2009年1月28日水曜日

麻生総理大臣の施政方針演説-日本人の知らない世界?!


施政方針演説 (この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)

今年は、平成21年。天皇陛下がご即位されて、満20年になりました。国民の皆様と、お祝い申し上げたいと存じます。

1 目指すべき社会
 世界は今、新しい時代に入ろうとしています。その際に、日本が果たすべきは、「新しい秩序創りへの貢献」です。同時に、日本自身もまた、時代の変化を乗り越えなければなりません。目指すべきは、「安心と活力ある社会」です。
 新しい世界を創るために、どのように貢献すべきか。新しい日本を創るために、何をなすべきか。私の考えをお話ししたいと存じます。

(新しい秩序創りへの貢献)
 今回の世界的な金融危機は、百年に一度のものと言われています。しかし、危機はチャンスでもあります。危機が混乱をもたらすのか、それとも新しい時代を開くのか。それは、私たちの対応にかかっています。
 1929年の大恐慌の教訓を、忘れてはなりません。世界各国は、自国の利益を優先し、保護主義に走りました。それは、世界経済を収縮させ、第二次世界大戦にもつながりました。
 戦後、各国はその反省に立ち、協力し合う関係を築きました。そして世界経済は、半世紀にわたり成長を続けました。しかし、今回の金融危機は、経済が予想を超えてはるかにグローバル化したときに、これまでの仕組みでは限界があることを示しています。
 私は、昨年11月、ワシントンでの金融サミットで、我が国の過去の金融危機とそれを克服した経験を各国首脳に説明しました。また、国際通貨基金 の機能強化と、最大一千億ドルの融資による日本の貢献策を表明しました。あわせて、次のことも提唱しました。一つは、金融市場の監督と規制に関する国際的 な協調の必要性です。もう一つは、保護主義に陥ることなく、世界の貿易と経済を拡大することの必要性です。
 これらは、各国の賛同を得て、進みつつあります。世界第二位の経済規模を持つ日本は、世界経済の新しいルール創りに積極的に貢献しなければな りません。もちろん、経済だけではありません。東西冷戦が終わって20年。国際社会の平和と安定に向け、新しい秩序創りにも、参画しなければなりません。

(安心と活力ある社会)
 同時に、日本もまた、「この国のかたち」を変える節目にあります。
 私たちは、この二世紀の間に、二度の危機的状況を経験しました。そしてその都度、自らの生き方を転換し、かつ驚異的な成功を収めたのが日本の歴 史です。一度目は、開国と明治維新です。鎖国で取り残された我が国は、殖産興業にかじを切りました。そして、急速な工業化を達成し、非西欧諸国として唯 一、列強の仲間入りをしました。二度目は、敗戦と戦後改革です。焼け野原になった我が国は、軍国主義を捨て、経済重視に転換しました。そして、世界第二位 の経済大国になるとともに、安全で平等な社会を創りました。
 今、三度目の変革を迫られています。急速な少子高齢化、新たな格差や不安、資源や環境の制約。そして、時代にそぐわなくなった社会のシステ ム。これらを乗り越えなければなりません。試練を乗り越えたときに、人は成長します。混乱を乗り越えたときに、社会が進化します。危機は、むしろ飛躍する ための好機でもあります。
 今回も、私たちが自らの生き方を選び、「この国のかたち」を創ります。目指すべきは、「安心と活力ある社会」です。世界に類を見ない高齢化を社会全体で支え合う、安心できる社会。世界的な課題を創意工夫と技術で克服する、活力ある社会です。
 そのために、政府は何をなさねばならないか。私たちは、この点についても既に多くのことを学んでいます。それは、「官から民へ」といったスローガンや、「大きな政府か小さな政府か」といった発想だけでは、あるべき姿は見えないということです。
 政府が大きくなり過ぎると、社会に活力がなくなりました。そこで多くの先進諸国は、小さな政府を目指し、個人や企業が自由に活動することで活力 を生み出しました。しかし、市場にゆだねればすべてが良くなる、というものではありません。サブプライムローン問題と世界不況が、その例です。今、政府に 求められる役割の一つは、公平で透明なルールを創ること、そして経済発展を誘導することです。
 もう一つの政府の役割は、皆が参加できる社会を創ること、そして安心な社会を実現することです。
 日本は、勤勉を価値とする国です。この美徳が、今日の繁栄を築きました。それを続けるためにも、高齢者、障害者や女性も働きやすい社会、努力が報われる社会を創ることが重要です。また、競争に取り残された人を支えること、再び挑戦できるようにすることが重要です。
 この点において、我が国はなお不十分であることを認めざるを得ません。日本の行政は、産業の育成には成功しました。これからは、政府の重点を生活者の支援へと移す必要があります。
 国民の安心を考えた場合、政府は小さければよい、というわけではありません。社会の安全網を、信頼に足る、安定したものにしなければなりません。中福祉を目指すならば、中負担が必要です。私は、景気回復と政府の改革を進めた上で、国民に必要な負担を求めます。
 現在の豊かで安全な日本は、私たちが創ったものです。未来の日本もまた、私たちが創りあげていくものです。過去二回がそうであったように、変革 には痛みが伴います。しかし、それを恐れてはなりません。暗いトンネルの先に、明るい未来を示すこと。それが政治の役割です。良き伝統を守り発展させる。 そのために改革する。それが、私の目指す真の保守であります。
 私は、世界にあっては「新しい秩序創りへの貢献」を、国内にあっては「安心と活力ある社会」を目指します。

