2012年7月12日木曜日

孫社長の「iPhone・iPadを持っていない人は人生を悔い改めて頂きたい」に批判殺到! ネットユーザー「マジ勘弁」「iPad捨てたくなった」―【私の論評】iPhoneもiPadもツールに過ぎない。ドラッカーなら、最近のガジエットについてこう認識したに違いない!!

孫社長の「iPhone・iPadを持っていない人は人生を悔い改めて頂きたい」に批判殺到! ネットユーザー「マジ勘弁」「iPad捨てたくなった」:

孫社長の「iPhone・iPadを持っていない人は人生を悔い改めて頂きたい」に批判殺到! ネットユーザー「マジ勘弁」「iPad捨てたくなった」

2012年7月11日、大手携帯通信会社のソフトバンクは法人向けイベント「SoftBank World 2012」を開催した。そのなかで、孫正義社長は基調講演冒頭で「iPhoneもiPadを持っていない方は、今日から人生を悔い改めて頂きたい」と、やや過激な発言を行ったのである。このことについてネットユーザーからは批判が殺到。「マジで勘弁して欲しい」や「言われる筋合いはない」などのコメントが続出している。


孫社長は基調講演のはじめに、来場者にiPhone(もしくはスマホ)とiPadを所有しているかどうかについて尋ねた。挙手を募ってその反応をうかがったのだが、その後に次のように発言したのである。



「iPhoneもiPadを持っていない方は、今日から人生を悔い改めて頂きたい。すでに時代から取残されておる」(Ustream基調講演より引用)



孫社長は現代のビジネスパーソンにとって、これらは必需品であり、このふたつをなくしてより良い仕事はできないと訴えたかったようだ。また職場を「戦場(戦)」にたとえ、iPhoneを小刀、iPadを大刀として戦わなければならないと説明している。これに対して、ネットユーザーは次のように反応している。

「どっちもSoftBankの作ったもんでもなんでもないんだよね~ (笑)」
「どうしてもこの人を信用できない」
「流石に悔い改めるのは極端だと思う」
「ソフトバンクが扱ってなきゃ買う」
「髪と電波が薄い人」
「マジ勘弁して欲しいわ」
「これ見てiPad捨てたくなった」
「なんだそりゃ」
「持っていないのは御社が扱ってるから」
「悔い改めよなんて言われる筋合いはない」
「iPhoneもiPadもやめちゃった私はどうしたら(苦笑)」
「禿げ社長 そりゃ言い過ぎ」
「入力する側の仕事だとあまり役に立たないす」

……など。孫社長は冗談でこの発言をしたようなのだが、言葉だけがひとり歩きをして、そのときの様子がうまく伝わらなかったようである。なお、孫社長自身はこのふたつを、24時間手の届く範囲に置いているそうだ。トイレはもちろんのこと、お風呂に入って頭を洗うときも手の届く範囲に置いているに違いない。さすがは孫社長、排便のときでさえも情報武装を解くことはないはずである。
参照元:Ustream 「SoftBank World 2012 基調講演」


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【私の論評】iPhoneもiPadもツールに過ぎない。ドラッカーなら、最近のガジエットについてこう認識したに違いない!!

上の孫氏の発言「iPhoneもiPadを」ではなくて、「スマホもタブレットを」ならまだ理解できるかもしれませんが、この発言では、自分で売っている商品を買わない人はすでに時代に取り残されていると言っているようで、やはり、しっくりきません。

iPhoneやiPadは、単なる情報端末であり、ツールに過ぎません。ツールの新しいものを持たなければ、仕事ができない、過去の人などとは言えないと思います。たとえば、あの経営学の大家、ドラッカー氏は、ITや、eコマースなどに関する、素晴らしい論考を残しましたが、彼自身は、なくなる直前まで、執筆には、タイプライターとフアックスを用いていました。書籍の内容は、タイプして、それを編集者にフアックスで送っていました。彼のような偉大な人ですから、どうしても、パソコンが必要なら、パソコンで仕事をしていたはずです。しかし、スマホや、タブレットなど、確かにツールの大変革ですから、生きていたら何か語ったに違いありません。


