2017年4月20日木曜日

「有事の円高」はなぜ起きる?日本の財政問題に懸念なし ミサイル着弾なら話は別―【私の論評】日本は北朝鮮の核ミサイルが着弾した程度で駄目になるようなヤワな国ではない(゚д゚)!

「有事の円高」はなぜ起きる?日本の財政問題に懸念なし ミサイル着弾なら話は別


昨年公開の映画「シン・ゴジラ」では、東京がゴジラの攻撃を受けたことで日本円と国債が暴落したというエピソードが出てくる。だが、現実の世界では、朝鮮半島の有事が懸念されるなかで為替は円高に進んでいる。なぜ「有事の円高」という現象が起きているのだろうか。

 2011年3月の東日本大震災の際にも円高が進み、国債はあまり動かなかった。これについては伝統的な理論での説明が可能だ。東日本大震災のような国内危機では大規模復興予算が組まれる。そこで金融政策を緩和しないと、国内金利高の連想が働き、日本の実質金利が高くなるので円高になりやすい。これは、いわゆる「マンデル・フレミング」効果であり、阪神淡路大震災の時にも確認されている。

 08年9月のリーマン・ショックや10年の欧州債務危機の時にも円高となった。これは、各国が金融緩和を猛烈に行ったのに対し、当時の白川方明(まさあき)総裁率いる日銀が無為無策だったためだ。貨幣量比率で為替レートが大体決まるという、国際金融の「マネタリーアプローチ」で説明できる。つまり、各国ともに貨幣量を増加させたのに、日本だけが増加させずに、円は各国通貨と比較して相対的に希少性が高まり、その結果円高になったわけだ。いうなれば、金融政策の失敗である。

 今回の朝鮮半島の緊張で、円高が進んだメカニズムはどのようなものだろうか。

 日本経済新聞などのメディアは、デフレが続いていることや、超低金利などで説明している。デフレはモノに対してカネ(日本円)が相対的に少ない時の現象なので、金融緩和をサボったために生じると、リーマン・ショックと欧州債務危機の時期には説明できるが、今回の理由としてはちょっと説得力がない。超低金利は、キャリー取引の増加というテクニカルなものであり、それが全体の為替に影響するというのはちょっと首をかしげる。他にも為替が高くなっている国もあるが、そこでは通用しないロジックである。

 筆者が考えるのは、日本政府は財政問題をほとんど気にする必要がないという事実だ。そうであれば、昨年6月の英国民投票と同様、朝鮮半島の緊張でも、安全資産として日本円に投資することができるだろう。

 マスコミがあおるように日本政府が財政破綻するような状況であれば、円に投資する人はいないはずだ。しかし、本コラムの読者であれば、日本の財政問題は、統合政府のバランスシート(貸借対照表)でみれば、たいした問題でないことをご存じだろう。

 ただし、こうした構図は、朝鮮半島が仮に有事になっても、1950年代の朝鮮戦争のように日本が漁夫の利を得るというのが前提だ。

 気をつけておくべきなのは、今の北朝鮮のミサイル能力からみても、今回は日本が対岸の火事のように安全だとは言いがたいことだ。その場合、「有事の円買い」もあっさり崩れてしまう恐れがある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】日本は北朝鮮の核ミサイルが着弾した程度で駄目になるようなヤワな国ではない(゚д゚)!

2011年3月の東日本大震災の円高については、別の方向からも説明できます。それは、震災が発生すると、その直後に救援活動や復興のためなどに、日本国内では円の需要が高まります。にも関わらず、日銀が金融緩和をせず金融引締めしていれば、円の希少性が高まり、円高傾向に触れます。これに、さらに「マンデル・フレミング」効果も加わり、未曾有の円高となったのです。

08年9月のリーマン・ショックや10年の欧州債務危機の時にも円高となったことについては、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事で説明していますが、もっとわかりやすくすると、日本以外の他国が、大規模な金融緩和をしたにもかかわらず、日銀が緩和をしなかったので、ドルなどの外国の貨幣は相対的に多くなり、日本の円は相対的に少なくなり、当然のことながら相対的に少なくなった円が価値が高まり円高になったのです。

これは、消費財でもお金でも同じことです。ある特定の消費財が大量に生産されたとすれば、その消費財の価格は下がります。逆に、ある消費財が人々が購入したいと思っている入るにも関わらず、あまり生産されなければ、その消費財の価格は上がることになります。