2 活力ある社会
 以下、当面する課題と政府の取組について述べます。第一の課題は、活力ある社会創りです。

(景気対策・雇用対策)
 私は、「当面は景気対策、中期的に財政再建、中長期的には、改革による経済成長」と、申し上げております。まず急がねばならないこと。それは、景気対策であります。
 世界が同時に、かつてない不況に入りつつあります。日本もまた、この世界不況から逃れることはできません。しかし、大胆な対策を打つことで、世界で最初にこの不況から脱出することを目指します。異常な経済には、異例な対応が必要です。
 第一次補正予算、第二次補正予算、そして平成21年度予算。これら三つを切れ目なく、言わば三段ロケットとして進めてまいります。経済対策の規 模は、約七十五兆円となります。予算と減税額では、合計約十二兆円。国内総生産に比べて約二パーセントになります。諸外国の中でも最大規模の対策です。
 その際には、「生活者」「中小企業」「地方」の三つに重点を置きました。公共事業など従来型の景気対策ではなく、生活や雇用を守ることを目的とするものです。「生活防衛のための大胆な実行予算」。平成21年度予算を、こう呼びたいと存じます。
 職を失った派遣労働者の方々には、急ぎ昨年末から、雇用促進住宅などの住居を提供しています。雇用保険については、非正規労働者が給付を受けや すいよう、適用基準を、一年以上の雇用見込みから六か月に短縮します。雇用保険料を引き下げます。標準的な世帯で、年間約二万円に当たります。
 日雇い派遣を原則禁止にするなど、労働者派遣制度を見直します。派遣労働者、内定を取り消された学生、年長フリーターを正規雇用した事業主に 対して助成します。雇用創出のため、地方に四千億円の基金をつくります。これは、将来につながる事業、例えば高齢者の介護や配食サービスなどにつなげてい きたいと思います。これらにより、三年間で百六十万人の雇用を見込みます。
 定額給付金は、一人当たり一万二千円をお渡しいたします。子どもや高齢者には二万円。子ども二人の四人家族では、六万四千円になります。さら に、一兆円規模の減税を行います。住宅ローン減税については、控除可能額を過去最大となる六百万円に引き上げます。自己資金で省エネ改修やバリアフリー改 修をしても、減税します。
 中小企業対策については、昨年末までに、緊急保証と特別の貸付けを合わせて、約二十二万件、四兆五千億円の実績が挙がり、資金繰りに大きな効 果を発揮しました。さらに、第二次補正予算によって、保証・貸付け枠を三十兆円に拡大します。また、中小企業の法人軽減税率を、二年間、十八パーセントに 引き下げます。従業員の雇用を守りつつ、後継者に経営が引き継がれた場合には、相続税や贈与税を猶予します。