ドラッカー氏
ドラッカーが生きていた時代には、すでに、パソコンは、現代のものと変わらないほど普及していました。ただし、iPhone、iPadはまだ世の中に存在していませんでした、彼が生きていたとしたら、これに対してどのうよな発言をしていたでしょうか?これらについて、特に何か特別な発言をするようなことはなかったと思います。

ドラッカー氏は、情報に関しては以下のような発言をしています。
CEOだけではなく関係者全員が情報責任を果たす必要がある、すなわち、事業担当役員から中間管理職、現場の社員までが、各自にとって必要な情報を考え、企業全体で情報を活用する仕組みを確立できるように、それぞれが情報責任を果たさなくてはならない。
情報責任を果たすために必要な能力を「情報リテラシー」と呼びます。「CEOの情報責任」に関する指摘は「コンピュータ・リテラシーから情報リテラシーへ」という論文に出てきます。同論文は、2002年に出版された『ネクスト・ソサエティ』(上田惇生訳、ダイヤモンド社刊)に収録されています。


時代の変化とともに、われわれ自身が変化しなければならない。読み書きと掛け算に毛の生えた程度の最低限のコンピュータ・リテラシーから、情報を使ってものごとをなしとげるという情報リテラシーの域に達しなければならない。それは面白く価値のある挑戦である。
コンピュータ・リテラシーと情報リテラシーとはまったく異なります。コンピュータ・リテラシーとは、コンピュータを操作し、使う能力です。一番分かりやすいのは、パソコンの操作に習熟することでしょう。また、最近あまり見かけないが、ITリテラシーという言葉もあります。ITはインフォメーション・テクロジーの略ですから、ITリテラシーはコンピュータ・リテラシーに近いといえます。

一頃、電子メールを愛用している経営者を、情報リテラシーが高いとするかのような報道がメディアでなされました。しかし、本当に重要なことは電子メールで得た情報をどう使っているかです。経営者には情報を使ってしかるべき意思決定ができる能力が求められます。それがすなわち情報リテラシーです。つまりITの「T」についてだけではなく、「I」に関するリテラシーを高めなければならないのです。



極端なことを言えば、情報リテラシーとコンピュータ・リテラシーには関係はありません。コンピュータを操作できなくても、情報を使って意思決定を下すことは可能だからです。そもそもコンピュータから出てくるものだけが情報とは限りません。経営者はコンピュータが出す計算結果を見るかたわらで、時間を見つけては現場に行き、生の情報に触れる必要があります。

とはいえ、ドラッカー氏は「コンピュータ・リテラシーをもたないならば、社員からの敬意を期待してはならない。彼らにとっては日常のことである」とも書いています。コンピュータの操作は当たり前として、さらにその次のステージに向かうべき、ということです。
われわれの眼前に膨大な仕事が横たわっている。第一に、情報に通暁しなければならない。そのためには、一人ひとりが情報リテラシーを習得する必要がある。(中略)情報を仕事の道具として見なければならない。(中略)第二に、外部で起こっていることを理解するために、その情報リテラシーを実際に使わなければならない。
しかし「情報に通暁」しようとしても、情報は社内外に無限にあります。しかも、その大半は整理されていません。どのような情報にどのようにして通暁すれば成果を挙げられるのでしょうか。ドラッカー氏は他の論文で、経営に必要な情報について詳しく論じています。

 「技術が変化していることは、誰もが知っている。市場がグローバルになったことや、労働力や人口の構造が変化していることも知っている。しかし、流通チャネルが変化していることについてはまだ認識が甘い」(『未来企業』)
あらゆる組織が、世のため人のために存在する。すべて組織は、世の中や人が必要とするものを生み出し、届ける。だからドラッカーは、組織としての企業の目的は“顧客の創造”だといいます。


バブル期の騒乱
じつは、この当然のことが当然でなくなるのが好況期であり、バブル期です。あえて世のため人のためを考えずとも、流れに乗ることによって、事業が成り立ちます。

だから不祥事も起こります。世のため人のためでないビジネスモデルまで生まれます。目的が顧客でなくなり、利益になってしまいます。

ところが不況期となれば、原点に帰らざるをえません。わが社のミッションとすべきは何か、顧客は誰か、顧客にとっての価値は何かを根本から考えざるをえません。そしてそのとき、市場の構造と流通チャネルが急激に変化しつつあることに愕然とするのです。愕然とすれば不幸中の幸いです。多くの場合は、手遅れになるまで気がつかつきません。ドラッカーは、盲点は流通チャネルの変化にあると言いいます。役員室で報告を待っていたのでは変化はわかりません。自ら出かけていって体感しなければならないのです。歴史に名を残す経営者は皆、外をほっつき歩いていました。

