「Knowledge Worker ナレッジワーカー」という言葉は、1959年にピーター・ドラッカーが提唱したものだ。情報に携わり、職場における知識の向上を担う社員を、彼はこう名付けた。現在、あらゆる業務のうち25〜50%は、その業務に従事する者に情報・知識を生み出し、利用し、共有することを求めるようになっている。
さらにクラウドテクノロジーの発展、近年のいわゆる“モバイル革命”によって、仕事のやり方は決定的に変わり、「仕事」を再定義するようわたしたちに迫っている。2012年には、スマートフォン、タブレット、PCのそれぞれの分野で、よりスマートなモバイルデヴァイスが発展したことで、ナレッジワーカーたちは、いつどこでも仕事を遂行することができるようになった。
今日のナレッジワーカーたちは、机に縛られずに仕事をするほうが、はるかに生産性が高いことに気づき始めている。クラウドと接続されたモバイルツールは、これまでの職場のあり方に新しい大きな変革をもたらし始めているのだ。そして、その変革によってわたしたちは、情報をよりよく共有でき、どんな疑問に対しても必要な答えを得ることが可能となり、生産性を最大化することができるようになる。
こうした驚くべき可能性を前に、多くの企業はまだ、これらのテクノロジーを効果的に使うことで、従業員たちによりよく仕事をしてもらう最適な方法を見出せずにいる。だがそんな状況を後目に、この2013年、わたしたちはクラウドベースのアプリやスマートモビリティの進化によって、目を見張るような新しいトレンドを目にすることになるだろう。今年、あなたの職場で起こりうる変革をいくつか予測してみよう。
モバイルと仕事、4つのトレンド
1. BYOD(Bring Your Own Device=自分のデヴァイスを持ってこい)の一般化によって情報インフラの充実
ナレッジワーカーは、必要とあらばいつでもどこでも業務を遂行するために、ますますモバイルデヴァイスに依存することになる。世代を問うことなく、あらゆる働き手が共通のモバイルテクノロジーを手にすることで、今年はそれらをサポートし、より効率よく仕事に適合させるためのインフラが整備されていくことだろう。
2. ノンルーティン・ワーカーが増加
リサーチ会社のガートナーの予測によれば、仕事のやり方は今後変わっていき、2014年には、企業における業務の40%は“ノンルーティン”なものになるという。10年において、この数字は25%だった。DCM(Dynamic Case Management)といった技術の採用によって、社員は、ビジネスルールやマイルストーンに従って自分自身で判断を下すことができるようになる。フォレスター・リサーチの調べによれば、より素早く市場に商品を投下するソリューションを提供するDCMの市場は、14年には180億ドルに達すると見られている。刻一刻と変化する市場動向に対応し、柔軟性と速度を社員に促すBYODを採用することによって、企業は今後、ノンルーティンの社員によって占められていくことになる。
3. エンタープライズ・モビリティの加速
エンタープライズ・モビリティ(企業業務のモバイル化)がもたらす恩恵のひとつはスピードである。それは今後ますます必要なものとなっていくことだろう。社員たちはすでにコンシューマー向けサーヴィスを業務に適応させることで、かつてないアジリティを実現しているが、企業はこうした傾向に早々に追いつく必要がある。いつでもどこでも働くことができる環境をつくることは、結果としてITコストを削減し、業務にフレキシビリティと効率化をもたらすだろう。
4. ワーカー・アプリの開発
エンタープライズ・モビリティとBYODが当たり前のものとなっていくにつれ、テック業界はより効率的な業務遂行を実現するためのアプリの開発に乗り出していくことになるだろう。さまざまなアプリがナレッジワーカーたちに向けて紹介されていくことになるだろうが、それらが充実していくことによって、スマホやタブレットを通じて、より複雑で込み入った業務すら、いつでもどこでも遂行することが可能になるはずだ。
【私の論評】インフレ圧力が高まるこれからの日本では、ナレッジワーカーの生産性を高めなければならない!!そのためには、独自の条件があり、その条件を満たさなければ何を導入しても生産性は向上できない!!
