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2014年1月19日日曜日

日本では若い男性だけでなく企業の経営者まで草食化している―【私の論評】ちょっとまってくれ!経営者が草食系になったのは、20年も続くデフレのせいではないのか?責めるべきは、経営者個々人ではなく、まずは無能な政治家と、その次は狡猾な官僚であるべきだ(゚д゚)!

日本では若い男性だけでなく企業の経営者まで草食化している

草食系男子は若者だけでなく、経営者も?

アベノミクス効果で景気が回復しつつあるというのに、売り上げ高増加に伴い社員の賃金をあげようという機運が日本の経営者には希薄だという。草食化は若い男性だけの問題ではないと大前研一氏が警鐘を鳴らしている。

* * *

2014年春闘では、自動車メーカーの労働組合でつくる自動車総連、大手電機メーカー労組が加盟する電機連合、鉄鋼や造船などの日本基幹産業労働組合連合会(基幹労連)といった主要労組が、5~6年ぶりにベースアップ(ベア)を経営側に統一要求するという。

2013年冬のボーナスは、日本経済新聞の調査によれば、主要34業種のうち26業種で支給額が前年を上回り、全体でも2.55%の増加となった。このため、ベアへの期待が高まり、各労組が統一要求する状況になっているわけで、エコノミストの中には、これまで日本では企業の売上高が増加した半年~1年後に賃金が増加している、などとバラ色の予測をする人もいる。

だが、本当にそうか? 私は、その法則は、もう成り立たないと思う。なぜなら、私が知っている日本企業の経営者の中に、社員にシンパシーを持って「売上高が増加したから賃金を上げてやろう」と考えている人は一人もいないからだ。

昔の経営者は、武田信玄の「人は城、人は石垣、人は堀」という言葉を企業に当てはめて社員を大事にしたものだが、今やそういう発想の経営者はほとんどいなくなった。

日本銀行が昨年12月に発表した2013年7~9月期の資金循環統計(速報)によると、民間非金融法人(事業会社)が抱える現金・預金は、9月末時点で実に224兆円に達し、リーマン・ショック直後の2008年12月末から20四半期連続で増加した。それほど余剰資金があっても、大半の企業は後腐れのない一時金を少し増やすだけで、月給は上げていないのである。

もはや労働分配率(企業が新たに生み出した付加価値のうち人件費に分配された比率。人件費÷付加価値で%表示される)を指標にしている経営者はいないと思う。労組も同様で、かつて日本の労組が純粋なファイティング・スピリットを持っていた頃の賃上げ交渉は非常にきつかった。徹夜の団交や明け方の妥結などが当たり前だった。

しかし、今はもう以前のような厳しい交渉を行なっている労組はほとんどなく、みんな予定調和になっている。本来、現在の企業業績であれば労組側は「余っているカネをすべて吐き出せ」と要求すべきなのに、春闘のベア要求も「1%以上」「月4000円以上」といった気合の入らないものになっている。これでは企業業績に見合った真っ当な賃上げは、望むべくもないだろう。

では、賃上げしないなら投資をしているかといえば、M&Aは増えてきているものの、大規模な投資をしている会社は少ない。普通、これほど余剰資金があったら経営者は積極的に自社株買いや配当、あるいは投資をするものだが、そういう雰囲気は全くない。投資は必要最低限に抑え、それもできれば海外で、という会社が大半だ。

要するに日本企業の経営者は、余っているカネをどうしたらよいか、わからないのだ。「失われた20年」の長い不況を経験して“胃袋”が小さくなり、もっと食べて成長したいという欲望がなくなってしまったのである。

日本では若い男性の「草食化」が言われて久しいが、企業の経営者もまさに草食化しているわけだ。

※週刊ポスト2014年1月24日号

【私の論評】ちょっとまってくれ!経営者が草食系になったのは、20年も続くデフレのせいではないのか?責めるべきは、経営者個々人ではなく、まずは無能な政治家と、その次は狡猾な官僚であるべきだ(゚д゚)!



