営に乱れ 島田洋一氏「日本は『経済』でリーダーシップを」

マクロン大統領(左)と習国家主席の接近には批判が渦巻く

 欧米を中心にする自由主義陣営の「結束」に乱れが生じている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が中国訪問時(5~7日)に、台湾情勢について、「われわれ(欧州)のものではない危機」と発言したことに対し、欧州の対中強硬派から批判が相次いでいる。米軍などの機密文書がSNS(交流サイト)に流出した問題では、国防総省が機密情報が文書に含まれていることを認めた。流出文書によって、米国が韓国高官の会話を傍受していた疑惑が持ち上がるなど、同盟国や友好国との関係にも影響が出つつある。覇権拡大を図る中国やロシアに対峙(たいじ)するため、団結が求められる自由主義陣営は大丈夫なのか。


 欧州で波紋を広げているマクロン氏のインタビューは、仏紙「レゼコー」(電子版)などが9日掲載した。

 マクロン氏はインタビューで、EU(欧州連合)は米中対立と距離を置き、「第三極」を目指すべきだと主張し、次のように語った。

 「台湾での(緊張の)高まりに、われわれの利害はあるか。答えはノンだ。最悪なのは、米国のペースや中国の過剰反応に追随せねばならないと考えること」「われわれのものではない危機にとらわれれば、罠に陥る」

 共産党一党独裁の中国を前に、「自由」「民主」「人権」「法の支配」という共通の価値観を持つ自由主義陣営の結束を危うくする発言である。

 ドイツでは早速、連立与党内から批判が飛び出した。

 社会民主党(SPD)で外交問題を担当する下院議員はドイツ紙で、「中国に対し、西側が分裂するのは誤り」と強調し、ロシアのウクライナ侵攻を教訓として、「強権国家におもねるべきではない」と自由主義陣営の連携を訴えた。

 欧州を含む各国の議員で作る「対中政策に関する列国議会連盟」(IPAC)は声明を出し、マクロン氏の発言を「台湾海峡の平和を維持するための国際社会の努力を損なった」と批判した。

 声明には、英国やフランス、ドイツのほか、スウェーデン、オランダなどの国会議員が名前を連ねている。

フランスのメディアも「失策」(フィガロ紙)と酷評した。

 米機密文書流出問題も深刻だ。

 米国防総省のクリス・メアー国防長官補佐官(広報担当)は10日、流布している文書には機密情報が記されたものが含まれていることを認めた。メアー氏は「深刻に受け止めている」「(文書の)一部が改変されているとみられる」として、情報戦に利用されている可能性を示唆した。

 ウクライナ政府は、流出文書の内容について「偽情報」とし、ロシア軍に対する作戦とは「無関係」と強調している。同国ではロシアに対する反攻が近く始まるとされる重要時期を迎えており、米CNNテレビは、ゼレンスキー氏に近い筋の話として、「流出のために、すでに軍の計画の一部を変更させた」とも報じた。

 バイデン政権は、中国やロシアへに対抗するため、同盟・友好国との連携強化を目指しているが、流出文書では、同盟国が米国の通信傍受対象となっていた疑惑も持ち上がった。

 ある文書には、米国の要請でウクライナに砲弾を供与することを懸念する韓国高官2人のやりとりが記載されていた。イスラエルの諜報機関「モサド」が、国内の反政府デモを後押ししているとの情報を記した文書もあったとされている。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の国賓訪米を今月下旬に控えている韓国では、政府が11日、「相当部分」が偽造されたとする公式見解を表明した。一方で、「事実なら深刻な主権侵害」(朝鮮日報社説)などと反発が広がっている。

 一連の事態をどうみるべきか。

 福井県立大学の島田洋一名誉教授は「中国やロシアの脅威に対処しなければならないタイミングで、西側諸国の間で足並みがそろわないのは憂慮すべき事態だ。フランスなど『中国との経済関係』を重視している国があるため、今回のように自由主義陣営が切り崩される恐れは今後もある。来月、広島で行われるG7(先進7カ国)首脳会議で、日本は議長国を務める。結束再確認のため、日本は自由主義陣営による経済圏構築など、経済分野でリーダーシップを発揮すべきではないか」と話した。

【私の論評】日本が破竹の経済発展を遂げ、G7諸国の経済を牽引することが安保につながる(゚д゚)!

上の記事で、島田洋一氏が、日本は自由主義陣営による経済健康そうなど、経済分野でリーダーシップを発揮すべきと主張していますが、その通りです。

中国は、マクロンの台湾関連の発言を最大限に利用し、G7の結束を弱め、さらには分断しようと虎視眈々と狙っているでしょう。

経済分野というと、中国経済は停滞し、中国がG7などに直接的に経済分野で対抗しようとしても、かなり無理があります。何しろ、中国はコロナ禍前から、国際金融のトリレンマに囚われ、結果として独立した金融政策ができない状態になっています。だからこそ、失業問題もなかなか解消できないでいます。

しかし、その中国も経済分野で、できることはやろうとしています。その一つとして、中国政府は、ハイテク製品に使われる高性能レアアース(希土類)磁石の製造に関する技術の輸出禁止に向けて検討作業を進めていることが明らかになりました。中国政府の輸出禁止・輸出制限技術リストで、レアアースの精錬や加工などの技術の輸出制限を盛り込む予定です。