(責任ある財政運営)
 大胆な財政出動を行うからには、財政に対する責任を明確にしなければなりません。また、持続可能な社会保障制度を実現するには、給付に見合った 負担が必要です。そのために、社会保障と税財政に関する「中期プログラム」を閣議決定しました。経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ段 階的に消費税を含む税制抜本改革を行うため、2011年度までに必要な法制上の措置を講じます。その実施時期は経済状況をよく見極めて判断しますが、私と しては、2011年度に向けて景気が回復するよう、全力を尽くします。
 これは、社会保障を安心なものにするためです。子や孫に、負担を先送りしないためであります。
 国民に負担をお願いするに当たっては、不断の行政改革の推進と無駄排除の徹底の継続が大前提です。例えば、公益法人への支出を、平成18年度に 比べ約四割削減します。「私のしごと館」など、無駄が指摘されている事業を廃止します。国の行政機関の定員については、社会保険庁の廃止によるものを含 め、約一万五千人を純減します。道路特定財源は、すべて一般財源化します。
 国の出先機関の二重行政を排除するため、その事務や権限を地方自治体に移譲し、抜本的に統廃合します。縦割り行政の弊害を打破するため、内閣 人事局を設置するとともに、公務員制度改革全体の工程表を策定し、改革を前倒しで実行します。天下りなど、公務員の特権と批判される慣行についても厳しく 対応し、押しつけ的あっせんを根絶します。

(改革による経済成長)
 世界は、人口急増や新興国の経済成長、資源制約や環境制約の高まりといった、人類史上例を見ない構造変化に直面しています。未来を先取りし、世界が直面する課題の解決を先導する。そのような商品やモデルをつくることが、我が国の持続的な成長をもたらします。
 そのため、新たな成長戦略を策定します。昨年秋に取りまとめた「新経済成長戦略」を基礎としつつ、雇用や市場の創出に重点を置いた、三つの柱と します。具体的には、世界最高水準の環境技術と社会システムの構築を目指す「低炭素革命」。iPS細胞など最先端の医療研究の活用や、やさしく、しかも効 率的な医療・介護サービスを実現する「健康長寿」。魅力ある地域、アニメなどのコンテンツ、ファッションなどのブランド力、おいしく安全な食べ物といっ た、日本らしいソフトパワーを活かす「底力発揮」。今後二、三年で、集中的なインフラ整備、研究開発、規制・制度改革に一体的に取り組むとともに、成長を 支える情報通信技術の戦略も、策定します。
 アジアは世界の成長センターです。その自律的成長を我が国の成長につなげるためにも、アジアの成長力強化と内需拡大のための戦略的国際協力 を、東アジア・アセアン経済研究センターも活用しつつ進めます。WTOドーハ・ラウンドの早期妥結や、経済連携協定の交渉に取り組みます。
 新たな農政改革を推進します。農業に潮目の変化が訪れています。食料の安全・安心を確保し、自給力を向上させるため、従来の発想を転換し、す べての政策を見直します。まず、「平成の農地改革」法案を今国会に提出します。所有から利用への転換です。また、意欲のある若者や企業の参入を進めるとと もに、経営対策によって、担い手の経営を支えます。さらに、米粉や飼料用の米の生産を本格的に進め、自給率の低い麦・大豆の生産を拡大するなど、水田フル 活用への転換元年とします。これらによって、農山漁村に雇用とにぎわいを生み出します。

(地域経営)
 景気後退による経済と雇用への打撃は、地方ほど深刻です。地方自治体が地域を活性化できるようにするためには、財源と権限が必要です。地方税や 地方交付税の減少分を補てんするのに加え、地方交付税を一兆円増額します。インフラ整備のために、使い勝手の良い「地域活力基盤創造交付金」を創設しま す。
 分権型社会が、目指すべき国のかたちです。知事や市町村長が、地域の経営者として腕を振るえるようにしなければなりません。地方分権改革推進委員会の勧告を踏まえ、地方自治体の活動について、国による義務付けを見直し、自由度を拡大します。

3 安心できる社会
 課題の第二は、暮らしの安心です。

(社会保障)
 暮らしの安心は、年金、医療、介護など、社会保障制度への信頼があってこそ、成り立ちます。
 年金記録問題により、公的年金制度に対する信頼が損なわれました。国民の皆様には、改めてお詫びを申し上げます。既に、「ねんきん特別便」をす べての現役加入者と年金受給者の方にお送りし、ご自身の記録を確認していただいています。これに加え、4月からは、順次、標準報酬の記録もお送りいたしま す。紙台帳との突き合わせを含め、計画的・効率的に記録回復作業を進めます。
 医師不足など地域医療をめぐる問題に対しては、医師養成数を増員し、勤務医の勤務環境を改善します。救急医療も、消防と医療の連携などによ り、患者を確実に受け入れられるようにします。長寿医療制度については、更に議論を進め、高齢者の方々にも納得していただけるよう、見直しを行います。四 月から介護報酬を引き上げ、介護従事者の処遇を改善します。
 少子化対策については、妊婦健診を十四回分すべて無料にします。出産育児一時金も、四十二万円に引き上げます。また、平成22年度までに十五万人分の保育所などを増やします。