上記のような記事、一見もっともらしくみえるのですが、果たしてこれは真実なのでしょうか?私には、どうしてもそうは、思えないのです。そもそも、上の見方は、ミクロ的すぎます。ミクロの立場のみから、個々の経営者が草食系になったと批判しています。

確かに、個々の経営者をみていけば、そういう人もいるかもしれません。しかし、多くの経営者がそのようになっているという事実をみれば、その根底には何かがあると考えるのが普通であり、それを単に昔の個々の経営者との比較でみるというだけではあまりにバランスに欠けるのではないでしょうか。

ミクロの世界では、企業同士がしばきあうのは、産業を活性化するという意味で良いことなのです、マクロの世界ではそうではないです。マクロ経済で、企業をしばくようなことをしてしまえば、企業はそもそも投資を控えます。それが、経営者総草食化の真実であり、これは個々の経営者を責めても何ら根本的解決にはならず、本当の解決策は、しばきをやめること、すなわちデフレからの脱却です。

確かに、昨年アベノミクスは、効果をあげ、景気を浮揚させたのは間違いありません。しかし、だからといって、これによって、すっかり悪くなった日本の経済が、経済の癌ともいわれるデフレから脱却したといういうわけではありません。病気にたとえれは、癌を患っていた人が、科学療法などの治療を受けて、癌の進行が止まったくらいの水準でしかありません。未だに、癌は存在し、悪さをしていることには変りありません。このまま治療を、続けて癌細胞を少しでも減らすか、できれば手術などして完璧に取りさる必要があり、予断を許さない状況にあることには変りありません。

日本が完璧にデフレになったのは、1998年からであるが、その前からデフレ基調になっていた

こんな状態にあるにもかかわらず、今年の4月からは消費税が、5%から8%に増加されます。こんな状況では、デフレからの脱却は遠のくことになるのは、必定です。今のまま、政府の追加経済対策が5.5兆円レベルで終われば、日本経済は、デフレのまま足踏みするのは明らかです。

週刊誌をはじめとする、マスコミもこのことに目覚めて欲しいです。しかし、今や記者なども、デフレ世代で、デフレが当たり前になってしまい、それを前提にものごとを考えたり、論考を積み上げか、上記のような間違いがおこるのです。そもそも、デフレは、通常の状態ではありません。しかし、残念ながら、日本ではデフレ傾向になってから20年も経過したため、デフレを前提として物事を考える人が増えているのは確です。

しかし、デフレは異常状態であることをもう一度しっかり認識する必要があります。景気というものは、好況、不況を交互に繰り返すものであり、これは当たり前の経済経済現象であり、これを誰も否定することはできません。不況が長引くと、多くの人々は、悲観的になり、この不景気は永遠に続くと思ったりしますが、そんなことはありません。逆に好景気が長引くと、人々は楽観的にそれが普通になり、その好景気は永遠に続くと思い込んだりします。かつて、アメリカでいわれた、ニューエコノミー論などその典型です。

不況のときに、政府や日銀などが、財政政策や、金融政策によって、景気を人為的に良くすることなどできません。政府・日銀ができることは、せいぜい急激に景気が悪化することを防ぎソフト・ランディングができるくらいなものです。

しかし、デフレは違います。あくまで、過去の金融政策、財政政策が悪すぎて、バランスが完璧に崩れて、好況、不況を交互に繰り返す、正常な景気循環から逸脱した貨幣現象です。不景気という状況ではありません。それが、デフレです。これは場合によって時間がかかる場合もありますが、必ず是正することができます。しかし、過去の日銀も、政府も、これにまともに取り組んできませんでした。そんなことが20年続いた後に、ようやっと昨年の4月から日銀が金融緩和をするようになりました。