P.F ドラッカー |
上の記事素晴らしいです。しかし、一つ物足りないところがありました。上の記事ではあくまでも道具のことばかり述べています。確かに道具が優れたものになれば、仕事のやり方など随分変わってくるものです。
私の仕事のやりかも、最近道具によって変わってきたとろがあります。たとえば、iPhoneで現場で写真を撮影し、さらに、メモをとるということです。特にメモに関してフリック入力でかなり速く入力できるようになりました。これは、従来では考えられなかったことです。やはり、パソコンのキーボードでの入力が一番はやいですが、それにしても、現場ではなかなかキーボードは使えません。かといって、従来の携帯電話ではあまりに入力に時間がかかりすぎです。そこでフリック入力です。これは、メモには最適です。そうして、メモという用途に使っている限りは素晴らしいです。そうして、メモや写真は、現場で撮影したり書いたものをiCloudですぐに、iPadやパソコンでも見られます。
出張などに出ていれば、iPhoneの写真や、メモをもとにして、iPadにキーボードをつけたもので、報告書を書いてしまいます。出張から戻れば、こんど同じものをパソコンで見て、それにさら、何らかの付加などするなりして、最終的にレポートにまとめるという具合です。これは、本当にスムーズにできます。あまり場所を選びません。会社の自分の机であろうが、旅先であろうが、自宅のテーブルであろうが、iPnone、iPad、ノートパソコンがあれば、そこがすぐに仕事場になります。こんな環境で、さらに優れたアプリがあれば、さらら仕事の環境は確かに良くなると重います。
しかし、道具がいくら素晴らしくても、生産性が高まるとは限りません。そもそも、生産性と効率とは別なものだからです。効率とは、所定の作業をなるべく短い時間で行うことです。しかし、生産性は所定の作業をなるべく短い時間で行ったからといって、必ずしも高まるとは限りません。無駄な作業をいくら短時間にやったからといって、成果に結びついていなければ、生産性はあがりません。
ドラッカーもこれについては、「必要のない設計図を時間をかけて精緻で素晴らしいものに仕上げる設計部門ほど虚しいものはない」という事例をあげています。いくら素晴らしい切れ味の包丁を持ったからといって、凄腕の料理人になれるとは限りません。
上の記事でも記載のあったドラッカー氏は、知識労働者の生産性を高める4つの条件をあげています。これが本質であって、道具はあくまで道具にすぎません。
知識労働者の生産性を上げる4つの条件
「知識労働者の生産性と、知識労働者の自己実現をいかに測定するかはわからない。しかしわれわれは、この二つを向上させるための方法については、かなりのことを知っている」(『実践する経営者』)
ドラッカーは、4つの秘訣を教えています。
第1に、知識労働者自身に責任を持たせなければならない。「報酬にふさわしいどのような貢献を行なっているか」を問わなければならない。
第2に、知識労働者が自らの貢献を評価できるようにしなければならない。「会社を変えるどのような貢献を行なったか。会社を変えるどのような貢献を行なうべきか」。
第3に、知識労働者に本来の仕事をさせなければならない。さもなければ、どのような動機づけをされようと燃えようがない。今日のセールスマンは、書類づくりに時間をとられ、セールスができないでいる。
第4に、機会に対しては、それを成果に変えることのできる有能な人材を配置しなければならない。「成果を上げるのは誰か。彼らに今何を割り当てているか。成果が上がるところに配置しているか」が問題である。
「知識労働者の生産性を上げられなければ、インフレ圧力という経済的なストレスと、疎外という社会的な病いが生まれる。われわれは知識労働者の生産性も自己実現度も測定できない。だがどのようにすれば生産性を高め、自己実現させられるかは知っている」(『実践する経営者』)この四つの条件が満たされないところで、いくらアプリなど充実したとしても、知識労働者の生産性を高めることはできません。それから、私たちは20年もの間デフレだったものですから上記のインフレ圧力の意味がわからなくなっていると思います。ですから、この四つの条件と、インフレ圧力こついて以下に説明します。
第1の条件の責任は特に重要です。知識労働者を責任にもとづき組織することが肝要です。そうして、個々の知識労働者が自分にはできて、他の人は出来ないか不得意の分野で、自分がやれば最高に貢献できるものは何かを考えさせ、実際に貢献できるようにしなければなりません。
第2に、知識労働者自らが貢献を評価できるようにする必要があります。それには、目標、目的などを明確にしておかなければなりません。