(安全と安心)
 昨年は、食の安全や暮らしの安全を脅かす事件が、相次いで発生しました。消費者の利益を守るため、一日も早い消費者庁の設立に向け、関連三法案の成立を急ぎます。あわせて、地方自治体が相談窓口を増設し、きめ細かに対応できるようにします。
 昨年の交通事故死者数は、五千百人余りとなり、昭和45年のピーク時に比べ、三分の一以下に減らすことができました。今後十年間で、更に半減さ せます。新たな犯罪対策を進め、「世界一安全な国、日本」を目指します。他方、自殺者は、年間三万人を超えています。誰もが生きやすい社会を、創らなけれ ばなりません。学校施設の耐震化も前倒しで実施します。
 日本に定住する外国人やその子どもが、増加しつつあります。新たに設けた担当組織の下、地域における支援を進めます。ニートやひきこもりなど、困難を抱える若者を支援するため、新法をつくります。
 裁判員制度が5月から始まります。国民が刑事裁判に参加することで、司法をより国民に身近なものとするための改革であります。

(教育)
 国づくりの基本は、人づくりです。
 小中学校の新学習指導要領を4月から一部先行実施し、理数教科などの授業時数を一割程度増加させます。これによって学力を向上させ、豊かな心や健やかな体を育みます。また、学校に携帯電話を持ち込ませず、有害情報やネットいじめから、小中学生を守る対策を進めます。
 昨年の日本人四名のノーベル賞受賞は、画期的な出来事でした。大阪の町工場の技と夢が詰まった「まいど一号」が今、宇宙を飛んでいます。基礎研 究を充実させるとともに、科学研究費補助金など約九百億円を投じて、若手研究者などの多様な人材が活躍できる環境を整備します。また、英語による授業のみ で学位が取得できるコースや、世界トップレベル研究拠点プログラムを推進し、大学の国際競争力を強化します。
 さらに、経済状況の厳しい中でも不安なく教育を受けられるようにすることや、国際的に活躍できる人材の育成などについて、日本の将来を見据え、教育再生懇談会において幅広く検討を進めます。
 2016年オリンピックの日本開催に向けた支援に努めます。

(環境)
 地球温暖化問題の解決は、今を生きる我々の責任です。同時に、環境問題への取組は、新たな需要と雇用を生み出す種でもあります。成長と両立する低炭素社会、循環型社会を実現します。
 我が国が持つ世界最先端の環境・エネルギー技術を、更に伸ばすことが必要です。太陽光発電や環境対応自動車の開発・普及などを進めます。排出量 取引の試行を通じて、実効性のある日本型モデルを構築します。温室効果ガスを削減する中期目標を、科学的・総合的観点から検討した上で決定します。
 本年末には、地球温暖化対策の次期枠組みを決める国際会議が開催されます。すべての主要国が参加する、公平で実効ある枠組みの構築に向け、積極的な役割を果たしてまいります。

4 世界への貢献
 課題の第三は、世界の平和と安定に向けた貢献です。
 国際社会の平和と安定は、日本はもとより、世界の発展に欠かすことができません。私は、日米同盟を基軸にしながら、アジア・太平洋の諸国との連携、国連などの場を通じた国際協調を重要な柱として、平和と安定の構築に全力を尽くします。

(日米同盟・アジア太平洋)
 まず米国とは、オバマ大統領と共に、同盟関係を更に強化します。金融危機への対応はもちろん、テロとの闘い、核軍縮・不拡散、気候変動といった 地球規模の課題に、連携して取り組んでまいります。在日米軍再編については、沖縄など地元の声に耳を傾け、地域の振興に全力を挙げて取り組みながら、引き 続き、着実に進めてまいります。
 先般、日中韓首脳会議を初めて独立した形で開催し、未来志向で、包括的な協力を進める大きな一歩を踏み出しました。中国との「戦略的互恵関係」、韓国との「成熟したパートナーシップ関係」を通じて、アジアと世界の平和と安定に貢献してまいります。
 ロシアとは、アジア太平洋地域における重要なパートナーとしての関係を構築するため、領土問題の最終的解決に向けた交渉を進めるとともに、幅広い分野での関係を進展させます。
 北朝鮮については、拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決し、不幸な過去を清算し、日朝国交正常化を実現すべく取り組みます。また、六者会合に おいて非核化プロセスを前進させるとともに、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国の実現に向け、北朝鮮に対し、早期に全面的な調査のやり直しを開始するよ う、具体的な行動を強く求めてまいります。

