2015年9月26日土曜日

【ロシアメディアСпутникより】安倍首相は国民の理解を模索―【私の論評】ロシアですら、日本の安保に対する考え方を変えているのに、日本国内だけが数十年前から変わらないこの不思議(゚д゚)!

【ロシアメディアСпутникより】安倍首相は国民の理解を模索

Спутник, Sputnik スプートニクより
今年5月にモスクワ赤の広場で行われた「大祖国戦争勝利70周年記念軍事パレード」

日本は現行の日本国憲法を尊重し、大事にしていくが、憲法には必要な改正を加えねばならない。安倍首相は9月24日、これから3年に及ぶ自民党総裁の任期に正式にのぞむにあたって、こうした声明を表した。総裁選挙自体は8日に行われていた。しかも安倍氏は唯一の候補者だった。

「…日本国憲法はわが国の統治体制を規定する根本規範だ。わが国は国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の基本原則に基づいて、平和と繁栄の道を歩んできた。安倍内閣でも憲法を順守しているわけで、今後もそのことに何ら変わりはない。

他方、憲法は国の未来、理想を語るものでもある。21世紀の日本の理想の姿を私たち自身の手で描いていくという精神こそ、日本の未来を切り開いていくことにつながっていくと思う。現行憲法の基本的な考え方を維持することは当然の前提として、その上で必要な改正は行うべきものと考えている。大切なことは憲法に対する、あるいはまた憲法改正に対する、国民の理解が進んでいくことだ。国民のみなさまの理解がより深くなること、改正案に対して支持がより広がっていくよう与党で、自民党で、さらに努力を重ねていく考えだ」

安倍氏は改正の詳細には触れなかったが、これが自衛隊を利用枠の拡大についての法を指すことは明白だ。先日、議会が採択した安保関連法で自衛隊は日本の国外での戦闘行為に加わる事が出来るようになってしまったが、この法の採択には多くの国民がデモ行進を行なって大反対した。法案の反対者らは、この法律は日本の平和憲法に矛盾すると考えており、事実上、日本は平和主義的地位を拒否し、世界中の軍事紛争に巻き込まれるリスクを負うことになると主張している。

現時点で日本の防衛は主として、2つの主要な法的文書に規定されている。1つは自国の憲法であり、もうひとつは国連憲章だ。1947年に採択された日本国憲法では戦争の放棄、国際紛争の解決手段としての武器使用の放棄および自国の軍隊を持たない事が明記されている。国連憲章では個別の集団防衛を持つ権利が保障されており、これによって日本は1954年、軍事力を再び持つところとなり、これが今日まで法律の制限を受けながらも存在し続けている。


ドミトリー・ストレリツォフ教授
モスクワ国際関係大学および高等経済学校で教鞭をとるドミトリー・ストレリツォフ教授は、日本では安全保障分野の深部で政策の建て直しが行なわれており、それが目指すところは日本が何らかの制限を負って動きが重い国ではなく、「通常の国」と呼ばれるような方向性であるとして、次のように語っている。

「日本の軍事建設プログラムは長期的正確を持つものだ。2010年末の段階ですでに日本は将来に向け、ダイナミックな国防コンセプトをとっていた。このコンセプトは軍事建設に対し、状況の原則に基づいてより柔軟なアプローチを図ることを想定している。つまりこれは迅速かつ効果的に反応する可能性のことであり、変化する情勢や変わりつつある脅威に対する適応能力の高さのことだ。

そしてもちろんのこと、ここでの中心は中国というファクターと北朝鮮の脅威だ。日本の政治指導部はすでにおおっぴらにこれについて語っており、中国からの脅威はすでに世論の理解を得ている。これは過去2-3年に見られるようになった新たな現象だ。これまで日本は中国を軍事上のシリアスな敵だとは見なしていなかったからだ。」

実際、議会に法案を出す際に、安倍首相は修正は中国増強にからんだ挑戦に立ち向かうために必要と語っている。現在、中国は南シナ海に人工島の建設を積極的に進めており、これについて近隣諸国は軍事的目的に使われるのではないかと憂慮している。

このほか、ストレリツォフ氏は日本は米国からの援助を期待しているものの、米国との連合関係の中で大きな自立性を得たいとのぞんでいると解釈している。これをよく物語るのが、地域安全保障ストラクチャーにより緊密に組み込まれようとする日本の姿勢であり、インド、豪州、フィリピンなどの諸国との相互関係の強化だ。特に7月、日本はフィリピンとの間でフィリピン領内の海軍基地を使用する可能性について条約を交わしている。

日本が自国のエネルギー安全保障を確保しようとする動きも極自然なことと受け止められている。なぜならエネルギー資源の供給の大半は不安定な中東から運ばれてきており、日本政府としては輸送回廊の安全度に対し、影響力をもちたいところだからだ。安倍首相が憲法改正に広範な支持を得られるかどうかは、かなり疑問だ。なぜならまさに、大々的な「軍国主義」へと導く政府の政策はここ最近、野党にとっては恰好の批判の的となっているからだ。

【私の論評】ロシアですら、日本の安保に対する考え方を変えているのに、日本国内だけが数十年前から変わらないこの不思議(゚д゚)!