お金も同じことです。他国はそうでもないのに、ある国の貨幣だけが大量に刷り増しされた場合、その国の貨幣は安くなります。他国が貨幣を刷り増しているときに、ある国の貨幣だけが刷り増しされなかった場合、その国の貨幣は高くなります。これは、小学生でもわかる理屈です。要するに、日本でいえば日銀が金融緩和をすれば、円安方向に向かうし、金融引締めをすれば、円高方向に向かうのです。

為替レートに関しては、様々な要素が絡むので、正確予測するのはかなり難しいですが、6割方はこれで説明がつきます。しかし、この小学生にでもわかることを理解している人が、日本には少ないようです。特にマスコミはこの事実を認識していないようです。せいぜい数ヶ月の動きで為替レートの上下を理解しようとしているようで、頓珍漢、奇妙奇天烈な報道が多いです。

無論これが当てはまるのは、日本の財政が財務省や、マスコミなどが主張するように、破綻の淵にあるとすれば、このようなことにはならないです。日銀が、金融緩和しようが何をしようが、円安傾向になります。

ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏が指摘するように「本コラムの読者であれば、日本の財政問題は、統合政府のバランスシート(貸借対照表)でみれば、たいした問題でないことをご存じだろう」という状況にあるからこそ、北朝鮮有事には円高になるのです。もし、そうでなく、財務省やマスコミが言うように単純に国の借金1000兆円というなら、円高になることはあり得ません。

日本のマスコミや財務省がいくら煽ってみても、海外の人は日本語が読めませんから、他の情報ソースから日本の正しい財政状況を把握しているので、北朝鮮半島が緊張すると、多くの人が円に投資し円高傾向になったのです。そうして、国債の長期金利もかなり低くなっているのです。

日本の財務省やマスコミが主張する日本国の財政状況が破綻にあるとする主張とは全くのフェイクであり、本当の日本の財政状況は非常に安定しています。だからこそ、朝鮮半島が緊張すると円高傾向になったのです。日本の真の財政状況については、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
1000兆円の国債って実はウソ!? スティグリッツ教授の重大提言―【私の論評】野党とメディアは、安保や経済など二の次で安倍内閣打倒しか眼中にない(゚д゚)!
スティグリッツ氏
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事ではノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者スティグリッツ氏が「国の借金が1000兆円ある」という主張を鵜呑みにしてはいけないと警告していることを掲載し、それに対して私の論評を付け加えました。

この記事は2017年4月2日のものです。この時期には、国会では例の森友問題が花盛りで、残念ながら、スティグリッツ氏のこの提言はほとんど報道されることはありませんでした。

以下に、この記事の【私の論評】から、日本の財政はいたって統合政府ベースでみると米国や英国などと比較してもかなり健全あることを示した部分のみを以下に引用します。

まずは、27年3月31日時点での統合政府の負債を私が実際に試算した結果の部分を掲載します。
私の計算では、平成27年3月31日の日銀が含まれていないバランスシートに、平成27年3月31日の日銀の営業毎旬報告から推測したバランスシートを加えたもので、その結果統合政府の政府の負債は173兆円です。
この計算過程についても、この記事をみればその詳細示したリンクの記事もご覧いただけますので、計算過程に興味のあるかたは是非それをご覧になってください。

さらに、統合政府の債務の推移と、予測のグラフも以下に引用しておきます。
まずは、以下は統合政府純債務残高の推移を示したものです。
このグラフから日銀の金融緩和政策の国債の買い入れによって、純債務残高が、2014年度でも政府純債務GDP比は35%まで減少していたことがわかります。 
さらに、下のグラフは、統合政府の債務残高の予測まで含めた推移を示したものです。
日銀が国債を買えば買うほど統合政府の政府純債務は減ります。 
日銀の年80兆円の国債買い入れペースだと、2017年度には純債務から、純資産になるため、財政再建は完璧に終了することになります。実質的には、2016年度中に終了するか、2016年半ばを過ぎている現在もうすでに終了したと言っても良いくらいです。
蓮舫氏は無論このようなことも理解していないのでしょう。実質財政再建が完了した問つても良いこの時期に、さらなる増税など全く必要ありません。 
増税すれば、我が国の60%占める個人消費の低迷を招き、GDPの伸びが阻害され、かえって税収が減ることになるだけです。
この予測をご覧いただくと、何と今年は日本政府は借金どころか、黒字になります。こんな状況だからこ、北朝鮮半島が危機に陥れば、円に投資する機関投資家などが増えるのです。

さて、以上のことから、朝鮮半島が緊張すると、円高になる理屈がよくおわかりになったと思います。それにしても、マスコミはなぜ現状円高傾向になっているのか、合理的に説明できるのでしょうか。日本国の財政問題がさほど深刻ではないことを前提としなければ、説明できないはずです。だからこそ、マスコミの報道は、頓珍漢、奇妙奇天烈になるざるを得ないのです。 