(自由と繁栄に向けての支援、テロ・海賊対策)
 私には、一つの信念があります。それは、経済的繁栄と民主主義を希求する先に、平和と幸福が必ずや勝ち取れるというものです。これは、戦後日本 の歩みでもあります。私が「自由と繁栄の弧」という言葉で表現したように、自由、市場経済、人権の尊重などを基本的な価値とする若い民主主義諸国の努力 を、積極的に支援します。
 日本は、国際社会の責任ある一員として、また、この1月からは国連安保理非常任理事国として、積極的な役割を果たしてまいります。ODAを活 用し、アフリカを始めとする途上国の安定と発展、テロとの闘い、貧困や環境問題、水問題など地球規模の課題の解決に貢献します。資源・エネルギー外交を進 めます。インド洋における補給支援活動を継続し、国際的な平和協力活動などに積極的に取り組んでまいります。
 また、ソマリア周辺などでの海賊の襲撃は、日本を含む国際社会にとっての脅威であり、緊急に対応すべき課題であります。関係国との連携の下、実行可能な対策を早急に講じ、新たな法制の整備を検討します。

おわりに
 世界経済の一段の減速に伴い、日本経済も急速に悪化しています。景気の後退を食い止め、不況から脱出するためにも、予算及び関連法案を早急に成 立させることが必要です。これが日本の経済を、そして日本の将来を決めます。経済成長なくしては、財政再建も、安定した社会保障制度もあり得ません。
 今こそ、政治が責任を果たす時です。国会の意思と覚悟が問われています。国民が今、政治に問うもの。それは、金融危機の津波から国民生活を守ることができるか否かです。
 与野党間に、意見の違いがあるのは当然です。しかし、国民が望んでいることは、単に対立するのではなく、迅速に結論を出す政治です。政府与党と しては、最善と思われるものを提出しております。野党にも良い案があるなら、大いに議論をしたいと思います。ただし、いたずらに結論を先送りする余裕はあ りません。
 とかく、ものごとを悲観的に見る人がおられます。しかし、振り返ってみてください。日本は、半世紀にわたって平和と繁栄を続けました。諸外国 から尊敬される、一つの成功モデルです。そして日本は、優秀な技術、魅力ある文化など、世界があこがれるブランドでもあります。自信と誇りを持ってよいの です。日本の底力は、必ずやこの難局を乗り越えます。そして、明るくて強い日本を取り戻します。
 私は、自由民主党と公明党の連立政権の基盤に立ち、新たな国づくりに、全力を傾注してまいります。私は、決して逃げません。国民の皆様と共に、着実に歩みを進めてまいります。
 国民の皆様と議員各位のご理解とご協力を、心からお願いいたします。


施政方針演説の動画はしたのURLからご覧になれます。

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2378.html
 
施政方針・経済・財政演説“景気回復を最優先”強調
(この内容、すでにご存知の方は読み飛ばしてください)

麻生太郎首相は28日、衆参本会議で施政方針演説をし、「景気回復と政府の改革」を進めたうえで、「国民に必要な負担を求める」と述べ、経済の好転を条件に2011年度以降に消費税率を引き上げる方針を示した。続いて中川昭一財務・金融担当相が財政演説、与謝野馨経済財政担当相が経済演説をし、苦境に立つ日本経済の現状を説明、“景気対策と増税”の2つの難題に取り組む姿勢を強調し、国民に理解と協力を求めた。

                   ◇

 「景気回復を最優先としつつ、財政健全化の取り組みを進める」。中川財務相は財政演説でこう述べ、景気対策に軸足を置く一方で、財政規律の維持に配慮する考えを示した。09年度予算をめぐっては、国民生活と日本経済を守るため「今年度内に成立させることが必要不可欠」と、早期成立を訴えた。

 国と地方の基礎的財政収支を11年度に黒字化する目標は「努力目標」と位置付け、昨年末に閣議決定した「中期プログラム」に沿った消費税を含む税制抜本改革に意欲を示した。