レアアースといえば、2010年に沖縄・尖閣諸島をめぐり日中が対立すると、中国側が対日輸出を一時停止したことがあります。

これに対して、日本政府と企業は、中国以外での調達先確保、国内での再利用推進、省資源や代替原料の技術開発などの対策を行いました。その結果、中国からのレアアース輸入量は半減、輸入の中国依存度も8割から5割に低下しました。レアアース価格は暴落し中国では生産停止に追い込まれる企業も出ました。

さらに、安倍晋三・菅義偉政権の時、中国以外の海外で行っていた精錬加工を日本国内でできるような対策もしており、相当の準備もできています。岸田首相は、昨年10月にオーストラリアを訪問しましたが、その時に日豪両政府は22日、レアアース(希土類)といった重要鉱物のサプライチェーン(供給網)を構築するため、投資や研究開発の促進など連携を強化することを申し合わせた文書を交わしました。

米国は自国での鉱山開発にレアアース生産に占める中国依存度は9割から7割まで下がった。しかし、自国で生産したレアアースの多くを中国に輸出して、現地で精錬してから輸入しています。

日本はレアアースを使う高性能磁石の生産を得意としており、原材料のレアアースの確保は中国以外からの調達や再利用である程度のめどがたっています。米国は高性能磁石を搭載するハイテク製品が得意ですが、中国にレアアース精錬を依存している弱点があります。

今回の措置は、中国が米国に対抗するのが目的です。レアアースに対する準備をしてきた日本が米国等の弱みを補える可能性がある。

レアアースが注目されるのは、電気自動車(EV)などでは強力な磁力を有する駆動モーターが必要ですが、それにレアアースが欠かせないかです。日本では、すでにレアアースなしでハイブリッド(HV)車用の駆動モーターを開発しています。

中国がEVでの覇権争いのためにレアアース禁輸等を仕掛けるのであれば、世界のEV戦略を一部HVに変更するという手もあります。

日米でEV戦略を見直し、欧州連合(EU)が合成燃料「e―fuel(イーフューエル)」を使うエンジン車の販売を例外としたように、対中対策でレアアースなしのHVを認めることも検討すべきです。中国によるレアアース生産と精錬は著しい環境破壊を招いており、日本によるレアアースなしのハイブリッドは環境に貢献することになります。

もともとHVからEV主導になったのは、欧米の自動車会社の戦略でした。

それに中国も乗ったのですが、ここに来て日米欧州とも経済安全保障が重要になってきたので、その観点からEV戦略を見直すべきです。

昨日このブログでは、来月、広島で行われるG7(先進7カ国)首脳会議で、日本は議長国を務めることから、岸田首相は、安倍氏がインド太平洋戦略を構想し、米国にこれを採用させるとともに、インド太平洋地域の国々を巻き込んだときのような役割を担って、G7広島サミットでフランスが、インド太平洋戦略で貢献するように促していただきたいものです。それが、ドイツや他のEU諸国に対しても、これを巻き込むことにつながるとししました。

ただ、岸田首相がリップサービスだけで、これを行えば、フランスやドイツなどのG7の国々は、表面上はそれを受け入れたように見せても、中国との関係をなかなか断てない可能性があります。それに対して、上記で述べたような、中国のレアアースに頼らなくて、良い仕組みを提唱し、それを主導していけば、G7の国々も納得し、中国に対する牽制で一致協力できる可能性が高まります。

経済分野でいうと、日本は他のG7諸国と比較すれば、経済は堅調です。なぜかといえば、安倍・菅政権において、合わせて100兆円ものコロナ対策補正予算を組み、それで経済対策を行ったからです。

100兆円を調達するには、政府日銀連合軍(政府が発行した大量の国債を日銀が買い取る方式)使ったので増税の必要はありませんでした。増税なしを政治決断した安倍菅さんは素晴らしいです。

国内にはなぜか、アベノミクスを否定する論調も少なくないですが、アベノミクスはマクロ経済学の基本である財政政策と金融政策、ミクロ政策の基本である成長戦略を組み合わせたもので、ベン・バーナンキ氏やミルトン・フリードマン氏らノーベル賞を受賞した経済学者の理論にも沿ったものです。

ベン・バーナンキ氏

アベノミクスを否定する方々は、ノーベル賞級の経済学者の理論を否定しているのです。彼らが正しいのなら、それを論文にまとめて、世界水準の経済誌に発表すべきです。ただ、それをやれば「馬鹿」といわれておしまいで、掲載されることもないでしょう。

今後岸田政権は、増税することなく、金融緩和の継続と積極財政を実施し、日本経済を発展させ、世界経済の牽引役を担うべきです。現在は、米国をはじめとするG7の国々は利上げの影響で、今後急速に経済が伸びることはありません。

中国も、先に述べたように独立した金融政策すらできない状況なので、今後急速に発展することもありえません。

主要国における消費者物価指数の動き クリックすると拡大します

今その可能性を秘めているのは、長い間デフレだった日本だけです。日本では、物価高がいわれていますが、他国と比較すれば、さほどでないことがわかります。中国は物価が下がり気味ですが、これは金融緩和がしたくてもできないことの裏返しであり、良いことではありません。日本が他国と比較して、破格の経済発展をすれば、輸入も増え、G7の国々も中国に期待することはなくなります。

日本の経済発展により、日本国内はもとより、中国の意図を挫き世界が救われることになります。特に、日本の賃金は中長期的に上昇することになるでしょう。岸田首相はこの機会を逃すべきではありません。

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2023年4月11日火曜日

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 台湾巡る仏大統領の発言、中国に配慮し過ぎ 欧米議員批判