上の記事に関して、西村幸祐氏は以下のようなTweetをしています。
ブログ冒頭の記事は、ロシアのメデイアであるスプートニクのものです。スプートニク(SPUTNIK、ロシア語: Спутник)は、ロシア通信社ロシアの今日の傘下に2014年11月10日に設立、RIAノーボスチロシアの声に代わってロシア国外での展開を担っています。このメデイアは、ロシア政府の考え方、プーチンの考え方を反映しているとみて間違いないと思います。

ロシアが西村氏が語るように、この記事でロシアは日本の安保法制と集団的自衛権行使を歓迎しています。これは、本当にコペルニクス的転回といっても良いくらいの事実です。

なお、今回の安保法案には、多くの国々が、賛成していることをこのブログでも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
大新聞 安保法制反対デモは報じるが世界の賛成の声は報じず―【私の論評】中国のため日本国内で報道統制をする習近平応援メデイアには、もううんざり(゚д゚)!
詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事では、安保法制に賛成する世界の国々の反応を示す図を掲載しました。その図を以下に再掲します。

 

この図では、ロシアの対応はでていませんが、ロシアも賛成ということになると、太平洋諸国のほとんどが賛成で、反対は中国と、韓国だけです。北朝鮮はでていませんが、これもなんともいえません。意見は、表明していないのかもしれません。意見をわざわざ公表しないということは、ひよっとすると賛成なのかもしれません。

いずれにせよ、はっきりと反対しているのは、中国と韓国だけです。上に掲載されている国々以外の国も、はっきり反対ということはないと思いますので、おそらく全世界ではっきり反対するのは、中国と韓国だけです。

それにしても、ロシアがこのように従来から態度を変えて、日本の安保法制に賛成するようになったのには、それなりの背景があります。本日は、この背景について掲載します。

まず最初に、ロシアは経済的には小国になってしまったことがあげられます。これについては、このブログにも何度か掲載したことがあります。その記事のリストを以下に掲載します。
旧ソ連と同じ罠にはまった中国、米国の仕掛けた軍拡競争で体力消耗―露メディア―【私の論評】ロシアの弱体化を吐露する記事、中国を封じ込めることと引き換えにロシアとの領土交渉を!!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではロシアの現在のGDPの水準を掲載しました。以下にその部分のみ、掲載します。
現在、ロシアのGDPは日本の3分の1以下なのです。日露戦争の頃は、ロシアのGDPは日本の8倍でした。100年間(正確には80年間)で日露の国力は大逆転したのです。


2010年各国のGDP

1.アメリカ

2、中国
3.日本   5兆4500億ドル
4、ドイツ
5、フランス
6、イギリス
7、ブラジル
8、イタリア
9、カナダ
10、インド

・ ロシア  1兆4650億ドル 
ロシアの弱体化は明らかです。現状の小国ロシアに、領土問題などで譲歩する必要など全くありません。日本は、日本銀行に金融引締めをやめさせ、円高誘導をやめさせ、また、世界第二位の経済大国に返り咲くべきです。それに、いますぐするしないは、別にして、核武装の論議をはじめるべきです。それだけで、ロシア、中国、北朝鮮はかなり脅威に感じることでしょう。
 こうしたことを背景にして、日本は、弱体化が明らかになった、ロシアと領土交渉を有利にすすめるべきです。そうして、これは、他国ならどこの国でもやっていることです。日本だけができないとか、やってはいけないなどということはないはずです。そのためにも、一日でもはやく、新たな憲法を制定すべぎではありますが、今の日本国憲法の範囲でもできることは、すぐにも実行すべきと思うのは、私だけでしょうか? 