デフレは、景気循環から逸脱した貨幣現象である

デフレなのに、日銀は金融引き締め策を継続し、政府も財政出動するどころか、緊縮財政ばかりやってきました。そのなれの果てが、失われた20年です。

デフレであれば、企業経営者は、投資をしなくなるのは当然のことです。それ自体は、善でも悪でもありません。デフレがそうせざるを得なくするのです。モノが売れないので、設備投資はしない、人は新たに雇用しない。雇用している人の賃金もあげることもできず、どちらかといば、減少傾向にして、守りの姿勢にはいります。

多くの企業がそのような行動をとるようになるので、ますますデフレは深化します。これは、草食化などというよりも、デフレ対抗手段としてそうせざるを得ないという側面は否定できません。デフレという根本の原因を取り除かない限り、このようなことはさらに続きます。だから、失われた20年といわれる不毛の時代が続いたのです。こんなデフレの最中には、ブラック企業のような企業も多くでてきて、何も良いことはありません。

それから、私はその有力な証拠は見いだせませんが、ひょっとすると、現在の若い男性に、いわゆる草食系が多くみられるのは、それこそ、デフレが原因かもしれません。これは、デフレが収束したときにわかるかもしれません。そのときには、草食系男子は影を潜めて、ギラギラした肉食系男子が跋扈するようになるかもしれません。


本来異常なデフレの真っ最中に、ミクロ的なことをつついて批判しても、水道菅が破裂して、水があふれているときに、水を人力で汲み出して、水道管の破裂という根本原因をなんともしようとしないのと同じです。この場合、水道管の破裂を修理することが根本原因の解決法であり、水を汲み出すばかりでは、結局何も変わりません。

この問題で真っ先に責められるべきは、企業経営者ではなく、このようなデフレになってしまう原因をつくり出した大勢を占める無能な政治家と無能か狡猾な官僚であるべきです。結果として、何かといえば、政府は、緊縮財政を行い、日銀に金融引締めばかりやらせてしまったという失策を是正しない限り何も解決しません。現在は、幸いなことに日銀は金融緩和をしていますから、今度は財政政策を何とかしなければなりません。4月から増税が決まった今は、すみやかに、追加金融緩和措置と、5兆円規模の財政政策ではなく、もっと大胆な財政政策の実行が、必要不可欠です。

そもそも、日本では、様々な社会現象をマクロ的な観点からとらえることができず、ミクロ視線でみてしまうという陥穽に陥る、政治家や官僚も多いですし、デフレになることがわかっていても、国民生活などにはおかまいなしで省益を追求するためだけに、わざとマクロ的な見方をしないか、したとしても、歪曲したり、ミクロ的見方のみのトンデモ説を捏造して流布する狡猾な官僚もいますから、マスコミ界も、そのような陥穽に陥るのは無理もないのかもしません。しかし、マスコミまでが完全にそうなってしまえば、存在価値もなくなるということです。

マスコミ界の方々も、このあたりを見直して、ミクロ現象にとらわれるだけではなく、マクロに目を向け理解し、真実を報道していただきたいものです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2012年7月12日木曜日

孫社長の「iPhone・iPadを持っていない人は人生を悔い改めて頂きたい」に批判殺到! ネットユーザー「マジ勘弁」「iPad捨てたくなった」―【私の論評】iPhoneもiPadもツールに過ぎない。ドラッカーなら、最近のガジエットについてこう認識したに違いない!!

孫社長の「iPhone・iPadを持っていない人は人生を悔い改めて頂きたい」に批判殺到! ネットユーザー「マジ勘弁」「iPad捨てたくなった」:

孫社長の「iPhone・iPadを持っていない人は人生を悔い改めて頂きたい」に批判殺到! ネットユーザー「マジ勘弁」「iPad捨てたくなった」

2012年7月11日、大手携帯通信会社のソフトバンクは法人向けイベント「SoftBank World 2012」を開催した。そのなかで、孫正義社長は基調講演冒頭で「iPhoneもiPadを持っていない方は、今日から人生を悔い改めて頂きたい」と、やや過激な発言を行ったのである。このことについてネットユーザーからは批判が殺到。「マジで勘弁して欲しい」や「言われる筋合いはない」などのコメントが続出している。