中国を訪問したマクロン仏大統領

 マクロン仏大統領は仏紙とのインタビューで、欧州は台湾を巡る対立を激化させることに関心がなく、米中両政府から独立した「第3の極」になるべきだと述べた。これを受けて、中国に配慮し過ぎた発言だとして欧米各国の議員から批判が出た。

 マクロン氏は先週訪中した際に仏紙レゼコーとポリティコとのインタビューに応じ「最悪の事態は、この(台湾を巡る)話題でわれわれ欧州が追随者となり、米国のリズムや中国の過剰反応に合わせなければならないと考えることだ」と述べた。

 ドイツ連邦議会外務委員会のレトゲン議員はツイッターに、マクロン氏は「中国訪問を習近平氏のPRクーデターと欧州の外交政策の惨状に変えることに成功した」と指摘。仏大統領は「欧州で一段と孤立している」と批判した。

 米上院のルビオ議員(共和党)もツイッター投稿動画で、もし欧州が「台湾を巡り米国と中国のどちら側にもつかないのであれば、われわれも(ウクライナに関して)どちらの味方もすべきでない」と指摘した。

【私の論評】岸田首相のG7広島サミットでの大きな役割の一つは、仏を日米豪のアジア太平洋戦略に巻き込むこと(゚д゚)!

昨年11月4日には、ドイツのショルツ首相が中国を訪れ、共産党のトップとして異例の3期目に入った習近平国家主席と会談しました。フランスのマクロン大統領と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長が今月5日、中国を訪問しました。


米国が中国に経済の「デカップリング(分断)」を仕掛けているのとは対照的に、欧州は首脳が相次ぎ「中国詣で」をし、「デリスキング(リスク低減)」の姿勢で臨んでいるようです。その背後には、EUは中国からレアアースを98%輸入しているという事情が絡んでいるようです。

米国としては欧州とともに中国の体制に対抗していこうという思いがあるのですが、米国識者のなかには、もともと「ヨーロッパは無責任だ」という態度を取る人もいます。

たとえば、トランプ政権で官僚を務めたエルブリッジ・コルビー氏は、「欧州は台湾有事があっても支えないということがわかった。欧州は頼りにならない。台湾有事においては日本とオーストラリアだけが頼りだ」とツイートしていました。

日米豪としては、「台湾有事に関して国際的な協力が得られないかもしれない」ことがわかったという意味では、ショックな出来事です。ただ、フランスの伝統からすれば米国とは別の対立軸をつくって我々がリードしたい、という思惑があるのだろうと思います。

もともとフランスはNATOからやや距離を取っており、1966年にNATOを脱退して、2009年NATOに復帰した経緯があります。

最近では、オーストラリアがフランスから購入することになっていた原子力潜水艦の契約を反故にし、イギリスに鞍替えして、米国が主導する米英豪AUKUS(オーカス)結成により、未だに「アングロサクソン系ファイブアイズの塊」で動こうとすることに対するフランスの怒りがあります。

さらに、昨年12月米国訪問時にマクロンは、米国のインフレ抑制法や国内半導体業界支援法は<米国経済に非常に有利だが、欧州諸国との適切な協調はなかった>として「米国の公平な競争の欠如」を批判しています。

しかし、フランスはこの南太平洋に海外県、海外地域圏、海外共同体を擁し 、その総人口は165万人です。フランスの排他的経済水域の93%がインド洋と太平洋に位置します。加えて、インド太平洋地域諸国の在留フランス人は約15万人を数え、進出しているフランス企業の子会社は7,000社を超えるほか、8,300人のフランス軍が駐留しています。

マクロン大統領は2018年5月2日、ガーデン・アイランド海軍基地(オーストラリア、シドニー)で行った演説でフランスのインド太平洋戦略を概説し、法の支配およびあらゆる形態の覇権の拒否に基づく、包摂的な安定化アプローチの促進に意欲を示しました。さらに2019年10月23日にサン=ドニで行った「チューズ・ラ・レユニオン」サミットの閉会演説の中で、フランスのインド太平洋戦略では海外県・地域圏および海外自治体(DROM-COM)と、その地域統合に重点が置かれていることも強調しました。

フランス軍事省は2019年、インド太平洋におけるフランス防衛戦略を採択しました。この戦略は海外駐留部隊(海外領土・外国)の行動強化、大量破壊兵器等の拡散防止への積極的な貢献、地域機関とパートナーの強化への尽力、東南アジアのパートナーの戦略的自律性の強化、環境安全保障予測政策への貢献を目的とします。

フランスにとって、インド太平洋の概念は重みを増し、フランスは自由で開かれた包摂的なインド太平洋地域を維持するという目標のもと、とりわけインド、オーストラリア、日本、さらにASEANをはじめとする主要なパートナーと共通のビジョンを共有しています。EUもこの概念を採用し、独自の戦略を備えるべく作業を進めています。

日米豪などのインド太平洋戦略に関して、必ずフランスは関与すると考えられます。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
フランス国防費、3割以上増額へ…中国念頭に南太平洋の海軍力も強化―【私の論評】米中の争いは台湾から南太平洋に移り、フランスもこれに参戦(゚д゚)!
1月20日、仏南西部の空軍基地でドローンを見学するマクロン仏大統領(手前左)

これは1月22日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事から引用します。
 フランスのマクロン大統領は20日、仏南西部モン・ド・マルサンの空軍基地で演説し、2024~30年の7年間で計4000億ユーロ(約55兆5000億円)を国防費に充てる方針を示した。19~25年の2950億ユーロ(約41兆円)と比べて、3割以上の増額となる。