さて、この記事には掲載していませんが、ロシアの人口も中国の約13億人と比較すると、かなり少ないです。実数は、約1億4千万人に過ぎません。日本の、人口の1億2千万人より、わずかに2千万人多いだけです。

あれだけの広い面積の国土に、わずかこの程度の人口です。そうして、ロシアは、隣国中国と 4,000kmにわたり、国境を接しています。世界で最も長い、中国との国境線を有する国はロシアです。

軍事費はGDPが小さいわりには、かなり多いです。しかし、日本よりは多いですが、中国と比較すれば、半分以下です。以下に各国の、軍事費の比較を掲載しておきます。



ただし、中国は軍事技術がかなりたち遅れているため、戦闘機など開発しても、最新のステルスといわれながら、ステルス性もかなり弱く、現実には第三世代の域を超えていません。そのため、航空自衛隊よりも戦力は劣るものと考えらます。

艦船も、かなり遅れていて、日米のイージス艦などと比較すれば、中国では最新鋭であっても、ボロ船の域を出ません。潜水艦も、かなり立ち遅れており、日本などと比較すると、数十年立ち遅れています。そのため、中国の人民解放軍が尖閣などに攻め込んできても、ボロ負けするだけです。

ロシアも、中国よりはかなり軍事技術は進んでいるのと、核兵器に関してはソ連時代の資産があるため、今のところ、中国と比較すれば、まだまだソ連のほうが軍事的には上です。

米国誌「フォーリン・ポリシー」は2013年24日付の記事で、「中国初の空母となった『遼寧』とインドの空母はいずれもベースがロシア製で、設計上の欠陥などがあり、遠くまで航行できない」と指摘していましたた。

ボロ船の空母「遼寧」

同誌によると、中国とインドの空母はいずれもロシアの空母「アドミラル・クズネツォフ」の姉妹艦で、同様の欠陥を持っているそうです。

米国の空母が2年ごとに短くとも6カ月間、海外に展開するのとは違い、「アドミラル・クズネツォフ」は1991年の就役以来、前線に派遣されたのが4回のみで、いずれも地中海へ数カ月のみの派遣でした。「アドミラル・クズネツォフ」の主な問題は、動力装置の欠陥だといいます。

そもそも、この空母の原型である「アドミラル・クズネツォフ」をつくる能力すらないのが、現在の中国の技術水準です。そうして、このような重要な軍事技術は、技術力のある国の同盟国には、ブラック・ボックスで提供されることもありますが、同盟国ではない国に、提供することはありません。ロシアも、高度の軍事技術を中国に提供していません。

そうはいっても、そもそも、軍事費がかなり中国のほうが大きいですから、当面は大丈夫とはいえ、数年後あたりにはどうなるかわかりません。いずれにせよ、ロシアにとって、中国は潜在的に大きな脅威であることには、変わりありません。

それに、もう一つロシアにとっては、悩ましい中国との国境溶解現象ががあります。

中ロ国境

国境の溶解現象とは、中ロ国境を中国人が多数超えてロシア領内に入り、様々経済活動をしているため国境そのものが曖昧になっていることをさします。

黒竜江とウスリー江を挟んだ対岸は、中国有数の農業地帯であり、 渤海、金以来のさまざまな民族の興亡の地として歴史に残る遺跡も多いです。 わずかに川ひとつ隔てただけで、一方は衣食を外からの供給に仰ぎつつ資源を略奪しつづけ、 年々人口を減らしつづけているシベリアであり、一方は年々人口を急増させつつある 黒龍江省です。

ロシア側の、全シベリアの人口を総和しても、数十分の一の面積しかない黒龍江省の半分にしかならないのです。この救いがたい落差は、 つまるところ社会的な圧力になります。ソ連政府はだからこそ国境地帯に厳しい軍事的な緊張を 作り出すことによって、中国からの圧力に対抗していたといえるでしょう。

国境を挟んだ中国側の吉林省、遼寧省と北朝鮮、 内モンゴル自治区とモンゴル、新彊とカザフスタンおよびウズベキスタン、中国の雲南省とミャンマー、 中国の広東省とベトナムなどを比較してみると、常に面積の少ない中国側の各省が人口ではるかに勝っていることがわかります。

この明白な不均衡こそが、国境を超えて大量の中国人が流出あるいは進出しつつある 根本的な原因です。この点から言えば、シベリアも例外ではないばかりではなく、 最も典型的なものです。ソ連の軍事的圧力が解消し、 国境貿易が開始されたことは、この過程を一気に促進させました。

中越国境の橋

ソ連の崩壊によってシベリアのロシア人社会は、直ちに危機に陥いりました。 政府は給与を支払うことができず、多くの労働者が引き上げていきました。 シベリアに市場はなく、シベリア鉄道もいたるところで寸断されようとしていました。 だから、中国からの輸入が不可欠のものとなりましたが、一方で中国に売り渡すものを シベリアのロシア人社会は何も持っていませんでした。その結果、 中国人がシベリアに入り込んできて、役に立つものを探し出し、作り出してゆくしかなくなりました。