孫社長は基調講演のはじめに、来場者にiPhone(もしくはスマホ)とiPadを所有しているかどうかについて尋ねた。挙手を募ってその反応をうかがったのだが、その後に次のように発言したのである。



「iPhoneもiPadを持っていない方は、今日から人生を悔い改めて頂きたい。すでに時代から取残されておる」(Ustream基調講演より引用)



孫社長は現代のビジネスパーソンにとって、これらは必需品であり、このふたつをなくしてより良い仕事はできないと訴えたかったようだ。また職場を「戦場(戦)」にたとえ、iPhoneを小刀、iPadを大刀として戦わなければならないと説明している。これに対して、ネットユーザーは次のように反応している。

「どっちもSoftBankの作ったもんでもなんでもないんだよね~ (笑)」
「どうしてもこの人を信用できない」
「流石に悔い改めるのは極端だと思う」
「ソフトバンクが扱ってなきゃ買う」
「髪と電波が薄い人」
「マジ勘弁して欲しいわ」
「これ見てiPad捨てたくなった」
「なんだそりゃ」
「持っていないのは御社が扱ってるから」
「悔い改めよなんて言われる筋合いはない」
「iPhoneもiPadもやめちゃった私はどうしたら(苦笑)」
「禿げ社長 そりゃ言い過ぎ」
「入力する側の仕事だとあまり役に立たないす」

……など。孫社長は冗談でこの発言をしたようなのだが、言葉だけがひとり歩きをして、そのときの様子がうまく伝わらなかったようである。なお、孫社長自身はこのふたつを、24時間手の届く範囲に置いているそうだ。トイレはもちろんのこと、お風呂に入って頭を洗うときも手の届く範囲に置いているに違いない。さすがは孫社長、排便のときでさえも情報武装を解くことはないはずである。
参照元:Ustream 「SoftBank World 2012 基調講演」


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【私の論評】iPhoneもiPadもツールに過ぎない。ドラッカーなら、最近のガジエットについてこう認識したに違いない!!

上の孫氏の発言「iPhoneもiPadを」ではなくて、「スマホもタブレットを」ならまだ理解できるかもしれませんが、この発言では、自分で売っている商品を買わない人はすでに時代に取り残されていると言っているようで、やはり、しっくりきません。

iPhoneやiPadは、単なる情報端末であり、ツールに過ぎません。ツールの新しいものを持たなければ、仕事ができない、過去の人などとは言えないと思います。たとえば、あの経営学の大家、ドラッカー氏は、ITや、eコマースなどに関する、素晴らしい論考を残しましたが、彼自身は、なくなる直前まで、執筆には、タイプライターとフアックスを用いていました。書籍の内容は、タイプして、それを編集者にフアックスで送っていました。彼のような偉大な人ですから、どうしても、パソコンが必要なら、パソコンで仕事をしていたはずです。しかし、スマホや、タブレットなど、確かにツールの大変革ですから、生きていたら何か語ったに違いありません。


ドラッカー氏
ドラッカーが生きていた時代には、すでに、パソコンは、現代のものと変わらないほど普及していました。ただし、iPhone、iPadはまだ世の中に存在していませんでした、彼が生きていたとしたら、これに対してどのうよな発言をしていたでしょうか?これらについて、特に何か特別な発言をするようなことはなかったと思います。

ドラッカー氏は、情報に関しては以下のような発言をしています。
CEOだけではなく関係者全員が情報責任を果たす必要がある、すなわち、事業担当役員から中間管理職、現場の社員までが、各自にとって必要な情報を考え、企業全体で情報を活用する仕組みを確立できるように、それぞれが情報責任を果たさなくてはならない。
情報責任を果たすために必要な能力を「情報リテラシー」と呼びます。「CEOの情報責任」に関する指摘は「コンピュータ・リテラシーから情報リテラシーへ」という論文に出てきます。同論文は、2002年に出版された『ネクスト・ソサエティ』(上田惇生訳、ダイヤモンド社刊)に収録されています。