 マクロン氏は演説で国防費増額の背景について、ロシアによるウクライナ侵略などを挙げ、「危機に見合ったものとなる。軍を変革する」と述べた。

 情報収集活動予算を6割増額するほか、核抑止力の強化や無人機(ドローン)の開発促進などに充てる。中国の海洋進出を念頭に、領土がある南太平洋の海軍力も強化する。
この軍事費増大の背景には何があるのか、この記事【私の論評】から引用します。
中国の台湾侵攻は、現実にはかなり難しいです。実際、最近米国でシミレーションシした結果では、中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。中国の報復によって、日本と日本にある米軍基地などは甚大な被害を受けますが、それでも中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。そうして、無論中国海軍も壊滅的な打撃を受けることになります。

であれば、中国としては、台湾侵攻はいずれ実施するということで、まずは南太平洋の島嶼国をなるべく味方に引き入れるという現実的な路線を歩もうとするでしょう。これによって台湾と断交する国をなるべく増やし、台湾を世界で孤立させるとともに、これら島嶼国のいずれかに、中国海軍基地を建設するなどして、この地域での覇権を拡大しようとするでしょう。

南太平洋の島嶼国といっても、ニューカレドニアは仏領であり続けることを選びましたし、そもそも一人あたりのGDPは34,942ドルであり仏本国を若干下回る程度です。ただ、南太平洋の島嶼国のほとんどは一万ドルを下回る貧困国です。

現代的な軍隊を持った、台湾や日本、韓国、NATO加盟国などの領海近くを中国の空母が通ったにしても、それに対する対艦ミサイル、魚雷など対抗手段は十分にあるので、これを警戒はするものの、大きな脅威とはなりませんが、南太平洋の島嶼国は、貧乏で小さな国が多く、これは大きな脅威になります。

そのときに、日米豪などだけでもこれに対処はできるでしょうが、これに南太平洋に海軍基地を持つフランスもこれに対処できれば、それこそ百人力になります。

これを日米豪はもとより、世界の多くの国々が歓迎しました。ところが、 今回のマクロン大統領の中国は訪問はそれと矛盾する行為と言わざるを得ません。

マクロンは、対中国政策を一体どうするつもりなのか、この矛盾をどう解消するつもりなのか、国際会議の場でフランスは詰められていくのではないでしょうか。 

岸田首相は今年に入ってから矢継ぎ早に外交で成果をあげています。特に、G7で岸田さんがマクロンの煮えきらない姿勢に対して何を言うか気になります。 ぜひ徹底的に詰めていただきたいものです。

今年5月に広島で開催されるG7サミットには、ゼレンスキー大統領を招待しましたが、オンラインで参加することになったことが話題になっています。これは、春から戦闘が激化すると予見して、訪日を断ったと考えられます。

フランスは先にも述べたように、NATOからやや距離を取っていたこともあり、米国とは異なる独自路線を取りたがる傾向があります。しかし、対中国ということでは、フランスも南太平洋に領土を持っており、中国への脅威ということでは、日米豪と利害が一致しています。フランスは日米豪と協同したほうが単独で中国に対峙するより遥かに有利です。

広島G7で米国のバイデン大統領が、フランスのマクロン大統領に直接これに関したことを言えば、話がかえって拗れる可能性が高いです。ここは、議長国の岸田総理の出番だと思います。

かつてのインド太平洋戦略においては、安倍元総理はこれを構想するととも提言し、米国と多くの国々を仲介しました。当時安倍総理がいなければ、米国が「インド太平洋戦略」を採用したり、同地域の多くの国々を巻き込んだりすることはできなかったかもしれません。

閣議を前に言葉を交わす安倍晋三首相(左)と岸田文雄外相(肩書はいずれも当時)=首相官邸で2017年5月12日午前8時32分

岸田首相は、こうした安倍氏のような役割を担って、G7広島サミットでフランスが、インド太平洋戦略で貢献するように促していただきたいものです。それが、ドイツや他のEU諸国に対しても、これを巻き込むことにつながります。

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2023年4月10日月曜日

中国の属国と化すロシア 「戦後」も依存は続くのか―【私の論評】西側諸国は、中露はかつての中ソ国境紛争のように互いに争う可能性もあることを念頭におくべき(゚д゚)!

中国の属国と化すロシア 「戦後」も依存は続くのか

岡崎研究所

 アレクサンドル・ガブエフ(米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンター所長)が、3月18日付の英エコノミスト誌に、「ロシアの中国依存はプーチン後も続く」と題する寄稿をし、ロシアの中国の属国化時代を予想している。
 習近平が3月20日に国賓としてロシアを訪問する。ロシアは両国間の対等性を示そうとするだろうが、広がる両国間の力の差は隠せないだろう。

 プーチンは、ウクライナ攻撃を米国支配への反乱、ロシアの完全な主権への跳躍にしようとしている。しかし現実は異なる。開戦後13カ月、ロシアは、経済的にも外交的にも中国にますます依存している。2022年、ロシアの輸出の30%、輸入の40%を中国が占めた。ロシアのドル・ユーロへのアクセスが西側制裁下にあるので、この貿易の大きな割合が中国元で決済されている。西側がロシアの天然資源への依存を低める中、この依存は今後も増大する。

 今のところ、中国はロシアへの経済梃子を強めることで満足しているが、今後中国は政治的譲歩をより多く求めるだろう。中国はロシアに機微な軍事技術を共有することを求めうるし、北極海や中央アジアでの中国の存在感は高まるだろう。