こうして、国境溶解が進んていきました。この国境溶解は、無論中国にとっては、軍事的脅威がなくなったことを意味します。

特に現在のロシアは、ご存知のようにウクラナイ問題を抱えており、中ロ国境にソ連時代のように大規模な軍隊を駐留させておけるような余裕はありません。

かつてのソ連の脅威がなくなったどころか、国境溶解でロシア領内にまで浸透できるようになった中国は、この方面での軍事的脅威は全くなくなったということです。

各地で軍事的な脅威がなくなった中国は、これら国境地帯にかつのように大規模な軍隊を派遣する必要もなくなり、従来から比較すると経済的にも恵まれてきたため、海洋進出を開始するだけの余裕を持ち、実際に海洋進出を始めました。

中国に国境を接する国々である、ロシア、ベトナム、モンゴル、インド、トルコなどが、経済発展をして軍事的にも余裕ができ、中国に対峙することが可能になれば、中国はこれらの国々の脅威から自分を守るために、国境に軍隊を派遣せざるを得なくなり、海洋進出などしている余裕はなくなります。

国境溶解を放置しておけば、ロシア国内の中国人が多数移住した地区など、中国人が多数住んでいるということが既成事実化され、いずれ中国領になる可能性もあります。

以前のロシアというか、ソ連時代には強大な軍事力を背景に、中国がこのようなことをしても、すぐに有無をいわさず、軍事力で徹底抗戦して、中国を押し返すことができました。

しかし、国境溶解が大規模になれば、そんなことも不可能になってしまいます。そうして、シベリアなどの地下資源なども奪い去られることも十分考えられます。

そんなことを考えると、ロシアとしてはかつては、日本の安全保障法制の強化などには反対してきましたが、中国の台頭を考えるとそうとばかりは言ってはいられなくなったわけです。

中国のすぐとなりの、日本の軍事力が増せば、中国もこれに対処しなければならなくなり、その分ロシアに対する脅威は減ることになります。

それに、日本の憲法や、安保法制など調べてみれば、どう考えてもロシアに侵略などということは考えられません。それに、日本は憲法9条を変更したにせよ、侵略戦争に打って出るということはまず考えられません。であれば、日本の安保法制の変更や、将来憲法9条を変えることも、ロシアにとっては、プラスになると考えているのです。

それにしても、ロシアですら、日本の安全保障のあり方を時代の移り変わりとともに、変えてきているにもかかわらず、当の日本国内では、安倍自民党と一部の安保賛成派だけが、時代の変化に合わせて安保保障のあり方を変えるべきと考えているのに、なぜか野党や、学者、マスコミ、デモをする安保反対派は、数十年前と同じく、頑なに安保に関する考え方を変えません。

これは、本当に世界の七不思議よりもさらに不思議といわざるを得ません。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

反安保の急先鋒となったあの憲法学者の「いかがわしさ」を明かそう ~わずか2年前は「解釈改憲論者」。だから彼らを信用できない!―【私の論評】虚実皮膜の間も成り立たない180度時代に逆行した転換(゚д゚)!




安全保障について、良く考えるための書籍を以下に掲載させていただきました。

倉山満の憲法九条 ― 政府も学者もぶった斬り!
倉山 満 
ハート出版 
売り上げランキング: 576

日本の自立 戦後70年、「日米安保体制」に未来はあるのか?
西村 幸祐 ケント・ギルバート
イースト・プレス (2015-08-07)
売り上げランキング: 12,326

文藝春秋 (2015-03-20)
売り上げランキング: 92

















日本人が知らない集団的自衛権 (文春新書)
文藝春秋 (2015-03-20)
売り上げランキング: 92

0 件のコメント:

【中国の南シナ海軍事要塞の価値は500億ドル超】ハワイの米軍施設を超えるか、米シンクタンクが試算―【私の論評】米国の南シナ海戦略:ルトワック氏の爆弾発言と軍事的優位性の維持の意思

  【中国の南シナ海軍事要塞の価値は500億ドル超】ハワイの米軍施設を超えるか、米シンクタンクが試算 岡崎研究所 まとめ 中国の軍事施設の価値増加 : 海南島や南シナ海の軍事インフラの価値は20年以上で3倍以上に増加し、2022年には500億ドルを超える。 楡林海軍基地の重要性 ...