時代の変化とともに、われわれ自身が変化しなければならない。読み書きと掛け算に毛の生えた程度の最低限のコンピュータ・リテラシーから、情報を使ってものごとをなしとげるという情報リテラシーの域に達しなければならない。それは面白く価値のある挑戦である。
コンピュータ・リテラシーと情報リテラシーとはまったく異なります。コンピュータ・リテラシーとは、コンピュータを操作し、使う能力です。一番分かりやすいのは、パソコンの操作に習熟することでしょう。また、最近あまり見かけないが、ITリテラシーという言葉もあります。ITはインフォメーション・テクロジーの略ですから、ITリテラシーはコンピュータ・リテラシーに近いといえます。

一頃、電子メールを愛用している経営者を、情報リテラシーが高いとするかのような報道がメディアでなされました。しかし、本当に重要なことは電子メールで得た情報をどう使っているかです。経営者には情報を使ってしかるべき意思決定ができる能力が求められます。それがすなわち情報リテラシーです。つまりITの「T」についてだけではなく、「I」に関するリテラシーを高めなければならないのです。



極端なことを言えば、情報リテラシーとコンピュータ・リテラシーには関係はありません。コンピュータを操作できなくても、情報を使って意思決定を下すことは可能だからです。そもそもコンピュータから出てくるものだけが情報とは限りません。経営者はコンピュータが出す計算結果を見るかたわらで、時間を見つけては現場に行き、生の情報に触れる必要があります。

とはいえ、ドラッカー氏は「コンピュータ・リテラシーをもたないならば、社員からの敬意を期待してはならない。彼らにとっては日常のことである」とも書いています。コンピュータの操作は当たり前として、さらにその次のステージに向かうべき、ということです。
われわれの眼前に膨大な仕事が横たわっている。第一に、情報に通暁しなければならない。そのためには、一人ひとりが情報リテラシーを習得する必要がある。(中略)情報を仕事の道具として見なければならない。(中略)第二に、外部で起こっていることを理解するために、その情報リテラシーを実際に使わなければならない。
しかし「情報に通暁」しようとしても、情報は社内外に無限にあります。しかも、その大半は整理されていません。どのような情報にどのようにして通暁すれば成果を挙げられるのでしょうか。ドラッカー氏は他の論文で、経営に必要な情報について詳しく論じています。

 「技術が変化していることは、誰もが知っている。市場がグローバルになったことや、労働力や人口の構造が変化していることも知っている。しかし、流通チャネルが変化していることについてはまだ認識が甘い」(『未来企業』)
あらゆる組織が、世のため人のために存在する。すべて組織は、世の中や人が必要とするものを生み出し、届ける。だからドラッカーは、組織としての企業の目的は“顧客の創造”だといいます。


バブル期の騒乱
じつは、この当然のことが当然でなくなるのが好況期であり、バブル期です。あえて世のため人のためを考えずとも、流れに乗ることによって、事業が成り立ちます。

だから不祥事も起こります。世のため人のためでないビジネスモデルまで生まれます。目的が顧客でなくなり、利益になってしまいます。

ところが不況期となれば、原点に帰らざるをえません。わが社のミッションとすべきは何か、顧客は誰か、顧客にとっての価値は何かを根本から考えざるをえません。そしてそのとき、市場の構造と流通チャネルが急激に変化しつつあることに愕然とするのです。愕然とすれば不幸中の幸いです。多くの場合は、手遅れになるまで気がつかつきません。ドラッカーは、盲点は流通チャネルの変化にあると言いいます。役員室で報告を待っていたのでは変化はわかりません。自ら出かけていって体感しなければならないのです。歴史に名を残す経営者は皆、外をほっつき歩いていました。