第3に、知識労働者に知識労働者に本来の仕事をさせなければなりません。上の例では、セールスマンの例が出されていましたが、たとえば、少し前の病院では、看護師が、患者の看護ではなく、書類作りに追われているということがありました。書類づくりなどに、素晴らしいアプリを用いても、生産性はあがりません。まあ、それでも、書類作成が短縮化されれば副次効果はあるかもしれませんが、メインではありません。
第4の条件では、機会には優秀な人材を割り当てることがいわれていましたが、まさにこの通りです。優秀な人材に過去の問題を解決することばかりやらせていては、成果にはつながりません。
さて、インフレ圧力とは何かといえば、インフレを引き起こす要因が、インフレに推移するように働きかけていること。その働きかけが大きいことを、インフレ圧力が強い、または高いといいます。具体的には、食料品やエネルギーの価格上昇、自動車の値上げ、ドル安などインフレの兆候を示すあらゆる事象がインフレ圧力になり得ます。また、それらの事象が長期化することもインフレ圧力となります。
インフレ圧力を抑制するためには、金利を引き上げることが有効であると考えられています。また、世界同時不況による景気の停滞により、インフレ圧力は一時的に弱まったといわれており、景気の停滞もインフレ圧力を抑制します。ご存知のように、日本はここ20年間デフレだったので、インフレ圧力はありませんでしたが、今後アベノミクスで物価があがりインフレ基調になっていきます。そうなると、インクフレ圧力が高まるわけです。
そうして上の文脈では、インフレ圧力があるときには、自分たちの会社が提供するサービスも値上げをしなければ相対的に経済的に負けてしまいます。しかし、顧客に値上げしても受け入れられるためには、それなりの付加価値をつけていく必要があります。この付加価値がつけられなければ、経済的に負けてしまうわけで、いつも付加価値をつけなければならないというストレスにさらされることになります。このストレスに打ち勝たなければ、経済的に敗北を喫してしまうのです。
このことだと何のことだかわからないと思いますので、もっとわかりやすい事例をあげます。たとえば50年前からあなたが、算盤を売っていたとします。最初は算盤も売れたと思います。しかし、その後どんどん量産されるようになれば、価格は低くなっていくばかりですし、それに向けて何らかの付加価値をつけなければ、売れなくなります。最初は、色、形、材質、デザインでも付加価値をつけて従来と同じ値段か、高い値段で売れるかもしれません。
しかし、その後電卓や、コンピュータまででてくれば、これも通用しなくなります。算盤を売るのをやめて、他のものを売るか電卓や、コンピュータまで手を広げなければ売上は確保できなくなります。特にインフレ圧力があるときには、このようなことを次から次へと実施していかなければなりません。そうでなければ、廃業せざるを得なくなります。
デフレのときには、低価格を極限まで追求するか、とにかく節約をするということで、確かに辛いのですが、体力勝負でなんとか乗り切れることも多かったわけですが、今後インフレになれば、このインフレ圧力が強くなり、知識労働者の真の生産性をあげなければならないわけです。
ですから、以上のような条件が満たされていなければ、いくら良いアプリなどで環境を整えても、成果はなかなかあげられないでしょう。
かといって、私は「BYOD」と「ワーカー・アプリ」を真っ向から否定するものではありません。たとえば、医学の世界では、カテーテルによる心臓手術とか、脳手術、いまだ実用化はされていないものの、iPS細胞の輝かしい将来像などは、ツールがなければ全く実現できないものです。
「BYOD」に関しては、クラウドが前提となった現在とこれからの社会では当然の成り行きだと思います。クラウドであればこそ、個々人が思い思いのツールを使ったとしても、統制はとれるし、個々人にとっては、自分のツールが最も使いやすいわけです。料理人の包丁のようなものです。とにかく、同期と共有は本当に簡単になりました。これは、クラウドを使ってみないと実感できないことです。素晴らしいことです。
「ワーカー・アプリ」については、コミュニケーションを促すという点で素晴らしいです。本当に必要なコミュニケーションを素早くとれるということでは、かなり効果があるものと思います。
結局上であげた、4つの条件が、前提としてあって、そこに、「BYOD」と「ワーカー・アプリ」を導入すれば、かなり効果があがるということてす。4つの条件を無視していれば、何を導入しようと何も変わりません。私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?
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