2015年9月11日金曜日

【お金は知っている】中国金融市場の自壊は変えようがない 外貨準備は「張り子の虎」―【私の論評】馬鹿の一つ覚えの経済政策が、今日の危機を招き後は崩壊するだけ(゚д゚)!


中国の外貨準備と資金流出入の推移

 八方ふさがりの中国経済だが、宣伝工作だけはさすがにたけている。先週末、トルコ・アンカラで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、不透明な中国当局の市場操作を厳しく追及する麻生太郎財務相に対し、中国人民銀行の周小川総裁は「市場は安定に向かっている」と言い抜けた。

 周発言の要点は以下の通りだ。

 ▽政府の措置により株式市場は崖から落ちるのを免れた。株式市場の調整はほぼ終わった。

 ▽8月の元切り下げ後に一時は元安圧力が高まったが、長期的に下落する根拠はない。

 いずれも現実とは遊離しており、麻生氏が周氏らの説明に納得しなかったのは当然だ。株価は、日本円換算で70兆円にも上るとみられる政府や政府系機関による株式買い支えや当局による厳しい投機の取り締まり、メディアへの締めつけにもかかわらず、乱高下が起きている。

 人民銀行は8月下旬に預金金利を追加利下げした。通常は「金融緩和策」のはずだが、結果からみると「金融引き締め」である。短期金融市場では銀行間融通金利上昇が止まらず、6月初めに1%強だった翌日もの金利は預金金利より高くなった。銀行は低い金利で集めた預金を銀行間で回せば儲かることになる。

 量のほうはどうか。中国人民銀行は一貫して発行する資金量(マネタリーベース)を増やす量的緩和を続けてきたが、この3月以降は減らし続けている。つまり、量的収縮策である。めちゃくちゃな金融政策で市場が安定するはずはない。

 元相場の下落圧力は強くなるばかりだ。8月中旬、元相場を切り下げた後は元相場の押し上げにきゅうきゅうとしている。主因は資本の対外逃避である。周氏がいくら詭弁(きべん)を弄しようと、中国の金融市場の自壊に拍車がかかる現実を変えようがない。

 グラフは中国からの資金流出と外貨準備の減少の加速ぶりを示している。中国は厳しい資本の流出入規制を敷いているのだが、抜け穴だらけだ。党の特権層を中心に香港経由などで巨額の資金が持ち出される。預金金利が下がれば、あるいは人民元安になりそうだと、多くの富裕層が元を外貨に替えて持ち出す。

 貿易収支など経常収支は黒字を維持しているのに、外貨準備はこの8月、昨年6月のピークに比べ4358億ドル(約52兆円)減となった。経常収支黒字と外貨準備の増減からみて、年間で6000億ドル(約72兆円)近い資金が外に流出している。

 外貨準備はそれでもまだ3兆5000億ドル(約420兆円)以上あり、日本の3倍以上になるとの見方もあるが、中国の外準は「張り子の虎」でしかない。対外債務は5兆ドル(約600兆円)を超えている。いわば、外から借金して外準を維持しているわけで、外国の投資家や金融機関が一斉に資金を引き揚げると、外準は底を突く恐れがある。

 株式、元相場と金利・量と続く金融市場自壊はその予告なのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】馬鹿の一つ覚えの経済政策が、今日の危機を招き後は崩壊するだけ(゚д゚)!

上の田村氏の記事、以前にも似たようなものをこのブログに掲載したことがあります。其の記事のリンクを以下に掲載します。
【日曜経済講座】インフラ銀…その正体は「共産党支配機関」 参加論を斬る―【私の論評】中国主催のインフラ投資銀行に出資すれば、敵に塩を送るようなものどころか、振り込め詐欺の誘いに乗っかるようなものである(゚д゚)! 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事は今年の3月30日のものです。このときにも、田村氏は中国の外貨準備高のグラフを掲載しつつ、中国金融の空洞状況を解説していました。そのグラフを以下に掲載します。