 ウクライナ戦争によって、中国は3つの理由で、ロシアの最も影響力のあるパートナーになっている。第1に、中国のロシア商品の購入増大はプーチンの戦時財政を満たしている。第2に、中国はロシアの兵器の部品や工業機械への半導体の代替不可能な源泉である。

 最後に、ロシアは、米国の世界的敵対者である中国を助けることがバイデン政権のウクライナ支援に復讐する最も良い方法であると考えている。これが機微な軍事技術の共有やその他中国の軍事力を助けることがもはやタブーではないように見える理由である。

 ロシアにとっての悲劇は、プーチンが政治から引退した後でさえ、中国の「大君主」に従属する巨大なユーラシア独裁制が生き残るという事である。数年後、西側はロシアに経済的に依存することをやめ、代わりに、中国はロシアの輸出の大半を受け入れ、ロシアの金融は中国の通貨である元に釘付けられよう。

 西側との結びつきを再建し、この中国の支配から這い出るためには、ロシアは戦争犯罪人についての責任追及、賠償、併合した領土の返還についてのウクライナの要求を満たさなければならない。これはプーチン後でも、ほぼあり得ないシナリオである。ロシアの中国への属国化が予見可能で、利益も多いように見える。

*    *    *

 このエコノミスト誌の論説は、カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのガブエフ所長が書いたものであるが、ガブエフはロシアの事情に精通し、かつ中国のユーラシア政策にも詳しい人である。

 ガブエフは、ロシアが今後中国の属国になるだろうと予見している。ウクライナ戦争を受けての情勢の発展の中で、ロシアの中国属国化は、大いにありうる事態である。ガブエフは、プーチンが退場した後も、たとえロシアが民主化した場合にも、ロシアの中国属国化は続くと見ている。

 ガブエフが言うような情勢が出てくる蓋然性は大きいと考えられるが、そのような情勢は極めて望ましくないとも考えられる。特に、プーチン退場後に民主化した場合にも、ロシアは中国の属国であり続けるとのガブエフの判断には大きな疑問がある。

 情勢判断においては、希望的観測は排除すべきであるが、ウクライナ戦争後の情勢の進展によっては、ロシアの民主化や欧米諸国との関係改善の可能性もあると考えられる。その理由は、ウクライナ戦争は平和協定ではなく休戦協定でいつか終わるが、ウクライナが国家として生き残ることは休戦ラインがどこになるかにかかわらず、今の時点で明らかであると思われるからである。
繁栄する「兄弟」を見た時、ロシア人は何を思うか

 おそらく、生き残ったウクライナは、欧州連合(EU)に加盟することになるだろう。ウクライナは人権が尊重され、法の支配がある民主国家になり、その経済は奇跡的に回復する可能性さえある。EUで1人当たりの国民所得が最も低い国はブルガリアであるが、ウクライナの一人当たり国民所得は戦争前でブルガリアの半分であった。EU 諸国への出稼ぎだけでも経済の高度成長はできるだろう。

 ロシア人とウクライナ人はプーチンが言うような一つの民族ではないが、よく似た兄弟民族である。民主化し繫栄するウクライナを目の当たりにすれば、ロシア人が何故われわれは自由でもなく、貧しいままなのかと疑問を持っても不思議ではない。ここにロシアが民主化するきっかけがある。

 それに中国のジュニア・パートナーでいることに誇り高いロシア人が甘んじるとは考え難い。ロシアの歴史を巨視的にみると、欧化論者とスラブ主義者が政権交代してきたように見える。

 ガブエフの論は、そうなる蓋然性が高いとは思うが、ロシアの今後には別の発展もありうると考えて、政策展開を考えていく必要があるだろう。

【私の論評】西側諸国は、中露はかつての中ソ国境紛争のように互いに争う可能性もあることを念頭におくべき(゚д゚)!

これと似たようなことは、前から言われていました。このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の属国へと陥りつつあるロシア―【私の論評】ロシアの中国に対する憤怒のマグマは蓄積される一方であり、いずれ、中国に向かって大きく噴出する(゚д゚)!
この記事は2019年8月22日のものです。まだコロナ禍が始まるまえであり、ロシアの脅威はいわれていたものの、ウクライナに本格的に侵攻するとは考えらていない時期のものです。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

同年(2018年)10月24日付の露経済紙「コメルサント」によると、ここ最近、中国系銀行がロシア側との取引を中止したり、口座開設を認めなかったりする事例が相次いでいるといいます。

国際的な対露制裁の対象外の企業や個人も例外ではないといい、同紙は「中国側はどの企業が制裁対象なのか精査していない。その結果、全てをブロックしている」と指摘しました。「この問題は今年6月の首脳会談以降、両国間で議論されてきたにもかかわらず、中国側は『是正する』というだけで、実際は何もしていない」と不満をあらわにしました。

同年同月26日付の露リベラル紙ノーバヤ・ガゼータも「中国はロシアの友人のように振る舞っているが、実際は自分の利益しか眼中にない」と批判。「中国の経済成長の鈍化が進めば、中国政府は国民の不満をそらし、自らの正当性を確保するため、攻撃的な外交政策に乗り出す可能性がある。例えばシベリアや極東地域の“占領”などだ」と警戒感を示しました。

実際、露極東地域には、隣接する中国東北部からの中国企業の進出や労働者の出稼ぎが相次いでいます。極東に住むロシア人の人口は今後、減少していくと予想されており、同紙の懸念は「いずれ極東地域は中国の支配下に置かれるのではないか」というロシア側の根強い不安があらわれたものといえます。