 国と地方をあわせた長期債務残高は09年度末には804兆円に達する見通しで、財務相は「極めて厳しい状況にある」と国家財政の窮状に言及した。結びでは、戦後の荒廃から立ち直り、石油危機を乗り越えた歴史を振り返り、「日本人に乗り越えられない困難はない」と述べ、国民への協力を求めた。

                   ◇

 「経済有事」-。与謝野経財相は景気後退が深刻化する日本経済の状況をこう位置づけ、「不安と萎縮(いしゅく)の連鎖」を断ち切るために政策を総動員する決意を表明した。企業業績や雇用環境の悪化が消費の抑制につながる悪循環を断つため、事業総額75兆円の経済対策によって「景気底割れの防止」を図る意向を示した。

 消費税率引き上げについては、具体化や法案の準備を「経済好転後の速やかな実行のために、今から早急に行う必要がある」と力説。「社会保障の安定財源の確保によって、巨額の個人金融資産を消費拡大に回していく基盤をつくる」と強調した。「持続的な経済成長に欠かせない」景気へのプラス効果を訴え、消費税増税が景気を冷え込ませると主張する反対派に反論した格好だ。成長力強化では、(1)低炭素社会の構築(2)健康長寿・子育て安心社会の実現(3)世界経済をリードするアジアの新時代-などを挙げた。

日本人の知らない世界?!
自民党総裁選があったのは、昨年9月です。まだ、麻生総理になってから半年もたっていないわけです。アメリカだと、新大統領なってから少なくとも半年間は、新大統領を批判しないことが不文律のようです。それは、半年間くらいは、国政が良くても悪くても、まだ新大統領の影響力によるものとは判断しにくいからだと思います。

日本では、特殊事情はあるとはいえ、麻生総理大臣の施政方針演説の新聞記事、たいていの記事は、その内容を掲載するというよりは、最初から最後まで批判の塊でその合間に麻生総理大臣の演説内容を細切れで出すという具合です。批判するのは結構ですが、まずは、何を言っているのか、きちんと掲載してから、その後で批判を掲載すべきだと思います。このブログに掲載するにあたり麻生総理の演説の趣旨をサイトで探していてつくづく思いました。

オバマ大統領の就任演説の報道とは対象的だと思います。オバマ大統領の演説も、最初から最後まで批判記事を書いて、その合間に、オバマ大統領の演説を細切れで入れるという手法をとれば、無能大統領、馬鹿大統領という観念を植え付けることは出来ると思います。しかし、そのようなことをしたら、報道した側の神経が疑われますね。

実際、私もオバマ大統領の演説に関して納得のいかないこともあります。しかし、私のブログではまずは、就任演説の内容そのまま掲載しています。それが、本来の報道のあり方だと思います。私は日本のマスコミや一部のブログなどの書き方などをみていると、いわゆる「麻生総理大臣」などの大物をコテンパンにやっつけることによって快感を感じているのではないかと思い、精神が病んでいる、あるいは幼児性があるのではないかと危惧しています。

それはともかく、演説の中で特に、首相のこだわりを感じさせたテーマが2つありました。1つは小泉政権以来の構造改革路線の転換です。

「官から民へ、といったスローガン…だけでは、あるべき姿は見えない」。首相はこう述べて、政府の役割を今後はより重視する考えをにじませました。

もう1つは消費税だ。「中福祉を目指すならば、中負担が必要です」と、税率引き上げに意欲をのぞかせました。

麻生総理のこだわりは、結局小泉路線の「小さな政府」からの決別だと思います。小さな政府、官から民へだけでは、結局はうまくはいかないことを語っているのだと思います。ある程度の大きな政府もやむをえない、さらに、大きな政府を運営するには、ある程度財源も必要で、消費税の税率引き上げも止む無しというところだと思います。

実は相当前から、日本では公務員の数は、世界的にも少なくなっています。たとえば、郵政民営化などのときに、ニュージーランドの公務員の少なさがいわれて いましたが、その当時でさえ、人口と公務員数の比率を比較してみると比率は日本のほうが、少ないくらいでした。だから、最近はあまりこのことは言われなく なってきています。結局今問題なのは、予算の問題だと思います。

こうした論議の中で、多くの日本人がほとんど理解できていないことがあります。それは、NPO(非営利団体)の活動です。

このブログにも以前掲載したことがあるのですが、欧米では古くからNPOが大きな働きをしています。特にイギリスやアメリカでは、NPOの伝統は古く、60年以上前までは、いわゆる社会福祉という分野の仕事は、ほとんどがNPOによって行われてきました。これらの国ではノーブリーズ・オブリジェという考え方があり、「富むものは貧しいものに寄付などするのは当たり前」という考えかだがあり、これらのNPOは寄付金や、政府から補助金などでかなり大きな仕事を実行していました。