このグラフと、ブログ冒頭のグラフを比較していただきたいです。上のグラフでは、外貨準備と資金流出入とを比較しています。下のグラフでは、外貨準備と対外銀行借り入れを比較しています。

昨年の12月を比較してみると、外貨準備はかなり減少しているものの、それでも両方のグラフとも、一応はプラスです。 それにしても、上のグラフでは、資金流出入がマイナス、下のグラフでは、対外銀行借り入れが大幅なプラスで、この傾向は平成13年の12月あたりから続いていることがわかります。

とにかく、資金が海外に出て枯渇したため、対外銀行借り入れで、平成ぬ14年の12月あたりまでは、何とかしのいできたことが伺われます。

上のグラフでは、平成14年12月からは、中国の資金は流出傾向となり、平成15年にはいってから少したってから、外貨準備もマイナスになっていることがわかります。

今年になってから、このような状況にある中国が、なぜAIIB(アジアインフラ投資銀行)などを設立したのか、良く理解できます。

要するに、金融が空洞化どころか、正味では枯渇も通り越して、大幅なマイナスになってしまったので、とにかくどこからか、金を借りたか、前に借りてきた金をAIIBに見せ金として突っ込み、それで海外から出資を募り、その金を使って、海外へのインフラ投資を行い、儲けて、設けた金で借金を返そうとしたということです。

しかし、習近平の目論見は見事にはずれました。結局AIIBには日米が参加しませんでした。資金というと、日米ともに潤沢です。この二国で世界の大半の資金を担っており、他の国はその他大勢という程度のものです。

特に、日本は長い間デフレが続いたため、国内経済は疲弊しましたが、それでも、対外金融純資産は、未だ世界一の水準です。アメリカは、基軸通貨が、ドルということもあって、対外金融負債が300兆円超もありますが、それでも資金は他国に比較すれば、潤沢です。

日米が加入しなかったということで、AIIBは最初から失敗です。他の国々がいくら出資したとしても、今の中国にとっては、焼け石に水程度のもので、中国の借金を解消する手段とはならないでしょう。

それにしても、なぜこのようになってしまったかといえば、過去の一つ覚えともいえるような、経済政策の積み重ねによるものです。

中国の経済対策は、本当に簡単で、どんぶり勘定です。景気が停滞すれば、金融緩和と財政出動を実施し、それを元手に、インフラ投資を大規模に行い、公共工事をどんどん行い、景気を回復させ、景気が加熱してくると、金融引き締めと、緊縮財政を行い、これを継続して、景気が悪化すると、またまた、金融緩和をし財政出動を実施し、インフラ投資を大規模に行い景気を良くするということの繰り返しです。

中国の発展の原動力は国内へのインフラ投資のみでした。しかし、インフラ投資を繰り返して、橋をつくり、道路をつくり、住宅を建てたにしても、最初はそれで経済発展をすることができましたが、おそらく今から10年以上前から、インフラ投資をしても、それだけでは経済発展がしにくい状況になっており、極最近では不動産バブル崩壊に象徴されるように、公共工事をしても、ほんど経済成長ができない状況に陥ったのです。

そんなことは、当たり前のどまんなかです。公共工事で、道路や、橋、トンネルなどつくったにしても、それを多くの人々が活用して、経済活動を活発化させなければ、経済的には何の見返りもなくなります。

高層住宅や、高級住宅をつくったにしても、そこに人が住みつき、経済活動が活発になって、はじめて、経済的な見返りがでてきます。しかし、中国政府は馬鹿の一つ覚えで、住宅建設を繰り返し、結局のところ中国全土に鬼城と呼ばれる、誰も人が住まない住宅街をつくってしまいました。

誰も住まない中国の鬼城 中国全土の至るところにこのような鬼白がある
このようなことを繰り返し、結局中国国内で、公共投資をしても、もう経済成長できないと、悟った馬鹿の一つ覚えの中国政府がとった次の経済発展の次の手は、海外へのインフラ投資でした。

しかし、過去においてはこれはほとんど失敗しています。中国のアフリカ投資などは、結局全部失敗です。そもそも、中国は公共工事をすることはできますが、公共工事に加えて当該地区住民を豊にする術などありません。

