2012年7月16日月曜日

なぜ効率ばかり追求すると利益が減るのか (プレジデント) ―【私の論評】変人を揃えることではなく、成果をいかにあげさせるかが本質なのだ!!

なぜ効率ばかり追求すると利益が減るのか (プレジデント):


なぜ日本の会社はiPadを作れなかったか  いま、企業が成功を収めようと思ったら、アップルのiPadのように極めて革新性の強い商品を作り出すか、リッツ・カールトンのように突出したサービスを提供するか、ふたつにひとつしかない。 ところが、日本の会社の多くは、どちらもできずに伸び悩んでいる状況だ。なぜ、そうなってしまったのかといえば、ひとことで言って、効率を追求しすぎたということだろう。 たとえば、私の専門分野である編集の仕事を例にとると、編集者の多くはあまりにも多忙な日々を送・・・・・・・・・。

ザッポスの社内
この記事の続きは、以下のURLから。

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20120715-00010000-president-nb


【私の論評】変人を揃えることではなく、成果をいかにあげさせるかが本質なのだ!!

上の記事、読まれて皆さんはどう思われましたか。新鮮に感じられましたか?私自身は、あげている事例は最新のものであるため、非常にわかりやすく、その部分では新鮮に感じるのですが、この方が主張していること自体は、新鮮ではありません。それどころか、多くの人が勘違いしてしまうのでないかと思います。しかし、これに類したようなことは、すでに、多くの人たちに昔から知られていおり、特に、ドラッカー氏が「マネジメン」という書籍を出してから、かなり広く広まったことです。そうして、ドラッカー氏は、上の著者のように読む人を惑わせることなく、的確に論考を展開していました。
晩年のドラッカー氏
マネジメントには、以下のようなことが掲載されています。
「効率とは仕事の仕方であり、成果とは仕事の適切さである」。
業務を効率化するツールは山ほどあり日々進化しています。特にIT関連などはそうです。ところが成果を出すということは、人間的な要因でによるものなので、それを飛躍的に増す画期的なツールがあるわけではありません。このことは、ITが発達した今でも、200年前もあまり変わっていません。

もちろんITは日進月歩で進化していますが、成果をあげる直接的なツールではありません。こんなことは、5歳児パソコンを与えただけで、何か仕事をして、成果をあげられるのかを考えてみれば良く理解できることです。


それに、最近ITなどは、随分進歩はしましたが、私は、マイクロソフトのオフィスによる弊害はかなり大きいものと思っています。オフィスは、事務員のためのツールです。これは、おそらく、当初パソコンの性能が悪いため、その性能にあわせてできるのは、事務処理くらいなものであったため、パソコンに標準に搭載されるようになったのだと思います。成果をあげるべきものが、オフィスで四六時中計算や文書作成して資料を作っていても成果はあげられないはずです。無論最近ては、SNSはあるし、ビデオチャットなどもありますから、日がな一日パソコンに向かっているからといって、オフィスで事務作業ばかりしているとは限りませんが、基本的には同じことと思います。

これは、成果をあげる責任のない人々、いわゆる、昔でいえば、事務員といわれる人々が使用すべきものです。成果を上げるべき人間が、日がな一日、オフィスなどいじっていても、それだけでは、何ら成果に結びつきません。


さらに、ドラッカーは、『明日を支配するもの』の中で以下のようなことを語っています。

「今日のところ、ITは、トップ経営陣に対し、情報ではなくデータを供給するにすぎない。新しい問題意識や新しい経営戦略を与えるにはいたっていない。」

この書籍も、さきほどのマネジメントも、前世紀に書かれたものであり、書かれてから随分時がたっていますが、基本的には、今も十分にあてはまる事実です。

であれば、成果とは、ツールで劇的に改善するものではないだけに、多くの人は、比較的簡単に効果が出る効率化を考える方に流されやすいということになります。

その結果、マネジメントにかぎらず、様々な書籍でドラッカー氏が述べているように以下のようなことになってしまいがちなのです。

「無駄な仕事を見事に設計するという結果になりかねない」。

これは、たとえば、「売れない精緻な企画をたてる、マーケティング事業部」、「売れない店舗を精緻に設計する店舗設計部門」を思い浮かべていただければ、よくお分かりになると思います。


そうして、効率とは仕事の仕方であるということは、仕事の仕方を担当するのは会社でいえば、スタッフ部門ということになります。

トップマネジメントが必要以上に効率化にのみ没頭するとマネジメントの地位にある者が効率性重視のあまり、自分の本来の仕事は、放り投げて、スタッフ部門の仕事をすることになってしまいます。つまりマネジメントの不在ということになってしまいます。