しかし、ソビエト連邦が建国され、ソビエトが大きな政府により、「国民生活」のほとんどすべてを政府が面倒を見るとして、特に社会福祉・保証の充実ぶりを世界に向かってアピールをしました。現実には、そのようなことは不可能で、すでに1950年代には、ほころびが見られました。その当時アメリカの経済学者が、ソビエト連邦の経済を調べて、「投入=算出」という恐るべき単純さを見出し、その崩壊を予測していましたが、その当時は日の目を見ることはありませんでした。

しかし、ソビエト連邦の「大きな政府」による充実した「社会福祉・保障」体制のアピールに脅威を感じた西欧諸国は次々と、社会福祉・保障を充実させるため「大きな政府」を目指しました。そうして、実際にその方向に動いてきました。そのため、イギリスやアメリカなどでも、従来NPOが実施してたような業務まで、政府がやることとなり、NPOはかなり縮小されました。それこそ、現在の日本と同じようなレベルにまで縮小されました。それでもアメリカでは「年金基金」だけは、政府ではなくNPOが実施していましたが、その他はほとんど政府がやるようになり、かなり縮小しました。

その結果どういうことになったかは皆さん良くご存知だと思います。まず、ソビエト連邦は崩壊しました。大きな政府で、充実した社会福祉・保障を目指した他の国々でも、社会福祉政策は失敗しました。

ソビエト連邦が崩壊した後から、西欧諸国でも、いわゆる「大きな政府」はよくないということで、今度は小さな政府を目指すことになりました。レーガンやサッチャーの政策です。しかし、小さな政府だけではいろろいな問題が発生したことも事実です。

ここでは、詳細は省きますが、いろいろ紆余曲折があり、ブレアーの時代には、NPOの業務を拡大しました、法律に明確にNPOの位置づけを明記し、いわゆる「働くための福祉」として、就労するための社会福祉政策などで大成功を収めました。

アメリカでも似たような状況にあり、NPOは大きな役割を担うようになりました。特にアメリカのNPOは日本では考えられないほどの、資金や実行力を持ち、かなり大きな役割を担うまでに成長しました。アメリカでは、おびただしい数のNPOがあり、その年間の歳入は、アメリカの国家予算に匹敵します。1990年台には、アメリカのデトロイトでは、NPOタワーができあがり、その中に数十のNPOの事務所があり、様々な活動をしていました。その中には、デトロイトの都市計画を実行するものもあり、低所得者用住宅の提供も行い大成功を収めていました。

しかし、ここ十年間は特に、経済というキーワードが幅を利かせ、経済的にも良い時代にあたったからでしょうか、あまりNPOの働きはパッととしませんでしたが、それなりの活動をしていたのは確かです。

では、なぜ大きな政府が失敗して、NPOではそれなりにうまくいったのでしょう。社会福祉・保障の問題は、非常に難しい問題で、個々人によってそのニーズはかなり違います。ところが、政府による施策は大部分全国一律の対応しかできません。だから、政府がこれらの問題を扱うということになると、個々の人々のニーズは切り捨てて、平均的な人々に対する対応だけにならざるをえません。そうすると、必要もない人に無駄なことが発生したり、さらには、本当に必要な人には何も当たらないということが起こってしまいます。これは、ある程度仕方のないことです。政府による直接救済など、世界の先進国の中で、信じているのは最早日本人だけかもしれません。

西欧諸国では、本来、政府は基盤(いわゆるインフラ)を整備するが仕事であって、その基盤の上にのって仕事をするのは、民間営利企業ならび、民間非営利企業(NPO)だったのです。民間企業であれば、人々のニーズに適合して、様々な事業が展開できます。営利企業の場合は、利益という指標に基づき、行動するので、どうしても活動範囲は限られてしまいます。しかし、非営利企業は、利益ではなく、その使命に基づき活動するため、利益という経済指標に縛られることなく、多くの社会問題に対応し社会事業を展開することができます。そうして、その使命を遂行することにより、寄付金や補助金を得られ、事業を継続することができます。