アルフレッド・P・スローン
80年前に、GMを世界一のモノづくり企業に育てたアルフレッド・P・スローンは、数ヵ月に一度は一週間ほどディーラーめぐりをし、セールスマンの真似事をしていた。マクドナルドを生んだレイ・クロックも、町へ出ては自分の店を外から見ていた。
レイ・クロック
しかも、不況期こそ、顧客に出会い、教えを請う好機です。
 「私がトップ経営者たちに対し、歩き回ること、すなわち、役員室を出て、部下の所で話をすべきことを助言してからすでに久しい。しかし今では、それは間違った助言になってしまった。社内ばかりを歩き回れば、間違った安心感に陥る。知らされたことは、部下が知らせようとしたものにすぎないにも関わらず、情報を手にしているものと思い込む。今では、外を歩き回れが、正しい助言である」
さて、ここまで書くと、上の孫氏の言っていることがどれだけ愚かしいことかお分かりになると思います。外を歩きまわることなく、iPhoneや、iPadだけ使っていたとしても何にもないのです。まずは、上記のように、情報リテラシーを身につけること、さらに、外を歩きまわることが必要なのです。


ただし、情報リテラシーを身につけた人が、iPhoneやiPadを外を歩くときに、携行することにはそれなりに意義があると思います。なにせ、タイプライターを持って歩いても、外を歩いて、情報を集めることはできませんが、これらのガジェットは、手軽に写真や動画がとれるのは無論のこと、さらに、位置情報も取得できますし、その時に感じたことをメモしたり、さらに、音声メモもとれます。今や、それをクラウドにたくわえておけば、ガジエットだけでなく、どこに設置してあるPCからも、それらを閲覧し加工し、レポートにまとめることができます。さらに、レポートでまとめるための、資料集めも容易です。

本当に孫氏が主張したかったことは、こういうことなのではないでしょうか?だとすれば、とんでもない舌足らずです。あるいは、そもそもこんなことは頭にない、上の発言なのでしょうか。だとすれば、ただの愚かなセールスマンです。みなさんは、どちらであると考えますか?

それから、ドラッカー氏が生きていたとして、最近のスマホや、タブレットについてどのように語ったか、その語り口を真似ながら以下に掲載してみます。
私は以前ITについて、語ったことがあるが、最近また付け加えなければならないことが起こりつつある。インターネットが使えるようになってから、われわれは初めて、いわゆる企業の内部だけではなく、外の情報を得られるようになった。これによって、eコマースが勃興した。ITは、鉄道が価値観を変えたように、人々の空間や時間に関する様々な価値観を変えた。
さて、最近また、ITにも変化が現れつつある、スマートフォンやタブレット端末などいわゆるガジエットが、GPSにより、位置を認識しはじめたことだ。これによって、これらのガジエットに蓄えられる情報には、位置情報が付加されるようになった。さらに、これらは、ガジエットに蓄えられるだけではなく、クラウドに蓄積されるようになった。このクラウドによって、即座に同期と他者との共有ができるようになった。
私は、以前経営者は、外を歩き回るべきとアドバイスしたが、現在ではもう一つ付け加えるべきである。外を歩き回るには、このようなガジエットを携行すべきであることを・・・・・。 
そうして、このガジェットでは、多くの人々によって、ライフログがとられている。これらガジエットによれば、文書だけではなく、画像、動画などのログをとっておくことが、可能である。
これらによって、私が以前から主張している、多くのマネジャーが計画から入るのではなく、自らの時間が何につかわれているかを知ることから初めよということが容易に、しかも正確にできるようになった。ITは、こうして、さらに時間と空間を拡張することに貢献するようになった。
これによって、いずれeコマースにも大きな変化がおこるだろう。これらのガジェットを持つ顧客にとっては、物理的な店でも、eコマースによってもこれらガジエットで決済できることになる。いずれ、キャッシュレジスターが姿を消すことになるかもしれない」。


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