効率性の追求が生んだとされる長距離バスの大事故
そうなってしまうと最悪の結果になってしまいます。ドラッカーは、創造する経営者で以下のように述べています。
「新たに設立される企業一〇〇社のうちほぼ七五社が、マネジメントの失敗を主たる原因として五年以内に倒産している。」
考えてみれば、効率化の失敗で倒産したという話は聞いたことがありません。企業は、効率化の失敗ではなくマネジメントの失敗によって倒産するということです。

さて、こんなことから、効率性ばかり追求すると、利益が減るかは、当然の成り行きであることがお分かりになると思います。

しかしながら、こんな当たり前のことが、効率性ばかり考えると、忘れされてしまいがちなのです。それは、上の記事を読んでいただければ、良くわかると思います。

そうして、このような効率性の罠から逃れるため、ドラッカーは以下のように語っています。
「知識労働者の生産性と、知識労働者の自己実現をいかに測定するかはわからない。しかしわれわれは、この二つを向上させるための方法については、かなりのことを知っている」(『実践する経営者』)
ドラッカーは、4つの秘訣を教えています。
第1に、知識労働者自身に責任を持たせなければならない。「報酬にふさわしいどのような貢献を行なっているか」を問わなければならない。 
第2に、知識労働者が自らの貢献を評価できるようにしなければならない。「会社を変えるどのような貢献を行なったか。会社を変えるどのような貢献を行なうべきか」。 
第3に、知識労働者に本来の仕事をさせなければならない。さもなければ、どのような動機づけをされようと燃えようがない。今日のセールスマンは、書類づくりに時間をとられ、セールスができないでいる。 
第4に、機会に対しては、それを成果に変えることのできる有能な人材を配置しなければならない。「成果を上げるのは誰か。彼らに今何を割り当てているか。成果が上がるところに配置しているか」が問題である。 
 「知識労働者の生産性を上げられなければ、インフレ圧力という経済的なストレスと、疎外という社会的な病いが生まれる。われわれは知識労働者の生産性も自己実現度も測定できない。だがどのようにすれば生産性を高め、自己実現させられるかは知っている」(『実践する経営者』)
さて、こうしたことを知ると、上の記事著者の方が、以下のように語っているのは、間違いであることがわかります。
革新的な商品やサービスを生み出せるのは、従来型のエリートではない。むしろ、いわゆる職場の「異端児」だ。 
1日中イヤホンを耳に突っ込んで音楽を聴いている奴。いつも外回りと称して社外をうろついてばかりいる奴。仕事はろくにしないのにフェイスブックの友達の数が異様に多い奴。社内ではぱっとしないのに社外では有名な奴……。こんないささか怪しげな連中こそ、実は、斬新な商品やサービスを生み出す可能性を秘めている。もちろん、結果的には単なるダメ社員で終わるかもしれないが、少なくともルーティンの仕事を効率的にこなすだけの優等生よりも、将来会社に大きなメリットを与える可能性は秘めている。
一見、社業と無関係な突飛なことを考えつく変人社員を抱え続けることができるかどうか。企業の未来は、その「ムダ」にかかっている。

このようなことは、本質的なことではなく、上の4つの秘訣が本質なのです。無論、上の4つの秘訣を強力に推進して気づいてみたら、従来型サラリーマンのような人はいなくなって、いつの間にか、変人社員が増えたり、ごく普通の人たちが、他から見ると変人に見えるようになっていたなどということは多いにあり得ると思います。しかし、変人社員を揃えたからといって、それがすぐに、成果に結びつくとは考えられません。上の4つの秘訣を取り入れていなければ、混乱するばかりで、結局全員がダメ社員ということになってしまうかもしれません。くれぐれも、順番を間違えないように。


このような順番違いは、昔から見られることです。たとえば、昔の優秀な政治家など、英雄色を好むなどと言われていて、芸者遊びなどしていましたが、優秀でない人が、芸者遊びを徹底的にやったからといって、優秀な政治家や英雄になれるわけではありません。昔の優秀な政治家など、それなりに、頭も気も相当使ったので、ストレスもかなり溜まって、そのストレスの発散する先が、たまたま、芸者遊びだったと考えるべきでしょう。くれぐれもお間違えのないように!!

たただし、私は異端児を会社に入れるなと主張しているわけではありません。そうではなくて、まずは、上の4つの秘訣を導入すべきであると主張しているのです。その上で、異端児を入れるなら、それはそれで結構なことです。私も、過去に異端児を中途採用して成功した経験があります。ただし、その異端児たちは今は会社にいません。しかし、その時々で、確実に成果をあげてもらうことができました。ただし、異端児であることを最初から承知で会社に入れるのですから、彼らを使うには、猛獣使いにでもなるつもりで、腹をくくらなければならないです。


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