ただし、日本では、営利企業はそれなりに大きくなり、おきな事業展開もできますが、非営利企業はまだ脆弱です。だから、日本には、社会問題を解決するセクターは残念ながら今のところ、政府しかありません。NPOは現状では、補完的存在でしかありません。

実は、小泉政権の時代に、いろいろNPOについて取り組みをした形跡があります。やはり、小さな政府だけにしてしまっては、うまくはいかないと思っていたのだと思います。しかし、結局はたいした成果もなく終わっています。そのつけが、現在の格差社会などとして跳ね返ってきているのだと思います。

今後、日本の社会を旨く運営していくためには、やはり日本にも西欧型近代非営利組織(NPO)が必要だと思います。小さな政府だけでは、確かに麻生総理のいうように、うまくはいかなです。しかし、だからといって「大きな政府」も失敗することは確かです。ここで、政府とNPOが二人三脚でうまくやっていく仕組みを本格的に導入する時期に来ていると思います。

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7 件のコメント:

湯煙 さんのコメント...

コメントありがとうございます

湯煙の中の一杯です。

 貴エントリの内容賛同いたします。

 NPO活動を活発にするためには、NPOへの寄付金に対する免税もしくは減税が必要であるとともに、NPO活動資金に対する免税もしくは減税が必要だと考えます。

 NPOについては聞きかじりに過ぎないので、詳しくはわからないので、これから勉強しますが、貴エントリで仰るところの「法律に明確にNPOの位置づけを明記し、いわゆる「働くための福祉」として、就労するための社会福祉政策」はとても興味深いものとして考えます。

 日本のマスコミに関して言えば、末期症状ですね。商業主義に陥り、ジャーナリズムと呼べるものはほぼ失われてしまったのではないか?と感じます。これからは当エントリのように、1次ソースを挙げ、それを元に情報を判断する姿勢が求められるのだと考えます。

 最後に、貴ブログがこれからも益々意義有るエントリに溢れますよう願っています。

匿名 さんのコメント...

早速来ました(^-^)/

まっすぐで前向きな気持ちと、熱い思いを感じました(^-^)

NPO活動に結びつけている切り口が面白いですね。

山田 豊 さんのコメント...

seiji様 コメント有難うございます。日本は、経済大国になるまでは、追いつけ追い越せで頑張ったのですが、経済大国になってしまってからは、目標を見失っているような気がしてなりません。

経済だけでは、人は幸せになれません。やはり、社会問題を解決するためのセクターとして、日本でも強力なNPOを育てていく必要があります。この面では、日本は、西欧から比較してまだまだ遅れています。こちらの方面で、追いつけ追い越せをしていく必要があると思います。

山田 豊 さんのコメント...

TAE様 コメント有難うございます。私は、かねてから日本でも、有力なNPOを育てていくべきだと思っていました。

匿名 さんのコメント...

コメントありがとうございました。

NPOって重要なんですねぇ。日本ではNPO
とかNGOっていうとあやしい団体も結構いるようなので、ついつい疑ってしまうのですが・・・。

それにしてもマスコミの偏向報道ぶりは
あまりにもひどいですよね。おかげであまり
テレビを見る気になれません。

山田 豊 さんのコメント...

アメリカのNPOにも怪しいのがあります。それは、シーシェパードなどの環境保護団体です。まあ、アメリカは民主主義国家であり、自由主義の立場をとる国ですから、法律を満たしていて、寄付金などでキチンと成り立つ組織は、潰すわけにもいかないですから。
逆に言うと、シーシェパードを支援している会社や個人がいるから成り立っているということです。
いずれにせよ、日本の場合、税制など改革して、NPOに寄付するとかなり税制面で優遇されるなどの措置をとって、もっとNPOがたくさんできやすい基盤を形成して欲しいものです。さらには、現在独立行政法人がやっている業務をNPOに委託するようにすれば、1/10の予算と、1/10の機関でできるようになると思います。いずれにせよ、日本では、NPOに力をいれて、社会保障・福祉的な社会事業をもつとたくさん輩出するように、仕向けるべきだと思います。

匿名 さんのコメント...

コメントありがとうございます。
クラップです。
政府とNPOの関係、大変よく分かりました。私も以前は、小さな政府ということに特に疑問を持ってはいませんでしたが、今回の経済危機が起きたことで、やはりある程度の規模は必要なのかなとは感じていました。
ただ、大きくすればいいのでなく、適切な場所に適切なものをという発想が必要なのですね。

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