アルフレッド・P・スローン
80年前に、GMを世界一のモノづくり企業に育てたアルフレッド・P・スローンは、数ヵ月に一度は一週間ほどディーラーめぐりをし、セールスマンの真似事をしていた。マクドナルドを生んだレイ・クロックも、町へ出ては自分の店を外から見ていた。
レイ・クロック
しかも、不況期こそ、顧客に出会い、教えを請う好機です。
 「私がトップ経営者たちに対し、歩き回ること、すなわち、役員室を出て、部下の所で話をすべきことを助言してからすでに久しい。しかし今では、それは間違った助言になってしまった。社内ばかりを歩き回れば、間違った安心感に陥る。知らされたことは、部下が知らせようとしたものにすぎないにも関わらず、情報を手にしているものと思い込む。今では、外を歩き回れが、正しい助言である」
さて、ここまで書くと、上の孫氏の言っていることがどれだけ愚かしいことかお分かりになると思います。外を歩きまわることなく、iPhoneや、iPadだけ使っていたとしても何にもないのです。まずは、上記のように、情報リテラシーを身につけること、さらに、外を歩きまわることが必要なのです。


ただし、情報リテラシーを身につけた人が、iPhoneやiPadを外を歩くときに、携行することにはそれなりに意義があると思います。なにせ、タイプライターを持って歩いても、外を歩いて、情報を集めることはできませんが、これらのガジェットは、手軽に写真や動画がとれるのは無論のこと、さらに、位置情報も取得できますし、その時に感じたことをメモしたり、さらに、音声メモもとれます。今や、それをクラウドにたくわえておけば、ガジエットだけでなく、どこに設置してあるPCからも、それらを閲覧し加工し、レポートにまとめることができます。さらに、レポートでまとめるための、資料集めも容易です。

本当に孫氏が主張したかったことは、こういうことなのではないでしょうか?だとすれば、とんでもない舌足らずです。あるいは、そもそもこんなことは頭にない、上の発言なのでしょうか。だとすれば、ただの愚かなセールスマンです。みなさんは、どちらであると考えますか?

それから、ドラッカー氏が生きていたとして、最近のスマホや、タブレットについてどのように語ったか、その語り口を真似ながら以下に掲載してみます。
私は以前ITについて、語ったことがあるが、最近また付け加えなければならないことが起こりつつある。インターネットが使えるようになってから、われわれは初めて、いわゆる企業の内部だけではなく、外の情報を得られるようになった。これによって、eコマースが勃興した。ITは、鉄道が価値観を変えたように、人々の空間や時間に関する様々な価値観を変えた。
さて、最近また、ITにも変化が現れつつある、スマートフォンやタブレット端末などいわゆるガジエットが、GPSにより、位置を認識しはじめたことだ。これによって、これらのガジエットに蓄えられる情報には、位置情報が付加されるようになった。さらに、これらは、ガジエットに蓄えられるだけではなく、クラウドに蓄積されるようになった。このクラウドによって、即座に同期と他者との共有ができるようになった。
私は、以前経営者は、外を歩き回るべきとアドバイスしたが、現在ではもう一つ付け加えるべきである。外を歩き回るには、このようなガジエットを携行すべきであることを・・・・・。 
そうして、このガジェットでは、多くの人々によって、ライフログがとられている。これらガジエットによれば、文書だけではなく、画像、動画などのログをとっておくことが、可能である。
これらによって、私が以前から主張している、多くのマネジャーが計画から入るのではなく、自らの時間が何につかわれているかを知ることから初めよということが容易に、しかも正確にできるようになった。ITは、こうして、さらに時間と空間を拡張することに貢献するようになった。
これによって、いずれeコマースにも大きな変化がおこるだろう。これらのガジェットを持つ顧客にとっては、物理的な店でも、eコマースによってもこれらガジエットで決済できることになる。いずれ、キャッシュレジスターが姿を消すことになるかもしれない」。


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