同年同月29日付の露有力紙「独立新聞」もこうした中国脅威論を取り上げました。同紙は「ユーラシア経済連合と一帯一路との連携に基づく計画は、実際には何一つ実現していない」と指摘し、「中国によるロシアへの直接投資は、カザフスタンへの投資よりさえも少ない」と指摘しました。

経済発展が著しいウズベキスタンやカザフスタンなどの中央アジア諸国について、ロシアは旧ソ連の元構成国として「裏庭」だとみなしています。しかし、一帯一路も中央アジアを不可欠な要素と位置付けています。

地政学的に重要な中央アジアでの影響力を確保するため、ロシアと中国は、この地域への投資や技術供与、軍事協力の表明合戦を繰り広げており、表向きの双方の友好姿勢とは裏腹に、現実は協調とはほど遠いのが実情です。

このように、中露の友好関係は一時的なみせかけに過ぎないものであり、米国による対中国冷戦が長く続き、中国の力が削がれた場合、中露対立が激化することは必至です。そうして、その状況はしばらくは変わらないでしょう。

現状は、国力特に経済の開きがあまりにも大きすぎるため、さらにロシアは人口密度の低い極東において直接中国と国境を直接接しているという特殊事情もあるため、ロシアが中国に従属しているように見えるだけです。

しかし、プーチンは強いロシアを目指しており、文在寅のように自ら中国に従属しようなどという考えは毛頭ありません。

その実、ロシアの中国に対する憤怒のマグマは蓄積される一方です。これはいずれ、中国に向かって大きく噴出します。

その時こそが、日本の北方領土交渉を有利に進められる絶好のタイミングなのです。また、米国が最終的に中国を追い詰めるタイミングでもあるのです。

このように、中露がパートナーの域を超えて、本格的に同盟関係になることは考えにくいです。それは、コロナ禍を経て、ロシアがウクライナに侵攻した現在でも変わりは、ありません。

なぜ、そのようなことを言えるのとかといえば、最近習近平がロシアを訪問しましたが、その後のロシアの態度をみていればわかります。

ロシアを訪問した中国の習近平国家主席とプーチン大統領は先月21日、モスクワで首脳会談終了後、共同声明を発表しました。その中の第7項に、すべての核保有国は「核兵器を自国領土の外に配備すべきではないし、外国に配備された核兵器は撤収しなければならない」とありました。

2022年2月4日、北京冬季五輪の開会式に出席したロシアのプーチン大統領。居眠りしたとされる。

1年前、プーチン大統領は、北京冬季五輪の開会式に出席しましたが、五輪直後にウクライナ侵攻をしました。これで中国の習近平の面子は大きく傷つけられたはずですか、またしても中露共同声明後、わずか1週間でそれをほごにするようなベラルーシ核配備をプーチン大統領はは宣言しました。これで、習近平はまたしても面子を潰されました。

ベラルーシは、ロシアの隣国であり、これでロシアから核を発射しようがベラルーシから発射しようがあまり変わりありません。

これは、ロシアはウクライナに手を焼いているので、ベラルーシを使ってウクライナや、これを支援する西側諸国などを恫喝しているように見えます。

ただ、これだけ面子を傷つけられても、習近平としては、プーチンを責めたり、ロシアを制裁するようなことは、なかなかできません。


なぜでしょうか。ロシアは国際法を破って独立国を侵略した無法者です。中国が普通の法治国家であればロシアを非難していたでしょう。しかしプーチン氏が負ければロシアは民主化する可能性があります。中国にとってそうなっては困るので、プーチン氏にしっかりネジを締めに行ったといいうのが本当のところでしょう。

そうして、それに対するプーチンの答えは、習近平の思惑を見透かした上で、先程示したように、「ベラルーシへの核配備」宣言でした。

プーチンとしては、習近平などにネジを巻かれるつもりもないし、自らが失脚などした場合、ロシアが民主化され、窮地に追い込まれるのは、習近平の方だと、釘を刺したのでしょう。

こうした、両国の関係をみていると、とても同盟関係に入ることなど考えられません。同盟関係に入るということは、ロシア側からすれば、自ら中国の属国になるようなものです。プーチンや習近平のような独裁者は、自国が他国を属国にしてきたという歴史から、属国になることが何を意味するのか十分理解していると考えられます。

プーチンは、それは断じて避けるつもりなのでしょう。しかしながら、ロシアが民主化されれば、窮地にいたるのは中国であり、それを避けるためには、過去のロシアに対する支援を継続するようにと釘を刺したのです。

ただ、この試みが成功するかどうかは、わかりません。何しろ、プーチンは、ウクライナに対して、侵攻するとみせかけ、ゼレンスキー政権をウクライナから追い出し、ウクライナにロシアの傀儡政権もしくは、新ロシア政権をつくり、ウクライナを西側諸国に対するロシアの盾もしくは、緩衝地帯にしようと目論んだつもりなのですが、その目論見は現状では大失敗をし、全く意味をなしていません。

プーチンは、対中国政策でも、失敗する可能性があります。ただ、我々西側諸国としては、中露を同盟国のように考えるのではなく、場合によっては、かつての中ソ国境紛争のように互いに争う可能性もあることを念頭においておくべきです。

特に、中国が経済的に相対的に衰え、ロシアと拮抗するようなことにでもなれば、その可能性は高くなるとみるべきでしょう。

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2023年4月9日日曜日

「中国の軍事力を強大だとするのは神話に過ぎない」 著名な軍事研究家が断言するワケ―【私の論評】人口比で比較してみると、中国人民解放軍は日本の自衛隊よりも桁違いに多いとはいえない(゚д゚)!