最後に、高橋洋一氏は、"気をつけておくべきなのは、今の北朝鮮のミサイル能力からみても、今回は日本が対岸の火事のように安全だとは言いがたいことだ。その場合、「有事の円買い」もあっさり崩れてしまう恐れがある"と指摘していますが、私はこれも意外と軽微になるのではないかと思っています。

なぜなら、北朝鮮の核ミサイルは、今のレベルではたとえ複数発を東京に打ち込み、核爆発させたとしても、東京を全部破壊することはできないからです。それでも、北朝鮮があらん限りの核ミサイルを東京に打ち込み続ければ、東京は完全に破壊されるかもしれません。しかし、その前に米軍が報復をして、北朝鮮はミサイル打ち続けることはできなくなります。それにそのようなことになれば、日本でも世論が急展開して、日本も北朝鮮の的基地を破壊することになるかもしれません。

さらに、東京だけではなく、他の都市にも核ミサイルを発射したとすれば、力が分散されて、比較的規模の小さい都市は全破壊される可能性もありますが、東京の破壊は少なく、他の都市は無傷で残るわけです。

第二次世界大戦の終了時の日本は、確かに東京、大阪、広島、長崎や他の都市も含めて、焼け野が原になったことは事実ですが、それでも国富の7割は残りました。

日本はこの大戦で、すべての国富のうち、その4分の1を失ったことになりますが、逆説的に言えば、4分の3は残存していると見なすことができ、その水準はおおむね1935年のそれでした。
終戦直後の焼け野が原の東京 だが国全体では7割の国富が残っていた
簡単に言えば、日本は1935年から1944年までの拡大分が戦争最後の1年、つまり戦争末期の大空襲であらかた吹き飛び、日本の敗戦時の国富は終戦時点の10年前である1935年の水準に逆戻りしたと考えればわかりやすいです。

よって、「日本は敗戦でゼロからのスタート」を余儀なくされたのではなく、「敗戦により、おおむね1935年の国富水準からスタート」と言い換えることができるのです。

1935年のレベルといえば、言うまでもなくアジアの中ではトップクラスです。戦後の日本の復興は、「ゼロからのスタート」とするのは程遠い実態です。

終戦直後にこの状況であり、温存された国富の源となった、爆撃されなかった町や村などは生産活動を継続するどころかかなり生産を増し、さらに戦争遂行のための様々な経済活動なども加えれば、当時の日本は経済指標だけみていれば、戦争のあったことなど後世の歴史家は気づかないかもしれません。これに関しては、経済学の大家ドラッカー氏がヨーロッパについて同じようなことを指摘しています。

北朝鮮有事で、北朝鮮が核ミサイルを日本に打ち込んだとしても同じようなことになると思われます。東日本震災の福島などでも、確かに津波の被害が甚大でしたし、原発事故も甚大でした。しかし、福島県全部が甚大な被害にあったということはないし、被害を受けたところでさえ、直後からかなりのスピードで復興し今日の被災地に状況になっているわけです。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
やさしいデータと数字で語る「フクシマ」の虚と実 雇用は激増 離婚は減少 出生率もV字で回復―【私の論評】行動するなら感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!
この記事は、昨年の1月17日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事に掲載した表を掲載します。


もし、北朝鮮が日本に核ミサイルを打ち込んだ場合、かなり日本は混乱します。そうして、確かに一時的には「有事の円買い」もあっさり崩れてしまいます。しかし、考えみてください、東京を全部は破壊できないわけですから、東京の首都機能はかなり残るわけです。さらに、生き残った都市や農村もかなりあるわけですが、そこで何がおこるかといえば、被害地の救援活動や復興活動が大規模に始まり、当然のことながら、大規模なインフラ開発が始まり、これまたとてつもない経済発展が始まることになります。

そうなると、また円買いが始まり、円高傾向になるかもしれません。無論、そのようなことにはならないほうが良いことはいうまでもありません。

私が、第二次世界大戦や、東日本大震災まで引き合いに出して、上記のような説明をしたのは、日本という国は、もともと財務省やマスコミが主張するような、借金を1000兆円も抱えたような脆弱な国なのではなく、それどころではなく、強靭な国であり、たとえ北朝鮮の核攻撃があったからといって、それで駄目になるようなヤワな国ではないということを言いたかったからです。

日本をヤワで駄目な国というのは、マスコミと財務省や、野党政治家の一部のみです。本当の日本は、震災で大変な被害にあっても打ちのめされず今でも頑張り続ける福島の人々を筆頭に強靭でしなやかなのです。

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