中国国内でも、公共工事を実施するだけで、後はそれを活用して儲ける人が儲けて、その地域の住民などはなおざりでした。そんな中国が、アフリカで公共工事を実施して、地域住民を豊にすることなどできません。結局、中国や当外国の一部の人が儲けることだけを優先して、アフリカ諸国から反発をかってしまい、ほとんど失敗に終わりました。

そんな中国が、AIIBで、アジアのインフラ投資を行ったにしても、結局のところ、中国と開発当該国の一部の人が儲けるだけで、アフリカと同じ失敗を繰り返し、アジアの人々から反発を買うだけで終わることになります。

要するに、中国がやりたいのは、過去に大成功した中国国内での経済成長の成功体験を、中国内ではもう無理になったので、海外で実施したいというだけの話です。これでは、最初から成功などおぼつきません。

それに、アジア投資ということになれば、強力なアジア開発銀行といライバルが存在します。こちらの国際投資銀行は、地域の人々を豊にする様々なノウハウを持っています。そうして、日米が参加しています。とても、AIIBがかなうような相手ではありません。

このような中国、インフラ投資ばかり繰り返すようでは、もう経済成長は見込めません。本来ならば、実体経済を良くすれば、さらに経済成長をすることもできるとは思います。

しかし、そのためには、日本や、他の先進国と同じように、中間層を増やし、中間層に活発な社会・経済活動を行えるようなインフラを整備し、そのインフラの上で実際に中間層が活動できるようにもっていけば良いのですが、中国政府にはその気は、全くありません。

これは、統計資料からも裏付けられています。日米欧の先進国では、GDPの6割以上を国民の消費が占めるのが普通です。しかし、中国のその比率は4割未満です。以下に日本のデフレ期のGDPに占める消費の割合と、中国のそれとを比較するグラフを掲載します。


クリックすると拡大します

日本は、この期間はデフレが深刻だったので、ほぼ60%未満でしたが、それでも2011年には60%になっています。一方中国は、40%を超えていたものが、2005年あたりに40%を切り、その後35%台に落ちています。

日本では、この期間デフレで、モノが売れないということで、とんでもない状況で、失われた20年などともいわれていましたが、中国はもともと低い水準が最近ではさらに落ちているということです。国民の消費がこのように構造的に落ちている国が、これから先経済発展を続けるなどということはあり得ません。

現状でも似たような水準です。日本の景気が低迷したのは、日銀の金融政策があまりにもお粗末で、金融引き締めばかりしていたことが原因で、日銀が金融政策を改さえすれば、すぐにも解消するものですが、中国のそれは構造的な問題です。その構造を根本的に変えなければ今後の経済発展はあり得ません。

そもそも、平均賃金が、平均では今でも4万程度ですから、桁が違いすぎます。いかに、格差が酷いものか、中国では先進国のように中間層が形成されていないのは明らかです。

このように、本来中国では個人消費はまだまだ伸びる余地があるはずです。だから、世界中の国々がそれに期待して、過去には中国に多大な投資をしていたのです。しかし、中国ではなかなかそうはなりません。なぜなら、これを実行するためには、中国では全く不十分な、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をある水準までは実現しなければならないからです。

これについては、最近もこのブログに掲載したばかりです。以下にリンクを掲載します。詳細は、この記事をご覧下さい。
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中国・天津市で発生した大規模爆発
いずれにせよ、中国の現政府が、中間層を増やし、それらの経済・社会活動を活発化させることを考えず、これからも馬鹿の一つ覚えのように、インフラ投資のみで経済成長をしようとするなら、それは全く無理です。

この体制が変わらない限り、中国はこれから100年たっても、経済は停滞し続けるでしょう。今の体制のままで、中国がさらに経済発展を続け、いずれアメリカなみになるなどの考えは、単なる幻想です。このままだと、個人消費はさらに減り、いくつ先は現体制の崩壊です。中国の外貨準備の大幅な減少は、そうした未来を暗示しています。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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