「中国の軍事力を強大だとするのは神話に過ぎない」 著名な軍事研究家が断言するワケ


 軍事史、軍事戦略研究、安全保障論を専門とし、『ルトワックの日本改造論』や『中国4.0 暴発する中華帝国』などの著書で知られる戦略家のエドワード・ルトワックは、増加し続ける中国の国防費を真に受けるべきではないと語る。「その金額が示すほどには、実質的な軍事力を強化できていない」と彼が言い切る理由とは──。

米中の国防費を読み解く

 中国最後の穏健派、前国務院総理の李克強が2023年の経済成長率の目標として5%を掲げ、さらなる市場の自由化を求めた翌日、習近平はこれに反応し、国防費を7.2%に引き上げると発表した。

 これは習の一貫した攻撃的姿勢を示すものであり(ナンシー・ペロシの台湾訪問に対する反応として、一連の弾道ミサイルを発射したことは記憶に新しい)、中国が2049年までに世界の覇権を握るという党の公約にも通ずる。

 とはいえ、この数字は現実には何を示しているのだろうか?

 発表されているところでは、今回引き上げられた国防費は総額1兆5600億元であり、現在のレートで約30兆円に相当する。もしこれが事実なら、中国は米国に大きく遅れをとっていることになる。というのも、米国の2023年度の国防費は7970億ドル(約105兆円)に達しているからだ(この数字には軍事施設の建設費用やウクライナへの救援費は含まれていないため、実際はもっと多い)。

 専門家たちは、中国の国防費もまた、実際より大幅に低く示されていると考えている。細かく改ざんされているというよりは、国防費から丸ごと除外されている項目があるのだ。たとえば、軍の研究開発費は非軍事予算に計上されている。

 中国の実際の国防費を明らかにするため、また米国の国防費から何が抜け落ちているのかを見極めるために、両国にエリート調査員の軍団を送り込んだとしても、彼らが実際にどの程度軍事力を強化しようとしているのかは、おぼろげにしか見えてこないないはずだ。

 ただ、確実に言えることがひとつある。両国とも、公表された国防費の上げ幅が示すほどには、実質的な軍事力を強化できていないということだ。

中国軍の深刻な人手不足

 中国の人民解放軍の場合、陸軍および海軍で人員不足により軍事費が削減されている。近い将来、空軍にも影響が及ぶだろう。陸軍の人員は現在97万5000人だが、この数字は14ヵ国と2万2000キロに及ぶ国境を接している国としては非常に少ない。

 これらの国のなかには、エンジンが機能しなくなる超高山地帯や、遠隔地の監視が困難なジャングル地帯、密輸のはびこるロシアとの国境地帯が含まれている。また、インドとの国境にある係争地ラダックでは、両国が陸軍を大規模動員する事態となっており、中国側の国境には少なくとも8万人が送り込まれている。

 いまや戦地になりつつあるラダックは別として、国境は軍隊ではなく、国境警備隊によって防衛されることになっている。かつて中国は国境付近にも軍を配備し、多額の予算を投じていたのだが、いまでは廃止されている。それは、人民解放軍の陸軍がきわめて小規模であるのと同じ理由からだ。すなわち、この地域での兵役を志願する健康な中国人男性が、壊滅的に少ないのだ。

 対照的に、都市部ではこうした深刻な人手不足の心配はないようだ。知人いわく、その結果、中国・チベットとネパールの国境地帯で奇妙な現象が起きているらしい。広東から来たよそよそしい都会の警官の一団が、チベットに入ろうとする旅行者をチェックして「国境を守っている」というのだ(彼らは2ヵ月間この仕事を「押し付けられた」と言っていた)。

 中国共産党の強力な中国人民武装警察部隊(フランスの国家憲兵隊、イタリアの国家憲兵隊と財務警察、スペインの治安警備隊に相当する)ですら、若い中国人男性たちに志願してもらえず、その影響を受けている。

 150万人という隊員数は多いように思われるが、人口が中国の5%、わずか6000万人に留まるイタリアの国家憲兵隊および財務警察には、人民武装警察部隊の10%に相当する15万人が属している。さらにイタリアの場合、新疆のウイグル人やカザフ人、チベットの牧夫たち、激しく不満を募らせるモンゴル人らを囲い込んで統制するために、大規模な武装人員を配置する必要もない。

Edward Luttwak

【私の論評】人口比で比較してみると、中国人民解放軍は日本の自衛隊よりも桁違いに多いとはいえない(゚д゚)!

上の事例では、残念ながら日本の例はでてきませんが、これは割り算をすれば、ある程度簡単に比較できます。

上の記事にある通り、陸軍の人員は現在97万5000人です。中国の人口は現在14億人、日本は1億2千万人です。人口では、中国は人口11.7倍です。計算を簡単にするため、11倍とします。

陸自の令和2年度末の人員は、常備自衛官15万0695名、即応予備自衛官は7,981名で、年間平均人員は約14万0347名です。これも計算を簡単にするために、14万人とします。

中国の陸軍に換算すると、日本の陸自は14万人✕11=154万人ということになり、これは中国の陸軍より圧倒的に多いです。

中国陸軍

こんなのは数字のマジックであり、軍人数は実数で扱うべきという人もいるかもしれませんが、自衛隊や普通の国の軍隊は、国民を守るが責務であり、この比較自体は数字のマジックとはいえないでしょう。ルトワック氏の上の記事で、イタリアの事例を出していますが、これも人口をを切り口として比較しています。

国土だけを比較の対象とすれば、中国のように、人が住める地域が少なく、住んでいる地域は点と線に限られているといわれるような国では国土を目安にするのでは客観的な比較はできないでしょう。人口を切り口としても、正確とはいえないですが、国土よりははるかに正確といえるでしょう。正確な比較はできないものの、ある程度の目安にはなるでしょう。

では、海自と空自ではどうなのでしょうか。

海自の人員は、定員45,329人(現員43,419人 充足率95.8%)である。 令和4年度(2022度)の予算額は約1兆2922億円 基地の数は約31です。

これに対して、中国海軍はどうなのでしょうか。

2017年版ミリタリーバランスによると、海軍人員数は、現役総員約235,000名の内、海軍航空部隊約26,000名、陸戦隊(海兵隊)約10,000名が含まれるとしています。
海軍司令員: 董 軍海軍大将
海軍政治委員: 袁華智海軍大将
現総人員: 約29万人
本部: 北京市
これも海自の定員数4万4千人として11倍にしてみると、約44万人であり、これも中国海軍より圧倒的に多いです。

中国海軍

空自はどうなのでしょうか。空自の現員数は、2022年では、43,720人とされており、これも計算をやりやすくするため、4万3千人とします。

では、中国空軍はどうなのでしょうか。ウィキペデイアによれば、総兵力39.5万人(空挺部隊を含む)とされています。

空自の現員数43,000人✕11=473,000人の換算となります。これも、空自のほうが多いです。

これらの比較は、無論正確ではないので、これで単純比較はできないものの、それでもさすがに人口比で比較してみると、中国軍は日本の自衛隊よりも桁違いに多いとはいえないという結論にはなるでしょう。

中国空軍

さらに、中国の軍隊は他国の軍隊と異なり、中国共産党の下に直結しており、国民を守る軍隊ではありません。いわば共産党の私兵のような存在です。そのため、もし戦争になっても、共産党を守る義務はありますが、国民を守る義務はありません。実際に戦争になれば、人民解放軍は中国共産党は守るかもしれませんが、国民は放置するかもしれません。

そのため、14億人も存在する国民を守る義務がないので、身軽といえば身軽ですが、暴動が起こったときには武装警察がこれを弾圧する任にあたりますが、大規模になれば、人民解放軍がその任にあたります。そのため、その身軽さも帳消しになっているといえます。

これは、中国のGDPについても同じようなことがいえます。実は、中露は一人あたりのGDPはいずれも1万ドル(日本円では100万円)を少し超えた程度です。ただ、ロシアの人口は1億4千万人であり、中国のそれは14億人であり、丁度10倍であり、GDPでも中国は国家単位では、ロシアの10倍です。

日本を含むG7諸国も一人あたりのGDPでは中露を下回る国は一つもありません。中国は世界第2の経済大国といわれていますが、一人あたりでは全く西側諸国には及ばないのです。軍事力もこれと同じであり、人口比で比較すれば、中国の軍事力はとても強大とはいえないのです。

しかも、現在の日本は米とは同盟関係、英豪と実質的な同盟関係にありますが、中露は同盟関係とみなす人もいますが、実際には同盟関係とはいえず、パートナーシップ程度のものです。同盟関係のない中国は不利であるのは間違いないです。

以上の計算は、コロナ感染者数や死亡者数の報道を彷彿とさせます。私は、民放のコロナ感染者数、死者数の報道には現在もイライラします。なぜなら、民放では未だに、都道府県単位で実数だけを報道するからです。

東京都は人口1396万人、島根県は人口66.52万人です、にもかかわらず実数だけで報道されると、東京都と島根県ではどちらが深刻なのかすぐには判断できないのでイライラします。

このようなことをなくすため、感染症学では県や都市などは、10万人あたりに換算して統計を出します。国単位では、100万人あたりに換算して出します。こうすることによってある程度客観的に比較できます。確かに、各都道府県で状況は違い、正確無比な比較などできないですが、それても、深刻さの度合い等が伝わります。

NHKでは今では感染者、死者数の発表するときは、各都道府県の10万人あたりに換算した数値を公表しています。しかし、民放では今だに実数だけを公表するので本当にイライラしてしまうのです。

これに関して、私の知っている人の中にも、10万人あたりと言われても良くわからないという人もいますが、そういう人は、実数で出されたものもよく理解できているはずもないので、報道するときには、やはり都道府県別では、10万人あたりなどで公表すべきでしよう。これを理解できない人のことは考慮する必要はないと思います。

しかし、過去には高橋洋一氏が100万人あたりの数値で、日本や海外を比較して、海外と比較すれば、日本は「さざ波」程度と事実を発言して物議を醸しました。

このような日本ですから、中国の軍事力は強大という説のほうが日本国内では幅をきかせ続けるでしょう。

そうして、それは中国共産党を利することになりかねません。しかし、心ある人は中国を等身大に見て、判断すべきです。

ただし、だからといって、中国を軽視しろといっているわけではありません。先日もこのブログで述べたように、米国下院「中国委員会」のマイク・ギャラガー氏が指摘しているように、長期では中国よりも圧倒的に米国のほうが有利であり、長期的には中国は米国に対して手も足もだせず、弱体化する一方です。そのため、10年以内に中国は無謀な冒険に打ってでる可能性は捨てきれません。

特に、習近平は中国の力を過信して、そのような挙にでる可能性は捨てきれません。だからこそ、少なくてもここ10年くらいは日本も中国に対峙する姿勢を崩すことはできないのです。

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